(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024059012
(43)【公開日】2024-04-30
(54)【発明の名称】車両用洗浄剤組成物
(51)【国際特許分類】
C11D 1/10 20060101AFI20240422BHJP
C11D 1/75 20060101ALI20240422BHJP
C11D 1/72 20060101ALI20240422BHJP
【FI】
C11D1/10
C11D1/75
C11D1/72
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022166480
(22)【出願日】2022-10-17
(71)【出願人】
【識別番号】390003001
【氏名又は名称】川研ファインケミカル株式会社
(72)【発明者】
【氏名】金澤 知宏
【テーマコード(参考)】
4H003
【Fターム(参考)】
4H003AB09
4H003AB11
4H003AC08
4H003AC13
4H003AC15
4H003DA05
4H003DA11
4H003DB01
4H003DC02
4H003EB08
4H003EB37
4H003FA04
4H003FA20
4H003FA28
(57)【要約】
【課題】
起泡性および洗浄時の泡質および泡持ちが良好であり、同時に洗い流し時の泡切れも良好である車両用洗浄剤組成物を提供する。
【解決手段】
(A)アミノ酸型界面活性剤
(B)アミンオキシド型両性界面活性剤
(C)脂肪酸アルカノールアミド
(D)ポリオキシエチレンアルキルアミン
を含み、各成分の純分重量比率が、
(A)/(B)が0.5~3.5
[(A)+(B)]/(C)が3.0~10.0
(C)/(D)が0.7~30.0
をすべて満たす車両用洗浄剤組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)アミノ酸型界面活性剤
(B)アミンオキシド型両性界面活性剤
(C)脂肪酸アルカノールアミド
(D)ポリオキシエチレンアルキルアミン
を含み、各成分の純分重量比率が、
(A)/(B)が0.5~3.5
[(A)+(B)]/(C)が3.0~10.0
(C)/(D)が0.7~30.0
をすべて満たす車両用洗浄剤組成物。
【請求項2】
各成分の純分重量比率が、
(A)/(B)が1.0~2.0
[(A)+(B)]/(C)が5.0~10.0
(C)/(D)が1.0~5.0
をすべて満たす請求項1記載の車両用洗浄剤組成物。
【請求項3】
請求項1および2に記載の車両用洗浄剤組成物であって、純分界面活性剤量が0.1wt%での、泡切れ性評価おける回数が8回未満である車両用洗浄剤組成物。
【請求項4】
さらに撥水成分として(E)シリコーン系材料を含み、その純分重量比率、
(E)/(B)が5.0以下であり、
純分界面活性剤量が0.1wt%での、起泡力評価における泡高さが8cm以上である請求項1~3に記載の車両用洗浄剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両表面の洗浄に用いられる車両用洗浄剤組成物であって、洗浄力、起泡性および洗浄時の泡質、泡持ちが良好であり、同時に洗い流し時の泡切れも良好である車両用洗浄剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
車両等の塗装面に付着する汚染物質としては、大気中の塵、ばい煙、油粒子、虫の死骸、埃、水垢、鉱物油、合成油等の汚れが挙げられる。表面に付着した、これら汚染物質を洗い流すため、車両の表面は度々洗浄される。また、洗浄以外に、1液で洗浄と同時に車両の塗装表面に撥水性を付与する洗浄剤組成物が注目されている。
【0003】
車両の洗浄には、こびり付いた油性の汚染物質を除去するため、及び、砂埃等の微細粒や虫の死骸により塗膜表面を傷付けるのを防止するため、界面活性剤等の洗浄成分を含有する洗浄剤(シャンプー)が用いられ、十分な洗浄性の他に、起泡性、泡質、泡持ち、泡切れや塗膜表面を侵さないことが求められている。
【0004】
起泡性および泡質が十分でない場合、車両表面に存在する粉塵などの微粒子が、スポンジなどの洗浄具に引きずられ、車両の塗装面に無数の細かな傷が形成されてしまう場合がある。また、泡持ちが十分でない場合、洗浄の間にその都度泡立てて使用しなくてはならず、手間となる場合がある。また、洗い流し時の泡切れが悪い場合、洗い流しに時間がかかる場合や、泡のすすぎ残しによる塗装面への悪影響が懸念される場合があった。そのため、起泡性、泡質、泡持ちと泡切れが両立した車両用洗浄剤が強く要望されている。
【0005】
これを解決するために種々検討されており、特許文献1では界面活性剤に高級アルコール及び/又は高級脂肪酸を添加し、起泡性および泡持ちが良い車両用洗浄剤を提案している。しかし、起泡性、泡持ちが向上する一方で、洗い流し時の泡切れが不十分となる場合があった。また、特許文献2では洗い流し易くするために、低起泡性の界面活性剤と、アルコールを組み合わせる事が提案されているが、低起泡性であり、アルコールを使用することで、塗膜表面への影響や環境負荷が懸念される場合があった。
【0006】
一方、洗浄にて撥水性を付与する方法としては、例えば特許文献3では、車両用洗浄剤組成物にシリコーン等の撥水成分を添加し、撥水性を付与している。しかし、一般的にシリコーンは撥水性の他に抑泡性もある(非特許文献1)ため、添加することで起泡性および泡持ちが悪化する場合があった。
このため、車両用洗浄剤組成物にはさらなる改善の余地がある。
【0007】
また、自然・オーガニック製品市場は世界的に成長を続け、自然やオーガニックを訴求した製品への世界的な関心が高まってきており、洗浄に使用される成分も天然由来のものが好まれる。特に車両用洗浄剤組成物は、屋外での使用がほとんどであるため、下水設備等を経ずに直接環境中に排出されることが多く、生分解性が良好で環境負荷の小さいものが強く求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2012-57048
【特許文献2】特開2018-30926
【特許文献3】特開2004-123875
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】三浦太裕、シリコーンの界面化学と消泡性、油化学、42巻、10号 762‐767(1993年)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
洗浄力、起泡性および洗浄時の泡質、泡持ちが良好であり、同時に洗い流し時の泡切れも良好である車両用洗浄剤組成物を提供すること。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、上記課題を解決するため、鋭意研究した結果、アミノ酸型界面活性剤と、アミンオキシド型両性界面活性剤と、脂肪酸アルカノールアミドおよびポリオキシエチレンアルキルアミンを、特定の比率で配合することで、洗浄力、起泡性、泡質および泡持ちが良好であり、同時に泡切れも良好である洗浄剤組成物であることを見出し本発明に至った。
【0012】
即ち本発明は以下の通りである。
(1)
(A)アミノ酸型界面活性剤
(B)アミンオキシド型両性界面活性剤
(C)脂肪酸アルカノールアミド
(D)ポリオキシエチレンアルキルアミン
を含み、各成分の純分重量比率が、
(A)/(B)が0.5~3.5
[(A)+(B)]/(C)が3.0~10.0
(C)/(D)が0.7~30.0
であることを特徴とする車両用洗浄剤組成物。
(2)
各成分の純分重量比率が、
(A)/(B)が1.0~2.0
[(A)+(B)]/(C)が5.0~10.0
(C)/(D)が1.0~5.0
をすべて満たす上記(1)の車両用洗浄剤組成物。
(3)
(1)および(2)記載の車両用洗浄剤組成物であって、純分界面活性剤量が0.1wt%での、泡切れ性評価おける回数が8回未満である車両用洗浄剤組成物。
(4)
さらに撥水成分として(E)シリコーン系材料を含み、その純分重量比率、
(E)/(B)が5.0以下であり、
純分界面活性剤量が0.1wt%での、起泡力評価における泡高さが8cm以上である(1)~(3)記載の車両用洗浄剤組成物。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、(A)アミノ酸型界面活性剤、(B)アミンオキシド型両性界面活性剤、(C)脂肪酸アルカノールアミドおよび(D)ポリオキシエチレンアルキルアミンを、特定の比率で配合することで、洗浄力、起泡性、泡質および泡持ちが良好であり、同時に泡切れも良好である車両用洗浄剤組成物を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下の具体例を挙げて、本発明についてさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの説明により何ら限定されるものでは無い。
【0015】
以下、本発明の実施形態について説明する。
本発明の(A)アミノ酸型界面活性剤としては、ラウロイルメチル-β-アラニン塩(入手可能な市販品として、川研ファインケミカル社製のアラノン(登録商標)ALE、ALTA)、ヤシ油脂肪酸メチルアラニン塩(川研ファインケミカル社製のアラノンACE)、ミリストイルメチル-β-アラニン塩(川研ファインケミカル社製のアラノンAME)、アシルヒドロキシエチル-β-アラニン塩、ラウロイルサルコシン塩(川研ファインケミカル社製のソイポン(登録商標)SLE、SLTA、SLP)、ヤシ油脂肪酸サルコシン塩(川研ファインケミカル社製のソイポンSCE)、ミリストイルサルコシン塩(川研ファインケミカル社製のソイポンM-30)、ラウロイル-β-アラニン塩、ヤシ油脂肪酸-β-アラニン塩、ラウロイルグルタミン酸塩、ヤシ油脂肪酸グルタミン酸塩、ラウロイルアスパラギン酸塩、ヤシ油脂肪酸アスパラギン酸塩、ラウロイルメチルタウリン塩、ヤシ油脂肪酸メチルタウリン塩などが挙げられる。
特にラウロイルサルコシンナトリウム(入手可能な市販品として、川研ファインケミカル社製のソイポンSLE)は広く流通し入手しやすく、また本特許である車両用洗浄剤組成物の配合における洗浄力および泡質改善の観点から好ましい。また、一般的に天然油脂由来原料からなり、生分解性も良好であり、環境負荷も小さいことからより好まれる。
これらのアミノ酸型界面活性剤は1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0016】
本発明の(B)アミンオキシド型両性界面活性剤としては、例えば、ラウリン酸アミドプロピルジメチルアミンオキシド(入手可能な市販品として、川研ファインケミカル社製のソフタゾリン(登録商標)LAO-C)、コカミドプロピルアミンオキシド、コムギ胚芽油脂肪酸アミドプロピルアミンオキシド、ソイアミドプロピルアミンオキシド、ミリスタミドプロピルアミンオキシド、乳脂脂肪酸アミドプロピルアミンオキシド、オレアミンオキシド、ココアミンオキシド、ジヒドロキシエチルコカミンオキシド、ジヒドロキシエチルラウラミンオキシド、ステアラミンオキシド、デシルアミンオキシド、デシルテトラデシルアミンオキシド、ベヘナミンオキシド、ミリスタミンオキシド、ラウラミンオキシドなどが挙げられる。
本特許である車両用洗浄剤組成物の配合における、洗浄力、起泡力および泡持ち改善の観点から、特にアミドアミンオキシド型両性界面活性剤が好ましい。アミドアミンオキシド型両性界面活性剤としては、例えば、ラウリン酸アミドプロピルジメチルアミンオキシド、コカミドプロピルアミンオキシド、コムギ胚芽油脂肪酸アミドプロピルアミンオキシド、ソイアミドプロピルアミンオキシド、ミリスタミドプロピルアミンオキシド、乳脂脂肪酸アミドプロピルアミンオキシドが挙げられる。特に、広く流通し入手のしやすく、また本特許である車両用洗浄剤組成物の配合における洗浄力および起泡力改善の観点からラウリン酸アミドプロピルジメチルアミンオキシドが好ましい。また、一般的に天然油脂由来原料からなり、生分解性も良好であり、環境負荷も小さいことからより好まれる。
これらアミンオキシド型両性界面活性剤は、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0017】
本発明の(C)脂肪酸アルカノールアミドとしては、ラウリン酸ジエタノールアミド(入手可能な市販品として、川研ファインケミカル社製のアミゾール(登録商標)LDE-G)、ラウリン酸ミリスチン酸ジエタノールアミド(川研ファインケミカル社製のアミゾールLMDE)、ステアリン酸ジエタノールアミド(川研ファインケミカル社製のアミゾールSDE、SDHE)、オレイン酸ジエタノールアミド(川研ファインケミカル社製のアミゾールODE、ODHE)、ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド(川研ファインケミカル社製のアミゾールCDE-G、FDE)、パーム核油脂肪酸ジエタノールアミド(川研ファインケミカル社製のアミゾールKD-1、KD-3)、モディファイドヤシ油脂肪ジエタノールアミド(川研ファインケミカル社製のアミゾールCDC)、ヤシ油脂肪酸モノエタノールアミド(川研ファインケミカル社製のアミゾールCME)、ステアリン酸モノエタノールアミド(川研ファインケミカル社製のアミゾールSME)、ラウリン酸モノイソプロパノールアミド(川研ファインケミカル社製のアミゾールPLME-A)、ラウリン酸N-メチルエタノールアミド、ヤシ油脂肪酸N-メチルモノエタノールアミドなどが挙げられ、広く流通し入手しやすく、また本特許である車両用洗浄剤組成物の配合における起泡力、泡質、泡持ち、泡切れ改善の観点からヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド、ヤシ油脂肪酸モノエタノールアミドが好ましい。また、一般的に天然油脂由来原料からなり、生分解性も良好であり、環境負荷も小さいことからより好まれる。
【0018】
本発明の(D)ポリオキシエチレンアルキルアミンとしては、ポリオキシエチレンステアリルアミン、ポリオキシエチレンオレイルアミン、ポリオキシエチレンラウリルアミン、ポリオキシエチレンヤシ油アルキルアミンなどが挙げられ、酸化エチレンの平均付加モル数は2~15が好ましい。より好ましくは酸化エチレンの平均付加モル数が2である。
特に、広く流通し入手しやすく、また本特許である車両用洗浄剤組成物の配合における起泡力、泡質、泡持ち、泡切れ改善の観点からポリオキシエチレンヤシ油アルキルアミン(川研ファインケミカル社製のビスコファイン(登録商標)E2C)が好ましい。また、一般的に天然油脂由来原料からなり、生分解性も良好であり、環境負荷も小さいことからより好まれる。
【0019】
本特許である車両用洗浄剤組成物に配合することによる起泡力、泡質、泡持ち、泡切れ改善の効果の観点より、(C)脂肪酸アルカノールアミドおよび(D)ポリオキシエチレンアルキルアミンを併用することが好ましい。
【0020】
比率
本発明における(A)アミノ酸型界面活性剤、(B)アミンオキシド型両性界面活性剤、(C)脂肪酸アルカノールアミドおよび(D)ポリオキシエチレンアルキルアミンの純分重量比率は、
(A)/(B)が0.5~3.5
[(A)+(B)]/(C)が3.0~10.0
(C)/(D)が0.7~30.0
であることが、洗浄力、起泡力、泡質、泡持ちと泡切れを両立する観点から好ましい。
より好ましくは、
(A)/(B)が1.0~2.0
[(A)+(B)]/(C)が5.0~10.0
(C)/(D)が1.0~5.0
である。
【0021】
(B)アミンオキシド型両性界面活性剤に対して(A)アミノ酸型界面活性剤の純分重量比率が0.5未満の場合、洗浄力が低下および泡質が悪化する場合があり、3.5を超えると洗浄力が低下する場合がある。
(C)脂肪酸アルカノールアミドに対して、(B)アミンオキシド型両性界面活性剤および(A)アミノ酸型界面活性剤の純分重量合計が3.0未満の場合、起泡性や泡切れが悪化する場合がある。10.0を超える場合、泡質が低下する場合がある。
(D)ポリオキシエチレンアルキルアミンに対して、(C)脂肪酸アルカノールアミドが0.7未満の場合、泡質および泡持ちが低下する場合があり、30.0を超える場合は、泡切れが低下する場合がある。
【0022】
撥水成分
本発明の車両用洗浄剤組成物には、洗浄後に撥水性を付与するために、撥水成分を配合することができる。一般的な撥水成分としては、天然ワックス、合成ワックス、シリコーン系材料等が挙げられるが、本発明の車両用洗浄剤組成物に配合した際の撥水性付与能および安定性が優れていることから、(E)シリコーン系材料が、本発明の車両用洗浄剤組成物への配合に適している。
【0023】
(E)シリコーン系材料としては、従来公知の材料・剤型を問題なく使用することができる。例えば、シリコーン樹脂、ジメチルシリコーン、アミノ変性シリコーン、カルボキシル変性シリコーン、アルコール変性シリコーン、シラノール変性シリコーン、フェニル変性シリコーン、ポリエーテル変性シリコーン等が挙げられる。
【0024】
本願にて提供する効能効果を阻害しない範囲、および塗装表面に悪影響を及ぼさない範囲内で(E)シリコーン系材料を配合する事ができるが、起泡性および泡持ちの観点から、その純分重量比率は(B)アミンオキシド型両性界面活性剤に対して5.0wt倍以下が好ましい。5.0wt倍を超える場合、起泡力および泡持ちが低下する場合がある。
【0025】
濃度
一般に車両用洗浄剤は、濃縮状態で製造、保管、販売され、消費者が使用する際に、これを推奨希釈倍率になるまで水で薄めて、車両の洗浄に使用する。本発明における車両用洗浄剤組成物も、濃縮状態で製造、保管、販売できる。また、希釈状態でも製造、保管、販売できる。
【0026】
本発明の車両用洗浄剤組成物の使用時における、界面活性剤純分濃度としては、0.01wt%~30wt%が好ましい。0.01wt%未満の場合、洗浄力、起泡性、泡質、泡持ちが低下する場合がある。30wt%を超える場合、洗浄力等に問題は無いがゲル等の発生により、ハンドリング性が悪化する場合がある。起泡性及び泡持ちの観点から、0.1wt%前後の濃度が最適であり、かかる最適濃度になるように濃縮液の推奨希釈倍率を定めればよい。
【0027】
本発明の車両用洗浄剤組成物の濃縮時における界面活性剤純分濃度としては、液安定性や製造適性、並びに輸送コストを考慮した上で決定すればよいが、30wt%以下が好ましい。30wt%を超える場合、ゲル等の発生により、製造が困難になる場合やハンドリング性が悪化する場合がある。
【0028】
pH
本発明の車両用洗浄剤組成物の使用時のpH(25℃)は5~12が適当であり、好ましくは6~11である。使用の時のpHが中性付近の6~9となるのがより好ましい。
pHが13を超える、もしくは5未満の場合、アルカリもしくは酸腐食による、車両への影響が懸念され、例えば光沢の消失、孔食が発生する場合がある。またpHが5未満の場合は洗浄性能の低下も招く場合がある。
pHの調整にはpH調整剤を用いることができる。例えば、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、酒石酸、グリコール酸、グルクロン酸、苛性カリ、苛性ソーダなどが挙げられる。
【0029】
その他の成分
本発明の車両用洗浄剤組成物には、通常の車両用洗浄剤組成物や硬質表面洗浄剤に用いられる成分を、本願にて提供する効能効果を阻害しない範囲、および塗装表面に悪影響を及ぼさない範囲内で配合する事ができる。特に限定されるものではないが、例えば、金属封鎖剤、研磨剤、防腐剤、水溶性溶剤、紫外線遮蔽剤、アルカリ剤、ビルダー類、増粘剤、凍結防止剤、着色剤、香料及び殺菌剤等が挙げられる。
【実施例0030】
本発明の効果に関して、以下の実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例等に限定されるものではない。なお、以下の記載における処方中の配合比率は、特に断りのない限り重量(純分)比率である。実施例において、特に断りのない限り、使用成分は富士フィルム和光純薬社より購入した特級もしくは1級の試薬を使用した。
以下の実施例および比較例における本発明の車両用洗浄剤組成物の評価方法は、以下の通りである。
【0031】
表1~表3に示す、車両用洗浄剤組成物を下記製造手順に従って調製した。
(製造手順)
各界面活性剤およびその他成分の重量(純分)が表1~表3に示す比率となるように公知の手法に準じて混合、pHが7となるように、精製水で0.1Mに希釈したクエン酸を添加し、調整した。その後、純分界面活性剤量が0.1wt%となるようイオン交換水にて希釈し、実施例1~14および比較例1~24の車両洗浄剤組成物を得た。得られた車両用洗浄剤組成物について下記評価を行い、その結果を表1~表3に示す。
【0032】
評価
(洗浄力評価)
虫汚れおよび水垢汚れに対する洗浄力を評価した。
【0033】
(虫汚れに対する洗浄試験)
虫汚れ評価用サンプルの作製
乳鉢に赤虫1gを精製水にて10wt倍希釈し、乳棒を用いて赤虫をすり潰して均一な溶液にした。すり潰した赤虫溶液を、ツベルクリンを用いて0.3mL採り、清浄な自動車用塗装膜(日本テストパネル製 25mm×70mm)に均一に塗布(15mm×30mm)し、50℃の乾燥器に入れ90分間乾燥した。乾燥後、30分放冷し評価用サンプルとした。
【0034】
虫汚れに対する洗浄試験
表1~表3に示す実施例1~14および比較例1~24の車両用洗浄剤組成物を、洗面器に500mL入れ、スポンジを用いて泡立てた。得られた泡を評価用サンプルに付着させ、30秒間放置した後にスポンジを塗装膜に当て、軽い力で5往復させた。濯ぎ後に目視観察し、虫汚れに対する洗浄力を下記評価基準に基づき点数を付けた。10名の専門パネラーにより実施し、その平均点でランク分けした。ランクは◎:4、○:3~4未満、△:2~3未満、×:1~2未満とした。結果を表1~表3に示す。
4:虫汚れが目視で確認されない
3:ごくわずかに虫汚れが残っている
2:部分的に虫汚れが残っている
1:半分以上の虫汚れが残っている
【0035】
(水垢汚れに対する洗浄試験)
水垢汚れ評価用サンプルの作製
清浄な自動車用塗装膜(日本テストパネル製 25mm×70mm)に市販のミネラルウォーター(硬度 30mg/L)をパネル中央部に0.1mL滴下し、綿棒を用いて均一に塗布(15mm×30mm)し、140℃のホットプレートを用いて乾燥した。この操作を計3回繰り返し、水垢評価用サンプルを得た。
【0036】
水垢汚れに対する洗浄試験
泡立ておよび洗浄については上述した虫汚れに対する洗浄試験と同様に実施した。洗浄終了後、窒素ガンを用いて水滴を飛ばし乾燥させ、洗浄後の水垢評価用サンプルの光沢度を、ハンディー光沢計(NIPPON DENSHOKU製 PG-IIM)で測定し、光沢度(C)とした。
水垢付着前のサンプルの光沢度を同様に測定し、光沢度(A)、洗浄前のサンプルを光沢度(B)とした。
式(1)を用いて洗浄率(%)を計算し、下記評価基準にて水垢汚れに対する洗浄力を評価した。
(B-C)/(B-A)×100 式(1)
各10回試験を実施し、その平均値を最終評価とし、表1~表3に示す。
◎:60.0%以上
〇:55.0%以上60.0%未満
△:50.0%以上55.0%未満
×:50.0%未満
【0037】
(起泡力評価)
50mL有栓メスシリンダーに、表1~表3に示す実施例1~14および比較例1~24の車両用洗浄剤組成物を10mL入れ、30秒間で120回振盪し、その後静置した。静置5秒後の泡の高さを測定し、下記評価基準に基づき起泡力を評価した。各10回実施し、その平均値を最終評価とし、表1~表3に示す。
◎:10.0cm以上
〇:8.0cm以上、10.0cm未満
△:6.0cm以上、8.0cm未満
×:6.0cm未満
【0038】
(泡質評価)
50mL有栓メスシリンダーに、表1~表3に示す実施例1~14および比較例1~24の車両用洗浄剤組成物を10mL入れ、30秒間で120回振盪し、その後静置した。静置5秒後の泡の状態を目視観察し、下記評価基準に基づき点数を付けた。10名の専門パネラーにより実施し、その平均点でランク分けした。ランクは◎:4、○:3~4未満、△:2~3未満、×:1~2未満とした。結果を表1~表3に示す。
4:キメが細かく艶がある泡
3:艶はあるがやや大きいサイズの泡
2:艶はあるが大きいサイズの泡
1:艶がなくスカスカの泡
【0039】
(泡持ち性の評価)
50mL有栓メスシリンダーに、表1~表3に示す実施例1~14および比較例1~24の車両用洗浄剤組成物を10mL入れ、30秒間に120回振盪し、その後静置した。静置30分後の泡質を目視観察し、泡持ち性を下記評価基準に基づき点数を付けた。10名の専門パネラーにより実施し、その平均点でランク分けした。ランクは◎:4、○:3~4未満、△:2~3未満、×:1~2未満とした。結果を表1~表3に示す。
4:キメが細かく艶がある泡
3:艶はあるがやや大きいサイズの泡
2:艶はあるが大きいサイズの泡
1:艶がなくスカスカの泡
【0040】
(泡切れ性の評価)
表1~表3に示す実施例1~14および比較例1~24の車両用洗浄剤組成物を、200mLの分液漏斗に20mL入れ、30秒間に120回振盪し、1分間静置した。静置後、分液漏斗のコックを3分間開き、中の液と泡を吐出した。その後、100mLの水道水を分液漏斗に入れ、水道水を分液漏斗内壁全体に接触するように軽くゆすった。その後、分液漏斗のコックを1分間開き、中の液と泡を吐出した。水道水注入→吐出を1回とカウントし、目視にて分液労漏斗内の泡が無くなるまで繰り返し、回数をカウントした。10名の専門パネラーにより実施し、その平均値より下記評価基準に基づき泡切れ性を評価した。その結果を表1~表3に示す。
◎:7回未満
〇:7回以上、8回未満
△:8回以上、10回未満
×:10回以上
【0041】
【0042】
【0043】
【0044】
※1:ソイポンSLE(川研ファインケミカル社製)、※2:ソフタゾリンLAO-C(川研ファインケミカル社製)、※3:アミゾールCDE-G(川研ファインケミカル社製)、※4:アミゾールCME(川研ファインケミカル社製)、※5:ビスコファインE2C(川研ファインケミカル社製)、※6:DOWSIL SM 8904 COSMETIC EMULSION(ダウ・東レ株式会社製)
【0045】
評価の結果
本発明の車両用洗浄剤組成物の範囲内で調製された実施例1~14は、すべての評価が〇評価以上となり、洗浄力、起泡性および泡持ちが良好であり、同時に泡切れも良好である車両用洗浄剤組成物であることが確認できた。
一方で、(B)アミンオキシド型両性界面活性剤に対して(A)アミノ酸型界面活性剤の配合量が範囲外である場合には、洗浄力が△評価以下となった(比較例3,5,8,11,19)。(C)脂肪酸アルカノールアミドに対して(A)アミノ酸型界面活性剤と(B)アミンオキシド型両性界面活性剤の比率が範囲外である場合は、起泡力、泡質、泡持ちおよび泡切れのいずれかが△評価以下となった(比較例2,3,5、9、10、12~14、16、20)。(D)ポリオキシエチレンアルキルアミンに対して、(C)脂肪酸アルカノールアミドの比率が範囲外である洗浄剤は泡切れ、もしくは泡持ちが△評価以下となった(比較例1~9、12~18、21)。
高級脂肪酸や高級アルコールを添加した比較例22~24では、起泡力や泡質、泡持ちは良好であるが、泡切れが△評価以下となった。
本発明の車両用洗浄剤組成物は、洗浄力、起泡性および泡持ちが良好であり、同時に泡切れも良好であるため、自動車、自転車、鉄道車両等の車両に限らず、広く硬質表面の洗浄剤として利用できる。