(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024058951
(43)【公開日】2024-04-30
(54)【発明の名称】乾燥システム
(51)【国際特許分類】
F26B 15/00 20060101AFI20240422BHJP
F26B 21/04 20060101ALI20240422BHJP
【FI】
F26B15/00 B
F26B21/04 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022166387
(22)【出願日】2022-10-17
(71)【出願人】
【識別番号】000219314
【氏名又は名称】東レエンジニアリング株式会社
(72)【発明者】
【氏名】元井 昌司
(72)【発明者】
【氏名】西森 豊
【テーマコード(参考)】
3L113
【Fターム(参考)】
3L113AA01
3L113AB02
3L113AC07
3L113AC21
3L113AC36
3L113AC51
3L113AC67
3L113BA34
3L113CB04
3L113CB22
3L113DA26
3L113DA30
(57)【要約】
【課題】従来よりも溶剤の回収能力を向上させることができる乾燥システムを提供することを目的としている。
【解決手段】塗膜が形成された基材が内部を通過する筐体部を有し、当該筐体部に加熱したガスを導入することによって塗膜を加熱して溶剤を気化させる複数の乾燥ユニットと、前記乾燥ユニットから排出された前記溶剤を含むガスを冷却することによって、前記溶剤を液化させて回収する複数の溶剤回収ユニットと、前記乾燥ユニットと前記溶剤回収ユニットとの間でガスを循環させる循環路と、を備える乾燥システムであって、前記乾燥ユニットは、各々の前記筐体部が基材の搬送経路に沿って連通するように設けられ、複数の前記溶剤回収ユニットのうち少なくとも1組の前記溶剤回収ユニットの間には、前記溶剤回収ユニットにより冷却されたガスを他方の前記溶剤回収ユニットに送る連結路が設けられている構成とする。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗膜が形成された基材が内部を通過する筐体部を有し、当該筐体部に加熱したガスを導入することによって塗膜を加熱して溶剤を気化させる複数の乾燥ユニットと、
前記乾燥ユニットから排出された前記溶剤を含むガスを冷却することによって、前記溶剤を液化させて回収する複数の溶剤回収ユニットと、
前記乾燥ユニットと前記溶剤回収ユニットとの間でガスを循環させる循環路と、を備える乾燥システムであって、
前記乾燥ユニットは、各々の前記筐体部が基材の搬送経路に沿って連通するように設けられ、
複数の前記溶剤回収ユニットのうち少なくとも1組の前記溶剤回収ユニットの間には、前記溶剤回収ユニットにより冷却されたガスを他方の前記溶剤回収ユニットに送る連結路が設けられていることを特徴とする乾燥システム。
【請求項2】
少なくとも一部の前記溶剤回収ユニットは、前記循環路により隣接する2つ以上の前記乾燥ユニットと接続されるように設けられていることを特徴とする請求項1に記載の乾燥システム。
【請求項3】
前記連結路が、塗膜から気化する前記溶剤の量が比較的多い前記筐体部と接続される前記溶剤回収ユニットにより冷却されたガスを、塗膜から気化する前記溶剤の量が比較的少ない前記筐体部と接続される前記回収ユニットに向かって送るように形成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の乾燥システム。
【請求項4】
前記溶剤回収ユニットによる溶剤の冷却温度を制御する制御部を備えており、
前記制御部は、各々の前記溶剤回収ユニットの冷却温度を個別に制御することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の乾燥システム。
【請求項5】
前記溶剤回収ユニットは、溶剤を含むガスを冷却する冷却部を有し、
前記冷却部は、前記筐体部の上部に配置されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の乾燥システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材に形成された塗膜を、加熱して溶剤を気化させることによって乾燥させ、塗膜から気化した溶剤を回収する乾燥システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン電池は、ロールツーロールで搬送されるアルミ箔や、銅箔などのシート状の基材に対して、電極材料のスラリーを塗布して塗膜を形成し、形成した塗膜を乾燥させることで正極、負極が形成されている。なお、正極を形成する場合は、主にNMP(N‐メチル‐ピロリドン)を含有するスラリーが基材に塗布される。
【0003】
塗膜の乾燥は、塗膜を加熱して塗膜に含まれる溶剤等を気化させることによって行われている。正極を形成する場合は、塗膜から溶剤であるNMPが気化する。このNMPが、大気に放出されると環境を汚染してしまう問題がある。これに対して、塗膜の加熱、乾燥を行い、塗膜から気化したNMP(以下、溶剤と呼ぶ)を回収する設備として、
図7に示す乾燥システム900が用いられている。
【0004】
この乾燥システム900は、搬送される基材910が内部を通過する筐体部920と、筐体部920の内部に空気などのガスを加熱して供給する供給手段930と、筐体部920内のガスを排気する排気手段940と、排気手段940により排気された溶剤を含むガスを冷却することによって溶剤を液化させて回収する溶剤回収ユニット950と、を備えている。
【0005】
上記構成の乾燥システム900は、供給手段930により筐体部920内に高温のガスを供給することによって、筐体部920内で基材910上の塗膜を一定時間、高温環境にさらして塗膜を加熱する。この加熱によって、塗膜から気化した溶剤を含むガスを筐体部920内から排気手段940により排気する。そして、溶剤回収ユニット950は、排気手段940により排気された溶剤を含むガスを冷却することによって、溶剤を液化させて回収している(たとえば、下記特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上記乾燥システム900では、溶剤を十分に回収できない場合があった。
【0008】
具体的に説明する。スラリーに含まれる溶剤は、筐体部920内で塗膜が加熱されることによって気化する。従来の乾燥システム900では、1つの筐体部920内で塗膜から気化した溶剤を1つの溶剤回収ユニット950により回収していた。この溶剤回収ユニット950による溶剤の処理容量は、溶剤回収ユニット950のガスを冷却する機構のサイズに依存するため、処理容量を高めるのには限界がある。そのため、溶剤回収ユニット950は、筐体部920から排気されたガスに含まれる溶剤の量によっては、溶剤を十分に回収できない可能性があった。
【0009】
本発明は、上記問題を鑑みてされたものであり、従来よりも溶剤の回収能力を向上させることができる乾燥システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記問題を解決するための本発明の乾燥システムは、塗膜が形成された基材が内部を通過する筐体部を有し、当該筐体部に加熱したガスを導入することによって塗膜を加熱して溶剤を気化させる複数の乾燥ユニットと、前記乾燥ユニットから排出された前記溶剤を含むガスを冷却することによって、前記溶剤を液化させて回収する複数の溶剤回収ユニットと、前記乾燥ユニットと前記溶剤回収ユニットとの間でガスを循環させる循環路と、を備える乾燥システムであって、前記乾燥ユニットは、各々の前記筐体部が基材の搬送経路に沿って連通するように設けられ、複数の前記溶剤回収ユニットのうち少なくとも1組の前記溶剤回収ユニットの間には、前記溶剤回収ユニットにより冷却されたガスを他方の前記溶剤回収ユニットに送る連結路が設けられていることを特徴としている。
【0011】
上記乾燥システムによれば、ガスを送る連結路が、複数の溶剤回収ユニットのうち少なくとも1組の溶剤回収ユニットの間に設けられている。すなわち、複数の溶剤回収ユニットが連結路により連結され、連結された溶剤回収ユニットのうちいずれかの溶剤回収ユニットにより冷却されたガスを他方の溶剤回収ユニットに送ることができる。これにより、1つの溶剤回収ユニットにより溶剤を処理しきれなかったとしても、その処理しきれなかった溶剤を他方の溶剤回収ユニットにより処理することができる。すなわち、従来よりも溶剤の回収能力が向上する。
【0012】
また、少なくとも一部の前記溶剤回収ユニットは、前記循環路により隣接する2つ以上の前記乾燥ユニットと接続されるように設けられている構成としてもよい。
【0013】
この構成によれば、溶剤回収ユニットが、2つ以上の乾燥ユニットと接続されるように設けられているため、すべての乾燥ユニットに対して溶剤回収ユニットを1つずつ設ける場合に比べて溶剤回収ユニットを設置する数を削減することができる。これにより、従来よりも溶剤の回収漏れを抑制することができるとともに、従来よりも設備コストおよび稼働コストを削減することができる。
【0014】
また、前記連結路が、塗膜から気化する前記溶剤の量が比較的多い前記筐体部と接続される前記溶剤回収ユニットにより冷却されたガスを、塗膜から気化する前記溶剤の量が比較的少ない前記筐体部と接続される前記回収ユニットに向かって送るように形成されている構成としてもよい。
【0015】
この構成によれば、溶剤の処理容量を超えそうな溶剤回収ユニットで冷却したガスを、処理する溶剤の量が比較的少ない溶剤回収ユニットに送ることができるため、従来よりも溶剤の回収漏れを抑制しやすくなる。
【0016】
また、前記溶剤回収ユニットによる溶剤の冷却温度を制御する制御部を備えており、前記制御部は、各々の前記溶剤回収ユニットの冷却温度を個別に制御する構成としてもよい。
【0017】
この構成によれば、各々の溶剤回収ユニットによる冷却温度を乾燥条件に応じて制御することができるため、各々の溶剤回収ユニットによりエネルギーを過剰に消費することを防ぐことができる。
【0018】
また、前記溶剤回収ユニットは、溶剤を含むガスを冷却する冷却部を有し、前記冷却部は、前記筐体部の上部に配置される構成としてもよい。
【0019】
この構成によれば、筐体部上に冷却部を配置するため、冷却部により冷却することによって液化させられた溶剤を回収するのに重力を活用することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の乾燥システムによれば、従来よりも溶剤の回収能力を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の一実施形態における乾燥システムを有する塗布装置を概略的に示す図である。
【
図2】本発明の第一実施形態における乾燥システムを説明するための図である。
【
図3】本発明の第一実施形態における乾燥システムを説明するための図である。
【
図4】本発明の一実施形態における塗膜の温度と塗膜に含まれる溶剤の含有率の関係を示す図である。
【
図5】本発明の第二実施形態における乾燥システムを説明するための図である。
【
図6】本発明の一実施形態における乾燥システムの1つのバリエーションを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
〔第一実施形態〕
本発明の第一実施形態における乾燥システムについて図面を参照しながら説明する。なお、以下の説明では、直交座標系の3軸をX、Y、Zとし、水平方向をX軸方向、Y軸方向と表現し、XY平面と垂直な方向(つまり、鉛直方向)をZ軸方向と表現する。
【0023】
図1は、本実施形態における乾燥システム100を備える塗布装置700を概略的に示す図である。なお、
図1においては乾燥システム100の細部を省略して示している。
図2および
図3は、本実施形態における乾燥システム100を説明するための図であり、
図2(a)は乾燥システム100の一部を拡大して示す図であり、
図2(b)は溶剤回収ユニット2を拡大して示す図であり、
図3は乾燥システム100の全体を示す図である。
図4は、本実施形態における塗膜の温度と塗膜に含まれる溶剤の含有率の関係を示す図である。なお、
図4に示すAは塗膜の温度の推移を示しており、Bは塗膜に含まれる溶剤の量の推移(含有率)を示している。
【0024】
本発明の乾燥システム100を備える塗布装置700は、基材W上に電極材料のスラリー(以下、塗布液と呼ぶ)を塗布して塗膜を形成し、形成した塗膜を乾燥させることによって、リチウムイオン電池の正極または負極を形成するためのものである。この塗布装置700は、
図1に示すように基材Wを連続搬送する搬送機構71と、搬送機構71により搬送される基材上に塗布液を塗布して塗膜を形成する塗布機構72と、形成された塗膜を加熱して乾燥させる乾燥システム100と、を備えている。
【0025】
本実施形態における基材Wは、リチウムイオン電池の電池用極板となる金属箔であり、正極を構成する場合はアルミニウム箔などが用いられ、負極を構成する場合は銅箔などが用いられる。この基材Wは、一方向に長い帯状のシートであり、搬送機構71により塗布装置700を構成する各部を経由するよう搬送される。
【0026】
本実施形態における塗布液は、たとえば、活物質、バインダー、導電助剤をNMP(N‐メチル‐ピロリドン)などの溶剤により混合させたスラリーのことであり、リチウムイオン電池の電池用極板の材料(所謂、電極材料)として用いられる。この塗布液を塗布機構72により基材Wに塗布することで、塗膜が形成される。なお、以下の説明ではNMPを溶剤と呼ぶ。
【0027】
本実施形態における搬送機構71は、基材Wを搬送するためのものであり、
図1に示すように基材Wを搬送するための複数のロールにより構成される。各々のロールは、搬送する基材Wを後述する塗布機構72および筐体部11に経由させることができるように配置されている。これら複数のロールのうち一部またはすべてのロールは、図示しない制御部により回転を駆動制御され、基材Wに所定の張力を付与しながら搬送するようになっている。なお、ここでいう張力は、基材Wの搬送方向の張力のことである。また、制御部は、たとえば、汎用のコンピュータ装置によって構成される。
【0028】
塗布機構72は、搬送機構71により搬送される基材W上に塗布液を塗布して塗膜を形成するためのものである。本実施形態における塗布機構72は、
図1に示すように塗布液を塗布する塗布部73と、塗布液を貯留する塗布液タンク74と、塗布部73と塗布液タンク74とを接続する供給路75と、塗布液タンク74に貯留されている塗布液を供給路75を介して塗布部73に送液する図示しないポンプと、を有している。
【0029】
なお、本実施形態では、塗布部73が電極材料のスラリーを塗布するスリットダイであるものを例に説明するが、塗布部73はスリットダイに限らず、たとえば、グラビア塗布方式やコンマコーター塗布方式、インクジェット塗布方式に対応するものであってもよい。
【0030】
塗布部73は、基材Wの幅方向(
図1におけるY軸方向)に沿って長く形成されている。この塗布部73は、
図1に示すように基材Wを挟んで搬送機構71が有するロールの1つと対向するように配置される。そして、塗布部73に対して、ポンプにより供給路75を介して塗布液タンク74に貯留されている塗布液が供給することによって、塗布部73は供給された塗布液を基材W上に塗布する。これにより、基材Wの所定面に塗膜が形成される。
【0031】
乾燥システム100は、塗布機構72により基材W上に形成された塗膜を加熱して乾燥させ、塗膜から気化した溶剤を回収するためのものである。本実施形態における乾燥システム100は、
図2(a)に示すように塗膜を加熱する乾燥ユニット1と、乾燥ユニット1により塗膜が加熱されることによって塗膜から気化した溶剤を回収する溶剤回収ユニット2と、乾燥ユニット1と溶剤回収ユニット2との間でガスを循環させる循環路3と、を備えている。
【0032】
本実施形態におけるガスは、特に制限されず、たとえば、空気であってもよいし、N2ガスやHeガス、Arガスのような不活性ガスであってもよい。このガスは、供給手段5により供給され、塗膜の乾燥に用いられる。
【0033】
循環路3は、乾燥ユニット1と溶剤回収ユニット2との間でガスを循環させるためのものである。本実施形態における循環路3は、
図2(a)に示すように加熱部12から筐体部11にガスを送るよう接続された循環路31、筐体部11から熱交換ユニット4にガスを送るよう接続された循環路32、熱交換ユニット4から冷却部21にガスを送るよう接続された循環路33、冷却部21から熱交換ユニット4にガスを送るよう接続された循環路34、熱交換ユニット4から加熱部12にガスを送るよう接続された循環路35により構成されている。
【0034】
そして、循環路3の各所には、ガスを循環させるためのファンが設けられている。このファンにより、ガスが循環路3を介して加熱部12から筐体部11、熱交換ユニット4、冷却部21、熱交換ユニット4、加熱部12へ、というように循環する。なお、循環路3は、大量のガスを循環させることができるよう、十分な開口面積を有している。この循環路3に、供給手段5によりガスを供給することによって、乾燥ユニット1により加熱されて塗膜から気化した溶剤を含むガスにおいて溶剤の濃度が基準値を超えないように希釈している。ここでいう基準値とは、溶剤が爆発する限界値のことである。
【0035】
ここで、乾燥システム100には、循環路3により循環させられるガスを供給する供給手段5が設けられている。供給手段5は、
図2(a)に示すようにガスの供給源である供給部51と、供給部51と循環路3を接続する供給路52と、を有している。そして、図示しないファンを供給路52に設けることで、ファンにより供給路52を介して供給部51から循環路3にガスを送っている。なお、供給手段5は、乾燥システム100を構成する各部を流れるガスに含まれる溶剤の濃度が基準値を超えることがないように、乾燥システム100の動作中は循環路3にガスを送り続けるようになっている。
【0036】
また、循環路3の途中には、熱交換ユニット4が設けられている。熱交換ユニット4は、循環路3を介して乾燥ユニット1から溶剤回収ユニット2に向かうガスと、循環路3を介して溶剤回収ユニット2から乾燥ユニット1に向かうガスとの間で熱交換を行うための熱交換器である。具体的には、熱交換ユニット4は、
図2(a)に示すように筐体部11から冷却部21に向かうガスが通過するように循環路32と循環路33に接続され、冷却部21から筐体部11に向かうガスが通過するように循環路34と循環路35に接続されるように配置されている。
【0037】
そして、熱交換ユニット4は、その内部を筐体部11から冷却部21に向かうよう循環路32を通る高温のガスと冷却部21から加熱部12に向かうよう循環路34を通る低温のガスが通過することで、高温のガスと低温のガスとで熱交換を行う。これにより、筐体部11から冷却部21に向かうガスは、循環路32を通るガスよりも熱交換ユニット4を通過後の循環路33を通るガスの方が低温になり、冷却部21から加熱部12に向かうガスは、循環路34を通るガスよりも熱交換ユニット4を通過後の循環路35を通るガスの方が高温になる。すなわち、筐体部11から冷却部21に向かうガスが冷却部21に到達するまでに冷却され、冷却部21から加熱部12に向かうガスが加熱部12に到達するまでに加熱されている。
【0038】
本実施形態における乾燥ユニット1は、塗膜を加熱して乾燥させるためのものであり、搬送機構71による基材Wの搬送経路上において塗布機構72よりも下流側に設けられている。この乾燥ユニット1は、
図2(a)に示すように塗膜をその内部で加熱するための筐体部11と、筐体部11に向かうガスを加熱する加熱部12と、を有している。
【0039】
筐体部11は、
図2(a)に示すように基材Wの搬送方向に長く形成された箱体であり、搬送機構71による基材Wの搬送経路上に設けられている。この筐体部11は、内部に基材Wが通過する空間と、この空間に基材Wが出入りするための入口および出口を有している。これにより、搬送機構71により搬送される基材Wが筐体部11内を通過するようになっている。
【0040】
加熱部12は、循環路3を介して循環するガスの循環方向において筐体部11の手前に設けられ、循環路3を介して冷却部21から筐体部11に向かうガス、および循環路3を介して供給手段5から筐体部11に向かうガスを加熱するためのものである。この加熱部12は、
図2(a)に示すように循環路31により筐体部11に接続され、筐体部11に向かうガスを塗膜を加熱するために必要な温度になるまで加熱する。なお、加熱部12は、たとえば、電気ヒータや熱媒ヒータなどのヒータであるとよい。
【0041】
そして、加熱部12により加熱されて高温となったガスが循環路31を通じて図示しないノズルから筐体部11内に導入される。これにより、筐体部11内を搬送される基材W上の塗膜を高温環境にさらして加熱する。このとき、塗膜から溶剤が気化する。すなわち、筐体部11内のガスには、塗膜から気化した溶剤が含まれている。
【0042】
これら構成により乾燥ユニット1は、搬送される基材W上の塗膜を加熱し、塗膜から溶剤を気化させることができる。
【0043】
ここで、乾燥ユニット1には、筐体部11からガスを排気する排気手段6が設けられている。排気手段6は、
図2(a)に示すようにガスを排気する排気部61と、筐体部11と排気部61を接続する排気路62と、ガスを筐体部11から排気部61へと送る図示しないファンと、を備えている。この第2の排気手段6は、ファンにより排気量を調節しながら筐体部11内のガスの一部を排気路62を介して排気部61に送って排気している。
【0044】
そして、供給手段5は、少なくとも排気手段6により排気する量と同等の量のガスを供給するようになっている。筐体部11内の圧力が所定の値を維持するよう制御することができ、筐体部11内を筐体部11外に対して負圧にして筐体部11からガスが漏れ出ることを防ぐことができる。なお、供給路52を介して供給部51から循環路3に向かうガスと、排気路62を介して筐体部11から排気部61に向かうガスとの間で熱交換を行う図示しない熱交換ユニットをさらに設けてもよい。
【0045】
また、本実施形態では、上記構成を有する乾燥ユニット1が複数設けられている。これら乾燥ユニット1は、
図3に示すように基材Wの搬送経路に沿って各々の筐体部11が連通するように設けられている。そして、複数の乾燥ユニット1により塗膜の加熱を行うようになっている。これにより、塗膜が完全に乾燥する。
【0046】
溶剤回収ユニット2は、筐体部11内で塗膜から気化した溶剤を液化させて回収するためのものである。本実施形態における溶剤回収ユニット2は、
図2(b)に示すように塗膜から気化した溶剤を含むガスを冷却する冷却部21と、冷却部21により冷却されたことによって液化した溶剤を貯留する溶剤貯留部22と、冷却部21と溶剤貯留部22を接続する溶剤回収路23と、を有している。
【0047】
冷却部21は、溶剤を含むガスを冷却して溶剤を液化させるためのものである。本実施形態では、冷却部21が水冷方式を用いる冷却器であることを例に説明する。この冷却部21は、
図2(b)に示すようにガスが流れる空洞を有する本体部24と、冷媒である水が流れる冷却路25と、を有している。
【0048】
本体部24は、内部にガスが流れる空洞を有する筐体であり、
図2(a)に示すように循環路3により筐体部11と接続されている。これにより、本体部24と筐体部11の間でガスが循環する。また、冷却路25は、冷媒が流れる流路であり、
図2(b)に示すように本体部24内に設けられている。この冷却路25に冷媒を流すことによって、本体部24内のガスを冷却する。これにより、ガスに含まれる溶剤が液化する。そして、液化した溶剤は、溶剤回収路23を介して溶剤貯留部22に送られ貯留される。
【0049】
溶剤貯留部22は、液化した溶剤を貯留するためのものであり、溶剤回収路23により冷却部21と接続されている。そして、溶剤回収路23には、冷却部21から溶剤貯留部22に溶剤を送るためのポンプが設けられている。冷却部21により液化させられた溶剤は、ポンプにより溶剤回収路23を介して冷却部21から溶剤貯留部22に送られ、溶剤貯留部22に貯留される。これにより、冷却部21を流れる溶剤が回収される。
【0050】
これら構成により溶剤回収ユニット2は、筐体部11から循環路3を介して送られてきたガスに含まれる溶剤を液化させて回収することができる。そして、冷却部21により冷却されたあとのガスは、循環路3を介して再び冷却部21と筐体部11との間で循環するようになっている。
【0051】
また、本実施形態では、筐体部11上に冷却部21が配置されている。ここで、冷却部21よりも下方に位置するよう溶剤貯留部22を配置し、冷却部21から溶剤貯留部22に向かって傾斜するように溶剤回収路23を形成する。この構成によれば、液化した溶剤が重力により冷却部21から溶剤貯留部22に向かって流れやすくなる。すなわち、液化した溶剤を回収するのに重力を活用することによって、液化した溶剤を回収しやすくすることができる。これにより、溶剤回収路23に設置するポンプの数を削減することができる。なお、重力を活用することによって液化した溶剤を回収することが可能であれば、溶剤回収部23にポンプを設置しなくてもよい。また、筐体部11上に冷却部21が配置されるため、筐体部11上に冷却部21を配置しない場合よりも装置の設置に必要な床面積を削減することができる。ここで、
図2(b)に示すように冷却部21の上方に循環路33と循環路34を接続する。この構成によれば、冷却部21により液化させられた溶剤が循環路33と循環路34に流入することを防ぐことができる。
【0052】
また、本実施形態では、上記構成を有する溶剤回収ユニット2が複数設けられている。これら溶剤回収ユニット2は、
図3に示すように各々の筐体部11に循環路3を介して1つずつ接続されている。ここで、塗膜から溶剤がほぼ気化しない筐体部11には、溶剤回収ユニット2をあえて接続させていない。本実施形態では、筐体部11aおよび筐体部11hには、溶剤回収ユニット2を接続させていない。
【0053】
具体的に説明する。本実施形態における乾燥システム100による塗膜の乾燥工程は、乾燥初期、乾燥中期、および乾燥後期に分けられる。乾燥初期は、
図4に示すように塗膜の温度を比較的急速に上げる領域となり、塗膜における溶剤の含有率が含有率aのようにほぼ横ばいになる。すなわち、乾燥初期は、塗膜の温度を常温から所定の温度まで予熱する領域になっており、塗膜から溶剤が気化しにくくなっている。本実施形態では、塗膜を最初に加熱する筐体部11aによる乾燥工程が乾燥初期にあたり、溶剤を回収する必要がないため、筐体部11aには溶剤回収ユニット2を接続していない。
【0054】
乾燥中期は、
図4に示すように溶剤が気化し、塗膜における溶剤の含有率が含有率bから含有率cのように下がって塗膜が乾燥する領域である。本実施形態では、筐体部11aと筐体部11hの間に位置する筐体部11b~11gによる乾燥工程が乾燥中期にあたり、溶剤を回収する必要がある。そのため、筐体部11b~筐体部11gのそれぞれには、循環路3により溶剤回収ユニット2が1つずつ接続される。
【0055】
乾燥後期は、
図4に示すように塗膜の温度が所定温度まで上がり、塗膜中の溶剤が僅かな量となっているため、溶剤が気化しにくい領域になっている。本実施形態では、塗膜を最後に加熱する筐体部11hによる乾燥工程が乾燥後期にあたり、溶剤を回収する必要がないため、筐体部11hには溶剤回収ユニット2を接続していない。
【0056】
このように溶剤回収ユニット2を溶剤がほぼ気化せず、回収を必要としない筐体部11のために設けていないため、すべての筐体部11に溶剤回収ユニット2を接続する場合に比べて設備の設置費と設備を稼働するためのランニングコストを削減できる。
【0057】
なお、溶剤貯留部22は、複数の冷却部21に対して1つ設けてもよいし、複数の冷却部21のそれぞれに対して1つずつ設けてもよい。
【0058】
また、本実施形態における乾燥システム100には、
図3に示すように少なくとも1組の溶剤回収ユニット2の間に、ある溶剤回収ユニット2の冷却部21により冷却されたガスを他方の溶剤回収ユニット2に送る連結路26が設けられている。
【0059】
連結路26は、1組の溶剤回収ユニット2の間を連結する配管であり、本実施形態では
図3に示すように各々の溶剤回収ユニット2の冷却部21を連結するように複数設けられている。具体的には、
図3に示すように冷却部21aと冷却部21bを連結する連結路26a、冷却部21bと冷却部21cを連結する連結路26b、冷却部21cと冷却部21dを連結する連結路26c、冷却部21dと冷却部21eを連結する連結路26d、冷却部21eと冷却部21fを連結する連結路26eが設けられている。これら連結路26により、1組の溶剤回収ユニット2として複数の溶剤回収ユニット2が連結されている。
【0060】
そして、各々の連結路26には、ガスを送るための図示しないファンが設けられている。これらファンは、塗膜から気化する溶剤の量が比較的に多い筐体部11と接続される冷却部21により冷却されたガスを、塗膜から気化する溶剤の量が比較的に少ない筐体部11と接続される冷却部21に向かって送るよう構成されている。本実施形態では、
図4に示すように筐体部11b~11gの順に塗膜から気化する溶剤の量が少なくなる。そのため、ファンによりガスが冷却部21a~21fの順に連結路26を介して送られるようになっている。すなわち、各々の冷却部21により冷却されたガスの一部が、より下流側に位置する冷却部21に向かって送られる。
【0061】
そして、各々の冷却部21から1つ下流側に位置する冷却部21に送られたガスに溶剤が含まれていた場合、その下流側に位置する冷却部21が溶剤の処理を行う。ここでいう溶剤の処理とは、溶剤を含むガスを冷却して溶剤を液化させることであり、以下の説明でも同様に扱う。
【0062】
これら構成により、連結路26により連結される冷却部21のいずれかにおいて溶剤を処理しきれなかった場合であっても、その冷却部21よりも下流側に位置する冷却部21により溶剤を処理することができる。すなわち、下流側に位置する冷却部21により上流側に位置する冷却部21による溶剤の処理をカバーすることができる。
【0063】
また、本実施形態における溶剤回収ユニット2には、
図3に示すように冷却部21からガスを排気するガス排気部27が設けられている。この排気部27は、冷却部21内のガスを排気する開口であり、連結路26を介して冷却部21間を流れるガスが最後に行き着く冷却部21に設けられている。本実施形態では、連結路により連結される冷却部21のうち最も下流側に位置する冷却部21fに設けられている。これにより、冷却部21f内のガスの一部が排気部27から排気される。
【0064】
ここで、供給手段5は、少なくとも排気部62からのガスの排気量と排気部27からのガスの排気量(排気部27が設けられていない冷却部21の場合、連結路26を介して他方の冷却部21に向けて送るガスの量)とを合わせたガスの量と同等の量のガスを各々の冷却部21と各々の筐体部11とを接続する循環路3に供給するようになっている。これにより、乾燥システム100の各部の圧力を所定の値に維持するよう制御することができる。
【0065】
また、本実施形態における冷却部21の冷却温度は、制御部により制御される。すなわち、冷却部21の冷却路25に流す冷媒の温度を調節する図示しない温調機構による冷媒の温度調節を制御部により制御する。ここで、制御部は、前述したものと同様に、たとえば汎用のコンピュータ装置により構成される。そして、制御部は、塗膜の乾燥条件に合わせて各々の冷却部21の冷却路25に流す冷媒の温度を個別に制御できるようになっている。
【0066】
このように上記実施形態における乾燥システム100は、従来よりも溶剤の回収能力を向上させることができる。
【0067】
具体的に説明する。
図7に示すような従来の乾燥システム900では、1つの筐体部920から排気手段940により排気された溶剤を含むガスを、1つの溶剤回収ユニット950により冷却することによって溶剤を液化させて回収を行っていた。この溶剤回収ユニット950による溶剤の処理容量は、溶剤回収ユニット950のガスを冷却する機構のサイズ(上記実施形態における冷却部21のサイズ)に依存するため、処理容量を高めるのには限界がある。そのため、溶剤回収ユニット950は、筐体部920から排気されるガスに含まれる溶剤の量によっては、十分に溶剤を回収することができない場合がある。仮に、溶剤を十分に回収することができなかった場合、筐体部920内におけるガスに含まれる溶剤の濃度が、溶剤回収ユニット950で処理しきれずに循環路3を介して送られてきた溶剤と新たに筐体部920内で塗膜から気化した溶剤とで基準値を超えてしまう可能性がある。
【0068】
これに対して本実施形態における乾燥システム100では、1組の溶剤回収ユニット2の間に連結路26を設け、連結路26により連結された複数の溶剤回収ユニット2のうちいずれかの溶剤回収ユニット2の冷却部21により冷却されたガスを他方の溶剤回収ユニット2の冷却部21に送っている。そのため、1つの溶剤回収ユニット2により溶剤を処理しきれなかったとしても、その処理しきれなかった溶剤を他方の溶剤回収ユニット2により処理することができる。すなわち、本実施形態における乾燥システム100は、従来よりも溶剤の回収能力が向上している。
【0069】
また、本実施形態では、塗膜から気化する溶剤の量が比較的多い筐体部11と接続される冷却部21により冷却されたガスを、塗膜から気化する溶剤の量が比較的少ない筐体部11と接続される冷却部21に向かって連結路26を介して送っている。これにより、溶剤の回収能力をより向上させることができるようになっている。
【0070】
具体的に説明する。
図4に示すように乾燥中期において各々の筐体部11内で塗膜から気化する溶剤の量は異なっており、乾燥初期の筐体部11aと隣接する筐体部11b内で気化する溶剤の量が最も多く、乾燥後期の筐体部11hと隣接する筐体部11gに向かうにつれて少なくなるようになっている。すなわち、筐体部11bと接続される溶剤回収ユニット2aの冷却部21aにより処理する溶剤の量が最も多く、溶剤回収ユニット2aよりも下流側の溶剤回収ユニット2に向かうにつれて各々の冷却部21により処理する溶剤の量が少なくなっている。そのため、上流側に位置する溶剤回収ユニット2では、より下流側に位置する溶剤回収ユニット2よりも溶剤の処理容量を超えやすくなっている。一方、下流側に位置する溶剤回収ユニット2では、より上流側に位置する溶剤回収ユニット2よりも溶剤の処理容量に余裕がある状態になっている。
【0071】
これに対して本実施形態における乾燥システム100では、最も上流側に位置する溶剤回収ユニット2から最も下流側に位置する溶剤回収ユニット2に向かって連結路26を介してガスを流している。すなわち、処理容量に余裕のない溶剤回収ユニット2から処理容量に余裕のある溶剤回収ユニット2にガスを流し、溶剤の処理をカバーさせている。これにより、十分な量の溶剤をより回収しやすくなる。すなわち、本実施形態における乾燥システム100の溶剤の回収能力をより向上させることができる。
【0072】
また、各々の溶剤回収ユニット2の冷却部21により冷却されたガスが、その冷却部21よりも下流側の冷却部21に連結路26を介して送られるため、下流側に位置する冷却部21内の温度を下げることができる。これにより、連結路26がない場合と比べて下流側に位置する冷却部21による冷却温度を所望の温度に下げるために必要なエネルギーを削減することができる。すなわち、従来よりも消費するエネルギーを削減することができ、稼働コストをより削減することができる。
【0073】
また、本実施形態における乾燥システム100は、各々の溶剤回収ユニット2の冷却部21の冷却温度を制御部により個別に制御しているため、溶剤を処理する際に過剰にエネルギーを消費することを防ぐことができる。
【0074】
具体的に説明する。前述のとおり各々の筐体部11内で塗膜から気化する溶剤の量は異なっているため、各々の溶剤回収ユニット2により回収すべき溶剤の量も異なっている。これに対して、各々の溶剤回収ユニット2の冷却部21の冷却温度を一律に制御した場合、ガスを過剰に冷却する冷却部21がでてくる可能性がある。すなわち、過剰にエネルギーを消費する可能性がある。
【0075】
一方、本実施形態では、制御部により各々の溶剤回収ユニット2の冷却部21による冷却温度を個別に制御することができるため、各々の溶剤回収ユニット2で回収すべき量の溶剤を処理できる程度の冷却温度に各々の冷却部21の冷却温度に制御することができる。これにより、溶剤を処理する際に過剰にエネルギーを消費することを防ぐことができる。
【0076】
また、ある筐体部11内で塗膜から気化する溶剤の量があまりにも少ない場合は、その筐体部11に接続される冷却部21を稼働させないよう制御部により制御を行い、その冷却部21よりも下流側に位置する冷却部21に溶剤を処理させてもよい。この場合、冷却部21を1つ稼働させないため、稼働コストをより削減することができる。
【0077】
〔第二実施形態〕
次に本発明の第二実施形態における乾燥システム100について
図5を用いて説明する。本実施形態における乾燥システム100は、溶剤回収ユニット2が2つ以上の筐体部11と接続されるように設けられている点で第一実施形態と異なっている。なお、以下の説明では、第一実施形態と同様の点について具体的説明を省略し、相違する部分を中心に説明する。
【0078】
図5は、本発明の第二実施形態における乾燥システム100を説明するための図であり、乾燥システム100の一部を拡大して示している。
【0079】
本実施形態における乾燥システム100は、
図5に示すように冷却部21が2つの筐体部11と循環路3により接続されるように設けられている。すなわち、溶剤回収ユニット2が2つの乾燥ユニット1に共用されるようになっている。以下、本実施形態における乾燥システム100について筐体部11bを有する乾燥ユニット1と筐体部11cを有する乾燥ユニット1に共用される溶剤回収ユニット2を例に具体的に説明する。
【0080】
溶剤回収ユニット2の冷却部21aは、
図5に示すように循環路32aおよび循環路33aにより筐体部11bと接続され、循環路32bおよび33bにより筐体部11cと接続される。すなわち、冷却部21aは、隣り合った2つの筐体部11に接続される。
【0081】
そして、冷却部21aは、循環路32aおよび循環路33aを介して筐体部11bから送られてきたガスと、循環路32bおよび循環路33bを介して筐体部11cから送られてきたガスを冷却することによって、ガスに含まれる溶剤を液化させる。その後、冷却部21aにより液化させられた溶剤は溶剤貯留部22に貯留される。冷却されたガスは、循環路3を介して再び筐体部11bと筐体部11cと冷却部21a間を循環、および連結路26を介して連結される他方の冷却部21に送られる。
【0082】
このように上記実施形態における乾燥システム100は、従来よりも溶剤の回収漏れを抑制することができる、すなわち、従来よりも溶剤の回収能力を向上させるとともに、従来よりも設備コストおよび稼働コストを削減することができる。
【0083】
具体的には、溶剤回収ユニット2が、2つ以上の筐体部11と接続されるように設けられているため、すべての筐体部11に対して溶剤回収ユニット2を1つずつ設ける場合に比べて溶剤回収ユニット2を設置する数を削減することができる。これにより、従来よりも設備コストおよび稼働コストを削減することができる。
【0084】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述したが、各実施形態における構成およびそれらの組み合わせ等は一例であり、本発明の趣旨から逸脱しない範囲内で、構成の付加、省略、置換、およびその他の変更が可能である。たとえば、上記実施形態では、1組の溶剤回収ユニット2を例に説明したが、2組であってもよいし、それ以上であってもよい。
【0085】
また、連結路26は、必ずしも隣接する冷却部21同士を連結するものでなくてもよい。たとえば、各々の冷却部21の溶剤の処理容量に応じて連結路26による連結先を選択すればよい。具体的には、
図6に示すように塗膜から気化する溶剤の量が最も多い筐体部11bと接続される冷却部21aと、塗膜から気化する溶剤の量が最も少ない筐体部11gと接続される冷却部21fとを連結路26により連結する。この場合、塗膜から気化する溶剤の量が2番目に多い筐体部11cと接続される冷却部21bを、塗膜から気化する溶剤の量が2番目に少ない筐体部11fと接続される冷却部21に連結路26により連結し、塗膜から気化する溶剤の量が3番目に多い筐体部11dと接続される冷却部21cを、塗膜から気化する溶剤の量が3番目に少ない筐体部11eと接続される冷却部21dに連結路26により連結する。すなわち、処理容量の余裕度に応じて冷却部21の連結先を選択している。これにより、より処理容量に余裕のない冷却部21による溶剤の処理をより処理容量に余裕のある冷却部21によりカバーさせることができる。
【0086】
また、乾燥中期において各々の筐体部11内で塗膜から気化する溶剤の量は、必ずしも乾燥初期から乾燥後期に向かうにつれて少なくなるとは限らない。この場合、各々の冷却部21の溶剤の処理容量に応じて連結路26による連結先を選択すればよい。
【符号の説明】
【0087】
100 乾燥システム
1 乾燥ユニット
11 筐体部
12 加熱部
2 溶剤回収ユニット
21 冷却部
22 溶剤貯留部
23 溶剤回収路
24 本体部
25 冷却路
26 連結路
27 排気部
3 循環路
4 熱交換ユニット
5 供給手段
51 供給部
52 供給路
6 排気手段
61 排気部
62 排気路
700 塗布装置
71 搬送機構
72 塗布機構
73 塗布液タンク
74 供給路