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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024059003
(43)【公開日】2024-04-30
(54)【発明の名称】車両前部構造
(51)【国際特許分類】
   B62D 25/08 20060101AFI20240422BHJP
   B60J 1/02 20060101ALN20240422BHJP
【FI】
B62D25/08 H
B60J1/02 L
B60J1/02 101
B60J1/02 101N
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022166465
(22)【出願日】2022-10-17
(71)【出願人】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100217076
【弁理士】
【氏名又は名称】宅間 邦俊
(74)【代理人】
【識別番号】100169018
【弁理士】
【氏名又は名称】網屋 美湖
(72)【発明者】
【氏名】辻 厚樹
【テーマコード(参考)】
3D203
【Fターム(参考)】
3D203AA02
3D203BB38
3D203CA23
3D203CA37
3D203DA19
3D203DA37
3D203DA68
(57)【要約】
【課題】衝突事故発生時、衝突体に対する傷害値を低減して衝突体を高いレベルで保護できる車両前部構造を提供する。
【解決手段】車両前部1は、フード2およびフロントガラス4の間に配置されるカウルトップアウタパネル8と、ワイパ装置7が固定されるカウルアッパパネル6と、それらの間に配置され、フロントガラス4の下端部に接合されるカウルトップパネル12とを備える。カウルトップパネル12は、フロントガラス4の下端部から車両前方に延び、カウルトップアウタパネル8およびカウルアッパパネル6の間を通って、カウルトップアウタパネル8の後方部8Cにおける前側部分に接合されており、車両前後方向の中間に位置する部分に、車幅方向に延在する第1変形誘発部12Cを含む。第1変形誘発部12Cは、カウルトップアウタパネル8の後方部8Cから離れる方向に凹んだ凹形状の横断面を有している。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両前部に設けられたフードおよびフロントガラスの間に配置され、車幅方向に延びるカウルトップアウタパネルと、
前記カウルトップアウタパネルの車両下方に間隔を空けて配置され、前記フロントガラスを払拭するワイパ装置が固定されるカウルアッパパネルと、
前記カウルトップアウタパネルと前記カウルアッパパネルの間に配置され、前記フロントガラスの下端部に接合されるカウルトップパネルとを備え、
前記ワイパ装置のアームヘッドおよびアーム本体を連結する連結部が、前記カウルトップアウタパネルよりも車両上方に配置されている車両前部構造であって、
前記カウルトップアウタパネルは、前記ワイパ装置の前記連結部よりも車両前方に位置する前方部と、前記ワイパ装置の前記連結部よりも車両後方に位置する後方部とを有し、
前記カウルトップパネルは、前記フロントガラスの下端部から車両前方に延び、前記カウルトップアウタパネルおよび前記カウルアッパパネルの間を通って、前記カウルトップアウタパネルの前記後方部における前側部分に接合されており、車両前後方向の中間に位置する部分に、車幅方向に延在する第1変形誘発部を含み、
前記第1変形誘発部は、前記カウルトップアウタパネルの前記後方部から離れる方向に凹んだ凹形状の横断面を有していることを特徴とする車両前部構造。
【請求項2】
前記カウルアッパパネルは、前記カウルトップパネルと重ねて前記フロントガラスの下端部に接合されており、前記フロントガラスの下端部から車両下方に延びる部分に、車幅方向に延在する第2変形誘発部を含み、
前記第2変形誘発部は、車両後方側に凸となる凸形状の横断面を有していることを特徴とする請求項1に記載の車両前部構造。
【請求項3】
前記ワイパ装置の前記アーム本体は、一方向に延びる天壁部と、該天壁部の短手方向の両側部分から前記フロントガラス側に延びる一対の側壁部とを有し、前記アームヘッドに対して連結軸を中心に回動可能に連結され、前記ワイパ装置の払拭停止状態において、前記一対の側壁部のうちで車両上側に配置される上側壁部の上面に、車両上方に向けて突出する凸形状部が形成されるとともに、前記上側壁部の上面における前記連結軸に対応する位置には、車両上方に向けて突出する突出部が設けられており、
前記凸形状部は、前記上側壁部の前記フロントガラスと対向するエッジ部分に沿って延び、かつ、前記上側壁部の短手方向の中心より前記フロントガラス側に配置され、
前記凸形状部の少なくとも一部は、車両正面視で、前記突出部と重なる位置に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の車両前部構造。
【請求項4】
前記カウルトップアウタパネルは、前記後方部の後端部分が弾性変形可能なシール材を介して前記フロントガラスの車室外側面に当接しており、前記後方部には、前記後端部分から車両下方に延びるフランジ部分が設けられ、
前記シール材は、前記シール材の上面に設けられ車両下方に凹んだ凹部と、該凹部の車両下方に配置され、前記フロントガラス側に突き出た突起部とを有し、前記凹部の内側に前記フランジ部分が差し込まれることで前記カウルトップアウタパネルの前記後方部を固定し、かつ、前記シール材の後端部および前記突起部が前記フロントガラスの車室外側面に当接するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の車両前部構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両前部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の車両前部構造として、例えば特許文献1には、車両のフロントカウルとフードとの間に配置され、アッパールーバーとロアルーバーとを備えたカウルルーバーが開示されている。このカウルルーバーは、係合切欠きを有する第一係合部材と係合突片を有する第二係合部材との係合によって、アッパールーバーとロアルーバーとを離隔させた状態で保持する係合構造を備えている。このような係合構造により、物体がカウルルーバーに衝突したときに、該物体に与える傷害値を小さくできるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-101818号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記のような従来の車両前部構造において、カウルルーバー(以下、「カウルトップ」と呼ぶ)の車両後方側に配置されたフロントガラスを払拭するためのワイパ装置が、カウルトップにより開口部が覆われたフロントカウル内に設置されることがある。このとき、車両前部構造として、フロントガラスの後傾度合が比較的小さく、フロントガラスが縦方向に立ったデザインが採用されている場合、構造上、ワイパ装置のアームヘッドとアーム本体の連結部がフード(ボンネット)およびカウルトップの上方側に露出した状態になりやすい。このような状態のワイパ装置を有する車両が走行中に車両前方の物体と衝突した場合、該物体(衝突体)がワイパ装置の上記連結部付近にぶつかる可能性がある。
【0005】
ワイパ装置のアーム本体におけるアームヘッドとの連結部付近には、フロントガラスと対向するエッジ部分や連結軸に対応した突出部が存在しており、これらは比較的鋭利な形状を有している。このため、衝突事故発生時に衝突体がアーム本体のエッジ部分または突出部に接触すると、該衝突体に対する傷害値が上昇しまう可能性がある。
【0006】
上記のようなフロントガラスが縦方向に立ったデザインの車両において、衝突体に対する傷害値を低減して衝突体を高いレベルで保護するためには、衝突体からワイパ装置の上記連結部付近に入力される衝撃を車体側で吸収可能な構造を実現することが重要である。また、車体側での衝撃吸収だけでなくワイパ装置側にも傷害軽減構造を設けることが望まれる。前述した従来の車両前部構造は、衝突事故発生時、ワイパ装置の上記連結部がフードおよびカウルトップの上方側に露出した状態にあることに起因して生じ得る衝撃の吸収や傷害の軽減について考慮されておらず、改善の余地があった。
【0007】
本発明は上記の点に着目してなされたもので、衝突事故発生時、衝突体に対する傷害値を低減して衝突体を高いレベルで保護できる車両前部構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するため本発明の一態様は、車両前部に設けられたフードおよびフロントガラスの間に配置され、車幅方向に延びるカウルトップアウタパネルと、前記カウルトップアウタパネルの車両下方に間隔を空けて配置され、前記フロントガラスを払拭するワイパ装置が固定されるカウルアッパパネルと、前記カウルトップアウタパネルと前記カウルアッパパネルの間に配置され、前記フロントガラスの下端部に接合されるカウルトップパネルとを備え、前記ワイパ装置のアームヘッドおよびアーム本体を連結する連結部が、前記カウルトップアウタパネルよりも車両上方に配置されている車両前部構造を提供する。この車両前部構造において、前記カウルトップアウタパネルは、前記ワイパ装置の前記連結部よりも車両前方に位置する前方部と、前記ワイパ装置の前記連結部よりも車両後方に位置する後方部とを有している。前記カウルトップパネルは、前記フロントガラスの下端部から車両前方に延び、前記カウルトップアウタパネルおよび前記カウルアッパパネルの間を通って、前記カウルトップアウタパネルの前記後方部における前側部分に接合されており、車両前後方向の中間に位置する部分に、車幅方向に延在する第1変形誘発部を含む。前記第1変形誘発部は、前記カウルトップアウタパネルの前記後方部から離れる方向に凹んだ凹形状の横断面を有している。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る車両前部構造によれば、衝突事故発生時、カウルトップアウタパネルの後方部が車両下方へ変形すると同時にカウルトップパネルが第1変形誘発部を起点にして変形することによって、衝突体に対する傷害値を低減して衝突体を高いレベルで保護することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態に係る構造が適用された車両前部を車両上方斜め前側から見た斜視図である。
図2図1のA-A線に沿って車両前部を切断した断面斜視図である。
図3図2におけるフロントカウルの上部後側付近を拡大した断面図である。
図4図2におけるカウルトップアウタパネルの後方部およびシール材の付近を拡大した断面斜視図である。
図5】上記実施形態におけるフロントワイパの外観を示す斜視図である。
図6】上記実施形態における右側のフロントワイパを拡大して車両側方から見た図である。
図7図6におけるB-B線断面図である。
図8図6におけるC-C線断面図である。
図9図6におけるアームヘッドとアーム本体の連結部付近を拡大して車両上方から見た上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について添付図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る構造が適用された車両前部を車両上方斜め前側から見た斜視図である。また、図2は、図1のA-A線に沿って車両前部を切断した断面斜視図である。さらに、図3は、図2におけるフロントカウルの上部後側付近を拡大した断面図である。なお、以下で説明する各図において、矢印Fr方向は、車両前後方向で前方を示し、矢印U方向は、車両上下方向で上方を示し、矢印R方向および矢印L方向は、車室内から車両前方を見たときの右方および左方を示している。
【0012】
図1図3に示すように、本実施形態に係る構造が適用される車両前部1には、車両上下方向に回動可能なフード(ボンネット)2により開閉されるパワーユニットルームPが設けられている。このパワーユニットルームPの車両後側には、ダッシュパネル3が設けられている。ダッシュパネル3は、パワーユニットルームPの車幅方向の全幅にわたって設けられており、高い剛性を有している。
【0013】
また、本実施形態の車両前部1には、フード2の後端部とフロントガラス4の下端部との前後間に位置し、車幅方向に延びるフロントカウル5が設けられている(図2)。このフロントカウル5は、車両前後方向で互いに向き合うとともに車幅方向にそれぞれ延びる上記ダッシュパネル3およびカウルアッパパネル6を含んでいる。フロントカウル5は、ダッシュパネル3の上下方向中間部とカウルアッパパネル6の前側下端部6Aとが接合されることにより、車両上方側に開口した断面略U字形状を有している。フロントカウル5の内部には、フロントガラス4の車室外側面を払拭するワイパ装置7の駆動ユニット7Aなどの各種車載部品が配置されている。フロントカウル5の開口部には、カウルトップアウタパネル8が設けられている。
【0014】
ワイパ装置7の駆動ユニット7Aは、モータ部(図示せず)により、フロントガラス4の下端部前方で車幅方向に並設される左右一対のフロントワイパ7B(図1)を作動させるための駆動力を発生する。該駆動力は、モータ部に接続されるリンク部7Cおよびピボット軸7D(図2)を介して各フロントワイパ7Bに伝達される。駆動ユニット7Aは、ワイパブラケット7Eを介してカウルアッパパネル6に固定されている。
【0015】
各フロントワイパ7Bは、例えば、アームヘッド71と、アームヘッド71に連結される長尺状のアーム本体72とを備えている(図1)。アーム本体72の長手方向先端部(アームヘッド71とは反対側の端部)には、フロントガラス4を払拭するためのワイパブレード73が保持されている。アームヘッド71は、ピボット軸7Dに取り付けられることにより、ピボット軸7Dを介して駆動ユニット7Aとフロントワイパ7Bが連係される。なお、フロントワイパ7Bの詳細については後述する。
【0016】
カウルトップアウタパネル8は、金属板または樹脂材を用いて形成されており、フード2の後端部とフロントガラス4の下端部との前後間に配置され、車幅方向に延びている(図1)。つまり、カウルトップアウタパネル8は、車幅方向に沿ってフロントカウル5の開口部を覆うように設けられている。カウルトップアウタパネル8における車両前後方向の中間部には、各ピボット軸7Dにそれぞれ対応する位置付近に、車両上下方向に貫通するワイパ取付口8Aが形成されている(図1および図2)。各ワイパ取付口8Aには、各フロントワイパ7Bのアームヘッド71がカウルトップアウタパネル8の車両上方側から挿通され、カウルトップアウタパネル8の車両下方側に配置されている各ピボット軸7Dに各々のアームヘッド71が取り付けられる。各ワイパ取付口8Aと各アームヘッド71との間の隙間には、カウルトップアウタキャップ9がそれぞれ設けられている。
【0017】
また、カウルトップアウタパネル8は、図1図3に示すように、各フロントワイパ7Bにおけるアームヘッド71およびアーム本体72の連結部よりも車両前方に位置する前方部8Bと、該連結部よりも車両後方に位置する後方部8Cとを有している。カウルトップアウタパネル8の前方部8Bにおける前端部分には、車両下方に延びる前側フランジ部分8Dが設けられている(図2)。前側フランジ部分8Dは、カウルトップアウタパネル8の下方に配置されているカウルトップカバー10に接合されている。カウルトップカバー10の前側下部は、ダッシュパネル3の上端部に固定されている。カウルトップアウタパネル8の後方部8Cにおける後端部分は、弾性変形可能なシール材11を介してフロントガラス4の車室外側面における下端側部分に当接している(図2および図3)。
【0018】
図4は、図2におけるカウルトップアウタパネル8の後方部8Cおよびシール材11の付近を拡大した断面斜視図である。
図4に示すように、カウルトップアウタパネル8の後方部8Cにおける後端部分には、車両下方に延びる後側フランジ部分8Eが設けられている。本実施形態では、後側フランジ部分8Eが本発明の「フランジ部分」に相当する。シール材11は、フロントガラス4の全幅にわたって車幅方向に延びている。シール材11の上面には、車両下方に凹んだ凹部11Aが形成されている。シール材11の下面には、凹部11Aの下方後側に対応する位置に、フロントガラス4側に突き出た突起部11Bが設けられている。カウルトップアウタパネル8の後側フランジ部分8Eは、シール材11の凹部11Aの内側に差し込まれる。これにより、シール材11は、カウルトップアウタパネル8の後方部8Cを所定位置に固定し、かつ、シール材11の後端部11Cおよび突起部11Bがフロントガラス4の車室外側面における下端側部分に当接するように構成されている。
【0019】
カウルトップアウタパネル8の後方部8Cは、後側フランジ部分8Eの上端部分から車両前方に向かうに従って車両下側に緩やかに傾斜して延びた後、車両下側に屈曲して車両下方に延び、更に車両前側に屈曲して概ね水平方向に延びている(図2および図3)。このような複数個所で屈曲した断面形状を有するカウルトップアウタパネル8の後方部8Cの車両下方には、カウルトップパネル12が配置されている。
【0020】
カウルトップパネル12は、車幅方向に延在し、車両前後方向の後部12Aがシーラー13を用いてフロントガラス4の下端部の車室内側面に接合されている。カウルトップパネル12は、フロントガラス4の下端部から車両前方に延び、カウルトップアウタパネル8およびカウルアッパパネル6の間を通って、その先端部(車両前後方向の前端部)12Bがカウルトップアウタパネル8の後方部8Cにおける前側部分に接合されている(図3)。つまり、カウルトップパネル12は、カウルトップアウタパネル8の後方部8Cの前側部分とフロントガラス4の下端部との間を繋ぐように固定されている。
【0021】
カウルトップパネル12における車両前後方向の中間に位置する部分には、車幅方向に延在する第1変形誘発部12Cが設けられている(図2および図3)。第1変形誘発部12Cは、カウルトップアウタパネル8の後方部8Cから離れる方向に凹んだ凹形状の横断面を有している。
【0022】
具体的に、本実施形態におけるカウルトップパネル12は、フロントガラス4の下端部との接合箇所から、車両前方に向かうに従って車両下側に傾斜して延びた後、カウルトップアウタパネル8の後方部8Cにおける車両前後方向の中心部付近に対向する位置で車両上側に屈曲している。該屈曲箇所から先の部分は、車両前方に向かうに従って車両上側に傾斜して延びた後に緩やかに湾曲して概ね水平方向に延びている(図3)。このような断面略V字状の形状を有するカウルトップパネル12では、上記屈曲箇所の付近が第1変形誘発部12Cとなっている。なお、カウルトップアウタパネル8の後方部8Cとカウルトップパネル12との間に形成される空間内には、カウルトップカバー10の後部が配置されている。
【0023】
前述したカウルアッパパネル6の後側上端部6Bは、カウルトップパネル12の後部12Aと重ねてフロントガラス4の下端部に接合されている(図2および図3)。つまり、フロントガラス4の下端部における車室内側面には、カウルアッパパネル6の後側上端部6Bおよびカウルトップパネル12の後部12Aが2枚重ねでシーラー13を使用して固定されている。カウルアッパパネル6におけるフロントガラス4の下端部から車両下方に延びる部分には、車幅方向に延在する第2変形誘発部6Cが設けられている。第2変形誘発部6Cは、車両後方側に凸となる凸形状の横断面を有している。
【0024】
具体的に、本実施形態におけるカウルアッパパネル6は、カウルトップパネル12の後部12A(フロントガラス4の下端部)との接合箇所から、車両下方に向かうに従って車両後側に傾斜して延びた後、車両下側に屈曲して概ね垂直方向に延び、更に車両前側に屈曲して車両下方に向かうに従って車両前側に傾斜して延びている(図2および図3)。さらに、カウルアッパパネル6は、車両下方に向かうに従って車両前側に傾斜して延びた後、車両下側に屈曲して概ね垂直方向に延び、更に車両前側に湾曲して概ね水平方向に延びている(図2)。このような断面形状を有するカウルアッパパネル6では、上側の傾斜箇所と下側の傾斜箇所との間に位置する部分が第2変形誘発部6Cとなっている。本実施形態では、カウルアッパパネル6における車室内側を臨む面に、ペダルを取り付けるためのペダルブラケット14が接合されている。このようなペダルブラケット14が設けられている場合、第2変形誘発部6は、カウルアッパパネル6とカウルトップパネル12の後部12A(フロントガラス4の下端部)との接合箇所よりも車両下方、かつ、カウルアッパパネル6とペダルブラケット14との接合箇所よりも車両上方の位置に形成されるようにするのがよい。
【0025】
ここで、前述したフロントワイパ7Bの詳細について説明する。
図5は、フロントワイパ7Bの外観を示す斜視図である。また、図6は、右側のフロントワイパ7Bを拡大して車両側方(右方側)から見た図である。なお、フロントガラス4の下端部前方に並設される左右のフロントワイパ7Bは基本的に同様な構造を有しているため、以下では、右側のフロントワイパ7Bについて詳細に説明し、左側のフロントワイパ7Bについては説明を省略する。
【0026】
前述したようにフロントワイパ7Bは、アームヘッド71と、アームヘッド71に連結される長尺状のアーム本体72とを備え、アーム本体72の長手方向先端部にはワイパブレード73が保持されている。アームヘッド71は、図5および図6に示すように、フロントワイパ7Bの基端側に配置される部材である。アームヘッド71は、略円柱形の基部71Aと、基部71Aからアーム本体72側に傾斜して延びる腕部71Bとを有している。基部71Aには、軸方向に貫通する略円柱形状のピボット軸穴71Cが形成されている。ピボット軸穴71Cには、駆動ユニット7Aのピボット軸7D(図1および図2)が取り付けられる。腕部71Bの先端部分(基部71Aとは反対側の端部分)には、アーム本体72の基端部が回動可能に連結されている。
【0027】
アーム本体72は、例えば、リテーナ721とアームピース722とを備えている(図5および図6)。リテーナ721は、一方向に延びる天壁部721Aと、天壁部721Aの短手方向の両側部分からフロントガラス4側に延びる一対の側壁部721B,721Cとを有している(図6)。つまり、リテーナ721は、天壁部721Aおよび一対の側壁部721B,721Cからなりフロントガラス4と対向する側が開口した略U字形の横断面を有している。
【0028】
天壁部721Aは、フロントガラス4とは反対側の外表面がフロントワイパ7Bの意匠面の一部を形成するように構成されている。フロントガラス4の後傾度合が比較的小さく、フロントガラス4が縦方向(図6の矢印U方向)に立った車両デザインの場合、天壁部721Aの外表面は、フロントワイパ7Bが車両前部1の所定位置に取り付けられた状態において、概ね車両前方を臨むように配置される(図6)。
【0029】
一対の側壁部721B,721Cは、フロントワイパ7Bが車両前部1の所定位置に取り付けられ、かつ、フロントワイパ7Bが使用されておらずフロントワイパ7Bによるフロントガラス4の払拭動作が停止している状態(以下、「払拭停止状態」とする)において、概ね車両上下方向に間隔を空けて配置されている(図6)。以下の説明では、払拭停止状態において、一対の側壁部721B,721Cのうちで車両上側に配置されるものを「上側壁部721B」と呼び、車両下側に配置されるものを「下側壁部721C」と呼ぶ。
【0030】
上側壁部721Bおよび下側壁部721Cは、アームヘッド71側の基端部付近において、アームヘッド71の腕部71Bにおける短手方向の両側に配置され、腕部71Bに対して連結軸74を中心に回動可能に連結されている(図6)。なお、リテーナ721における天壁部721Aのアームヘッド71側の端部は、上側壁部721Bおよび下側壁部721Cのアームヘッド71側の各端部に対して、ワイパブレード73側に離れた位置にある(図5)。
【0031】
図7は、アームヘッド71とアーム本体72(リテーナ721)の連結部を横断する線(図6のB-B線)に沿ってフロントワイパ7Bを切断した断面図である。
図7に示すように、アームヘッド71とリテーナ721の連結部に設けられる連結軸74は、例えば、頭部74Aを有する軸部材を使用して構成されている。連結軸74の軸部74Bは、リテーナ721の上側壁部721Bの軸穴、アームヘッド71の腕部71Bの側壁の間、および、リテーナ721の下側壁部721Cの軸穴にそれぞれ挿通されている。軸部74Bの先端には軸抜け防止部74Cが設けられている。このような連結軸74により、アームヘッド71の腕部71Bに対して、リテーナ721の上側壁部721Bおよび下側壁部721Cが回動可能に軸支されている。
【0032】
連結軸74の頭部74Aは、リテーナ721の上側壁部721Bの上面から車両上方に向けて突出している。本実施形態では、連結軸74の頭部74Aが本発明の「突出部」に相当する。連結軸74の頭部74A(突出部)の突出量A1は、リテーナ721の上側壁部721Bの上面から頭部74Aの頂面までの高さで表される。
【0033】
リテーナ721の上側壁部721Bの上面には、連結軸74の頭部74Aとは別に、車両上方に向けて突出する凸形状部721Dが形成されている(図5および図6)。なお、リテーナ721の下側壁部721Cの下面には、上記凸形状部721Dに相当する形状は形成されていない。上側壁部721Bの上面に形成される凸形状部721Dは、フロントガラス4の後傾度合が比較的小さく、フロントガラス4が縦方向に立った車両デザインの場合、フロントガラス4の車室外側面の下端よりも高い位置に配置されることになる(図3の破線を参照)。また、この場合において、凸形状部721Dは、フロントガラス4の車室外側面の下端に対する車両前後方向の距離Lが約80mmとなる範囲に設けられている。このような位置に凸形状部721Dが設けられることにより、後で詳しく説明するように、衝突事故発生時における衝突体に対する傷害値を低減できるようになる。
【0034】
図8は、凸形状部721Dを横断する線(図6のC-C線)に沿ってフロントワイパ7Bを切断した断面図である。
凸形状部721Dは、図5図8に示すように、上側壁部721Bのフロントガラス4と対向するエッジ部分721Eに沿って延び、かつ、上側壁部721Bの短手方向の中心よりフロントガラス4側に配置されている。図6図8に一点鎖線で示す中心線CLは、上側壁部721Bの短手方向の中心を通る直線を表している。
【0035】
本実施形態では、上側壁部721Bのフロントガラス4と対向するエッジ部分721Eがアームヘッド71側の基端部付近において比較的鋭利な形状(例えば、角の丸みの半径Rが2.5mmよりも小さな形状など)になっているため(図6図8)、上側壁部721Bの上面におけるアームヘッド71側の基端部付近に凸形状部721Dが形成されている。なお、基端部付近よりもワイパブレード73側に位置するエッジ部分721Eについては、端部を延長して内側(下側壁部721C側)に曲げられており、後述する衝突体Hが鋭利なエッジと接触し難い形状になっているため(図5および図6)、凸形状部721Dは形成されていない。
【0036】
図9は、図6におけるアームヘッドとアーム本体の連結部付近を拡大して車両上方から見た上面図である。
図9に示すように、本実施形態における凸形状部721Dは、上面視で、フロントガラス4と対向するエッジ部分721Eに沿って延びる長円形の形状を有している。ただし、凸形状部721Dに形状は長円形に限定されない。凸形状部721Dの周縁におけるフロントガラス4側に位置する部分は、上側壁部721Bのエッジ部分721Eに近接するように配置されている。また、凸形状部721Dの周縁における天壁部721A側に位置する部分は、上記中心線CLよりもフロントガラス4側に配置されている。さらに、上側壁部721Bを車両前方から見た正面視で、凸形状部721Dの少なくとも一部は、連結軸74の頭部74A(突出部)と重なる位置に配置されている(図9に示す破線を参照)。
【0037】
上記のように配置された凸形状部721Dの横断面は、車両上方に向けて突出した円弧状の形状を有している(図7および図8)。凸形状部721Dの突出量A2は、上側壁部721Bの上面から凸形状部721Dの上端までの高さで表される(図8)。凸形状部721Dの突出量A2は、連結軸74の頭部74Aの突出量A1以上となるように設定されている(A1≦A2)。なお、凸形状部721Dと連結軸74の頭部74Aとが正面視で重なっている箇所(図7)では、凸形状部721Dの長手方向側部に位置する角が丸められており、凸形状部721Dの高さが徐々に低くなる部分に該当しているため、連結軸74の頭部74Aよりも凸形状部721Dが低くなっている。
【0038】
リテーナ721の天壁部721A、上側壁部721Bおよび下側壁部721Cにより囲まれた空間内には、リターンスプリング75が配置されている(図6図8)。リターンスプリング75は、基端部がアームヘッド71に連結され、先端部がリテーナ721に連結されている。リターンスプリング75のバネ力は、アームヘッド71に対してリテーナ721をフロントガラス4側に回動させるように付勢している。
【0039】
リテーナ721の長手方向先端部には、アームピース722が固定されている(図5および図6)。アームピース722は、リテーナ721の先端部から連続して一方向に延びている。アームピース722の先端部には、ワイパブレード73を取り付けるための取付部722Aが設けられている。
【0040】
ワイパブレード73は、アームピース722の取付部722Aに取り付けられることにより、アーム本体72の先端部に保持される。ワイパブレード73は、駆動ユニット7Aに連動してアームヘッド71およびアーム本体72が回動することにより、フロントガラス4の車室外側面(被払拭面)を払拭する。
【0041】
次に、本実施形態による車両前部構造の作用について詳しく説明する。
上記のような構造の車両前部1では、フロントガラス4が縦方向に立ったデザインになっていることに起因して、ワイパ装置7の左右のフロントワイパ7Bにおけるアームヘッド71とアーム本体72の連結部が、フード2やカウルトップアウタパネル8の上方側に露出した状態となる。このような状態のフロントワイパ7Bを有する車両が走行中に車両前方の物体と衝突する衝突事故を起こした場合、該物体(衝突体)がフロントワイパ7Bの上記連結部付近に車両上方側からぶつかって、その衝突体に重大な傷害を与えてしまう可能性がある。図1図4に示す符号Hは、フロントワイパ7Bの上記連結部付近に接触した衝突体を模式的に表している。
【0042】
そこで、本実施形態では、フロントワイパ7Bの上記連結部付近に入力される衝撃を車体側で吸収するための構造として、カウルトップパネル12に第1変形誘発部12Cが形成されているとともに、カウルアッパパネル6に第2変形誘発部6Cが形成されている。また、衝突体Hに与える傷害をフロントワイパ7B側で軽減するための構造として、リテーナ721の上側壁部721Bの上面に凸形状部721Dが形成されている。これらの構造により、本実施形態による車両前部1は、衝突事故発生時の衝突体Hに対する傷害値を低減して衝突体Hを高いレベルで保護することを可能にしている。以下、衝突事故発生時に衝突体Hがフロントワイパ7Bにぶつかった状態について、図3の拡大断面図を参照しながら具体的に説明する。
【0043】
衝突事故発生時、衝突体Hが、払拭停止状態にあるフロントワイパ7Bにおけるリテーナ721の基端部付近とフロントガラス4との間に配置されているカウルトップアウタパネル8の後方部8Cに車両上方側からぶつかる可能性がある。このとき、リテーナ721の基端部付近はカウルトップアウタパネル8の上方側に露出した状態にあるため、衝突体Hは、カウルトップアウタパネル8の後方部8Cだけでなくリテーナ721の上側壁部721Bにもぶつかる可能性が高まる。
【0044】
このような衝突事故発生時の状況において、上述した従来技術のようなカウルルーバーの係合構造では、本実施形態におけるカウルトップアウタパネル8に相当するカウルルーバーに直接入力される衝撃を吸収可能ではあるものの、カウルトップアウタパネル8の上方側に露出したフロントワイパ7Bのリテーナ721に入力される衝撃を吸収することは困難である。また、従来技術では、本実施形態における凸形状部721Dのようなフロントワイパ側の傷害軽減構造も設けられていない。このため、衝突体Hは、フロントワイパ7Bのリテーナ721の上側壁部721Bにおけるフロントガラス4側のエッジ部分721Eに接触するようになり、基端部付近の比較的鋭利な形状を有するエッジ部分721Eに衝突体Hが接触した場合、衝突体Hに対する傷害値が上昇してしまう。
【0045】
一方、本実施形態による車両前部1の構造では、前述したようにカウルトップパネル12に第1変形誘発部12Cが形成されているとともに、カウルアッパパネル6に第2変形誘発部6Cが形成されている。衝突事故発生時、図3の白抜き矢印に示すように衝突体Hがカウルトップアウタパネル8の後方部8Cに車両上方側からぶつかると、該後方部8Cの車両下方に確保された空間を利用して、カウルトップアウタパネル8の後方部8Cが車両下方へ変形する。
【0046】
カウルトップアウタパネル8の後方部8Cの前側部分には、カウルトップパネル12の前端部12Bが接合されており、カウルトップアウタパネル8の後方部8Cの後端部分には、シール材11、フロントガラス4およびシーラー13を介してカウルトップパネル12の後部12Aが接合されている。このため、上記カウルトップアウタパネル8の後方部8Cの車両下方への変形と同時に、図3の白抜き矢印および2点鎖線に示すように、カウルトップパネル12が第1変形誘発部12Cを起点にして、その前後部分が互いに近づくように変形する。つまり、衝突事故発生時、カウルトップアウタパネル8の後方部8Cおよびカウルトップパネル12は、衝突体Hを包むように変形するようになる。これにより、カウルトップアウタパネル8の後方部8Cに入力される衝撃を効果的に吸収することができる。
【0047】
また、本実施形態による車両前部1の構造では、フロントワイパ7Bのリテーナ721における上側壁部721Bの上面に凸形状部721Dが形成されている。これにより、衝突体Hは、リテーナ721の上側壁部721Bの比較的鋭利なエッジ部分721Eよりも先に凸形状部721Dに接触するようになるので(図3)、衝突体Hに対する傷害値を低減することができる。
【0048】
このとき、フロントワイパ7Bのリテーナ721に入力される衝撃は、アームヘッド71およびピボット軸7D等を経由してワイパ装置7の駆動ユニット7Aに伝わる。駆動ユニット7Aは、ワイパブラケット7Eを介してカウルアッパパネル6に固定されており、さらに、カウルアッパパネル6の後側上端部6Bは、カウルトップパネル12の後部12Aと重ねてフロントガラス4の下端部に接合されている。フロントワイパ7Bのリテーナ721に入力された衝撃が上記各部を経由してカウルトップパネル12まで伝わると、前述したカウルトップパネル12の第1変形誘発部12Cを起点にした変形によって当該衝撃も吸収することが可能になる。したがって、本実施形態による車両前部1によれば、衝突事故発生時、衝突体Hに対する傷害値を低減して衝突体Hを高いレベルで保護することができる。
【0049】
また、本実施形態による車両前部1の構造では、カウルトップパネル12の第1変形誘発部12Cに加えて、カウルアッパパネル6に第2変形誘発部6Cが形成されている。前述したカウルトップアウタパネル8の後方部8Cに入力される衝撃や、フロントワイパ7Bのリテーナ721に入力される衝撃が各部を経由してカウルアッパパネル6に伝わると、カウルアッパパネル6におけるフロントガラス4の下端部から車両下方に延びる部分に対して、車両上下方向の力が作用する。このような上下方向の力に対して、カウルアッパパネル6が第2変形誘発部6Cを起点にして変形する(潰れる)ことによって、当該衝撃をより効果的に吸収することが可能になる。
【0050】
さらに、第2変形誘発部6Cが車両後方側に凸となる凸形状の横断面を有しているので、衝突事故発生時、第2変形誘発部6Cを起点にして変形したカウルアッパパネル6が、第1変形誘発部12Cを起点に変形したカウルトップパネル12と接触するのを回避することができる。これにより、第2変形誘発部6Cによるカウルアッパパネル6の変形効果を十分に発揮することが可能になる。よって、衝突体Hに対する傷害値を更に低減して衝突体Hをより高いレベルで保護することができる。
【0051】
また、本実施形態による車両前部1の構造では、リテーナ721の上側壁部721Bの上面に形成される凸形状部721Dが、上側壁部721Bの鋭利なエッジ部分721Eに沿って延び、かつ、上側壁部721Bの中心線CLよりフロントガラス4側に配置されていることにより、衝突体Hが、鋭利なエッジ部分721Eよりも先に凸形状部721Dに確実に接触するようになるので、衝突体Hに対する傷害値を効果的に低減することができる。
【0052】
さらに、上側壁部721Bの上面に凸形状部721Dが形成されていることにより、リテーナ721の剛性を高めることもできる。加えて、凸形状部721Dの少なくとも一部が、車両正面視で、連結軸74の頭部74A(突出部)と重なる位置に配置されていることで、衝突体Hが、連結軸74の頭部74Aよりも先に凸形状部721Dに接触するようになるので、衝突体Hに対する傷害値を更に効果的に低減することができるとともに、フロントワイパ7Bが払拭動作する際に負荷がかかり易い連結軸74周辺の剛性を向上させることもできる。特に、凸形状部721Dの突出量A2が連結軸74の頭部74Aの突出量A1以上となるように設定すれば(A1≦A2)、衝突体Hが連結軸74の頭部74Aよりも先に凸形状部721Dに確実に接触するようになる。
【0053】
また、本実施形態による車両前部1の構造では、カウルトップアウタパネル8の後方部8Cの後側フランジ部分8Eがシール材11の凹部11Aに差し込まれ、該シール材11の後端部11Cおよび突起部11Bがフロントガラス4の車室外側面に当接するように構成されている。これにより、衝突体Hがカウルトップアウタパネル8の後方部8Cにぶつかった際に、シール材11が弾性変形することで、カウルトップアウタパネル8の後方部8Cに入力される衝撃が吸収されるようになるため、衝突体Hに対する傷害値を一層効果的に低減することができる。
【0054】
さらに、生産時のバラツキにより発生し得るフロントガラス4とカウルトップアウタパネル8の後方部8Cとの隙間がシール材11によって抑制されるので、雨天時にフロントガラス4の車室外側面をつたってカウルトップパネル12に流れ落ちる雨水の量を最小限にすることができる。カウルトップパネル12に流入した雨水は、通常、カウルトップパネル12の車幅方向側部から排出されるが、雨水の流入量が当該排出量を超えた場合、カウルトップパネル12の前方に雨水が流れ出てワイパ装置7のモータ部にかかるなどの問題が生じることになる。本実施形態によれば、このような問題の発生を抑制することが可能である。加えて、シール材11が後端部11Cおよび突起部11Bの2箇所でフロントガラス4の車室外側面に当接しているので、カウルトップアウタパネル8のガタツキを確実に防止することもできる。
【0055】
以上、本発明の実施形態について述べたが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づいて各種の変形および変更が可能である。
【0056】
例えば、上述した実施形態では、カウルトップパネル12の第1変形誘発部12Cとカウルアッパパネル6の第2変形誘発部6Cとが設けられる一例を説明したが、カウルアッパパネル6の第2変形誘発部6Cを省略して、カウルトップパネル12の第1変形誘発部12Cだけを設けるようにしても、カウルトップアウタパネル8の後方部8Cおよびフロントワイパ7Bのリテーナ721に入力される衝撃を吸収して衝突体Hに対する傷害値を低減することが可能である。
【0057】
また、上述した実施形態では、フロントワイパ7Bのリテーナ721における上側壁部721Bのフロントガラス4と対向するエッジ部分721Eが、アームヘッド71側の基端部付近において比較的鋭利な形状を有し、その鋭利なエッジ部分721Eに沿って凸形状部721Dが形成されている一例を説明した。しかしながら、上側壁部721Bのエッジ部分721Eが、基端部付近だけでなくワイパブレード73側の広い範囲で比較的鋭利な形状を有している場合には、凸形状部721Dをワイパブレード73側に延ばして鋭利なエッジ部分721Eに沿うように形成するのがよい。
【符号の説明】
【0058】
1…車両前部
2…フード
3…ダッシュパネル
4…フロントガラス
5…フロントカウル
6…カウルアッパパネル
6B…後側上端部
6C…第2変形誘発部
7…ワイパ装置
7A…駆動ユニット
7B…フロントワイパ
71…アームヘッド
72…アーム本体
721…リテーナ
721A…天壁部
721B…側壁部(上側壁部)
721C…側壁部(下側壁部)
721D…凸形状部
721E…エッジ部分
722…アームピース
73…ワイパブレード
74…連結軸
74A…頭部(突出部)
8…カウルトップアウタパネル
8A…ワイパ取付口
8B…前方部
8C…後方部
8D…前側フランジ部分
8E…後側フランジ部分(フランジ部分)
9…カウルトップアウタキャップ
10…カウルトップカバー
11…シール材
11A…凹部
11B…突起部
11C…後端部
12…カウルトップパネル
12A…後部
12B…前端部
12C…第1変形誘発部
13…シーラー
14…ペダルブラケット
CL…中心線
H…衝突体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9