(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024058963
(43)【公開日】2024-04-30
(54)【発明の名称】カーボンナノチューブ回収装置およびカーボンナノチューブ製造装置ならびにカーボンナノチューブの回収方法
(51)【国際特許分類】
D01F 9/133 20060101AFI20240422BHJP
C01B 32/16 20170101ALI20240422BHJP
C01B 32/184 20170101ALI20240422BHJP
D01F 9/12 20060101ALI20240422BHJP
【FI】
D01F9/133
C01B32/16
C01B32/184
D01F9/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022166412
(22)【出願日】2022-10-17
(71)【出願人】
【識別番号】306039120
【氏名又は名称】DOWAサーモテック株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】507046521
【氏名又は名称】株式会社名城ナノカーボン
(71)【出願人】
【識別番号】000108993
【氏名又は名称】株式会社大阪ソーダ
(74)【代理人】
【識別番号】100101557
【弁理士】
【氏名又は名称】萩原 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100096389
【弁理士】
【氏名又は名称】金本 哲男
(74)【代理人】
【識別番号】100167634
【弁理士】
【氏名又は名称】扇田 尚紀
(74)【代理人】
【識別番号】100187849
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 隆史
(72)【発明者】
【氏名】藤田 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】橋本 剛
(72)【発明者】
【氏名】高野 慶
(72)【発明者】
【氏名】香川 尚人
【テーマコード(参考)】
4G146
4L037
【Fターム(参考)】
4G146AA11
4G146AB06
4G146AC01A
4G146AC01B
4G146BC08
4G146DA03
4G146DA45
4L037CS04
4L037CT22
4L037FA03
4L037FA04
4L037PA11
4L037PA24
(57)【要約】
【課題】カーボンナノチューブの量産製造時において、所望量のカーボンナノチューブを製造するまでの時間を短縮することが可能なカーボンナノチューブ回収装置およびカーボンナノチューブの製造装置ならびにカーボンナノチューブの製造方法を提供する。
【解決手段】カーボンナノチューブ生成装置2で生成されたカーボンナノチューブを回収するカーボンナノチューブ回収装置3において、巻取室30と、回収室40と、回収室40内に供給されたガスを排出する第1排気ライン61と、巻取室30内に供給されたガスを排出する第2排気ライン70と、を設け、回収室40は、巻取室30と通じる第1開口部51を有し、第1開口部51を開閉する開閉機構53を設け、第1排気ライン61からの排気と、第2排気ライン70からの排気と、第1排気ライン61及び第2排気ライン70の両方からの排気とを変更可能に構成する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カーボンナノチューブ生成装置で生成されたカーボンナノチューブを回収するカーボンナノチューブ回収装置であって、
前記カーボンナノチューブを巻き取る巻取室と、
前記巻取室よりも下方に設けられ、前記カーボンナノチューブを回収する回収室と、
前記回収室内に供給されたガスを排出する第1排気ラインと、
前記第1排気ラインが接続される排気口と、
前記巻取室内に供給されたガスを排出する第2排気ラインと、を有し、
前記巻取室は、
前記カーボンナノチューブを巻き取る巻取部材と、
前記第2排気ラインが接続される排気口と、を有し、
前記回収室は、前記巻取室と通じる第1開口部を有し、
前記第1開口部を開閉する開閉機構が設けられ、
前記第1排気ラインからの排気と、前記第2排気ラインからの排気と、前記第1排気ライン及び前記第2排気ラインの両方からの排気とを変更可能に構成されていることを特徴とする、カーボンナノチューブ回収装置。
【請求項2】
前記第1排気ラインと前記第2排気ラインの動作を制御する制御部を備え、
前記制御部は、
前記第1開口部が開口した状態で前記カーボンナノチューブを巻き取って形成した巻回体を前記回収室に貯蔵する工程において、少なくとも前記第1排気ラインからの排気を行い、
前記第1開口部が閉口した状態で前記回収室内の前記カーボンナノチューブを回収する工程において、少なくとも前記第2排気ラインからの排気を行う制御を実行するように構成されていることを特徴とする、請求項1に記載のカーボンナノチューブ回収装置。
【請求項3】
前記排気口は、前記巻取部材よりも下方に位置していることを特徴とする、請求項1または2に記載のカーボンナノチューブ回収装置。
【請求項4】
前記第2排気ラインは、
排ガス中の前記カーボンナノチューブを捕集するフィルターと、
前記フィルターに付着した前記カーボンナノチューブを剥離させる清掃機構と、を有すること特徴とする、請求項1または2に記載のカーボンナノチューブ回収装置。
【請求項5】
前記巻取室内に供給されたガスを排出する第3排気ラインを有し、
前記第2排気ラインからの排気と前記第3排気ラインからの排気とを変更可能に構成されていることを特徴とする、請求項4に記載のカーボンナノチューブ回収装置。
【請求項6】
前記回収室の内部に、該回収室に対して着脱自在に設置されたメッシュ状の回収カゴが設けられることを特徴とする、請求項1または2に記載のカーボンナノチューブ回収装置。
【請求項7】
前記回収室内に貯蔵された前記カーボンナノチューブを圧縮する圧縮機構を備えることを特徴とする、請求項1または2に記載のカーボンナノチューブ回収装置。
【請求項8】
前記回収室は、
ハウジングと、
前記ハウジングの下方に設けられた貯蔵容器と、を有し、
前記ハウジングには、前記第1開口部と、前記開閉機構と、前記貯蔵容器と通じる第2開口部と、が設けられ、
前記貯蔵容器は、前記ハウジングに対して着脱自在に取り付けられていることを特徴とする、請求項1または2に記載のカーボンナノチューブ回収装置。
【請求項9】
カーボンナノチューブを生成する生成装置と、
請求項1または2に記載のカーボンナノチューブ回収装置と、を有することを特徴とする、カーボンナノチューブ製造装置。
【請求項10】
請求項1に記載のカーボンナノチューブ回収装置を用いたカーボンナノチューブの回収方法であって、
前記第1開口部が開口した状態で、カーボンナノチューブ生成装置で生成されたカーボンナノチューブを巻き取って形成した巻回体を前記回収室に貯蔵する貯蔵工程と、
前記第1開口部が閉口した状態で、前記回収室内の前記カーボンナノチューブを回収する回収工程と、を有し、
前記貯蔵工程において、少なくとも前記第1排気ラインからの排気を行い、
前記回収工程において、少なくとも前記第2排気ラインからの排気を行うことを特徴とする、カーボンナノチューブ回収方法。
【請求項11】
前記カーボンナノチューブを巻き取る巻取部材よりも下方で、前記第2排気ラインによる排気を行うことを特徴とする、請求項10に記載のカーボンナノチューブ回収方法。
【請求項12】
前記第2排気ラインに設けられたフィルターに付着した前記カーボンナノチューブを剥離させる清掃機構を用いて、前記フィルターの内面を定期的に清掃することを特徴とする、請求項10または11に記載のカーボンナノチューブ回収方法。
【請求項13】
前記フィルターの清掃または前記フィルターの交換作業を行う際に、前記第2排気ラインに代えて第3排気ラインを使用することを特徴とする、請求項12に記載のカーボンナノチューブ回収方法。
【請求項14】
前記貯蔵工程において、前記回収室の内部に設置されたメッシュ状の回収カゴに前記カーボンナノチューブを貯蔵し、
前記回収工程において、前記カーボンナノチューブが貯蔵された前記回収カゴを、他の回収カゴと交換することを特徴とする、請求項10または11に記載のカーボンナノチューブ回収方法。
【請求項15】
前記貯蔵工程において、前記回収室内に貯蔵された前記カーボンナノチューブを圧縮することを特徴とする、請求項10または11に記載のカーボンナノチューブ回収方法。
【請求項16】
前記回収室は、ハウジングと、前記ハウジングの下方において該ハウジングに対して着脱自在に取り付けられた貯蔵容器と、を有し、
前記回収工程において、前記ハウジングから前記貯蔵容器を取り外して、前記貯蔵容器内の前記カーボンナノチューブを回収することを特徴とする、請求項10または11に記載のカーボンナノチューブ回収方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーボンナノチューブを回収するカーボンナノチューブ回収装置およびそのカーボンナノチューブ回収装置を有するカーボンナノチューブ製造装置ならびにカーボンナノチューブの回収方法に関する。
【背景技術】
【0002】
カーボンナノチューブは、導電性、熱伝導性、機械的強度等の優れた特性を有することから、多くの分野で注目されている新素材である。カーボンナノチューブの製造装置として、特許文献1には、炭素を含む原料(炭素源)を熱分解させてカーボンナノチューブを生成する化学気相成長法(すなわちCVD法)を用いた製造装置が知られている。
【0003】
また、特許文献2には、CVD法によるカーボンナノチューブの生成を行う反応炉の回収部内、又はその近傍に、カーボンナノチューブの回収装置を設けることが開示されている。特許文献2に記載の回収装置は、カーボンナノチューブを巻き取る巻取部材を回転させることでカーボンナノチューブをロール状に巻き取って巻回体を形成し、その巻回体を回収部に設けられた取り出し口から取り出してカーボンナノチューブを回収している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-064918号公報
【特許文献2】特開2004-190166号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献2に記載のカーボンナノチューブの回収装置においては、カーボンナノチューブの巻回体が所定の径になった段階で回収部から巻回体を取り出している。そのため、カーボンナノチューブの巻回体を1つ製造する毎に、カーボンナノチューブの生成装置を停止し、かつ、製造された巻回体を回収するために反応炉と回収部を常温まで降温させる必要がある。また、カーボンナノチューブの生成を再開する際には、反応炉内の雰囲気温度をカーボンナノチューブの生成に適した温度まで昇温させる必要がある。
【0006】
すなわち、特許文献2に記載のカーボンナノチューブの回収装置では、カーボンナノチューブを回収する都度、反応炉の降温と再昇温が必要となり、反応炉でカーボンナノチューブを生成できない時間が長くなる。このため、カーボンナノチューブを量産製造する場合には、所望量のカーボンナノチューブの製造が完了するまでに長い時間を要していた。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、カーボンナノチューブの量産製造時において、所望量のカーボンナノチューブを製造するまでの時間を短縮することが可能なカーボンナノチューブ回収装置およびカーボンナノチューブの製造装置ならびにカーボンナノチューブの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題を解決するために、カーボンナノチューブの生成装置と回収装置との間で雰囲気を遮断することによって、生成装置を降温させずにカーボンナノチューブを回収できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
上記課題を解決する本発明の一態様を以下に開示する。
[1]カーボンナノチューブ生成装置で生成されたカーボンナノチューブを回収するカーボンナノチューブ回収装置であって、
前記カーボンナノチューブを巻き取る巻取室と、
前記巻取室よりも下方に設けられ、前記カーボンナノチューブを回収する回収室と、
前記回収室内に供給されたガスを排出する第1排気ラインと、
前記第1排気ラインが接続される排気口と、
前記巻取室内に供給されたガスを排出する第2排気ラインと、を有し、
前記巻取室は、
前記カーボンナノチューブを巻き取る巻取部材と、
前記第2排気ラインが接続される排気口と、を有し、
前記回収室は、前記巻取室と通じる第1開口部を有し、
前記第1開口部を開閉する開閉機構が設けられ、
前記第1排気ラインからの排気と、前記第2排気ラインからの排気と、前記第1排気ライン及び前記第2排気ラインの両方からの排気とを変更可能に構成されていることを特徴とする、カーボンナノチューブ回収装置。
[2]前記第1排気ラインと前記第2排気ラインの動作を制御する制御部を備え、
前記制御部は、
前記第1開口部が開口した状態で前記カーボンナノチューブを巻き取って形成した巻回体を前記回収室に貯蔵する工程において、少なくとも前記第1排気ラインからの排気を行い、
前記第1開口部が閉口した状態で前記回収室内の前記カーボンナノチューブを回収する工程において、少なくとも前記第2排気ラインからの排気を行う制御を実行するように構成されていることを特徴とする、[1]に記載のカーボンナノチューブ回収装置。
[3]前記排気口は、前記巻取部材よりも下方に位置していることを特徴とする、[1]または[2]に記載のカーボンナノチューブ回収装置。
[4]前記第2排気ラインは、
排ガス中の前記カーボンナノチューブを捕集するフィルターと、
前記フィルターに付着した前記カーボンナノチューブを剥離させる清掃機構と、を有すること特徴とする、[1]~[3]のいずれかに記載のカーボンナノチューブ回収装置。
[5]前記巻取室内に供給されたガスを排出する第3排気ラインを有し、
前記第2排気ラインからの排気と前記第3排気ラインからの排気とを変更可能に構成されていることを特徴とする、[1]~[4]のいずれかに記載のカーボンナノチューブ回収装置。
[6]前記回収室の内部に、該回収室に対して着脱自在に設置されたメッシュ状の回収カゴが設けられることを特徴とする、[1]~[5]のいずれかに記載のカーボンナノチューブ回収装置。
[7]前記回収室内に貯蔵された前記カーボンナノチューブを圧縮する圧縮機構を備えることを特徴とする、[1]~[6]のいずれかに記載のカーボンナノチューブ回収装置。
[8]前記回収室は、
ハウジングと、
前記ハウジングの下方に設けられた貯蔵容器と、を有し、
前記ハウジングには、前記第1開口部と、前記開閉機構と、前記貯蔵容器と通じる第2開口部と、が設けられ、
前記貯蔵容器は、前記ハウジングに対して着脱自在に取り付けられていることを特徴とする、[1]~[7]のいずれかに記載のカーボンナノチューブ回収装置。
[9]カーボンナノチューブを生成する生成装置と、
[1]~[8]のいずれかに記載のカーボンナノチューブ回収装置と、を有することを特徴とする、カーボンナノチューブ製造装置。
[10] [1]に記載のカーボンナノチューブ回収装置を用いたカーボンナノチューブの回収方法であって、
前記第1開口部が開口した状態で、カーボンナノチューブ生成装置で生成されたカーボンナノチューブを巻き取って形成した巻回体を前記回収室に貯蔵する貯蔵工程と、
前記第1開口部が閉口した状態で、前記回収室内の前記カーボンナノチューブを回収する回収工程と、を有し、
前記貯蔵工程において、少なくとも前記第1排気ラインからの排気を行い、
前記回収工程において、少なくとも前記第2排気ラインからの排気を行うことを特徴とする、カーボンナノチューブ回収方法。
[11]前記カーボンナノチューブを巻き取る巻取部材よりも下方で、前記第2排気ラインによる排気を行うことを特徴とする、[10]に記載のカーボンナノチューブ回収方法。
[12]前記第2排気ラインに設けられたフィルターに付着した前記カーボンナノチューブを剥離させる清掃機構を用いて、前記フィルターの内面を定期的に清掃することを特徴とする、[10]または[11]に記載のカーボンナノチューブ回収方法。
[13]前記フィルターの清掃または前記フィルターの交換作業を行う際に、前記第2排気ラインに代えて第3排気ラインを使用することを特徴とする、[12]に記載のカーボンナノチューブ回収方法。
[14]前記貯蔵工程において、前記回収室の内部に設置されたメッシュ状の回収カゴに前記カーボンナノチューブを貯蔵し、
前記回収工程において、前記カーボンナノチューブが貯蔵された前記回収カゴを、他の回収カゴと交換することを特徴とする、[10]~[13]のいずれかに記載のカーボンナノチューブ回収方法。
[15]前記貯蔵工程において、前記回収室内に貯蔵された前記カーボンナノチューブを圧縮することを特徴とする、[10]~[14]のいずれかに記載のカーボンナノチューブ回収方法。
[16]前記回収室は、ハウジングと、前記ハウジングの下方において該ハウジングに対して着脱自在に取り付けられた貯蔵容器と、を有し、
前記回収工程において、前記ハウジングから前記貯蔵容器を取り外して、前記貯蔵容器内の前記カーボンナノチューブを回収することを特徴とする、[10]~[15]のいずれかに記載のカーボンナノチューブ回収方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、カーボンナノチューブの量産製造時において、所望量のカーボンナノチューブを製造するまでの時間を短縮することが可能なカーボンナノチューブ回収装置およびカーボンナノチューブの製造装置ならびにカーボンナノチューブの製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】第1実施形態に係るカーボンナノチューブ製造装置の概略構成を示す説明図である。
【
図2】カーボンナノチューブの巻取構造を説明するための図である。
【
図3】巻取部材が引抜位置に移動した状態を示す図である。
【
図4】メッシュ状の回収カゴを説明するための図である。
【
図5】第2排気ラインのフィルター清掃機構を説明するための図である。
【
図6】フィルター清掃機構の他の構成例を説明するための図である。
【
図7】カーボンナノチューブの回収方法を説明するための図である。
【
図8】第2排気ラインに不燃性ガス供給機構を設けた例を示す図である。
【
図9】第2排気ラインからの排気が開始される前の配管内のガスパージについて説明するための図である。
【
図10】第3排気ラインを説明するための図である。
【
図11】第2排気ラインの使用時における排ガスの流れと第3排気ラインの使用時における排ガスの流れについて説明するための図である。
【
図12】第2排気ラインと第3排気ラインに不燃性ガス供給機構を設けた例を示す図である。
【
図13】第2排気ライン又は第3排気ラインからの排気が開始される前の配管内のガスパージについて説明するための図である。
【
図14】カーボンナノチューブの圧縮機構を説明するための図である。
【
図15】
図14の圧縮機構を用いた場合の貯蔵容器の搬送状態を示す図である。
【
図16】第2実施形態に係るカーボンナノチューブ製造装置の概略構成を示す説明図である。
【
図17】カーボンナノチューブの回収方法を説明するための図である。
【
図18】反応炉が巻取室の側面部に設置されたカーボンナノチューブ製造装置の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能構成を有する要素においては、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0013】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係るカーボンナノチューブ(以下、「CNT」と称す)を製造するCNT製造装置1の概略構成を示す説明図である。なお、本明細書におけるCNTは、チューブ状の炭素同素体(典型的には、グラファイト構造の円筒型構造物)であり、いわゆる単層CNT、多層CNT、あるいはチューブ先端が角状のカーボンナノホーンを含むものである。CNT製造装置1は、特に、単層CNTの製造に好適に用いられる。
【0014】
図1に示すように、CNT製造装置1は、CNTを生成する生成装置2と、CNT生成装置2の下端部に設けられたCNTを回収する回収装置3を有している。なお、図中の“X方向”は回収装置3の奥行き方向であり、“Y方向”は回収装置3の幅方向であり、“Z方向”は回収装置3の高さ方向である。各方向X~Zは互いに垂直な方向である。
【0015】
<カーボンナノチューブ生成装置>
生成装置2の装置構成は、CNTを生成可能であれば特に限定されない。このため、生成装置2としては、例えば特許文献1や特許文献2のように炭素を含む原料ガスを熱分解させてCNTを生成する化学気相成長法(すなわちCVD法)を用いた装置を適用できる。
【0016】
図1に例示された生成装置2は、反応炉21と、反応炉21の側方に設けられたヒータ22と、CNT生成のための原料を反応炉21に供給する原料供給口23を有している。
【0017】
反応炉21の形状は限定されないが、例えば直管状(すなわち、軸が直線状に延びる形状)であることが好ましい。また、反応炉21の断面形状は、円形、楕円形、卵型、長円形等の丸みを帯びた形状、あるいは多角形状であってもよい。
【0018】
ヒータ22の形状や加熱方式は、反応炉21をCNTの生成に適した温度に加熱可能であれば特に限定されない。ヒータ22は、反応炉21を例えば500℃~2000℃、好ましくは1000℃~1600℃に加熱可能であればよい。ヒータ22の具体例としては、反応炉21を500℃~2000℃に加熱可能なタングステンヒータまたは600~1600℃に加熱可能な炭化珪素ヒータ(SiCヒータ)がある。
【0019】
原料供給口23には、炭素源となるガスや触媒金属または触媒金属化合物などの原料と共に、例えば水素ガスのようなキャリアガスも供給される。
【0020】
<カーボンナノチューブ回収装置>
回収装置3は、生成装置2で生成されたCNTを巻き取るための巻取室30と、巻取室30で形成されたCNT巻回体Rを回収するための回収室40を備えている。
【0021】
まず、
図2を参照して巻取室30及びその周辺構造について説明する。
【0022】
巻取室30の天面部には、生成装置2の反応炉21の下端に通じる開口部31が設けられている。反応炉21内で生成されたCNTは、キャリアガスとともに開口部31を通じて巻取室30内に運ばれる。
【0023】
巻取室30の側面部には、CNTを巻き取るための巻取機構32が設けられている。この巻取機構32は、回転体33と、巻取部材34と、駆動部35を有している。
【0024】
回転体33は、例えば円柱状または円筒状の部材であり、回転軸方向が水平方向(本実施形態ではX方向)に向いて配置されている。この回転体33は、巻取室30の側面部を貫くように設けられ、回転体33の一部は、巻取室30内に突出している。
【0025】
巻取部材34は、回転体33の軸方向に延伸する部材であり、例えば円柱状または円筒状のローラーで構成される。巻取部材34の基端は、回転体33の先端(巻取室30側の端部)に取り付けられている。なお、巻取部材34の設置位置は、特に限定されず、開口部31を通過したCNTと接触可能な位置に設置されていればよい。
【0026】
駆動部35は、巻取室30の外部に設けられている。駆動部35としては例えばモータなどが使用される。巻取部材34が取り付けられた回転体33は、その駆動部35に接続され、駆動部35によって回転体33が回転することで、巻取部材34も回転体33と一体となって回転する。回転体33の回転速度は、CNTの生成速度や所望のCNT巻回体Rの大きさに応じて適宜設定され、例えば0.01~500rpmに設定される。
【0027】
巻取室30の外部には、巻取部材34に形成されたCNT巻回体Rを分離させる分離機構36も設けられている。分離機構36は、上記の回転体33、巻取部材34および駆動部35を巻取室30の内側から外側に向かう方向に移動させる機構である。換言すると、分離機構36は、巻取部材34を巻取室30から引き抜く方向に移動させる機構であり、この分離機構36によって巻取部材34の先端側から基端側に向かって、回転体33及び巻取部材34を移動させることができる。
【0028】
本実施形態では、分離機構36の一例として、巻取室30の外部にシリンダ機構37が設けられている。巻取部材34は、そのシリンダ機構37の伸縮動作によって、
図2に示すCNTを巻き取る位置(巻取位置)から、
図3に示すCNT巻回体Rを巻取部材34から分離させる位置(引抜位置)の間を移動する。すなわち、巻取部材34は、巻取室30の側面部に対して接近または離隔する方向に移動可能である。
【0029】
上記の分離機構36を有する回収装置3においては、巻取位置にある巻取部材34によってCNT巻回体Rを形成した後、巻取部材34を引抜位置まで後退させることで、CNT巻回体Rが巻取室30の側面部の内面に接触する。そして、その状態で、さらに巻取部材34を後退させることによって、CNT巻回体Rの内周面が巻取部材34で支持されない状態となる。
【0030】
これにより、CNT巻回体Rが巻取部材34から脱落し、CNT巻回体Rと巻取部材34が分離する。その後、巻取部材34が引抜位置から巻取位置に前進し、次のCNT巻回体Rを形成するためのCNTの巻き取りが開始される。なお、分離機構36の構成は、本実施形態で説明した構成に限定されない。
【0031】
次に、再度
図1を参照して回収室40及びその周辺構造について説明する。
【0032】
図1に示すように、回収室40は、ハウジング50と、ハウジング50の下方に設けられた貯蔵容器60を有している。
【0033】
ハウジング50の天面部には、巻取室30と通じる第1開口部51が設けられ、ハウジング50の底面部には、貯蔵容器60と通じる第2開口部52が設けられている。
【0034】
第1開口部51は、巻取室30で形成されたCNT巻回体Rが通過可能な形状を有している。前述したように、巻取室30は、開口部31を介して生成装置2の反応炉21に通じているため、その巻取室30に通じるハウジング50の第1開口部51は、生成装置2と通じた開口部であると言い換えることができる。
【0035】
第2開口部52は、第1開口部51と同様に、巻取室30で形成されたCNT巻回体Rが通過可能な形状を有している。
【0036】
ハウジング50の内部には、第1開口部51を開閉する開閉機構として仕切弁53が設けられている。この仕切弁53によって、第1開口部51が開口した状態と閉口した状態を変更することができる。第1開口部51が開口した状態とは、巻取室30からハウジング50にCNTが通過可能な状態であり、第1開口部51が閉口した状態とは、巻取室30内の雰囲気とハウジング50内の雰囲気とが遮断された状態である。
【0037】
仕切弁53は、平板状の弁体54と、弁体54を回動させる回動軸部55を備えている。回動軸部55は、第1開口部51の周縁近傍に設けられており、回動軸が水平方向(本実施形態ではY方向)に向くようにして固定されている。この回動軸部55に弁体54の一端が接続されていることによって、弁体54は、回動軸を中心として所定角度の範囲内で時計回り又は反時計回りに回転できる。
【0038】
弁体54は、第1開口部51を覆うことが可能な形状を有しており、弁体54の、第1開口部51に対向する側の面には、図示しないシール材が設けられている。このため、弁体54が水平状態となるように回転した際には、そのシール材があることによって、巻取室30内の雰囲気とハウジング50内の雰囲気が遮断される。
【0039】
また、第1開口部51の開閉機構の構成は、第1開口部51の開閉状態を変更可能であれば、上述した構成に限定されない。例えば
図1の開閉機構は、ハウジング50内に仕切弁53を設け、弁体54を下方から上方に回転させて第1開口部51を閉口する構成であったが、巻取室30内に仕切弁(図示せず)を設け、その仕切弁の弁体(図示せず)を上方から下方に回転させて第1開口部51を閉口する構成であってもよい。あるいは、仕切弁53に代えて、水平方向にスライド可能な扉(図示せず)を第1開口部51の直上または直下に設けて、第1開口部51を閉口してもよい。
【0040】
ただし、反応炉21から排出されるCNTは、巻取部材34で巻き取られずに落下する場合もあり、例えば巻取室30内の底面にCNTが付着することもある。この場合、巻取室30内に仕切弁を設けて弁体を上方から下方に回転させる構造では、弁体と第1開口部51との間にCNTが挟まれ、シール性に影響を与えることも考えられる。仮にシール性が低下した際には、弁体と第1開口部51との隙間に付着したCNTを除去するためのメンテナンス作業が必要となる。このような問題は、第1開口部51の開閉機構として水平方向にスライド可能な扉を設けた場合も同様に起こり得る。
【0041】
したがって、シール性を高めると共にメンテナンス頻度を少なくする観点からは、
図1に示したように、第1開口部51の開閉機構は、ハウジング50内に仕切弁53を設け、弁体54を下方から上方に向かって回転させる構造であることが好ましい。
【0042】
ハウジング50の外部には、不燃性ガスの供給ライン56と、空気の供給ライン57が設けられている。これらの供給ライン56、57には、それぞれバルブ56a、57aが設けられている。各供給ライン56、57は、ガス供給管58に接続されていて、上記のバルブ56a、57aの開閉状態を変更することによって、ガス供給管58に不燃性ガスまたは空気が供給される。不燃性ガスの種類は特に限定されないが、窒素ガスを用いることが好ましい。
【0043】
ハウジング50の側面部には、ガス供給管58が接続されるガス供給口59が形成されている。ハウジング50内には、そのガス供給口59を介して不燃性ガスまたは空気が供給される。
【0044】
なお、上述した不燃性ガスの供給状態と停止状態の変更、および空気の供給状態と停止状態の変更が可能なガス供給機構においては、各ガスの供給状態と停止状態の変更が作業者の手動操作によって実施されてもよいし、ガス供給機構の動作を制御する後述の制御部200によって自動的に実施されてもよい。
【0045】
次に、回収室40が備える貯蔵容器60について説明する。
【0046】
貯蔵容器60は、上面の一部が開口した容器であり、複数個のCNT巻回体Rを収容可能である。この貯蔵容器60には、ハウジング50の第1開口部51と第2開口部52を通過して落下したCNT巻回体Rが一時的に貯蔵される。貯蔵されたCNT巻回体Rは、貯蔵容器60に設けられた開閉可能な扉(図示せず)から回収される。
【0047】
また、貯蔵容器60は、ハウジング50の底面部に固定されており、貯蔵容器60の上面部とハウジング50の底面部との間には、図示しないシール材が設けられている。このシール材によって、回収室40内の雰囲気がハウジング50と貯蔵容器60の隙間から外部に流出しないようになっている。
【0048】
貯蔵容器60の外部には、回収室40内の雰囲気を排出する第1排気ライン61が設けられている。第1排気ライン61は、バルブ61aと、排気管61bを有しており、排気管61bは、貯蔵容器60の側面部に形成された排気口62に接続されている。ハウジング50内に供給されたガスは、この排気口62を介して排出される。
【0049】
なお、排気口62は、貯蔵容器60ではなく、例えばハウジング50に設けられてもよいが、排気口62は、ガス供給口59よりも下方に位置していることが好ましい。後述するように、貯蔵容器60からCNT巻回体Rを回収する際には、回収室40内の雰囲気をキャリアガスから不燃性ガスに置換する工程があるが、キャリアガスの比重が不燃性ガスの比重よりも軽い場合、キャリアガスがハウジング50内の上方に滞留し易い。
【0050】
一方、排気口62がガス供給口59よりも下方に位置している場合には、ハウジング50内では、不燃性ガスが上方から下方に向かって流れるため、不燃性ガスによるキャリアガスの排出が容易になり、キャリアガス雰囲気の回収室40を不燃性ガス雰囲気に置換し易くなる。また、
図1に示したように、排気口62が貯蔵容器60に設けられている場合には、貯蔵容器60内の雰囲気置換が容易となる。
【0051】
第1排気ライン61には、排ガス中の酸素濃度を測定する酸素濃度計63を設けることが好ましい。この酸素濃度計63を用いることで、回収室40内の雰囲気がどのようなガスで構成されているか予測し易くなるため、後述する貯蔵容器60からのCNT巻回体Rの回収や仕切弁53の再開放を適切なタイミングで行うことが可能となる。これにより、CNTの回収から生成再開までの過程で生じ得る余分な待機時間を省略できる。
【0052】
図4に示すように、貯蔵容器60の内部には、CNT巻回体Rを貯蔵可能な回収カゴ64を設置することが好ましい。この回収カゴ64は、複数の開口部が形成されたメッシュ状のカゴであり、貯蔵容器60に対して着脱自在である。回収カゴ64の材料は、貯蔵容器60に落下したCNT巻回体Rが有する熱への耐熱性を有していれば特に限定されないが、例えば金属材料が用いられる。
【0053】
回収カゴ64が設けられている場合には、ハウジング50から貯蔵容器60を取り外した際に、CNT巻回体Rが貯蔵された回収カゴ64を貯蔵容器60から取り出すことで容易にCNT巻回体Rを回収することができる。また、回収カゴ64が取り出された貯蔵容器60に中身が空の状態の他の回収カゴを設置すれば、CNTの回収工程の時間を短縮できる。
【0054】
なお、ハウジング50内に供給されたガスは、回収カゴ64がメッシュ状に形成されていることによって、回収カゴ64のメッシュを通過でき、排気口62からの排気は阻害されない。また、CNTの一部は、巻取部材34(
図1)で巻き取られずに落下することもあるが、そのようなCNTは回収カゴ64によって捕集されるため、第1排気ライン61へのCNTの混入を抑制できる。すなわち、メッシュ状の回収カゴ64によって、排ガスの清浄度を高め、環境に配慮した操業が可能となる。
【0055】
以上、回収室40が備えるハウジング50及び貯蔵容器60について説明したが、回収室40は、ハウジング50と貯蔵容器60とに分割されずに一つの容器で構成されてもよい。その場合の回収室40は、仕切弁53の下方にCNT巻回体Rが貯蔵される空間が設けられる。
【0056】
図1に示すように、回収装置3は、前述した第1排気ライン61に加え、巻取室30内の雰囲気を排出する第2排気ライン70を有している。この第2排気ライン70は、上述した仕切弁53によって第1開口部51が閉口した際に主に使用される排気ラインである。
【0057】
第2排気ライン70は、バルブ70aと、排気管70bを有しており、排気管70bは、巻取室30の側面部に形成された排気口71に接続されている。巻取室30内に供給されたガスは、この排気口71を介して排出される。
【0058】
また、排気口71は、巻取部材34よりも下方に形成されていることが好ましい。反応炉21から排出されるCNTは軽量であるため、排気口71に向かうキャリアガスの流れの影響を受け易いが、排気口71が巻取部材34よりも下方に位置している場合には、反応炉21と排気口71との間にある巻取部材34にCNTが接触し易くなる。これによって、巻き取られないCNTの量を少なくでき、CNTの回収量を増やすことができる。
【0059】
第2排気ライン70におけるバルブ70aの下流側には、円筒状の拡径部72が設けられ、拡径部72の一端に、排気口71に通じる排気管70bが接続されている。拡径部72の外周面には、拡径部72に流入した排ガスを下流側に排出するための他の排気管70cが接続されている。
【0060】
上記の拡径部72には、円筒状のフィルター73が設置されている。このフィルター73は、排ガス中のCNTを捕集するためのものである。フィルター73の内径は、排気管70bの内径よりも大きく、排気管70bから拡径部72に流入した排ガスは、フィルター73を通過して排気管70cに向かって流れる。
【0061】
このようなフィルター73が設置されている場合には、排ガスの清浄度を高めて環境に配慮した操業が可能となるため、フィルター73を設けることが好ましい。なお、フィルター73は、例えばメッシュ状の金属管などで構成されるが、排ガス中に浮遊するCNTを捕集可能であれば、フィルター73の具体的な構造は特に限定されない。
【0062】
ところで、第2排気ライン70の使用を続けると、フィルター73の内面に付着するCNTの量が増加し、それによってフィルター73の目詰まりが生じた場合には、排ガスの流れが阻害される。この場合には、
図1に示した反応炉21及び巻取室30内の圧力が上昇して所望の圧力を維持できない可能性がある。そのため、フィルター73の目詰まりが生じる前に、フィルター73の清掃や交換等のメンテナンス作業を行う必要がある。
【0063】
しかしながら、フィルター73のメンテナンス作業中は、第2排気ライン70(
図1)を使用できないため、メンテナンス作業を行う際には、CNTの生成装置2の運転を停止させることが必要となる場合がある。したがって、CNTの生成時間をより長く確保するためには、
図5に示すように、フィルター73に付着するCNTを剥離させる清掃機構74を設けることが好ましい。
【0064】
図5で例示する清掃機構74は、例えばモータを駆動源として回転する棒75と、棒75の外周面に取り付けられたスクレーパ76を有している。棒75は、拡径部72の軸方向に沿って当該拡径部72の外部から内部に貫通しており、棒75の一部は、拡径部72の外部に突出している。スクレーパ76は、フィルター73の長さと同等の長さ、かつ、円筒状のフィルター73の内径の半径よりも僅かに小さい幅を有した平板である。
【0065】
図5で例示した清掃機構74によれば、棒75が回転することによって、スクレーパ76がフィルター73の内周面に沿って回転し、これによりフィルター73の内面に付着したCNTを剥離させることができる。
【0066】
清掃機構74の構成は、例えば
図6に示す構成であってもよい。
図6で例示する清掃機構74は、例えばエアシリンダを駆動源として往復移動する棒77と、棒77の先端に取り付けられた円板78を有している。円板78の直径は、フィルター73の内径よりも僅かに小さい。
【0067】
図6で例示した清掃機構74によれば、棒77の往復移動によって円板78の押し出し動作又は引き抜き動作が行われ、円板78の押し出し動作の際に、フィルター73の内面に付着したCNTを剥離させることができる。なお、円板78の押し出し動作又は引き抜き動作の際に、円板78に排ガスが接触することによる排ガス流の乱れを抑制するため、通気孔として複数の貫通孔(図示せず)を円板78に設けることが好ましい。
【0068】
以上の
図5及び
図6で例示した清掃機構74は、第2排気ライン70(
図1)の使用時において定期的に作動する。例えば清掃機構74は、10分毎に3回(3回転または3往復)作動したり、あるいは、反応炉21内の圧力が所定の圧力を超えるまで上昇した時に3回(3回転または3往復)作動する。なお、清掃機構74は、作業者の手動操作によって作動させてもよいが、上述したように一定間隔あるいは反応炉21内の雰囲気条件に基づいて自動的に作動させることが好ましい。
【0069】
回収装置3は、制御部200を備えている。制御部200は、例えばCPUやメモリ等を備えたコンピュータであり、プログラム格納部(図示せず)を有している。プログラム格納部には、後述する第1排気ライン61と第2排気ライン70の動作を制御する各種のプログラムが格納されている。例えばプログラム格納部には、仕切弁53の開閉動作や回収装置3に設けられた各バルブ56a、57a、61a、70aの開閉動作等を制御するプログラムが格納されている。なお、上記プログラムは、コンピュータに読み取り可能な記憶媒体に記録されていたものであって、当該記憶媒体から制御部200にインストールされたものであってもよい。
【0070】
本実施形態に係るCNT製造装置1は、以上のように構成されている。なお、CNT製造装置1を構成する各部材の材質は、本明細書で説明した作用効果の発現を阻害しない材質であれば特に限定されないが、例えばステンレス鋼、一般構造用圧延鋼材(SS材)が採用される。また、CNT製造装置1を構成する各部材のうち、CNTが接触し得る部材には、テフロン(登録商標)コーティングが施されてもよい。
【0071】
(カーボンナノチューブ回収方法)
次に、回収装置3を用いたCNTの回収方法の一例について説明する。なお、以下で説明する各ガスの供給または停止のためのバルブの開閉や仕切弁53の開閉等の動作のような自動的に実施可能な動作については、制御部200を介して自動的に実施されるが、作業者の手動によって実施してもよい。
【0072】
まず、
図7(a)に示すように、CNTを貯蔵容器60に貯蔵する貯蔵工程では、ハウジング50内の仕切弁53が開放され、第1開口部51は開口した状態にある。この工程では、ガス供給管58からのガス供給が停止し、第1排気ライン61からの排気が行われているため、回収室40内の雰囲気は、生成装置2(
図1)の反応炉21に供給されるキャリアガス雰囲気となっている。なお、本実施形態では、CNTの貯蔵工程において第2排気ライン70は使用されていないが、本工程において第2排気ライン70からの排気を実施してもよい。すなわち、CNTの貯蔵工程では、少なくとも第1排気ライン61からの排気が行われる。
【0073】
このとき、巻取室30では、CNTを巻き取ることによるCNT巻回体Rの形成(
図2)と、CNT巻回体Rの分離(
図3)が行われる。ここで分離されたCNT巻回体Rは、巻取室30から第1開口部51と第2開口部52を通過して、貯蔵容器60に落下する。このようなCNTの巻き取りと分離が繰り返し行われることで、貯蔵容器60内にCNT巻回体Rが貯蔵される。
【0074】
次に、
図7(b)に示すように、CNTの貯蔵工程を所定の時間行うか、あるいは貯蔵容器60内に所定量のCNTが貯蔵された段階で、第2排気ライン70からの排気を開始する。その後、第1排気ライン61からの排気を停止して、仕切弁53を閉じ、第1開口部51を閉口する。これにより、巻取室30内の雰囲気とハウジング50内の雰囲気とが遮断される。
【0075】
この工程では、生成装置2(
図1)は停止しておらず、反応炉21に供給されるキャリアガスは、第2排気ライン70から排出されるため、CNTの生成と巻き取りを継続して行うことができる。
【0076】
次に、
図7(c)に示すように、ガス供給管58から例えば窒素ガスなどの不燃性ガスを供給し、第1排気ライン61からの排気を再開して、回収室40内の雰囲気を不燃性ガスに置換する。キャリアガスには可燃性ガスである水素ガスが含まれているため、このように回収室40内を不燃性ガスで置換することが好ましい。
【0077】
次に、
図7(d)に示すように、ガス供給管58から供給するガスを不燃性ガスから空気に変更して、回収室40内の雰囲気を空気に置換する。このとき、酸素濃度計63(
図1)が設置されている場合には、例えば第1排気ライン61の排ガス中の酸素濃度が所定値以上となったときに回収室40内が空気に置換されたと判断できる。
【0078】
なお、回収室40に供給される上述の不燃性ガスと空気の温度は、常温(例えば20~25℃)でよい。
【0079】
次に、
図7(e)に示すように、回収室40内の雰囲気が空気に置換された後は、ガス供給管58からの空気の供給と、第1排気ライン61からの排気を停止し、貯蔵容器60に設けられた扉(図示せず)を開けて、CNT巻回体Rを回収する。なお、貯蔵容器60内に
図4に示した回収カゴ64が設置されている場合には、CNT巻回体Rが貯蔵された回収カゴ64を取り出して、空の状態の他の回収カゴを設置する。
【0080】
また、この工程では、CNT巻回体Rの回収時に開かれた扉(図示せず)を介して、回収室40内の雰囲気の流出と、回収室40内への外気の流入が起こるが、回収室40内の雰囲気と巻取室30内の雰囲気は、仕切弁53によって遮断されている。このため、回収室40から巻取室30側への雰囲気の流入は起こらず、巻取室30内の雰囲気は、CNTの生成に適した状態が維持される。
【0081】
次に、
図7(f)に示すように、ガス供給管58からの不燃性ガスの供給と、第1排気ライン61からの排気を再開し、回収室40内を不燃性ガス雰囲気に置換する。このとき、酸素濃度計63(
図1)が設置されている場合には、例えば排ガス中の酸素濃度が所定値以下となったときに回収室40内が不燃性ガスに置換されたと判断できる。
【0082】
そして、回収室40内が不燃性ガス雰囲気に置換された後に、第2排気ライン70からの排気と、ガス供給管58からの不燃性ガスの供給を停止し、仕切弁53を開放する。これによって、回収装置3は
図7(a)に示した工程と同様の状態に戻り、CNTを巻き取って貯蔵する工程と回収工程とが繰り返し行われる。
【0083】
以上で説明した本実施形態に係るCNTの回収方法においては、巻取室30と回収室40との間で雰囲気を遮断し、キャリアガスの排気ラインを第1排気ライン61から第2排気ライン70に変更することができる。したがって、CNTの回収時には、少なくとも第2排気ライン70からの排気が可能であるため、CNTの生成を継続して行うことができる。
【0084】
すなわち、従来のCNTの回収作業のように、CNTの生成装置を停止させる必要がないため、量産製造時において、所望量のCNTの製造が完了するまでの時間を大幅に短縮することが可能となる。
【0085】
また、CNTの回収時に第1開口部51が閉口して、高温の反応炉21内に低温の外気が流入しないことによって、反応炉21の長寿命化が可能となる。この効果が得られる理由は以下の通りである。
【0086】
例えば反応炉21が例えばセラミックで形成されている場合、高温の反応炉21に外気が流入すると、温度差による熱衝撃によって反応炉21が破損し得る。また例えば、反応炉21がカーボンで形成されている場合、高温の反応炉21に外気が流入すると、反応炉21のカーボンが急激に酸化して焼損し得る。
【0087】
一方、本実施形態に係る回収装置3においては、CNTの回収時に貯蔵容器60内に外気が流入しても、ハウジング50の第1開口部51が閉口している。このため、高温の反応炉21内には低温の外気が流入しないため、上記のような問題が起こらず、反応炉21の長寿命化を実現できる。
【0088】
なお、
図8に示すように、前述の第2排気ライン70においては、バルブ70aと拡径部72との間に、不燃性ガスを供給するためのガス供給管70dと、バルブ70eを設けることが好ましい。理由は以下の通りである。
【0089】
第2排気ライン70の非使用時においては、フィルター73の交換作業などによって、バルブ70aの下流側の排気管70b、拡径部72および排気管70cの内部には空気が残留する。この状態のまま、第1排気ライン61(
図1)から第2排気ライン70への排気ラインの変更のためにバルブ70aが開放された際には、排気管70b、拡径部72および排気管70cの内部に残留する空気が巻取室30や反応炉21側に逆流する場合がある。
【0090】
一方、第2排気ライン70に上述した不燃性ガスの供給機構が設けられていれば、
図9に示すように、バルブ70aが開放される前に、そのバルブ70aの下流側に不燃性ガスを供給でき、排気管70b、拡径部72および排気管70cの内部を不燃性ガスでパージすることができる。これによって、巻取室30と反応炉21側への空気の逆流を抑制でき、生成されるCNTの品質を高めることができる。なお、図中の黒色で塗りつぶされたバルブは、全閉状態にあることを意味する。
【0091】
第2排気ライン70に不燃性ガスの供給機構を設ける場合には、拡径部72の下流側の排気管70cに、酸素濃度計79を設けることが好ましい。これにより、排気管70b、拡径部72および排気管70cの内部に残存する空気量を監視することができる。このため、配管内の酸素濃度が十分に低下したタイミングでバルブ70aを開放することができ、巻取室30側への空気の逆流抑制効果を高めることができる。
【0092】
ところで、
図7(b)~
図7(e)に示した第2排気ライン70を使用する工程では、
図5又は
図6で例示した清掃機構74によって定期的にフィルター73の清掃が行われる。これにより、フィルター73の内面からCNTが剥離するが、剥離したCNTは拡径部72から排出されず、拡径部72内に溜まっていく。拡径部72内に残留するCNTは、長さが1mm程度の塵状であり、第2排気ライン70が使用できないような拡径部72の詰まりが早期に発生することはないが、塵状CNTの量が許容量を超えた際には、塵状CNTの除去やフィルター交換等のメンテナンス作業が必要となる。
【0093】
このようなメンテナンス作業は、例えば
図7(a)に示した第2排気ライン70を使用しない工程で実施されてもよい。しかし、CNT巻回体Rの回収工程が開始される前にメンテナンス作業を完了できない場合には、第2排気ライン70を使用できないために、CNTの生成装置を停止させる必要がある。
【0094】
したがって、そのような場合においても、CNTの生成を継続して生産性を向上させるためには、
図10に示すように、第2排気ライン70に加えて、第3排気ライン80を設けることが好ましい。
【0095】
(第3排気ライン)
図10に例示される第3排気ライン80は、第2排気ライン70と同様の構成を有しており、バルブ80aと、排気管80bが設けられている。なお、
図10は、回収装置3(
図1)を上から見た図である。排気管80bは、巻取室30に形成された排気口81に接続されており、排気口81は、第2排気ライン70が接続される排気口71と同一の高さにおいて、Y方向に沿って間隔を空けて配置されている。
【0096】
また、第3排気ライン80は、バルブ80aの下流側に拡径部82を有しており、拡径部82の内部には、フィルター83と、
図5または
図6で例示したような清掃機構が設けられている。拡径部82の外周面には、他の排気管80cが接続されており、排気管80cには、バルブ80dが設けられている。
【0097】
第2排気ライン70の排気管70cと、第3排気ライン80の排気管80cは、それぞれ合流配管84に接続されており、第2排気ライン70の排ガス及び第3排気ライン80の排ガスは、合流配管84から排出される。
【0098】
このような第3排気ライン80が設置されている場合、
図11に示すように、第2排気ライン70から排気を行う状態と第3排気ライン80から排気を行う状態とを変更することができる。なお、図中の黒色で塗りつぶされたバルブは、全閉状態にあることを意味する。
【0099】
図11(a)は、第2排気ライン70を使用している状態を示す図である。この状態においては、第3排気ライン80の2つのバルブ80a、80dが閉じられているため、排気口81からの排気は行われず、第3排気ライン80は使用されない。
【0100】
一方、第2排気ライン70の拡径部72内に残留した塵状CNTが許容量を超え、拡径部72のメンテナンス作業が必要となった際には、
図11(b)に示すように、第2排気ライン70の2つのバルブ70a、70eを閉じ、第3排気ライン80の2つのバルブ80a、80dを開く。
【0101】
これによって、巻取室30内の雰囲気を第3排気ライン80から排出することができ、第2排気ライン70を使用しなくても、
図7(a)~
図7(f)に示したCNTの貯蔵工程と回収工程を繰り返し行うことができる。そして、第2排気ライン70のメンテナンス作業は、第3排気ライン80を使用している間に実施され、その作業の完了後、使用する排気ラインを第3排気ライン80から第2排気ライン70に変更する。その後、必要に応じて第3排気ライン80のメンテナンス作業も行う。
【0102】
以上で説明したように、第3排気ライン80が設置されていれば、第2排気ライン70のメンテナンス作業に長時間を要する場合であっても、CNTの生成を継続して行うことができる。
【0103】
なお、
図12に示すように、第3排気ライン80が設置される場合には、第2排気ライン70と第3排気ライン80の各々に、不燃性ガスを供給する機構と、その不燃性ガスを排気する機構を設けることが好ましい。
【0104】
詳述すると、第2排気ライン70には、
図8で説明したガス供給管70dと、バルブ70fが設けられ、さらに、酸素濃度計79とバルブ70fとの間には、排気管70cに接続される排気管70gと、バルブ70hが設けられている。
【0105】
また、第3排気ライン80には、バルブ80aと拡径部82との間に、排気管80bに接続される不燃性ガスを供給するためのガス供給管80eと、バルブ80fが設けられている。さらに、酸素濃度計85とバルブ80dとの間には、排気管80cに接続される排気管80gと、バルブ80hが設けられている。
【0106】
このような構成の第2排気ライン70及び第3排気ライン80においては、第2排気ライン70からの巻取室30の排気を開始する前に、
図13(a)に示すように、バルブ70a、70fを閉状態、バルブ70e、70hを開状態とし、ガス供給管70dから不燃性ガスを供給する。これにより、バルブ70aの下流側にある排気管70b、拡径部72、排気管70c、排気管70gに不燃性ガスが流れ、配管内に残留していた空気が排出される。その後、バルブ70e、70hを閉じ、バルブ70a、70fを開くことで、
図11(a)に示した第2排気ライン70からの排気が開始される。
【0107】
一方、第3排気ライン80からの巻取室30の排気を開始する前には、
図13(b)に示すように、バルブ80a、80dを閉状態、バルブ80f、80hを開状態とし、ガス供給管80eから不燃性ガスを供給する。これにより、バルブ80aの下流側にある排気管80b、拡径部82、排気管80c、排気管80gに不燃性ガスが流れ、配管内に残留していた空気が排出される。その後、バルブ80f、80hを閉じ、バルブ80a、80dを開くことで、
図11(b)に示した第3排気ライン80からの排気が開始される。
【0108】
なお、
図10~
図13の例では、第2排気ライン70用の排気口71と、第3排気ライン80用の排気口81を別々に設けていたが、例えば排気口71のみを設け、第2排気ライン70の排気管70bに、第3排気ライン80の排気管80bを接続してもよい。換言すると、第3排気ライン80は、第2排気ライン70から分岐してもよい。
【0109】
(圧縮機構)
回収装置3においては、
図14で例示するように、CNTを圧縮するための圧縮機構90を設けてもよい。なお、
図14(a)は、圧縮機構90が設置された回収装置3を説明するための模式図であり、
図14(b)は、圧縮機構90が設置された貯蔵容器60を上から見た模式図である。いずれの図においても、紙面手前側の貯蔵容器60の壁面の図示を省略している。
【0110】
図14に示す例では、貯蔵容器60は、CNTの圧縮方向に沿って延びた直方体状の形状を有している。貯蔵容器60の内部に配置されるメッシュ状の回収カゴ64は、貯蔵容器60の形状に合わせて直方体状に形成され、回収カゴ64は、ハウジング50の第2開口部52から落下するCNT巻回体Rを収容可能な位置に設置されている。
【0111】
また、回収カゴ64には、車輪が取り付けられており、回収カゴ64は、水平移動が可能である。貯蔵容器60の側面部には、回収カゴ64の出入口を開閉する扉65が設けられており、扉65は、鉛直方向(Z方向)に延びた回動軸部66を中心として回転する。
【0112】
圧縮機構90は、貯蔵容器60の扉65が設置された側面部と対向する側面部に設けられている。この圧縮機構90は、押圧部材としての押し板91と、押し板91に接続された駆動部92を有している。
【0113】
押し板91は、第2開口部52の下方かつ回収カゴ64の内側において、回収カゴ64の内面に近接し、CNT巻回体Rの落下を阻害しない位置(初期位置)に配置されている。駆動部92は、例えば往復移動可能なシリンダで構成されており、押し板91は、その駆動部92によって回収カゴ64内を往復移動できる。
【0114】
上記の構成を有した圧縮機構90においては、回収カゴ64にCNT巻回体Rを貯蔵する工程で、定期的に押し板91が前進し、これによって回収カゴ64内に堆積していたCNT巻回体Rが圧縮される。その後、押し板91が初期位置まで後退し、回収カゴ64内には、新たな落下するCNT巻回体Rが堆積していく。
【0115】
なお、押し板91のストローク量は、CNT巻回体Rを過度に圧縮しないように回収カゴ64内のCNTの貯蔵量に応じて変更することが好ましい。例えば押し板91のストローク量を予め数段階設定しておき、押し板91の動作回数に応じて段階的にストローク量を減少させてもよい。
【0116】
上述した回収カゴ64内のCNT巻回体Rの圧縮と、回収カゴ64内へのCNT巻回体Rの貯蔵を繰り返して、回収カゴ64内に十分な量のCNT巻回体Rが貯蔵された際には、
図15に示すように扉65を開き、貯蔵容器60から回収カゴ64を取り出す。なお、回収カゴ64の側面部には、押し板91が通過可能な開口(図示せず)が形成されており、回収カゴ64が貯蔵容器60から搬出されても、押し板91は貯蔵容器60内に位置している。
【0117】
その後、貯蔵容器60に空の状態の他の回収カゴを設置し、扉65を閉じて、引き続きCNTの貯蔵工程を行う。
【0118】
以上のように、圧縮機構90を用いれば、貯蔵容器60内に貯蔵されたCNT巻回体RをCNTの生成中に圧縮できる。これにより、貯蔵容器60内におけるCNT巻回体Rの収容スペースが拡大し、CNTの生成を継続することができる。このため、CNTの回収を1回行うあたりのCNTの回収量が増加すると共に、CNTの回収工程の頻度も少なくできるため、CNTの製造時間をより長く確保することができる。
【0119】
特に、CNTは軽量であるために自重では潰れず、また、CNTの性質上、CNT巻回体Rは、他のCNT巻回体Rの表面を転がり難く、貯蔵容器60内に貯蔵されるCNTは嵩張り易い。このため、圧縮機構90を設けることは有用である。なお、圧縮機構90は、本実施形態で説明した構成に限定されず、例えば回収カゴ64を設けない場合にも適用できる。
【0120】
(第2実施形態)
図16は、第2実施形態に係るCNT製造装置1の概略構成を示す説明図である。第2実施形態は、貯蔵容器60がハウジング50に対して着脱自在に取り付けられている点が、第1実施形態に対する主な相違点である。
【0121】
貯蔵容器60は、上面の一部が開口した容器であり、複数個のCNT巻回体Rを収容可能である。この貯蔵容器60には、ハウジング50の第1開口部51と第2開口部52を通過して落下したCNT巻回体Rが一時的に貯蔵される。
【0122】
上述したように、貯蔵容器60は、ハウジング50に対して着脱自在に取り付けられている。貯蔵容器60とハウジング50の固定方法は、作業者がハウジング50から貯蔵容器60を取り外し可能であれば特に限定されないが、例えば固定用のクランプを用いた固定方法などが適用される。
【0123】
貯蔵容器60の上面部とハウジング50の底面部との間には、図示しないシール材が設けられている。貯蔵容器60がハウジング50に取り付けられた状態では、そのシール材が設けられていることによって、回収室40内の雰囲気がハウジング50と貯蔵容器60の隙間から外部に流出しないようになっている
【0124】
なお、図示は省略されているが、ハウジング50の底面部には、生成装置2や巻取室30、ハウジング50等の自重を支えるための基台や柱状の脚等の支持部材が適宜設けられている。これによって、ハウジング50から貯蔵容器60が取り外された際もCNT製造装置1の姿勢が保たれる。
【0125】
また、ハウジング50の外部には、不燃性ガスの第1供給ライン56に加えて、不燃性ガスの第2供給ライン100が設けられている。不燃性ガスの第2供給ライン100は、バルブ100aと、ガス供給管100bを有している。ガス供給管100bは、ハウジング50の側面下部に形成されたガス供給口101に接続されている。
【0126】
ハウジング50の外部には、さらに第4排気ライン110が設けられている。第4排気ライン110は、バルブ110aと、排気管110bを有している。排気管110bは、ガス供給口101が形成されたハウジング50の側面部と対向する側面部に形成された排気口111に接続されている。この排気口111は、ガス供給口101よりも上方に形成されている。
【0127】
以上、第2実施形態に係る回収装置3の概略構成について説明した。なお、以上の説明において、第1実施形態に係る回収装置3と同様の構成を有する部分の説明は省略されているが、第2実施形態に係る回収装置3の機能を阻害しない範囲で、第1実施形態に係る回収装置3の構成を組み合わせることは可能である。例えば、
図4に示した回収カゴ64、
図5又は
図6に示した清掃機構74、図
8に示した第3排気ライン80については、いずれも第2実施形態における回収装置3にも適用され得る。
【0128】
次に、本実施形態に係る回収装置3を用いた場合のCNTの回収方法の一例について
図17を参照して説明する。なお、
図17(a)~
図17(d)の工程は、
図7(a)~
図7(d)の工程と同様であるため、説明を省略する。
【0129】
図17(d)に示す工程で回収室40内の雰囲気が空気に置換された後は、
図17(e)に示すように、ガス供給管58からの空気の供給と、第1排気ライン61からの排気を停止し、貯蔵容器60から第1排気ライン61の排気管61bを取り外す。その後、ハウジング50から貯蔵容器60を取り外す。
【0130】
このとき、ガス供給管100bからの不燃性ガスの供給と、第4排気ライン110からの排気を開始する。ここでガス供給管100bから供給される不燃性ガスは、主に第4排気ライン110に向かって流れ、ハウジング50内には下方から上方に向かう気流が形成される。このため、例えばシール材の劣化によって巻取室30とハウジング50との間でシール不良が発生し、それによって巻取室30内のガスがハウジング50側に流出したとしても、その流出したガスを第4排気ライン110から排出することができる。
【0131】
貯蔵容器60内のCNT巻回体Rを回収した後は、
図17(f)に示すように、ガス供給管100bからの不燃性ガスの供給と、第4排気ライン110からの排気を停止し、貯蔵容器60を再度ハウジング50に取り付ける。ここでハウジング50に取り付ける貯蔵容器60は、例えば
図17(e)で取り外した貯蔵容器60とは異なる空の状態の他の貯蔵容器、あるいは
図4に示した回収カゴ64と交換された空の状態の他の回収カゴが設置された貯蔵容器である。
【0132】
また、ハウジング50に貯蔵容器60を取り付ける際には、貯蔵容器60に第1排気ライン61の排気管61bも取り付ける。その後、ガス供給管58からの不燃性ガスの供給と、第1排気ライン61からの排気を再開する。そして、回収室40内が不燃性ガス雰囲気に置換された後に、第2排気ライン70からの排気と、ガス供給管58からの不燃性ガスの供給を停止し、仕切弁53を開放する。これによって、回収装置3は
図17(a)に示した工程と同様の状態に戻り、以後、CNTの貯蔵工程と回収工程とが繰り返し行われる。
【0133】
以上で説明した第2実施形態に係る回収装置3によれば、貯蔵容器60をハウジング50に対して取り外すことができるため、貯蔵容器60内のCNT巻回体Rの回収が容易になる。
【0134】
また、この回収装置3においては、不燃性ガスの第2供給ライン100と第4排気ライン110を設けることが好ましい。これにより、貯蔵容器60をハウジング50から取り外す際に、シール材の劣化などの原因によって第1開口部51から巻取室30内のガスが流出しても、そのガスがハウジング50の外部に流出しないようにすることができる。
【0135】
この効果を高める観点では、
図16に示した第2供給ライン100に通じるガス供給口101は、第1開口部51よりも下方に形成されていることが好ましく、第2開口部52の近傍に形成されていることがさらに好ましい。これによって、ハウジング50内全体に上昇気流が形成され易くなり、巻取室30内からハウジング50内に流出したガスがハウジング50の下端から流出し難くなる。
【0136】
また、上記の効果を高める観点では、第4排気ライン110に通じる排気口111は、第1開口部51近傍に形成されていることが好ましい。これにより、巻取室30からハウジング50内にガスが流出したとしても、そのガスがハウジング50の下方に向かって流れずに排気口111から排出され易くなる。
【0137】
なお、以上の第1~第2実施形態で説明したCNT製造装置1においては、生成装置2は、回収装置3の上方に配置されていたが、回収装置3の側方に配置されてもよい。例えば
図18に示すように、生成装置2の反応炉21を回収装置3の巻取室30の側面部に取り付けてもよい。
【0138】
図18に示した例における巻取部材34は、回転軸がY方向となるように配置され、反応炉21と通じる開口部31から排出されるCNTは、回転する巻取部材34によって巻き取られる。巻き取られて形成されたCNT巻回体Rは、
図3に示した分離機構36と同様の分離機構により、巻取部材34が
図18の紙面奥側に引き抜かれることで落下する。これによって、巻取室30からハウジング50にCNT巻回体Rが落下し、貯蔵容器60にCNT巻回体Rが貯蔵される。このように構成されたCNT製造装置1であっても、例えば
図7または
図17で説明したCNTの回収方法を実施することができる。
【0139】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到しうることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0140】
例えば上記実施形態の構成要件は任意に組み合わせることができる。当該任意の組み合せからは、組み合わせにかかるそれぞれの構成要件についての作用及び効果が当然に得られるとともに、本明細書の記載から当業者には明らかな他の作用及び他の効果が得られる。
【0141】
また、本明細書に記載された効果は、あくまで説明的または例示的なものであって限定的ではない。つまり、本開示に係る技術は、上記の効果とともに、又は、上記の効果に代えて、本明細書の記載から当業者には明らかな他の効果を奏しうる。
【産業上の利用可能性】
【0142】
本発明は、カーボンナノチューブの回収装置および製造装置に適用することができる。
【符号の説明】
【0143】
1 CNT製造装置(カーボンナノチューブ製造装置)
2 CNT生成装置(カーボンナノチューブ生成装置)
3 CNT回収装置(カーボンナノチューブ回収装置)
21 反応炉
22 ヒータ
23 原料供給口
30 巻取室
31 開口部
32 巻取機構
33 回転体
34 巻取部材
35 駆動部
36 分離機構
37 シリンダ機構
40 回収室
50 ハウジング
51 第1開口部
52 第2開口部
53 仕切弁
54 弁体
55 回動軸部
56 不燃性ガスの第1供給ライン
56a バルブ
57 空気供給ライン
57a バルブ
58 ガス供給管
59 ガス供給口
60 貯蔵容器
61 第1排気ライン
61a バルブ
61b 排気管
62 排気口
63 酸素濃度計
64 回収カゴ
65 扉
66 回動軸部
70 第2排気ライン
70a バルブ
70b 排気管
70c 排気管
70d ガス供給管
70e バルブ
70f バルブ
70g 排気管
70h バルブ
71 排気口
72 拡径部
73 フィルター
74 清掃機構
75 棒
76 スクレーパ
77 棒
78 円板
79 酸素濃度計
80 第3排気ライン
80b 排気管
80c 排気管
80d バルブ
80e ガス供給管
80f バルブ
80g 排気管
80h バルブ
81 排気口
82 拡径部
83 フィルター
84 合流配管
85 酸素濃度計
90 圧縮機構
91 押し板
92 駆動部
100 不燃性ガスの第2供給ライン
100a バルブ
100b ガス供給管
101 ガス供給口
110 第4排気ライン
110a バルブ
110b 排気管
111 排気口
200 制御部
R CNT巻回体(カーボンナノチューブ巻回体)