(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024059001
(43)【公開日】2024-04-30
(54)【発明の名称】シートパッド及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
A47C 27/14 20060101AFI20240422BHJP
B29C 39/10 20060101ALI20240422BHJP
B29C 44/00 20060101ALI20240422BHJP
B29C 44/12 20060101ALI20240422BHJP
A47C 31/02 20060101ALI20240422BHJP
B68G 7/052 20060101ALI20240422BHJP
【FI】
A47C27/14 B
B29C39/10
B29C44/00 A
B29C44/12
A47C31/02 B ZAB
A47C27/14 A
B68G7/052 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022166462
(22)【出願日】2022-10-17
(71)【出願人】
【識別番号】000004640
【氏名又は名称】日本発條株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 利春
【テーマコード(参考)】
3B096
4F204
4F214
【Fターム(参考)】
3B096AB02
4F204AB02
4F204AC05
4F204AD06
4F204AG20
4F204AH26
4F204EA01
4F204EB01
4F204EB12
4F204EF27
4F204EK17
4F214AB02
4F214AC05
4F214AD06
4F214AG20
4F214AH26
4F214UA01
4F214UB01
4F214UB12
4F214UD17
4F214UF27
(57)【要約】
【課題】剛性を維持しつつ、環境負荷の少ないシートパッド及びその製造方法を得る。
【解決手段】シートパッド10は、発泡樹脂製のパッド本体14と、パッド本体14に装着された表皮材16と、パッド本体よりも高剛性の天然素材からなり、パッド本体14に埋設されると共に、表皮材16を固定可能に構成された芯材26と、を有する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発泡樹脂製のパッド本体と、
前記パッド本体に装着された表皮材と、
前記パッド本体よりも高剛性の天然素材からなり、前記パッド本体に埋設されると共に、前記表皮材を固定可能に構成された芯材と、
を有するシートパッド。
【請求項2】
前記パッド本体には、前記表皮材を吊り込み可能な溝部が形成されており、
前記芯材は、棒状に形成されており、前記溝部において前記パッド本体の表面側に露出されかつ軸直角方向に切った断面を軸方向から見た軸直角断面視で真円以外の形状に形成された被係止部を備えている、
請求項1に記載のシートパッド。
【請求項3】
前記芯材は、
前記軸直角断面視で円形状の一般部と、
前記軸直角断面視で前記一般部と同径の円から一部を欠かれた欠円状に形成された前記被係止部と、
を備えている、
請求項2に記載のシートパッド。
【請求項4】
前記被係止部は、軸方向と平行に形成された基準平面を備え、前記軸直角断面視で前記一般部と同径の円から一部を弓形に欠かれた欠円状に形成されており、
前記芯材はさらに、軸方向において前記被係止部とは異なる位置に形成され、軸方向と平行かつ前記基準平面の延長平面と交わる回転規制面を備え、前記軸直角断面視で前記一般部と同径の円から一部を弓形に欠かれた欠円状に形成された回転被規制部を備えている、
請求項3に記載のシートパッド。
【請求項5】
前記芯材は、木材又は竹材とされている、
請求項1~請求項4の何れか一項に記載のシートパッド。
【請求項6】
発泡成形型に設けられかつ対向する一対の壁部を備えた係止部の当該一対の壁部間に、発泡樹脂製のパッド本体よりも高剛性の天然素材からなる棒状の芯材における被係止部を、隙間を持たせた状態で挿入し、軸周りに回転させながら係止させる係止工程と、
前記係止部に前記被係止部が係止された状態で、前記発泡成形型に樹脂材料を注入して前記パッド本体を成形すると共に、当該パッド本体の内部に前記芯材を埋設するパッド成形工程と、
前記パッド成形工程において一体に成形された前記パッド本体及び前記芯材の一体成形パッドを前記発泡成形型から取り外す離型工程と、
前記離型工程において前記発泡成形型から取り外された前記一体成形パッドにおける前記芯材の前記被係止部に、表皮材を固定する表皮材固定工程と、
を有するシートパッドの製造方法。
【請求項7】
前記発泡成形型は、対向する一対の壁部を備えた回転規制部を備えており、
前記芯材は、軸方向において前記被係止部とは異なる位置に、前記係止工程において前記回転規制部の当該一対の壁部間に隙間を持たせた状態で挿入されかつ前記回転規制部によって前記軸周りの回転を所定の位置で規制される回転被規制部を備えている、
請求項6に記載のシートパッドの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートパッド及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、シートパッドにおいて、表皮材は、金属製のワイヤが埋設された発泡樹脂製のパッド本体に装着されている。パッド本体には、表皮材を吊り込むための吊り込み溝が形成されている。パッド本体に埋設された金属製のワイヤは、その一部が吊り込み溝において露出している。表皮材には、この露出したワイヤに固定される固定具が設けられている。表皮材は、このように固定具がワイヤに固定されることで、パッド本体に装着される構成とされている。
【0003】
上記のパッド本体は、発泡成形型に樹脂を注入して発泡成形される。発泡成形型には、吊り込み溝を成形するための吊り込み溝成形部が設けられている。また、吊り込み溝成形部には、金属製のワイヤをセットするための固定部が設けられている。固定部には磁石が設けられており、金属製のワイヤはこの磁石に吸着されることで、固定部に固定される構成とされている。シートパッドは、固定部に金属製のワイヤをセットした状態で、発泡成形型に樹脂を注入することで、ワイヤをパッド本体に埋設一体化しつつ、固定部に対応する位置においてワイヤの一部を吊り込み溝から露出させて成形される。
【0004】
しかしながら、上記の従来のシートパッドは、リサイクルする際、金属製のワイヤを樹脂製のパッド本体から引き剥がす必要があり、多大な時間とコストを要する。
【0005】
下記特許文献1には、金属製のワイヤに替えて、有機繊維からなる紐をパッド本体に埋設させた車両用シートパッドが開示されている。紐は、植物繊維、合成繊維、再生繊維などの有機繊維を束ねて撚り合わせたものとされている。また、この紐は、紙やプラスチックからなる殻体で覆われていてもよいとされている。この紐には、吊込み溝成形突条(吊り込み溝成形部)の凸部に設けられた磁石に付くように、磁性体が設けられている。
【0006】
また、下記特許文献2には、金属製のワイヤに替えて、合成樹脂製の線状体をパッド本体に埋設させたシートパッドの製造方法が開示されている。下記特許文献2では、線状体が係止部に押し込まれることで、線状体が係止部に固定される構成とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2011-78452号公報
【特許文献2】特開2016-7294号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記特許文献1において、殻体を備えない紐では剛性が不足してしまい、設計通りに意匠を再現できない可能性がある。また、紐が殻体に覆われていたとしても、殻体が紙製の場合、剛性が不足してしまう。一方、紐がプラスチック製の殻体を備える場合には、製造時の二酸化炭素排出量の観点から、環境負荷の問題がある。さらにまた、凸部の磁石に紐を固定するための磁性体は、リサイクル時に切り出さなければ不純物となる。
【0009】
また、上記特許文献2では、合成樹脂製の線状体を用いるため、製造時の二酸化炭素排出量の観点から、環境負荷の問題がある。
【0010】
本発明は、上記の事実を考慮し、剛性を維持しつつ、環境負荷の少ないシートパッド及びその製造方法を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1に記載の本発明に係るシートパッドは、発泡樹脂製のパッド本体と、前記パッド本体に装着された表皮材と、前記パッド本体よりも高剛性の天然素材からなり、前記パッド本体に埋設されると共に、前記表皮材を固定可能に構成された芯材と、を有する。
【0012】
請求項1に記載の本発明によれば、芯材は、パッド本体に埋設される。表皮材は、当該芯材に固定された状態でパッド本体に装着される。この芯材は、パッド本体よりも高剛性の天然素材からなる。よって、金属製の芯材を備えたシートパッドと比較して、リサイクル時に芯材をパッド本体から切り出す必要がない。また、樹脂製の芯材と比較して、製造時の二酸化炭素の排出を抑制することができる。さらに、紙製の紐で成形された芯材のように設計通りの意匠を再現するために必要な剛性が不足してしまうことを回避することができる。
【0013】
請求項2に記載の本発明に係るシートパッドは、請求項1に記載の発明において、前記パッド本体には、前記表皮材を吊り込み可能な溝部が形成されており、前記芯材は、棒状に形成されており、前記溝部において前記パッド本体の表面側に露出されかつ軸直角方向に切った断面を軸方向から見た軸直角断面視で真円以外の形状に形成された被係止部を備えている。
【0014】
請求項2に記載の本発明によれば、棒状に形成された芯材の被係止部は、軸直角方向に切った断面を軸方向から見た軸直角断面視で真円以外の形状に形成されている。このため、パッド本体の成形工程において、対向する一対の壁部を備えた係止部の当該一対の壁部間に隙間を持たせた状態で被係止部が挿入され、芯材が軸周りに回転されることで、被係止部は、一対の壁部間に係止される。なお、パッド本体の溝部において、当該係止部に対応する部分は、ベース部よりも底面が深く形成された深溝部として成形され、芯材の被係止部は、当該深溝部においてパッド本体の表面側に露出されることとなる。
【0015】
本発明の芯材は、磁性体を備えずとも発泡成形型の係止部に固定される。このため、磁石を備えた係止部に磁性体を含んで構成された芯材を固定する方法と比較すると、リサイクル時に磁性体を分離する必要がなく、リサイクル性に優れる。
【0016】
また、別の比較例として、断面円形の被係止部を備えた芯材を考慮すると、このような芯材は、係止部の一対の壁部の間隔を、被係止部の直径よりも狭くすることで、被係止部が係止部の一対の壁部の間に圧入され得る。しかしながら、芯材の被係止部をこのように圧入して係止部に係止させる場合、はめあいの寸法公差が小さく、歩留まりが悪くなってしまう。
【0017】
これに対して、本発明の芯材の被係止部は、一対の壁部に対して隙間を持たせた状態で係止部に挿入された後、軸周りに回転されることで一対の壁部間に係止されるため、芯材の回転量によって、被係止部と係止部との係止の強さを調整することができる。
【0018】
請求項3に記載の本発明に係るシートパッドは、請求項2に記載の発明において、前記芯材は、前記軸直角断面視で円形状の一般部と、前記軸直角断面視で前記一般部と同径の円から一部を欠かれた欠円状に形成された前記被係止部と、を備えている。
【0019】
請求項3に記載の本発明によれば、軸方向で同じ直径の円断面を有する棒状の天然素材の一部を切り欠くことで、芯材における断面円形状の一般部と欠円状の被係止部とを形成することができる。よって、例えば旋盤加工で棒状に形成した天然素材の一部を切り欠くことで、容易に芯材を成形することができる。
【0020】
請求項4に記載の本発明に係るシートパッドは、請求項3に記載の発明において、前記被係止部は、軸方向と平行に形成された基準平面を備え、前記軸直角断面視で前記一般部と同径の円から一部を弓形に欠かれた欠円状に形成されており、前記芯材はさらに、軸方向において前記被係止部とは異なる位置に形成され、軸方向と平行かつ前記基準平面の延長平面と交わる回転規制面を備え、前記軸直角断面視で前記一般部と同径の円から一部を弓形に欠かれた欠円状に形成された回転被規制部を備えている。
【0021】
請求項4に記載の本発明によれば、パッド本体の成形工程において、係止部の一対の壁部と芯材における被係止部の基準平面とを略平行にすることで、隙間を持たせた状態で被係止部が係止部に挿入される。そして、芯材が軸周り正方向に回転されることで、芯材の基準平面の一端が係止部の一方の壁部に当接した状態で、被係止部は、一対の壁部間に係止される。
【0022】
ここで、芯材は、基準平面とは異なる向きに形成された回転規制面を備える回転被規制部によって、軸周りの回転を所定の位置で規制される。よって、パッド本体の成形工程において、芯材が誤った方向に回転されたり、正しい方向に過度に回転されたりすることを抑制することができる。なお、ここでいう回転方向の正誤とは、被係止部の断面形状によって定まるものである。例えば、一対の壁部間に挿入された後、一方向と他の方向とで係止の態様が異なる、あるいは一方向に回した場合のみ係止され、他の方向に回した場合には係止されない場合など、係止する際の理想の回転方向がある場合には、被係止部が正しく係止される理想の回転方向が正しい回転方向とされ、そうでない回転方向が誤った回転方向とされる。被係止部の断面形状によっては、一方向へ回転した場合と他の方向へ回転した場合とで、係止の態様に差がない場合もあり、そのような場合には、回転の正誤はないものと考えることができる。
【0023】
請求項5に記載の本発明に係るシートパッドは、請求項1~請求項4の何れか一項に記載の発明において、前記芯材は、木材又は竹材とされている。
【0024】
請求項4に記載の本発明によれば、芯材は、天然の木材や竹材とされている。よって、パッド本体に埋設された状態で一体成形されかつ表皮材を固定するのに十分な剛性の芯材を、安価に製造することができる。また、例えば廃材を使用することで、より安価に製造することができる。
【0025】
請求項6に記載の本発明に係るシートパッドの製造方法は、発泡成形型に設けられかつ対向する一対の壁部を備えた係止部の当該一対の壁部間に、高剛性の天然素材からなる棒状の芯材における被係止部を、隙間を持たせた状態で挿入し、軸周りに回転させながら係止させる係止工程と、前記係止部に前記被係止部が係止された状態で、前記発泡成形型に樹脂材料を注入して発泡樹脂製のパッド本体を成形すると共に、当該パッド本体の内部に前記芯材を埋設するパッド成形工程と、前記パッド成形工程において一体に成形された前記パッド本体及び前記芯材の一体成形パッドを前記発泡成形型から取り外す離型工程と、前記離型工程において前記発泡成形型から取り外された前記一体成形パッドにおける前記芯材の前記被係止部に、表皮材を固定する表皮材固定工程と、を有する。
【0026】
請求項6に記載の本発明によれば、発泡成形型には、一対の壁部を備えた係止部が設けられている。また、高剛性の天然素材からなる棒状の芯材は、被係止部を備えている。係止工程において、芯材の被係止部は、発泡成形型における係止部の一対の壁部間に、隙間を持たせた状態で挿入され、軸周りに回転されることで係止部に係止される。
【0027】
次に、パッド成形工程において、係止部に被係止部が係止された状態で、発泡成形型に樹脂材料が注入され、発泡樹脂製のパッド本体が成形される。このとき、パッド本体の内部には、芯材が埋設される。これにより、パッド本体及び芯材が一体成形された一体成形パッドが成形される。
【0028】
さらに、離型工程において、一体成形パッドが発泡成形型から取り外される。
【0029】
そして、表皮材固定工程において、発泡成形型から取り外された一体成形パッドにおける芯材の被係止部に、表皮材が固定される。これにより、一体成形パッドに表皮材が装着される。
【0030】
本発明によれば、一般的な金属製の芯材を備えたシートパッドと比較して、リサイクル時に芯材をパッド本体から切り出す必要がない。また、樹脂製の芯材と比較して、製造時の二酸化炭素の排出を抑制することができる。
【0031】
また、芯材の被係止部は、係止工程において、一対の壁部に対して隙間を持たせた状態で係止部に挿入された後、軸周りに回転されることで一対の壁部間に係止される。つまり、芯材の回転量によって、被係止部と係止部との係止の強さを調整することができる。
【0032】
請求項7に記載の本発明に係るシートパッドの製造方法は、請求項6に記載の発明において、前記発泡成形型は、対向する一対の壁部を備えた回転規制部を備えており、前記芯材は、軸方向において前記被係止部とは異なる位置に、前記係止工程において前記回転規制部の当該一対の壁部間に隙間を持たせた状態で挿入されかつ前記回転規制部によって前記軸周りの回転を所定の位置で規制される回転被規制部を備えている。
【0033】
請求項7に記載の本発明によれば、芯材の回転被規制部は、発泡成形型の回転規制部によって、軸周りの回転を所定の位置で規制される。よって、係止工程において、芯材が誤った方向に回転されたり、正しい方向に過度に回転されたりすることを抑制することができる。なお、ここでいう回転方向の正誤とは、被係止部の断面形状によって定まるものである。例えば、一対の壁部間に挿入された後、一方向と他の方向とで係止の態様が異なる、あるいは一方向に回した場合のみ係止され、他の方向に回した場合には係止されない場合など、係止する際の理想の回転方向がある場合には、被係止部が正しく係止される理想の回転方向が正しい回転方向とされ、そうでない回転方向が誤った回転方向とされる。被係止部の断面形状によっては、一方向へ回転した場合と他の方向へ回転した場合とで、係止の態様に差がない場合もあり、そのような場合には、回転の正誤はないものと考えることができる。
【発明の効果】
【0034】
以上説明したように、請求項1に記載の本発明に係るシートパッドは、剛性を維持しつつ、環境負荷を抑制することができるという優れた効果を有する。
【0035】
請求項2に記載の本発明に係るシートパッドは、リサイクル性に優れかつ歩留まりを向上させることができるという優れた効果を有する。
【0036】
請求項3に記載の本発明に係るシートパッドは、容易に芯材を成形することができるという優れた効果を有する。
【0037】
請求項4に記載の本発明に係るシートパッドは、パッド本体の成形工程において、発泡成形型の係止部への芯材の組付け性を向上させることができるという優れた効果を有する。
【0038】
請求項5に記載の本発明に係るシートパッドは、コストを抑えることができるという優れた効果を有する。
【0039】
請求項6に記載の本発明に係るシートパッドの製造方法は、剛性を維持しつつ、環境負荷を抑制し、歩留まりを向上させることができるという優れた効果を有する。
【0040】
請求項7に記載の本発明に係るシートパッドの製造方法は、パッド本体の成形工程における芯材の係止部への組付け性を向上させることができるという優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【
図1】本実施形態に係るシートクッションにおける一体成形パッドの平面図である。
【
図2】
図1に示されるシートクッションの要部拡大断面図である。
図2(A)は、
図1における2A-2A線断面図であり、
図2(B)は、
図1における2B-2B線断面図である。
【
図3】
図1に示されるシートクッションのパッド本体を成形するための発泡成形型である。
【
図4】
図3に示される発泡成形型の係止部の一対の壁部間に対して
図2に示される芯材の被係止部を挿入する様子を示す要部拡大斜視図である。
【
図5】
図1に示される芯材の被係止部及び回転被規制部についての説明図である。
図5(A)は、被係止部が係止部に挿入されかつ回転被規制部が回転規制部に挿入された状態の芯材を示すXY平面図である。
図5(B)は、
図5(A)の5B-5B線断面図であり、
図5(C)は、
図5(A)の5C-5C線断面図である。
【
図6】
図5に示される芯材が正回転された場合の係止態様について説明する断面図である。
図6(A)は
図5(B)に対応する被係止部を含む断面図であり、
図6(B)は
図5(C)に対応する回転被規制部を含む断面図である。
【
図7】
図5に示される芯材が誤回転された場合の回転規制について説明する断面図である。
図7(A)は
図5(B)に対応する被係止部を含む断面図であり、
図7(B)は
図5(C)に対応する回転被規制部を含む断面図である。
【
図8】第1変形例に係る芯材の被係止部の断面図である。
【
図9】
図9(A)は、
図8に示される芯材が正回転された場合の被係止部を含む断面図である。
図9(B)は、
図8に示される芯材が正回転された場合の回転被規制部を含む断面図である。
図9(C)は、
図8に示される芯材が誤回転された場合の被係止部を含む断面図である。
図9(D)は、
図8に示される芯材が誤回転された場合の回転被規制部を含む断面図である。
【
図10】第2変形例に係る芯材が正回転された場合の被係止部を含む断面図である。
【
図11】第3変形例に係る芯材が正回転された場合の被係止部を含む断面図である。
【
図12】第4変形例に係る芯材が正回転された場合の被係止部を含む断面図である。
【
図13】
図13(A)~
図13(C)は、それぞれ第5変形例~第7変形例に係る芯材のXY平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下、
図1~
図7を用いて、本発明の一実施形態に係るシートクッション10について説明する。なお、
図1及び
図2に適宜示される矢印FR、矢印UP、矢印LH及び矢印RHは、シートクッション10を備えた図示しない車両用シートのシート前方側、シート上方側、シート幅方向左側及びシート幅方向右側を示している。
【0043】
〔シートクッション10の全体構成〕
図1には、本実施形態に係るシートパッドとしてのシートクッション10が示されている。シートクッション10は、着座者の臀部及び大腿部を支持可能に、例えばウレタンフォーム等で成形された弾力性を有する発泡樹脂製のパッド本体14を備えている。
【0044】
パッド本体14には、布材、ニット素材、合成皮革、皮革等からなる複数の表皮片が互いに縫製されて構成された表皮材16(
図2参照)が装着されている。説明の便宜上、
図1では表皮材16の図示を省略している。
【0045】
パッド本体14は、シート幅方向中央部に成形された着座部18と、着座部18の左右両側において着座部18よりも上方側に隆起して成形された左右一対のサイドサポート部20と、を含んで構成されている。着座部18は、シート後方側に成形され着座者の臀部を支持する臀部支持部22Aと、シート前方側に成形され着座者の大腿部を支持する大腿支持部22Bと、を備えている。
【0046】
パッド本体14の上面側には、表皮材16(
図2参照)を吊り込むための溝部としての吊り込み溝24が形成されている。吊り込み溝24は、平面視で略H字状に形成されており、前後方向に延びる左右一対の縦溝24Aと、左右一対の縦溝24Aの前後方向中央部を左右方向に連通する横溝24Bと、を備えている。左右一対の縦溝24Aは、着座部18と左右一対のサイドサポート部20との境界にそれぞれ形成されている。また、横溝24Bは、着座部18における臀部支持部22Aと大腿支持部22Bとの境界に形成されている。なお、吊り込み溝24の形状は略H字状に限らず、シートクッションの意匠に応じて様々な形を採用し得る。例えば、縦溝24A及び横溝24Bは、平面視で湾曲されていてもよい。
【0047】
シートクッション10には、パッド本体14の吊り込み溝24に沿って3本の芯材26が配設されている。3本の芯材26は、パッド本体14に埋設一体化されている。各芯材26は、パッド本体14よりも高剛性の天然素材からなり、一例として、木材や竹材等の天然素材を棒状に加工したものとされている。以下、パッド本体14と芯材26とが一体成形されたものを「一体成形パッド12」と称す。なお、芯材26の本数は3本に限らない。
【0048】
〔シートクッション10の要部構成〕
左右一対の縦溝24A及び横溝24Bは、それぞれ表皮材16(
図2参照)の縫製端を吊り込むスペースを備えたベース部28と、ベース部28よりもさらに深く形成された複数の深溝部30と、を備えている。一例として、左右一対の縦溝24A及び横溝24Bは、それぞれ3箇所ずつ深溝部30を備えている。
【0049】
各芯材26において、パッド本体14の深溝部30に対応する部分は、側面の一部を半径方向に切り欠かれている。具体的には、各芯材26の軸方向両端部には、発泡成形型50(
図3参照)の係止部62(
図5(A)参照)に係止される被係止部32が設けられ、軸方向中央部には、発泡成形型50(
図3参照)の回転規制部64(
図5(A)参照)に挿入される回転被規制部34が設けられている。
【0050】
図2(A)には、
図1のベース部28を通る2A-2A線で切断した断面をシート前方側から見た要部拡大断面図が示されている。
図2(A)に示されるように、芯材26の一般部31は、芯材26を軸直角方向に切った断面を軸方向から見た軸直角断面視(以下、単に「軸直角断面視」という。)で、円形状に形成されている。一般部31は、吊り込み溝24におけるベース部28の底面28Aの下方側を通って配設されており、これにより芯材26はパッド本体14に埋設されている。
【0051】
一方、
図2(B)には、
図1の深溝部30を通る2B-2B線で切断した断面をシート前方側から見た要部拡大断面図が示されている。
図2(B)に示されるように、芯材26の被係止部32は、軸直角断面視で円の一部が弓形に欠かれた欠円状に形成されており、深溝部30における底面30Aの上方側を通って配設されている。このようにして、
図1に示される各被係止部32及び各回転被規制部34は、各深溝部30においてパッド本体14の表面側へ露出されている。
【0052】
図2(B)に示されるように、表皮材16においてパッド本体14の深溝部30に対応する位置には、ワイヤ36を備えた固定具38が設けられている。表皮材16は、各深溝部30において、芯材26の被係止部32又は回転被規制部34(
図1参照)にワイヤ36が掛けられることにより、吊り込み溝24に吊り込まれる構成とされている。
【0053】
以下、本実施形態に係るシートクッション10の製造方法について説明しつつ、芯材26の被係止部32及び回転被規制部34についてより詳しく説明する。
【0054】
本実施形態に係るシートクッション10の製造方法は、
図4に示されるように、発泡成形型50の係止部62に芯材26の被係止部32を係止させる係止工程と、
図3に示される発泡成形型50に樹脂材料を注入して、
図1に示されるパッド本体14を成形すると共にパッド本体14の内部に芯材26を埋設するパッド成形工程と、を有する。
【0055】
さらに、シートクッション10の製造方法は、パッド成形工程において一体に成形された一体成形パッド12を、発泡成形型50(
図3参照)から取り外す離型工程と、離型工程において発泡成形型50から取り外された一体成形パッド12における芯材26の被係止部32に、表皮材16(
図2参照)を固定する表皮材固定工程と、を有する。
【0056】
(発泡成形型50)
シートクッション10の製造方法を説明するにあたり、まず、発泡成形型50について
図3を用いて説明する。
図3のX軸方向は一体成形パッド12(
図1参照)成形後のシート後方側に対応し、
図3のY軸方向は、パッド本体14成形後のシート左側に対応し、
図3のZ軸方向は、パッド本体14成形後のシート下方側に対応する向きとされている。発泡成形型50は、パッド本体14の下面側を成形する上型52と、パッド本体14の上面側を成形する下型54と、を備えている。図示は省略するが、上型52のX軸方向の一端部は、ヒンジを介して下型54のX軸方向の一端部に回動可能に連結されており、これにより発泡成形型50は開閉可能に構成されている。上型52が閉じられた状態では、上型52と下型54との間に発泡空間56が形成されるようになっている。
【0057】
下型54の内面側(Z軸方向上側)には、パッド本体14の吊り込み溝24(
図1参照)を成形するための吊り込み溝成形部58が設けられている。吊り込み溝成形部58は、Z軸方向から見て略H字状に形成されており、吊り込み溝24に対応する形状とされている。
図3には、略H字状の吊り込み溝成形部58のうち、X軸方向に延設され、シートクッション10のシート左側の縦溝24Aを成形する縦溝成形部58Aが示されている。シート右側の縦溝24A(
図1参照)を成形する縦溝成形部(図示省略)及び横溝24B(
図1参照)を成形する横溝成形部(図示省略)は、縦溝成形部58Aと同様の構成を有するため、説明を省略する。
【0058】
図3~
図5(A)に示されるように、縦溝成形部58Aは、X軸方向を長手方向とする長尺状に形成された突条60と、突条60の上面に固定された2つの係止部62及び回転規制部64(
図5参照)と、を含んで構成されている。なお、
図5(A)では突条60の図示を省略している。
【0059】
図5(A)に示されるように、2つの係止部62は、それぞれ突条60(
図4参照)の軸方向両端部に設けられており、回転規制部64は、突条60の軸方向中央部に設けられている。なお、係止部62及び回転規制部64の位置及び個数は上記に限定されるものではない。
【0060】
図3~
図5(B)に示されるように、係止部62は、Y軸方向に対向する一対の壁部66を備えており、突条60の軸方向(X軸方向)から見た断面視で上側が開放された略U字状に形成されている。
【0061】
また、
図5(A)及び
図5(C)に示されるように、回転規制部64は、Y軸方向に対向する一対の壁部68を備えており、突条60の軸方向(X軸方向)から見た断面視で上側が開放された略U字状に形成されている。
【0062】
図3~
図5(C)に示されるように、パッド本体14(
図1参照)は、係止部62に被係止部32が固定されかつ回転規制部64に回転被規制部34が固定された状態で発泡空間56に樹脂が注入されることで、係止部62及び回転規制部64に対応する部分が深溝部30として成形され、それ以外の突条60に対応する部分がベース部28として成形されるようになっている。
【0063】
(芯材26の形状)
図5(A)に示されるように、芯材26において、軸方向(X軸方向)の両端70は、発泡樹脂製のパッド本体14(
図1参照)の破損を防ぐため、それぞれ半球状に形成されており、その半径Rは7.5mm以上が望ましい。
【0064】
芯材26は、木材又は竹材が旋盤加工により直径Dの棒状に加工され、さらにその一部が切り欠かれることで、断面円形状の一般部31(
図2(A)参照)以外に、断面欠円状の被係止部32(
図5(B)参照)及び断面欠円状の回転被規制部34(
図5(C)参照)がそれぞれ形成されている。なお、芯材26は、両端70以外一様に直径Dを有するものとして説明したが、これに限定されるものではない。
【0065】
図5(B)に示されるように、係止部62の一対の壁部66間の内寸をMとすると、芯材26の直径Dは、係止部62の内寸Mよりも大きく設定されている(D>M)。また、
図5(C)に示されるように、回転規制部64の一対の壁部68の内寸をNとすると、芯材26の直径Dは、回転規制部64の内寸Nよりも大きく設定されている(D>N)。なお、本実施形態では、係止部62と回転規制部64は同じ形状及び材質であるものとする(M=N)。これにより係止部62と回転規制部64とを区別することなく量産することができるが、上記に限らず、係止部62と回転規制部64は、異なる形状及び材質であってもよい。
【0066】
図5(B)に示されるように、被係止部32は、芯材26の軸方向(X軸方向)から見た軸直角断面視で、一般部31(
図2参照)と同じ直径Dの円の一部が弓形に欠かれた欠円状に形成されており、軸方向と平行な基準平面72を有している。
【0067】
芯材26は、被係止部32の基準平面72を、係止部62の一方の壁部76の壁面76Aと略平行に対向させた状態で、係止部62に挿入される。以下、この状態を「挿入状態」と称す。
【0068】
挿入状態の被係止部32におけるY軸方向の寸法を短辺径Fとすると、被係止部32の短辺径Fは、係止部62の内寸Mよりも小さく設定されている(F<M)。つまり、被係止部32は、係止部62に隙間を持たせた状態で挿入可能に構成されている。
【0069】
図5(C)に示されるように、回転被規制部34は、芯材26の軸方向(X軸方向)から見た軸直角断面視で、一般部31(
図2参照)と同じ直径Dの円の一部が弓形に欠かれた欠円状に形成されており、芯材26の軸方向に平行な回転規制面74を備えている。回転規制面74は、X軸方向から見て被係止部32の基準平面72が芯材26の軸周り(紙面半時計周り)に僅かに回転された向きで、基準平面72の延長平面と交わる位置に形成されている。
【0070】
図5(B)及び
図5(C)に示されるように、係止部62の壁面76Aと平行に基準平面72が挿入された挿入状態において、回転規制面74は、斜め下を向いた状態で回転規制部64の一方の壁部78の壁面78Aと対向される。このときの回転被規制部34のY軸方向の寸法を有効径Gとすると、回転被規制部34の有効径Gは、被係止部32の短辺径Fよりも大きく、回転規制部64の内寸Nよりも小さい(F<G<N=M)。
【0071】
一例として、挿入状態において、芯材26の断面円弧状の側面26Aは、係止部62の他方の壁部80の壁面80Aに当接しかつ回転規制部64の他方の壁部82の壁面82Aに当接しているものとして説明する。この挿入状態において、
図5(C)に示される回転被規制部34の回転規制面74の上端74Aと回転規制部64の一方の壁部78の壁面78Aとの距離N-Gは、
図5(B)に示される被係止部32の基準平面72の上端72Aと係止部62の一方の壁部76の壁面76Aとの距離M-Fよりも小さい(N-G<M-F)。このように回転規制部64の回転規制面74が形成されていることにより、芯材26がX軸周りに誤回転(紙面反時計回りに回転)されると、基準平面72の上端72Aが壁面76Aに当接するよりも先に、回転規制面74の上端74Aが壁面78Aに当接し、それ以上の回転を規制するようになっている。
【0072】
一方、挿入状態において、
図5(C)に示される回転被規制部34の回転規制面74の下端74Bと回転規制部64の一方の壁部78の壁面78Aとの距離Jは、
図5(B)に示される被係止部32の基準平面72の下端72Bと係止部62の一方の壁部76の壁面76Aとの距離M-Fよりも大きい(M-F<J)。これにより、芯材26がX軸周りに正回転(紙面時計回りに回転)されると、回転規制面74の下端74Bが壁面78Aに当接するよりも先に基準平面72の下端72Bが壁面76Aに当接するようになっている。
【0073】
(本実施形態の作用)
以下、シートクッション10の製造方法について順に説明しつつ、本実施形態に係るシートクッション10及びその製造方法の作用について説明する。
【0074】
(係止工程)
図4及び
図5(A)~
図5(C)に示されるように、係止工程では、まず、被係止部32が係止部62の一対の壁部66間に隙間を持たせた状態で挿入され、これと同時に回転被規制部34が回転規制部64の一対の壁部68間に隙間を持たせた状態で挿入される。これにより芯材26は発泡成形型50(
図3参照)の突条60に沿って配置される。
【0075】
図5(B)に示されるように、芯材26は、被係止部32の基準平面72を係止部62の一方の壁部76の壁面76Aと略平行に対向させた状態で係止部62に挿入される。このとき、
図5(C)に示されるように、回転被規制部34の回転規制面74は、斜め下向きとなっている。
【0076】
続いて、
図6(A)に示されるように、芯材26がX軸周りに正回転される。
図6(A)において、二点鎖線は、挿入状態の被係止部32を示してる。一方、実線は、被係止部32が芯材26の軸周り(X軸周り)かつ基準平面72が係止部62の開口側(Z軸上方側)を向くように(紙面の時計回りに)所定の角度だけ回転されて、係止部62に固定された状態を示している。以下、この状態を「固定状態」と称す。また、本実施形態において、このように正しく被係止部32が係止部62に固定される理想の方向の回転を「正回転」と称している。
【0077】
被係止部32の固定態様について詳述すると、一対の壁部66間で被係止部32が正回転された場合、軸直角断面視で円弧状の側面26Aの一部が他方の壁部80の壁面80Aに当接した状態で、基準平面72の下端72Bが一方の壁部76の壁面76Aに当接する(図示省略)。この状態で芯材26がさらに回転されることにより、
図6(A)に示されるように基準平面72の下端72Bが僅かに潰され、被係止部32が係止部62に嵌って固定される。当該被係止部32の係止部62に対する固定の強さは、パッド成形工程において樹脂材料が発泡される際には動かない一方で、離型工程においては容易に発泡成形型50から一体成形パッド12が取り外せる程度の強さとされている。
【0078】
図6(B)において、二点鎖線は、挿入状態における回転被規制部34を示し、実線は、固定状態における回転被規制部34を示している。固定状態において、回転規制面74の下端74Bは、一方の壁部78の壁面78Aに当接している。
【0079】
図示は省略するが、芯材26が正回転されて基準平面72の下端72Bが壁面76Aに当接した時、回転規制面74の下端74Bはまだ壁面78Aに当接していない。つまり、回転規制面74の下端74Bが壁面78Aに当接するよりも先に基準平面72の下端72Bが壁面76Aに当接する。この状態で芯材26がさらに回転されることにより、上述した通り
図6(A)に示されるように基準平面72の下端72Bが僅かに潰され、被係止部32が係止部62に嵌るが、
図6(B)に示されるように、回転途中で回転規制面74の下端74Bが一方の壁部78の壁面78Aに当接する。これにより、回転の抵抗力が急に増えることになり、芯材26を回転する作業者にこれが伝わる。よって、係止工程において芯材26が正しい方向に過度に回転されることが抑制される。
【0080】
図7(A)及び
図7(B)には、芯材26が正回転とは反対に回転された場合における被係止部32及び回転被規制部34の軸直角断面がそれぞれ示されている。
図7(A)及び
図7(B)において、二点鎖線はそれぞれの挿入状態を示している。
【0081】
芯材26が正回転とは反対方向、すなわち基準平面72が係止部62の底面側(Z軸下方側)を向くように(紙面の反時計回りに)所定の角度だけ回転されると、基準平面72の上端72Aが壁面76Aに当接するよりも先に、回転規制面74の上端74Aが壁面78Aに当接する。よって、係止工程において、芯材26が誤った方向に回転されることを抑制することができる。本明細書において、このように理想の回転方向とは反対方向の回転を「誤回転」と称している。
【0082】
(パッド成形工程)
図6(A)に示されるように係止工程において係止部62に被係止部32が係止された後、パッド成形工程において、発泡成形型50(
図3参照)に樹脂材料が注入されて発泡されることで、パッド本体14(
図1参照)が成形される。またこれと同時に、
図1に示されるようにパッド本体14の内部に芯材26が埋設され、一体成形パッド12となる。
【0083】
(離型工程)
続いて、離型工程において一体成形パッド12が発泡成形型50(
図3参照)から取り外される。
【0084】
(表皮材固定工程)
そして、
図2(B)に示されるように、表皮材固定工程において、芯材26の被係止部32に表皮材16のワイヤ36が掛けられることで、一体成形パッド12に表皮材16が装着される。
【0085】
本実施形態に係るシートクッション10によれば、芯材26は、パッド本体14よりも高剛性の木材又は竹材からなる。よって、金属製の芯材を備えたシートクッションと比較して、リサイクル時に芯材26をパッド本体14から切り出す必要がない。また、樹脂製の芯材と比較して、製造時の二酸化炭素の排出を抑制することができる。さらに、紙製の紐で成形された芯材のように設計通りの意匠を再現するために必要な剛性が不足してしまうことを回避することができる。
【0086】
また、磁石を備えた係止部に磁性体を備えた天然素材の芯材を固定する従来の方法と比較すると、本実施形態に係るシートクッション10の芯材26は、磁性体を備えずとも発泡成形型50の係止部62に固定されるため、リサイクル時に磁性体を分離する必要がなく、リサイクル性に優れる。
【0087】
また、別の比較例として、断面円形の被係止部を備えた芯材を考慮すると、このような芯材は、係止部の一対の壁部の間隔を、被係止部の直径よりも狭くすることで、被係止部が係止部の一対の壁部の間に圧入され得る。しかしながら、芯材の被係止部をこのように圧入して係止部に係止させる場合、はめあいの寸法公差が小さく、歩留まりが悪くなってしまう。
【0088】
これに対して、本実施形態に係るシートクッション10の芯材26における被係止部32は、係止部62の一対の壁部66に対して隙間を持たせた状態で挿入された後、軸周りに回転されることで一対の壁部66間に係止される。このため、芯材26の回転量によって、被係止部32と係止部62との係止の強さを調整することができる。
【0089】
さらに、本実施形態に係るシートクッション10によれば、旋盤加工で棒状に形成した木材又は竹材の一部を切り欠くことで、パッド本体14に埋設された状態で一体成形可能な剛性かつ表皮材16を固定するのに十分な剛性の芯材26を、安価かつ容易に製造することができる。
【0090】
なお、本実施形態では、芯材26の被係止部32及び回転被規制部34は、円の一部が弓形に欠かれた欠円状の断面形状を有するものとして説明したが、これに限らず、芯材の被係止部及び回転被規制部の断面は、真円以外の種々の形状を採用し得る。以下の変形例において、本実施形態と同様の部分については、同一の符号を付して適宜その説明を省略する。
【0091】
(第1変形例)
例えば、
図8に示されるように、第1変形例のシートクッション(図示省略)における芯材100の被係止部102は、被係止部102の基準平面104の下端104Aと断面円弧状の側面102Aとの境界として丸く面取りされた角部106を備えている。角部106から円の中心Оを通って反対側の側面102Aまでの線長T、線長U及び線長Vは、紙面反時計回りに徐々に長くなるように形成されている(T<U<V)。芯材100は、このように下側の角部106がなだらかに形成されていることにより、
図9(A)に示されるようにスムーズに正回転される。これにより、被係止部32の基準平面72の下端72B(
図5(B)参照)のように潰されることなく、係止の強さを正回転により徐々に強めることができる。なお、本変形例においても、
図9(B)に示される回転被規制部108の回転規制面110の下端110Aにより、過度な正回転が抑制される。また、
図9(D)に示されるように、回転規制面110の上端110Bが回転規制部64の壁面78Aに当接することによって誤回転が防止されるため、
図9(C)に示されるように、基準平面104の上端104Bは、係止部62の壁面76Aに当接しないようになっている。
【0092】
(第2変形例)
図10に示されるように、第2変形例のシートクッション(図示省略)における芯材120の被係止部122は、基準平面124の下端124Aと断面円弧状の側面122Aとの境界として平面状に面取りされた固定平面126を備えている。被係止部122は、固定平面126が面で広く壁面76Aに当接した状態で、一対の壁部66に係止される。
【0093】
(第3変形例)
図11に示されるように、第3変形例のシートクッション(図示省略)における芯材130の被係止部132は、基準平面134の下端134Aと断面円弧状の側面132Aとの境界として平面状に面取りされた第1固定平面136を備えている。また、被係止部132は、第1固定平面136と平行に側面132Aに形成された第2固定平面138を備えている。被係止部132は、第1固定平面136が壁面76Aに当接し、第2固定平面138が壁面80Aに当接した状態で、一対の壁部66に係止される。
【0094】
(第4変形例)
図12に示されるように、第4変形例のシートクッション(図示省略)における芯材140の被係止部142は、互いに平行な一対の基準平面144を備えている。この場合、芯材140をX軸周りの一方向へ回転した場合と他の方向へ回転した場合とで、係止の態様に差がないため、回転の正誤はなく、どちらに回転しても被係止部142を係止部62に係止することができる。このため、図示は省略するが、第4変形例では、回転規制部は誤回転を防止する必要はなく、過度な正回転を抑制する機能のみを有するための一対の回転規制面を、例えば一対の基準平面144よりも僅かに内側(軸心側)に、一対の基準平面144と平行になるように備えていてもよい。
【0095】
また、本実施形態では、
図5(A)に示されるように、被係止部32、回転被規制部34、被係止部32の並びで間隔を空けて3箇所芯材26の側面が切り欠かれているものとして説明した。また、被係止部32の基準平面72及び回転被規制部34の回転規制面74は、いずれもY軸方向正側に形成されているものとして説明した。これに限らず、例えば
図13(A)に示される第5変形例、
図13(B)に示される第6変形例又は
図13(C)に示される第7変形例の形状が採用されてもよい。
【0096】
(第5変形例)
図13(A)に示されるように、第5変形例のシートクッション(図示省略)における芯材150は、X軸方向の一端部から他端部までY軸方向の一方側が連続して切り欠かれた一つの被係止部152を備えている。被係止部152の断面形状は、被係止部32の断面形状(
図5(B)参照)と同様に欠円状とされている。被係止部152は、一例としてX軸方向に間隔を開けて設けられた複数の係止部62(
図5(B)参照)に係止される構成とされている。この芯材150は回転被規制部を備えておらず、棒状の木材又は竹材の1箇所を切り欠くだけで形成できるため、製造コストを抑えることができる。
【0097】
(第6変形例)
図13(B)に示されるように、第6変形例のシートクッション(図示省略)における芯材160は、X軸方向の一端部から他端部まで、Y軸方向の両側の側面がそれぞれ連続して切り欠かれた被係止部162を備えている。被係止部162の断面は、例えば
図12に示される芯材140の被係止部142の断面と同じ形状とされている。芯材160は、シートクッションを軽量化することができる。
【0098】
(第7変形例)
図13(C)に示されるように、第7変形例のシートクッション(図示省略)における芯材170は、X軸方向の一端部において、Y軸方向の一方側が切り欠かれた被係止部172を備え、X軸方向の他端部において、Y軸方向の他方側が切り欠かれた被係止部174を備えている。被係止部172の基準平面172Aと被係止部174の基準平面174Aとは、互いに平行に形成されており、芯材170は、全体としてZ軸方向から見て点対称に形成されている。
【0099】
〔上記実施形態の補足説明〕
上記実施形態では、シートパッドとして着座者の臀部及び大腿部を支持するシートクッション10について説明したが、これに限らず、本発明は着座者の背部を支持するシートバックに適用されてもよい。
【0100】
また、上記実施形態では、芯材26の被係止部32及び回転被規制部34は、軸直角断面視で円の一部が欠かれた欠円状に形成されているものとして説明したが、これに限らない。例えば、芯材の被係止部及び回転被規制部は、略矩形等の多角形状に形成されていてもよい。
【0101】
さらに、上記実施形態では、芯材26は、木材又は竹材であるものとして説明したが、これに限らない。例えば、籐材であってもよい。
【0102】
さらにまた、上記実施形態では、係止部62及び回転規制部64は、一対の壁部66及び一対の壁部68がそれぞれ互いに平行に形成された断面略U字状であるものとして説明したが、これに限らない。例えば、係止部の一対の壁部及び回転規制部の一対の壁部は、それぞれZ軸上方側へ向かうにつれて互いに近接するように形成されていてもよい。この場合、発泡成形時に芯材が係止部及び回転規制部から抜け落ちることがより一層抑制される。
【符号の説明】
【0103】
10 シートクッション
12 一体成形パッド
14 パッド本体
16 表皮材
24 吊り込み溝(溝部)
26、100、120、130、140、150、160、170 芯材
31 一般部
32、102、122、132、142、152、162、172、174 被係止部
34、108 回転被規制部
50 発泡成形型
62 係止部
64 回転規制部
66 係止部の一対の壁部
68 回転規制部の一対の壁部
72、104、124、134、144、172A、174A 基準平面
74、110 回転規制面