(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024058986
(43)【公開日】2024-04-30
(54)【発明の名称】温度センサーおよび電流検出装置
(51)【国際特許分類】
G01K 7/16 20060101AFI20240422BHJP
G01R 15/00 20060101ALI20240422BHJP
G01R 19/00 20060101ALI20240422BHJP
G01R 19/32 20060101ALI20240422BHJP
G01K 1/14 20210101ALI20240422BHJP
【FI】
G01K7/16 Z
G01R15/00 500
G01R19/00 B
G01R19/32
G01K1/14 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022166445
(22)【出願日】2022-10-17
(71)【出願人】
【識別番号】000105350
【氏名又は名称】KOA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】豊田 進
(72)【発明者】
【氏名】仲村 圭史
(72)【発明者】
【氏名】赤羽 泰
【テーマコード(参考)】
2F056
2G025
2G035
【Fターム(参考)】
2F056CL07
2G025AA08
2G025AB05
2G025AC01
2G035AA03
2G035AA27
2G035AB02
2G035AC02
2G035AD00
2G035AD10
2G035AD13
2G035AD20
2G035AD28
2G035AD65
(57)【要約】
【課題】端子を接続する工程をより簡素化することができる温度センサーおよび電流検出装置を提供する。
【解決手段】シャント抵抗器の温度を測定するための温度センサーは、第1面および第2面を有する樹脂フィルムと、前記樹脂フィルムの第1面側に設けられ、感温部となる第1導電パターンと、前記樹脂フィルムの前記第1面側または第2面側に設けられ、前記シャント抵抗器の電圧を検出するための一対の第2導電パターンと、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャント抵抗器の温度を測定するための温度センサーであって、
第1面および第2面を有する樹脂フィルムと、
前記樹脂フィルムの第1面側に設けられ、感温部となる第1導電パターンと、
前記樹脂フィルムの前記第1面側または第2面側に設けられ、前記シャント抵抗器の電圧を検出するための一対の第2導電パターンと、
を備えた、温度センサー。
【請求項2】
前記一対の第2導電パターンは前記第1面側に設けられる、請求項1に記載の温度センサー。
【請求項3】
前記一対の第2導電パターンは前記第2面側に設けられる、請求項1に記載の温度センサー。
【請求項4】
前記樹脂フィルムの前記第2面側に設けられ、導電性を有するシールド層をさらに備えた、請求項2に記載の温度センサー。
【請求項5】
前記樹脂フィルムの前記第2面側に設けられ、導電性を有するシールド層をさらに備え、
前記シールド層は前記一対の第2導電パターンの一部である、
請求項3に記載の温度センサー。
【請求項6】
シャント抵抗器と、温度センサーと、電流検出回路と、を備えた電流検出装置であって、
前記シャント抵抗器は、抵抗体と、前記抵抗体の両側に接続された一対の電極とを備え、
前記温度センサーは、第1面および第2面を有する樹脂フィルムと、前記樹脂フィルムの前記第1面側に設けられ、感温部となる第1導電パターンとを備え、
前記電流検出回路は、前記一対の電極および前記第1導電パターンと電気的に接続され、
前記抵抗体および前記第1導電パターンは、絶縁層を介して隣接して配置されている、
電流検出装置。
【請求項7】
前記温度センサーは、前記樹脂フィルムの前記第1面側に設けられ、前記シャント抵抗器の電圧を検出するための一対の第2導電パターンをさらに備え、
前記一対の電極および前記電流検出回路は、前記一対の第2導電パターンを介して電気的に接続されている、
請求項6に記載の電流検出装置。
【請求項8】
前記温度センサーは、前記樹脂フィルムの前記第2面側に設けられ、前記シャント抵抗器の電圧を検出するための一対の第2導電パターンをさらに備え、
前記一対の電極および前記電流検出回路は、前記一対の第2導電パターンを介して電気的に接続されている、
請求項6に記載の電流検出装置。
【請求項9】
前記温度センサーは、前記樹脂フィルムの前記第2面側に設けられ、導電性を有するシールド層をさらに備え、
前記シールド層と前記電流検出回路のグランドラインとが電気的に接続されている、請求項6または7に記載の電流検出装置。
【請求項10】
前記温度センサーは、前記樹脂フィルムの前記第2面側に設けられ、導電性を有するシールド層をさらに備え、
前記シールド層は前記一対の第2導電パターンの一部であり、
前記一対の第2導電パターンの一方と、前記電流検出回路のグランドラインとが電気的に接続されている、請求項8に記載の電流検出装置。
【請求項11】
前記電流検出装置は、フレキシブル配線基板をさらに備え、
前記フレキシブル配線基板は、前記第1導電パターンと電気的に接続される一対の第3導電パターンと、前記シャント抵抗器の電圧を検出するための一対の第4導電パターンと、を有し、
前記一対の第4導電パターンと前記一対の電極とが電気的に接続され、
前記一対の第3導電パターンおよび前記一対の第4導電パターンと、前記電流検出回路とが電気的に接続されている、
請求項6に記載の電流検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は温度センサーおよび電流検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
シャント抵抗器は、電流検出精度を向上させるために、抵抗温度係数(TCR)の絶対値が小さい抵抗材料を使用し、環境温度や自己発熱によりシャント抵抗器の温度が変化しても電流検出精度を良好に保つ様に工夫されている。また、数百Aの様な大電流を検出するために使用されるシャント抵抗器は、極めて低い抵抗値(例えば、50μΩ以下)にする必要がある。しかし、抵抗値が極めて低くなると、電極の抵抗成分が影響し、シャントのTCRはプラス側へ大きくなる傾向がある。
【0003】
そこで大電流用のシャント抵抗器では温度測定を行い、その温度に合わせて抵抗値の補正を行うことで、電流検出精度を向上させることが求められる。
【0004】
シャント方式の電流センサーでは、ホール素子方式よりも優れた特性を実現するために、電流検出の高精度化が重要視されている。そのため、シャント抵抗器の温度を正確に測定し、その値とTCRに基づいて検出電圧を補正して、電流を算出することが必要となる。検出電圧を高精度に温度補正するためには、シャント抵抗器の抵抗体の温度を直接測定することが求められるので、電気的に絶縁した状態でシャント抵抗器の抵抗体に貼り合わせて使用するような温度センサーが好適である。
【0005】
特許文献1では、回路基板上の裏面に温度センサーを備え、温度センサーがシャント抵抗部の中央部に来るよう配置して温度を測定する構造が開示されている。特許文献1では、温度センサーは回路基板に接続されており、測定される温度は回路基板の温度が支配的となる。また、製造時に温度センサーがシャント抵抗部に接触して機械的に破損しないよう配置する必要があり、温度センサーとシャント抵抗部にはある程度の間隔を確保する必要がある。さらに、回路基板の熱容量が大きいとシャント抵抗部の熱が回路基板へ放熱されるため、シャント抵抗部の温度を正確に測定することができない。とくに、瞬時の温度変化に追従した温度測定ができない。
【0006】
特許文献2では、抵抗素子上に半導体素子を備え、半導体素子は温度センサーを含むことが開示されている。半導体素子では、半導体素子自身が発熱することと、抵抗素子全体の一部分しか測定できないことにより、正確な温度測定ができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2013-124859号公報
【特許文献2】特開2003-270274号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来の技術では、薄型の温度センサーをシャント抵抗器に使用する場合、電圧検出端子および温度センサー端子をそれぞれ回路基板に接続する工程が必要であり、接続に手間がかかるという課題があった。また、このために、製造コストが増大するという課題があった。
【0009】
本発明はこのような課題を解決するためになされたものであり、端子を接続する工程をより簡素化することができる温度センサーおよび電流検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る温度センサーの一例は、
シャント抵抗器の温度を測定するための温度センサーであって、
第1面および第2面を有する樹脂フィルムと、
前記樹脂フィルムの第1面側に設けられ、感温部となる第1導電パターンと、
前記樹脂フィルムの前記第1面側または第2面側に設けられ、前記シャント抵抗器の電圧を検出するための一対の第2導電パターンと、
を備える。
【0011】
一例において、前記一対の第2導電パターンは前記第1面側に設けられる。
一例において、前記一対の第2導電パターンは前記第2面側に設けられる。
一例において、前記樹脂フィルムの前記第2面側に設けられ、導電性を有するシールド層をさらに備える。
一例において、前記樹脂フィルムの前記第2面側に設けられ、導電性を有するシールド層をさらに備え、
前記シールド層は前記一対の第2導電パターンの一部である。
【0012】
本発明に係る電流検出装置の一例は、
シャント抵抗器と、温度センサーと、電流検出回路と、を備えた電流検出装置であって、
前記シャント抵抗器は、抵抗体と、前記抵抗体の両側に接続された一対の電極とを備え、
前記温度センサーは、第1面および第2面を有する樹脂フィルムと、前記樹脂フィルムの前記第1面側に設けられ、感温部となる第1導電パターンとを備え、
前記電流検出回路は、前記一対の電極および前記第1導電パターンと電気的に接続され、
前記抵抗体および前記第1導電パターンは、絶縁層を介して隣接して配置されている。
【0013】
一例において、前記温度センサーは、前記樹脂フィルムの前記第1面側に設けられ、前記シャント抵抗器の電圧を検出するための一対の第2導電パターンをさらに備え、
前記一対の電極および前記電流検出回路は、前記一対の第2導電パターンを介して電気的に接続されている。
一例において、前記温度センサーは、前記樹脂フィルムの第2面側に設けられ、前記シャント抵抗器の電圧を検出するための一対の第2導電パターンをさらに備え、
前記一対の電極および前記電流検出回路は、前記一対の第2導電パターンを介して電気的に接続されている。
一例において、前記温度センサーは、前記樹脂フィルムの第2面側に設けられ、導電性を有するシールド層をさらに備え、
前記シールド層と前記電流検出回路のグランドラインとが電気的に接続されている。
一例において、前記温度センサーは、前記樹脂フィルムの第2面側に設けられ、導電性を有するシールド層をさらに備え、
前記シールド層は前記一対の第2導電パターンの一部であり、
前記一対の第2導電パターンの一方と、前記電流検出回路のグランドラインとが電気的に接続されている。
一例において、前記電流検出装置は、フレキシブル配線基板をさらに備え、
前記フレキシブル配線基板は、前記第1導電パターンと電気的に接続される一対の第3導電パターンと、前記シャント抵抗器の電圧を検出するための一対の第4導電パターンと、を有し、
前記一対の第4導電パターンと前記一対の電極とが電気的に接続され、
前記一対の第3導電パターンおよび前記一対の第4導電パターンと、前記電流検出回路とが電気的に接続されている。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る温度センサーおよび電流検出装置によれば、温度センサーに電圧検出パターンを設けることで、電圧検出端子と温度センサー端子とを同時に回路基板へ接続させることができ、容易に取り付けることができるので、接続時の手間が省ける。
【0015】
一例では、樹脂フィルムが可撓性を有するため、シャント抵抗器の抵抗体に隙間なく密着させることができ、正確な温度測定が可能となる。とくに、瞬時の温度変化にも追従して測定ができる。
【0016】
一例では、感温部と抵抗部との間隔を140μm以下にすることができ、さらに好ましくは70μm以下にすることができ、間隔が狭いので正確な温度測定ができる。なお、抵抗部の面に温度センサーの樹脂フィルムにおける感温部側の面を向かい合わせで貼り付けた場合には、間隔は10~20μmとなり、抵抗部の面に樹脂フィルムにおける感温部とは反対側の面を貼り付けた場合でも、間隔は140μm以下とすることが可能である。
【0017】
一例では、温度センサーは容易に感温部の大きさを変えて製造できるので、感温部の大きさを抵抗体の大きさに合わせて調整できる。このため、抵抗体の上面を広く覆うことができ、正確な温度測定が可能となる。より好ましくは、感温部が抵抗体の上面の50%以上を覆うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の実施例1に関連して利用可能なシャント抵抗器10の基本構造。
【
図2】本発明の実施例1に係る温度センサー20の構成。
【
図3】実施例1に係るシャント抵抗器10に温度センサー20を取り付けた状態。
【
図5】実施例1に係る温度センサー20と電流検出回路とを接続するためのコネクタ部30の構成。
【
図6】実施例1に係るシャント抵抗器10に温度センサー20およびコネクタ部30を取り付けた状態。
【
図10】本発明の実施例2に関連して利用可能なシャント抵抗器10の基本構造。
【
図12】実施例2に係るシャント抵抗器10に温度センサー20およびコネクタ部30を取り付けた状態。
【
図17】実施例4に係るシャント抵抗器10に温度センサー20およびコネクタ部30を取り付けた状態。
【
図20】実施例5に係る温度センサー20とシャント抵抗器10との接続部分の断面図。
【
図22】実施例6に係るシャント抵抗器10に温度センサー20およびコネクタ部30を取り付けた状態。
【
図24】実施例6に係る電流検出装置100の構成。
【
図27】実施例8に係る電流検出装置100の構成。
【
図28】実施例8の変形例に係る電流検出装置100の構成。
【
図29】実施例9に関連して利用可能なシャント抵抗器10の構成。
【
図30】実施例9に係るシャント抵抗器10に温度センサー20およびコネクタ部30を取り付けた状態。
【
図32】実施例10に係る温度センサーが利用可能な面実装タイプのシャント抵抗器10の構成。
【
図33】実施例10に係る温度センサー20をシャント抵抗器10に接続した構成。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施例を添付図面に基づいて説明する。
【0020】
[実施例1]
図1に、本発明の実施例1に関連して利用可能なシャント抵抗器10の基本構造を示す。シャント抵抗器10は、抵抗体12と、抵抗体12の両側に接続された一対の電極11とを備える。各電極11において、抵抗体12と当該電極11との接続部近辺に電圧検出部11aがある。抵抗体12にはたとえばCu-Mn系(例えばマンガニン(登録商標)、ゼラニン(登録商標))、Cu-Ni系、Ni-Cr系、Fe-Ni系などの合金が用いられ、電極11にはたとえば銅が用いられている。抵抗体12と電極11は突合せ溶接にて接合されており、電圧検出部11aは銅電極内に存在する電圧検出に適したエリアを表す。
【0021】
図2に、本発明の実施例1に係る温度センサー20の構成を示す。温度センサー20は、シャント抵抗器の温度を測定するための温度センサーであり、たとえば
図1のシャント抵抗器10の温度を測定することができる。
【0022】
温度センサー20は、樹脂フィルム21と、第1接着層22と、感温素子パターン23と、電圧検出パターン24と、第2接着層25とを備える。
図2(a)は、温度センサー20の裏側において第2接着層25を省略した状態の図であり、
図2(b)は温度センサー20の裏側において第2接着層25を含む図である。図示の便宜上、
図2(b)において第2接着層25はハッチングにより透過的に示す。
【0023】
本明細書において、「裏側」とは、シャント抵抗器10に対向する側をいい、「表側」とは、裏側と反対の側(すなわちシャント抵抗器10に対向しない側)をいう。
【0024】
第1接着層22は、樹脂フィルム21の一方の面(本実施例では裏側面)に設けられる。感温素子パターン23は、樹脂フィルム21において第1接着層22が設けられた側の面に、第1接着層22を介して設けられる。ここで、樹脂フィルム21は表側面および裏側面という2つの面を有するが、これらの面のうち、感温素子パターン23が設けられる側の面を「第1面」と呼び、反対側の面を「第2面」と呼ぶ。本実施例では、裏側面が第1面であり、表側面が第2面である。
【0025】
感温素子パターン23は感温部となる第1導電パターンである。感温素子パターン23はたとえばTi箔を用いて形成することができる。
【0026】
本実施例では、電圧検出パターン24も、樹脂フィルム21の裏側に、第1接着層22を介して設けられる。電圧検出パターン24は、シャント抵抗器10の電圧を検出するための一対の第2導電パターンである。電圧検出パターン24はたとえばTiまたはCu等の導電材料を用いて形成することができる。
【0027】
図3に、シャント抵抗器10に温度センサー20を取り付けた状態を示す。
図4に、
図3のIV-IV線に沿った断面図を示す。上述のように、本実施例では、感温素子パターン23と電圧検出パターン24とが樹脂フィルム21に対して同じ側に設けられる。このような構造をフォトリソグラフィおよびエッチングで形成する場合には、電圧検出パターン24の材料を感温素子パターン23の材料と同一とすると生産しやすい。たとえばTiを用いることができる。
【0028】
感温素子パターン23は、シャント抵抗器10の幅方向(シャント抵抗器10に流れる電流と直交する方向)に長くすることで、シャント抵抗器10に流れる電流による電磁誘導ノイズを低減することができる。
【0029】
第1接着層22および第2接着層25の材料は、絶縁性を有し、熱伝導性の高い接着剤が好ましい。本実施例ではシリコン系樹脂を使用する。このような構成は、エッチング剤にフッ素系エッチング剤を使用する場合に適している。
【0030】
温度センサー20は、第2接着層25を介してシャント抵抗器10に貼り付けられる。たとえば、抵抗体12および感温素子パターン23は、絶縁層である第2接着層25を介して隣接して配置される。また、電圧検出パターン24の一部(パターン露出部24a)は、第2接着層25によって覆われず露出した状態で存在し、このパターン露出部24aが、電極接続層26(はんだ付けや溶接等によって形成される)を介して、シャント抵抗器10の電圧検出部11a(
図1参照)と電気的に接続される。
【0031】
樹脂フィルム21の厚さは、取り扱いを考慮して決定することができる。樹脂フィルム21の厚さが20μm未満の場合には、材料が柔らかすぎて取り扱いが難しくなり、100μm以上の厚さになると、硬すぎて柔軟性が得られなくなってしまう。以上より、樹脂フィルム21の厚さは20~80μmが推奨され、25~50μmがより好ましい。
【0032】
また、樹脂フィルム21は、ある程度の耐熱性(200℃程度)が要求される場合があり、比較的耐熱性の高いポリイミドやエポキシなどの樹脂を用いることが好ましい。この場合は、感温素子パターン23と樹脂フィルム21を貼り合わせる第1接着層22を設けることが好適である。第1接着層22はできる限り薄い方が好ましく、10~20μmの厚さが好ましい。
【0033】
また、樹脂フィルム21に熱可塑性の樹脂を用いることで、感温素子パターン23と樹脂フィルム21とを熱圧着させることが可能であり、熱可塑性の樹脂を選定すると第1接着層22が不要となる。熱可塑性樹脂としては、比較的耐熱性の高いポリアミドイミドやポリカーボネート、テフロン(登録商標)などを用いることが好ましい。
【0034】
樹脂フィルム21は可撓性を有することが好ましい。樹脂フィルム21を可撓性とすると、シャント抵抗器10の抵抗体12に隙間なく密着させることができ、正確な温度測定が可能となる。とくに、瞬時の温度変化にも追従して測定ができる。
【0035】
感温素子パターン23にTi箔を用いる場合、膜厚を3μmより薄く設定すると、加工が技術的に難しく、コストが増加する。また、膜厚を10μmより厚く設定すると、高い抵抗値を得ることが難しく、必要な抵抗値を得ることができなくなる。以上より、感温素子パターン23にTi箔を用いる場合、感温素子パターン23の厚さは3~10μmが好ましく、5μm程度がより好ましい。
【0036】
感温素子パターン23は、樹脂フィルム21上で使用されることを考えると、曲げても断線しないことが求められるため、ある程度広い幅のパターンが求められる。一方で、温度センサー20としてはある程度高い抵抗値(たとえば200Ω程度)が求められるため、小型のセンサーを作製する場合は、パターンの幅をある程度狭くする必要がある。Ti箔を用いる場合、厚さを5μmに設定すると、200Ω程度の抵抗値を実現するには、パターンの幅を150μm以下にすることが好適である。また、機械的強度を確保することを考慮すると、パターンの幅を50μm以上にすることが好適である。以上より、感温素子パターン23にTi箔を用いる場合、感温素子パターン23のパターン幅は、50~150μmが好ましく、エッチングによるパターン形成の難易度を考慮すると100μm程度がより好ましい。
【0037】
温度測定の精度を向上させるために、感温素子パターン23と抵抗体12との間隔は140μm以下にすると好適であり、さらに70μm以下にするとより好適である。なお、本実施例のように、抵抗体12に温度センサー20の樹脂フィルム21の第1面(裏側面、すなわち感温素子パターン23側の面)を向かい合わせで貼り付けた場合には、感温素子パターン23と抵抗体12との間隔を10~20μmにすることができる。
【0038】
図5に、温度センサー20と電流検出回路とを接続するためのコネクタ部30の構成を示す。
図6に、シャント抵抗器10に温度センサー20およびコネクタ部30を取り付けた状態を示す。
図7に、
図6のVII-VII線に沿った断面図を示す。
図8に、
図6を別の方向から見た斜視図を示す。
【0039】
コネクタ部30は、フレキシブル配線基板31およびコネクタ33を備える。フレキシブル配線基板31は、複数の配線パターン32を有する。温度センサー20の感温素子パターン23および電圧検出パターン24は、それぞれ対応する配線パターン32と電気的に接続される。配線パターン32は、後述の配線パターン32aおよび配線パターン32bを含む。
【0040】
図7に示すように、フレキシブル配線基板31は、感温素子パターン23と電気的に接続される一対の配線パターン32a(第3導電パターン)と、電圧検出パターン24と電気的に接続される一対の配線パターン32b(第4導電パターン)とを有する。とくに、配線パターン32bは、電圧検出パターン24を介して、シャント抵抗器10の電極11と電気的に接続される。
【0041】
感温素子パターン23および電圧検出パターン24と、配線パターン32との間の導通は、たとえば異方性導電シート34を介して接続することで、絶縁が必要とされるパターン間(感温素子パターン23と電圧検出パターン24との間)の絶縁を維持しつつ容易に実現することができる。
【0042】
このように、温度センサー20に、感温素子パターン23のみならず電圧検出パターン24をも設けることにより、電圧検出用の端子と、温度検出用の端子とを、同時にコネクタ部30に接続することができる。このため接続作業が容易に行え、接続時の手間が省ける。
【0043】
なお、感温素子パターン23は容易に大きさを変えて製造できるので、感温素子パターン23の大きさを抵抗体12の大きさに合わせて調整できる。このため、抵抗体12の上面を感温素子パターン23によって広く覆うことができ、正確な温度測定が可能となる。とくに、感温素子パターン23(より厳密には、感温素子パターン23の最外縁によって覆われる範囲)が抵抗体12の上面の50%以上を覆うようにすると好適である。
【0044】
図9に、実施例1に係る電流検出装置100の構成を示す。電流検出装置100は、シャント抵抗器10と、温度センサー20と、コネクタ部30と、電流検出回路40とを備える。図示の便宜上、
図9において、温度センサー20については感温素子パターン23のみを示し、コネクタ部30についてはコネクタ33に配置されるコネクタ端子33aのみを示す。
【0045】
電流検出回路40は、コネクタ端子33aを介して、配線パターン32(配線パターン32aおよび配線パターン32bを含む)と電気的に接続される。このようにして、電流検出回路40は、コネクタ端子33a、配線パターン32bおよび電圧検出パターン24を介してシャント抵抗器10の電極11(電圧検出部11a)と電気的に接続され、コネクタ端子33aおよび配線パターン32aを介して温度センサー20の感温素子パターン23と電気的に接続される。
【0046】
電流検出回路40は、一対の抵抗器41と、コンデンサ42と、絶縁アンプ43と、A/D変換器44と、マイコン45とを備える。マイコン45はコネクタ端子33aを介して感温素子パターン23に接続され、感温素子パターン23の抵抗値に基づいて温度を算定する。また、絶縁アンプ43は、一対の入力端子間に配置されたコンデンサ42、抵抗器41およびコネクタ端子33aを介して電圧検出部11aに接続され、検出される電圧を増幅する。増幅された電圧は、A/D変換器44を介してマイコン45に入力され、これによって電圧が算定される。
【0047】
マイコン45は、算定された電圧を、算定された温度に基づいて補正し、これによって電流値を算定する。このようにして電流検出装置100はシャント抵抗器10に流れる電流を検出する。ここで、温度に応じて電流値が補正されるので、環境温度およびシャント抵抗器10の発熱による電流検出精度の低下を抑制することができる。
【0048】
[実施例2]
以下、本発明の実施例2について説明する。実施例1と共通する部分については、説明を省略する場合がある。
【0049】
図10に、実施例2に関連して利用可能なシャント抵抗器10の基本構造を示す。電極11には、表面から突出する電圧検出端子11bが形成されている。
【0050】
図11に、本発明の実施例2に係る温度センサー20の構成を示す。
図11(a)は表側から見た図であり、
図11(b)は裏側から見た図である。実施例1とは異なり、第1接着層22および感温素子パターン23は樹脂フィルム21の表側に設けられる(すなわち本実施例では表側面が第1面となり、裏側面が第2面となる)。第2接着層25は裏側に設けられる。樹脂フィルム21および第1接着層22は、電圧検出端子11bを挿通させるための挿通孔となるスルーホール20aを有する。
【0051】
図12に、シャント抵抗器10に温度センサー20およびコネクタ部30を取り付けた状態を示す。
図13に、
図12のXIII-XIII線に沿った断面図を示す。スルーホール20aに電圧検出端子11bが挿通されている。電極接続層26によって、電圧検出端子11bと、電圧検出パターン24(とくにスルーホール20aの周辺または近傍の部分)とが導通する。
【0052】
本実施例では、実施例1とは異なり感温素子パターン23と抵抗体12との間に樹脂フィルム21が配置されるが、樹脂フィルム21等の厚さを適切に設計することにより、感温素子パターン23と抵抗体12との間隔は140μm以下とすることが可能である。
【0053】
図14に、
図12のXIV-XIV線に沿った断面図を示す。実施例1(
図7)に対して表裏が逆転している。
【0054】
実施例2に係る温度センサー20によれば、温度センサー20のスルーホール20aに電極11の電圧検出端子11bを挿通させて取り付けることにより、取り付け位置を容易に合わせることができる。
【0055】
[実施例3]
以下、本発明の実施例3について説明する。上述の実施例のいずれかと共通する部分については、説明を省略する場合がある。
【0056】
図15に、実施例3に係る温度センサー20の構成を示す。
図15は裏側から見た図である。感温素子パターン23および電圧検出パターン24は、樹脂フィルム21の裏側に設けられる(すなわち本実施例では裏側面が第1面となり、表側面が第2面となる)。
【0057】
本実施例では、一対の電圧検出パターン24の相互間隔が、実施例1(
図2)に比べて狭くなっている。一対の電圧検出パターン24は、感温素子パターン23の内側に配置されているので、相互間隔を要件に応じて狭くすることができ、外部ノイズ(寄生インダクタンス)による電圧検出の誤差を低減することができる。
【0058】
なお、本実施例(
図15)と実施例1(
図2等)を比較すると、本実施例ではノイズを低減して電圧検出の誤差を低減することができるが、本実施例では、感温素子パターン23が電圧検出パターン24の外側に配置されることによって、部分的に電極11と隣接してしまうので、温度測定の精度は実施例1のほうが高くなる。
【0059】
なお実施例3の変形例として、感温素子パターン23および電圧検出パターン24を表側に設けることも可能である。その場合には、適宜、スルーホール20a(
図11)のようなスルーホールを設けることにより導通を実現することができる。
【0060】
[実施例4]
以下、本発明の実施例4について説明する。上述の実施例のいずれかと共通する部分については、説明を省略する場合がある。
【0061】
図16に、実施例4に係る温度センサー20の構成を示す。
図16(a)は表側から見た図であり、
図16(b)は裏側から見た図である。感温素子パターン23は、樹脂フィルム21の表側に設けられ、電圧検出パターン24は、樹脂フィルム21の裏側に設けられる(すなわち本実施例では表側面が第1面となり、裏側面が第2面となる)。
【0062】
本実施例では、実施例1~3とは異なり、樹脂フィルム21において、一対の電圧検出パターン24は、感温素子パターン23が設けられている側(第1面側)とは反対の側(第2面側)に設けられる。
【0063】
温度センサー20の裏側には感温接続パッド23aが設けられ、感温接続パッド23aはスルーホール20bを介して感温素子パターン23と導通する。このようにすると、温度センサー20の接続端子がすべて同一面(裏側面)に配置されるので、接続作業が容易である。
【0064】
電圧検出パターン24がCuからなる場合には、温度センサー20を製造する際に、予め樹脂フィルム21の裏側面にCu箔を形成しておいてもよい。このようにすると、エッチング等により電圧検出パターン24と感温接続パッド23aとを同時に形成することができる。
【0065】
なお、Cu箔の形成方法としては、接着剤による貼り付け、キャスティング法、スパッタで下地(Niなど)を形成して電解Cuめっきを行う方法、熱ラミネーションによる貼り付け(熱可逆性樹脂フィルムの場合)、無電解めっきで下地(Niなど)を形成して電解Cuめっきを行う方法、などがある。
【0066】
図17に、シャント抵抗器10に温度センサー20およびコネクタ部30を取り付けた状態を示す。
図18に、
図17のXVIII-XVIII線に沿った断面図を示す。本実施例では、感温素子パターン23および電圧検出パターン24がそれぞれ異なる面に設けられているので、それぞれに対応して第1接着層22が樹脂フィルム21の両面に設けられる。
【0067】
電圧検出パターン24は、電極接続層26を介して電極11と電気的に接続される。このように、一対の電極11と電流検出回路40(
図9)は、一対の電圧検出パターン24を介して電気的に接続される。
【0068】
実施例4のような構成によれば、実施例1(
図2等)のように感温素子パターン23を抵抗体12のみに隣接して配置できるので高精度に温度測定ができ、かつ、実施例3(
図15)のように一対の電圧検出パターン24の相互間隔を狭くできるので外部ノイズによる電圧検出の誤差も低減することができる。
【0069】
[実施例5]
以下、本発明の実施例5について説明する。上述の実施例のいずれかと共通する部分については、説明を省略する場合がある。
【0070】
図19に、実施例5に係る温度センサー20の構成を示す。
図19(a)は表側から見た図であり、
図19(b)は裏側から見た図である。感温素子パターン23は、樹脂フィルム21の裏側に設けられ、電圧検出パターン24は、樹脂フィルム21の表側に設けられる(すなわち本実施例では裏側面が第1面となり、表側面が第2面となる)。
【0071】
図20に、温度センサー20とシャント抵抗器10との接続部分(
図4、
図13および
図18に対応する部分)の断面図を示す。実施例5において、温度センサー20は電圧検出端子11bを有するシャント抵抗器10(
図10)に取り付けられ、スルーホール20aに電圧検出端子11bを挿通し、電極接続層26によって、電圧検出端子11bと、電圧検出パターン24(とくにスルーホール20aの周辺または近傍の部分)とが導通する。なお、本実施例では、電圧検出パターン24はスルーホール20aの内周面およびその両端近傍にも形成される。
【0072】
温度センサー20の裏側には電圧接続パッド24bが設けられ、電圧接続パッド24bはスルーホール20cを介して電圧検出パターン24と導通する。このようにすると、温度センサー20の接続端子がすべて同一面(裏側面)に配置されるので、接続作業が容易である。
【0073】
[実施例6]
以下、本発明の実施例6について説明する。上述の実施例のいずれかと共通する部分については、説明を省略する場合がある。実施例6は、実施例1において、電磁波を遮蔽するためのシールド層を設けたものである。
【0074】
図21に、実施例6に係る温度センサー20の構成を示す。
図21(a)は表側から見た図であり、
図21(b)は裏側から見た図である。感温素子パターン23および電圧検出パターン24は、樹脂フィルム21の裏側に設けられる(すなわち本実施例では裏側面が第1面となり、表側面が第2面となる)。
【0075】
樹脂フィルム21の表側に、シールド層27が設けられる。すなわち、樹脂フィルム21において、シールド層27は、感温素子パターン23が設けられている側(第1面側)とは反対の側(第2面側)に設けられる。シールド層27は導電性を有する。シールド層27はたとえば金属からなり、具体例としてCu、Ni、Al、Fe、Ag等を用いることができる。
【0076】
樹脂フィルム21の裏側にグランド接続パッド27aを設けてもよく、シールド層27はスルーホール20dを介してグランド接続パッド27aと導通してもよい。
【0077】
図22に、シャント抵抗器10に温度センサー20およびコネクタ部30を取り付けた状態を示す。コネクタ部30は、グランド接続パッド27aと電気的に接続される配線パターン32c(グランド接続ライン)を有してもよい。
【0078】
図23に、
図22のXXIII-XXIII線に沿った断面図を示す。シールド層27は、樹脂フィルム21の表側に、第1接着層22を介して設けられる。
【0079】
図24に、実施例6に係る電流検出装置100の構成を示す。電流検出装置100は、シャント抵抗器10と、温度センサー20と、コネクタ部30と、電流検出回路40とを備える。図示の便宜上、
図24において、温度センサー20については感温素子パターン23およびシールド層27のみを示し、コネクタ部30についてはコネクタ33に配置されるコネクタ端子33aのみを示す。シールド層27と電流検出回路40のグランドライン(GND)とが電気的に接続されても良い。
【0080】
シールド層27を備えることで、外部ノイズによる電圧検出および温度検出の誤差を低減することができる。
【0081】
実施例6は実施例1においてシールド層27を設けたものであるが、実施例2において同様のシールド層27を設けることも可能である。その場合には、感温素子パターン23および電圧検出パターン24を樹脂フィルム21の表側に設け、スルーホールを介してこれらをコネクタ部30に接続することができる。また、実施例3において同様のシールド層27を設けることも可能である。
【0082】
[実施例7]
以下、本発明の実施例7について説明する。上述の実施例のいずれかと共通する部分については、説明を省略する場合がある。
【0083】
実施例7は、電圧検出パターン24がシールド層としても機能するように構成したものであり、電圧検出パターン24の一部がシールド層24cとなる。電圧検出パターン24は導電性を有するので、形状および配置によってシールド層24cとして機能させることができる。
【0084】
図25に、実施例7に係る温度センサー20の構成を示す。
図25(a)は表側から見た図であり、
図25(b)は裏側から見た図である。感温素子パターン23は、樹脂フィルム21の裏側に設けられ、電圧検出パターン24は、樹脂フィルム21の表側に設けられる(すなわち本実施例では裏側面が第1面となり、表側面が第2面となる)。
【0085】
図25の例では、一対の電圧検出パターン24が、それぞれ互いに線対称となる形状のシールド層24cを有している。シールド層24cの具体的な構成はこれに限らず、シールド層としての機能を発揮する範囲で当業者が適宜設計することができる。
【0086】
樹脂フィルム21にはスルーホール20aおよび20cが設けられており、温度センサー20とシャント抵抗器10との接続は、実施例5(
図19および20)と同様にして実現することができる。
【0087】
実施例7では、電圧検出パターン24が樹脂フィルム21の表側に設けられ、感温素子パターン23は裏側に設けられているが、実施例4のようにこれらを逆にしてもよい。すなわち、電圧検出パターン24(
図25のようにシールド層としても機能するもの)が裏側に設けられ、感温素子パターン23は表側に設けられてもよい。
【0088】
[実施例8]
以下、本発明の実施例8について説明する。上述の実施例のいずれかと共通する部分については、説明を省略する場合がある。実施例8は、実施例7において、一対の電圧検出パターン24のうち一方のみにシールド層を設けたものである。
【0089】
図26に、実施例8に係る温度センサー20の構成を示す。
図26(a)は表側から見た図であり、
図26(b)は裏側から見た図である。感温素子パターン23は、樹脂フィルム21の裏側に設けられ、電圧検出パターン24は、樹脂フィルム21の表側に設けられる(すなわち本実施例では裏側面が第1面となり、表側面が第2面となる)。
【0090】
一対の電圧検出パターン24のうち一方のみがシールド層24cを有する。一対の電圧検出パターン24のうち、シールド層24cを有するものは、スルーホール20cを介して電圧接続パッド24bの一方およびグランド接続パッド24dと導通する。このようにして、シールド層24cからの電気的出力が分岐する。また、一対の電圧検出パターン24のうち、シールド層24cを有しないものは、スルーホール20cを介して電圧接続パッド24bの他方と導通する。
【0091】
図27に、実施例8に係る電流検出装置100の構成を示す。電流検出装置100は、シャント抵抗器10と、温度センサー20と、コネクタ部30と、電流検出回路40とを備える。図示の便宜上、
図27において、温度センサー20については感温素子パターン23およびシールド層24cのみを示し、コネクタ部30についてはコネクタ33に配置されるコネクタ端子33aのみを示す。
【0092】
シールド層24cと電気的に接続される電圧接続パッド24bは、抵抗器41を介して絶縁アンプ43の反転入力端子と電気的に接続される。一方、グランド接続パッド24dは、電流検出回路40のグランドライン(GND)と電気的に接続される。このように、電圧検出パターン24の一方と、電流検出回路40のグランドラインとが電気的に接続されている。
【0093】
図28に、実施例8の変形例に係る電流検出装置100の構成を示す。実施例8(
図27)では絶縁アンプ43は正電源(Vcc)とグランドラインとの間の電圧によって駆動されるが、
図28の変形例では、負電源(Vee)が設けられており、絶縁アンプ43は正電源(Vcc)と負電源(Vee)との間の電圧によって駆動される。正電源および負電源は、それぞれコンデンサ46を介してグランドラインと電気的に接続される。
【0094】
このような変形例によれば、絶縁アンプ43の信号出力において、負側に増幅可能な範囲をより広くすることができる。
【0095】
[実施例9]
以下、本発明の実施例9について説明する。上述の実施例のいずれかと共通する部分については、説明を省略する場合がある。実施例9は、実施例1において、一対の電圧検出パターン24を省略し、電圧検出部11aがコネクタ部30に直接的に接続されるようにしたものである。
【0096】
図29に、実施例9に関連して利用可能なシャント抵抗器10の構成を示す。シャント抵抗器10は、突出部10aを備える。電圧検出部11aは突出部10aに設けられる。
【0097】
図30に、シャント抵抗器10に温度センサー20およびコネクタ部30を取り付けた状態を示す。コネクタ部30は、突出部10aに接続される。
【0098】
図31に、
図30のXXXI-XXXI線に沿った断面図を示す。感温素子パターン23は、樹脂フィルム21の表側に設けられる(すなわち本実施例では表側面が第1面となり、裏側面が第2面となる)。
【0099】
温度センサー20は、シャント抵抗器10の突出部10aにおいて、第2接着層25を介して抵抗体12に貼り付けられる。抵抗体12および感温素子パターン23は、絶縁層である第2接着層25を介して(より厳密には、さらに第1接着層22および樹脂フィルム21を介して)隣接して配置されている。感温素子パターン23は、フレキシブル配線基板31の一対の配線パターン32aと電気的に接続される。
【0100】
本実施例では、温度センサー20は電圧検出パターン(たとえば
図2等の電圧検出パターン24)を備えない。電圧検出部11aは、突出部10aにおいて、電極接続層26(はんだ付けや溶接等によって形成される)を介して、フレキシブル配線基板31の配線パターン32bに接続される。このように、本実施例においても、配線パターン32bがシャント抵抗器10の電圧を検出するために用いられる。
【0101】
実施例9に係る電流検出装置は、実施例1(
図9)と同様にして構成することができる。すなわち、配線パターン32aおよび配線パターン32bと、電流検出回路とが電気的に接続され、これによって、電流検出回路は、電極11および感温素子パターン23と電気的に接続される。
【0102】
実施例9に係る温度センサー20および電流検出装置によれば、シャント抵抗器10の電圧検出部11aと、温度センサー20の感温素子パターン23とを、突出部10aにおいて同時にフレキシブル配線基板31に接続することができるので、端子を接続する工程をより簡素化することができる。
【0103】
さらに、実施例9では温度センサー20内に電圧検出パターンを形成していないため、温度センサー20自体のコストを削減することができる。なお、温度センサー20、シャント抵抗器10およびコネクタ部30の接続箇所が複雑になる場合があるが、そのような場合には、取り扱い面で工夫すると好適である。
【0104】
[実施例10]
以下、本発明の実施例10について説明する。上述の実施例のいずれかと共通する部分については、説明を省略する場合がある。実施例10は、面実装タイプのシャント抵抗器への応用例である。
【0105】
図32に、実施例10に係る温度センサーが利用可能な面実装タイプのシャント抵抗器10の構成を示す。測定対象物に、シャント抵抗器10を取り付けるための一対のランド50が形成されている。一対の電極11は、それぞれ対応するランド50と、はんだ付けなどによって形成される電極接続層26(図示省略)を介して電気的に接続される。
【0106】
電極11は湾曲部分11cを有し、これによって抵抗体12が電流測定対象物から離間するように構成されている。
【0107】
図33に、実施例10に係る温度センサー20をシャント抵抗器10に接続した構成を示す。本実施例では、樹脂フィルム21は可撓性を有する。このような構成によれば、電極11の湾曲部分11cに温度センサー20を隙間なく密着させることができるので、面実装タイプのシャント抵抗器10についても正確な温度測定が可能となる。とくに、瞬時の温度変化にも追従して測定ができる。
【符号の説明】
【0108】
10…シャント抵抗器
10a…突出部
11…電極
11a…電圧検出部
11b…電圧検出端子
11c…湾曲部分
12…抵抗体
20…温度センサー
20a~20d…スルーホール
21…樹脂フィルム
22…第1接着層(絶縁層)
23…感温素子パターン(第1導電パターン)
23a…感温接続パッド
24…電圧検出パターン(一対の第2導電パターン)
24a…パターン露出部
24b…電圧接続パッド
24c…シールド層
24d…グランド接続パッド
25…第2接着層(絶縁層)
26…電極接続層
27…シールド層
27a…グランド接続パッド
30…コネクタ部
31…フレキシブル配線基板
32…配線パターン
32a…配線パターン(一対の第3導電パターン)
32b…配線パターン(一対の第4導電パターン)
32c…配線パターン
33…コネクタ
33a…コネクタ端子
34…異方性導電シート
40…電流検出回路
41…抵抗器
42…コンデンサ
43…絶縁アンプ
44…A/D変換器
45…マイコン
46…コンデンサ
50…ランド
100…電流検出装置