(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024005901
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】作業車両の管理システム
(51)【国際特許分類】
A01B 69/00 20060101AFI20240110BHJP
【FI】
A01B69/00 303A
A01B69/00 303M
A01B69/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022106347
(22)【出願日】2022-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】000000125
【氏名又は名称】井関農機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】畑邊 昌也
【テーマコード(参考)】
2B043
【Fターム(参考)】
2B043AA04
2B043AB20
2B043BA02
2B043BA07
2B043BA09
2B043BB01
2B043BB03
2B043DA04
2B043DA17
2B043DC01
2B043DC03
2B043EA13
2B043EA32
2B043EA37
2B043EB05
2B043EB15
2B043EB16
2B043EB17
2B043EB18
2B043EC12
2B043EC15
2B043EC16
2B043EE01
2B043EE02
2B043EE05
2B043EE06
(57)【要約】
【課題】自動走行する作業車両で作業を行う場合に、作業者の作業負担を軽減すること。
【解決手段】実施形態に係る作業車両の管理システムは、作業車両と、測位装置と、制御部とを備える。作業車両は、圃場内を走行しながら作業を行う。測位装置は、作業車両に搭載され作業車両の自己位置を取得する。制御部は、予定走行経路を設定し、設定した予定走行経路に沿って走行するよう作業車両を制御する。制御部は、作業車両による作業中断の要因となる中断情報と、作業車両による作業中断時に作業車両を退避させる退避場所の情報とを有し、作業車両による作業中断時には、中断情報に応じて退避場所に停車させる作業車両の所定の停車向きを設定し、作業車両の現在の自己位置から退避場所まで作業車両を走行させる経路であるとともに作業車両を所定の停車向きで停車させる退避経路を設定する。
【選択図】
図4A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圃場内を走行しながら作業を行う作業車両と、
前記作業車両に搭載され該作業車両の自己位置を取得する測位装置と、
予定走行経路を設定し、設定した前記予定走行経路に沿って走行するよう前記作業車両を制御する制御部と
を備え、
前記制御部は、
前記作業車両による作業中断の要因となる中断情報と、前記作業車両による作業中断時に該作業車両を退避させる退避場所の情報とを有し、
前記作業車両による作業中断時には、前記中断情報に応じて前記退避場所に停車させる前記作業車両の所定の停車向きを設定し、前記作業車両の現在の自己位置から前記退避場所まで該作業車両を走行させる経路であるとともに該作業車両を前記所定の停車向きで停車させる退避経路を設定すること
を特徴とする作業車両の管理システム。
【請求項2】
前記制御部は、
前記退避経路を設定する場合には、前進のみで前記作業車両が前記所定の停車向きで停車可能となるよう前記退避経路を設定すること
を特徴とする請求項1に記載の作業車両の管理システム。
【請求項3】
前記作業車両の方位角を取得する方位角取得手段
を備え、
前記制御部は、
前記作業車両の圃場内における移動時の旋回半径を予め設定し、
前記方位角取得手段で取得した前記作業車両の方位角のベクトルと前記測位装置で取得した前記作業車両の現在の自己位置とにおいて接する前記旋回半径の円と、設定した前記所定の停車向きのベクトルと前記退避場所に停車する前記作業車両の自己位置とにおいて接する前記旋回半径の円と、2つの前記旋回半径の円に対する接線とに基づいて前記退避経路を設定すること
を特徴とする請求項2に記載の作業車両の管理システム。
【請求項4】
前記作業車両を遠隔操作するための遠隔操作装置
を備え、
前記制御部は、
前記作業車両を無人走行させる無人走行モードと、前記遠隔操作装置からの指示で前記作業車両を走行可能な有人監視モードとを有し、
前記作業車両の現在の自己位置から前記退避場所まで前記作業車両を走行させる場合、前記退避場所へ向けて前記作業車両を前記無人走行モードで走行させ、圃場を囲む畦までの距離が所定未満となると前記有人監視モードへ移行し、
前記有人監視モードにおいては、前記遠隔操作装置から指示があるまで前記作業車両を一時停止させること
を特徴とする請求項1~3のいずれか一つに記載の作業車両の管理システム。
【請求項5】
前記遠隔操作装置は、
前記作業車両を操向指示するために操作される操向操作具
を備え、
前記制御部は、
前記有人監視モードにおいて、前記操向操作具の操作に応じて前記退避経路を変更すること
を特徴とする請求項4に記載の作業車両の管理システム。
【請求項6】
前記遠隔操作装置に内蔵され該遠隔操作装置の自己位置を取得する内蔵測位装置
を備え、
前記制御部は、
前記作業車両の現在の自己位置および向きに対する前記遠隔操作装置の相対位置を算出し、
前記遠隔操作装置側から前記作業車両を見た場合の該作業車両の向きに対して前記操向操作具が右操作されると、前記作業車両の向きに対して前記退避経路を右方向へ移動し、
前記遠隔操作装置側から前記作業車両を見た場合の該作業車両の向きに対して前記操向操作具が左操作されると、前記作業車両の向きに対して前記退避経路を左方向へ移動すること
を特徴とする請求項5に記載の作業車両の管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業車両の管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
圃場内を自動走行しながら耕耘などの作業を行う作業車両が自動走行中に燃料切れなどを起こすと、たとえば、作業者が圃場内で停止している作業車両まで行って燃料補給などを行う必要がある。従来、圃場内を自動走行している作業車両の燃料が少なくなると、燃料補給のために、作業車両が圃場の端部まで自動走行して停止する技術が知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記したような従来技術は、作業車両が停止した位置が必ずしも作業者にとって燃料補給を容易に行うことができる位置とは限らないため、作業者の作業負担を軽減するための改善の余地があった。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、自動走行する作業車両で作業を行う場合に、作業者の作業負担を軽減することができる作業車両の管理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、実施形態に係る作業車両の管理システム(1)は、圃場(F)内を走行しながら作業を行う作業車両(10)と、前記作業車両(10)に搭載され該作業車両(10)の自己位置(P1)を取得する測位装置(40)と、予定走行経路(RW)を設定し、設定した前記予定走行経路(RW)に沿って走行するよう前記作業車両(10)を制御する制御部(100)とを備え、前記制御部(100)は、前記作業車両(10)による作業中断の要因となる中断情報と、前記作業車両(10)による作業中断時に該作業車両(10)を退避させる退避場所(AT)の情報とを有し、前記作業車両(10)による作業中断時には、前記中断情報に応じて前記退避場所(AT)に停車させる前記作業車両(10)の所定の停車向きを設定し、前記作業車両(10)の現在の自己位置(P1)から前記退避場所(AT)まで該作業車両(10)を走行させる経路であるとともに該作業車両(10)を前記所定の停車向きで停車させる退避経路(RT)を設定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
実施形態に係る作業車両の管理システムによれば、自動走行する作業車両で作業を行う場合に、作業者の作業負担を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施形態に係る作業車両の管理システムの説明図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係る作業車両の管理システムの構成を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、圃場内における自動走行の説明図である。
【
図5A】
図5Aは、退避経路の経路変更の説明図(その1)である。
【
図5B】
図5Bは、退避経路の経路変更の説明図(その2)である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して本願の開示する作業車両の管理システムの実施形態を詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0010】
<作業車両の管理システムの全体構成>
図1および2を参照して実施形態に係る作業車両の管理システム1の全体構成について説明する。
図1は、実施形態に係る作業車両の管理システム1の説明図である。
図2は、実施形態に係る作業車両の管理システム1の構成を示すブロック図である。なお、
図1および2には、作業車両10および作業車両の管理システム1の一例を示している。
【0011】
また、
図1などには、鉛直上向き(上方)を正方向とするZ軸を含む3次元の直交座標系を示している。このため、以下では、X軸の正方向を左方、X軸の負方向を右方、Y軸の正方向を前方、Y軸の負方向を後方と規定し、X軸方向を左右方向、Y軸方向を前後方向、Z軸方向を上下方向という場合がある。
【0012】
図1に示すように、作業車両の管理システム(以下、管理システムという)1は、作業車両10を備える。作業車両10は、圃場F内を走行しながら、この圃場Fで作業を行う。以下では、作業車両10として農業用トラクタを例に説明する。作業車両である農業用トラクタ(以下、トラクタという)10は、運転者(作業者ともいう)が搭乗して圃場F内の作業を行う他、制御部100による自動運転で圃場F内の作業を行う。
【0013】
また、以下では、トラクタ10や後述する走行車体20を指して「機体」という場合がある。
【0014】
図1に示すように、トラクタ10は、走行車体20と、作業機30とを備える。走行車体20は、圃場F内を走行可能であり、前輪21と、後輪22とを備える。前輪21は、左右一対で設けられた操舵用の車輪である。後輪22は、左右一対で設けられた駆動用の車輪(駆動輪)である。なお、走行車体20は、車輪(前輪21および後輪22)に代えて、たとえば、走行クローラを備えてもよい。
【0015】
駆動輪である後輪22には、ボンネット23に収容された駆動源であるエンジンEで発生した回転動力が、動力伝達装置(ミッションケース)24に設けられた変速装置(トランスミッション)71(
図2参照)において適宜減速されて伝達される。後輪22は、エンジンEから伝達された回転動力によって駆動される。変速装置71は、エンジンEから伝達される回転動力を複数の変速段のうちいずれかの変速段へと切り替える。
【0016】
なお、走行車体20は、エンジンEで発生し、かつ、変速装置71で減速された動力を、4WDクラッチを介して前輪21にも伝達可能に構成される。この場合、4WDクラッチが動力を伝達すると、エンジンEから伝達される動力によって前輪21および後輪22の四輪が駆動される。また、4WDクラッチが動力の伝達を遮断すると、エンジンEから伝達される動力によって後輪22のみの二輪が駆動される。このように、走行車体20は、二輪駆動(2WD)と四輪駆動(4WD)とを切り替え可能に構成される。
【0017】
また、走行車体20の後部には、圃場F内で作業を行う作業機30が連結され、作業機30を駆動する動力を伝達するPTO(Power take-off)軸(図示せず)を有するPTO装置(図示せず)が設けられる。また、走行車体20の中央部には、キャビン25が設けられる。キャビン25の内部には、運転者が着座する運転席26などが設けられる。
【0018】
キャビン25の内部における運転席26の前方には、前輪21の操舵のためのステアリングホイール27が設けられる。ステアリングホイール27の下方、運転席26に着座した運転者の足元付近には、各種操作ペダル(アクセルペダル、ブレーキペダル、クラッチペダルなど)が設けられる。
【0019】
また、ステアリングホイール27付近には、前後進を切り替えるための前後進レバーが設けられる。また、運転席26付近には、変速装置71(
図2参照)を、たとえば、低速段~高速段へ切り替える場合に操作される変速操作具(変速レバー)が設けられる。
【0020】
走行車体20の後部には、後述する作業機30を昇降させる昇降装置73(
図2参照)が設けられる。昇降装置73は、油圧式の昇降シリンダ(図示せず)やリフトアーム(図示せず)などを備える。昇降装置73は、作業機30を上昇させることで、作業機30を非作業位置へ移動させ、作業機30を下降させることで、作業機30を対地作業位置へ移動させる。
【0021】
作業機30は、圃場Fにおいて作業を行う。作業機30は、たとえば、ロータリ耕耘機である。なお、ロータリ耕耘機は、PTO装置のPTO軸から伝達された動力によって耕耘爪31が回転することで、圃場Fの土壌面を耕起する。なお、作業機30は、ロータリ耕耘機に限定されない。
【0022】
また、トラクタ10は、測位装置40を備える。測位装置40は、たとえば、走行車体20の上部(たとえば、キャビン25の上部)に設けられ、走行車体20(トラクタ10)の位置情報を取得する。測位装置40は、たとえば、GNSS(Global Navigation Satellite System)であり、上空を周回している航法衛星Sからの電波を受信して測位および計時することができる。
【0023】
また、トラクタ10は、作業者による遠隔操作装置150の操作(遠隔操作)で特定の圃場Fにおける各種作業の設定を行うことができる。遠隔操作装置150は、たとえば、タブレット端末であり、インターネットなどの通信ネットワークに接続可能であり、通信ネットワークを介して作業管理装置と互いに接続可能である。遠隔操作装置150は、たとえば、クラウドコンピューティングが可能なシステムである作業管理装置と接続される。なお、遠隔操作装置150および作業管理装置は、たとえば、無線LAN(Local Area Network)で接続される。
【0024】
遠隔操作装置150は、たとえば、ハードディスク、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)などで構成される記憶部を備える。また、遠隔操作装置150は、タッチパネルなどのモニタ151(
図2参照)と、走行車体20を操向操作するための操向操作具152(
図2参照)とを備える。なお、遠隔操作装置150は、後述する制御部100(
図2参照)と同様、電子制御によって各部を制御可能なように、CPU(Central Processing Unit)などを有する処理部などを備えてもよい。
【0025】
また、遠隔操作装置150は、遠隔操作装置150に内蔵され、この遠隔操作装置150の自己位置P3(
図5A参照)を取得する内蔵測位装置153(
図2参照)を備える。
【0026】
作業管理装置は、CPUなどを有する処理装置やROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、HDD(Hard Disk Drive)などの記憶装置、さらには、入出力装置が設けられたコンピュータなどである。
【0027】
トラクタ10は、方位角取得手段51(
図2参照)を備える。方位角取得手段51は、走行車体20の方位角を取得する。方位角取得手段51は、たとえば、方位角センサである。以下、方位角取得手段51を方位角センサという。
【0028】
方位角センサ51は、たとえば、走行車体20の進行方向の絶対方位角(たとえば、「北」を0°(360°)として、「東」を90°、「南」を180°、「西」を270°)を検出する。方位角センサ51は、一定時間ごとに絶対方位角を検出し、検出した絶対方位角を制御部100などへ送信する。なお、方位角取得手段51としては、方位角センサの他には、たとえば、地磁気センサなどがある。
【0029】
トラクタ10は、上記したように、制御部100(
図2参照)を備える。制御部100は、エンジンEを制御するとともに、走行車体20の走行速度を制御する。また、制御部100は、作業機30の昇降を制御する。なお、制御部100は、トラクタ10側に設けられず、たとえば、トラクタ10と通信可能な遠隔操作装置150側や作業管理装置側に設けられてもよい。
【0030】
図2に示すように、制御部100は、エンジンECU(Electronic Control Unit)101と、走行系ECU102と、作業機昇降系ECU103とを備える。エンジンECU101は、エンジンEの回転数を制御する。走行系ECU102は、駆動輪(後輪22)の回転を制御することで、トラクタ10の走行速度を制御する。作業機昇降系ECU103は、昇降装置73を制御して作業機30の昇降を制御する。
【0031】
制御部100は、電子制御によって各部を制御することが可能であり、CPU(Central Processing Unit)などを有する処理部(図示せず)をはじめ、各種プログラムや必要なデータ類が記憶される、たとえば、ハードディスク、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)などで構成される記憶部(図示せず)などを備える。
【0032】
制御部100には、測位装置40、方位角センサ51、エンジン回転数センサ52、車速センサ53、変速センサ54、切れ角センサ55、障害物センサ56などのセンサ類が接続される。また、制御部100には、カメラ60が接続される。また、制御部100には、エンジンE、変速装置71、ステアリング装置72、昇降装置73などが接続される。
【0033】
方位角センサ51は、トラクタ10の方位角を検出する。方位角センサ51は、たとえば、トラクタ10の進行方向の絶対方位角(たとえば、「北」を0°(360°)として、「東」を90°、「南」を180°、「西」を270°)を検出する。また、方位角センサ51は、一定時間ごとに絶対方位角を検出し、検出した絶対方位角を制御部100へ送信する。
【0034】
エンジン回転数センサ52は、エンジンEの回転数を検出する。車速センサ53は、トラクタ10の走行速度(車速)を検出する。変速センサ54は、変速装置71において複数の変速段のうちいずれの変速段であるかを検出する。切れ角センサ55は、前輪21(
図1参照)の切れ角を検出する。障害物センサ56は、たとえば、トラクタ10の前方の障害物を検出する。障害物センサとしては、たとえば、赤外線センサや超音波センサなどがある。この他、制御部100に接続されるセンサ類として、たとえば、PTO軸の回転数を検出するPTO回転数センサなどがある。
【0035】
また、カメラ60は、トラクタ10の前方を含む周囲(後方および左右側方)の映像を撮影する。
【0036】
制御部100には、測位装置40から圃場F(
図1参照)におけるトラクタ10の現在の自己位置P1(
図3参照)、エンジン回転数センサ52からエンジンEの回転数、車速センサ53からトラクタ10の走行速度、変速センサ54から現在の変速段、切れ角センサ55から前輪21の切れ角、障害物センサ56から障害物(障害物の有無を含む)の各情報がそれぞれ入力される。また、制御部100には、カメラ60からの映像が入力される。
【0037】
また、制御部100においては、エンジンECU101がエンジンEに接続され、走行系ECU102が変速装置71やステアリング装置72に接続され、作業機昇降系ECU103が昇降装置73に接続される。なお、作業機昇降系ECU103は、昇降装置73を介して作業機30を昇降させる。
【0038】
また、制御部100は、トラクタ10の自動走行による作業を行う場合、予定走行経路R
W(
図3参照)を設定し、設定した予定走行経路R
Wに沿って走行するようトラクタ10を制御する。この場合、トラクタ10は、圃場Fの入口から圃場F内へ進入し、予定走行経路R
Wに沿って、たとえば、耕耘作業を行う。なお、予定走行経路R
Wには、圃場F内へ進入する経路や圃場F外へ退出する経路が含まれてもよい。
【0039】
また、制御部100においては、トラクタ10を自動走行させる場合には、作業機30による作業内容に応じた予定走行経路R
W(
図3参照)がデータ化されて記憶部に記憶される。制御部100は、測位装置40の測定結果に基づいて、記憶部に記憶された予定走行経路R
Wに沿って走行しながら作業を行うように、エンジンE、変速装置71、ステアリング装置72、昇降装置73などを制御する。予定走行経路R
Wは、圃場Fの形状、大きさ、圃場F内に形成された畝の幅、長さおよび本数、さらには、作物の種類などに応じて設定される。また、制御部100は、トラクタ10の圃場F内における移動時の旋回半径を予め設定する。
【0040】
なお、制御部100は、上記したように、作業者が携行可能な遠隔操作装置150と無線接続される。制御部100は、作業者の操作による遠隔操作装置150からの指示に基づいて、トラクタ10の各部を制御する。また、制御部100は、トラクタ10の機体情報データベースを有し、機体の型式などの情報の受け渡しを遠隔操作装置150などから行うことが可能なように構成されてもよい。
【0041】
<圃場内における自動走行>
次に、
図3を参照して作業車両(トラクタ)10の圃場F内における自動走行について説明する。
図3は、圃場F内における自動走行の説明図である。なお、
図3には、圃場Fを上方から見た状態を模式的に示している。
【0042】
トラクタ10が自動走行しながら作業を行う場合、制御部100(
図2参照)は、たとえば、トラクタ10の全長、全幅、トレッド、作業機30(
図1参照)の能力、圃場Fの形状や面積などが含まれる情報などに基づいて、適切な旋回位置や、作業機30による所定の作業内容が規定された予定走行経路R
Wを設定する。
【0043】
なお、作業者Wは、圃場Fを囲む畦FAなどから遠隔操作装置150を操作して遠隔でトラクタ10へ指示を送ることも可能である。
【0044】
図3に示すように、トラクタ10は、予定走行経路R
Wに沿って、圃場Fの入口から圃場F内へ進入し、圃場F内に設定された作業領域A
Wにおいて適切に旋回走行しながら所定の作業を自動で行う。なお、トラクタ10は、プログラムによっては、作業の後、圃場Fの出口から圃場F外へ退出して所定の場所で停止するといった制御も可能である。
【0045】
トラクタ10は、たとえば、畦FAの内側、すなわち、圃場Fの端から内側の所定の領域を枕地領域として、枕地領域において周回しながら作業を行う。トラクタ10は、枕地領域よりも内側の作業領域AWにおいて、予め設定された作業開始点PWSから作業終了点PWEまで、予定走行経路RWに沿って、直進と旋回とを繰り返しながら耕耘などの作業を行う。
【0046】
また、制御部100は、作業開始点PWSへの移動経路を設定する場合には、トラクタ10が作業を開始する作業開始点PWSまで適切な経路で移動できるように、トラクタ10の移動経路RMを設定する。
【0047】
図3に示すように、制御部100は、方位角センサ51(
図2参照)で取得した方位角のベクトルV1と測位装置40(
図2参照)で取得したトラクタ10の自己位置P1とで接する旋回半径の円C1を設定し、予定走行経路R
WのベクトルV2と作業開始点P
WSとで接する旋回半径の円C2を設定する。また、制御部100は、2つの旋回半径の円C1,C2に対する接線L1を設定する。制御部100は、2つの旋回半径の円C1,C2と、接線L1とに基づいて、複数の経路を生成する。
【0048】
ここで、方位角のベクトルV1と自己位置P0とで接する旋回半径の円C1は、トラクタ10が左回りで移動を開始する左旋回円C1Lと、トラクタ10が右回りで移動を開始する右旋回円C1Rとの2つがある。また、予定走行経路RWのベクトルV2と作業開始点PWSとで接する旋回半径の円C2は、トラクタ10が予定走行経路RWへ左折(左回り)で進入する左旋回円C2Lと、トラクタ10が予定走行経路RWへ右折(右回り)で進入する右旋回円C2Rとの2つがある。
【0049】
制御部100は、トラクタ10側の左右いずれかの旋回半径の円C1(C1L,C1R)を選定し、作業開始点PWS側の左右いずれかの旋回半径の円C2(C2L,C2R)を選定し、これらの複数(4つ)の経路の中から、トラクタ10の自己位置P1から作業開始点PWSまでの間で最短となる経路を移動経路RMとして設定する。なお、制御部100は、設定した移動経路RMを、遠隔操作装置150のモニタ151に表示させる。
【0050】
制御部100は、移動経路RMを設定する場合、2つの旋回半径の円C1,C2と、接線L1とに基づいて、複数の経路を生成する。次いで、制御部100は、複数の経路から、トラクタ10の自己位置P1から作業開始点PWSまでの間で最短となる経路を選定する。次いで、制御部100は、選定した最短となる経路を移動経路RMとして設定する。
【0051】
このように、トラクタ10の自動走行において、トラクタ10の自己位置P1と作業開始点PWSとを円滑に接続して移動可能な経路を生成し、生成した経路のうち最短となる経路(移動経路)RMで移動できるため、作業開始点PWSへの移動の効率化を図ることができ、円滑に作業を開始することができる。これにより、作業効率を向上させることができる。
【0052】
ここで、圃場F内で自動走行しているトラクタ10に対して燃料、資材の補給やメンテナンスなどの必要がある場合に、トラクタ10を所定の退避場所A
T(
図4Aおよび4B参照)まで自動で移動させるための退避経路R
T(
図4Aおよび4B参照)を設定することが好ましい。
【0053】
<退避経路>
次に、
図4Aおよび4Bを参照して退避経路R
Tについて説明する。
図4Aおよび4Bは、退避経路R
Tの説明図である。なお、
図4Aおよび4Bには、圃場Fを上方から見た状態を模式的に示している。
【0054】
制御部100(
図2参照)は、トラクタ10による作業中断の要因となる、燃料不足、堆肥などの資材不足、メンテナンス要などの各種の中断情報を有する。また、制御部100は、トラクタ10による作業中断時に、このトラクタ10を退避させる退避場所(退避領域ともいう)A
Tの情報を有する。
【0055】
図4Aおよび4Bに示すように、退避場所A
Tは、圃場Fごとに設定され、たとえば、圃場F内における畦F
A付近に設定される。また、退避場所A
Tは、作業者Wによって予め設定されてもよいし、制御部100によってトラクタ10の現在の自己位置P1から最適な場所が自動設定されてもよい。
【0056】
また、制御部100は、トラクタ10による作業中断時には、中断情報(燃料不足、資材不足、メンテナンス要など)に応じて、退避場所ATに停車させるトラクタ10の所定の停車向きを設定する。なお、制御部100は、たとえば、トラクタ10の退避場所ATにおける停車時の自己位置(退避位置)P2によってトラクタ10の停車向きを設定することができる。
【0057】
図4Aに示す例では、たとえば、作業機30がロールベーラの場合にネット補充などのメンテナンス作業を機体右側から行う必要があるというように、メンテナンス位置P
Mがトラクタ10の右側にあるため、退避場所A
Tにおいてメンテナンス位置P
Mが畦F
A側へ向くような停車向きでトラクタ10を停車させる。
【0058】
図4Aに示すように、制御部100は、予定走行経路R
Wに沿って作業中のトラクタ10の自己位置P1、トラクタ10の退避場所A
Tおよびトラクタ10の退避場所A
Tにおける停車向き(退避位置P2)に基づいて、トラクタ10を所定の停車向きで停車させる退避経路R
Tを設定する。この退避経路R
Tは、トラクタ10を、現在の自己位置P1から退避位置P2まで移動(走行)させる経路である。
【0059】
トラクタ10が、たとえば、堆肥散布作業機を牽引しながらこの堆肥散布作業機で堆肥散布作業を行う場合、堆肥散布作業機がいわゆるトレーラ型の作業機30であるため、後進を伴う移動が困難なことがある。このため、制御部100は、退避経路RTを設定する場合には、後進を伴わない、すなわち、前進のみでトラクタ10が所定の停車向きで停車可能となるよう退避経路RTを設定する。
【0060】
また、制御部100は、退避経路RTを設定する場合には、圃場F内におけるトラクタ10の自動走行時と同様、トラクタ10の圃場F内における移動時の旋回半径を予め設定する。
【0061】
図4Aに示すように、制御部100は、方位角センサ51(
図2参照)で取得した方位角のベクトルV3と、測位装置40(
図2参照)で取得したトラクタ10の自己位置P1とで接する旋回半径の円C3(右旋回円C3
R)を設定する。また、制御部100は、退避場所A
Tにおけるトラクタ10の所定の停車向きのベクトルV4と、退避場所A
Tに停車するトラクタ10の自己位置(退避位置)P2とにおいて接する旋回半径の円C4(左旋回円C4
L)を設定する。
【0062】
そして、制御部100は、2つの旋回半径の円C3R,C4Lと、これら2つの旋回半径の円C3R,C4Lに対する接線L2とに基づいて、退避場所ATまで最短となる退避経路RTを設定する。
【0063】
また、
図4Bに示す例では、たとえば、給油口が機体左側にあるというように、メンテナンス位置P
Mがトラクタ10の左側にあるため、退避場所A
Tにおいてメンテナンス位置P
Mが畦F
A側へ向くような停車向きでトラクタ10を停車させる。
【0064】
図4Bに示す例の場合も、制御部100は、予定走行経路R
Wに沿って作業中のトラクタ10の自己位置P1、トラクタ10の退避場所A
Tおよびトラクタ10の退避場所A
Tにおける停車向き(退避位置P2)に基づいて、現在の自己位置P1から退避位置P2までトラクタ10を移動(走行)させる経路であるとともに、トラクタ10を所定の停車向きで停車させる退避経路R
Tを設定する。
【0065】
図4Bに示すように、制御部100は、方位角センサ51(
図2参照)で取得した方位角のベクトルV3と、測位装置40(
図2参照)で取得したトラクタ10の自己位置P1とで接する旋回半径の円C3(右旋回円C3
R)を設定する。また、制御部100は、退避場所A
Tにおけるトラクタ10の所定の停車向きのベクトルV4と、退避場所A
Tに停車するトラクタ10の自己位置(退避位置)P2とにおいて接する旋回半径の円C4(右旋回円C4
R)を設定する。
【0066】
そして、制御部100は、2つの旋回半径の円C3R,C4Rと、これら2つの旋回半径の円C3R,C4Rに対する接線L2とに基づいて、退避場所ATまで最短となる退避経路RTを設定する。
【0067】
上記したような実施形態によれば、自動走行するトラクタ10による作業が中断した原因に応じて退避場所ATにおけるトラクタ10の所定の停車向きを設定することで、作業者Wによるトラクタ10のメンテナンス作業などを圃場Fの外側から行うことが可能となり、作業者Wが圃場F内に入って作業する必要がなくなる。これにより、作業者Wの作業負担を軽減することができる。
【0068】
また、トラクタ10の後進を伴わない退避経路RTの設定が可能となる。たとえば、トラクタ10がトレーラ型の作業機30を牽引している場合、後進時のトラクタ10の制御が困難なことがあるため、前進のみの退避経路RTを設定することで、トラクタ10を安定して制御することができる。
【0069】
また、退避経路RTを設定する場合には、予め設定した旋回半径の円C3,C4と直線(接線L2)とで退避経路RTの設定が可能となり、退避経路RTとしてトラクタ10がスムーズに走行可能な経路を設定することができる。
【0070】
また、制御部100は、トラクタ10の走行モードとして、無人走行モードと、有人監視モードとを有する。無人走行モードは、トラクタ10を無人走行(すなわち、自動走行)させるモードである。有人監視モードは、作業者Wの操作による遠隔操作装置150からの指示でトラクタ10を走行させるモードである。制御部100は、設定した退避経路RTに沿ってトラクタ10を移動させる場合、無人走行モードおよび有人監視モードのいずれかを実行する。
【0071】
制御部100は、トラクタ10の現在の自己位置P1から退避場所ATまでトラクタ10を移動(走行)させる場合、退避場所ATへ向けてトラクタ10を無人走行モードで自動走行させる。制御部100は、自動走行するトラクタ10の畦FAまでの距離が所定未満となると、有人監視モードへ移行する。
【0072】
有人監視モードにおいては、制御部100は、遠隔操作装置150から指示があるまで(遠隔操作装置150からの指示信号を受信するまで)トラクタ10を一時停止させる。
【0073】
このような実施形態によれば、トラクタ10が畦FA付近(畦際)を走行する場合は畦FAと接触する可能性があることからトラクタ10の畦FA付近の走行には作業者Wなどによる監視が必要となるため、有人監視モードへ移行するとともに遠隔操作装置150から指示があるまでトラクタ10を一時停止させることで、トラクタ10の畦FAとの接触を抑えることができ、安全性を向上させることができる。
【0074】
なお、制御部100は、有人監視モードを実行してトラクタ10を畦寄せする場合には、障害物センサ56(
図2参照)をオフにして、障害物センサ56の障害物検知によるトラクタ10の停止制御を無効にする。これにより、畦F
Aを障害物として検知してトラクタ10が停止するのを防止することができる。
【0075】
また、制御部100は、有人監視モードを実行してトラクタ10を畦寄せする場合には、トラクタ10の走行速度が低速となるように規制する。これにより、トラクタ10の畦FAとの接触を抑制することができる。
【0076】
また、制御部100は、有人監視モードを実行してトラクタ10を畦寄せする場合には、カメラ60(
図2参照)で撮影したトラクタ10の周辺の映像を遠隔操作装置150のモニタ151(
図2参照)に表示させる。また、制御部100は、モニタ151に表示される畦F
A側の映像を強調して、このモニタ151に表示させる。これにより、作業者Wは、トラクタ10の畦F
Aとの接触を防止するための監視を容易に行うことができる。
【0077】
<退避経路の経路変更>
次に、
図5Aおよび5Bを参照して退避経路R
Tの経路変更について説明する。
図5Aおよび5Bは、退避経路R
Tの経路変更の説明図である。なお、
図5Aおよび5Bには、圃場Fを上方から見た状態を模式的に示している。
【0078】
図5Aに示すように、有人監視モードにおいては、制御部100は、退避経路R
Tを変更可能である。制御部100は、作業者Wによる遠隔操作装置150の操向操作具152の操作に応じて退避経路R
Tを変更する。
【0079】
退避経路RTを変更する場合、制御部100は、トラクタ10の現在の自己位置P1および現在の向きに対する遠隔操作装置150の相対位置を算出する。なお、制御部100は、たとえば、トラクタ10および遠隔操作装置150の互いの方位角のベクトルの内積、外積の計算で両者の位置関係を算出する。
【0080】
制御部100は、作業者Wが遠隔操作装置150側からトラクタ10を見た場合のこのトラクタ10の進行方向となる向きに対して操向操作具152が右操作(図中の矢線D1方向へ操作)されると、トラクタ10の向きに対して退避経路RTを右方向(図中の矢線D2方向)へ移動する。この場合、退避経路RTは、操向操作具152の操作量に応じて移動する。
【0081】
また、制御部100は、作業者Wが遠隔操作装置150側からトラクタ10を見た場合のこのトラクタ10の進行方向となる向きに対して操向操作具152が左操作されると、トラクタ10の向きに対して退避経路RTを左方向へ移動する。この場合も、退避経路RTは、操向操作具152の操作量に応じて移動する。
【0082】
このような実施形態によれば、トラクタ10が畦FAと接触することが予測される場合には、遠隔操作装置150による遠隔操作によって退避経路RTを修正することができる。
【0083】
また、作業者Wは、遠隔操作装置150側からトラクタ10を見て、見た方向にトラクタ10を動かすことができる。これにより、遠隔操作装置150による直感的な操作が可能となる。
【0084】
なお、制御部100は、退避経路RTを変更する場合には、遠隔操作装置150の操向操作具152が操作されると、トラクタ10の操舵ではなく、トラクタ10の走行経路である退避経路RTが移動するよう制御する。これにより、トラクタ10の自動走行(自動操舵)と操向操作具152の手動操作とのバッティングを回避して、挙動と操作との混乱を防止することができる。
【0085】
また、制御部100は、遠隔操作装置150の操向操作具152がトラクタ10の直進時に操作されると、退避経路RTが操向操作具152の操作方向に平行移動するよう制御する。これにより、トラクタ10の直進時に、このトラクタ10を操向操作具152の操作方向へ誘導することができる。
【0086】
図5Bに示すように、制御部100は、退避経路R
Tを変更する場合には、トラクタ10の旋回時に遠隔操作装置150の操向操作具152が操作されると、退避経路R
Tの旋回半径の円(たとえば、旋回半径の円C4)を変更(縮小、拡大)する。これにより、トラクタ10の旋回時に、このトラクタ10を操向操作具152の操作方向へ誘導することができる。
【0087】
制御部100は、遠隔操作装置150側から見てトラクタ10が右旋回している場合に操向操作具152が右方向へ操作されると、旋回半径の円C4を縮小する。また、制御部100は、遠隔操作装置150側から見てトラクタ10が右旋回している場合に操向操作具152が左方向へ操作されると、旋回半径の円C4を拡大する。
【0088】
また、制御部100は、遠隔操作装置150側から見てトラクタ10が左旋回している場合に操向操作具152が左方向へ操作されると、旋回半径の円C4を縮小する。また、制御部100は、遠隔操作装置150側から見てトラクタ10が左旋回している場合に操向操作具152が右方向へ操作されると、旋回半径の円C4を拡大する。これにより、トラクタ10の旋回時に、このトラクタ10を操向操作具152の操作方向へ直感的に誘導することができる。
【0089】
また、制御部100は、トラクタ10の直進時に、遠隔操作装置150側から見てトラクタ10の後方へ操向操作具152が操作されると、トラクタ10の走行速度を減速する。また、制御部100は、トラクタ10の直進時に、遠隔操作装置150側から見てトラクタ10の前方へ操向操作具152が操作されると、トラクタ10の走行速度を増速する。これにより、トラクタ10の直進時に、このトラクタ10の走行速度を直感的に遠隔操作することができる。
【0090】
また、制御部100は、遠隔操作装置150のモニタ151に、退避経路RTに対するトラクタ10の位置を表示させる。これにより、作業者Wは、実際にトラクタ10が見える位置にいなくても、退避経路RTに対するトラクタ10の位置を確認しながら遠隔操作することができる。
【0091】
また、制御部100は、遠隔操作装置150のモニタ151に、退避経路RTの変更を反映して表示させる。これにより、作業者Wは、実際にトラクタ10が見える位置にいなくても、モニタ151を見ながらトラクタ10を遠隔で誘導することができる。
【0092】
また、制御部100は、遠隔操作装置150の向きを加味してモニタ151に表示させ、モニタ151の表示内容と操向操作具の操作方向とをあわせる。この場合、遠隔操作装置150には、たとえば、電子コンパスが設けられる。これにより、作業者Wは、実際にトラクタ10が見える位置にいなくても、モニタ151を見ながらトラクタ10を遠隔で誘導することができる。
【0093】
また、操向操作具152としてジョイスティックが用いられ、制御部100は、ジョイスティックの操作方向、操作角度、操作時間などに応じて退避経路RTを変更してもよい。これにより、作業者Wは、トラクタ10の退避経路RTを直感的に変更することができる。
【0094】
上述してきた実施形態により、以下の作業車両の管理システム1が実現される。
【0095】
(1)圃場F内を走行しながら作業を行う作業車両10と、作業車両10に搭載され作業車両10の自己位置P1を取得する測位装置40と、予定走行経路RWを設定し、設定した予定走行経路RWに沿って走行するよう作業車両10を制御する制御部100とを備え、制御部100は、作業車両10による作業中断の要因となる中断情報と、作業車両10による作業中断時に作業車両10を退避させる退避場所ATの情報とを有し、作業車両10による作業中断時には、中断情報に応じて退避場所ATに停車させる作業車両10の所定の停車向きを設定し、作業車両10の現在の自己位置P1から退避場所ATまで作業車両10を走行させる経路であるとともに作業車両10を所定の停車向きで停車させる退避経路RTを設定する、作業車両の管理システム1。
【0096】
このような作業車両の管理システム1によれば、自動走行する作業車両10による作業が中断した原因に応じて退避場所ATにおける作業車両10の所定の停車向きを設定することで、作業者Wによる作業車両10のメンテナンス作業などを圃場Fの外側から行うことが可能となり、作業者Wが圃場F内に入って作業する必要がなくなる。これにより、作業者Wの作業負担を軽減することができる。
【0097】
(2)上記(1)において、制御部100は、退避経路RTを設定する場合には、前進のみで作業車両10が所定の停車向きで停車可能となるよう退避経路RTを設定する、作業車両の管理システム1。
【0098】
このような作業車両の管理システム1によれば、上記(1)の効果に加えて、作業車両10の後進を伴わない退避経路RTの設定が可能となる。たとえば、作業車両10がトレーラ型の作業機30を牽引している場合、後進時の作業車両10の制御が困難なことがあるため、前進のみの退避経路RTを設定することで、作業車両10を安定して制御することができる。
【0099】
(3)上記(2)において、作業車両10の方位角を取得する方位角取得手段51を備え、制御部100は、作業車両10の圃場F内における移動時の旋回半径を予め設定し、方位角取得手段51で取得した作業車両10の方位角のベクトルV3と測位装置40で取得した作業車両10の現在の自己位置P1とにおいて接する旋回半径の円C3と、設定した所定の停車向きのベクトルV4と退避場所ATに停車する作業車両10の自己位置P2とにおいて接する旋回半径の円C4と、2つの旋回半径の円C3,C4に対する接線L2とに基づいて退避経路RTを設定する、作業車両の管理システム1。
【0100】
このような作業車両の管理システム1によれば、上記(2)の効果に加えて、予め設定した旋回半径の円C3,C4と直線(接線L2)とで退避経路RTの設定が可能となり、退避経路RTとして作業車両10がスムーズに走行可能な経路を設定することができる。
【0101】
(4)上記(1)~(3)のいずれか一つにおいて、作業車両10を遠隔操作するための遠隔操作装置150を備え、制御部100は、作業車両10を無人走行させる無人走行モードと、遠隔操作装置150からの指示で作業車両10を走行可能な有人監視モードとを有し、作業車両10の現在の自己位置P1から退避場所ATまで作業車両10を走行させる場合、退避場所ATへ向けて作業車両10を無人走行モードで走行させ、圃場Fを囲む畦FAまでの距離が所定未満となると有人監視モードへ移行し、有人監視モードにおいては、遠隔操作装置150から指示があるまで作業車両10を一時停止させる、作業車両の管理システム1。
【0102】
このような作業車両の管理システム1によれば、上記(1)~(3)のいずれか一つの効果に加えて、作業車両10が畦FA付近(畦際)を走行する場合は畦FAと接触する可能性があることから作業車両10の畦FA付近の走行には作業者Wなどによる監視が必要となるため、有人監視モードへ移行するとともに遠隔操作装置150から指示があるまで作業車両10を一時停止させることで、作業車両10の畦FAとの接触を抑えることができ、安全性を向上させることができる。
【0103】
(5)上記(4)において、遠隔操作装置150は、作業車両10を操向指示するために操作される操向操作具152を備え、制御部100は、有人監視モードにおいて、操向操作具152の操作に応じて退避経路RTを変更する、作業車両の管理システム1。
【0104】
このような作業車両の管理システム1によれば、上記(4)の効果に加えて、作業車両10が畦FAと接触することが予測される場合には、遠隔操作装置150による遠隔操作によって退避経路RTを修正することができる。
【0105】
(6)上記(5)において、遠隔操作装置150に内蔵され遠隔操作装置150の自己位置P3を取得する内蔵測位装置153を備え、制御部100は、作業車両10の現在の自己位置P1および向きに対する遠隔操作装置150の相対位置を算出し、遠隔操作装置150側から作業車両10を見た場合の作業車両10の向きに対して操向操作具152が右操作されると、作業車両10の向きに対して退避経路RTを右方向へ移動し、遠隔操作装置150側から作業車両10を見た場合の作業車両10の向きに対して操向操作具152が左操作されると、作業車両10の向きに対して退避経路RTを左方向へ移動する、作業車両の管理システム1。
【0106】
このような作業車両の管理システム1によれば、上記(5)の効果に加えて、作業者Wは、遠隔操作装置150側から作業車両10を見て、見た方向に作業車両10を動かすことができる。これにより、遠隔操作装置150による直感的な操作が可能となる。
【0107】
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0108】
1 作業車両の管理システム
10 作業車両(トラクタ)
40 測位装置
51 方位角取得手段(方位角センサ)
100 制御部
150 遠隔操作装置
152 操向操作具
153 内蔵測位装置
AT 退避場所
C3 旋回半径の円
C4 旋回半径の円
F 圃場
FA 畦
L2 接線
P1 作業車両の自己位置
P2 作業車両の自己位置(退避位置)
P3 遠隔操作装置の自己位置
RT 退避経路
RW 予定走行経路
V3 ベクトル
V4 ベクトル