(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024059010
(43)【公開日】2024-04-30
(54)【発明の名称】微粉炭の製造装置及び製造方法
(51)【国際特許分類】
C21B 7/00 20060101AFI20240422BHJP
C21B 5/00 20060101ALI20240422BHJP
B02C 15/04 20060101ALI20240422BHJP
B02C 23/34 20060101ALI20240422BHJP
【FI】
C21B7/00 308
C21B5/00 319
B02C15/04
B02C23/34
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022166476
(22)【出願日】2022-10-17
(71)【出願人】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【弁理士】
【氏名又は名称】宮坂 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也
(72)【発明者】
【氏名】岡本 悠揮
(72)【発明者】
【氏名】木山 拓哉
【テーマコード(参考)】
4D063
4D067
4K012
4K015
【Fターム(参考)】
4D063EE12
4D063GA08
4D063GC12
4D063GC19
4D063GD04
4D063GD17
4D067EE22
4D067EE32
4D067EE45
4D067GA04
4K012BE01
4K015AD10
(57)【要約】
【課題】不活性ガスの供給量を低減することで、製造コストを低廉化することができる、微粉炭の製造装置及び製造方法を提供すること。
【解決手段】ローラミル3で粉砕された微粉炭を搬送ガスで乾燥させながらバグフィルタ5に搬送し、バグフィルタ5で捕集する微粉炭の製造装置1であって、微粉炭が捕集された後の排ガスを回収して循環搬送する排ガス循環経路7と、排ガス循環経路7に接続され、排ガス循環経路7に不活性ガスを供給する不活性ガス供給経路12と、排ガス循環経路7から供給され、不活性ガスを含む排ガスと、バーナ9で発生する燃焼ガスと、を搬送ガスとしてローラミル3に供給する搬送ガス供給経路13と、排ガス循環経路7にて結露が発生しないように設定され、ローラミル3に石炭を供給する速度である給炭量と、不活性ガスの供給量との関係を示す線形式を用いて給炭量に応じて不活性ガスの供給量を調整する不活性ガス調整機構20とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ローラミルで石炭を粉砕して微粉炭とし、粉砕された前記微粉炭を搬送ガスで乾燥させながらバグフィルタに搬送し、搬送された前記微粉炭を前記バグフィルタで捕集する、微粉炭の製造装置であって、
前記微粉炭が捕集された後の前記搬送ガスである排ガスを回収して循環搬送する排ガス循環経路と、
前記排ガス循環経路に接続され、前記排ガス循環経路に不活性ガスを供給する不活性ガス供給経路と、
前記排ガス循環経路から供給され、前記不活性ガスを含む前記排ガスと、バーナで発生する燃焼ガスと、を前記搬送ガスとしてローラミルに供給する搬送ガス供給経路と、
前記排ガス循環経路にて結露が発生しないように設定され、前記ローラミルに石炭を供給する速度である給炭量と、前記不活性ガスの供給量との関係を示す線形式を用いて、前記給炭量に応じて前記不活性ガスの供給量を調整する不活性ガス調整機構と、
を備える微粉炭の製造装置。
【請求項2】
ローラミルにて石炭を粉砕して微粉炭とし、粉砕された前記微粉炭を搬送ガスで乾燥させながらバグフィルタに搬送し、搬送された前記微粉炭を前記バグフィルタで捕集する、微粉炭の製造方法であって、
排ガス循環経路にて、前記バグフィルタによる前記微粉炭の捕集後の前記搬送ガスである排ガスを回収して循環搬送し、
前記排ガス循環経路に接続される不活性ガス供給経路にて、前記排ガス循環経路に不活性ガスを供給し、
搬送ガス供給経路にて、前記排ガス循環経路から供給され、前記不活性ガスを含む前記排ガスと、バーナで発生する燃焼ガスと、を前記搬送ガスとしてローラミルに供給し、
前記不活性ガスを供給する際に、前記排ガス循環経路にて結露が発生しないように設定される関係式であって、前記ローラミルに石炭を供給する速度である給炭量と、前記不活性ガスの供給量との関係を示す線形式を用いて、前記給炭量に応じて前記不活性ガスの供給量を調整する、微粉炭の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微粉炭の製造装置及び製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高炉への微粉炭吹き込み操業は、高炉へ装入するコークス量を減少させることができることから多用されている。このような操業方法では、微粉炭製造装置にて、石炭を粉砕及び乾燥することで微粉炭が製造される。具体的には、石炭をローラミルで粉砕して微粉炭とした後、粉砕された微粉炭を高温の搬送ガスで乾燥させながらバグフィルタに搬送する。そして、バグフィルタにて搬送された微粉炭を捕集することで、微粉炭が製造される。この際、石炭の水分が所定量以下となるように、推定もしくはオンライン分析をしながら、搬送過程での微粉炭の水分を制御している。
【0003】
例えば、特許文献1には、微粉炭製造設備において、石炭の含水量と相関のあるVMやHGI等の指標から搬送ガスの温度を調整することで、微粉炭の水分を調整する方法が開示されている。また、特許文献2には、石炭の水分をオンラインで測定する事で、石炭を乾燥させるのに適切なホットガス及びキャリアガスの流量を調整する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005-68474号公報
【特許文献2】特開平6-2833号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
高炉の操業において、微粉炭の吹込量は、溶銑生産量やコークス比などにより決まり、一日のうちでも調整が行われる。給炭量は吹込み量に応じて調整する必要があるため、給炭量についても同様に調整が行われる。また、製造コストの低廉化のためには、ホットガス供給量を低減する必要がある。
特許文献1,2のような従来の微粉炭の製造方法では、投入する石炭の水分に関して、推定もしくはオンライン分析をしながら搬送過程での微粉炭の水分を適切な範囲に制御しているものであり、不活性ガスである窒素ガスに関しては供給量の調整は行われていない。しかしながら、不活性ガスは大気温度程度の冷たい気体であるため、不活性ガスの供給量を低減する事はホットガス供給量の低減にも繋がり、製造コストを低廉化にも繋がる。
【0006】
そこで、本発明は、上記の課題に着目してなされたものであり、不活性ガスの供給量を低減することで、製造コストを低廉化することができる、微粉炭の製造装置及び製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様によれば、ローラミルで石炭を粉砕して微粉炭とし、粉砕された上記微粉炭を搬送ガスで乾燥させながらバグフィルタに搬送し、搬送された上記微粉炭を上記バグフィルタで捕集する、微粉炭の製造装置であって、上記微粉炭が捕集された後の上記搬送ガスである排ガスを回収して循環搬送する排ガス循環経路と、上記排ガス循環経路に接続され、上記排ガス循環経路に不活性ガスを供給する不活性ガス供給経路と、上記排ガス循環経路から供給され、上記不活性ガスを含む上記排ガスと、バーナで発生する燃焼ガスと、を上記搬送ガスとしてローラミルに供給する搬送ガス供給経路と、上記排ガス循環経路にて結露が発生しないように設定され、上記ローラミルに石炭を供給する速度である給炭量と、上記不活性ガスの供給量との関係を示す線形式を用いて、上記給炭量に応じて上記不活性ガスの供給量を調整する不活性ガス調整機構と、を備える微粉炭の製造装置が提供される。
【0008】
本発明の一態様によれば、ローラミルにて石炭を粉砕して微粉炭とし、粉砕された上記微粉炭を搬送ガスで乾燥させながらバグフィルタに搬送し、搬送された上記微粉炭を上記バグフィルタで捕集する、微粉炭の製造方法であって、排ガス循環経路にて、上記バグフィルタによる上記微粉炭の捕集後の上記搬送ガスである排ガスを回収して循環搬送し、上記排ガス循環経路に接続される不活性ガス供給経路にて、上記排ガス循環経路に不活性ガスを供給し、搬送ガス供給経路にて、上記排ガス循環経路から供給され、上記不活性ガスを含む上記排ガスと、バーナで発生する燃焼ガスと、を上記搬送ガスとしてローラミルに供給し、上記不活性ガスを供給する際に、上記排ガス循環経路にて結露が発生しないように設定される関係式であって、上記ローラミルに石炭を供給する速度である給炭量と、上記不活性ガスの供給量との関係を示す線形式を用いて、上記給炭量に応じて上記不活性ガスの供給量を調整する、微粉炭の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一態様によれば、効率的に微粉炭を製造することができる、微粉炭の製造装置及び製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施形態に係る微粉炭の製造装置を示す模式図である。
【
図2】給炭量とN
2ガス供給量(不活性ガス流量)との関係の一例を示すグラフである。
【
図3】給炭量と排ガス中の水分量との関係を示すグラフである。
【
図4】飽和水蒸気比率と温度との関係を示すグラフである。
【
図5】実施例における給炭量と微粉炭中の水分量との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下の詳細な説明では、本発明の完全な理解を提供するように、本発明の実施形態を例示して多くの特定の細部について説明する。しかしながら、かかる特定の細部の説明がなくても1つ以上の実施態様が実施できることは明らかである。また、図面は、簡潔にするために、周知の構造及び装置が略図で示されている。
【0012】
<微粉炭の製造装置>
図1を参照して、本発明の一実施形態に係る微粉炭の製造装置1について説明する。本実施形態に係る微粉炭の製造装置1は、
図1に示すように、給炭機2と、ローラミル3と、微粉炭搬送経路4と、バグフィルタ5と、貯蔵ホッパ6と、排ガス循環経路7と、吸引ブロア8と、バーナ9と、排ガス放散経路10と、煙突11と、不活性ガス供給経路12と、搬送ガス供給経路13とを備える。
【0013】
給炭機2は、原料となる石炭を貯蔵し、貯蔵する石炭を任意の給炭量でローラミル3へと供給する。なお、給炭量は、給炭機2からローラミル3へ石炭を供給する速度、つまり石炭の時間当たりの供給量である。
ローラミル3は、内部に設けられたロールを用いて、給炭機2から供給される石炭を粉砕する粉砕機である。ローラミル3にて粉砕された石炭は、粒径が74μm以下75mass%±5mass%程度の微粉炭となる。また、ローラミル3は、搬送ガス供給経路13及び微粉炭搬送経路4にそれぞれ接続され、搬送ガス供給経路13から供給される搬送ガスとともに、粉砕された微粉炭を微粉炭搬送経路4に送る。
【0014】
微粉炭搬送経路4は、ローラミル3とバグフィルタ5とに接続されるパイプであり、ローラミル3から排出される搬送ガスと微粉炭とをバグフィルタ5に搬送する。
バグフィルタ5は、微粉炭搬送経路4から供給される、搬送ガスと微粉炭とを分離し、微粉炭を捕集する耐熱性の隔離式フィルタである。
貯蔵ホッパ6は、バグフィルタ5の下方に設けられる貯蔵槽であり、バグフィルタ5にて捕集された微粉炭を回収して貯蔵する。
【0015】
排ガス循環経路7は、バグフィルタ5にて微粉炭が捕集された後の搬送ガスである排ガスを搬送するパイプである。排ガス循環経路7は、経路の途中に設けられた送風機である吸引ブロア8によって、排ガスを流動させてバーナ9に供給する。また、排ガス循環経路7の吸引ブロア8よりも排ガスの流動方向の上流側には、排ガスの露点を測定する露点計14と、排ガスの流量を測定する流量計15と、排ガスの流量を調整する吸引ダンパ16とが設けられる。さらに、排ガス循環経路7の吸引ブロア8よりも排ガスの流動方向の下流側には、排ガスの流動方向の上流側から、排ガス放散経路10及び不活性ガス供給経路12が順に接続される。さらに、排ガス循環経路7には、排ガス放散経路10の接続位置と、不活性ガス供給経路12の接続位置との間に、循環弁17が設けられる。
【0016】
バーナ9は、不図示の供給設備から供給される空気と燃料ガスとを燃焼させ、燃焼ガスを発生させる。燃料ガスは、燃焼性のガスであり、例えば高炉から回収される燃焼性のガスである高炉ガスであってもよい。また、バーナ9は、燃焼により発生する燃焼ガスと、排ガス循環経路7から供給される排ガスとを、搬送ガスとして搬送ガス供給経路13に供給する。なお、バーナ9に供給される空気の流量と燃料ガスとの比率は、燃料ガスを燃焼するのに必要な空気流量(理論空気比)の1.1倍程度となるように制御される。
排ガス放散経路10は、排ガス循環経路7を流動する排ガスの一部を、煙突11へと送るパイプである。排ガス放散経路10には、排ガス放散経路10を流動する排ガスの流量を調整する放散弁18と、排ガスの流量を測定する流量計19とが設けられる。
煙突11は、排ガス放散経路10から供給される排ガスを外部へ放散する。
【0017】
不活性ガス供給経路12は、不図示の供給設備から排ガス循環経路7に、大気温度度程度の不活性ガスを供給するパイプである。不活性ガスには、窒素ガス等の安価なガスが用いられることが好ましい。不活性ガス供給経路12は、不活性ガスの供給量(流量)を調整する不活性ガス調整機構20を有する。不活性ガス調整機構20は、不活性ガスの流量を調整する調整弁と、給炭量に基づいて不活性ガスの流量を決定し調整弁を制御する制御回路である制御部とを有する。なお、不活性ガス調整機構20による、不活性ガスの流量の調整方法については、後述する。
【0018】
<微粉炭の製造方法>
次に、本実施形態に係る微粉炭の製造方法について説明する。本実施形態では、まず、給炭機2からローラミル3へ原料となる石炭を供給し、ローラミル3にて石炭を粉砕して粒径が74μm以下75mass%±5mass%程度の微粉炭とする。
次いで、ローラミル3に搬送ガスを供給することで、粉砕した微粉炭をバグフィルタ5まで搬送する。搬送ガスは、微粉炭を搬送するガスであり、バーナ9の燃焼によって発生する燃焼ガスと、不活性ガスを含む排ガスからとからなる。また、搬送ガスは、高温のガスであり、搬送する微粉炭を加熱することで微粉炭を乾燥する。
【0019】
さらに、搬送される搬送ガスと微粉炭とから、バグフィルタ5を用いて微粉炭を捕集する。バグフィルタ5にて捕集された微粉炭は、貯蔵ホッパ6へと供給され、高炉での微粉炭吹込み操業に用いられる。一方、バグフィルタ5にて分離された搬送ガスは、排ガスとして排ガス循環経路7に送られる。本実施形態では、排ガスが所定の流量となるように、搬送ガスの流量及び吸引ダンパ16を用いて排ガス流量の調整を行う。また、バグフィルタ5に搬送された微粉炭の水分が1mass%以下となるように、燃焼ガス(空気及び燃料ガス)と排ガスとの流量比率が調整される。搬送ガスは、ローラミル3の出側の温度が基準温度(例えば、95℃)となるように調整される。
【0020】
排ガス循環経路7に送られた排ガスは、一部の排ガスが排ガス放散経路10に送られることで外部に放散され、残りの排ガスが不活性ガス供給経路12から供給される不活性ガスとともにバーナ9に送られる。排ガス放散経路10に供給される排ガスの流量は、石炭に含まれる水分と同量の水分が放散されるように、給炭量に応じて調整される。排ガスに供給される不活性ガスは、排ガスの水分を低減させ、排ガス循環経路7の出側における結露を防止するために添加される。また、不活性ガス調整機構20では、後述する不活性ガス流量の調整方法によって、給炭機2の給炭量に応じて排ガス循環経路7に供給する不活性ガスの流量が調整される。そして、排ガス循環経路7を通じてバーナ9に送られた排ガスは、搬送ガスとして再利用される。
【0021】
(不活性ガス流量の調整方法)
不活性ガス調整機構20による不活性ガス流量の調整方法について説明する。不活性ガス調整機構20では、制御部が、給炭機2の給炭量に基づいて、予め設定された給炭量と不活性ガス流量との関係から不活性ガスの流量を決定し、排ガス循環経路7に供給される不活性ガスの流量を、調整弁を用いて調整する。
給炭量と不活性ガスの流量との関係は、線形の関係となる。つまり、予め設定される線形式である一次関数により、給炭量に応じた不活性ガスの流量が求められる。なお、この給炭量は、操業時に設定される設定値(設定給炭量)であってもよい。
【0022】
例えば、給炭量と不活性ガスの流量との関係は、
図2に示す関係としてもよい。
図2には、不活性ガスとしてN
2ガスを用いた場合における、給炭量とN
2ガスの流量との関係を示す。また、
図3には、希釈用の不活性ガスの流量が一定であった場合における、排ガス中の水蒸気濃度を示す。
図3に示すように、給炭量が低下するに従って、排ガス中の水蒸気濃度は低下する。
【0023】
排ガス中の水分は、排ガス循環経路7で結露が発生しないように所定の上限量が設定され、この上限量以下に調整される必要がある。排ガス中の水分の上限量とは、排ガス循環経路7にて結露が最も発生しやすい箇所である、不活性ガス供給経路12との接続箇所近傍における、排ガス循環経路7内の温度に対する飽和水蒸気比率程度の水分である。
【0024】
不活性ガスの流量を一定とする場合には、排ガス中の水蒸気濃度が大きくなる給炭量が多い状態において、排ガス循環経路7で結露が発生しない流量に不活性ガスを設定する必要がある。しかし、このような不活性ガスの流量制御においては、給炭量が少ない場合には、排ガス中の水蒸気濃度が必要以上に少なくなるため、不活性ガスの供給が過多となってしまう。このため、給炭量が少ない場合には、余分に供給している不活性ガスを低減することができる。また、
図3に示すように、給炭量の変化に対して、排ガス中の水蒸気量は直線的に変化するため、本実施形態のように設定される給炭量と不活性ガスの流量との関係を線形の関係式とし、この線形式(一次関数)を用いて給炭量に応じた不活性ガスの流量を設定することにより、結露を発生させることなく、不活性ガスの流量を低減することができる。
【0025】
なお、給炭量と不活性ガスの流量との関係式である線形式は、排ガス循環経路7の排ガス中の水分量が上限量とならないように設定される。排ガス中の水分の上限量とは、排ガス循環経路7にて結露が最も発生しやすい箇所における、排ガス循環経路7内の温度に対する飽和水蒸気程度となる水分量である。即ち、給炭量と不活性ガスの流量との関係は、排ガス循環経路7において排ガスによる結露が発生しないように設定される。排ガス循環経路7にて結露が最も発生しやすい箇所は、例えば、排ガス循環経路7の不活性ガス供給経路12との接続箇所近傍である。
図4には、飽和水蒸気比率と温度との関係を示す。本実施形態では、一例として、排ガス循環経路7にて結露が最も発生しやすい箇所における温度を65℃とし、排ガス中の水分の上限量を21vol%とする。この場合、給炭量に応じてN
2ガス流量を
図2の通りに調整することができる。
【0026】
<変形例>
以上で、特定の実施形態を参照して本発明を説明したが、これら説明によって発明を限定することを意図するものではない。本発明の説明を参照することにより、当業者には、開示された実施形態とともに種々の変形例を含む本発明の別の実施形態も明らかである。従って、特許請求の範囲に記載された発明の実施形態には、本明細書に記載したこれらの変形例を単独または組み合わせて含む実施形態も網羅すると解すべきである。
【0027】
例えば、上記実施形態では、排ガス中の水分が上限量となる条件で不活性ガスの流量を決定するとしたが、本発明はかかる例に限定されない。操業条件のバラつきが原因となることでの結露の発生を防止するため、上限量よりも低い値となる水分(例えば、20vol%)を、上記実施形態における上限量として不活性ガスの流量を決定してもよい。なお、不活性ガスの流量を決定する際に用いる上限量を、
図4に示す飽和水蒸気比率程度とすることで、不活性ガスの使用量を最大限に低減することができる。
【0028】
<実施形態の効果>
(1)本発明の一態様に係る微粉炭の製造装置1は、ローラミル3で石炭を粉砕して微粉炭とし、粉砕された微粉炭を搬送ガスで乾燥させながらバグフィルタ5に搬送し、搬送された微粉炭をバグフィルタ5で捕集する、微粉炭の製造装置1であって、微粉炭が捕集された後の搬送ガスである排ガスを回収して循環搬送する排ガス循環経路7と、排ガス循環経路7に接続され、排ガス循環経路7に不活性ガスを供給する不活性ガス供給経路12と、排ガス循環経路7から供給され、不活性ガスを含む排ガスと、バーナ9で発生する燃焼ガスと、を搬送ガスとしてローラミル3に供給する搬送ガス供給経路13と、排ガス循環経路7にて結露が発生しないように設定され、ローラミル3に石炭を供給する速度である給炭量と、不活性ガスの供給量との関係を示す線形式を用いて、給炭量に応じて不活性ガスの供給量を調整する不活性ガス調整機構20と、を備える。
【0029】
上記(1)の構成によれば、給炭量に応じて不活性ガスの供給量を調整できるようになることから、大気温程度に温度の低い不活性ガスの供給量を低減することできる。これにより、燃焼ガスの使用量を削減できることから、微粉炭の製造コストを低廉化することができるようになる。また、微粉炭の品質を変えることなく不活性ガスの使用量を削減することもできる。
【0030】
(2)本発明の一態様に係る微粉炭の製造方法は、ローラミル3にて石炭を粉砕して微粉炭とし、粉砕された微粉炭を搬送ガスで乾燥させながらバグフィルタ5に搬送し、搬送された微粉炭をバグフィルタ5で捕集する、微粉炭の製造方法であって、排ガス循環経路7にて、バグフィルタ5による微粉炭の捕集後の搬送ガスである排ガスを回収して循環搬送し、排ガス循環経路7に接続される不活性ガス供給経路12にて、排ガス循環経路7に不活性ガスを供給し、搬送ガス供給経路13にて、排ガス循環経路7から供給され、不活性ガスを含む排ガスと、バーナ9で発生する燃焼ガスと、を搬送ガスとしてローラミル3に供給し、不活性ガスを供給する際に、排ガス循環経路7にて結露が発生しないように設定され、ローラミル3に石炭を供給する速度である給炭量と、不活性ガスの供給量との関係を示す線形式を用いて、前炭量に応じて前記不活性ガスの供給量を調整する。
上記(2)の構成によれば、上記(1)と同様な効果を得ることができる。
【実施例0031】
本発明者らが行った実施例について説明する。実施例では、上記実施形態と同様な微粉炭の製造装置1について、給炭量と不活性ガスの流量との関係として、
図2に示す関係の一次式を用いた。つまり、
図4に示す飽和水蒸気量曲線から、排ガス循環経路7にて結露が最も発生しやすい箇所における温度を65℃と仮定し、結露をしないような水蒸気比率として排ガス中の水分の上限量を21vol%とした場合における、関係式を用いた。そして、この一次式から給炭量に応じて不活性ガスの流量を調整し、微粉炭の製造を行った。なお、不活性ガスには、N
2ガスを用いた。また、比較例として、不活性ガスの流量を、給炭量が変わっても変化させずに一定の流量として微粉炭の製造を行った。なお、比較例において、不活性ガス調整機構における不活性ガスの流量の制御を除いた、他の構成については上記実施形態の微粉炭の製造装置1と同様とした。
【0032】
表1には、実施例における、製造装置1での熱量・水蒸気量バランスを示す(Case3)。表1において、石炭水分は石炭中の水分量である。PC水分は製造される微粉炭(PC)中の水分の上限量である。ヒーター出力はガスの燃焼熱である。リサイクルは再利用される排ガス(即ち、バーナ9に送られる排ガス)の流量である。ミルシールはローラミル3が回転するための隙間から空気が混入しないために封入しているN2である。低圧窒素は排ガスに供給される不活性ガスの流量である。蒸発水分は石炭水分とPC水分との差分の水が循環ガス中に含まれる量である。ブロア出口は吸引ブロア8の出口における流量である。煙突行は煙突11に送られる排ガスの流量である。排ガス中H2Oは煙突11における排ガス中の水分量である。さらに、比較例として、Case1及びCase 2に示す2条件で微粉炭の製造を行った。
【0033】
【0034】
表1に示すように、実施例では、比較例に比べて不活性ガスの供給量を低減することができることが確認できた。また、
図5には、実施例及び比較例における微粉炭品質への影響の調査結果として、給炭量と微粉炭中の水分量との関係を示す。実施例及び比較例ともに微粉炭中の水分量が1mass%以下となることが確認できた。つまり、実施例では、排ガスの希釈のために投入している不活性ガスを低減しても微粉炭の品質に影響がないことを確認できた。