(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024058981
(43)【公開日】2024-04-30
(54)【発明の名称】情報処理方法、情報処理装置及びコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 10/20 20230101AFI20240422BHJP
G06Q 50/04 20120101ALI20240422BHJP
B29C 48/92 20190101ALI20240422BHJP
B29C 45/76 20060101ALI20240422BHJP
【FI】
G06Q10/00 300
G06Q50/04
B29C48/92
B29C45/76
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022166438
(22)【出願日】2022-10-17
(71)【出願人】
【識別番号】000004215
【氏名又は名称】株式会社日本製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】風呂川 幹央
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 潤
(72)【発明者】
【氏名】沖本 翼
【テーマコード(参考)】
4F206
4F207
5L010
5L049
5L050
【Fターム(参考)】
4F206AM22
4F206AM23
4F206JA07
4F206JL02
4F206JL09
4F206JP13
4F206JP14
4F206JP15
4F207AM20
4F207AM22
4F207AM23
4F207AP20
4F207KA01
5L010AA01
5L049AA01
5L049CC03
5L050CC03
(57)【要約】
【課題】成形機を構成する部材の破損により成形機が稼働不能となる前に、当該部材の残存寿命又は異常度を推定し、事前に部材の交換費用を示す見積書データを生成及び提示することができる情報処理方法を提供する。
【解決手段】成形機を構成する部材の状態に関連する物理量データを取得し、取得した物理量データに基づいて、部材の残存寿命又は異常度を推定し、部材の残存寿命又は異常度に係る推定結果に基づいて、交換を要する部材の交換費用を示す見積データを生成し、生成した見積データを成形機のユーザへ提供する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
成形機を構成する部材の状態に関連する物理量データを取得し、
取得した前記物理量データに基づいて、前記部材の残存寿命又は異常度を推定し、
前記部材の残存寿命又は異常度に係る推定結果に基づいて、交換を要する前記部材の交換費用を示す見積データを生成し、
生成した前記見積データを前記成形機のユーザへ提供する
情報処理方法。
【請求項2】
前記部材の残存寿命の長さ、前記部材の異常度の大きさに応じて、前記部材の交換費用を変動させる
請求項1に記載の情報処理方法。
【請求項3】
前記部材の異常発生件数又は頻度に応じて、前記部材の交換費用を変動させる
請求項1に記載の情報処理方法。
【請求項4】
前記成形機の使用環境又は使用場所を示すデータを取得し、
取得したデータが示す使用環境又は使用場所に応じて、前記部材の交換費用を変動させる
請求項1に記載の情報処理方法。
【請求項5】
前記推定結果を前記ユーザへ提供し、
前記推定結果に対するユーザのフィードバック情報を取得し、
取得した前記フィードバック情報に応じて、前記部材の交換費用を変動させる
請求項1に記載の情報処理方法。
【請求項6】
前記ユーザへ前記見積データを提供する前に、交換を要する前記部材の予備品確保に係る処理を実行する
請求項1に記載の情報処理方法。
【請求項7】
複数のユーザと、前記複数のユーザが使用する異なる複数の前記成形機を構成する部材それぞれの仕様情報とを対応付けて記憶するデータベースから、交換を要する前記部材の仕様情報を読み出し、
読み出した仕様情報に基づいて、前記見積データを生成する
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の情報処理方法。
【請求項8】
複数のユーザと、前記複数のユーザが使用する異なる複数の前記成形機を構成する部材それぞれの仕様情報とを対応付けて記憶するデータベースから、交換を要する前記部材の仕様情報を読み出し、
読み出した仕様情報に基づいて、交換を要する前記部材の予備品確保に係る処理を実行する
請求項1に記載の情報処理方法。
【請求項9】
前記部材の残存寿命又は異常度に基づいて、前記部材の予備品確保の要否を判定し、
前記部材の予備品確保を要すると判定された場合、前記見積データを生成し、
前記部材の予備品確保を要すると判定された場合、交換を要する前記部材の予備品確保に係る処理を実行し、
前記推定結果を前記ユーザへ提供し、
前記ユーザから前記見積データの要求があった場合、前記見積データを提供する
請求項1に記載の情報処理方法。
【請求項10】
取得した前記物理量データと、前記部材の残存寿命又は異常度に係る推定結果とに基づいて、前記部材の状態に応じた複数の関連情報を記憶する記憶部から、前記部材の状態に応じた関連情報を選択し、
選択された前記関連情報を前記成形機のユーザへ提供する
請求項8又は請求項9に記載の情報処理方法。
【請求項11】
前記推定結果を提供するサイトへのアクセス履歴、前記見積データを提供するサイトへのアクセス履歴、前記部材の購入履歴、状態推定の履歴、ユーザに関する情報、成形機の使用環境、又は成形機の使用場所を示すデータを蓄積し、
蓄積されたデータに基づいて、ユーザをクラスタリングする
請求項1に記載の情報処理方法。
【請求項12】
成形機を構成する部材の状態に関連する物理量データを取得し、
取得した前記物理量データに基づいて、前記部材の残存寿命又は異常度を推定し、
複数のユーザと、前記複数のユーザが使用する異なる複数の前記成形機を構成する部材それぞれの仕様情報とを対応付けて記憶するデータベースから、前記部材の残存寿命又は異常度に係る推定結果に基づいて、交換を要する前記部材の仕様情報を読み出し、
読み出した仕様情報に基づいて、交換を要する前記部材の予備品確保に係る処理を実行する
情報処理方法。
【請求項13】
成形機を構成する部材の状態に関連する物理量データを取得し、
取得した前記物理量データに基づいて、前記部材の残存寿命又は異常度を推定し、
取得した前記物理量データと、前記部材の残存寿命又は異常度に係る推定結果とに基づいて、前記部材の状態に応じた複数の関連情報を記憶する記憶部から、前記部材の状態に応じた関連情報を選択し、
選択された前記関連情報を前記成形機のユーザへ提供する
情報処理方法。
【請求項14】
成形機を構成する部材の状態に関連する物理量データを取得する取得部と、処理部とを備え、
前記処理部は、
取得した前記物理量データに基づいて、前記部材の残存寿命又は異常度を推定し、
前記部材の残存寿命又は異常度に係る推定結果に基づいて、交換を要する前記部材の交換費用を示す見積データを生成し、
生成した前記見積データを前記成形機のユーザへ提供する
情報処理装置。
【請求項15】
成形機を構成する部材の状態に関連する物理量データを取得する取得部と、処理部とを備え、
前記処理部は、
取得した前記物理量データに基づいて、前記部材の残存寿命又は異常度を推定し、
複数のユーザと、前記複数のユーザが使用する異なる複数の前記成形機を構成する部材それぞれの仕様情報とを対応付けて記憶するデータベースから、前記部材の残存寿命又は異常度に係る推定結果に基づいて、交換を要する前記部材の仕様情報を読み出し、
読み出した仕様情報に基づいて、交換を要する前記部材の予備品確保に係る処理を実行する
情報処理装置。
【請求項16】
成形機を構成する部材の状態に関連する物理量データを取得する取得部と、処理部とを備え、
前記処理部は、
取得した前記物理量データに基づいて、前記部材の残存寿命又は異常度を推定し、
取得した前記物理量データと、前記部材の残存寿命又は異常度に係る推定結果とに基づいて、前記部材の状態に応じた複数の関連情報を記憶する記憶部から、前記部材の状態に応じた関連情報を選択し、
選択された前記関連情報を前記成形機のユーザへ提供する
情報処理装置。
【請求項17】
成形機を構成する部材の状態に関連する物理量データを取得し、
取得した前記物理量データに基づいて、前記部材の残存寿命又は異常度を推定し、
前記部材の残存寿命又は異常度に係る推定結果に基づいて、交換を要する前記部材の交換費用を示す見積データを生成し、
生成した前記見積データを前記成形機のユーザへ提供する
処理をコンピュータに実行させるためのコンピュータプログラム。
【請求項18】
成形機を構成する部材の状態に関連する物理量データを取得し、
取得した前記物理量データに基づいて、前記部材の残存寿命又は異常度を推定し、
複数のユーザと、前記複数のユーザが使用する異なる複数の前記成形機を構成する部材それぞれの仕様情報とを対応付けて記憶するデータベースから、前記部材の残存寿命又は異常度に係る推定結果に基づいて、交換を要する前記部材の仕様情報を読み出し、
読み出した仕様情報に基づいて、交換を要する前記部材の予備品確保に係る処理を実行する
処理をコンピュータに実行させるためのコンピュータプログラム。
【請求項19】
成形機を構成する部材の状態に関連する物理量データを取得し、
取得した前記物理量データに基づいて、前記部材の残存寿命又は異常度を推定し、
取得した前記物理量データと、前記部材の残存寿命又は異常度に係る推定結果とに基づいて、前記部材の状態に応じた複数の関連情報を記憶する記憶部から、前記部材の状態に応じた関連情報を選択し、
選択された前記関連情報を前記成形機のユーザへ提供する
処理をコンピュータに実行させるためのコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理方法、情報処理装置及びコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、射出成形機等における回転部材の残存寿命を予測する寿命予測装置が開示されている。特許文献1の寿命予測装置は、駆動モータによって回転する回転部材の回転数を積算し、積算された回転数と回転部材を回転させるのに要したトルクから回転部材の疲れ寿命を演算する。
【0003】
特許文献2には、射出成形機に設けられたボールねじの振動を検出する振動センサを備え、振動センサにて検出された振動強度を解析することによってボールねじの異常を検知する異常検知装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6-91683号公報
【特許文献2】特開2021-74917号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
射出成形機、押出機等の成形機を構成する部材の中には、代品の確保に相当の時間を要するものがある。部材の残存寿命を予測できたとしても、部材交換に必要な作業を進めないと、部材が破損する前に新しい部材を準備することができず、成形機が稼働不能になるおそれがある。
【0006】
本開示の目的は、成形機を構成する部材の破損により成形機が稼働不能となる前に、当該部材の残存寿命又は異常度を推定し、事前に部材の交換費用を示す見積書データを生成及び提示することができる情報処理方法、情報処理装置及びコンピュータプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一側面に係る情報処理方法は、成形機を構成する部材の状態に関連する物理量データを取得し、取得した前記物理量データに基づいて、前記部材の残存寿命又は異常度を推定し、前記部材の残存寿命又は異常度に係る推定結果に基づいて、交換を要する前記部材の交換費用を示す見積データを生成し、生成した前記見積データを前記成形機のユーザへ提供する。
【0008】
本開示の一側面に係る情報処理方法は、成形機を構成する部材の状態に関連する物理量データを取得し、取得した前記物理量データに基づいて、前記部材の残存寿命又は異常度を推定し、複数のユーザと、前記複数のユーザが使用する異なる複数の前記成形機を構成する部材それぞれの仕様情報とを対応付けて記憶するデータベースから、前記部材の残存寿命又は異常度に係る推定結果に基づいて、交換を要する前記部材の仕様情報を読み出し、読み出した仕様情報に基づいて、交換を要する前記部材の予備品確保に係る処理を実行する。
【0009】
本開示の一側面に係る情報処理方法は、成形機を構成する部材の状態に関連する物理量データを取得し、取得した前記物理量データに基づいて、前記部材の残存寿命又は異常度を推定し、取得した前記物理量データと、前記部材の残存寿命又は異常度に係る推定結果とに基づいて、前記部材の状態に応じた複数の関連情報を記憶する記憶部から、前記部材の状態に応じた関連情報を選択し、選択された前記関連情報を前記成形機のユーザへ提供する。
【0010】
本開示の一側面に係る情報処理装置は、成形機を構成する部材の状態に関連する物理量データを取得する取得部と、処理部とを備え、前記処理部は、取得した前記物理量データに基づいて、前記部材の残存寿命又は異常度を推定し、前記部材の残存寿命又は異常度に係る推定結果に基づいて、交換を要する前記部材の交換費用を示す見積データを生成し、生成した前記見積データを前記成形機のユーザへ提供する。
【0011】
本開示の一側面に係る情報処理装置は、成形機を構成する部材の状態に関連する物理量データを取得する取得部と、処理部とを備え、前記処理部は、取得した前記物理量データに基づいて、前記部材の残存寿命又は異常度を推定し、複数のユーザと、前記複数のユーザが使用する異なる複数の前記成形機を構成する部材それぞれの仕様情報とを対応付けて記憶するデータベースから、前記部材の残存寿命又は異常度に係る推定結果に基づいて、交換を要する前記部材の仕様情報を読み出し、読み出した仕様情報に基づいて、交換を要する前記部材の予備品確保に係る処理を実行する。
【0012】
本開示の一側面に係る情報処理装置は、成形機を構成する部材の状態に関連する物理量データを取得する取得部と、処理部とを備え、前記処理部は、取得した前記物理量データに基づいて、前記部材の残存寿命又は異常度を推定し、取得した前記物理量データと、前記部材の残存寿命又は異常度に係る推定結果とに基づいて、前記部材の状態に応じた複数の関連情報を記憶する記憶部から、前記部材の状態に応じた関連情報を選択し、選択された前記関連情報を前記成形機のユーザへ提供する。
【0013】
本開示の一側面に係るコンピュータプログラムは、成形機を構成する部材の状態に関連する物理量データを取得し、取得した前記物理量データに基づいて、前記部材の残存寿命又は異常度を推定し、前記部材の残存寿命又は異常度に係る推定結果に基づいて、交換を要する前記部材の交換費用を示す見積データを生成し、生成した前記見積データを前記成形機のユーザへ提供する処理をコンピュータに実行させる。
【0014】
本開示の一側面に係るコンピュータプログラムは、成形機を構成する部材の状態に関連する物理量データを取得し、取得した前記物理量データに基づいて、前記部材の残存寿命又は異常度を推定し、複数のユーザと、前記複数のユーザが使用する異なる複数の前記成形機を構成する部材それぞれの仕様情報とを対応付けて記憶するデータベースから、前記部材の残存寿命又は異常度に係る推定結果に基づいて、交換を要する前記部材の仕様情報を読み出し、読み出した仕様情報に基づいて、交換を要する前記部材の予備品確保に係る処理を実行する処理をコンピュータに実行させる。
【0015】
本開示の一側面に係るコンピュータプログラムは、成形機を構成する部材の状態に関連する物理量データを取得し、取得した前記物理量データに基づいて、前記部材の残存寿命又は異常度を推定し、取得した前記物理量データと、前記部材の残存寿命又は異常度に係る推定結果とに基づいて、前記部材の状態に応じた複数の関連情報を記憶する記憶部から、前記部材の状態に応じた関連情報を選択し、選択された前記関連情報を前記成形機のユーザへ提供する処理をコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0016】
本開示によれば、成形機を構成する部材の破損により成形機が稼働不能となる前に、当該部材の残存寿命又は異常度を推定し、事前に部材の交換費用を示す見積書データを生成及び提示することができることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本実施形態に係る成形機システムの構成例を示すブロック図である。
【
図2】本実施形態に係る成形機の構成例を示す模式図である。
【
図3】本実施形態に係るデータ収集装置の構成例を示すブロック図である。
【
図4】実施形態に係る情報処理装置の構成例を示すブロック図である。
【
図5】収集データDBのレコードレイアウトの一例を示す概念図である。
【
図6】ユーザDBのレコードレイアウトの一例を示す概念図である。
【
図7】ユーザ機器DBのレコードレイアウトの一例を示す概念図である。
【
図8】部材の残存寿命又は異常度の予測を行う推定処理部を示すブロック図である。
【
図9】情報処理装置の処理手順を示すフローチャートである。
【
図10】情報処理装置の処理手順を示すフローチャートである。
【
図12】見積データを生成する処理手順を示すフローチャートである。
【
図13】ユーザのクラスタリングに係る処理手順を示すフローチャートである。
【
図14】ユーザのクラスタリングに係る処理手順を示すフローチャートである。
【
図15】ユーザのクラスタリング処理を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本開示の実施形態に係る情報処理方法、情報処理装置及びコンピュータプログラムを、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本開示はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。また、以下に記載する実施形態の少なくとも一部を任意に組み合わせてもよい。
【0019】
図1は本実施形態に係る成形機システムの構成例を示すブロック図である。成形機システムは、成形機1と、複数のセンサ2と、データ収集装置3と、ルータ4と、情報処理装置5と、端末装置6a,6b,6cとを備える。成形機1には、射出成形機及び押出機が含まれる。以下、成形機1は、一例として押出機であるものとして説明する。
【0020】
図1には1台の成形機1及びデータ収集装置3が図示されているが、情報処理装置5には、図示しない複数のデータ収集装置3がネットワークを介して接続されている。データ収集装置3には一又は複数の成形機1が接続されている。情報処理装置5は、複数の成形機1それぞれの情報を収集し、各成形機1を構成する一又は複数の部材の残存寿命又は異常度を推定することができる。複数の成形機1及びデータ収集装置3は、成形機1を保有する複数のユーザそれぞれの工場に設置されているものとする。ユーザは、成形機1を保有する法人等の組織の社員又は従業員である。以下、当該社員又は従業員を単にユーザと呼ぶ。
【0021】
端末装置6a,6b,6cは、コンピュータ、タブレット端末、スマートフォン等の表示部を有する通信端末である。端末装置6aは、ユーザが使用する端末である。端末装置6bは、当該ユーザの成形機1に関わる営業担当者、保守管理担当者等のサービス提供担当者が使用する端末である。端末装置6cは、成形機1を構成する部材を製造する工場の担当者が使用する端末である。
以下、当該サービス提供担当者を単に営業担当者と呼ぶ。また、ユーザに対して、成形機1を構成する部材の保守管理サービスを提供し、部材の製造販売を行う営業担当者側の業者を保守管理業者と呼ぶ。
【0022】
<背景事情>
本実施形態に係る成形機システムは、成形機1の部材の保守管理を最適化するものである。成形機1を構成する部材には、量産される汎用品と、ユーザ及び成形機1毎に異なる特注品とが含まれる。特注品の中には、発注から製造までに時間を要する部材と、そうで無い部材とがある。本実施形態は、特徴品であって、製造に時間を要する部材の保守管理に特に効果的である。例えば、押出機の減速機14がその一例である。減速機14は、ユーザ及び成形機1によって仕様が異なり、減速機14の製造には数ヶ月の時間を要することがあり、減速機14の破損による成形機1の稼働停止は大きなリスクである。
【0023】
このため、通常、ユーザは定期的、例えば数年間隔の一定周期で減速機14をオーバーホールする等の保守管理を行っている。数年間隔のオーバーホールは、稼働停止リスクを最小限にするものであるが、成形機1の運転状況、使用環境によっては、必ずしも最適なオーバーホール周期では無い。かといって、オーバーホール周期を長く設定した結果、減速機14が破損すると、成形機1の稼働停止により大きな損害が発生する。
保守管理業者が、減速機14の予備品を準備しておくことも考えられるが、ユーザ毎に異なる特徴品を予め準備しておくことは、保守管理業者のリスクである。予備品を準備してから実際に部材が交換されるまでの期間が長いと、部材の保管、状態管理のコストが嵩む。また、部材が交換されることなく、成形機1が使用されなくなった場合、又は他業者の製品が採用された場合、予備品を破棄することになる。
【0024】
本実施形態に係る成形機システムは、成形機1の部材の残存寿命又は異常度を推定してユーザ及び営業担当者に提示することにより、部材交換時期の予測を容易にするものである。また、成形機システムは、減速機14等の部材の破損前に、ユーザに交換費用の見積書及び部材関連情報を提示すると共に、保守管理業者が最適なタイミングで予備品(新しい部材)の確保を開始することを可能にするものである。なお、情報処理装置5は、見積書を自動生成する。また、情報処理装置5は、ユーザ及び成形機1の状態に応じた部材関連情報を自動選択する。
【0025】
本実施形態に係る成形機システムを利用する場合、保守管理業者は、成形機1の部材が破損する前に特注品の製造を開始することになるため、一定のリスクを負うことになる。そこで、本実施形態では、次のようなサービス形態を想定する。
保守管理業者は、成形機1を構成する部材の残存寿命又は異常度を推定し、成形機1及び当該部材の状態をユーザに通知するサービスを提供する。また、保守管理業者は、成形機1を構成する部材の交換時期を予測して、事前に予備品を製造すると共に、適当なタイミングで見積書を提示し、部材の破損前又は破損時に直ちに、当該部材の予備品を提供する。これらのサービスによって、ユーザは、最適な時期に成形機1の部品を交換することができると共に、成形機1の稼働停止リスクを回避することができる。
【0026】
上記サービスに対して、ユーザは、定期的、例えば毎月一定額の保証費用を保守管理業者に支払う。ユーザは、部材を交換する際、見積書で提示された交換費用を保守管理業者に支払う。交換費用は、成形機1の運転状況、使用環境、部材の故障頻度等により変動する。保守管理業者が負うリスクが、これら種々の要因によって変化するためである。
【0027】
<成形機1>
図2は本実施形態に係る成形機1の構成例を示す模式図である。成形機1は、樹脂原料が投入されるホッパ10aを有するシリンダ10と、2本のスクリュ11と、シリンダ10の出口部分に設けられたダイス12(
図1参照)とを備える。2本のスクリュ11は、相互に噛み合わされた状態で略平行に配され、シリンダ10の孔内に回転可能に挿入されており、ホッパ10aに投入された樹脂原料を押出方向(
図1及び
図2中右方向)へ搬送し、溶融及び混練する。溶融した樹脂原料は、貫通孔を有するダイス12から排出される。
スクリュ11は、複数種類のスクリュピースを組み合わせ、一体化することによって一本のスクリュ11として構成されている。例えば、樹脂原料を順方向へ輸送するフライトスクリュ形状の順フライトピース、樹脂原料を逆方向へ輸送する逆フライトピース、樹脂原料を混練するニーディングピース等を、樹脂原料の特性に応じた順序及び位置に配して組み合わせることにより、スクリュ11が構成される。
【0028】
また、成形機1は、スクリュ11を回転させるための駆動力を出力するモータ13と、モータ13の駆動力を減速伝達する減速機14と、制御装置15とを備える。スクリュ11は減速機14の出力軸に接続されている。スクリュ11は、減速機14によって減速伝達されたモータ13の駆動力によって回転する。
【0029】
<センサ2>
センサ2は、成形機1を構成する部材の状態に関連する物理量を検出し、検出して得た物理量データを直接又は間接的にデータ収集装置3へ出力する。物理量データは、検出された物理量を示す時系列のセンサ値のデータである。センサ2には、成形機1の運転制御に必要なものとして当該成形機1に設けられているものと、部材の寿命を推定するために設けられたものとが含まれる。複数のセンサ2の一部は、データ収集装置3に接続されており、データ収集装置3は当該センサ2から物理量データを取得する。複数のセンサ2の一部は、制御装置15に接続されており、データ収集装置3は制御装置15を介して当該センサ2から物理量データを取得する。
【0030】
物理量には、温度、位置、速度、加速度、電流、電圧、圧力、時間、画像データ、トルク、力、歪、消費電力、重さ等がある。これらの物理量は、温度計、位置センサ、速度センサ、加速度センサ、電流計、電圧計、圧力計、タイマ、カメラ、トルクセンサ、電力計、重量計等を用いて測定することができる。
【0031】
複数のセンサ2は、例えば、減速機14に係る物理量を検出する第1センサ21と、スクリュ11に係る物理量を検出する第2センサ22と、モータ13に係る物理量を検出する第3センサ23と、ダイス12に係る物理量を検出する第4センサ24とを含む。
第1センサ21は、例えば減速機14の振動を検出する振動検出器等である。第2センサ22は、スクリュ11の軸トルクを検出するトルク検出器、スクリュ11の回転数を検出する回転計、スクリュ先端圧力を検出する圧力計、スクリュ11の温度を検出温度計、スクリュ11の回転中心の変位を検出する変位センサ等である。第3センサ23は、モータ電流を検出する電流計、モータ回転数を検出する回転計等である。第4センサ24は、ダイス12に働くダイヘッド圧力を検出する圧力計である。
【0032】
<制御装置15>
制御装置15は、成形機1の運転制御を行うコンピュータであり、データ収集装置3との間で情報を送受信する図示しない送受信部、及び表示部を備える。
具体的には、制御装置15は、成形機1の運転状態を示す運転データをデータ収集装置3へ送信する。運転データは、例えば、モータ電流、スクリュ11の回転数、スクリュ11の先端圧力、ダイヘッド圧力、フィーダ供給量(樹脂原料の供給量)、押出量、シリンダ温度、樹脂圧等である。
制御装置15は、データ収集装置3から送信される各種グラフデータ、成形機1を構成する部材の残存寿命又は異常度を示す推定結果データを受信する。制御装置15は、受信したグラフデータ及び推定結果データの内容を表示する。また、制御装置15は、受信した推定結果データが示す残存寿命又は異常度に応じて警告を出力する。
【0033】
<データ収集装置3>
図3は本実施形態に係るデータ収集装置3の構成例を示すブロック図である。データ収集装置3は、コンピュータであり、制御部31、記憶部32、通信部33及びデータ入力部34を備え、記憶部32、通信部33及びデータ入力部34は制御部31に接続されている。データ収集装置3は、例えばPLC(Programmable Logic Controller)である。
【0034】
制御部31は、CPU(Central Processing Unit)、マルチコアCPU、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)等の演算処理回路、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等の内部記憶装置、I/O端子等を有する。制御部31は、後述の記憶部32が記憶する制御プログラムを実行することにより、物理量データを収集し、情報処理装置5へ送信する処理を実行する。なお、データ収集装置3の各機能部は、ソフトウェア的に実現してもよいし、一部又は全部をハードウェア的に実現してもよい。
【0035】
記憶部32は、ハードディスク、EEPROM(Electrically Erasable Programmable
ROM)、フラッシュメモリ等の不揮発性メモリである。記憶部32は、物理量データの収集処理をコンピュータに実施させるための制御プログラムを記憶している。
【0036】
通信部33は、イーサネット(登録商標)等の所定の通信プロトコルに従って情報を送受信する通信回路である。通信部33は、LAN等の第1通信ネットワークを介して制御装置15に接続されており、制御部31は通信部33を介して制御装置15との間で各種情報を送受信することができる。制御部31は、通信部33を介して物理量データを取得する。
第1ネットワークにはルータ4が接続されており、通信部33はルータ4を介して第2通信ネットワークであるクラウド上の情報処理装置5に接続されている。制御部31は、通信部33及びルータ4を介して情報処理装置5との間で各種情報を送受信することができる。
【0037】
データ入力部34は、センサ2から出力された信号が入力する入力インタフェースである。データ入力部34にはセンサ2が接続されており、制御部31は、データ入力部34を介して物理量データを取得する。
【0038】
<情報処理装置5>
図4は実施形態に係る情報処理装置5の構成例を示すブロック図である。情報処理装置5は、コンピュータであり、処理部51、記憶部52、通信部53を備える。記憶部52、通信部53は、処理部51に接続されている。
【0039】
処理部51は、プロセッサであり、CPU、マルチコアCPU、GPU(Graphics Processing Unit)、GPGPU(General-purpose computing on graphics processing units)、TPU(Tensor Processing Unit)、ASIC、FPGA、NPU(Neural Processing Unit)等の演算処理回路、ROM、RAM等の内部記憶装置、I/O端子等を有する。処理部51は、後述の記憶部52が記憶するコンピュータプログラムPを実行することにより、本実施形態に係る情報処理装置5として機能する。
【0040】
実施形態に係る情報処理装置5は、成形機1の状態に関する情報をユーザ及び営業担当者に提供する機器状態提供ウェブサーバとして機能する。また、情報処理装置5は、成形機1を構成する部材に関する情報をユーザ及び営業担当者に提供する部材情報提供ウェブサーバとして機能する。部材情報提供ウェブサーバは、部材を交換するための費用の見積書データをユーザに提供し、部材の発注を受け付ける等の処理を実行する。以下、機器状態提供ウェブサーバとして機能する情報処理装置5を適宜、第1サーバと呼ぶ。部材情報提供ウェブサーバを提供する情報処理装置5を適宜、第2サーバと呼ぶ。なお、情報処理装置5の各機能部は、ソフトウェア的に実現してもよいし、一部又は全部をハードウェア的に実現してもよい。また、情報処理装置5を複数のコンピュータで構成し、各コンピュータが第1サーバ及び第2サーバとして機能するように構成してもよい。
【0041】
通信部53は、イーサネット(登録商標)等の所定の通信プロトコルに従って情報を送受信する通信回路である。通信部53は、第2通信ネットワークを介してデータ収集装置3、及び端末装置6a,6b,6cに接続されており、処理部51は通信部53を介してデータ収集装置3、及び端末装置6a,6b,6cとの間で各種情報を送受信することができる。
【0042】
記憶部52は、ハードディスク、EEPROM、フラッシュメモリ等の不揮発性メモリである。記憶部52は、成形機1を構成する部材の寿命を推定する処理をコンピュータに実施させるためのコンピュータプログラムPと、予測学習モデル54と、収集データDB(データベース)52a、ユーザDB(データベース)52b、ユーザ機器DB(データベース)52c,部材関連情報DB(データベース)52d、見積書テンプレート52eとを記憶している。
【0043】
コンピュータプログラムP等は、記録媒体50にコンピュータ読み取り可能に記録されている態様でもよい。記憶部52は、図示しない読出装置によって記録媒体50から読み出されたコンピュータプログラムP等を記憶する。記録媒体50はフラッシュメモリ等の半導体メモリである。また、記録媒体50はCD(Compact Disc)-ROM、DVD(Digital Versatile Disc)-ROM、BD(Blu-ray(登録商標)Disc)等の光ディスクでもよい。更に、記録媒体50は、フレキシブルディスク、ハードディスク等の磁気ディスク、磁気光ディスク等であってもよい。更にまた、図示しない通信網に接続されている図示しない外部サーバからコンピュータプログラムP等をダウンロードし、記憶部52に記憶させてもよい。
【0044】
予測学習モデル54は、物理量データから生成される画像データが入力された場合、成形機1を構成する部材の残存寿命又は異常度を示すデータを出力する画像認識学習モデルである。予測学習モデル54は、例えばCNN(Convolutional Neural Network)を有する。処理部51は、既成の学習済みモデルの転移学習又はファインチューニングを行うことによって、特定の成形機1及び部材の残存寿命又は異常度の推定に特化した学習モデルを生成することができる。
【0045】
図5は、収集データDB52aのレコードレイアウトの一例を示す概念図である。収集データDB52aは、ハードディスク、DBMS(DataBase Management System)を備え、成形機1から収集した各種物理量データを記憶する。例えば、収集データDB52aは、「No.」(レコード番号)列、「機器ID」列、「運転日時」列、「運転データ」列、「振動データ」列、「軸トルクデータ」列を有する。
【0046】
「機器ID」列は、成形機1の機器識別子を格納する。「運転日時」列は、レコードとして記憶される各種データが得られた年、月、日時等を示す情報を格納する。「運転データ」列は、成形機1の運転状態を示す時系列の物理量、例えばモータ電流、スクリュ11の回転数、スクリュ11の先端圧力、ダイヘッド圧力、フィーダ供給量(樹脂原料の供給量)、押出量、シリンダ温度、樹脂圧等を格納する。「振動データ」列は、時系列の物理量データである振動データを格納する。「軸トルクデータ」列は、時系列の物理量データであるスクリュ11のトルクデータを格納する。
【0047】
図6は、ユーザDB52bのレコードレイアウトの一例を示す概念図である。ユーザDB52bは、ハードディスク、DBMSを備え、ユーザの基本的な情報等を記憶する。例えば、ユーザDB52bは、「ユーザID」列、「ユーザ基本情報」列、「機器状態提供サイトアクセス履歴」列、「部材情報提供サイトアクセス履歴」列、「状態推定結果に対するフィードバック履歴」列、「異常発生件数又は頻度」列、「見積書発行履歴」列、「部材購入履歴」列を有する。
【0048】
「ユーザID」列は、成形機1のユーザの識別子を格納する。「ユーザ基本情報」列は、ユーザの基本情報、例えば、ユーザである企業の従業員数や保全計画などの企業情報を格納する。
【0049】
「機器状態提供サイトアクセス履歴」列は、ユーザが機器状態提供サイトへアクセスした回数、アクセス日時、アクセスしたウェブページ、当該ウェブページにおける滞在時間等の履歴を格納する。「部材情報提供サイトアクセス履歴」列、ユーザが機器状態提供サイトへアクセスした履歴を格納する。ユーザが部材情報提供サイトへアクセスした回数、アクセス日時、アクセスしたウェブページ、当該ウェブページにおける滞在時間等の履歴を格納する。
【0050】
「状態推論結果に対するフィードバック履歴」列、予測学習モデル54による推論結果に対するユーザのフィードバック情報の履歴を格納する。
【0051】
「異常発生件数又は頻度」列は、ユーザが使用する成形機1について、部材の異常が発生した件数又は異常発生頻度を格納する。「見積書発行履歴」列は、過去に発行した見積書、見積書発行日時等を格納する。「部材購入履歴」列は、ユーザによる部材の購入履歴を格納する。購入履歴は、例えば、購入した部材の種類、購入日、購入個数等を記憶する。
【0052】
図7は、ユーザ機器DB52cのレコードレイアウトの一例を示す概念図である。ユーザ機器DB52cは、ハードディスク、DBMSを備え、ユーザが使用する成形機1を構成する部材の情報を記憶する。例えば、ユーザ機器DB52cは、「ユーザID」列、「機器ID」列、「部材ID」列、「部材の仕様情報」列、「機器の使用環境」列、「機器の使用場所」列、「残存寿命又は異常度」列を有する。
【0053】
「ユーザID」列は、成形機1のユーザの識別子を格納する。「機器ID」列は、成形機1の機器識別子を格納する。機器IDは、保守管理業者の製品であるか他社製品であるかを判別することができる情報を含む。「部材ID」列は成形機1を構成する部材であって、残存寿命又は異常度の予測対象である部材の部材識別子を格納する。
【0054】
「部材の仕様情報」列は、部材IDに対応する部材の製品仕様を示す仕様情報を記憶する。例えば、押出機を構成するスクリュ11、減速機14の仕様情報を記憶する。成形機1を構成する部材は、必ずしも量産品では無く、ユーザ毎に製造される特別仕様のものである。仕様情報は、当該部材の交換費用を見積もるための情報を含む。仕様情報は、部材を製造する等して予備品を確保するために必要な情報を含む。
【0055】
「機器の使用環境」列は、成形機1が設置され、使用される周囲の環境を示す情報を格納する。例えば、海岸沿い等、成形機1の故障リスクに関連する情報を格納する。「機器の使用場所」列は、成形機1が設置され、使用される地理的な位置を示す情報を格納する。地理的な位置は、例えば緯度及び経度で表される。地理的な位置は、国名、都道府県名、市町村名であってもよい。地理的な位置は、成形機1が設置されている工場が国内工場又は海外工場のいずれであるかを示す情報であってもよい。
【0056】
「残存寿命又は異常度」列は、部材IDに対応する部材の残存寿命又は異常度を格納する。残存寿命又は異常度は、予測学習モデル54によって予測されたものである。
【0057】
部材関連情報DB52dは、成形機1を構成する部材に関連する任意の情報、例えばTIPS情報を格納する。TIPS情報は、当該部材の説明、保守点検の方法等を含む。
【0058】
記憶部52が記憶する見積書テンプレート52eは、成形機1を構成する部材の交換費用の見積書を生成するための雛形である。見積書テンプレート52eは、例えばユーザ名、部材の名称、当該部材の交換費用が記載される項目を要する。交換費用の項目は、例えば、標準の交換費用、割増金額、割引金額が入力される欄を含む。
【0059】
図8は、部材の残存寿命又は異常度の予測を行う推定処理部Mを示すブロック図である。推定処理部Mは、予測学習モデル54と、周波数解析部55と、画像生成部56とを備える。推定処理部Mの各機能部は、処理部51の処理によってソフトウェア的に実現してもよいし、一部又は全部をハードウェア的に実現してもよい。
【0060】
周波数解析部55は、時系列の物理量データを周波数成分の物理量データにフーリエ変換する演算処理部である。周波数解析部55は、短時間フーリエ変換(STFT: Short-Time Fourier Transform)にて物理量データのフーリエ変換を行うとよい。画像生成部56は、フーリエ変換された物理量データを画像で表した画像データに変換する演算処理部である。例えば、画像の横軸を周波数、縦軸を周波数成分の大きさとした画像平面に物理量データを表すとよい。以下、物理量データをフーリエ変換することによって得られる画像をフーリエ変換画像と呼ぶ。
なお、周波数解析の方法はSTFTに限定されるものでは無く、ウェーブレット変換(Wavelet Transformation)、ストックウェル変換(Stockwell Transform)、ウィグナー分布(Wigner distribution function)、経験的モード分解(Empirical Mode Decomposition)、ヒルベルト・ファン変換(Hilbert-Huang Transform)等を用いてもよい。
【0061】
予測学習モデル54は、畳み込みニューラルネットワーク(CNN:Convolutional neural network)であり、フーリエ変換画像の画像データが入力される入力層54aと、中間層54bと、部材の残存寿命又は異常度を示す残存寿命データ又は異常度データを出力する出力層54cとを備える。
【0062】
入力層54aは、フーリエ変換画像を構成する各画素の画素値が入力される複数のノードを有する。中間層54bは、入力層54aに入力されたフーリエ変換画像の各画素の画素値を畳み込む畳み込み層と、畳み込み層で畳み込んだ画素値をマッピングするプーリング層とが交互に連結された構成を有する。中間層54bは、フーリエ変換画像の画像情報を圧縮しながら当該フーリエ変換画像の特徴量を抽出し、抽出したフーリエ変換画像、つまり物理量データの特徴量を出力層54cに出力する。
【0063】
出力層54cは、物理量データ測定時点における部材の残存寿命又は異常度を示す残存寿命データ又は異常度データを出力するノードを有する。
【0064】
なお、予測学習モデル54の一例としてCNNを例示したが、多層パーセプトロン(Multilayer perceptron:MLP)、畳み込みニューラルネットワーク(Convolutional Neural Network:CNN)、グラフニューラルネットワーク(Graph Neural Network:GNN)、グラフ畳み込みニューラルネットワーク(Graph Convolutional Network:GCN)、RNN(Recurrent Neural Network)、LSTM(Long Short Term Memory)、その他のニューラルネットワークモデルで構成してもよい。また、決定木、ランダムフォレスト、SVM(Support Vector Machine)などのアルゴリズムを用いて予測学習モデル54を構成してもよい。
【0065】
<見積データの生成と部材の予備品確保に係る処理>
図9及び
図10は、情報処理装置5の処理手順を示すフローチャートである。成形機1のデータ収集装置3は、成形機1を構成する複数の部材の状態に関連する物理量データを収集し(ステップS11)、収集した物理量データを、第1サーバとして機能する情報処理装置5へ送信する(ステップS12)。なお、成形機1及びデータ収集装置3は複数あり、複数のデータ収集装置3は、複数の成形機1から収集した物理量データを情報処理装置5へ送信する。
【0066】
第1サーバの処理部51は、データ収集装置3から送信された物理量データを受信する(ステップS13)。処理部51は受信した物理量データを、収集データDB52aに記憶する(ステップS14)。なお、ステップS13の処理を実行する処理部51は、物理量データを取得する取得部として機能する。
【0067】
次いで、処理部51は、収集データDB52aに蓄積された物理量データに基づいて、成形機1を構成する部材の残存寿命又は異常度を推定する(ステップS15)。具体的には、処理部51は、物理量データを周波数解析して画像データに変換し、物理量データを表した画像データを予測学習モデル54に入力することによって、部材の残存寿命データ又は異常度データを出力させる。なお、処理部51は、複数の成形機1を構成する複数の部材それぞれの残存寿命又は異常度を算出する。1台の成形機1を構成する複数の部材の状態に関連する物理量データが得られている場合、処理部51は、当該複数の部材それぞれの残存寿命又は異常度を算出する。
【0068】
次いで、処理部51は、残存寿命が所定時間N未満であるか否かを判定する(ステップS16)。所定時間Nは、少なくとも当該部材を製造して予備品を確保するために必要な時間よりも長い時間が好ましい。所定時間Nは部材の種類によって異なる。
なお、処理部51は、異常度が、上記所定時間Nに対応する所定値未満であるか否かを判定するように構成してもよい。
【0069】
残存寿命が所定時間N以上であると判定した場合(ステップS16:NO)、処理部51は、処理をステップS13へ戻す。残存寿命が所定時間N未満であると判定した場合(ステップS16:YES)、処理部51は、ある部材の残存寿命が所定時間N未満であることを示す通知データを、当該部材を備えた成形機1のユーザの端末装置6aと、営業担当の端末装置6bへ送信する(ステップS17)。
【0070】
次いで、処理部51は、推定結果表示部9を機器状態提供サイトにおいて可視化させる(ステップS18)。つまり、処理部51は、ユーザ及び営業担当者が端末装置6a,6bを介して機器状態提供サイトにアクセスした際、部材の残存寿命の推定結果表示部9が表示される状態にする。
【0071】
図11は、推定結果表示部9の一例である。推定結果表示部9は、ユーザが使用する一又は複数の成形機1について、各成形機1を構成する部材の状態を表示する状態表示部91を含む。状態表示部91は、例えば、当該成形機1を構成する部材の名称を表示する部材名表示部92と、部材に異常である否かを示すアイコン93とを有する。「異常」は、例えば、残存寿命が所定時間N未満に相当する。また、状態表示部91は、当該部材の異常度を数字で表示する。
【0072】
状態表示部91は、成形機1を構成する部材に異常がある場合、当該部材の推定残存寿命を表示するための残存寿命表示アイコン94を表示する。ユーザによって、残存寿命表示アイコン94が操作された場合、情報処理装置5は、当該部材の状態に関連する物理量の時間変化を示すグラフ、当該部材の推定された残存寿命を表示する。
【0073】
状態表示部91は、成形機1を構成する部材に異常がある場合、当該部材の見積書、部材関連情報(TIPS情報)を提供する部材情報提供サイトへのサイトリンクアイコン95を表示する。ユーザによって、サイトリンクアイコン95が操作された場合、情報処理装置5は、部材情報提供サイトのリンクを端末装置6aへ送信する。端末装置6aは送信されたリンクの情報を用いて部材情報提供サイトにアクセスする。部材情報提供サイトを提供する第2サーバの処理部51は、ユーザの要求に応じて、異常と判定された部材の交換費用を示す見積データ、部材関連情報をユーザの端末装置6aへ送信する。
【0074】
ユーザの端末装置6aは、ステップS17において情報処理装置5から送信された通知データを受信する(ステップS19)。通知データを受信した端末装置6aは、特定の部材の残存寿命が所定時間未満であることを表示する。ユーザは、通知された部材を交換するために必要な行動を起こすことができる。例えば、ユーザは、情報処理装置5が提供するサイトにアクセスして、部材に関連する情報を閲覧し、部材を交換するために必要な費用の見積データを要求する等の行動を起こすことができる。
【0075】
営業担当者の端末装置6bは、ステップS17において情報処理装置5から送信された通知データを受信する(ステップS20)。通知データを受信した端末装置6bは、特定の部材の残存寿命が所定時間未満であることを表示する。通知データを受信した端末装置6bは、特定の部材の残存寿命が所定時間未満であることを表示する。営業担当者は、通知された部材の保守に必要な行動を起こすことができる。例えば、営業担当者は、情報処理装置5が提供するサイトにアクセスして、部材に関連する情報を閲覧し、部材の交換についてユーザに説明する等の行動を起こすことができる。
【0076】
第2サーバの処理部51は、ステップS17において第1サーバから送信された通知データを受信する(ステップS21)。通知データを受信した第2サーバの処理部51は、受信した通知データに応じて、部材の見積データを生成する(ステップS22)。見積データの生成処理の詳細は後述する。また、処理部51は、残存寿命が所定時間未満の部材の予備品の確保を要求する予備品確保通知データを、工場の端末装置6cへ送信する(ステップS23)。予備品確保通知データを、工場の端末装置6cへ送信する処理は、交換を要する部材の予備品確保に係る処理の一つである。
また、処理部51は、現在の成形機1及び部材の状態に応じた部材関連情報を選定する(ステップS24)。つまり、処理部51は、ユーザが欲すると予想される部材関連情報を特定する。選択又は特定された部材関連情報は、ユーザから要求があった場合、当該ユーザに提供される。
【0077】
工場の端末装置6cは、予備品確保通知データを受信する(ステップS25)。予備品確保通知データを受信した端末装置6cは、予備品の確保に係る処理を実行する(ステップS26)。端末装置6cは、部材の在庫がある場合、当該在庫の部材を、通知のあった成形機1の部材を交換するための予備品として確保する。部材の在庫データベースがある場合、端末装置6cは、在庫データベースのレコードを変更することによって、在庫の部品を予備品とする。部材の在庫が無い場合、部材の製造を要求する処理を実行する。
【0078】
なお、部材の残存寿命が所定時間N未満である場合に、予備品の確保に係る処理を実行する例を示したが、予備品確保通知データの送信タイミングは一例である。例えば、処理部51は、後述するステップS37において、見積データの要求をトリガにして、予備品確保通知データを工場の端末装置6cへ送信するように構成してもよい。また、処理部51は、後述するステップS34において、交換すべき部材の部材関連情報の要求をトリガにして、予備品確保通知データを工場の端末装置6cへ送信するように構成してもよい。
【0079】
ユーザの端末装置6aは、ユーザによる操作に従って、部材の残存寿命に係る推定結果を第1サーバに要求する(ステップS27)。第1サーバの処理部51は、端末装置6aからの要求に応じて、部材の残存寿命の推定結果を端末装置6aへ送信する(ステップS28)。端末装置6aは、第1サーバから送信された推定結果を受信し、受信した推定結果を表示する。ユーザは、部材の残存寿命又は異常度の推定結果を閲覧することができる。
【0080】
同様にして、営業担当者の端末装置6bは、営業担当者による操作に従って、部材の残存寿命に係る推定結果を第1サーバに要求する(ステップS29)。第1サーバの処理部51は、端末装置6bからの要求に応じて、部材の残存寿命の推定結果を端末装置6bへ送信する(ステップS28)。端末装置6bは、第1サーバから送信された推定結果を受信し、受信した推定結果を表示する。営業担当者は、部材の残存寿命又は異常度の推定結果を閲覧することができる。
【0081】
第1サーバの処理部51は、ユーザの端末装置6aからの機器状態提供サイトへのアクセス履歴をユーザDB52bに記憶する(ステップS30)。
【0082】
ユーザの端末装置6aは、ユーザによる操作に従って、部材の残存寿命の推定結果に対するフィードバック情報を第1サーバへ送信する(ステップS31)。フィードバック情報は、推定結果の精度に対する評価、実際の残存寿命、実際の残存寿命と推定結果との差分等の情報である。第1サーバの処理部51は、端末装置6aから送信されたフィードバック情報を受信する(ステップS32)。第1サーバの処理部51は、ユーザの端末装置6aから送信されたフィードバック情報を、ユーザDB52bに記憶する(ステップS33)。
【0083】
ユーザの端末装置6aは、ユーザによる操作に従って、部材関連情報を第2サーバに要求する(ステップS34)。第2サーバの処理部51は、端末装置6aからの要求に応じて、部材関連情報を端末装置6aへ送信する(ステップS35)。端末装置6aは、第2サーバから送信された部材関連情報を受信し、受信した部材関連情報を表示する。ユーザは、部材関連情報を閲覧することができる。
【0084】
同様にして、営業担当者の端末装置6bは、営業担当者による操作に従って、部材関連情報を第2サーバに要求する(ステップS36)。第2サーバの処理部51は、端末装置6bからの要求に応じて、部材関連情報を端末装置6bへ送信する(ステップS35)。端末装置6bは、第2サーバから送信された部材関連情報を受信し、受信した推定結果を表示する。営業担当者は、部材関連情報を閲覧することができる。
【0085】
ユーザの端末装置6aは、ユーザによる操作に従って、部材を交換するための費用を示す見積データを第2サーバに要求する(ステップS37)。第2サーバの処理部51は、端末装置6aからの要求に応じて、ステップS22で生成した見積データを端末装置6aへ送信する(ステップS38)。端末装置6aは、第2サーバから送信された見積データを受信し、受信した見積データを表示する。
【0086】
第2サーバの処理部51は、ユーザから見積書データの要求があった旨を示す通知データ、当該ユーザの営業担当者の端末装置6bへ送信する(ステップS39)。営業担当者の端末装置6bは、第2サーバから送信された通知データを受信する(ステップS40)。端末装置6aは、通知データに基づいて、ユーザから見積書データの要求があった旨を営業担当者に報知する。
【0087】
第2サーバの処理部51は、ユーザによる部材情報提供サイトへのアクセス履歴をユーザDB52bに記憶する(ステップS41)。特に、第2サーバの処理部51は、部材関連情報の要求及び見積書データの要求に係るアクセス履歴を記憶する。
【0088】
図12は、見積データを生成する処理手順を示すフローチャートである。第2サーバである情報処理装置5の処理部51は、記憶部52から見積書テンプレート52eのデータを読み出す(ステップS51)。処理部51は、見積対象である部材の仕様情報をユーザ機器DB52cから読み出す(ステップS52)。そして、処理部51は、見積書テンプレート52eのデータ及び仕様情報に基づいて、当該部材の交換費用を示す見積書データを生成する(ステップS53)。例えば、処理部51は、見積データ要求元のユーザの名称、見積対象の部材の名称、製品番号等を見積書テンプレート52eに入力する。また、処理部51は、仕様情報に基づいて、部材の交換費用を算出し、算出した部材の交換費用を見積書テンプレート52eに入力する。記憶部52は、部材の仕様情報と、交換費用との関係を示す、関数又はテーブルを記憶しており、処理部51は、記憶部52が記憶する関数又はテーブルを用いて、交換費用を算出するとよい。
【0089】
なお、処理部51は、ステップS51~ステップS53の処理に代えて、ユーザDB52bから、過去に発行した見積データを参照し、今回交換する部材と同じ部材の交換費用の見積データがあれば、当該見積データを読み出すように構成してもよい。ただし、処理部51は、交換費用の増額及び減額項目は削除し、標準の交換費用を示す見積データにする。
【0090】
次いで、処理部51は、部材の残存寿命又は異常度を示すデータをユーザ機器DB52cから読み出し(ステップS54)、読み出された残存寿命に応じて、部材の交換費用を変動させる(ステップS55)。
例えば、処理部51は、残存寿命が所定寿命よりも短い場合、又は異常度が所定異常度よりも大きい程、交換費用を増加させる。また、処理部51は、残存寿命が短い程、又は異常度が大きい程、交換費用を増加させるように構成してもよい。
残存寿命が短い場合、通常よりも短納期で部材を製造する必要があり、特別料金を加算することができる。所定寿命又は所定異常度は、所定の通常納期で部材を製造することができる値を設定すればよい。
【0091】
次いで、処理部51は、異常発生件数又は頻度を示すデータをユーザDB52bから読み出し(ステップS56)、読み出された異常発生件数又は頻度に応じて、部材の交換費用を変動させる(ステップS57)。
例えば、処理部51は、異常発生件数又は頻度が所定件数又は所定頻度よりも大きい程、交換費用を増加させる。また、処理部51は、異常発生件数又は頻度が多い程、交換費用を増加させるように構成してもよい。
異常発生件数又は頻度が多い場合、予備品を確保するリスクが上昇するため、特別料金を加算する。
【0092】
次いで、処理部51は、成形機1の使用環境及び使用場所を示すデータをユーザDB52bから読み出し(ステップS58)、読み出された使用環境及び使用場所に応じて、部材の交換費用を変動させる(ステップS59)。
処理部51は、海岸沿い等、成形機1の部材の寿命に悪影響がある環境にあり、故障リスクが高まる場合、交換費用を増加させる。
【0093】
次いで、処理部51は、部材の残存寿命に係る推定結果に対するフィードバック情報をユーザDB52bから読み出し(ステップS60)、読み出されたフィードバック情報に応じて、部材の交換費用を変動させ(ステップS61)、処理を終える。
処理部51は、フィードバック情報が多い程、交換費用を減少させる。フィードバック情報は、予測学習モデル54の精度向上に資するものであり、保守管理業者の利益になるものであるため、交換費用を減少させる。
【0094】
<ユーザのクラスタリング処理と製品情報の提供に係る処理>
図13及び
図14は、ユーザのクラスタリングに係る処理手順を示すフローチャートである。情報処理装置5は、上記の通り、機器状態提供サイト及び部材情報提供サイトへのアクセス履歴、注文履歴、部材の状態に係る物理量データ等を収集し、収集したアクセス履歴情報及び物理量データ等を収集データDB52a、ユーザDB52b及びユーザ機器DB52cに記憶している(ステップS71)。
【0095】
営業担当者の端末装置6bは、営業担当者による操作に従って、成形機1及び部材の新商品情報を第2サーバへ送信する(ステップS72)。第2サーバの処理部51は、端末装置6bから送信された新商品情報を受信し(ステップS73)、受信した新商品情報を記憶部52に記憶する(ステップS74)。
【0096】
次いで、処理部51は、収集データDB52a、ユーザDB52b、又はユーザ機器DB52cに格納された情報に基づいて、ユーザのクラスタリング処理を実行する(ステップS75)。
【0097】
図15は、ユーザのクラスタリング処理を示す概念図である。横軸及び縦軸は、収集データDB52a、ユーザDB52b、又はユーザ機器DB52cに格納された情報に基づいて得られる第1の特徴量と、第2の特徴量とを示している。例えば、第1の特徴量は、機器状態提供サイトへのアクセス回数、第2の特徴量は部材情報提供サイトへのアクセス回数を示している。
図15中、黒丸は、複数のユーザそれぞれの第1の特徴量及び第2の特徴量を示している。破線で描かれた円は、特定の特徴量を有するユーザのクラスを示している。同一クラスに属するユーザは、所有する成形機1、成形条件、運転状況、使用環境、機器状態提供サイト及び部材情報提供サイトへのアクセス傾向、部品交換履歴、部品購入履歴が類似している。このため、同一クラスに属するユーザは、同様の商品購入傾向を有していると推定される。
【0098】
なお、
図15は、2次元でユーザの特徴を示してるが、特徴量の次元数、つまり、ユーザを表す特徴量の数は3以上であってもよい。各次元の特徴量としては、以下の量を用いることができる。特徴量としては、例えば、機器状態提供サイトへのアクセス回数又は頻度、部材情報提供サイトへのアクセス回数又は頻度、部材の注文件数、部材の異常判定件数又は頻度、部材の残存寿命又は異常度、物理量データ、ユーザの規模(従業員数等)、国内工場及び海外工場の別、保有する成形機1の数、他社製品及び自社製品の比率等が挙げられる。
【0099】
第2サーバの処理部51は、クラスタリング処理に基づいて、新商品情報の提案先、提案方法等を選定する(ステップS76)。第2サーバの処理部51は、新商品情報の提案先等に関する選定結果を、当該ユーザの営業担当者の端末装置6bへ送信する(ステップS77)。
【0100】
例えば、第1の特徴量は、機器状態提供サイトへのアクセス回数、第2の特徴量は部材情報提供サイトへのアクセス回数を示している場合、以下のようそれぞれの客層を想定し、提案営業を行うことが考えられる。
機器状態提供サイトへのアクセス回数は多く、部材情報提供サイトへのアクセス回数は少ない場合、保全には興味あるが、受注が少ないと考えられる。積極的に広く部材の販売促進活動を行うことが好ましい。
機器状態提供サイト及び部材情報提供サイト共にアクセス回数が多い場合、新しいことに興味あると考えられる。新商品の販売促進を行うことが好ましい。
機器状態提供サイトへのアクセス回数は少なく、部材情報提供サイトへのアクセス回数は多い場合、部品はどんどん頼むが、新商品に対して保守的であると考えられる。既存製品の販売促進活動を行うことが好ましい。
【0101】
第2サーバの処理部51は、あるユーザが部材(商品)を購入した場合、当該ユーザと同じクラスに属するユーザも同種の部材を購入する可能が高い。このため、処理部51は、当該クラスに属するユーザを提案先、当該部材を提案商品とする選定結果を営業担当者の端末装置6bへ送信する。
処理部51は、新商品に類似する既存製品を特定し、当該既存製品を購入する傾向が高いクラスを特定するように構成することもできる。商品間の類似性についても、収集データDB52a、ユーザDB52b、又はユーザ機器DB52cに格納された情報に基づいてクラスター分析し、判断すればよい。処理部51は、新商品に類似の既存製品を購入する傾向のあるクラスに属するユーザを提案先、当該新商品を提案商品とする選定結果を営業担当者の端末装置6bへ送信する。
【0102】
営業担当者の端末装置6bは、第2サーバから送信された選定結果を受信する(ステップS78)。端末装置6aは、受信した選定結果に基づいて、新商品情報の提案先等を営業担当者に報知する。
【0103】
第2サーバの処理部51は、選定された新商品情報を、当該ユーザの端末装置6aへ送信する(ステップS79)。ユーザの端末装置6aは、第2サーバから送信された新商品情報を受信する(ステップS80)。端末装置6aは、受信した新商品情報をユーザに報知する。
【0104】
ユーザの端末装置6aは、ユーザによる操作に従って、各種製品情報を第2サーバに要求する(ステップS81)。第2サーバの処理部51は、端末装置6aからの要求に応じて、ユーザのクラスタリング処理によって選定された各種製品情報を端末装置6aへ送信する(ステップS82)。端末装置6aは、第2サーバから送信された各種製品情報を受信し、受信した部材関連情報を表示する。ユーザは、クラスタリング処理によって選定された製品情報を閲覧することができる。
【0105】
第2サーバの処理部51は、ユーザの端末装置6aからの機器状態提供サイトへのアクセス履歴をユーザDB52bに記憶する(ステップS83)。第2サーバの処理部51は、ユーザによる機器状態提供サイト及び部材情報提供サイトへのアクセス履歴を解析し(ステップS84)、アクセス履歴の解析結果を、営業担当者の端末装置6b及び工場の端末装置6cへ送信する(ステップS85)。
【0106】
営業担当者の端末装置6bは、アクセス履歴の解析結果を受信する(ステップS86)。営業担当者は、ユーザのアクセス履歴の解析結果を参考にして、営業活動を行うことができる。
また、工場の端末装置6cは、アクセス履歴の解析結果を受信する(ステップS87)。工場では、アクセス履歴の解析結果に基づいて、製品の製造計画を調整することができる。
【0107】
以上の通り、本実施形態に係る情報処理方法等によれば、成形機1を構成する部材の破損により稼働不能となる前に、当該部材の残存寿命又は異常度を推定し、事前に部材の交換費用を示す見積書データを生成することができる。
本実施形態に係る情報処理方法等によれば、成形機1を構成する部材の破損により稼働不能となる前に、当該部材の残存寿命又は異常度を推定し、交換を要する部材の予備品確保に係る処理を実行することができる。
本実施形態に係る情報処理方法等によれば、成形機1を構成する部材の破損により稼働不能となる前に、当該部材の残存寿命又は異常度を推定し、部材の状態に応じた部材関連情報を選定して提供することができる。
【0108】
部材の残存寿命の長さ又は部材の異常度の大きさに応じて、部材の交換費用が調整された見積データを生成することができる。
【0109】
部材の異常発生件数又は頻度に応じて、部材の交換費用が調整された見積データを生成することができる。
【0110】
成形機1の使用環境又は使用場所に応じて、部材の交換費用が調整された見積データを生成することができる。
【0111】
部材の残存寿命の推定結果に対するユーザのフィードバック情報に応じて、部材の交換費用が調整された見積データを生成することができる。
【0112】
残存寿命が所定時間未満の部材について、ユーザへ見積データを提供する前に予備品確保に係る処理を実行することができる。当該部材が実際に故障する前に、部材の製造を開始することができ、成形機1が稼働停止に陥ることを防ぐことができる。
【0113】
より詳細には、部材の残存寿命又は異常度に基づいて、当該部材の予備品確保の要否を判定し、予備品確保を要する状態にある場合、見積データを生成し、予備品確保に係る処理を実行し、残存寿命等の推定結果及び交換費用の見積データをユーザに提供することができる。
【0114】
ユーザが使用する成形機1を構成する部材の仕様情報を用いることによって、当該部材の交換費用の見積データを正しく生成することができる。また、仕様情報を営業担当者及び工場の端末装置6b,6cへ送信することによって、ユーザの成形機1を構成する特注品の部材の製造を速やかに開始させることができる。
【0115】
成形機1を構成する部材の状態に関連する物理量データと、当該部材の残存寿命又は異常度に係る推定結果とに基づいて、関連する部材関連情報を選定し、ユーザに提供することができる。
【0116】
ユーザをクラスタリングすることによって、新商品情報の提案先、提案方法等を選定し、当該選定結果を営業担当者に提供することができ、より的確な販売促進活動を可能にする。
【0117】
本開示の課題を解決するための手段を付記する。
(付記1)
成形機を構成する部材の状態に関連する物理量データを取得し、
取得した前記物理量データに基づいて、前記部材の残存寿命又は異常度を推定し、
前記部材の残存寿命又は異常度に係る推定結果に基づいて、交換を要する前記部材の交換費用を示す見積データを生成し、
生成した前記見積データを前記成形機のユーザへ提供する
情報処理方法。
(付記2)
前記部材の残存寿命の長さ、前記部材の異常度の大きさに応じて、前記部材の交換費用を変動させる
付記1に記載の情報処理方法。
(付記3)
前記部材の異常発生件数又は頻度に応じて、前記部材の交換費用を変動させる
付記1又は付記2に記載の情報処理方法。
(付記4)
前記成形機の使用環境又は使用場所を示すデータを取得し、
取得したデータが示す使用環境又は使用場所に応じて、前記部材の交換費用を変動させる
付記1から付記3のいずれか1項に記載の情報処理方法。
(付記5)
前記推定結果を前記ユーザへ提供し、
前記推定結果に対するユーザのフィードバック情報を取得し、
取得した前記フィードバック情報に応じて、前記部材の交換費用を変動させる
付記1から付記4のいずれか1項に記載の情報処理方法。
(付記6)
前記ユーザへ前記見積データを提供する前に、交換を要する前記部材の予備品確保に係る処理を実行する
付記1から付記5のいずれか1項に記載の情報処理方法。
(付記7)
複数のユーザと、前記複数のユーザが使用する異なる複数の前記成形機を構成する部材それぞれの仕様情報とを対応付けて記憶するデータベースから、交換を要する前記部材の仕様情報を読み出し、
読み出した仕様情報に基づいて、前記見積データを生成する
付記1から付記6のいずれか1項に記載の情報処理方法。
(付記8)
複数のユーザと、前記複数のユーザが使用する異なる複数の前記成形機を構成する部材それぞれの仕様情報とを対応付けて記憶するデータベースから、交換を要する前記部材の仕様情報を読み出し、
読み出した仕様情報に基づいて、交換を要する前記部材の予備品確保に係る処理を実行する
付記1から付記7のいずれか1項に記載の情報処理方法。
(付記9)
前記部材の残存寿命又は異常度に基づいて、前記部材の予備品確保の要否を判定し、
前記部材の予備品確保を要すると判定された場合、前記見積データを生成し、
前記部材の予備品確保を要すると判定された場合、交換を要する前記部材の予備品確保に係る処理を実行し、
前記推定結果を前記ユーザへ提供し、
前記ユーザから前記見積データの要求があった場合、前記見積データを提供する
付記1から付記8のいずれか1項に記載の情報処理方法。
(付記10)
取得した前記物理量データと、前記部材の残存寿命又は異常度に係る推定結果とに基づいて、前記部材の状態に応じた複数の関連情報を記憶する記憶部から、前記部材の状態に応じた関連情報を選択し、
選択された前記関連情報を前記成形機のユーザへ提供する
付記1から付記9のいずれか1項に記載の情報処理方法。
(付記11)
前記推定結果を提供するサイトへのアクセス履歴、前記見積データを提供するサイトへのアクセス履歴、前記部材の購入履歴、状態推定の履歴、ユーザに関する情報、成形機の使用環境、又は成形機の使用場所を示すデータを蓄積し、
蓄積されたデータに基づいて、ユーザをクラスタリングする
付記1から付記10のいずれか1項に記載の情報処理方法。
(付記12)
成形機を構成する部材の状態に関連する物理量データを取得する取得部と、処理部とを備え、
前記処理部は、
取得した前記物理量データに基づいて、前記部材の残存寿命又は異常度を推定し、
前記部材の残存寿命又は異常度に係る推定結果に基づいて、交換を要する前記部材の交換費用を示す見積データを生成し、
生成した前記見積データを前記成形機のユーザへ提供する
情報処理装置。
(付記13)
成形機を構成する部材の状態に関連する物理量データを取得し、
取得した前記物理量データに基づいて、前記部材の残存寿命又は異常度を推定し、
前記部材の残存寿命又は異常度に係る推定結果に基づいて、交換を要する前記部材の交換費用を示す見積データを生成し、
生成した前記見積データを前記成形機のユーザへ提供する
処理をコンピュータに実行させるためのコンピュータプログラム。
【符号の説明】
【0118】
1 :成形機
2 :センサ
3 :データ収集装置
4 :ルータ
5 :情報処理装置
6a :ユーザの端末装置
6b :営業担当者の端末装置
6c :工場の端末装置
10 :シリンダ
10a :ホッパ
11 :スクリュ
12 :ダイス
13 :モータ
14 :減速機
15 :制御装置
31 :制御部
32 :記憶部
33 :通信部
34 :データ入力部
50 :記録媒体
51 :処理部
52 :記憶部
53 :通信部
54 :予測学習モデル
54a :入力層
54b :中間層
54c :出力層
55 :周波数解析部
56 :画像生成部
52a :収集データDB
52b :ユーザDB
52c :ユーザ機器DB
52d :部材関連情報DB
52e :見積書テンプレート
P :コンピュータプログラム