(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024058950
(43)【公開日】2024-04-30
(54)【発明の名称】建物の給電システム
(51)【国際特許分類】
H02J 7/00 20060101AFI20240422BHJP
H02J 3/32 20060101ALI20240422BHJP
G01R 31/52 20200101ALI20240422BHJP
【FI】
H02J7/00 Y
H02J7/00 P
H02J3/32
G01R31/52
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022166383
(22)【出願日】2022-10-17
(71)【出願人】
【識別番号】504093467
【氏名又は名称】トヨタホーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 強
(74)【代理人】
【識別番号】100161230
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 雅博
(72)【発明者】
【氏名】地田 祐太
【テーマコード(参考)】
2G014
5G066
5G503
【Fターム(参考)】
2G014AA04
2G014AB24
2G014AB33
2G014AC03
2G014AC04
5G066AE07
5G066HB09
5G066JB03
5G503AA01
5G503BA01
5G503BB01
5G503EA08
5G503FA06
(57)【要約】
【課題】電装ボックスの個数を増やすことなく、また屋内の意匠性が損なわれるのを抑制しながら、地絡の発生が生じた場合にその旨を確実にユーザに知らせることができる建物の給電システムを提供する。
【解決手段】
給電システムは、分電盤11から建物内の電気機器に商用電力を供給する給電経路22と、自動車23が給電ケーブル27を介して接続されるインレット31と、インレット31と給電経路22とを接続する接続経路35と、商用電力及び自動車23の電力のうちいずれを電気機器に供給するか切り替える切替スイッチ21とを備える。給電システムは、接続経路35に設けられた絶縁トランス41と、給電ケーブル27の地絡発生時に地絡電流を検出する地絡検出部42と、地絡の発生を報知する警報器43とを備える。地絡検出部42、警報器43及び切替スイッチ21は電装ボックス51に収容され、絶縁トランス41は電装ボックス52に収容されている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
商用電源から商用電力が供給される分電盤と、
前記分電盤から建物内の電気機器に前記商用電力を供給するための商用給電経路と、
屋外に設けられる外部電源装置が給電ケーブルを介して接続される接続部と、
前記接続部に前記給電ケーブルを介して供給される前記外部電源装置の電力を前記接続部から前記電気機器に供給するための外部給電経路と、
前記商用給電経路及び前記外部給電経路にそれぞれ接続され、前記商用電力及び前記外部電源装置の電力のうちいずれを前記電気機器に供給するか切り替える切替操作部と、
を備える建物の給電システムであって、
前記外部給電経路に設けられた絶縁トランスと、
前記外部給電経路における前記絶縁トランスの一次側を接地する接地経路と、
前記給電ケーブルの地絡発生時に前記接地経路を流れる地絡電流を検出する地絡検出部と、
前記地絡検出部により地絡電流が検出された場合に地絡の発生を報知する報知部と、
前記地絡検出部、前記報知部及び前記切替操作部が収容された第1電装ボックスと、
前記絶縁トランスが収容された第2電装ボックスと、
を備える、建物の給電システム。
【請求項2】
前記第1電装ボックスと前記第2電装ボックスとは、居住空間に面した同じ壁部に取り付けられており、
前記絶縁トランスは、その一部が前記壁部の内部に入り込んだ状態で前記第2電装ボックスに収容されている、請求項1に記載の建物の給電システム。
【請求項3】
前記第1電装ボックスと前記第2電装ボックスとは、前記分電盤が取り付けられた前記壁部に取り付けられている、請求項2に記載の建物の給電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の給電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、災害等により建物で停電が発生した場合に、商用電源とは別の外部電源装置より建物内の電気機器に電力を供給可能とした給電システムが開示されている。特許文献1の給電システムでは、
図5に示すように、建物80に設けられた分電盤81に商用電源(図示略)から商用電力が供給され、その供給された商用電力が分電盤81より商用給電経路82を介して建物80内の電気機器84に供給される。
【0003】
特許文献1の給電システムでは、外部電源装置として自動車85(詳しくは車載バッテリ)を想定しており、その自動車85から建物80内の電気機器84に電力を供給可能となっている。そのための構成として、特許文献1の給電システムには、自動車85を給電ケーブル87を介して接続可能なインレット88と、そのインレット88から電気機器84に自動車85の電力を供給するための外部給電経路89とが設けられている。また、特許文献1の給電システムには、商用給電経路82と外部給電経路89とにそれぞれ接続され、商用電力と自動車85の電力とのうちいずれを電気機器84に供給するか切り替える切替スイッチ91が設けられている。これにより、建物80の停電時には、自動車85を給電ケーブル84を介してインレット88に接続するとともに、切替スイッチ91により給電元を自動車85側に切り替えることで、自動車85の電力を給電ケーブル87及び外部給電経路89を介して電気機器84に供給することが可能となっている。なお、切替スイッチ91は、電装ボックス92(筐体)に収容された状態で設けられている。
【0004】
ところで、上述の給電システムにおいて、自動車85から建物80側の電気機器84に給電ケーブル87を介して給電を行う場合、給電ケーブル87の一部に劣化や外傷等により絶縁被覆の破損が生じると、その破損した箇所で給電ケーブル87が地面と電気的に接続(接地)し、地絡が生じるおそれがある。そこで、特許文献1の給電システムでは、給電ケーブル87において地絡が生じた場合に、地絡の発生を検出してユーザに報知する外部給電用装置93を備えている。以下、外部給電用装置93の構成について説明する。
【0005】
図6に示すように、外部給電用装置93は、絶縁トランス95と、地絡検出部96と、警報器97と、それら各部材95~97を収容する電装ボックス98(筐体)とを有している。絶縁トランス95は外部給電経路89に設けられ、外部給電経路89における絶縁トランス95の一次側は接地経路99を介して接地(アース)されている。地絡検出部96は、給電ケーブル87における地絡発生時に接地経路99を流れる地絡電流を検出するものである。また、警報器97は、地絡検出部96により地絡電流が検出された場合に地絡の発生を報知するものである。これにより、自動車85から電気機器84に給電を行っている際に、給電ケーブル87において地絡が生じた場合には、その地絡の発生をユーザに知らせることが可能となっている。なお、電装ボックス98は、屋内の壁等に取り付けられる。
【0006】
給電ケーブル87において地絡が生じた場合には、
図7に示すように、その地絡した箇所Tと接地経路99とを通じて地絡電流(点線矢印を参照)が流れる。この場合、外部給電経路89には絶縁トランス95が設けられているため、地絡電流が流れる電流経路は絶縁トランス95の一次側にのみ形成される。つまり、この場合、地絡電流が絶縁トランス95の二次側(電気機器84側)に流れることがないため、微小電流である地絡電流を確実に接地経路99に流すことができる。これにより、地絡検出部96により地絡電流を確実に検出することができ、その結果、地絡が発生した場合にその旨を確実にユーザに知らせることが可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、外部給電用装置93の電装ボックス98に収容される各部材95~97のうち、絶縁トランス97は比較的大型の部材である。そのため、特許文献1の給電システムでは、絶縁トランス97の大きさに合わせて電装ボックス99のサイズを大きくする必要があると考えられる。しかしながら、電装ボックス99を大型化すると、電装ボックス99(つまり外部給電用装置93)を居住空間の壁に取り付けた場合に屋内の意匠性が損なわれるおそれがある。
【0009】
そこで、電装ボックス99を収納室等の非居住空間の壁に取り付けることが考えられる。しかしながら、そうすると、警報器97により地絡の発生が報知された際、その報知にユーザが気づかないことが想定される。
【0010】
また、絶縁トランス95を収容する電装ボックスと、警報器97を収容する電装ボックスとを別々に設けることも考えられる。この場合、絶縁トランス用の電装ボックスについては比較的大型になるため非居住空間に設置する一方、警報器用の電装ボックスについては小型にすることができるため居住空間に設置することが可能となる。そのため、屋内の意匠性が損なわれるのを抑制しながら、地絡の発生をユーザに確実に知らせることが可能となる。
【0011】
しかしながら、電装ボックスを絶縁トランス用と警報器用とに分けて設けると、電装ボックスの個数が増えるため、製造コストの増大等の不都合を招くおそれがある。また、電装ボックスとしては、その他に切替スイッチ用の電装ボックスがあるため、それも含めて考えると、電装ボックスの個数が増えるのはやはり望ましくない。
【0012】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、電装ボックスの個数を増やすことなく、また屋内の意匠性が損なわれるのを抑制しながら、地絡の発生が生じた場合にその旨を確実にユーザに知らせることができる建物の給電システムを提供することを主たる目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決すべく、第1の発明の建物の給電システムは、商用電源から商用電力が供給される分電盤と、前記分電盤から建物内の電気機器に前記商用電力を供給するための商用給電経路と、屋外に設けられる外部電源装置が給電ケーブルを介して接続される接続部と、前記接続部に前記給電ケーブルを介して供給される前記外部電源装置の電力を前記接続部から前記電気機器に供給するための外部給電経路と、前記商用給電経路及び前記外部給電経路にそれぞれ接続され、前記商用電力及び前記外部電源装置の電力のうちいずれを前記電気機器に供給するか切り替える切替操作部と、を備える建物の給電システムであって、前記外部給電経路に設けられた絶縁トランスと、前記外部給電経路における前記絶縁トランスの一次側を接地する接地経路と、前記給電ケーブルの地絡発生時に前記接地経路を流れる地絡電流を検出する地絡検出部と、前記地絡検出部により地絡電流が検出された場合に地絡の発生を報知する報知部と、前記地絡検出部、前記報知部及び前記切替操作部が収容された第1電装ボックスと、前記絶縁トランスが収容された第2電装ボックスと、を備える。
【0014】
第1の発明によれば、地絡検出部、報知部及び切替操作部が第1電装ボックスに収容され、絶縁トランスが第2電装ボックスに収容されている。この場合、比較的サイズの大きい絶縁トランスが第1電装ボックスとは別の第2電装ボックスに収容されているため、第1電装ボックスについて小型化を図ることができる。このため、第1電装ボックスを居住空間の壁部に設置しても、屋内の意匠性が損なわれるのを抑制することができる。また、第1電装ボックスを居住空間の壁部に設置することで、第1電装ボックスに収容された報知部により給電ケーブルの地絡が報知された場合、その旨をユーザに確実に知らせることができる。
【0015】
また、第1電装ボックスには、絶縁トランスの代わりに切替操作部が収容されている。切替操作部は、絶縁トランスと比べると小型であるため、かかる構成としても第1電装ボックスの小型化を図ることが可能である。また、切替操作部を第1電装ボックスに収容することにより、切替操作部用の電装ボックスを不要とすることができる。このため、絶縁トランスが収容される第2電装ボックスを設けながらも、電装ボックス全体の個数が増えるのを回避することができる。これにより、電装ボックスの個数を増やすことなく、また屋内の意匠性が損なわれるのを抑制しながら、給電ケーブルに地絡が生じた場合にその旨を確実にユーザに知らせることができる。
【0016】
第2の発明の建物の給電システムは、第1の発明において、前記第1電装ボックスと前記第2電装ボックスとは、居住空間に面した同じ壁部に取り付けられており、前記絶縁トランスは、その一部が前記壁部の内部に入り込んだ状態で前記第2電装ボックスに収容されている。
【0017】
一般に絶縁トランスは厚み寸法が大きいため、絶縁トランス全体を第2電装ボックスに収容すると、第2電装ボックスの奥行き寸法(厚み寸法)が大きくなってしまう。その場合、第2電装ボックスを壁部に取り付けると、第2電装ボックスが壁部から大きく張り出してしまうおそれがある。そこで、第2の発明では、絶縁トランスを、その一部を壁部の内部に入り込ませた状態で第2電装ボックスに収容している。この場合、第2電装ボックスの奥行き寸法を小さくすることができるため、第2電装ボックスの壁部からの張出量を小さくすることができる。そのため、第2電装ボックスを居住空間に面した壁部に取り付けても、屋内の意匠性が損なわれるのを抑制できる。
【0018】
また、第1電装ボックスと第2電装ボックスとは、居住空間に面した同じ壁部に取り付けられている。そのため、外部給電用の各部材(絶縁トランス、地絡検出部、報知部)と、給電元を切り替える切替操作部とを同じ壁部に集約させることができる。これにより、部材同士をつなぐ配線を短くできる等、本給電システムを構築し易くすることができる。
【0019】
第3の発明の建物の給電システムは、第2の発明において、前記第1電装ボックスと前記第2電装ボックスとは、前記分電盤が取り付けられた前記壁部に取り付けられている。
【0020】
第3の発明によれば、分電盤が取り付けられている壁部に第1電装ボックス及び第2電装ボックスが取り付けられている。この場合、商用電力を供給する分電盤と、外部給電用の各部材(絶縁トランス、地絡検出部、報知部)と、給電元を切り替える切替操作部とを同じ壁部に集約させることができる。これにより、本給電システムをより一層構築し易くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図3】給電ケーブルに地絡が生じた場合に流れる地絡電流を説明するための図。
【
図4】(a)は壁部に対する電装ボックスの取付状態を示す正面図、(b)は(a)のA-A線断面図。
【
図5】特許文献1の給電システムの全体構成を示す図。
【
図6】特許文献1の給電システムにおいて外部給電用装置の電気的構成を示す図。
【
図7】特許文献1の給電システムにおいて給電ケーブルに地絡が生じた場合に流れる地絡電流を説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に、本発明を具体化した一実施の形態について図面を参照しつつ説明する。なお、
図1は給電システムの全体構成を示す図である。
【0023】
図1に示すように、住宅等の建物10には分電盤11が設けられている。分電盤11には、商用電源(図示略)から送られる商用電力が引き込み線12を介して供給される。引き込み線12は、電柱に設けられた柱上トランス(図示略)から建物10側に引き込まれている。柱上トランスでは、配電線を流れるAC6600Vの高圧電力(商用電力)がAC100/200Vの低圧電圧に変換される。そして、その変換された低圧電力が引き込み線12を介して分電盤11に供給されるようになっている。なお、柱上トランスの二次側は接地(アース)されている。
【0024】
分電盤11に供給されるAC100/200Vの商用電力は、分電盤11から建物10内の複数の回路(分岐回路)に分配供給される。これら複数の回路には、リビング用の回路であるリビング回路15が含まれている。リビング回路15は、照明16、照明SW17及びコンセント18等の電気機器と、これらの電気機器16~18に接続されたユニットケーブル19とを有している。分電盤11とリビング回路15とは給電経路22を介して接続され、その給電経路22を通じて分電盤11からリビング回路15(各電気機器16~18)に商用電力が供給される。なお、給電経路22が商用給電経路に相当する。また、
図1では便宜上、建物10内の各回路のうち、リビング回路15以外の回路については図示を省略している。
【0025】
建物10には、リビング回路15に外部電源装置からの給電を可能とする外部給電系統が設けられている。これにより、本建物10では、災害等により建物10に停電が発生した場合(すなわち商用電力の供給が停止された場合)に、建物10に外部電源装置を接続し、その接続状態で外部電源装置からリビング回路15に電力を供給することが可能となっている。このため、停電発生時においても、リビングの電気機器16~18を使用することが可能となっている。
【0026】
なお、リビング回路15は、非常時にも給電が可能となっていることから、非常時給電回路ということもできる。また、非常時給電回路は、必ずしもリビング回路15である必要はなく、寝室用の寝室回路等、他の回路であってもよい。また、非常時給電回路を複数設定してもよい。
【0027】
続いて、外部電源装置からリビング回路15に給電を行うための構成について説明する。
【0028】
本実施形態では、外部電源装置として、外部給電機能を有する自動車23を想定している。自動車23は、例えば車載バッテリ24を搭載したプラグインハイブリッド自動車(PHV)となっている。自動車23には、その車内にコンセント25が設けられている。コンセント25は車載バッテリ24に電気的に接続され、車載バッテリ24に蓄えられた電力をコンセント25から取り出し可能となっている。コンセント25は、建物に設けられているコンセントと同じAC100V用のコンセントとなっている。そのため、コンセント25には、ドライヤ等の電気機器(家電機器)を接続可能となっている。
【0029】
自動車23は、給電ケーブル27を介して建物10に接続可能となっている。給電ケーブル27は、その両端部に一対のコネクタ27a,27bを有している。これら各コネクタ27a,27bのうち、一方のコネクタ27aは自動車23のコンセント25に接続可能とされ、他方のコネクタ27bは建物10の外壁29に設けられたインレット31に接続可能とされている。これにより、給電ケーブル27のコネクタ27aが自動車23のコンセント25に接続され、かつ、コネクタ27bが建物10のインレット31に接続されることで、自動車23と建物10とが給電ケーブル27を介して電気的に接続されるようになっている。なお、屋外には建物10に隣接して自動車23の駐車スペース32が設けられ、その駐車スペース32に面した外壁29にインレット31が設けられている。また、インレット31が接続部に相当する。
【0030】
建物10には、インレット31と給電経路22とを接続する接続経路35が設けられている。接続経路35は給電経路22の中間部に接続され、その給電経路22と接続経路35との接続部分には切替スイッチ21が設けられている。この場合、切替スイッチ21とインレット31とが接続経路35を介して接続されている。
【0031】
切替スイッチ21は、手動操作により、分電盤11とリビング回路15とを接続する第1位置と、インレット31(換言すると接続経路35)とリビング回路15とを接続する第2位置との間で位置切替可能となっている。切替スイッチ21が第1位置にある場合には、分電盤11からリビング回路15に給電経路22を介して商用電力が供給される。切替スイッチ21は通常、第1位置に設定され、
図1では、切替スイッチ21が第1位置に設定された状態を示している。なお、切替スイッチ21が切替操作部に相当する。
【0032】
一方、自動車23(詳しくはコンセント25)が給電ケーブル27を介して建物10側のインレット31に接続された状態で、切替スイッチ21が第1位置から第2位置に切り替えられると、自動車23とリビング回路15とが給電ケーブル27と接続経路35と給電経路22の一部(詳しくは、給電経路22のうち、切替スイッチ21とリビング回路15とをつなぐ経路部分)とを介して電気的に接続される。この場合、自動車23側からAC100Vの電力が給電ケーブル27を介してインレット31に供給され、その供給された電力がインレット31から接続経路35と給電経路22の上記一部とを介してリビング回路15に供給される。なお、この場合、接続経路35と給電経路22の上記一部とを含んで外部給電経路が構成されている。
【0033】
ここで、本給電システムには、自動車23からリビング回路15に給電ケーブル27を介して給電(外部給電)を行っている際に、給電ケーブル27における地絡の発生を検出等する外部給電用装置40が設けられている。以下、外部給電用装置40の構成について
図2に基づき説明する。
図2は、外部給電用装置40の電気的構成を示す図である。
【0034】
図2に示すように、外部給電用装置40は、絶縁トランス41と、地絡検出部42と、警報器43と、漏電遮断器44とを有している。絶縁トランス41は、接続経路35に設けられている。絶縁トランス41は、その一次側がインレット31に接続され、その二次側が切替スイッチ21に接続されている。また、絶縁トランス41は、その大きさ(体積)が地絡検出部42、警報器43及び漏電遮断器44よりも十分に大きくなっている。
【0035】
接続経路35において絶縁トランス41の一次側は、接地経路49を介して接地(アース)されている。接地経路49には、地絡検出部42が設けられている。地絡検出部42は電流センサからなり、給電ケーブル27における地絡の発生時に接地経路49を流れる地絡電流を検出する。
【0036】
図3には、給電ケーブル27における地絡の発生時に流れる地絡電流が示されている。
図3に示すように、給電ケーブル27において地絡(一線地絡)が生じた場合には、その地絡した箇所Tと接地経路49とを通じて地絡電流が流れる。
図3には、その地絡電流が流れる電流経路が点線矢印で示されている。この場合、地絡電流が流れる電流経路は絶縁トランス41の一次側に(のみ)形成される。つまり、この場合、地絡電流が絶縁トランス41の二次側(リビング回路15側)に流れることがないため、微小電流である地絡電流を確実に接地経路49に流すことができる。これにより、地絡検出部42により地絡電流を確実に検出することができる。
【0037】
警報器43は、地絡検出部42により地絡電流が検出された場合に、給電ケーブル27における地絡の発生を報知するものである。警報器43は、例えばブザーからなり、警報音を出力することで地絡の発生を報知する。なお、警報器43としては、ブザー以外に、発光することで報知を行うランプ等の発光部を用いてもよい。地絡検出部42により地絡電流が検出されると、その検出に基づき警報器43より警報音が出力される。これにより、地絡の発生をユーザに知らせることができる。なお、警報器43が報知部に相当する。
【0038】
漏電遮断器44は、接続経路35における絶縁トランス41の二次側に設けられている。漏電遮断器44は、自動車23からリビング回路15に給電ケーブル27と接続経路35とを介して電力が供給されている際に、絶縁トランス41の二次側(リビング回路15側)で漏電が発生すると、接続経路35を遮断する。なお、図示は省略するが、接続経路35は、絶縁トランス41の二次側であってかつ漏電遮断器44の一次側となる箇所で接地されている。
【0039】
外部給電用装置40は、上述した各部材41~44を収容する電装ボックス51,52を備えている。電装ボックス51,52には、地絡検出部42と警報器43とが収容された電装ボックス51と、絶縁トランス41と漏電遮断器44とが収容された電装ボックス52とがある。各電装ボックス51,52はいずれも樹脂製の筐体からなり、同じ大きさを有して形成されている。また、電装ボックス51には、さらに切替スイッチ21が収容されている。なお、電装ボックス51が第1電装ボックスに相当し、電装ボックス52が第2電装ボックスに相当する。
【0040】
各電装ボックス51,52は、建物10内の壁部に取り付けられている。以下、壁部に対する電装ボックス51,52の取付状態について
図4に基づき説明する。
図4は、(a)が壁部に対する電装ボックス51,52の取付状態を示す正面図であり、(b)が(a)のA-A線断面図である。
【0041】
図4(a)及び(b)に示すように、壁部55は、居住空間56に面して設けられ、横並びに設けられた複数の壁パネル57を有して構成されている。居住空間56は、例えば洗面室とされている。但し、居住空間56は、廊下や居室等であってもよい。
【0042】
壁部55の壁面には、分電盤11と各電装ボックス51,52とが取り付けられている。分電盤11は壁部55の上部に配置され、電装ボックス51,52は分電盤11よりも下方に配置されている。詳しくは、分電盤11と各電装ボックス51,52とは、壁部55における同じ壁パネル57に取り付けられている。また、各電装ボックス51,52は、壁部55の幅方向に並んで配置されている。なお、接続経路35や接地経路49を構成する配線は壁部55の内部を通じて配設されている。
【0043】
電装ボックス51には、その前面部(前板部)に2つの開口部58,59が形成されている。これらの開口部58,59のうち、開口部58は警報器43に対応する位置に形成され、その開口部58を通じて警報器43から警報音が出力される。また、開口部59は切替スイッチ21に対応する位置に形成され、その開口部59を通じて切替スイッチ21による切替操作が可能となっている。なお、電装ボックス52の前面部には開口部が一切設けられていない。
【0044】
電装ボックス52に収容された絶縁トランス41は、壁部55の厚み方向の寸法L1が電装ボックス52の奥行き寸法L2(厚み寸法)よりも大きくなっている。絶縁トランス41は、その一部が壁部55の内部に入り込んだ状態(埋設された状態)で電装ボックス52に収容されている。詳しくは、電装ボックス52の背面部(背板部)には絶縁トランス41が挿通される挿通孔(図示略)が形成され、その挿通孔を通じて絶縁トランス41の一部が壁部55内に入り込んでいる。また、電装ボックス52の背面部には、壁部55に入り込んだ絶縁トランス41の上記一部を囲む筒状部61が設けられている。筒状部61は、電装ボックス52と一体とされ、壁部55内に埋設されている。
【0045】
以上、詳述した本実施形態の構成によれば、以下の優れた効果が得られる。
【0046】
地絡検出部42、警報器43及び切替スイッチ21が電装ボックス51に収容され、絶縁トランス41が電装ボックス52に収容されている。この場合、比較的サイズの大きい絶縁トランス41が電装ボックス51とは別の電装ボックス52に収容されているため、電装ボックス51について小型化を図ることができる。このため、電装ボックス51を居住空間56の壁部55に設置しても、屋内の意匠性が損なわれるのを抑制することができる。また、電装ボックス51を居住空間56の壁部55に設置することで、電装ボックス51に収容された警報器43により給電ケーブル27の地絡が報知された場合、その旨をユーザに確実に知らせることができる。
【0047】
また、電装ボックス51には、絶縁トランス41の代わりに切替スイッチ21が収容されている。切替スイッチ21は、絶縁トランス41と比べると小型であるため、かかる構成としても電装ボックス51の小型化を図ることが可能である。また、切替スイッチ21を電装ボックス51に収容することにより、切替スイッチ21用の電装ボックスを不要とすることができる。このため、絶縁トランス41が収容される電装ボックス52を設けながらも、電装ボックス全体の個数が増えるのを回避することができる。これにより、電装ボックスの個数を増やすことなく、また屋内の意匠性が損なわれるのを抑制しながら、給電ケーブル27に地絡が生じた場合にその旨を確実にユーザに知らせることができる。
【0048】
一般に絶縁トランス41は厚み寸法が大きいため、絶縁トランス41全体を電装ボックス52に収容すると、電装ボックス52の奥行き寸法(厚み寸法)が大きくなってしまう。その場合、電装ボックス52を壁部に取り付けると、電装ボックス52が壁部から大きく張り出してしまうおそれがある。そこで、上記の実施形態では、絶縁トランス41を、その一部を壁部55の内部に入り込ませた状態で電装ボックス52に収容している。この場合、電装ボックス52の奥行き寸法を小さくすることができるため、電装ボックス52の壁部55からの張出量を小さくすることができる。そのため、電装ボックス52を居住空間56に面した壁部55に取り付けても、屋内の意匠性が損なわれるのを抑制できる。
【0049】
また、各電装ボックス51,52は、居住空間56に面した同じ壁部55に取り付けられている。そのため、外部給電用の各部材(絶縁トランス41、地絡検出部42、警報器43)と、給電元を切り替える切替スイッチ21とを同じ壁部55に集約させることができる。これにより、部材同士をつなぐ配線を短くできる等、本給電システムを構築し易くすることができる。
【0050】
分電盤11が取り付けられている壁部55に各電装ボックス51,52が取り付けられている。この場合、商用電力を供給する分電盤11と、外部給電用の各部材(絶縁トランス41、地絡検出部42、警報器43)と、給電元を切り替える切替スイッチ21とを同じ壁部55に集約させることができる。これにより、本給電システムをより一層構築し易くすることができる。
【0051】
本発明は上記実施形態に限らず、例えば次のように実施されてもよい。
【0052】
・上記実施形態では、分電盤11が取り付けられた壁部55に各電装ボックス51,52を取り付けたが、各電装ボックス51,52のうち少なくともいずれかを壁部55以外の壁部に取り付けてもよい。
【0053】
・上記実施形態では、居住空間56の壁部55に各電装ボックス51,52を取り付けたが、絶縁トランス41が収容された電装ボックス52については収容室等の非居住空間の壁部に取り付けてもよい。また、その場合に、電装ボックス52を、絶縁トランス41全体が収容可能な奥行き寸法で形成してもよい。そうすれば、絶縁トランス41の一部を壁部に入り込ませる必要がなくなる。また、このように電装ボックス52を大型化しても、電装ボックス52は人目に付きにくい非居住空間にあるため、屋内の意匠性が損なわれることがない。
【0054】
・上記実施形態では、外部電源装置としてプラグインハイブリッド自動車(PHV)を用いたが、電気自動車(EV)や燃料電池複合型自動車(FCHV)等、PHV以外の車両を外部電源装置として用いてもよい。また、外部電源装置としては必ずしも車両を用いる必要はなく、例えば発電機を用いてもよい。その場合、発電機と建物10とを給電ケーブルを介して接続し、その接続状態で発電機による発電電力を給電ケーブルを介して建物10側に供給するようにする。
【符号の説明】
【0055】
10…建物、11…分電盤、16~18…電気機器、21…切替操作部としての切替スイッチ、22…商用給電経路としての給電経路、23…外部電源装置としての自動車、27…給電ケーブル、31…接続部としてのインレット、41…絶縁トランス、42…地絡検出部、43…報知部としての警報器、51…第1電装ボックスとしての電装ボックス、52…第2電装ボックスとしての電装ボックス、55…壁部、56…居住空間。