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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024059002
(43)【公開日】2024-04-30
(54)【発明の名称】車両用のフロントワイパ
(51)【国際特許分類】
   B60S 1/34 20060101AFI20240422BHJP
【FI】
B60S1/34 270
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022166464
(22)【出願日】2022-10-17
(71)【出願人】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100217076
【弁理士】
【氏名又は名称】宅間 邦俊
(74)【代理人】
【識別番号】100169018
【弁理士】
【氏名又は名称】網屋 美湖
(72)【発明者】
【氏名】辻 厚樹
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 章祐
【テーマコード(参考)】
3D225
【Fターム(参考)】
3D225AA01
3D225AC01
3D225AD01
3D225AD09
3D225AE05
(57)【要約】
【課題】車両外観の設計要件への制約を増加させることなく、衝突事故発生時に衝突体を高いレベルで保護できる車両用のフロントワイパを提供する。
【解決手段】フロントワイパ1は、アームヘッド11と、アームヘッド11に連結される長尺状のアーム本体12とを備え、アーム本体12の長手方向先端部に保持されるワイパブレード13により車両のフロントガラス31が払拭される。アーム本体12は、一方向に延びる天壁部121Aと、天壁部121Aの短手方向の両側部分からフロントガラス31側に延びる一対の側壁部121B,121Cとを有し、フロントワイパ1の払拭停止状態において、一対の側壁部のうちで車両上側に配置される上側壁部121Bの上面に、車両上方に向けて突出する凸形状部121Dが形成されている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アームヘッドと、該アームヘッドに連結される長尺状のアーム本体とを備え、該アーム本体の長手方向先端部に保持されるワイパブレードにより車両のフロントガラスが払拭される車両用のフロントワイパであって、
前記アーム本体は、一方向に延びる天壁部と、該天壁部の短手方向の両側部分から前記フロントガラス側に延びる一対の側壁部とを有し、前記フロントワイパの払拭停止状態において、前記一対の側壁部のうちで車両上側に配置される上側壁部の上面に、車両上方に向けて突出する凸形状部が形成されていることを特徴とする車両用のフロントワイパ。
【請求項2】
前記凸形状部は、前記上側壁部の前記フロントガラスと対向するエッジ部分に沿って延び、かつ、前記上側壁部の短手方向の中心に重なる範囲に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の車両用のフロントワイパ。
【請求項3】
前記アーム本体は、前記アームヘッドに対して連結軸を中心に回動可能に連結され、前記上側壁部の上面における前記連結軸に対応する位置には、車両上方に向けて突出する突出部が設けられており、
前記凸形状部および前記突出部は、前記上側壁部の長手方向に並んで配置されていることを特徴とする請求項1に記載の車両用のフロントワイパ。
【請求項4】
前記凸形状部の突出量は、前記突出部の突出量以上であることを特徴とする請求項3に記載の車両用のフロントワイパ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用のフロントワイパに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車等の車両が走行中に歩行者に衝突した際に、該歩行者が受ける衝撃を吸収し得る車両構造とすることで歩行者の傷害を軽減するための様々な技術が知られている。例えば、特許文献1には、自動車のカウルトップを覆って配置される合成樹脂製のカウルルーバについて、天板および側壁を備えた衝撃吸収凸部を一体的に設け、ワイパピボットのピボット軸が貫通する貫通孔の近傍に剛性のある係合リングを固設した衝撃吸収機能を有するカウルルーバが開示されている。このカウルルーバは、衝撃吸収凸部の天板に入力される外部からの衝撃により側壁が変形することで該衝撃を吸収すると共に、当該側壁の変形時に、係合リングがワイパピボットに係合することで貫通孔の周縁部の変位を阻止する。これにより、歩行者の頭部が衝突した際の衝撃を十分に吸収することができ、歩行者の頭部の保護を高いレベルで達成可能にしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003-335264号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記従来技術のように車体側の構造(カウルルーバ)を工夫することで衝突事故発生時の衝撃を吸収するためには、カウルトップ周辺のデザインやフロントガラスとワイパアームの位置関係などの車両外観の設計要件への制約が多くなってしまうという課題があった。
【0005】
また、フロントガラスの後傾度合が比較的小さく、フロントガラスが縦方向に立ったデザインが採用されている車両の場合、構造上、フロントワイパのアームヘッドとアーム本体の連結部がフード(ボンネット)およびカウルトップの上方側に露出した状態になりやすい。アーム本体の連結部付近には、フロントガラスと対向するエッジ部分や連結軸に対応した突出部が存在しており、衝突事故発生時に、衝突体がアーム本体のエッジ部分または突出部に接触すると、該衝突体に重大な傷害を与えてしまう可能性がある。
【0006】
上記のようなフロントガラスが縦方向に立ったデザインの車両において、衝突体に対する傷害値を低減して衝突体を高いレベルで保護するためには、車体側だけでなくフロントワイパ側にも傷害軽減構造を設けることが望まれる。上記従来技術は車体側での衝撃吸収が中心になっており、フロントワイパ側での傷害軽減に関して改善の余地があった。
【0007】
本発明は上記の点に着目してなされたもので、車両外観の設計要件への制約を増加させることなく、衝突事故発生時に衝突体を高いレベルで保護できる車両用のフロントワイパを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するため本発明の一態様は、アームヘッドと、該アームヘッドに連結される長尺状のアーム本体とを備え、該アーム本体の長手方向先端部に保持されるワイパブレードにより車両のフロントガラスが払拭される車両用のフロントワイパを提供する。このフロントワイパにおける前記アーム本体は、一方向に延びる天壁部と、該天壁部の短手方向の両側部分から前記フロントガラス側に延びる一対の側壁部とを有し、前記フロントワイパの払拭停止状態において、前記一対の側壁部のうちで車両上側に配置される上側壁部の上面に、車両上方に向けて突出する凸形状部が形成されている。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る車両用のフロントワイパによれば、衝突事故発生時、衝突体がアーム本体の上側壁部のエッジ部分よりも先に凸形状部に接触するようになるため、衝突体に対する傷害値を低減することができる。これにより、車両外観の設計要件への制約を増加させることなく、衝突事故発生時に衝突体を高いレベルで保護することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態に係る車両用のフロントワイパの外観を示す斜視図である。
図2図1のフロントワイパとフロントガラスとの位置関係を示す図である。
図3図2における右側のフロントワイパを拡大して車両側方から見た図である。
図4図3におけるA-A線断面図である。
図5図3におけるB-B線断面図である。
図6】上記実施形態において衝突事故発生時に衝突体がフロントワイパに接触した状態を説明するための図である。
図7】上記実施形態に関連する変形例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について添付図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る車両用のフロントワイパの外観を示す斜視図である。また、図2は、図1のフロントワイパが取り付けられた車両における左右のフロントワイパとフロントガラスとの位置関係を示す図である。なお、以下で説明する各図において、矢印Fr方向は、車両前後方向で前方を示し、矢印U方向は、車両上下方向で上方を示し、矢印R方向および矢印L方向は、車室内から車両前方を見たときの右方および左方を示している。
【0012】
図1および図2において、本実施形態のフロントワイパ1は、例えば、アームヘッド11と、アームヘッド11に連結される長尺状のアーム本体12とを備えている。アーム本体12の長手方向先端部(アームヘッド11とは反対側の端部)には、車両3のフロントガラス31を払拭するためのワイパブレード13が保持されている。本実施形態では、フロントガラス31の下端部前方に左右一対のフロントワイパ1が設けられている。右側および左側のフロントワイパ1は基本的に同様な構造を有しているため、以下では、右側のフロントワイパ1について詳細に説明し、左側のフロントワイパ1については説明を省略する。
【0013】
図3は、右側のフロントワイパ1を拡大して車両側方(右方側)から見た図である。
図1および図3に示すように、アームヘッド11は、フロントワイパ1の基端側に配置される部材である。アームヘッド11は、略円柱形の基部11Aと、基部11Aからアーム本体12側に傾斜して延びる腕部11Bとを有している。基部11Aには、軸方向に貫通する略円柱形状のピボット軸穴11Cが形成されている。ピボット軸穴11Cにはピボット軸(図示せず)が取り付けられ、該ピボット軸を介してアームヘッド11と駆動モータ(図示せず)が連係されるようになっている。腕部11Bの先端部分(基部11Aとは反対側の端部分)には、アーム本体12の基端部が回動可能に連結されている。
【0014】
アーム本体12は、例えば、リテーナ121とアームピース122とを備えている。リテーナ121は、一方向に延びる天壁部121Aと、天壁部121Aの短手方向の両側部分からフロントガラス31側に延びる一対の側壁部121B,121Cとを有している。つまり、リテーナ121は、天壁部121Aおよび一対の側壁部121B,121Cからなりフロントガラス31と対向する側が開口した略U字形の横断面を有している。
【0015】
天壁部121Aは、フロントガラス31とは反対側の外表面がフロントワイパ1の意匠面の一部を形成するように構成されている。フロントガラス31の後傾度合が比較的小さく、フロントガラス31が縦方向(図3の矢印U方向)に立った車両デザインの場合、天壁部121Aの外表面は、フロントワイパ1が車両3の所定位置に取り付けられた状態において、概ね車両前方を臨むように配置される(図2および図3)。
【0016】
一対の側壁部121B,121Cは、フロントワイパ1が車両3の所定位置に取り付けられ、かつ、フロントワイパ1が使用されておらずフロントワイパ1によるフロントガラス31の払拭動作が停止している状態(以下、「払拭停止状態」とする)において、概ね車両上下方向に間隔を空けて配置されている(図3)。以下の説明では、払拭停止状態において、一対の側壁部121B,121Cのうちで車両上側に配置されるものを「上側壁部121B」と呼び、車両下側に配置されるものを「下側壁部121C」と呼ぶ。
【0017】
上側壁部121Bおよび下側壁部121Cは、アームヘッド11側の基端部付近において、アームヘッド11の腕部11Bにおける短手方向の両側に配置され、腕部11Bに対して連結軸14を中心に回動可能に連結されている(図3)。なお、リテーナ121における天壁部121Aのアームヘッド11側の端部は、上側壁部121Bおよび下側壁部121Cのアームヘッド11側の各端部に対して、ワイパブレード13側に離れた位置にある(図1)。
【0018】
図4は、アームヘッド11とアーム本体12(リテーナ121)の連結部を横断する線(図3のA-A線)に沿ってフロントワイパ1を切断した断面図である。
図4に示すように、アームヘッド11とリテーナ121の連結部に設けられる連結軸14は、例えば、頭部14Aを有する軸部材を使用して構成されている。連結軸14の軸部14Bは、リテーナ121の上側壁部121Bの軸穴、アームヘッド11の腕部11Bの側壁の間、および、リテーナ121の下側壁部121Cの軸穴にそれぞれ挿通されている。軸部14Bの先端には軸抜け防止部14Cが設けられている。このような連結軸14により、アームヘッド11の腕部11Bに対して、リテーナ121の上側壁部121Bおよび下側壁部121Cが回動可能に軸支されている。
【0019】
連結軸14の頭部14Aは、リテーナ121の上側壁部121Bの上面から車両上方に向けて突出している。本実施形態では、連結軸14の頭部14Aが本発明の「突出部」に相当する。連結軸14の頭部14A(突出部)の突出量A1は、リテーナ121の上側壁部121Bの上面から頭部14Aの頂面までの高さで表される。
【0020】
リテーナ121の上側壁部121Bの上面には、連結軸14の頭部14Aとは別に、車両上方に向けて突出する凸形状部121Dが形成されている(図1および図3)。なお、リテーナ121の下側壁部121Cの下面には、上記凸形状部121Dに相当する形状は形成されていない。
【0021】
図5は、凸形状部121Dを横断する線(図3のB-B線)に沿ってフロントワイパ1を切断した断面図である。
図3および図5に示すように、凸形状部121Dは、例えば、上側壁部121Bのフロントガラス31と対向するエッジ部分121Eに沿って延び、かつ、上側壁部121Bの短手方向の中心に重なる範囲に配置されている。図3および図5に一点鎖線で示す中心線Cは、上側壁部121Bの短手方向の中心を通る直線を表している。本実施形態における凸形状部121Dは、上側壁部121Bを上方から見た上面視で長方形の形状を有し、フロントガラス31側の長辺が上側壁部121Bのエッジ部分121Eに近接するように配置され、天壁部121A側の長辺が中心線Cと天壁部121Aの間に配置されている(図3)。
【0022】
凸形状部121Dの周縁部におけるフロントガラス31側に位置する部分は、上側壁部121Bのエッジ部分121Eに対して、天壁部121A側に僅かな間隔を空けて配置されている(図3および図5)。また、凸形状部121Dの周縁部における上側のコーナー部分は、角を丸くした形状に形成されている(図5)。角の丸みの半径Rは、2.5mm以上とするのが好ましいが、これに限定されない。凸形状部121Dの突出量A2は、上側壁部121Bの上面から凸形状部121Dの上端面までの高さで表される。
【0023】
凸形状部121Dと連結軸14の頭部14A(突出部)とは、上側壁部121Bの長手方向に並んで配置されている(図1および図3)。換言すると、凸形状部121Dは、連結軸14の頭部14Aに対して、リテーナ121の長手方向先端側に間隔を空けて配置されている。凸形状部121Dの突出量A2は、連結軸14の頭部14Aの突出量A1以上となるように設定されている(A1≦A2)。
【0024】
リテーナ121の天壁部121A、上側壁部121Bおよび下側壁部121Cにより囲まれた空間内には、リターンスプリング15が配置されている(図3図5)。リターンスプリング15は、基端部がアームヘッド11に連結され、先端部がリテーナ121に連結されている。リターンスプリング15のバネ力は、アームヘッド11に対してリテーナ121をフロントガラス31側に回動させるように付勢している。
【0025】
リテーナ121の長手方向先端部には、アームピース122が固定されている(図1および図3)。アームピース122は、リテーナ121の先端部から連続して一方向に延びている。アームピース122の先端部には、ワイパブレード13を取り付けるための取付部122Aが設けられている。
【0026】
ワイパブレード13は、アームピース122の取付部122Aに取り付けられることにより、アーム本体12の先端部に保持される。ワイパブレード13は、駆動モータ(図示せず)に連動してアームヘッド11およびアーム本体12が回動することにより、フロントガラス31の車室外側面(被払拭面)を払拭する。
【0027】
次に、本実施形態によるフロントワイパ1の作用について詳しく説明する。
上記のように構成されたフロントワイパ1では、車両3のフロントガラス31が縦方向に立ったデザインになっていることに起因して、アームヘッド11とアーム本体12の連結部が車両3のフードやカウルトップの上方側に露出した状態となる。このような状態のフロントワイパ1を有する車両3が走行中に車両前方の物体と衝突する衝突事故を起こした場合、該物体(衝突体)がフロントワイパ1のアームヘッド11とアーム本体12の連結部付近に車両上方側からぶつかって、その衝突体に重大な傷害を与えてしまう可能性がある。
【0028】
本実施形態では、上記のような衝突事故発生時におけるフロントワイパ1側の傷害軽減構造として、アーム本体12の一部を構成するリテーナ121の上側壁部121Bの上面に凸形状部121Dが形成されている。これにより、本実施形態のフロントワイパ1は、衝突事故発生時にフロントワイパ1の上記連結部付近にぶつかった衝突体の傷害値を低減し、衝突体を高いレベルで保護することを可能にしている。
【0029】
図6は、衝突事故発生時に衝突体Hがフロントワイパ1にぶつかった状態を説明するための図である。なお、図6には、図3のB-B線を延長した直線に沿ってフロントワイパ1およびその周辺に配置された車両構成(フロントガラス51、カウルトップアウタパネル32等)を切断して車両側方(左方側)から見た断面が図示されている。
【0030】
衝突事故発生時、衝突体Hが、払拭停止状態にあるフロントワイパ1におけるリテーナ121の基端部付近とフロントガラス31との間に配置されているカウルトップアウタパネル32に車両上方側からぶつかる可能性がある。このとき、リテーナ121の基端部付近はカウルトップアウタパネル32の上方側に露出した状態にあるため、衝突体Hは、カウルトップアウタパネル32だけでなくリテーナ121の上側壁部121Bにもぶつかる可能性が高まる。
【0031】
このような衝突事故発生時の状況において、上述した従来の車両構造のように車体側だけに衝撃を吸収するための構造が設けられ、フロントワイパ1側には傷害軽減構造(凸形状部121D)が設けられていない場合、衝突体Hは、フロントワイパ1のリテーナ121の上側壁部121Bにおけるフロントガラス側のエッジ部分121Eに接触するようになる。エッジ部分121Eは、通常、比較的鋭利な形状(例えば、角の丸みの半径Rが2.5mmよりも小さな形状など)になっている。このため、衝突体Hが上側壁部121Bの鋭利なエッジ部分121Eに接触すると、衝突体Hに対する傷害値が上昇してしまう。
【0032】
一方、本実施形態のフロントワイパ1には、前述したように傷害軽減構造として、リテーナ121の上側壁部121Bの上面に凸形状部121Dが形成されている。これにより、衝突体Hは、リテーナ121の上側壁部121Bのエッジ部分121Eよりも先に凸形状部121Dに接触するようになる(図6)。衝突体Hと凸形状部121Dの接触箇所は、エッジ部分121Eのような鋭利な形状にはなっていなので、衝突体Hに対する傷害値を低減することができる。特に、本実施形態では、凸形状部121Dの周縁部における上側コーナー部分が角を丸くした形状に形成されているので、衝突体Hが凸形状部121Dの周縁部付近に接触しても、衝突体Hに対する傷害値の上昇を抑制することが可能である。また、上側壁部121Bの上面に凸形状部121Dが形成されていることにより、リテーナ121の剛性を高めることもできる。
【0033】
上記のようなフロントワイパ1側の傷害軽減構造としての凸形状部121Dは、車両3のカウルトップ周辺のデザインや、フロントワイパ1とフロントガラス31の位置関係などに制約を与えるものではない。したがって、本実施形態のフロントワイパ1によれば、車両外観の設計要件への制約を増加させることなく、衝突事故発生時に衝突体Hを高いレベルで保護することができる。
【0034】
また、本実施形態によるフロントワイパ1では、凸形状部121Dが、リテーナ121の上側壁部121Bにおけるフロントガラス31と対向するエッジ部分121Eに沿って延び、かつ、上側壁部121Bの短手方向の中心に重なる範囲に配置されている。これにより、衝突事故発生時、衝突体Hがエッジ部分121Eよりも先に凸形状部121Dに確実に接触するようになるので、衝突体Hに対する傷害値を効果的に低減することができるとともに、広範囲に配置された凸形状部121Dによってリテーナ121の剛性を更に高めることができる。
【0035】
さらに、本実施形態によるフロントワイパ1では、凸形状部121Dと連結軸14の頭部14A(突出部)とが、リテーナ121の上側壁部121Bの長手方向に並んで配置されている。このように配置された凸形状部121Dによって、フロントワイパ1が払拭動作する際に負荷がかかり易い連結軸14周辺の剛性を向上させることができる。
【0036】
加えて、本実施形態によるフロントワイパ1では、凸形状部121Dの突出量A2が連結軸14の頭部14A(突出部)の突出量A1以上となるように設定されている(A1≦A2)。これにより、衝突事故発生時、衝突体Hが連結軸14の頭部14Aよりも先に凸形状部121Dに接触し易くなるので、衝突体Hに対する傷害値をより効果的に低減することができる。
【0037】
以上、本発明の実施形態について述べたが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づいて各種の変形および変更が可能である。
【0038】
例えば、上述した実施形態では、リテーナ121の上側壁部121Bの下面が凸形状部121Dに対応する部分も含めて平坦な形状を有している一例を示したが(図5)、図7に例示するように、上側壁部121Bの下面における凸形状部121Dに対応する部分が、車両上方に凹んだ形状を有していてもよい。図7の上段に示す凸形状部121D’の横断面は円弧状に形成され、図7の下段に示す凸形状部121D”の横断面は略U字形に形成されている。このような凸形状部121D’,121D”は、平板状の上側壁部121Bのプレス加工等によって簡易に形成することが可能である。
【0039】
また、上述した実施形態では、アームヘッド11およびアーム本体12が、頭部14Aを有する連結軸14を使用して回動可能に連結される一例を示したが、アームヘッド11およびアーム本体12の連結構造は上記一例に限定されず、周知の連結構造を備えたフロントワイパに対して本発明は有効である。
【符号の説明】
【0040】
1…フロントワイパ
11…アームヘッド
11A…基部
11B…腕部
11C…ピボット軸穴
12…アーム本体
121…リテーナ
121A…天壁部
121B…側壁部(上側壁部)
121C…側壁部(下側壁部)
121D,121D’,121D”…凸形状部
121E…エッジ部分
122…アームピース
122A…取付部
13…ワイパブレード
14…連結軸
14A…頭部(突出部)
15…リターンスプリング
3…車両
31…フロントガラス
32…カウルトップアウタパネル
A1…頭部(突出部)の突出量
A2…凸形状部の突出量
C…中心線
H…衝突体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7