(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024000590
(43)【公開日】2024-01-09
(54)【発明の名称】タイヤモールド及びタイヤ
(51)【国際特許分類】
B29C 33/02 20060101AFI20231226BHJP
B60C 13/00 20060101ALI20231226BHJP
【FI】
B29C33/02
B60C13/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022099333
(22)【出願日】2022-06-21
(71)【出願人】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】安永 智一
【テーマコード(参考)】
3D131
4F202
【Fターム(参考)】
3D131BC31
3D131BC51
3D131GA03
3D131HA01
3D131LA28
4F202AA45
4F202AB03
4F202AG13
4F202AH20
4F202AR12
4F202CA21
4F202CB01
4F202CU01
4F202CU07
(57)【要約】
【課題】ベントホールにスピューが残った場合にもベアの発生を抑制できるタイヤモールド及びタイヤを提供する。
【解決手段】タイヤモールドは、タイヤのサイドウォールを成型するサイド型部を有するタイヤモールドであって、サイド型部は、タイヤ周方向に延びる周方向溝と、タイヤ径方向に延びて周方向溝と交差する径方向溝と、周方向溝と径方向溝の交差部に設けられたベントホールと、ベントホールを挟んでタイヤ周方向第1側に配置される周方向溝の第1部分と径方向溝に接続される溝状の第1バイパス、ベントホールを挟んでタイヤ周方向第2側に配置される周方向溝の第2部分と径方向溝に接続される溝状の第2バイパス、及び径方向溝と交差することなく延びて第1部分と第2部分に接続される溝状の第3バイパスのうち少なくとも一つのバイパスと、を備える。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤのサイドウォールを成型するサイド型部を有するタイヤモールドであって、
前記サイド型部は、タイヤ周方向に延びる周方向溝と、
タイヤ径方向に延びて前記周方向溝と交差する径方向溝と、
前記周方向溝と前記径方向溝の交差部に設けられたベントホールと、
前記ベントホールを挟んでタイヤ周方向第1側に配置される前記周方向溝の第1部分と前記径方向溝に接続される溝状の第1バイパス、前記ベントホールを挟んでタイヤ周方向第2側に配置される前記周方向溝の第2部分と前記径方向溝に接続される溝状の第2バイパス、及び前記径方向溝と交差することなく延びて前記第1部分と前記第2部分に接続される溝状の第3バイパスのうち少なくとも一つのバイパスと、を備える、タイヤモールド。
【請求項2】
前記第1バイパス及び前記第2バイパスは直線状に延びる、請求項1に記載のタイヤモールド。
【請求項3】
前記第1バイパスと前記第2バイパスは、前記径方向溝上で連結される、請求項1に記載のタイヤモールド。
【請求項4】
前記第1バイパス、前記第2バイパス、及び前記第3バイパスのうち少なくとも一つのバイパスと、前記周方向溝又は前記径方向溝との接続部は、前記ベントホールの中心から15mm以内に配置される、請求項1に記載のタイヤモールド。
【請求項5】
請求項1~4の何れか1項に記載のタイヤモールドにより加硫成型されたタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、タイヤモールド及びタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤの加硫成型では、タイヤモールドのタイヤ成型面に未加硫タイヤの踏面やサイド面が押し当てられ、その未加硫タイヤに加熱と加圧が施される。このとき、タイヤ成型面と未加硫タイヤとの間に介在するエアが適切に排出されずにエア溜まりを生じると、それに起因してタイヤ外表面にベアと呼ばれる窪みが発生する。
【0003】
ベアの発生を抑制するために、未加硫タイヤのサイド面と接するサイド型部にタイヤ周方向に延びる周方向溝とタイヤ径方向に延びる径方向溝を形成し、それらの溝をエアの流通経路に使用して排気効率を高めることが知られている(下記特許文献1を参照)。周方向溝と径方向溝が交差する交差部には、ベントホールが設けられており、周方向溝と径方向溝を流通したエアがベントホールからタイヤモールドの外へ排出される。
【0004】
ところで、加硫成型後のタイヤ外表面には、ベントホールに応じてゴム突起(以下、スピューと呼ぶ)が形成されるが、加硫成型後にタイヤをタイヤモールドから取り出す際、スピューが千切れてベントホールに残ることがある。このとき、ベントホールに残ったスピューが周方向溝と径方向溝との間の連通を遮断して、周方向溝と径方向溝の交差部付近にエアが溜まってベアが発生することがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本開示の目的は、ベントホールにスピューが残った場合にもベアの発生を抑制できるタイヤモールド及びタイヤを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示のタイヤモールドは、タイヤのサイドウォールを成型するサイド型部を有するタイヤモールドであって、
前記サイド型部は、タイヤ周方向に延びる周方向溝と、
タイヤ径方向に延びて前記周方向溝と交差する径方向溝と、
前記周方向溝と前記径方向溝の交差部に設けられたベントホールと、
前記ベントホールを挟んでタイヤ周方向第1側に配置される前記周方向溝の第1部分と前記径方向溝に接続される溝状の第1バイパス、前記ベントホールを挟んでタイヤ周方向第2側に配置される前記周方向溝の第2部分と前記径方向溝に接続される溝状の第2バイパス、及び前記径方向溝と交差することなく延びて前記第1部分と前記第2部分に接続される溝状の第3バイパスのうち少なくとも一つのバイパスと、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】タイヤ子午線断面に沿ったタイヤモールドの断面図
【発明を実施するための形態】
【0009】
<第1実施形態>
以下、タイヤモールドにおける第1実施形態について、
図1~
図10を参照しながら説明する。なお、各図(
図11~
図12も同様)において、図面の寸法比と実際の寸法比とは、必ずしも一致しておらず、また、各図面の間での寸法比も、必ずしも一致していない。
【0010】
各図において、タイヤ軸方向D1とは、タイヤTの回転中心であるタイヤ回転軸Oと平行な方向であり、タイヤ径方向D2とは、タイヤTの直径方向であり、タイヤ周方向D3とは、タイヤ回転軸O周りの方向である。また、タイヤ赤道面S1とは、タイヤ回転軸Oに直交する面であって、タイヤTのタイヤ軸方向D1の中心に位置する面のことであり、タイヤ子午面とは、タイヤ回転軸Oを含む面であり、タイヤ赤道面S1と直交する面である。
【0011】
なお、タイヤ軸方向D1において、内側とは、タイヤ赤道面S1に近い側のことであり、外側とは、タイヤ赤道面S1から遠い側のことである。また、タイヤ径方向D2において、内側とは、タイヤ回転軸Oに近い側のことであり、外側とは、タイヤ回転軸Oから遠い側のことである。
【0012】
図1は、タイヤ子午面に沿ったタイヤモールドTMの断面を示す。このタイヤモールドTMは型閉め状態にある。未加硫タイヤは、タイヤ軸方向D1を上下に向けてセットされる。
図1において、右方向はタイヤ径方向外側、左方向はタイヤ径方向内側である。
【0013】
タイヤモールドTMは、タイヤTのトレッドを成型するトレッド型部M1と、タイヤTの一対のサイドウォールを成型するサイド型部M2,M3と、タイヤTの一対のビードに接するビードリングM4,M5とを備える。図示を省略しているが、トレッド型部M1の内表面には、タイヤTのトレッドにトレッドパターンを形成するための凹凸形状が設けられている。
【0014】
加硫成型時には、トレッド型部M1の内表面に未加硫タイヤの踏面が押し当てられ、サイド型部M2,M3の内表面に未加硫タイヤのサイド面が押し当てられる。サイド型部M2,M3の内表面には、タイヤ周方向D3に延びる周方向溝1,2が設けられている。
【0015】
図2は、サイド型部M2の正面図である。
図3は、
図2のサイド型部M2のIII-III線断面図である。
図4は、
図3のIV領域拡大図であり、
図5は、
図3のV領域拡大図である。
図6は、
図2のVI領域拡大図である。なお、サイド型部M3の内表面の構成は、サイド型部M2の内表面の構成と同じとしてもよく、異なるようにしてもよいが、本実施形態では同じとしているため、サイド型部M3についての説明を省略する。
【0016】
サイド型部M2は、
図2に示すように、タイヤ周方向D3に延びる周方向溝1,2と、タイヤ径方向D2に延びる径方向溝3と、周方向溝1,2と径方向溝3の交差部に設けられたベントホール4とを備えている。
【0017】
周方向溝1,2は、タイヤ径方向D2に間隔をあけて配置され、環状の帯状領域を形成している。この環状領域には、タイヤサイズ、製造年週等が表示される場合もある。帯状領域の幅寸法、すなわち周方向溝1,2の間隔は、10mm以上40mm以下が好ましく、14mm以上30mm以下がより好ましい。
【0018】
周方向溝1,2は、タイヤ最大幅位置(図示していない)よりもタイヤ径方向内側に配置されるのが好ましい。これにより、加硫成型時のベアを効果的に抑制できるとともに、タイヤTの耐久性を向上できる。ただし、周方向溝1,2は、タイヤ径方向D2において何れの位置に配置されてもよく、例えば、一対の周方向溝1,2は、タイヤ最大幅位置を挟むように配置されてもよい。
【0019】
本実施形態では、2本の周方向溝1,2がタイヤ回転軸Oを中心とする同心円状に設けられているが、これに限定されず、1本のみの周方向溝が設けられてもよく、3本以上の周方向溝が設けられてもよい。また、周方向溝1,2は、タイヤ周方向D3の全周に亘って連続して形成されているが、これに限定されず、タイヤ回転軸Oを中心とする円の一部からなる円弧状に形成されてもよい。
【0020】
径方向溝3は、タイヤ径方向D2に沿って放射状に延びている。ただし、径方向溝3は、タイヤ径方向D2に対して傾斜して延びていてもよい。
【0021】
径方向溝3は、例えば6~20本設けられ、好ましくは10本前後設けられる。本実施形態では、20本の径方向溝3がタイヤ周方向D3に等間隔で設けられているが、これに限定されない。径方向溝3同士の間隔は、一定である必要はなく、径方向溝3は、例えばタイヤサイズ、製造年週等の表示を避けるように設けられてもよい。
【0022】
径方向溝3は、周方向溝1,2と交差している。ここで、径方向溝3が周方向溝1,2と交差するとは、径方向溝3が周方向溝1,2で終端する形態のみならず、径方向溝3が周方向溝1,2を突き抜けて延びる形態も含む。
【0023】
ベントホール4は、
図6に示すように、周方向溝1,2と径方向溝3の交差部30に設けられている。ベントホール4は、タイヤサイズにもよるが、例えば10~24個設けられる。ベントホール4は、交差部30以外の周方向溝1,2上にも設けられてもよく、すなわち、ベントホール4は、径方向溝3よりも多く設けられてもよい。
【0024】
ベントホール4は、サイド型部M2の内表面S2からタイヤ軸方向D1の外側へ向かって延びる貫通孔である。ベントホール4の内径4d(
図5を参照)は、例えば0.6~2.0mmに設定される。
【0025】
図9は、加硫成型後のサイド型部M2の様子を示す断面図である。タイヤモールドTM内で加硫成型を行うと、ベントホール4からエアが抜け、その後、ベントホール4内に未加硫タイヤのゴムが流れ込む。これにより、加硫成型後にタイヤモールドTMから取り出されたタイヤTのサイドウォールには、突起状のスピュー9が形成される。しかしながら、タイヤTをタイヤモールドTMから取り出す際、形成されたスピュー9が千切れ、ベントホール4に残る場合がある。そして、
図9に示すようにスピュー9がサイド型部M2の内表面S2に達する状態で残った場合、スピュー9によって周方向溝1と径方向溝3の連通が遮断されることとなる。
図9に示す状態で、次の未加硫タイヤの加硫成型を行うと、周方向溝1と径方向溝3の交差部30の付近ではエアが抜けにくく、ベアが発生しやすくなる。この対策として、径方向溝3やベントホール4を増やすことも考えられるが、タイヤ外観が悪化したり、廃棄するゴムが増加したりする。また、径方向溝3を増やすと、タイヤサイズ、製造年週等の表示のためのスペースを確保しにくくなる。本発明者は、交差部30の周辺に後述するバイパス(第1バイパス~第3バイパス)を設けることで、径方向溝3やベントホール4を増やすことなく、ベントホール4にスピュー9が残った場合にもベアの発生を抑制できることを見出した。
【0026】
図6に示すように、溝状の第1バイパス51は、ベントホール4を挟んでタイヤ周方向第1側D31に配置される周方向溝1,2の第1部分11,21と径方向溝3に接続されている。これにより、周方向溝1,2と径方向溝3の交差部30に設けられたベントホール4にスピュー9が残って周方向溝1,2と径方向溝3の連通が遮断された場合にも、第1バイパス51によって周方向溝1,2と径方向溝3の連通を確保することができる。その結果、ベントホール4にスピュー9が残った場合にも、交差部30の付近のエアが抜けやすくなり、ベアの発生を抑制することができる。
【0027】
また、溝状の第2バイパス52は、ベントホール4を挟んでタイヤ周方向第2側D32に配置される周方向溝1,2の第2部分12,22と径方向溝3に接続されている。第1バイパス51と同様に、周方向溝1,2と径方向溝3の交差部30に設けられたベントホール4にスピュー9が残った場合にも、第2バイパス52によって周方向溝1,2と径方向溝3の連通を確保することができるため、ベアの発生を抑制することができる。
【0028】
第1バイパス51及び第2バイパス52は円弧状に延びている。ただし、第1バイパス51及び第2バイパス52は、バイパス経路を短くする観点から、
図10に示すように直線状に延びることが好ましい。
【0029】
第1バイパス51と第2バイパス52は、径方向溝3上で連結されることが好ましい。すなわち、第1バイパス51と第2バイパス52は、同じ位置で径方向溝3に接続されることが好ましい。これにより、第1バイパス51と第2バイパス52が連通するため、エアがさらに抜けやすくなる。
【0030】
第1バイパス51と周方向溝1,2との接続部51a、第1バイパス51と径方向溝3との接続部51b、第2バイパス52と周方向溝1,2との接続部52a、及び第2バイパス52と径方向溝3との接続部52bは、ベントホール4の中心から15mm以内に配置されることが好ましい。接続部51a,51b,52a,52bをベントホール4の中心から15mm以内に配置することで、交差部30の付近のエアを効果的に抜くことができる。
【0031】
図7は、周方向溝1の断面形状の一例を示す図である。
図8は、径方向溝3の断面形状の一例を示す図である。
【0032】
周方向溝1の断面形状は、深さ方向に先細りとなる三角形であり、その先端が小さい円弧で形成されている。サイド型部M2の内表面S2を基準とした周方向溝1の深さ1dは、例えば0.5~1.2mmに設定される。周方向溝2の断面形状及び深さは、周方向溝1と同じとしてもよい。なお、内表面S2は、タイヤTのプロファイル面を成型する面である。
【0033】
径方向溝3の断面形状は、矩形状であり、その先端が小さい円弧で形成されている。サイド型部M2の内表面S2を基準とした径方向溝3の深さ3dは、例えば0.5~1.2mmに設定される。すなわち、径方向溝3の深さ3dは、周方向溝1の深さ1dと略同じである。
【0034】
なお、周方向溝1,2、径方向溝3の断面形状は、特に限定されるものではなく、種々の形状を採用できる。これらの断面形状が深さ方向に先細りとなる形状、例えば三角形や台形、半円形であると、加硫成型後のタイヤTをタイヤモールドTMから取り出す際に抵抗となりにくい。
【0035】
また、第1バイパス51及び第2バイパス52の断面形状は、特に限定されるものではなく、周方向溝1,2と同じであってもよく、径方向溝3と同じであってもよい。
【0036】
サイド型部M2の内表面S2を基準とした第1バイパス51及び第2バイパス52の深さは、周方向溝1,2、径方向溝3と異なっていてもよいが、同じであるのが好ましい。すなわち、サイド型部M2の内表面S2を基準とした第1バイパス51及び第2バイパス52の深さは、例えば0.5~1.2mmに設定される。ただし、第1バイパス51及び第2バイパス52の幅は、第1バイパス51及び第2バイパス52によって形成される突条を目立ち難くする観点から、周方向溝1,2、径方向溝3の幅よりも狭いことが好ましい。
【0037】
なお、周方向溝1,2の間の帯状領域には、不図示の細溝が形成される場合もある。この細溝の深さは、例えば0.3~0.6mmであり、周方向溝1,2、径方向溝3、バイパス51,52の深さよりも小さいことが好ましい。
【0038】
上述したタイヤモールドTMは、タイヤTのサイドウォールを成型するサイド型部M2,M3に、上記の如き周方向溝1,2、径方向溝3、ベントホール4、バイパス(第1バイパス51、第2バイパス52)を設けること以外は、通常のタイヤモールドと同様に構成され、従来公知の材料、形状、構造などは何れも本開示に採用できる。
【0039】
<第2実施形態>
次に、タイヤモールドTMにおける第2実施形態について、
図11を参照しながら説明する。なお、
図11において、
図1~
図10の符号と同一の符号を付した部分は、第1実施形態と略同様の構成又は略同様の機能(作用)を有する要素を表し、その説明は、繰り返さない。
【0040】
本実施形態に係るサイド型部M2,M3は、径方向溝3と交差することなく延びて第1部分11と第2部分12に接続される溝状の第3バイパス53を備えている。これにより、ベントホール4にスピュー9が残った場合にも、第3バイパス53によって第1部分11と第2部分12の連通を確保することができるため、ベアの発生を抑制することができる。なお、径方向溝3に関しては、第1バイパス51と第2バイパス52によって周方向溝2との連通が確保されている。
【0041】
第3バイパス53と周方向溝1との接続部53a,53bは、ベントホール4の中心から15mm以内に配置されることが好ましい。接続部53a,53bをベントホール4の中心から15mm以内に配置することで、交差部30の付近のエアを効果的に抜くことができる。
【0042】
[1]
以上のように、第1又は第2実施形態に係るタイヤモールドTMは、タイヤTのサイドウォールを成型するサイド型部M2,M3を有するタイヤモールドTMであって、サイド型部M2,M3は、タイヤ周方向D3に延びる周方向溝1,2と、タイヤ径方向D2に延びて周方向溝1,2と交差する径方向溝3と、周方向溝1,2と径方向溝3の交差部30に設けられたベントホール4と、ベントホール4を挟んでタイヤ周方向第1側D31に配置される周方向溝1,2の第1部分11,21と径方向溝3に接続される溝状の第1バイパス51、ベントホール4を挟んでタイヤ周方向第2側D32に配置される周方向溝1,2の第2部分12.22と径方向溝3に接続される溝状の第2バイパス52、及び径方向溝3と交差することなく延びて第1部分11と第2部分12に接続される溝状の第3バイパス53のうち少なくとも一つのバイパスと、を備える。
【0043】
この構成によれば、ベントホール4にスピュー9が残った場合にもベアの発生を抑制できる。
【0044】
[2]
上記[1]のタイヤモールドTMにおいて、第1バイパス51及び第2バイパス52は直線状に延びることが好ましい。
【0045】
この構成によれば、バイパス経路を短くして、排気効率を高めることができる。
【0046】
[3]
上記[1]又は[2]のタイヤモールドTMにおいて、第1バイパス51と第2バイパス52は、径方向溝3上で連結されることが好ましい。
【0047】
この構成によれば、第1バイパス51と第2バイパス52が連通するため、エアがさらに抜けやすくなる。
【0048】
[4]
上記[1]~[3]何れか一つのタイヤモールドTMにおいて、第1バイパス51、第2バイパス52、及び第3バイパス53のうち少なくとも一つのバイパスと、周方向溝1,2又は径方向溝3との接続部51a,51b,52a,52b,53a,53bは、ベントホール4の中心から15mm以内に配置されることが好ましい。
【0049】
この構成によれば、交差部30の付近のエアを効果的に抜くことができる。
【0050】
[5]
また、タイヤTは、上記[1]~[4]何れか一つのタイヤモールドTMにより加硫成型されたものである。
【0051】
以上、本開示の実施形態について図面に基づいて説明したが、具体的な構成は、これらの実施形態に限定されるものでないと考えられるべきである。本開示の範囲は、上記した実施形態の説明だけではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0052】
上記の各実施形態で採用している構造を他の任意の実施形態に採用することは可能である。各部の具体的な構成は、上述した実施形態のみに限定されるものではなく、本開示の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【0053】
なお、タイヤモールドTMは、上記した実施形態の構成に限定されるものではなく、また、上記した作用効果に限定されるものではない。また、タイヤモールドTMは、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、上記した複数の実施形態の各構成や各方法等を任意に採用して組み合わせてもよく(1つの実施形態に係る各構成や各方法等を他の実施形態に係る構成や方法等に適用してもよく)、さらに、下記する各種の変更例に係る構成や方法等を任意に一つ又は複数選択して、上記した実施形態に係る構成や方法等に採用してもよいことは勿論である。
【0054】
上記実施形態に係るタイヤモールドTMにおいては、第1バイパス51と第2バイパス52は、径方向溝3上で連結される、という構成である。しかしながら、タイヤモールドTMは、斯かる構成に限られない。例えば、周方向溝1と径方向溝3に接続されるバイパスを第1バイパス51又は第2バイパス52の一方のみとし、周方向溝2と径方向溝3に接続されるバイパスを第1バイパス51又は第2バイパス52の一方のみとしてもよい。
【0055】
また、
図12に示す実施形態では、1本の径方向溝3に対して、タイヤ径方向D2の外側に第1バイパス51を設け、タイヤ径方向D2の内側に第2バイパス52を設けている。この構成によれば、加硫成型後のタイヤTにおいて、第1バイパス51と第2バイパス52によって形成される突条がタイヤ径方向D2及びタイヤ周方向D3の異なる位置にそれぞれ配置されるため、タイヤ径方向D2及びタイヤ周方向D3において剛性が部分的に高くなり過ぎるのを防ぐことができ、タイヤ全体の剛性バランスが良好となる。
【符号の説明】
【0056】
1…周方向溝、1d…周方向溝の深さ、2…周方向溝、3…径方向溝、3d…径方向溝の深さ、4…ベントホール、4d…ベントホールの内径、9…スピュー、11…周方向溝の第1部分、12…周方向溝の第2部分、21…周方向溝の第1部分、22…周方向溝の第2部分、30…交差部、51…第1バイパス、51a…接続部、51b…接続部、52…第2バイパス、52a…接続部、52b…接続部、53…第3バイパス、53a…接続部、53b…接続部、TM…タイヤモールド、M1…トレッド型部、M2…サイド型部、M3…サイド型部、M4…ビードリング、M5…ビードリング、S2…サイド型部の内表面、T…タイヤ、S1…タイヤ赤道面、O…タイヤ回転軸、D1…タイヤ軸方向、D2…タイヤ径方向、D3…タイヤ周方向、D31…タイヤ周方向第1側、D32…タイヤ周方向第2側