(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024058988
(43)【公開日】2024-04-30
(54)【発明の名称】飲料容器用蓋及び飲料容器
(51)【国際特許分類】
B65D 47/06 20060101AFI20240422BHJP
B65D 75/62 20060101ALI20240422BHJP
【FI】
B65D47/06 110
B65D47/06 ZBP
B65D47/06 ZAB
B65D75/62 A BRQ
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022166448
(22)【出願日】2022-10-17
(71)【出願人】
【識別番号】000223193
【氏名又は名称】東罐興業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120868
【弁理士】
【氏名又は名称】安彦 元
(72)【発明者】
【氏名】田中 佑典
(72)【発明者】
【氏名】太田 登茂樹
【テーマコード(参考)】
3E067
3E084
【Fターム(参考)】
3E067AA03
3E067AB26
3E067AC01
3E067BA07A
3E067BB01A
3E067BB14A
3E067BB26A
3E067BC07A
3E067CA07
3E067EA17
3E067EB07
3E067EB29
3E067EE59
3E067FA01
3E067FC01
3E084AA02
3E084AA12
3E084AA24
3E084AA34
3E084AB01
3E084BA01
3E084CA01
3E084CB02
3E084CC03
3E084CC07
3E084DA01
3E084DB13
3E084DC03
3E084DC07
3E084FC04
3E084GA08
3E084GB12
3E084KA18
3E084KB01
3E084LA16
3E084LB02
3E084LB09
3E084LD01
(57)【要約】
【課題】飲料容器用蓋に設けられた切込み等を指で押し込んだ際に指が液面に触れてしまうのを防止することができ、開封動作自体を簡略化して1ステップで実現することで消費者が直感的に飲口を形成する方法を理解できる飲料容器用蓋を提供する。
【解決手段】飲料容器2の開口部3を覆う覆板部4と、覆板部4の外周縁に設けられ、飲料容器2の開口部3を覆板部4が覆うようにした際に当該飲料容器2の開口部3の縁部に係合可能な側周部5と、を備え、覆板部4の周縁側に設けられ、飲口8を形成するための当該飲口8の周縁側の形状である飲口形成用線部11と、飲口形成用線部11で囲まれた飲口形成用部位20の内部に形成され、周縁側に膨出した形状であるロック用線部12とを備え、飲口形成用線部11の一端及び他端は、ロック用線部12の一端及び他端よりも周縁側に位置し、又はロック用線部12の一端及び他端と同一線上に位置する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
飲料容器の開口部を覆う覆板部と、当該覆板部の外周縁に設けられ、上記飲料容器の上記開口部を上記覆板部が覆うようにした際に当該飲料容器の上記開口部の縁部に係合可能な側周部と、を備える飲料容器用蓋であって、
上記覆板部の周縁側に設けられ、飲口を形成するための当該飲口の上記周縁側の形状である、切込線部又は当該覆板部の一般部より強度の低い低強度部からなる飲口形成用線部と、
上記飲口形成用線部で囲まれた飲口形成用部位の内部に形成され、周縁側に膨出した形状である、切込線部からなるロック用線部とを備え、
上記飲口形成用線部の一端及び他端は、上記ロック用線部の一端及び他端よりも周縁側に位置し、又は上記ロック用線部の一端及び他端と同一線上に位置すること
を特徴とする飲料容器用蓋。
【請求項2】
上記飲口形成用線部の一端及び他端を結ぶ飲口部支点線は、当該覆板部の一般部より強度の低い低強度部からなること
を特徴とする請求項1記載の飲料容器用蓋。
【請求項3】
上記ロック用線部の一端及び他端を結ぶロック部支点線は、当該覆板部の一般部より強度の低い低強度部からなり、又は予め折り曲げられてなること
を特徴とする請求項2記載の飲料容器用蓋。
【請求項4】
上記飲口部支点線を支点として上記覆板部の内側に押し込まれた上記飲口形成用部位を、上記ロック用線部により囲まれたロック部により支持可能とされていること
を特徴とする請求項2記載の飲料容器用蓋。
【請求項5】
上記ロック用線部における一端及び他端から周縁側先端までのロック部全長は、上記飲口形成用線部の一端及び他端を結ぶ飲口部支点線と上記ロック用線部の一端及び他端を結ぶロック部支点線との間隔よりも長いこと
を特徴とする請求項1記載の飲料容器用蓋。
【請求項6】
上記ロック部支点線の長さは、上記飲口部支点線の長さの1/4以上であること
を特徴とする請求項5記載の飲料容器用蓋。
【請求項7】
上記ロック部全長は、上記飲口形成用線部における一端及び他端から周縁側先端までの飲口部全長よりも短いこと
を特徴とする請求項5記載の飲料容器用蓋。
【請求項8】
上記飲口形成用線部における一端及び他端から上記覆板部の中央側に向けて離間した位置から、切込線部又は当該覆板部の一般部より強度の低い低強度部からなる延長線が当該中央側に向けて延長されてなること
を特徴とする請求項1記載の飲料容器用蓋。
【請求項9】
上記延長線の中央側の端部間を結ぶ線分を介して谷折り自在に構成されてなると共に、上記飲口形成用線部の一端及び他端を結ぶ飲口部支点線を介して山折り自在に構成されてなること
を特徴とする請求項8記載の飲料容器用蓋。
【請求項10】
容器本体と、請求項1~9のうち何れか1項に記載の飲料容器用蓋を備えること
を特徴とする飲料容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飲料容器の開口部を覆う飲料容器用及びこの飲料容器用蓋を備えた飲料容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ファーストフード店やコンビニエンスストアなどの多くの飲料の販売店では、プラスチック(合成樹脂)製や紙製のコップ等の飲料容器の開口部を、飲料容器用蓋で覆い、持ち運びの際に、その内部に収容されたジュースやコーヒーなどの飲料が開口部からこぼれ難いようにして販売している。
【0003】
飲料容器の内部に収容された飲料を飲むには、単純に飲料容器用蓋を外して開口部から飲んでもよいが、飲料容器用蓋を外した際に、その内側に付着した飲料が飛び散り、飲む人の衣服等を汚してしまうおそれがある。
【0004】
そのため、飲料容器用蓋に、ストローの差込部を設け、付属のストローを差し込むことにより、飲料容器内部の飲料を飲み易くすることが多くなされている(特許文献1等参照)。
【0005】
しかしながら、昨今、プラスチックゴミによる海洋汚染問題等を発端に、脱プラスチックの世界的な流れが大きくなり、その一環として、プラスチックからなるストローを無くそうという流れも大きくなっている。
【0006】
このような状況の下、市場では、ストローを無くし、飲料容器用蓋を外さなくても、飲料が飲み易い飲口を形成することができる飲料容器用蓋が求められている。近年において、飲料容器用蓋に設けられた切込み等を指で押し込むことで飲口を形成するプッシュアップタイプのものも既に提案されているが、飲料容器内の液面が蓋底に近い場合、押し込んだ指が液面に触れてしまう問題点もあった。
【0007】
従来、特許文献1の開示技術以外に、飲料容器用蓋に設けられた飲口を形成する部位を谷折りにすることで飲口を形成するプッシュダウンタイプも提案されている。しかしながら、このプッシュダウンタイプは、飲口を形成するために消費者に対して2ステップの開封動作を強いるものであることから、消費者が直感的に飲口を形成する方法を理解することが難しいという問題点があった。このため、開封動作自体を簡略化して1ステップで実現できるようにすることで、消費者が直感的に飲口を形成する方法を理解できる飲料容器用蓋が従来より望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで本発明は、上述した背景を鑑みて案出されたものであり、その目的とするところは、ストローを無くし、飲料容器用蓋を外さなくても、飲料が飲み易い飲口を形成する上で、飲料容器用蓋に設けられた切込み等を指で押し込んだ際に指が液面に触れてしまうのを防止し、開封動作自体を簡略化して1ステップで実現することで消費者が直感的に飲口を形成する方法を理解できる飲料容器用蓋及びこの飲料容器用蓋を備えた飲料容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1発明に係る飲料容器用蓋は、飲料容器の開口部を覆う覆板部と、当該覆板部の外周縁に設けられ、上記飲料容器の上記開口部を上記覆板部が覆うようにした際に当該飲料容器の上記開口部の縁部に係合可能な側周部と、を備える飲料容器用蓋であって、上記覆板部の周縁側に設けられ、飲口を形成するための当該飲口の上記周縁側の形状である、切込線部又は当該覆板部の一般部より強度の低い低強度部からなる飲口形成用線部と、上記飲口形成用線部で囲まれた飲口形成用部位の内部に形成され、周縁側に膨出した形状である、切込線部からなるロック用線部とを備え、上記飲口形成用線部の一端及び他端は、上記ロック用線部の一端及び他端よりも周縁側に位置し、又は上記ロック用線部の一端及び他端と同一線上に位置することを特徴とする。
【0011】
第2発明に係る飲料容器用蓋は、第1発明において、上記飲口形成用線部の一端及び他端を結ぶ飲口部支点線は、当該覆板部の一般部より強度の低い低強度部からなることを特徴とする。
【0012】
第3発明に係る飲料容器用蓋は、第2発明において、上記ロック用線部の一端及び他端を結ぶロック部支点線は、当該覆板部の一般部より強度の低い低強度部からなり、又は予め折り曲げられてなることを特徴とする。
【0013】
第4発明に係る飲料容器用蓋は、第2発明において、上記飲口部支点線を支点として上記覆板部の内側に押し込まれた上記飲口形成用部位を、上記ロック用線部により囲まれたロック部により支持可能とされていることを特徴とする。
【0014】
第5発明に係る飲料容器用蓋は、第1発明において、上記ロック用線部における一端及び他端から周縁側先端までのロック部全長は、上記飲口形成用線部の一端及び他端を結ぶ飲口部支点線と上記ロック用線部の一端及び他端を結ぶロック部支点線との間隔よりも長いことを特徴とする。
【0015】
第6発明に係る飲料容器用蓋は、第5発明において、上記ロック部支点線の長さは、上記飲口部支点線の長さの1/4以上であることを特徴とする。
【0016】
第7発明に係る飲料容器用蓋は、第5発明において、上記ロック部全長は、上記飲口形成用線部における一端及び他端から周縁側先端までの飲口部全長よりも短いことを特徴とする。
【0017】
第8発明に係る飲料容器用蓋は、第1発明において、上記飲口形成用線部における一端及び他端から上記覆板部の中央側に向けて離間した位置から、切込線部又は当該覆板部の一般部より強度の低い低強度部からなる延長線が当該中央側に向けて延長されてなることを特徴とする。
【0018】
第9発明に係る飲料容器用蓋は、第8発明において、上記延長線の中央側の端部間を結ぶ線分を介して谷折り自在に構成されてなると共に、上記飲口形成用線部の一端及び他端を結ぶ飲口部支点線を介して山折り自在に構成されてなることを特徴とする。
【0019】
第10発明に係る飲料容器は、容器本体と、第1発明~第9発明の何れかの飲料容器用蓋を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
上述した構成からなる本発明によれば、ストローを無くし、飲料容器用蓋を外さなくても、飲料が飲み易い飲口を形成する上で、飲料容器用蓋に設けられた切込み等を指で押し込んだ際に指が液面に触れてしまうのを防止することができる。また本発明によれば、開封動作自体を簡略化して1ステップで実現することで消費者が直感的に飲口を形成する方法を理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係る飲料容器の分解斜視図である。
【
図3】
図3は、
図2に示す覆板部の詳細な形状を示す拡大平面図である。
【
図4】
図4は、本発明を適用した飲料容器用蓋における覆板部の他の形態について説明するための図である。
【
図5】
図5は、本発明の実施形態に係る飲料容器用蓋の飲口形成方法を段階的に示す説明図である。
【
図6】
図6(a)は、この飲口形成用部位を下側に押し込んだ後の状態を示す斜視図であり、
図6(b)はその側断面図である。
【
図7】
図7は、飲口形成用部位をロック部により支持した状態で、飲料容器内の飲料を飲む場合について説明するための図である。
【
図8】
図8は、ロック部支点線の長さを、飲口部支点線の長さの1/4以上となるように設定する例を示す図である。
【
図9】
図9は、ロック用線部の形状の様々な形態を示す図である。
【
図10】
図10は、本発明を適用した飲料容器の他の実施の形態を示す図である。
【
図11】
図11は、
図10に示す形態における開封方法についてその前段のプロセスを説明するための図である。
【
図12】
図12は、
図10に示す形態における開封方法についてその後段のプロセスを説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を適用して例示した実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0023】
先ず、
図1を用いて、本発明の実施形態に係る飲料容器2について説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る飲料容器2の分解斜視図である。
【0024】
本発明の実施形態に係る飲料容器2は、
図1に示すように、紙製であり、その上部に縁部3aを有する開口部3を備え、その内部にジュースやコーヒーなどの飲料6を収容して販売するのに多く用いられる有底円筒状の紙コップである。
【0025】
なお、飲料容器2は、紙製に限定されず、プラスチック製などの他の材料で製造されていてもよい。また、飲料容器2をプラスチック製とする場合は、環境にやさしい生分解性プラスチックなどを用いてもよい。
【0026】
そして、飲料容器2は、飲料容器用蓋1で開口部3が塞がれることによって飲料6の販売目的に使用される。
【0027】
飲料容器用蓋1は、紙製であり、飲料容器2の開口部3を覆う円盤状の覆板部4と、覆板部4の外周縁に設けられ、飲料容器2の開口部3を覆板部4が覆うようにした際に飲料容器2の開口部3の縁部3aに係合可能な側周部5と、を備えている。
【0028】
なお、飲料容器用蓋1も、紙製に限定されず、プラスチック製などの他の材料で製造されていてもよい。また、飲料容器用蓋1をプラスチック製とする場合は、環境にやさしい生分解性プラスチックなどを用いてもよい。
【0029】
図2は、覆板部4の平面図であり、
図3(a)、(b)は、
図2の破線で囲まれた部分についてその詳細な形状を示す拡大平面図である。覆板部4には、その周縁側に、飲口を形成するための当該飲口の周縁側の形状である切込線部又は当該覆板部の一般部より強度の低い低強度部からなる飲口形成用線部11が設けられている。なお、この飲口形成用線部11を低強度部で構成する場合には、ミシン目を設けたり、ハーフカット等により厚みを小さくしたりする等して、覆板部4の一般部より強度の低い低強度部を設けて実施する。飲口形成用線部11は、その一端11aと他端11bから、周縁側に向けて凸状に膨れるような形状であればいかなるものも含まれる。
【0030】
飲口形成用線部11で囲まれた領域が飲口形成用部位20となる。この飲口形成用部位20の内部には、ロック用線部12が形成される。
【0031】
ロック用線部12は、平面視で周縁側に膨出した形状とされている。このロック用線部12は、切込線部からなる。ロック用線部12は、略コ字状の角部が丸みを帯びた形状とされていてもよいし、これに限らず飲口形成用線部11を構成する飲口の周縁側に向けて外側に膨出した形状で構成されていればいかなるものであってもよい。ここでいう膨出した形状とは、ロック用線部12の一端12aと他端12bから、飲口形成用線部11に向けて凸状に膨れるような形状であればいかなるものも含まれる。このロック用線部12により囲まれる領域をロック部30という。
【0032】
なお、この飲口形成用線部11の一端11a及び他端11bは、
図3(a)に示すように、ロック用線部12の一端12a及び他端12bよりも周縁側に位置していることが前提となる。即ち、飲口形成用線部11により囲まれる飲口形成用部位20は、ロック用線部12により囲まれるロック部30よりも周縁側に位置している。
【0033】
但し、この
図3(a)に示す形態に限定されるものではなく、
図3(b)に示すように、飲口形成用線部11の一端11a及び他端11bが、ロック用線部12の一端12a及び他端12bと同一線上に位置するように設計されるものであってもよい。即ち、飲口形成用線部11の一端11a及び他端11bは、ロック用線部12の一端12a及び他端12bと、周縁側に向けて互いに略同一の配置となる。
【0034】
なお本発明を適用した飲料容器用蓋1は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、
図4(a)に示すように、飲口形成用線部11の一端11a及び他端11bを結ぶ飲口部支点線41を別途設けるようにしてもよい。この飲口部支点線41は、覆板部4の一般部より強度の低い低強度部で構成してもよい。このような低強度部で構成する場合には、ミシン目を設けたり、ハーフカット等により厚みを小さくしたりする等の処理を施す。この飲口部支点線41は、一端11aからロック用線部12に至るまで延長され、また他端11bからロック用線部12に至るまで延長される。このような低強度部からなる飲口部支点線41を設けることで、飲口部支点線41を支点として飲口形成用部位20を回動自在に構成することができる。但し、この飲口部支点線41の構成は必須ではなく、省略するようにしてもよい。
【0035】
また、本発明によれば、
図4(b)に示すように、ロック用線部12の一端12a及び他端12bを結ぶロック部支点線42を別途設けるようにしてもよい。このロック部支点線42は、覆板部4の一般部より強度の低い低強度部で構成してもよい。このような低強度部で構成する場合には、ミシン目を設けたり、ハーフカット等により厚みを小さくしたりする等の処理を施す。このような低強度部からなるロック部支点線42を設けることで、ロック部支点線42を支点としてロック部30を回動自在に構成することができる。但し、このロック部支点線42の構成は必須ではなく、省略するようにしてもよい。
【0036】
このとき、
図4(b)に示すように、ロック用線部12における一端12a及び他端12bから周縁側先端までのロック部全長c1は、飲口部支点線41とロック部支点線42との間隔c2よりも長くなるように設計されている必要がある。
【0037】
同様に
図4(b)に示すように、ロック部全長c1は、飲口形成用線部11における一端11a及び他端11bから周縁側先端までの飲口部全長c3よりも短くなるように設計される必要がある。
【0038】
次に本発明の実施形態に係る飲料容器用蓋の飲口形成方法について説明する。
図5は、本発明の実施形態に係る飲料容器用蓋の飲口形成方法を段階的に示す説明図である。
【0039】
図5(a)に示すように、指先Fで飲口形成用部位20及びロック部30を押圧する。飲口形成用部位20は、上述したように、切込線部又は当該覆板部の一般部より強度の低い低強度部からなる飲口形成用線部11により囲まれている。このような飲口形成用部位20に対して指先Fによる押圧力が加わると、
図5(b)に示すように、飲口部支点線41を支点として飲口形成用部位20が下側に向けて押し込まれる。同様にロック部30にも指先による押圧力が加わると、ロック部支点線42を支点として当該ロック部30が下側に向けて押し込まれる。即ち、指先Fによる1回の押圧動作で、この飲口形成用部位20及びロック部30の双方をまとめて折り畳む。
【0040】
このとき、飲口部支点線41を低強度部で構成することで、この飲口形成用部位20を下側へ向けて容易に回動させることができる。同様に、ロック部支点線42を低強度部で構成することで、このロック部30を下側へ向けて容易に回動させることができる。
【0041】
なお、低強度部からなる飲口部支点線41やロック部支点線42を形成しない場合であっても、同様に飲口形成用部位20やロック部30に指先Fによる押圧力が付与されることで、飲口形成用線部11の一端11a及び他端11bを支点として、飲口形成用部位20を回動させることができ、ロック用線部12における一端12a及び他端12bを支点として、ロック部30を回動させることができる。
【0042】
図6(a)は、この飲口形成用部位20を下側に押し込んだ後の状態を示す斜視図であり、
図6(b)はその側断面図を示している。
【0043】
指先Fによる押圧力が開放された飲口形成用部位20は、飲口部支点線41を支点として元に戻ろうとするように作用することとなるが、
図6に示すようにロック部30の周縁側先端により係止される。その結果、飲口形成用部位20におけるロック用線部12の境界がロック部30の周縁側の先端により外側から支持可能となる。このような形態に基づいてロック部30により飲口形成用部位20をロックするためには、飲口部支点線41が、ロック部支点線42よりも周縁側か、又は同一線上となっていることが前提となる。望ましくは、飲口部支点線41が、ロック部支点線42よりも周縁側に位置することにより、ロック部30が飲口形成用部位20に対してより強固に係止させることができる。
【0044】
これに加えて、ロック部30により飲口形成用部位20をロックするためには、ロック部全長c1が、飲口部支点線41とロック部支点線42との間隔c2よりも長くなるように設計されている必要がある。仮にロック部全長c1が間隔c2以下の場合、このロック部30により飲口形成用部位20を係止させることが形態上不可能となるためである。
【0045】
更に、ロック部30により飲口形成用部位20をロックするためには、ロック部全長c1が飲口部全長c3よりも短くなるように設計される必要がある。仮にロック部全長c1が飲口部全長c3以上の場合、このロック部30により飲口形成用部位20を係止させることが形態上不可能となるためである。
【0046】
このように、飲口形成用部位20をロック部30により支持可能な飲料容器用蓋1は、以下に説明する効果がある。
【0047】
飲口形成用部位20をロック部30により支持した状態で、飲料容器2内の飲料6を飲む場合、
図7(a)に示すように、形成した飲口8に向けて飲料容器2を傾ける。飲料容器2を傾けると、中にある飲料6は飲口8に向けて流れようとする。
図7(a)中に示す矢印は、この飲口8に向けて流れようとする飲料6の流れる方向を示している。
【0048】
飲料容器2内の飲料6が飲口8に向けて流れる方向の一部は、下側に押し込まれた飲口形成用部位20により遮られている。このため、この飲口形成用部位20に対しては飲料6により上側へ押し戻そうとする力が作用する。飲口形成用部位20はロック部30より支持されていることから、この飲料6により上側へ押し戻そうとする力に対して対抗することができる。その結果、飲料6は、飲口形成用部位20を回り込んで対流しながら飲口8に向けて流れることとなる。
【0049】
特にこの飲口形成用部位20は、
図7(b)に示すように、その根元部分、即ちロック部30の近傍においては、てこの原理の下で強い力を負荷しない限り、係止されたロック部30から外れることは無い。特に、飲料容器2内における飲料6の残量が減った場合には、この飲口形成用部位20の根元部分には飲料6が接しなくなる。このため、飲料容器2を傾ける結果、飲料6から受ける力により、飲口形成用部位20がロック部30から外れてしまい、飲口形成用部位20が上側に押し戻されるのを防止することができる。
【0050】
このように、本発明を適用した飲料容器2は、飲料が飲み易い飲口を形成する上で、飲口形成用部位20及びロック部30を指先Fで押圧して折り畳むという、1ステップの動作のみで、飲料が飲み易い飲口を形成することができる。即ち、本発明によれば、開封動作自体を簡略化して1ステップで実現することで消費者が直感的に飲口を形成する方法を理解できるため、市場において普及しやすい特質を持つ。
【0051】
しかも、飲口形成用部位20をロック部30により係止させることで強固にロックすることができることから、飲料6を飲む際に飲料容器2を傾けた場合であっても、飲口形成用部位20がロック部30から外れてしまい、飲口形成用部位20が上側に押し戻されるのを防止することができる。このため、飲料6を喫飲する際に飲料容器2を傾けた際に、飲口形成用部位20が戻ることが無くなり、消費者に対して煩わしさを感じさせることを防止することができる。
【0052】
また、本発明を適用した飲料容器2では、この飲口形成用部位20及びロック部30を指先Fで押圧して押し込む際に、指先Fが液面に触れてしまうのを防止することもできる。
【0053】
また、本発明を適用した飲料容器2では、ストローを無くし、飲料容器用蓋1を飲料容器2から外さなくても、飲料6が飲み易い飲口8を形成することができる。その上、本発明では、飲料容器用蓋1と、飲料容器2と、が、ともに紙製で構成した場合、使用する接着剤などを除き、略完全に脱プラスチックとすることができる。
【0054】
なお本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではない。
図8に示すように、ロック部支点線42の長さ(c5)を、飲口部支点線41の長さ(c4a+c4b)の1/4以上となるように設定されていてもよい。ロック部支点線42の長さc5を長くすることでロック部30の剛性が高くなり、より強固に飲口形成用部位20をロックすることができる。特にロック部支点線42の長さ(c5)を、飲口部支点線41の長さ(c4a+c4b)の1/4以上とすることで、飲口部支点線41よりも相対的にこのロック部支点線42の剛性を高めることが可能となり、より強固なロックを実現できる。
【0055】
図9(a)~(g)は、ロック用線部12の形状の様々な形態を示している。
図9(a)は、ロック用線部12が周縁側に向かうにつれて徐々に拡径する形状とされている。拡径されたロック部30の形状にすることで、飲口形成用部位20の係止容易性を高めることができる。
図9(b)は、ロック用線部12が周縁側に向かうにつれて徐々に縮径する形状とされている。逆にロック部30におけるロック部支点線42の長さを長くすることで、その剛性を高めることができる。
図9(c)は、ロック用線部12が周縁側に向かうにつれて縮径、拡径ともにせずに、同一径で構成する例である。
図9(a)、(b)に示す形態の各利点をバランスよく取り入れたものである。
【0056】
図9(d)は、ロック用線部12を円弧上となるように形成した例であるが、かかる形態も本発明に含まれる。
図9(e)、(f)は、ロック用線部12の形状を様々なバリエーションで構成した例であるが、これに加えて他のいかなるバリエーションの形状も本発明に含まれる。またロック用線部12の形状は、規則的なもののみならず、不規則な形状とされているものも含まれる。
【0057】
図9(g)は、不連続なロック用線部12を形成することで、ロック部30を複数形成した例である。かかる場合も同様に上述した所期の効果を得ることができることは勿論である。
【0058】
図10は、本発明を適用した飲料容器2の他の実施の形態を示している。
図10に示す他の実施形態では、飲口形成用線部11における一端11a及び他端11bから覆板部4の中央側に向けて離間した位置から延長線45が当該中央側に向けて延長させている。この延長線45は、切込線部又は覆板部4の一般部より強度の低い低強度部により構成されてなる。この延長線45を低強度部で構成する場合には、ミシン目を設けたり、ハーフカット等により厚みを小さくしたりする等して、覆板部4の一般部より強度の低い低強度部を設けて実施する。この延長線により囲まれる領域を、以下延長部46という。また、延長線45の飲口部支点線41付近に継ぎ部51を設けている。
【0059】
飲口形成用線部11は、周縁側近傍において拡径された拡径部31を備える形状とされていることが望ましい。
【0060】
このような形態からなる飲料容器2では、以下に説明する方法により飲口8を形成することができる。
【0061】
図11(a)に示すように先ず飲口形成用部位20の周縁側先端を指先Fにより押圧する。これにより、
図11(b)に示すように飲口形成用部位20は、飲口部支点線41を支点として下側に向けて押し込まれる。なお、この
図11に示す動作において指先Fにより押圧する対象は、あくまで飲口形成用部位20のみであり、ロック部30は、押圧しない。ロック部30は、飲口形成用部位20に対して、切込線部により構成されたロック用線部12を介して互いに離間している。このため、飲口形成用部位20が飲口部支点線41付近の継ぎ部51を支点として下側に向けて押し込まれても、ロック部30はこれに追従することはない。その結果、飲口形成用部位20が下側に向けて押し込まれた際に、
図11(b)に示すようにロック部30が周縁側に向けて突出された状態となる。
【0062】
次に
図12(a)に示すように、この周縁側に突出されたロック部30を指先Fにより引っ掛けてこれを中央側へと引き寄せる。特にロック部30が周縁側に突出されてなることで指先Fにより引っ掛けやすくなっている。このロック部30を指先Fに中央側へと引き寄せる過程で既に山折りとされている飲口部支点線41が上方に引き寄せられる。この飲口部支点線41の上方への引き寄せに追従して、延長部46が持ち上げられる。延長部46は、その周縁が延長線45で構成されており、延長線45は、切込線部又は低強度部で構成されていることから、延長部46は、覆板部4から容易に離間させて持ち上げることができる。この動作の過程において、延長線45の中央側の端部45a、45b間を結ぶ線分を介して谷折りになる。この谷折り容易にするために、この延長線45の中央側の端部45a、45b間を結ぶ線分も低強度部で構成するようにしてもよい。
【0063】
このように飲口部支点線41が上方に持ち上げられ、これに追従して延長部46も持ち上げられることにより、飲口部支点線41の山折りの角度がより鋭角化される。このとき、 飲口形成用線部11は、拡径部31を予め形成させておくことで、
図12(a)に示すようにこの拡径部31自体が飲口8に対して係止され、案内可能に構成するとともに、この飲口部支点線41の上方へ持ち上げ過ぎないように抑制力を付与することができる。
【0064】
このように拡径部31を飲口8に対して案内させながら、
図12(b)に示すように指先Fによりこの飲口部支点線41を中央側に引き寄せることにより、飲口8を大きく広げることができる。拡径部31自体が飲口8に対して係止されていることで、飲料6を喫飲する際に飲料容器2を傾けた際に、飲口形成用部位20が戻ることが無くなり、消費者に対して煩わしさを感じさせることを防止することができる。しかも、飲口8を形成する上で、飲口形成用部位20を指先Fで押圧して引き寄せるという、1ステップの動作のみで、飲料が飲み易い飲口を形成することができる。即ち、本実施形態においても同様に、開封動作自体を簡略化して1ステップで実現することで消費者が直感的に飲口を形成する方法を理解できる。
【符号の説明】
【0065】
1 飲料容器用蓋
2 飲料容器
3 開口部
4 覆板部
5 側周部
6 飲料
8 飲口
11 飲口形成用線部
12 ロック用線部
20 飲口形成用部位
30 ロック部
31 拡径部
41 飲口部支点線
42 ロック部支点線
45 延長線
46 延長部
51 継ぎ部