(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024058964
(43)【公開日】2024-04-30
(54)【発明の名称】組電池の電圧測定装置
(51)【国際特許分類】
G01R 31/396 20190101AFI20240422BHJP
G01R 31/382 20190101ALI20240422BHJP
G01R 31/3835 20190101ALI20240422BHJP
G01R 31/385 20190101ALI20240422BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20240422BHJP
H01M 10/48 20060101ALI20240422BHJP
【FI】
G01R31/396
G01R31/382
G01R31/3835
G01R31/385
H02J7/00 X
H01M10/48 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022166414
(22)【出願日】2022-10-17
(71)【出願人】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大渕 浩司
【テーマコード(参考)】
2G216
5G503
5H030
【Fターム(参考)】
2G216BA03
2G216CB47
5G503BA03
5G503BA04
5G503BB02
5G503EA05
5H030AA01
5H030AS08
5H030FF43
5H030FF44
(57)【要約】
【課題】組電池の電圧を精度よく測定することが可能な電圧測定装置を提供する。
【解決手段】組電池のBMS(電圧測定装置)は、組電池を構成する全ての電池セルの電圧をそれぞれ測定するセル電圧測定部と、組電池を構成する全ての電池セルを、セル電圧測定部が測定した電圧に基づいて、所定のクラス幅(電圧範囲)に分類する電池セル分類部と、電池セル分類部によって分類されたクラス幅の中で、最も頻度が高いクラス幅に属する電池セルの電圧の平均値を、組電池が備える複数の電池セルの各々の電圧とする電圧決定部と、を備える。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電池セルを備える組電池の電圧を測定する組電池の電圧測定装置であって、
全ての電池セルの電圧をそれぞれ測定するセル電圧測定部と、
複数の前記電池セルを、前記セル電圧測定部が測定した電圧に基づいて、所定の電圧範囲に分類する電池セル分類部と、
前記電池セル分類部によって分類された電圧範囲の中で、最も頻度が高い電圧範囲に属する電池セルの電圧の平均値を、前記組電池が備える複数の前記電池セルの各々の電圧とする電圧決定部と、
を備える組電池の電圧測定装置。
【請求項2】
前記電圧範囲は、前記セル電圧測定部が測定した全ての電池セルの電圧のばらつきに基づいて、当該ばらつきが大きいほど広く設定される、
請求項1に記載の組電池の電圧測定装置。
【請求項3】
前記電圧決定部は、最も頻度が高い電圧範囲に属する前記電池セルの電圧の平均値と、最も頻度が高い前記電圧範囲に属さない前記電池セルの電圧と、に基づいて、前記組電池が備える複数の前記電池セルの各々の電圧を決定する、
請求項1または請求項2に記載の組電池の電圧測定装置。
【請求項4】
前記電圧決定部が決定した電圧を、前記組電池の状態に応じて補正する電圧補正部を、更に備える、
請求項3に記載の組電池の電圧測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組電池の電圧測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
昨今、車載された二次電池を動力源として車両を駆動させる電動車両が普及している。このような電動車両に用いられる二次電池は、容量に限りがある。したがって、走行中の電欠を防止するために、二次電池の充電容量、即ちSOC(State Of Charge)を推定して、推定された二次電池の充電容量を運転者に周知させるのが望ましい。
【0003】
例えば、特許文献1には、SOCの推定を行う蓄電池の内部状態推定システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示された蓄電池の内部状態推定システムでは、電圧センサの測定誤差の影響で、SOCの推定誤差が発生するおそれがある点が課題であった。
【0006】
本発明の目的は、組電池の電圧を精度よく測定することが可能な組電池の電圧測定装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記の目的を達成するため、本発明の組電池の電圧測定装置は、複数の電池セルを備える組電池の電圧を測定する組電池の電圧測定装置であって、全ての電池セルの電圧をそれぞれ測定するセル電圧測定部と、複数の電池セルを、セル電圧測定部が測定した電圧に基づいて、所定の電圧範囲に分類する電池セル分類部と、電池セル分類部によって分類された電圧範囲の中で、最も頻度が高い電圧範囲に属する電池セルの電圧の平均値を、組電池が備える複数の電池セルの各々の電圧とする電圧決定部と、を備えることを特徴とする。
【0008】
この構成によれば、組電池の電圧を精度よく測定することができる。
【0009】
また、本発明に係る組電池の電圧測定装置において、電圧範囲は、セル電圧測定部が測定した全ての電池セルの電圧のばらつきに基づいて、当該ばらつきが大きいほど広く設定される。
【0010】
この構成によれば、電池セルの電圧の平均値周りのばらつきに応じた電圧範囲を設定することができるため、組電池を構成する個々の電池セルの電圧にばらつきがあった場合であっても、組電池の電圧をより一層精度よく測定することができる。
【0011】
また、本発明に係る組電池の電圧測定装置において、電圧決定部は、最も頻度が高い電圧範囲に属する電池セルの電圧の平均値と、最も頻度が高い電圧範囲に属さない電池セルの電圧と、に基づいて、組電池が備える複数の電池セルの各々の電圧を決定する。
【0012】
この構成によれば、平均値から大きく外れた電池セルの状態も加味して組電池の電圧を推定するため、電圧の測定精度をより一層向上させることができる。
【0013】
また、本発明に係る電圧測定装置は、電圧決定部が決定した電圧を、組電池の状態に応じて補正する電圧補正部を、更に備える。
【0014】
この構成によれば、組電池の状態に応じて電圧を補正するため、電圧測定精度をより一層向上させることができる。
【0015】
また、本発明に係る組電池の電圧測定装置は、電圧決定部が決定した電圧に基づいて、組電池の充電率を推定する推定部を、更に備える。
【0016】
この構成によれば、電圧測定装置によって高い精度で測定された組電池の電圧に基づいて充電率(SOC)を推定するため、充電率を高い精度で推定することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、組電池の電圧を精度よく測定することが可能な組電池の電圧測定装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は、実施形態に係る電圧測定装置を備える組電池の概略構成の一例を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、組電池の電圧と充電率(SOC)との関係の一例を示す概念図である。
【
図3A】
図3Aは、組電池を構成する全ての電池セルの電圧の分布の一例を示す第1の図である。
【
図3B】
図3Bは、組電池を構成する全ての電池セルの電圧の分布の一例を示す第2の図である。
【
図4】
図4は、実施形態に係る電圧測定装置による組電池の電圧測定方法を説明する図である。
【
図5】
図5は、実施形態に係る電圧測定装置の機能構成の一例を示す機能ブロック図である。
【
図6】
図6は、実施形態に係る電圧測定装置が行う電圧測定処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下では、本発明の実施形態について、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0020】
(組電池の構造)
図1を用いて、本発明の実施形態の電圧計20を備える組電池10の概略構成を説明する。
図1は、実施形態に係る電圧測定装置を備える組電池の概略構成の一例を示すブロック図である。
【0021】
組電池10は、例えば、Liイオン電池等の二次電池であって、複数の電池セル12と、BMS14とを備える。
【0022】
電池セル12は、複数の電池セル12a,12b,12c,…を備える。複数の電池セル12a,12b,12c,…は、
図1に示すように直列に接続されていてもよいし、並列に接続されていてもよい。また、直並列接続が混在してもよい。電池セル12a,12b,12c,…は、出力端子Pと出力端子Qとの間に所定の電圧を出力する。なお、電池セル12a,12b,12c,…は、自身を一意に特定するID番号等の識別情報を有している。なお、以降の説明において、電池セル12a,12b,12c,…を纏めて電池セル12と呼ぶ場合がある。
【0023】
BMS14(Battery Management System)は、電池セル12の充電管理、放電管理を行う。具体的には、BMS14は、電池セル12の充電制御を行って過充電を防止する。また、BMS14は、電池セル12の過電流を防止する。また、BMS14は、電池セル12の温度管理を行う。また、BMS14は、電池セル12のSOCを推定する。なお、BMS14は、本開示における電圧測定装置の一例である。
【0024】
BMS14は、CPU15と、ROM16と、RAM17と、A/D変換器19と、電圧計20と、内部バス18とを備える。
【0025】
CPU(Central Processing Unit)15は、ROM(Read Only Memory)16と、RAM(Random Access Memory)17と接続する。CPU15は、ROM16に記憶された各種プログラムを、RAM17に展開する。CPU15は、RAM17に展開された各種プログラムに従って動作することで、BMS14の動作を制御する。なお、CPU15と、ROM16と、RAM17とは、内部バス18で互いに接続されている。
【0026】
電圧計20は、電池セル12が備える個々の電池セル12a,12b,12c,…の電圧をそれぞれ測定する。なお、電圧計20は、個々の電池セル12a,12b,12c,…の両端と接続されて、個々の電池セル12a,12b,12c,…の端子電圧を測定する。電圧計20は、測定された電圧と、当該電圧が測定された、各々の電池セル12a,12b,12c,…のID番号とを出力する。
【0027】
A/D変換器19は、電圧計20が測定した個々の電池セルの電圧を、それぞれアナログデータからデジタルデータに変換する。デジタルデータに変換された電圧値は、電池セル12a,12b,12c,…のID番号と関連付けてRAM17に記憶される。
【0028】
BMS14は、RAM17に記憶された電池セル12a,12b,12c,…の各電圧と読み出して、電圧の分布状態に基づいて、組電池10の電圧を決定する。組電池10の電圧の具体的な決定方法は後述する(
図3A,
図3B,
図4参照)。
【0029】
(組電池の構造)
図2を用いて、組電池の電圧Eと充電率Sとの関係について説明する。
図2は、組電池の電圧と充電率(SOC)との関係の一例を示す概念図である。
【0030】
一般に組電池10を構成する個々の電池セル12a,12b,12c,…の電圧Eと、当該電池セル12a,12b,12c,…の充電率S(SOC)とは非線形の関係を有する。したがって、例えば、電圧Eの変化量に対して充電率Sの変化量が大きい領域(感度が高い領域)にあっては、電圧Eの測定誤差が小さくても、充電率Sの推定誤差が大きくなる場合がある。
【0031】
例えば、
図2において、測定された電圧Eの値が、EaとEbの間である場合、推定される充電率Sは、SaからSbの間で大きい幅を持つ。したがって、充電率Sを高い精度で推定するためには、電圧Eの測定精度をできるだけ向上させる必要がある。
【0032】
(電圧測定装置による電圧測定方法)
図3A、
図3B、
図4を用いて、BMS14(電圧測定装置)による電圧測定方法を説明する。
図3Aは、組電池を構成する全ての電池セルの電圧の分布の一例を示す第1の図である。
図3Bは、組電池を構成する全ての電池セルの電圧の分布の一例を示す第2の図である。
図4は、実施形態に係る電圧測定装置による組電池の電圧測定方法を説明する図である。
【0033】
図3Aは、電圧計20が測定した組電池10を構成する全ての電池セル12(12a,12b,12c,…)の電圧Eの測定結果の頻度分布を示すヒストグラムH1である。即ち、ヒストグラムH1の横軸は、各電池セル12a,12b,12c,…の電圧Eを表す。そして、ヒストグラムH1の縦軸は、頻度Fを表す。
【0034】
BMS14(電圧測定装置)は、ヒストグラムH1における電圧Eのばらつきを算出する。そして、BMS14は、ヒストグラムH1の横軸を、電圧Eのばらつきに応じたクラス幅Bで分割する。
【0035】
具体的には、BMS14は、測定された全ての電池セル12(12a,12b,12c,…)の平均電圧Evと分散とを算出する。
【0036】
そして、BMS14は、算出された分散に応じたクラス幅Bを決定する。このとき、BMS14は、分散が小さいほど狭いクラス幅Bを決定する。言い換えると、BMS14は、分散が大きいほど広いクラス幅Bを決定する。なお、分散の代わりに、電圧Eのばらつきを表す量、例えば標準偏差に基づいて、クラス幅Bを決定してもよい。
【0037】
更に、BMS14は、ヒストグラムH1の横軸を、平均電圧Evを中心として、クラス幅Bで等間隔に分割する。これにより、
図3Aに示すように、ヒストグラムH1は、平均電圧Evを中心として、クラス幅B=Baの電圧範囲(電圧クラス)に分割される。
【0038】
一方、
図3Bに示すヒストグラムH2が得られた場合、電圧Eの分散が
図3Aに比べて大きいため、BMS14は、ヒストグラムH2を、平均電圧Evを中心として、クラス幅B=Bb(>Ba)の電圧範囲(電圧クラス)に分割する。
【0039】
BMS14は、前記の手順で設定されたクラス幅Bに属する電池セルの頻度Fを算出する。そして、最も高い頻度Fを有する電圧範囲を選択する。
【0040】
例えば、
図4に示す例において、BMS14は、測定された全ての電池セル12(12a,12b,12c,…)の電圧測定結果を示すヒストグラムH3を、クラス幅Bで分割することによって、クラスC1,クラスC2,クラスC3,クラスC4,クラスC5を設定する。
【0041】
BMS14は、クラスC1,クラスC2,クラスC3,クラスC4,クラスC5の中で、最も頻度Fが高いクラスを決定する。
図4の場合、クラスC2が選択される。そして、BMS14は、クラスC2に属する全ての電池セルの平均電圧を、組電池10の電圧とする。
【0042】
図4は誇張して描いているが、一般には、組電池10を構成する電池セル12(12a,12b,12c,…)の電圧は、電力の消費とともに均等に減少する。したがって、最も頻度が高い電圧範囲を外れた電池セルの数は極少ない。そのため、
図4において、クラスC2に属する全ての電池セルの平均電圧を、組電池10の電圧としても実質的には問題ない。
【0043】
なお、組電池10を構成する電池セル12(12a,12b,12c,…)の中に、電力の消費とともに、電圧が均等に減少しない電池セルが混入している場合には、頻度Fが最も高い電圧範囲以外の電圧範囲、例えば、
図4に示すクラスC1,クラスC3,クラスC4,クラスC5に該当する電池セルが出現する場合がある。このような場合に、BMS14は、頻度Fが最も高い電圧範囲に属する電池セルの平均電圧と、頻度Fが最も高い電圧範囲以外の電圧範囲に属する個々の電池セルの電圧とから、組電池10の電圧を決定してもよい。例えば、BMS14は、頻度Fが最も高い電圧範囲に属する電池セルの識別情報と、頻度Fが最も高い電圧範囲以外の電圧範囲に属する、個々の電池セルの識別情報とを取得する。そして、BMS14は、組電池10を構成する電池セル12(12a,12b,12c,…)の等価回路に、頻度Fが最も高い電圧範囲に属する電池セルの平均電圧と、頻度Fが最も高い電圧範囲以外の電圧範囲に属する電池セルの電圧とを当てはめて、組電池10の電圧を決定してもよい。
【0044】
(BMSの機能構成)
図5を用いて、BMS14(電圧測定装置)の機能構成を説明する。
図5は、実施形態に係る電圧測定装置の機能構成の一例を示す機能ブロック図である。
【0045】
BMS14は、ROM16に格納された制御プログラムをRAM17に展開して実行する。これにより、BMS14は、
図5に示す計時処理部31と、セル電圧測定部32と、電圧クラス幅設定部33と、電池セル分類部34と、最高頻度クラス決定部35と、平均電圧算出部36と、最高頻度クラス外電圧取得部37と、電圧補正部38と、電圧決定部39と、SOC推定部40とを、機能部として実現する。
【0046】
計時処理部31は、組電池10が休止してからの経過時間を測定する。BMS14は、組電池10の動作が停止してから所定時間経過した後で、電池セル12(12a,12b,12c,…)の電圧Eを測定する。このような測定を行うのは、組電池10の動作によって電池セル12(12a,12b,12c,…)の内部に発生する分極が解消するのを待ってから電圧Eを測定することで、できるだけ正しい電圧Eを取得するためである。
【0047】
セル電圧測定部32は、組電池10が備える全ての電池セル12(12a,12b,12c,…)の電圧Eをそれぞれ測定する。
【0048】
電圧クラス幅設定部33は、測定された全ての電池セル12(12a,12b,12c,…)の電圧Eを分類する際のクラス幅Bを設定する。より具体的には、電圧クラス幅設定部33は、セル電圧測定部32が測定した全ての電池セル12(12a,12b,12c,…)の電圧Eのばらつきに基づいて、当該ばらつきが大きいほど、クラス幅B(電圧範囲)を広く設定する。
【0049】
電池セル分類部34は、複数の電池セル12(12a,12b,12c,…)を、セル電圧測定部32が測定した電圧Eに基づいて、電圧クラス幅設定部33が設定した電圧範囲に分類する。
【0050】
最高頻度クラス決定部35は、電池セル分類部34が分類した結果に基づいて、最も頻度が高い電圧範囲を決定する。
【0051】
平均電圧算出部36は、電池セル分類部34によって分類された電圧範囲の中で、最も頻度が高い電圧範囲に属する電池セルの電圧Eの平均電圧を算出する。また、平均電圧算出部36は、最も頻度が高い電圧範囲に属する電池セルの識別情報(例えば、電池セルを一意に特定するID番号等)を取得する。
【0052】
最高頻度クラス外電圧取得部37は、頻度Fが最も高い電圧範囲(電圧クラス)以外の電圧範囲に属する電池セルの電圧と、当該電池セルの識別情報とを取得する。
【0053】
電圧補正部38は、必要に応じて、平均電圧算出部36が算出した平均電圧、および、最高頻度クラス外電圧取得部37が取得した電池セルの電圧を、電池セルの劣化度(電池セルの使用時間)や環境温度等に応じて補正する。具体的には、電圧補正部38は、予め作成された、電池セルの劣化度と電圧補正値の対応マップや、環境温度と電圧補正値の対応マップを参照することによって、測定された電圧Eを補正する。なお、このような補正を行うために、BMS14は、電池セル12(12a,12b,12c,…)の劣化度を推定するために必要な累積使用時間を測定する機能や、組電池10の周囲環境温度を測定する機能を備えてもよい。なお、電圧補正部38は、各々の電池セル12(12a,12b,12c,…)の電圧Eが属する電圧範囲に応じて、補正量を変更してもよい。例えば、電圧補正部38は、最も頻度が高い電圧範囲に属さない電池セルの電圧Eの補正量を、最も頻度が高い電圧範囲に属する電池セルの電圧Eの補正量より大きくしてもよい。反対に、最も頻度が高い電圧範囲に属する電池セルの電圧Eの補正量を、より大きくしてもよい。
【0054】
電圧決定部39は、平均電圧算出部36が算出した平均値と、最高頻度クラス外電圧取得部37が取得した電池セルの電圧とに基づいて、組電池10が備える個々の電池セル12(12a,12b,12c,…)の電圧を決定する。具体的には、組電池10が備える全ての電池セルが、平均電圧算出部36が算出した平均電圧を有しているものとして、組電池10の電圧(個々の電池セルの電圧)を決定する。また、最も頻度が高い電圧範囲の電池セルについては、平均電圧算出部36が算出した平均電圧を有しているものとして、最も頻度が高い電圧範囲に属さない電池セルについては、最高頻度クラス外電圧取得部37が取得した電圧を有しているものとして、組電池10が備える個々の電池セル12(12a,12b,12c,…)の電圧を決定してもよい。なお、電圧決定部39が電圧を決定する際に、電圧補正部38が補正した電圧を用いてもよい。
【0055】
SOC推定部40は、電圧決定部39が決定した組電池10の電圧に基づいて、組電池10の充電率S(SOC)を推定する。SOC推定部40は、例えば、
図2に示す組電池の電圧Eと充電率Sとの関係に基づいて、充電率Sを推定する。なお、SOC推定部40は、本開示における推定部の一例である。
【0056】
なお、SOC推定部40は、推定したSOCの使用方法に応じて、電圧決定部39が決定した電圧を使い分けるのが望ましい。例えば、推定したSOCをユーザに提示する場合は、平均電圧算出部36が算出した、最も頻度が高い電圧範囲に属する電池セルの平均電圧を用いて、SOCを推定する。また、推定したSOCを用いて、車両の車速を上げる(パワーを出す)制御を行う場合は、最も頻度が高い電圧範囲よりも低い電圧範囲に属する電池セルの電圧、またはセル電圧の最小値を用いて、SOCを推定するのが望ましい。これは、車速を上げすぎることによって組電池10のSOCが不足するのを抑制するためである。更に、推定したSOCを用いて、電池セルの充電量を決定する場合には、過充電を防止するために、最も頻度が高い電圧範囲よりも高い電圧範囲に属する電池セルの電圧、またはセル電圧の最大値を用いて、SOCの最大値を推定するのが望ましい。
【0057】
(BMSが行う処理の流れ)
図6を用いて、BMS14(電圧測定装置)が行う処理の流れを説明する。
図6は、実施形態に係る電圧測定装置が行う電圧測定処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0058】
計時処理部31は、組電池10が休止してから所定時間以上経過したかを判定する(ステップS11)。組電池10が休止してから所定時間以上経過したと判定される(ステップS11:Yes)とステップS12に進む。一方、組電池10が休止してから所定時間以上経過したと判定されない(ステップS11:No)とステップS11の判定を繰り返す。
【0059】
ステップS11において、組電池10が休止してから所定時間以上経過したと判定されると、セル電圧測定部32は、組電池10が備える全ての電池セル12(12a,12b,12c,…)の電圧Eをそれぞれ測定する(ステップS12)。
【0060】
電圧クラス幅設定部33は、セル電圧測定部32が測定した全ての電池セル12(12a,12b,12c,…)の電圧Eを分類する際のクラス幅B(電圧範囲)を設定する(ステップS13)。
【0061】
電池セル分類部34は、電池セル12(12a,12b,12c,…)を、それぞれの電圧Eに基づいて、電圧クラス幅設定部33が設定した電圧範囲に分類する(ステップS14)。
【0062】
最高頻度クラス決定部35は、電池セル分類部34が分類した結果に基づいて、最も頻度が高い電圧クラスを決定する(ステップS15)。
【0063】
平均電圧算出部36は、最高頻度クラス決定部35が決定した、最も頻度が高い電圧クラスに属する電池セルの電圧Eの平均電圧を算出する(ステップS16)。
【0064】
最高頻度クラス外電圧取得部37は、頻度Fが最も高い電圧クラスと異なる電圧クラスに属する電池セルがあるかを判定する(ステップS17)。頻度Fが最も高い電圧クラスと異なる電圧クラスに属する電池セルがあると判定される(ステップS17:Yes)とステップS18に進む。一方、頻度Fが最も高い電圧クラスと異なる電圧クラスに属する電池セルがあると判定されない(ステップS17:No)と、ステップS19に進む。
【0065】
ステップS17において、頻度Fが最も高い電圧クラスと異なる電圧クラスに属する電池セルがあると判定されると、最高頻度クラス外電圧取得部37は、該当する電圧クラスに属する電池セルの電圧と当該電池セルの識別情報(例えば電池セルのセル番号等)とを取得する(ステップS18)。
【0066】
電圧補正部38は、必要に応じて、平均電圧算出部36が算出した平均電圧、および、最高頻度クラス外電圧取得部37が取得した電池セルの電圧を、環境温度や電池セルの劣化度に基づいて補正する(ステップS19)。
【0067】
電圧決定部39は、平均電圧算出部36が算出した平均値を、組電池10が備える電池セル12(12a,12b,12c,…)の各々の電圧とする(ステップS20)。なお、電圧決定部39は、平均電圧算出部36が算出した平均値と、最高頻度クラス外電圧取得部37が取得した電池セルの電圧とを組み合わせて、組電池10が備える電池セルの各々の電圧としてもよい。また、電圧決定部39は、電圧補正部38が補正した電圧に基づいて組電池10が備える電池セルの各々の電圧を決定してもよい。
【0068】
SOC推定部40は、電圧決定部39が決定した組電池10が備える電池セル12(12a,12b,12c,…)の各々の電圧に基づいて、組電池10の充電率S(SOC)を推定する(ステップS21)。その後、BMS14(電圧測定装置)は、
図6の処理を終了する。
【0069】
(実施形態の作用効果)
以上説明したように、本実施形態に係るBMS14(電圧測定装置)は、複数の電池セル12(12a,12b,12c,…)を備える組電池10の電圧を測定する組電池の電圧測定装置であって、全ての電池セル12(12a,12b,12c,…)の電圧Eをそれぞれ測定するセル電圧測定部32と、複数の電池セル12(12a,12b,12c,…)を、セル電圧測定部32が測定した電圧Eに基づいて、所定のクラス幅B(電圧範囲)に分類する電池セル分類部34と、電池セル分類部34によって分類されたクラス幅Bの中で、最も頻度が高いクラス幅Bに属する電池セルの電圧の平均値を、組電池10が備える複数の電池セル12(12a,12b,12c…)の各々の電圧とする電圧決定部39と、を備える。したがって、組電池10の電圧を精度よく測定することができる。
【0070】
また、本実施形態に係るBMS14(電圧測定装置)において、電池セル分類部34は、セル電圧測定部32が測定した全ての電池セル12(12a,12b,12c,…)の電圧のばらつきに基づいて、当該ばらつきが大きいほど、クラス幅B(電圧範囲)を広く設定する。したがって、組電池を構成する個々の電池セルの電圧にばらつきがあった場合であっても、組電池10の電圧をより一層精度よく測定することができる。
【0071】
また、本実施形態に係るBMS14(電圧測定装置)において、電圧決定部39は、最も頻度が高いクラス幅B(電圧範囲)に属する電池セル12の電圧の平均値と、最も頻度が高いクラス幅Bに属さない電池セル12の電圧と、に基づいて、組電池10が備える複数の電池セル12(12a,12b,12c,…)の各々の電圧を決定する。したがって、平均値から大きく外れた電池セル12の状態も加味して組電池10の電圧を推定するため、電圧の測定精度をより一層向上させることができる。
【0072】
また、本実施形態に係るBMS14(電圧測定装置)は、電圧決定部39が決定した電圧を、組電池10の状態に応じて補正する電圧補正部38を、更に備える。したがって、組電池10の状態に応じて電圧を補正するため、電圧測定精度をより一層向上させることができる。
【0073】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、上述した実施の形態は、例として提示したものであり、本発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施の形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能である。また、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。また、この実施の形態は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0074】
10 組電池
12,12a,12b,12c 電池セル
14 BMS(電圧測定装置)
19 A/D変換器
20 電圧計
31 計時処理部
32 セル電圧測定部
33 電圧クラス幅設定部
34 電池セル分類部
35 最高頻度クラス決定部
36 平均電圧算出部
37 最高頻度クラス外電圧取得部
38 電圧補正部
39 電圧決定部
40 SOC推定部(推定部)
B クラス幅(電圧範囲)
C1,C2,C3,C4,C5 クラス
E 電圧
Ev 平均電圧
F 頻度
H1,H2,H3 ヒストグラム
S 充電率(SOC)