(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024058965
(43)【公開日】2024-04-30
(54)【発明の名称】光通信システムにおける送信機、ネスト型変調器の制御方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
H04B 10/079 20130101AFI20240422BHJP
G02F 1/01 20060101ALI20240422BHJP
H04B 10/516 20130101ALI20240422BHJP
【FI】
H04B10/079 190
G02F1/01 B
H04B10/516
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022166415
(22)【出願日】2022-10-17
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和3年度、国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構、戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)事業「光・量子を活用したSociety5.0実現化技術/社会実装に向けた量子暗号装置の研究開発」に関する委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124811
【弁理士】
【氏名又は名称】馬場 資博
(74)【代理人】
【識別番号】100088959
【弁理士】
【氏名又は名称】境 廣巳
(74)【代理人】
【識別番号】100097157
【弁理士】
【氏名又は名称】桂木 雄二
(74)【代理人】
【識別番号】100187724
【弁理士】
【氏名又は名称】唐鎌 睦
(72)【発明者】
【氏名】吉野 健一郎
【テーマコード(参考)】
2K102
5K102
【Fターム(参考)】
2K102AA21
2K102BA03
2K102BB01
2K102BB04
2K102BC04
2K102BD01
2K102CA09
2K102DA02
2K102DB05
2K102EA02
2K102EA21
2K102EA25
2K102EB20
2K102EB22
5K102AA51
5K102AB11
5K102AH02
5K102AH26
5K102AH27
5K102LA04
5K102LA52
5K102MA01
5K102MB04
5K102MB12
5K102MD01
5K102MD04
5K102MH03
5K102MH14
5K102MH32
5K102PA01
5K102PB01
5K102PH02
5K102PH31
5K102PH42
5K102RB01
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ネスト型変調器を用いて受信側のビット誤り率を最小化する送信機、ネスト型変調器のバイアス制御方法、光通信システム及びプログラムを提供する。
【解決手段】光通信システムにおいて、送信機10は、並列接続されたマッハツェンダ(MZ)型の第1変調部MZ
Aおよび第2変調部MZ
Bと位相シフタ101とを備えたネスト型変調器100を有し、送信情報に従って2連光パルスの相対位相を2値変調する位相変調と2連光パルスのいずれか一方を強度0に変調する強度変調とにより2連光パルスを強度位相変調して受信機20へ送信し、受信機での受信情報と送信情報とに基づいて、制御部112が強度変調に関する第1誤り率ER
Zを最小化するように第1変調器および第2変調器のそれぞれのバイアス電圧DC
A,DC
Bを制御し、制御部111が位相変調に関する第2誤り率ER
Yを最小化するように位相シフタ101のバイアス電圧DC
Cを制御する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光通信システムにおける送信機であって、
マッハツェンダ(MZ)型の第1変調部および第2変調部が並列接続され、前記第1変調部および前記第2変調部の出力光の間に所定の位相差を与える位相シフタを備えたネスト型変調器と、
前記ネスト型変調器を制御する制御部と、
を有し、前記制御部が、
a)送信情報に従って、2連光パルスの相対位相を2値変調する位相変調と前記2連光パルスのいずれか一方を強度0に変調する強度変調とにより前記2連光パルスを強度位相変調して受信機へ送信し、
b)前記受信機での受信情報と前記送信情報とに基づいて、前記強度変調に関する第1誤り率を最小化するように前記第1変調器および前記第2変調器のそれぞれのバイアス電圧を制御し、
c)前記受信機での受信情報と前記送信情報とに基づいて、前記位相変調に関する第2誤り率を最小化するように前記位相シフタのバイアス電圧を制御する、
ことを特徴とする送信機。
【請求項2】
前記制御部が前記b)により前記第1誤り率を最小化した後に前記c)を実行することを特徴とする請求項1に記載の送信機。
【請求項3】
前記制御部が前記ネスト型変調器を制御して前記2連光パルスをIQ平面に配置された4信号点の間で変化させ、前記4信号点の第1信号点の強度が0、第2信号点の相対的強度が1、第3信号点の相対的強度および第4信号点の相対的強度がそれぞれ前記0と前記1との間の値にあり、前記第3信号点と前記第4信号点とが90°の位相差を有し、
前記制御部が前記第1変調器および前記第2変調器のそれぞれのバイアス電圧を制御して前記第1信号点を強度0に設定し、
前記制御部が前記位相シフタのバイアス電圧を制御して前記第3信号点および前記第4信号点との間の位相差を90°に設定する、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の送信機。
【請求項4】
前記ネスト型変調器が、コヒーレントな2連光パルスに対して位相-時間コーディング方式に従って強度位相変調を実行し、
前記制御部が、前記位相-時間コーディング方式のZ基底状態を前記強度変調により生成し、Y基底状態を前記位相変調により生成することを特徴とする請求項1または2に記載の送信機。
【請求項5】
マッハツェンダ(MZ)型の第1変調部および第2変調部が並列接続され前記第1変調部および前記第2変調部の出力光の間に所定の位相差を与える位相シフタを備えたネスト型変調器と、前記ネスト型変調器を制御する制御部と、を有する送信機における前記ネスト型変調器のバイアス制御方法であって、
前記制御部が、
a)送信情報に従って前記ネスト型変調器の前記第1変調部と前記第2変調部とを制御し、2連光パルスの相対位相を2値変調する位相変調と前記2連光パルスのいずれか一方を強度0に変調する強度変調とにより前記2連光パルスを強度位相変調して受信機へ送信し、
b)前記受信機での受信情報と前記送信情報とに基づいて、前記強度変調に関する第1誤り率を最小化するように前記第1変調器および前記第2変調器のそれぞれのバイアス電圧を制御し、
c)前記受信機での受信情報と前記送信情報とに基づいて、前記位相変調に関する第2誤り率を最小化するように前記位相シフタのバイアス電圧を制御する、
ことを特徴とするネスト型変調器のバイアス制御方法。
【請求項6】
前記制御部が、
前記強度位相変調された2連光パルスを受信した前記受信機との間で、前記強度変調に関する第1誤り率と前記位相変調に関する第2誤り率とを計算するために前記受信機での受信情報および前記送信情報のそれぞれの一部を公開する、
ことを特徴とする請求項5に記載のネスト型変調器のバイアス制御方法。
【請求項7】
送信機と受信機とからなる光通信システムであって、
前記送信機が、
マッハツェンダ(MZ)型の第1変調部および第2変調部が並列接続され前記第1変調部および前記第2変調部の出力光の間に所定の位相差を与える位相シフタを備えたネスト型変調器と、
前記ネスト型変調器を制御する制御部と、
を有し、前記制御部が、送信情報に従って2連光パルスの相対位相を2値変調する位相変調と前記2連光パルスのいずれか一方を強度0に変調する強度変調により前記2連光パルスを強度位相変調して受信機へ送信し、
前記受信機が、
前記強度位相変調された2連光パルスを受信して受信情報を取得する受信ユニットと、
前記受信情報に基づいて前記強度変調に関する第1誤り率と前記位相変調に関する第2誤り率と計算する誤り率算出部と、
を有し、
前記送信機および前記受信機の間で前記受信情報および前記送信情報のそれぞれの一部を公開し、前記受信機の前記誤り算出部が前記公開された情報を用いて前記第1誤り率と前記第2誤り率とを計算し、
前記送信機の前記制御部が、前記第1誤り率を最小化するように前記第1変調器および前記第2変調器のそれぞれのバイアス電圧を制御し、前記第2誤り率を最小化するように前記位相シフタのバイアス電圧を制御する、
ことを特徴とする光通信システム。
【請求項8】
前記ネスト型変調器が、コヒーレントな2連光パルスに対して位相-時間コーディング方式に従って強度位相変調を実行し、
前記制御部が、前記位相-時間コーディング方式のZ基底状態を前記強度変調により生成し、Y基底状態を前記位相変調により生成し、
前記受信機において、
前記受信ユニットが前記位相-時間コーディング方式に従って強度位相変調された2連光パルスから前記Z基底状態および前記Y基底状態からなる受信情報を出力し、
前記誤り算出部が、前記Z基底状態に関するZ基底誤り率を計算し、前記Y基底状態に関するY基底誤り率を計算し、
前記Z基底誤り率および前記Y基底誤り率をそれぞれ前記第1誤り率および前記第2誤り率として前記送信機へ通知する、
ことを特徴とする請求項7に記載の光通信システム。
【請求項9】
マッハツェンダ(MZ)型の第1変調部と第2変調部とが並列接続され、前記第1変調部および前記第2変調部の出力光の間に所定の位相差を与える位相シフタを備えたネスト型変調器を制御する制御部としてコンピュータを機能させるためのプログラムであって、
a)送信情報に従って、2連光パルスの相対位相を2値変調する位相変調と前記2連光パルスのいずれか一方を強度0に変調する強度変調とにより前記2連光パルスを強度位相変調して受信機へ送信する機能と、
b)前記受信機での受信情報と前記送信情報とに基づいて、前記強度変調に関する第1誤り率を最小化するように前記第1変調器および前記第2変調器のそれぞれのバイアス電圧を制御する機能と、
c)前記受信機での受信情報と前記送信情報とに基づいて、前記位相変調に関する第2誤り率を最小化するように前記位相シフタのバイアス電圧を制御する機能と、
を前記コンピュータに実現させることを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は位相-時間コーディング方式を用いた光通信システムに係り、特に送信機におけるネスト型変調器の制御技術に関する。
【背景技術】
【0002】
位相-時間コーディング(YZ基底)方式は、2連光パルスの相対位相を2値変調し、2連光パルスのいずれか一方を強度0に強度変調することで、
図1に示す4状態を生成できる。すなわち、前パルスp1が後パルスp2に対して位相が90°進んだY0状態;90°遅れたY1状態;前パルスP1だけが消光したZ0状態;および後パルスP2だけが消光したZ1状態である。
【0003】
特許文献1は、このような4状態を生成するネスト型変調器およびその制御方法を開示している。ネスト型変調器は親干渉計と2つの子干渉計とからなり、2つの子干渉計をMZ(Mach-Zehnder)変調器MZAおよびMZB、親干渉計をMZ干渉計MZCとする。特許文献1によれば、MZ変調器MZAおよびMZBに所定の位相変調を与えるRF電圧を所定の順序で印加し、MZ干渉計MZCに所定の位相差φを与える電圧を印加する。これにより強度0を含む位相-時間コーディング方式に必要な4状態が生成される。
【0004】
正確な位相差0°/90°および強度0/1からなる4状態(Y0、Y1、Z0、Z1)を生成するためには、各MZ変調器の変調動作点が正しく設定されていることが必要である。MZ変調器MZAおよびMZBは、それぞれのDCバイアス電圧によって位相変調動作点が調整される。MZ変調器MZCはDCバイアス電圧によって所定の位相差φを維持するように調整される。しかしながら、実際には最適なDCバイアス電圧は経時変化するので、DCバイアス電圧を調整するメカニズムが必要である。特許文献1によれば、MZ変調器MZA、MZBおよびMZのそれぞれの出力光強度をモニタし、期待通りの位相変調結果が得られるようにそれぞれのDCバイアスを制御する。
【0005】
別の方法として、受信側のビット誤り率をモニタして送信側変調器のDCバイアスを制御する方法が特許文献2に開示されている。特許文献2によれば、量子通信システムにおける受信側の量子ビット誤り率QBERを最小化するように、送信側の位相変調器のDCバイアスが制御される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開WO2020/189348パンフレット
【特許文献2】特開2019-216413号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献2に開示されたDCバイアス制御方法は、送信器と受信器との間で非対称MZ干渉計のアーム長マッチングを調整する一手段に過ぎない。特許文献2によれば、受信器が量子ビット誤り率QBERを計算して送信器へフィードバックする。送信器はフィードバックされたQBERを最小化するように非対称MZ干渉計の一方のアームに設けられた位相変調器のDCバイアスを調整する。このように、特許文献2は非対称MZ干渉計を前提としたDCバイアス制御方法を開示しているだけであり、ネスト型変調器のDCバイアスをどのように制御するのかを教示していない。
【0008】
本発明の目的は、ネスト型変調器を用いて受信側のビット誤り率を最小化する送信機、光通信システム、ネスト型変調器のバイアス制御方法およびプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様によれば、本発明による送信機は、光通信システムにおける送信機であって、マッハツェンダ(MZ)型の第1変調部および第2変調部が並列接続され、前記第1変調部および前記第2変調部の出力光の間に所定の位相差を与える位相シフタを備えたネスト型変調器と、前記ネスト型変調器を制御する制御部と、を有し、前記制御部が、a)送信情報に従って、2連光パルスの相対位相を2値変調する位相変調と前記2連光パルスのいずれか一方を強度0に変調する強度変調とにより前記2連光パルスを強度位相変調して受信機へ送信し、b)前記受信機での受信情報と前記送信情報とに基づいて、前記強度変調に関する第1誤り率を最小化するように前記第1変調器および前記第2変調器のそれぞれのバイアス電圧を制御し、c)前記受信機での受信情報と前記送信情報とに基づいて、前記位相変調に関する第2誤り率を最小化するように前記位相シフタのバイアス電圧を制御する、ことを特徴とする。
本発明の他の態様によれば、本発明によるネスト型変調器のバイアス制御方法は、マッハツェンダ(MZ)型の第1変調部および第2変調部が並列接続され前記第1変調部および前記第2変調部の出力光の間に所定の位相差を与える位相シフタを備えたネスト型変調器と、前記ネスト型変調器を制御する制御部と、を有する送信機における前記ネスト型変調器のバイアス制御方法であって、前記制御部が、a)送信情報に従って前記ネスト型変調器の前記第1変調部と前記第2変調部とを制御し、2連光パルスの相対位相を2値変調する位相変調と前記2連光パルスのいずれか一方を強度0に変調する強度変調とにより前記2連光パルスを強度位相変調して受信機へ送信し、b)前記受信機での受信情報と前記送信情報とに基づいて、前記強度変調に関する第1誤り率を最小化するように前記第1変調器および前記第2変調器のそれぞれのバイアス電圧を制御し、c)前記受信機での受信情報と前記送信情報とに基づいて、前記位相変調に関する第2誤り率を最小化するように前記位相シフタのバイアス電圧を制御する、ことを特徴とする。
本発明の一態様によれば、本発明による光通信システムは、送信機と受信機とからなる光通信システムであって、前記送信機が、マッハツェンダ(MZ)型の第1変調部および第2変調部が並列接続され前記第1変調部および前記第2変調部の出力光の間に所定の位相差を与える位相シフタを備えたネスト型変調器と、前記ネスト型変調器を制御する制御部と、を有し、前記制御部が、送信情報に従って2連光パルスの相対位相を2値変調する位相変調と前記2連光パルスのいずれか一方を強度0に変調する強度変調により前記2連光パルスを強度位相変調して受信機へ送信し、前記受信機が、前記強度位相変調された2連光パルスを受信して受信情報を取得する受信ユニットと、前記受信情報に基づいて前記強度変調に関する第1誤り率と前記位相変調に関する第2誤り率と計算する誤り率算出部と、を有し、前記送信機および前記受信機の間で前記受信情報および前記送信情報のそれぞれの一部を公開し、前記受信機の前記誤り算出部が前記公開された情報を用いて前記第1誤り率と前記第2誤り率とを計算し、前記送信機の前記制御部が、前記第1誤り率を最小化するように前記第1変調器および前記第2変調器のそれぞれのバイアス電圧を制御し、前記第2誤り率を最小化するように前記位相シフタのバイアス電圧を制御する、ことを特徴とする。
本発明の一態様によれば、本発明によるプログラムは、マッハツェンダ(MZ)型の第1変調部と第2変調部とが並列接続され、前記第1変調部および前記第2変調部の出力光の間に所定の位相差を与える位相シフタを備えたネスト型変調器を制御する制御部としてコンピュータを機能させるためのプログラムであって、a)送信情報に従って、2連光パルスの相対位相を2値変調する位相変調と前記2連光パルスのいずれか一方を強度0に変調する強度変調とにより前記2連光パルスを強度位相変調して受信機へ送信する機能と、b)前記受信機での受信情報と前記送信情報とに基づいて、前記強度変調に関する第1誤り率を最小化するように前記第1変調器および前記第2変調器のそれぞれのバイアス電圧を制御する機能と、c)前記受信機での受信情報と前記送信情報とに基づいて、前記位相変調に関する第2誤り率を最小化するように前記位相シフタのバイアス電圧を制御する機能と、を前記コンピュータに実現させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ネスト型変調器を用いて受信側のビット誤り率を最小化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は背景技術としての位相-時間コーディングの一例を示すYZ基底状態図である。
【
図2】
図2は本発明の一実施形態による送信機と受信機とからなる光通信システムの概略的構成を示すブロック図である。
【
図3】
図3は本実施形態による送信機と受信機とからなる光通信システムの概略的動作を示すシーケンス図である。
【
図4】
図4は
図3におけるバイアス制御の一例を示すフローチャートである。
【
図5】
図5は本発明の一実施例による量子暗号鍵配付システムの概略的構成を示すブロック図である。
【
図6】
図6は
図5に示すネスト型変調器におけるMZ変調器の平面構成の一例を示す概略的構成図である。
【
図7】
図7は
図5に示すネスト型変調器により得られる光パルスのI-Q平面上の信号点配置の一例を示す図である。
【
図8】
図8は本実施例で用いられるネスト型変調器の一例を示す概略的構成図である。
【
図9】
図9は、
図8に示すネスト型変調器の動作を説明するために、振幅および位相の変化、最終的に得られる信号点配置、およびDCバイアス電圧と信号点との関係を示す図である。
【
図10】
図10は、
図8に示すネスト型変調器による光変調方法の一例を示すタイミングチャートである。
【
図11】
図11は、
図8に示すネスト型変調器により得られるI-Q平面上の信号点配置がバイアス電圧DC
Cの変化によりどのように変位するかを例示する図である。
【
図12】
図12は、
図8に示すネスト型変調器により得られるI-Q平面上の信号点配置がバイアス電圧DC
Aの変化によりどのように変位するかを例示する図である。
【
図13】
図13は、
図8に示すネスト型変調器により得られるI-Q平面上の信号点配置がバイアス電圧DC
Bの変化によりどのように変位するかを例示する図である。
【
図14】
図14は本実施例による量子暗号鍵配付システムにおける受信機の第1例を示す概略的ブロック図である。
【
図15】
図15は本実施例による量子暗号鍵配付システムにおける受信機の第2例を示す概略的ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<実施形態の概要>
本発明の実施形態によれば、送信機はネスト型変調器とそれを制御する制御部とを有する。ネスト型変調器は、干渉計を構成する2つの導波路(親アーム)により2つのMZ(Mach-Zehnder)変調器が並列接続され、それぞれのMZ変調器の出力光の間に所定の位相差を与える位相シフタを備える。
【0013】
制御部は、送信機と受信機の間で公開された情報に基づいて強度変調に関する第1誤り率(Z基底誤り率)を取得し、第1誤り率を最小化するように2つのMZ変調器のそれぞれのバイアス電圧を制御する。さらに制御部は、公開された情報に基づいて位相変調に関する第2誤り率(Y基底誤り率)を取得し、第2誤り率を最小化するように位相シフタのバイアス電圧を制御する。このように送信機におけるネスト型変調器のバイアス制御を行うことで、変調動作点を適切に設定することができ、受信側のビット誤り率を最小化することができる。
【0014】
以下、光通信システムとして量子暗号鍵配付(QKD)システムを例示し、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。ただし、以下の実施形態および実施例に記載されている構成要素は単なる例示であって、本発明の技術範囲をそれらのみに限定する趣旨ではない。
【0015】
1.実施形態
1.1)構成
図2に例示するように、本実施形態による光通信システムにおいて、送信機10と受信機20とは図示しない光伝送路(光ファイバあるいは自由空間など)を通して光学的に接続されている。さらに送信機10と受信機20とは、図示しないパケット網などの通信チャネルを通してデータ通信が可能である。
【0016】
送信機10は、ネスト型変調器100と鍵生成等を行う制御系とを有する。ただし、ここでは説明を簡略化するために、本実施形態に関係する変調制御部110、バイアス制御部111および112だけが図示されている。
【0017】
送信機10に使用されるネスト型変調器100は入れ子構造を有し、親干渉計であるMZ干渉計MZ
CのアームAおよびBに、2つの子干渉計であるMZ変調器MZ
AおよびMZ
Bがそれぞれ接続されている。さらに、親アームAおよびBの間で相対的な位相変調差φを与えるために、いずれか一方の親アーム(
図2では親アームB)に位相シフタ101が設けられる。変調制御部110は、送信情報である乱数に従ってMZ変調器MZ
AおよびMZ
Bに電圧RF
AおよびRF
Bをそれぞれ印加する。これにより、順次入力する2連光パルスP
INは、
図1に示す位相-時間コーディングの4状態Z0、Y0、Y1、Z1のいずれかに変調される。
【0018】
バイアス制御部111は、受信機20から通知されたY基底誤り率ERYに応じて、所定の位相差φを維持するように位相シフタ101に印加するDCバイアス電圧DCCを制御する。バイアス制御部112は、受信機20から通知されたZ基底誤り率ERZに応じて、位相変調動作点が適切に設定されるように、MZ変調器MZAおよびMZBにそれぞれ印加するDCバイアス電圧DCAをおよびDCBを制御する。
【0019】
このようにMZ変調器MZAおよびMZBと位相シフタ101とを制御することで、ネスト型変調器100は2連光パルスPINに対して位相-時間コーディング方式に従った4状態(Y0、Y1、Z0、Z1)の強度位相変調を行うことができる。こうして強度位相変調された2連光パルスPOUTは所定の強度まで減衰された後、受信機20へ送出される。
【0020】
受信機20は受信ユニット201およびデータ処理部202を有する。受信ユニット201は、送信機10から受信した2連光パルスから4状態(Y0、Y1、Z0、Z1)を検出し受信情報として出力する。受信ユニット201の具体例は後述する。
【0021】
データ処理部202は鍵生成部203および誤り率算出部204の機能をソフトウエアにより実現する。鍵生成部203は受信ユニット201から受信情報を入力し、BB84プロトコル等の周知の鍵生成手順に従って送信機10との間で基底照合を行い、基底の一致した受信情報を生成する。誤り率算出部204は、送信機10が公開した基底が一致した送信情報の一部と受信情報の一部とを照合しながら、Y基底誤り率ERYおよびZ基底誤り率ERZをそれぞれ算出し、送信機10へ通知する。
【0022】
送信機10では、バイアス制御部111がY基底誤り率ER
Yに応じてDCバイアス電圧DC
Cを制御し、バイアス制御部112がZ基底誤り率ER
Zに応じてDCバイアス電圧DC
AをおよびDC
Bを制御する。以下、バイアス制御のシーケンスについて
図3を参照しながら説明する。
【0023】
1.2)バイアス制御
図3において、送信機10は、上述したように送信情報(乱数)に従って2連光パルスをネスト型変調器100により強度位相変調し、所定強度(単一光子レベル以下)に減衰した後、受信機20へ伝送する(動作S1)。受信機20で受信できた2連光パルスから得られた情報を生鍵という。光伝送路で多くの光パルスが失われ、あるいはノイズにより誤って受信され得る。なお、同期信号等を用いて送信機10と受信機20との間でビット位置の同期が確立しているものとする。
【0024】
続いて、送信機10と受信機20との間で基底照合が行われ、基底YあるいはZが一致したビットのみが抽出されてシフト鍵が生成される(動作S2)。基底照合は、受信機20が受信した生鍵について送信機10および受信機20がそれぞれ選択した基底Y/Zを公開し、同じ基底を選択した送信側の乱数と受信側の生鍵のみをシフト鍵として抽出する。
【0025】
続いて、送信機10と受信機20との間でシフト鍵の一部(全体の数%程度)を公開し、受信機20のシフト鍵のZ基底における誤り率ERZを計算する。送信機10のバイアス制御部112は、Z基底における誤り率ERZを最小化するようにネスト型変調器100のMZ変調器MZAおよびMZBのDCバイアス電圧DCAをおよびDCBを制御する(動作S3)。なお、誤り率の計算のために公開された鍵は破棄される。
【0026】
子干渉計であるMZ変調器MZAおよびMZBのDCバイアス制御にZ基底の誤り率ERZが使用される理由は次の通りである。Z基底の誤り率ERZが最小であることと、Z基底でのパルスP1あるいはP2の一方が強度0の消光状態であることとは等価である。またネスト型変調器100が出力するパルス強度を0にするにはMZ変調器MZAおよびMZBを共に消光状態にする。このためにMZ変調器MZAおよびMZBの変調動作点をDCバイアス電圧DCAおよびDCBにより適切に設定する必要がある。したがって、MZ変調器MZAおよびMZBのDCバイアスを制御することでZ基底の誤り率ERZを最小化することが可能となる。
【0027】
Z基底における誤り率ERZを最小化した後、送信機10は、上述したように光子伝送を行い(動作S4)、送信機10と受信機20との間で基底照合によりシフト鍵が生成される(動作S5)。
【0028】
続いて、送信機10と受信機20との間でシフト鍵の一部を公開し、受信機20のシフト鍵のY基底における誤り率ERYを計算する。送信機10のバイアス制御部112は、Y基底における誤り率ERYを最小化するように親干渉計であるMZ干渉計MZCのDCバイアス電圧DCCを制御する(動作S6)。なお、誤り率の計算のために公開された鍵は破棄される。
【0029】
MZ干渉計MZ
CのDCバイアス制御にY基底の誤り率ER
Yが使用される理由は次の通りである。Y基底の誤り率ER
Yが最小であることと、Y基底の2つのパルスp1およびp2の位相差が90°であることとは等価である(詳しくは
図9および
図10を参照)。Y基底の2つのパルスp1およびp2の位相差は、位相シフタ101の位相φの大きさ、すなわち親干渉計であるMZ干渉計MZ
CのDCバイアス電圧DC
Cにより制御される。したがって、位相シフタ101のDCバイアスを制御することでY基底の2つのパルスp1およびp2の位相差を正確に90°に設定することができ、Y基底の誤り率ER
Yを最小化することが可能となる。
【0030】
図3に示すように、Z基底の誤り率ER
Zを最小化した後にY基底の誤り率ER
Yを最小化する方が動作点を適切な位置に速く収束させることができる。なぜならばMZ干渉計MZ
CのDCバイアス電圧DC
Cが外れていても、MZ変調器MZ
AおよびMZ
BのDCバイアスを最適値に収束させることできるが、逆にMZ変調器MZ
AおよびMZ
BのDCバイアスが外れていると、MZ干渉計MZ
CのDCバイアスが最適値に収束しないからである。詳しくは後述する(
図11~
図13を参照)。
【0031】
図4に例示するように、受信機20が誤り率算出部204を有する場合、Z基底あるいはY基底の誤り率に基づくバイアス制御は次のように実行される。送信機10は自局のシフト鍵の一部を受信機20へ通信チャネルを通して送信する(動作S31)。
【0032】
受信機20の誤り率算出部204は、送信機10から受信したシフト鍵の一部と自局の対応するシフト鍵の一部とを用いてZ/Y基底の誤り率ERを計算し(動作S32)、Z/Y基底の誤り率ERを送信機10へ通知する(動作S33)。
【0033】
送信機10のバイアス制御部(111あるいは112)は、受信機20から通知された誤り率ERが最小値か否かを判断する(動作S34)。最小値か否かは、誤り率が0に近いか否か、すなわち0に近い所定値以下であるか否かにより判断してもよいし、直近の複数の誤り率から最小値を特定することもできる。誤り率ERが最小値でなければ(動作S34のNO)、バイアス制御部は誤り率ERを最小化する方向にバイアス電圧を調整する(動作S35)。バイアス電圧が調整された後、上述した光子伝送および基底照合およびバイアス制御が繰り返され、誤り率ERが最小値になったときに終了し、次の処理へ進む。
【0034】
誤り率ERを最小化するバイアス電圧は次のように設定することもできる。まず、現在のバイアス電圧で誤り率ER1を計算し、続いてバイアス電圧を所定ステップαで増加(+α)および減少(-α)させて、誤り率ER2およびER3をそれぞれ計算する。こうして得られたER1、ER2およびER3のなかの最小値が得られるバイアス電圧を最適値として設定する。
【0035】
上述したように、バイアス制御部112は、Z基底の誤り率ERZが最小となるように、MZ変調器MZAおよびMZBにそれぞれ印加するDCバイアス電圧DCAをおよびDCBを制御する。Z基底の誤り率ERZが最小化された後、バイアス制御部111は、Y基底の誤り率ERYが最小となるように、MZ干渉計MZCの位相シフタ101に印加するDCバイアス電圧DCCを制御する。
【0036】
1.3)効果
以上述べたように、本実施形態によれば、送信機10と受信機20の間で公開された情報に基づいてZ基底誤り率ERZを取得し、Z基底誤り率ERZを最小化するように子干渉計であるMZ変調器MZAおよびMZBのそれぞれのバイアス電圧DCAおよびDCBを制御する。それに続いて、公開された情報に基づいてY基底誤り率ERYを取得し、Y基底誤り率ERYを最小化するように位相シフタ101のバイアス電圧DCCを制御する。
【0037】
このように送信機10におけるネスト型変調器100のバイアス制御を行うことで、変調動作点を適切に設定することができ、受信側のビット誤り率を最小化することができる。その際、Z基底誤り率ERZの最小化処理を先に実行し、その後でY基底誤り率ERYの最小化処理を実行することで、ネスト型変調器100を適切な動作点により速く収束させることができる。
【0038】
2.一実施例
次に、位相-時間コーディング方式のQKDシステムを例示し、本発明の一実施例による送信機(Alice)および受信機(Bob)についてより詳細に説明する。
【0039】
2.1)構成
図5に例示するように、本実施例による単一方向型QKDシステムは、送信機10と受信機20とが光伝送路で接続され、種々の量子暗号鍵配送アルゴリズムを用いて送信機10から受信機20へ量子鍵を配送することができる。また送信機10と受信機20とは通常の古典的通信チャネルを通して通信可能に接続されている。
【0040】
送信機10は、レーザ光源301、光送信系として非対称干渉計302、ネスト型変調器100および減衰器303を有し、更に制御系としてRF駆動回路310、バイアス駆動回路311,通信部312、コントローラ315およびプログラムメモリ314を有する。
【0041】
RF駆動回路310は、コントローラ313の制御に従って、ネスト型変調器100のMZ変調器MZAおよびMZBにRF電圧RFAをおよびRFBをそれぞれ印加する。バイアス駆動回路311は、コントローラ313の制御に従って、ネスト型変調器100のMZ変調器MZAおよびMZBにバイアス電圧DCAをおよびDCBをそれぞれ印加し、MZ干渉計MZCの位相シフタ101にバイアス電圧DCCを印加する。
【0042】
コントローラ313は、コンピュータプログラムを実行可能なプロセッサあるいはCPU(Central Processing Unit)である。すなわちプログラムメモリ314に格納されたプログラムを実行することにより、コントローラ313は、上述したDCバイアス電圧DCA、DCBおよびDCCの制御と、乱数に従ったRF電圧RFAをおよびRFBの制御を実行する。
【0043】
レーザ光源301から出力された光パルスは、非対称干渉計302を通ることでコヒーレントな2連光パルスに時間的に分割する。2連光パルス列はネスト型変調器100により位相-時間コーディング方式で乱数に従って符号化される(
図1を参照)。このように符号化された2連光パルス列は減衰器303により単一光子レベル以下に減衰された後、光伝送路を通して受信機20へ送信される。
【0044】
受信機20は、機能的構成として、上述した受信ユニット201、鍵生成部203、誤り算出部204および通信部205を含む。受信ユニット201は、送信機10から受信した2連光パルスから4状態(Y0、Y1、Z0、Z1)を検出し、生鍵として鍵生成部203へ出力する。鍵生成部203は、生鍵に基づいて通信部205を通して送信機10との間で基底照合を行い、基底が一致したシフト鍵を生成する。誤り率算出部204は、送信機10が公開したシフト鍵の一部と受信機20のシフト鍵の一部とを照合しながら、Y基底誤り率ERYおよびZ基底誤り率ERZをそれぞれ算出し、通信部205を通して送信機10へ通知する。
【0045】
送信機10は、通信部312を通して受信機20からY基底誤り率ERYおよびZ基底誤り率ERZを受信する。コントローラ313はY基底誤り率ERYに応じてDCバイアス電圧DCCを制御し、Z基底誤り率ERZに応じてDCバイアス電圧DCAをおよびDCBを制御する。
【0046】
<ネスト型変調器>
図5におけるネスト側変調器100の子干渉計(MZ変調器MZ
AおよびMZ
B)は次のような構成を有する。
【0047】
図6において、子干渉計(以下、MZ変調器MZと記す。)は、2つの導波路(子アーム)の間に導波路方向に伸びたRF(高周波:Radio Frequency)電極102が設けられている。さらに2つの子アームの外側に基準となるGND電極103および104がそれぞれ設けられている。したがって、RF電極の電圧極性に従って、上下の子アームに対して、電圧の大きさに応じた逆方向の電界が印加され、電気光学効果により逆方向の屈折率変化が生じる。この屈折率の変化が上下の子アームでの逆方向の位相変化を生じさせ、それによって通過パルスの位相変調が生じる。
【0048】
たとえば、位相差0に相当するRF電圧であれば、入力した光パルス信号P1をそのままの強度で光パルス信号P2として出力する(オン状態)。位相差180°に相当するRF電圧であれば、2分岐した光パルスがキャンセルされるので出力光P2は消光状態となる(オフ状態)。以下、位相差θ°を実現するRF電圧を便宜的に「θ°RF電圧」と記すものとする。
【0049】
さらにMZ変調器MZは、所望の位相差を実現するために、子アーム間にDCバイアス用電極105を有し、それに対向する子アームの外側にGND電極106および107をそれぞれ有する。電極105に印加されるDCバイアス電圧(DCAあるいはDCB)を制御することにより、位相変調の変調動作点を調整できる。
【0050】
ネスト型変調器100の位相シフタ101は、親アーム間で相対的な位相変調差φを与える。位相シフタ101は、
図6に例示したDCバイアス用電極およびGND電極と同様の構成を有しても良い。すなわち、DCバイアス電極に印加される電圧DC
Cを制御することにより、所望の位相差φを与えるようにネスト型変調器100aの位相動作点が調整可能である。
【0051】
ネスト型変調器100は、コントローラ313の制御に従って、入力光パルスを次に述べるように変調し、強度0を含む4状態の光パルスを出力する。この4状態はIQ平面上で4つの信号点に対応する。
図7はその信号点配置の一例を示す。以下、ネスト型変調器100の変調動作について説明する。
【0052】
<ネスト型変調器の変調動作>
図5に戻って、入力した2連光パルスP
INの各光パルスはMZ干渉計MZ
Cの分岐部で光パルスP1
AおよびP1
Bに2分岐し、分岐光パルスP1
AおよびP1
BがMZ変調器MZ
AおよびMZ
Bへそれぞれ入力する。MZ変調器MZ
AおよびMZ
Bは、印加されるRF電圧RF
AおよびRF
Bによりそれぞれ分岐光パルスP1
AおよびP1
Bに対して所定の位相変調を実行し、位相変調された分岐光パルスP2
AおよびP2
Bをそれぞれ出力する。このうち分岐光パルスP2
Bは、親アーム間に所定の位相差φを与える位相シフタ101によってさらに位相変調され、分岐光パルスP2’
Bが生成される。こうして、親アームA側の分岐光パルスP2
Aと親アームB側の分岐光パルスP2’
Bとが合波することで2連光パルスP
OUTが出力される。
【0053】
図7に示すように、出力される2連光パルスP
OUTは強度0(信号点S0)を含む4状態を有する。強度0の信号点S0以外の3信号点の配置は
図7に限定されない。4信号点の配置形態は、MZ変調器MZ
AおよびMZ
Bにそれぞれ印加されるRF電圧RF
AおよびRF
Bに応じた位相変調の大きさと、位相シフタ101に印加されるバイアス電圧DC
Cに応じた位相シフト量と、に依存する。なお、
図7におけるI軸およびQ軸上の数値は任意単位であり、相対的な位置関係を示すための数値である。以下に示す
図9、
図11~
図13においても同様である。
【0054】
図7に示す強度0の信号点S0の生成方法としては以下の2つがある。
1)MZ変調器MZ
AおよびMZ
Bが共にオフ状態(消光状態)となるようにRF電圧RF
AおよびRF
Bを設定する(第1例)。
2)分岐光パルスP2
Aと分岐岐光パルスP2’
Bとが位相差180°となってキャンセルされるようにRF電圧RF
A、RF
Bおよびバイアス電圧DC
Cを設定する(第2例)。
以下、第1例および第2例について詳細に説明する。
【0055】
3.具体例
図8に一例として示すように、ネスト型変調器100aはMZ干渉計MZ
Cの位相差φ=90°となるように位相シフタ101のバイアス電圧DC
Cを制御しているものとする。
【0056】
以下、光パルスの強度あるいはパワーに関しては、最大値を「1」として正規化し、0と1の間の相対的数値により表すものとする。強度あるいはパワーが振幅の2乗に比例するものとすれば、光パルスの振幅についても同様に正規化した値で説明する。
【0057】
<変調動作>
図9に例示するように、ネスト型変調器100aはRF電圧RF
AおよびRF
Bによって4状態のいずれかの基底を生成可能である。すなわち、0°RF電圧RF
Aが印加されたMZ変調器MZ
Aは、位相変調を与えないので、入力光パルスP1
Aとほぼ同じ強度および同じ位相の光パルスP2
Aを出力する。なお、以下、0°RF電圧RF
Aが印加された時の光パルスP2
Aを「A0」という。180°RF電圧RF
Aが印加されたMZ変調器MZ
Aは、オフ状態となるので、強度が実質的に0および位相が90°シフトした光パルスP2
Aを出力する。以下、180°RF電圧RF
Aが印加された時の光パルスP2
Aを「A1」という。
【0058】
同様に、0°RF電圧RFBが印加されたMZ変調器MZBは、位相変調を与えないので、入力光パルスP1Bとほぼ同じ強度および同じ位相の光パルスP2Bを出力する。180°RF電圧RFBが印加されたMZ変調器MZBは、オフ状態となるので、強度が実質的に0、位相が90°シフトした光パルスP2Bを出力する。さらに、光パルスP2Bは位相シフタ101により90°の位相変調を与えられる。したがって、0°RF電圧RFBが印加された場合、位相シフタ101は90°の位相変調を受けた光パルスP2’Bを出力する。以下、0°RF電圧RFBが印加された時の光パルスP2’Bを「B0」という。180°RF電圧RFBが印加された場合、MZ変調器MZBがオフ状態となるので、位相シフタ101は強度が実質的に0および位相が180°シフトした光パルスP2’Bを出力する。以下、180°RF電圧RFBが印加された時の光パルスP2’Bを「B1」という。
【0059】
こうして、親アームA側のA0/A1と親アームB側のB0/B1とが合波することで、以下の4状態S1~S4のいずれかの光信号POUTを得ることができる。
・ A0+B0:MZ変調器MZAおよびMZBが共に0°RF電圧が印加されているので、いずれもオン状態となる。したがって、A0+B0は強度1、位相45°の信号点S1(Z(ON)基底)に対応する。
・ A0+B1:MZ変調器MZAに0°RF電圧、MZ変調器MZBに180°RF電圧が印加されている。したがって、A0+B1は強度0.5、位相0°の信号点S2(Y基底)に対応する。
・ A1+B0:MZ変調器MZAに180°RF電圧、MZ変調器MZBに0°RF電圧が印加されている。したがって、A1+B0は強度0.5、位相90°の信号点S3(Y基底)に対応する。
・ A1+B1:MZ変調器MZAおよびMZBが共に180°RF電圧が印加されているので、共にオフ状態となる。したがって、A1+B1は強度0、位相135°の信号点S4(Z(OFF)基底)に対応する。
【0060】
<位相-時間コーディング>
コヒーレントな2連光パルスに対して上記4状態の光変調をどのような順序で実行するかによって、
図10に示すような位相-時間コーディングの4状態Y0、Y1、Z0、Z1を得ることができる。
【0061】
図10に例示するように、RF電圧RF
AおよびRF
Bを変化させる。詳しくは、以下の通りである。
・ 2連光パルスの前パルスに対して信号点S2(A0+B1)の変調を行い、後パルスに対して信号点S3(A1+B0)の変調を行う。これにより、後パルスは前パルスに対して+90°だけ位相シフトしY0状態が得られる。
・ 2連光パルスの前パルスに対して信号点S3(A1+B0)の変調を行い、後パルスに対して信号点S2(A0+B1)の変調を行う。これにより、後パルスは前パルスに対して-90°だけ位相シフトしY1状態が得られる。
・ 2連光パルスの前パルスに対して信号点S1(A0+B0)の変調を行い、後パルスに対して信号点S4(A1+B1)の変調を行う。これにより、前パルスが強度1、後パルスは強度0となり、Z0状態が得られる。
・ 2連光パルスの前パルスに対して信号点S4(A1+B1)の変調を行い、後パルスに対して信号点S1(A0+B0)の変調を行う。これにより、前パルスが強度0、後パルスは強度1となり、Z1状態が得られる。
【0062】
以上述べたように、第1例によれば、位相シフタ101に印加されるバイアス電圧DC
Cが親アーム間に位相差φ=90°を与え、さらに、
図9に例示するようにRF電圧RF
AおよびRF
Bを設定することでIQ平面上に4信号点配置S1~S4を実現できる。特に、MZ変調器MZ
AおよびMZ
Bを共にオフ状態にすることで、
図9に示すIQ平面における強度0の信号点S4を生成することができる。
【0063】
また、
図10に例示するように、強度0の信号点S4を含む4つの信号点S1~S4のうち、信号点S1と信号点S4との間の位相変調によりZ0/Z1状態を、信号点S2と信号点S3との間の位相変調によりY0/Y1状態をそれぞれ実現することで、位相-時間コーディング方式に必要な4状態の信号光を生成することができる。
【0064】
<バイアス制御>
上述したネスト型変調器100aのバイアス制御は、信号点S4がIQ平面状の強度0の消光状態に維持され、続いて信号点S2およびS3が位相差を90°に維持されるように実行される。
【0065】
a)子干渉計のバイアス制御
信号点S4はRF電圧RFAおよびRFBがMZ変調器MZAおよびMZBをそれぞれオフ状態(消光状態)にすることで生成される。このようなオフ状態を実現するには、MZ変調器MZAおよびMZBは、それぞれのバイアス電圧DCAおよびDCBによって位相変調動作点が正確に調整される必要がある。本実施例によれば、Z基底の誤り率ERZを最小化するようにバイアス電圧DCAおよびDCBを調整することで、信号点S4をIQ平面状の強度0の消光状態に維持することができる。
【0066】
Z基底の誤り率ERZを使用する理由は、Z基底の誤り率ERZが最小であるときに信号点S4が消光状態となり、信号点S4が消光状態の時にZ基底の誤り率ERZが最小となるからである。信号点S4が消光状態となるかどうかは、MZ変調器MZAおよびMZBのバイアス電圧DCAおよびDCBに依存する。したがって、Z基底の誤り率ERZが最小となるようMZ変調器MZAおよびMZBのバイアス電圧DCAおよびDCBを制御することで、正しい位相変調動作点を維持することができる。
【0067】
b)親干渉計のバイアス制御
信号点S2およびS3の位相差を90°に維持するは、位相シフタ101の位相差φ=90°となるようにバイアス電圧DCCを正確に調整する必要がある。本実施例によれば、Y基底の誤り率ERYを最小化するようにバイアス電圧DCCを調整することで、信号点S2およびS3の位相差を90°に維持することができる。
【0068】
Y基底の誤り率ERYを使用する理由は、Y基底の誤り率ERYが最小であるときに信号点S2およびS3の位相差が90°になり、信号点S2およびS3の位相差が90°の時にY基底の誤り率ERYが最小となるからである。信号点S2およびS3の位相差は、位相シフタ101のバイアス電圧DCCに依存する。したがって、Y基底の誤り率ERYが最小となるようにMZ干渉計MZCのバイアス電圧DCCを制御することで、MZ干渉計MZCを正しい動作点に維持することができる。
【0069】
c)バイアス制御の順序
上述したように、子干渉計であるMZ変調器MZ
AおよびMZ
Bのバイアス制御(a)を先に実行し、親干渉計であるMZ干渉計MZ
Cのバイアス制御(b)を後に実行する。その理由はネスト型変調器100aが適切な動作点へ速く収束するからである。以下、
図7の信号点配置を理想値として、バイアス電圧を変化させたときの信号点の変化を
図11~
図13に示す。
【0070】
子干渉計であるMZ変調器MZ
AおよびMZ
BのDCバイアスを最適化すると、
図11に示すように、信号点S0をIQ平面状の強度0の消光状態に維持することができる。この状態で、親干渉計であるMZ干渉計MZ
Cのバイアス電圧を変化させても信号点S0は移動しない。したがって子干渉計のバイアスを先行して最適化しておくことで、親干渉計のバイアスを最適値に収束させることができる。逆に、親干渉計であるMZ干渉計MZ
Cのバイアス電圧が外れていても、子干渉計であるMZ変調器MZ
AおよびMZ
Bを消光状態となるようにバイアス設定するだけで容易に最適化が可能である。
【0071】
これに対して、子干渉計であるMZ変調器MZ
AおよびMZ
Bのバイアス電圧DC
AおよびDC
Bが外れていると、
図12および
図13に示すように、信号点S0が消光状態から外れた状態で信号点配置がIQ平面上で全体的に移動する。本来は、
図5に示すようにMZ変調器MZ
Aの出力光パルスP2
Aと、位相差90°の位相シフタ101の出力光パルスP2’
Bとが合波する。ところが、信号点S0が消光状態から外れた状態ではMZ変調器MZ
A/MZ
Bの出力が消光していない。このために、それぞれの消え残った光の間を位相差90°にして合波してしまい、結果的に最適値に収束しない。したがって、親干渉計のバイアスを最適化した後で子干渉計のバイアスを最適化しようとしても容易に最適値に収束しない。
【0072】
4.受信機
上述した受信機20の受信ユニット201は、位相-時間コーディングの4状態Y0、Y1、Z0、Z1に対応するものであればよい。以下、特開2008-270873号公報に記載された受信装置に基づいて受信ユニット201の具体的構成を例示する。
【0073】
<受信ユニットの第1例>
図16に例示するように、受信ユニット201の第1例は、2入力4出力の非対称MZ干渉計210を有し、さらに非対称MZ干渉計210の4出力にそれぞれ対応して4個の光子検出器PD1~PD4を有する。非対称MZ干渉計210は、送信機10から到達した2連光パルスから基底およびビット値を同時に判定し、Z1、Y0、Y1およびZ0のいずれかの状態の光子を出力する。したがって、データ処理部202aの鍵生成部203aは光子検出器PD1~PD4のどの光子検出器が光子を検出したかによって、到達した2連光パルスの基底およびビット値を判定できる(
図1参照)。それ以降の基底照合および誤り率算出の処理は既に述べたとおりである。
【0074】
<受信ユニットの第2例>
図17に例示するように、受信ユニット201の第2例は、分岐比可変のスプリッタ220、2入力2出力の非対称干渉計221、分岐比50:50のスプリッタ222および4個の光子検出器PD1~PD4を有する。非対称干渉計221はスプリッタ220のY基底側出力に、スプリッタ222はスプリッタ220のZ基底側出力にそれぞれ接続されている。非対称干渉計221の2出力ポートは光子検出器PD1およびPD2にそれぞれ接続され、スプリッタ222の2出力ポートは光子検出器PD3およびPD4にそれぞれ接続されている。
【0075】
スプリッタ220のY基底側ポートから出力された2連光パルスは非対称干渉計221で干渉し、Y基底ビット値0を示す光子が光子検出器PD1へ出力し(Y0状態)、Y基底ビット値1を示す光子が光子検出器PD2へ出力する(Y1状態)。
【0076】
スプリッタ220のZ基底側ポートから出力された2連光パルスはスプリッタ222で分岐され、光子検出器PD3およびPD4により検出される。Z基底では、
図1に示すように、Z0状態(ビット0)では前パルスP1だけが消光し、Z1状態(ビット1)では後パルスP2だけが消光する。したがってZ1状態での光子出力を2連光パルスの時間差分だけ遅延させて光子検出器PD3へ出力する。この遅延はファイバ長で調整することでもできるが、ファイバ長を同じにして光子検出器PD3のゲートパルス印加タイミングを遅延させる方法が実用的である。こうしてZ基底ビット値1を示す光子が光子検出器PD3へ出力し(Z1状態)、Z基底ビット値0を示す光子が光子検出器PD4へ出力する(Z0状態)。
【0077】
このようにデータ処理部202bの鍵生成部203bは光子検出器PD1~PD4のどの光子検出器が光子を検出したかによって、到達した2連光パルスの基底およびビット値を判定できる(
図1参照)。それ以降の基底照合および誤り率算出の処理は既に述べたとおりである。
【0078】
5.付記
上述した実施形態および実施例の一部あるいは全部は、以下の付記のようにも記載されうるが、これらに限定されるものではない。
(付記1)
光通信システムにおける送信機であって、
マッハツェンダ(MZ)型の第1変調部および第2変調部が並列接続され、前記第1変調部および前記第2変調部の出力光の間に所定の位相差を与える位相シフタを備えたネスト型変調器と、
前記ネスト型変調器を制御する制御部と、
を有し、前記制御部が、
a)送信情報に従って、2連光パルスの相対位相を2値変調する位相変調と前記2連光パルスのいずれか一方を強度0に変調する強度変調とにより前記2連光パルスを強度位相変調して受信機へ送信し、
b)前記受信機での受信情報と前記送信情報とに基づいて、前記強度変調に関する第1誤り率を最小化するように前記第1変調器および前記第2変調器のそれぞれのバイアス電圧を制御し、
c)前記受信機での受信情報と前記送信情報とに基づいて、前記位相変調に関する第2誤り率を最小化するように前記位相シフタのバイアス電圧を制御する、
ことを特徴とする送信機。
(付記2)
前記制御部が前記b)により前記第1誤り率を最小化した後に前記c)を実行することを特徴とする付記1に記載の送信機。
(付記3)
前記制御部が前記ネスト型変調器を制御して前記2連光パルスをIQ平面に配置された4信号点の間で変化させ、前記4信号点の第1信号点の強度が0、第2信号点の相対的強度が1、第3信号点の相対的強度および第4信号点の相対的強度がそれぞれ前記0と前記1との間の値にあり、前記第3信号点と前記第4信号点とが90°の位相差を有し、
前記制御部が前記第1変調器および前記第2変調器のそれぞれのバイアス電圧を制御して前記第1信号点を強度0に設定し、
前記制御部が前記位相シフタのバイアス電圧を制御して前記第3信号点および前記第4信号点との間の位相差を90°に設定する、
ことを特徴とする付記1または2に記載の送信機。
(付記4)
前記ネスト型変調器が、コヒーレントな2連光パルスに対して位相-時間コーディング方式に従って強度位相変調を実行し、
前記制御部が、前記位相-時間コーディング方式のZ基底状態を前記強度変調により生成し、Y基底状態を前記位相変調により生成することを特徴とする付記1または2に記載の送信機。
(付記5)
付記4に記載の前記送信機と前記受信機とからなる量子暗号鍵配付システム。
(付記6)
マッハツェンダ(MZ)型の第1変調部および第2変調部が並列接続され前記第1変調部および前記第2変調部の出力光の間に所定の位相差を与える位相シフタを備えたネスト型変調器と、前記ネスト型変調器を制御する制御部と、を有する送信機における前記ネスト型変調器のバイアス制御方法であって、
前記制御部が、
a)送信情報に従って前記ネスト型変調器の前記第1変調部と前記第2変調部とを制御し、2連光パルスの相対位相を2値変調する位相変調と前記2連光パルスのいずれか一方を強度0に変調する強度変調とにより前記2連光パルスを強度位相変調して受信機へ送信し、
b)前記受信機での受信情報と前記送信情報とに基づいて、前記強度変調に関する第1誤り率を最小化するように前記第1変調器および前記第2変調器のそれぞれのバイアス電圧を制御し、
c)前記受信機での受信情報と前記送信情報とに基づいて、前記位相変調に関する第2誤り率を最小化するように前記位相シフタのバイアス電圧を制御する、
ことを特徴とするネスト型変調器のバイアス制御方法。
(付記7)
前記制御部が、前記b)により前記第1誤り率を最小化した後に前記c)を実行することを特徴とする付記6に記載のネスト型変調器のバイアス制御方法。
(付記8)
前記制御部が、
前記強度位相変調された2連光パルスを受信した前記受信機との間で、前記強度変調に関する第1誤り率と前記位相変調に関する第2誤り率とを計算するために前記受信機での受信情報および前記送信情報のそれぞれの一部を公開する、
ことを特徴とする付記6または7に記載のネスト型変調器のバイアス制御方法。
(付記9)
送信機と受信機とからなる光通信システムであって、
前記送信機が、
マッハツェンダ(MZ)型の第1変調部および第2変調部が並列接続され前記第1変調部および前記第2変調部の出力光の間に所定の位相差を与える位相シフタを備えたネスト型変調器と、
前記ネスト型変調器を制御する制御部と、
を有し、前記制御部が、送信情報に従って2連光パルスの相対位相を2値変調する位相変調と前記2連光パルスのいずれか一方を強度0に変調する強度変調により前記2連光パルスを強度位相変調して受信機へ送信し、
前記受信機が、
前記強度位相変調された2連光パルスを受信して受信情報を取得する受信ユニットと、
前記受信情報に基づいて前記強度変調に関する第1誤り率と前記位相変調に関する第2誤り率と計算する誤り率算出部と、
を有し、
前記送信機および前記受信機の間で前記受信情報および前記送信情報のそれぞれの一部を公開し、前記受信機の前記誤り算出部が前記公開された情報を用いて前記第1誤り率と前記第2誤り率とを計算し、
前記送信機の前記制御部が、前記第1誤り率を最小化するように前記第1変調器および前記第2変調器のそれぞれのバイアス電圧を制御し、前記第2誤り率を最小化するように前記位相シフタのバイアス電圧を制御する、
ことを特徴とする光通信システム。
(付記10)
前記制御部が、前記第1変調器および前記第2変調器のそれぞれのバイアス電圧を制御して前記第1誤り率を最小化した後、前記位相シフタのバイアス電圧を制御して前記第2誤り率を最小化することを特徴とする付記9に記載の光通信システム。
(付記11)
前記ネスト型変調器が、コヒーレントな2連光パルスに対して位相-時間コーディング方式に従って強度位相変調を実行し、
前記制御部が、前記位相-時間コーディング方式のZ基底状態を前記強度変調により生成し、Y基底状態を前記位相変調により生成することを特徴とする付記9または10に記載の光通信システム。
(付記12)
前記受信機において、
前記受信ユニットが前記位相-時間コーディング方式に従って強度位相変調された2連光パルスから前記Z基底状態および前記Y基底状態からなる受信情報を出力し、
前記誤り算出部が、前記Z基底状態に関するZ基底誤り率を計算し、前記Y基底状態に関するY基底誤り率を計算し、
前記Z基底誤り率および前記Y基底誤り率をそれぞれ前記第1誤り率および前記第2誤り率として前記送信機へ通知する、
ことを特徴とする付記11に記載の光通信システム。
(付記13)
マッハツェンダ(MZ)型の第1変調部と第2変調部とが並列接続され、前記第1変調部および前記第2変調部の出力光の間に所定の位相差を与える位相シフタを備えたネスト型変調器を制御する制御部としてコンピュータを機能させるためのプログラムであって、
a)送信情報に従って、2連光パルスの相対位相を2値変調する位相変調と前記2連光パルスのいずれか一方を強度0に変調する強度変調とにより前記2連光パルスを強度位相変調して受信機へ送信する機能と、
b)前記受信機での受信情報と前記送信情報とに基づいて、前記強度変調に関する第1誤り率を最小化するように前記第1変調器および前記第2変調器のそれぞれのバイアス電圧を制御する機能と、
c)前記受信機での受信情報と前記送信情報とに基づいて、前記位相変調に関する第2誤り率を最小化するように前記位相シフタのバイアス電圧を制御する機能と、
を前記コンピュータに実現させることを特徴とするプログラム。
(付記14)
光通信システムにおける送信機であって、
マッハツェンダ(MZ)型の第1変調部および第2変調部が並列接続され、前記第1変調部および前記第2変調部の出力光の間に所定の位相差を与える位相シフタを備えたネスト型変調器と、
前記ネスト型変調器を制御する制御部と、
を有し、前記制御部が、
a)送信情報に従って、2連光パルスの相対位相を2値変調する位相変調と前記2連光パルスのいずれか一方を強度0に変調する強度変調により前記2連光パルスを強度位相変調して受信機へ送信し、
b)前記強度位相変調された2連光パルスを受信した前記受信機との間で、前記強度変調に関する第1誤り率と前記位相変調に関する第2誤り率とを計算するために前記受信機での受信情報および前記送信情報のそれぞれの一部を公開し、
c)前記第1誤り率を最小化するように前記第1変調器および前記第2変調器のそれぞれのバイアス電圧を制御し、
d)前記第2誤り率を最小化するように前記位相シフタのバイアス電圧を制御する、
ことを特徴とする送信機。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明は、光通信システム、特に量子鍵配送システムの送信機に利用することができる。
【符号の説明】
【0080】
100 ネスト型変調器
101 位相シフタ
102 RF電極
103、104、106、107 接地(GND)電極
105 DCバイアス電極
110 変調制御部
111、112 バイアス制御部
201 受信ユニット
202 データ処理部
203 鍵生成部
204 誤り率算出部
205 通信部
MZA、MZB マッハツェンダ(MZ)変調器(子干渉計)
MZC MZ干渉計(親干渉計)
RFA、RFB 高周波電圧
DCA、DCB、DCC DCバイアス電圧
301 レーザ光源
302 非対称干渉計
303 減衰器
310 RF駆動回路
311 バイアス駆動回路
312 通信部
313 コントローラ
314 プログラムメモリ