(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024059015
(43)【公開日】2024-04-30
(54)【発明の名称】半導体装置および半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 29/78 20060101AFI20240422BHJP
H01L 21/336 20060101ALI20240422BHJP
H01L 29/739 20060101ALI20240422BHJP
H01L 29/12 20060101ALI20240422BHJP
【FI】
H01L29/78 653C
H01L29/78 652J
H01L29/78 652M
H01L29/78 658F
H01L29/78 658G
H01L29/78 655A
H01L29/78 652T
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022166485
(22)【出願日】2022-10-17
(71)【出願人】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104190
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 昭徳
(72)【発明者】
【氏名】野口 晴司
(57)【要約】
【課題】CMP技術を適用せずに、多結晶シリコン層の落ち込み量を低減し、n
+型エミッタ領域やn
+型ソース領域の深さを浅くすることができる半導体装置および半導体装置の製造方法を提供する。
【解決手段】半導体装置の製造方法は、第1半導体層14の酸化膜23を形成し、酸化膜237をエッチングして、トレンチ用マスク27形成し、トレンチ用マスク27をマスクとして、トレンチ26を形成し、トレンチ用マスク27を残したまま、ゲート絶縁膜8を形成し、ゲート絶縁膜8上に、多結晶シリコン層26を形成し、多結晶シリコン層26をエッチングして、ゲート電極10を形成する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1導電型の半導体基板と、
前記半導体基板のおもて面に設けられた、第2導電型の第1半導体層と、
前記第1半導体層の、前記半導体基板側に対して反対側の表面層に選択的に設けられた第1導電型の第1半導体領域と、
前記第1半導体領域および前記第1半導体層を貫通して前記第1半導体基板に達するトレンチと、
前記トレンチの内部にゲート絶縁膜を介して設けられたゲート電極と、
前記第1半導体層および前記第1半導体領域の表面に設けられた第1電極と、
前記半導体基板の裏面に設けられた第2電極と、
を備え、
前記第1半導体領域の前記第1電極側の表面に最も近い前記ゲート電極の表面と、前記第1半導体領域の前記第1電極側の表面との距離は、0.1μm以上0.3μm以下であることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
第1導電型の半導体基板のおもて面に、第2導電型の第1半導体層を形成する第1工程と、
前記第1半導体層の、前記半導体基板側に対して反対側の表面に酸化膜を形成する第2工程と、
前記酸化膜をエッチングして、トレンチ用マスクを形成する第3工程と、
前記トレンチ用マスクをマスクとして、前記第1半導体層を貫通して前記半導体基板に達するトレンチを形成する第4工程と、
前記トレンチ用マスクを残したまま、前記第1半導体層の表面と、前記トレンチの底部および側壁と、に沿ってゲート絶縁膜を形成する第5工程と、
前記ゲート絶縁膜上に、多結晶シリコン層を形成する第6工程と、
前記多結晶シリコン層をエッチングして、ゲート電極を形成する第7工程と、
前記第1半導体層の、前記半導体基板側に対して反対側の表面層に選択的に第1導電型の第1半導体領域を形成する第8工程と、
前記第1半導体層および前記第1半導体領域の表面に第1電極を形成する第9工程と、
前記炭化珪素半導体基板の裏面に第2電極を形成する第10工程と、
を含むことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記第7工程では、前記第1半導体領域の前記第1電極側の表面に最も近い前記多結晶シリコン層の表面と、前記第1半導体領域の前記第1電極側の表面との距離を、0.1μm以上0.3μm以下に形成することを特徴とする請求項2に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記第5工程より後、前記第6工程より前に、
前記トレンチ用マスクの一部をエッチングして、前記トレンチ用マスクの厚さを0.1μm以上0.15μm以下とする工程をさらに含むことを特徴とする請求項2に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記第2工程では、前記酸化膜の代わりに窒化膜を形成することを特徴とする請求項2に記載の半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、半導体装置および半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
パワー半導体装置は、バイポーラトランジスタやIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor:絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ)、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor:絶縁ゲート型電界効果トランジスタ)など複数種類あり、これらは用途に合わせて使い分けられている。
【0003】
例えば、バイポーラトランジスタやIGBTは、MOSFETに比べて電流密度は高く大電流化が可能であるが、高速にスイッチングさせることができない。具体的には、バイポーラトランジスタは数kHz程度のスイッチング周波数での使用が限界であり、IGBTは数十kHz程度のスイッチング周波数での使用が限界である。一方、パワーMOSFETは、バイポーラトランジスタやIGBTに比べて電流密度が低く大電流化が難しいが、数MHz程度までの高速スイッチング動作が可能である。
【0004】
プレーナゲート構造は、半導体基板のおもて面上に平板状にMOSゲートを設けたMOSゲート構造である。トレンチゲート構造は、半導体基板(半導体チップ)のおもて面に形成したトレンチ内にMOSゲートを埋め込んだMOSゲート構造であり、トレンチの側壁に沿って半導体基板のおもて面と直交する方向にチャネル(反転層)が形成される。このため、半導体基板のおもて面に沿ってチャネルが形成されるプレーナゲート構造と比べて、単位面積当たりの単位セル(素子の構成単位)密度を増やすことができ、単位面積当たりの電流密度を増やすことができるため、コスト面で有利である。
【0005】
図12は、従来の半導体装置の製造方法によるトレンチ構造形成のフローチャートである。
図13~
図20は、従来の半導体装置の製造方法によるトレンチ構造の形成途中の状態を示す断面図である。これらの図により、従来の半導体装置でのゲートトレンチ(トレンチ構造)の形成方法を説明する。
【0006】
まず、
図13に示すように、半導体基体144の表面上に、熱酸化膜(SiO
2)123を成長させる(ステップS11)。半導体基体144は、例えば、n
-型半導体基板内に、p型ベース領域、n型蓄積層等のおもて面素子構造が形成されたものである。
【0007】
次に、
図14に示すように、熱酸化膜123をエッチングすることにより、所定の開口幅を有するトレンチ用マスク127を形成する(ステップS12)。次に、
図15に示すように、ドライエッチングによってシリコン(Si)をエッチングして、ゲートトレンチ146を形成する(ステップS13)。次に、
図16に示すように、トレンチ用マスク127を全て除去する(ステップS14)。
【0008】
次に、
図17に示すように、半導体基体144のおもて面と、ゲートトレンチ146の底部および側壁と、に沿ってゲート絶縁膜108を形成する(ステップS15)。次に、
図18に示すように、ゲート絶縁膜108上に、例えばリン原子がドーピングされた多結晶シリコン層(ポリシリコン)126を形成する(ステップS16)。この多結晶シリコン層126はゲートトレンチ146内を埋めるように形成する。
【0009】
次に、
図19に示すように、多結晶シリコン層126をエッチングし、ゲートトレンチ146内部に残すことによって、ゲート電極110を形成する(ステップS17)。このエッチングでは、メサ表面の多結晶シリコン層126をすべてエッチングし、ゲート絶縁膜108が露出するまで行う。メサは、隣り合うゲートトレンチ146に挟まれる領域であってよい。次に、
図20に示すように、半導体基体144の表面上に、フォトリソグラフィ技術によって所望の開口部を有するマスク(不図示)を、例えばレジストで形成する。そして、このレジストをマスクとしてイオン注入法によってn型の不純物をイオン注入する。それによって、半導体基体144のおもて面領域の一部に、n
+型エミッタ領域112を形成する(ステップS18)。このようにして、トレンチ構造が形成される。
【0010】
また、塩素系ガスおよび臭素系ガスの少なくとも一方と酸素ガスとを含む混合ガスを枚葉式ドライエッチング装置に導入して、ポリシリコン層のエッチバック除去を行うことで、ポリシリコン層のエッチバック除去時のポリシリコンプラグの上面の落ち込み深さを最小にする技術が公知である(例えば、下記特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上述したように、トレンチ用マスク除去工程(ステップS14)において、トレンチ146間の半導体基体144おもて面(メサ表面)にあるSiエッチング時のハードマスクとして用いられたトレンチ用マスク127はすべて除去され、Si表面はSiが露出した状態である。
【0013】
この状態からゲート酸化を行い、膜厚0.1μm程度のゲート絶縁膜108を成膜し、多結晶シリコン層126を形成する工程で多結晶シリコンを膜厚0.8μm程度成長させている。この後、エッチング工程で多結晶シリコン層126をエッチングするが、その際、メサ表面に堆積した多結晶シリコン層126がすべてエッチングされ、下地酸化膜(ゲート絶縁膜108)が露出するまで行う。このとき、トレンチ146内に埋め込まれた多結晶シリコン層126も同時にエッチングされるため、多結晶シリコン層126はSi表面より落ち込む。落ち込み量は、中央が最も落ち込みが大きく、トレンチ146側壁のゲート絶縁膜108に接する領域では最も小さくなっている。半導体基体144おもて面(Si表面)と多結晶シリコン層126の最も落ち込みが少ない部分との距離h3は、Si表面から0.3~0.5μm程度に達する(
図20参照)。
【0014】
ここで、特性改善のため、トレンチIGBT、トレンチMOSFETのトレンチ146構造の微細化に伴い、トレンチ146横に形成するn
+型エミッタ領域112や、n
+型ソース領域の拡散深さを浅く形成する必要がある。この場合、
図20に示すように、上記の従来技術ではトレンチ内146の多結晶シリコン層126の上記距離h3が、n
+型エミッタ領域112や、n
+型ソース領域の膜厚より深くなってしまい、n
+型エミッタ領域112やn
+型ソース領域が、ゲート電極110(多結晶シリコン層126)と接しないようになる。この場合、IGBT、MOSFETが動作しなくなるため、微細化に限界が生じるという課題がある。
【0015】
また、上記課題を解決する手段として、CMP(Chemical Mechanical Polishing)技術により表面の多結晶シリコン層126を全面でエッチングすることが一般に知られている。しかし、CMP技術では表面上の多結晶シリコン層126がすべてエッチングされるため、活性領域のトレンチゲート構造部以外の領域で表面に多結晶シリコン層126を形成したい領域がある場合には、再度多結晶シリコン層126を成膜させる必要があり、ウェハプロセスのコストアップにつながるという課題がある。さらに、CMP技術適用自体が従来の多結晶シリコン層126のエッチング技術に比べてウェハプロセスコストが高いという課題もある。
【0016】
この発明は、上述した従来技術による問題点を解消するため、CMP技術を適用せずに、多結晶シリコン層の落ち込み量を低減し、n+型エミッタ領域やn+型ソース領域の深さを浅くすることができる半導体装置および半導体装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上述した課題を解決し、本発明の目的を達成するため、この発明にかかる半導体装置は、次の特徴を有する。第1導電型の半導体基板のおもて面に、第2導電型の第1半導体層が設けられる。前記第1半導体層の、前記半導体基板側に対して反対側の表面層に選択的に第1導電型の第1半導体領域が設けられる。前記第1半導体領域および前記第1半導体層を貫通して前記第1半導体基板に達するトレンチが設けられる。前記トレンチの内部にゲート絶縁膜を介してゲート電極が設けられる。前記第1半導体層および前記第1半導体領域の表面に第1電極が設けられる。前記半導体基板の裏面に第2電極が設けられる。前記第1半導体領域の前記第1電極側の表面に最も近い前記ゲート電極の表面と、前記第1半導体領域の前記第1電極側の表面との距離は、0.1μm以上0.3μm以下である。
【0018】
上述した課題を解決し、本発明の目的を達成するため、この発明にかかる半導体装置の製造方法は、次の特徴を有する。まず、第1導電型の半導体基板のおもて面に、第2導電型の第1半導体層を形成する第1工程を行う。次に、前記第1半導体層の、前記半導体基板側に対して反対側の表面に酸化膜を形成する第2工程を行う。次に、前記酸化膜をエッチングして、トレンチ用マスクを形成する第3工程を行う。次に、前記トレンチ用マスクをマスクとして、前記第1半導体層を貫通して前記半導体基板に達するトレンチを形成する第4工程を行う。次に、前記トレンチ用マスクを残したまま、前記第1半導体層の表面と、前記トレンチの底部および側壁と、に沿ってゲート絶縁膜を形成する第5工程を行う。次に、前記ゲート絶縁膜上に、多結晶シリコン層を形成する第6工程を行う。次に、前記多結晶シリコン層をエッチングして、ゲート電極を形成する第7工程を行う。次に、前記第1半導体層の、前記半導体基板側に対して反対側の表面層に選択的に第1導電型の第1半導体領域を形成する第8工程を行う。次に、前記第1半導体層および前記第1半導体領域の表面に第1電極を形成する第9工程を行う。次に、前記炭化珪素半導体基板の裏面に第2電極を形成する第10工程を行う。
【0019】
また、この発明にかかる半導体装置の製造方法は、上述した発明において、前記第7工程では、前記第1半導体領域の前記第1電極側の表面に最も近い前記多結晶シリコン層の表面と、前記第1半導体領域の前記第1電極側の表面との距離を、0.1μm以上0.3μm以下に形成することを特徴とする。
【0020】
また、この発明にかかる半導体装置の製造方法は、上述した発明において、前記第5工程より後、前記第6工程より前に、前記トレンチ用マスクの一部をエッチングして、前記トレンチ用マスクの厚さを0.1μm以上0.15μm以下とする工程をさらに含むことを特徴とする。
【0021】
また、この発明にかかる半導体装置の製造方法は、上述した発明において、前記第2工程では、前記酸化膜の代わりに窒化膜を形成することを特徴とする。
【0022】
上述した発明によれば、トレンチ用マスクの全部または一部を残した状態でゲート絶縁膜を形成する工程以降の工程を行っている。これにより、半導体基体表面のゲート絶縁膜とトレンチ用マスクとからなる下地酸化膜の厚さは、従来よりも厚くなり、エッチング後の多結晶シリコン層の落ち込み量を低減することができる。このため、トレンチIGBTのn+型エミッタ領域(第1導電型の第1半導体領域)、トレンチMOSFETのn+型ソース領域の深さを浅くしても、n+型エミッタ領域やn+型ソース領域が、ゲート電極(多結晶シリコン層)と接し、IGBT、MOSFETが動作しなくなることを防ぐことができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明にかかる半導体装置および半導体装置の製造方法によれば、CMP技術を適用せずに、多結晶シリコン層の落ち込み量を低減し、n+型エミッタ領域やn+型ソース領域の深さを浅くすることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】実施の形態にかかる半導体装置の構造を示す断面図である。
【
図2】実施の形態にかかる半導体装置の製造方法によるトレンチ構造形成のフローチャートである。
【
図3】実施の形態にかかる半導体装置の製造方法によるトレンチ構造の形成途中の状態を示す断面図である(その1)。
【
図4】実施の形態にかかる半導体装置の製造方法によるトレンチ構造の形成途中の状態を示す断面図である(その2)。
【
図5】実施の形態にかかる半導体装置の製造方法によるトレンチ構造の形成途中の状態を示す断面図である(その3)。
【
図6】実施の形態にかかる半導体装置の製造方法によるトレンチ構造の形成途中の状態を示す断面図である(その4)。
【
図7】実施の形態にかかる半導体装置の製造方法によるトレンチ構造の形成途中の状態を示す断面図である(その5)。
【
図8】実施の形態にかかる半導体装置の製造方法によるトレンチ構造の形成途中の状態を示す断面図である(その6)。
【
図9】実施の形態にかかる半導体装置の製造方法によるトレンチ構造の形成途中の状態を示す断面図である(その7)。
【
図10】実施の形態にかかる半導体装置の製造方法によるトレンチ構造の形成途中の状態を示す断面図である(その8)。
【
図11】実施の形態にかかる半導体装置の製造方法によるトレンチ構造の形成途中の状態を示す断面図である(その9)。
【
図12】従来の半導体装置の製造方法によるトレンチ構造形成のフローチャートである。
【
図13】従来の半導体装置の製造方法によるトレンチ構造の形成途中の状態を示す断面図である(その1)。
【
図14】従来の半導体装置の製造方法によるトレンチ構造の形成途中の状態を示す断面図である(その2)。
【
図15】従来の半導体装置の製造方法によるトレンチ構造の形成途中の状態を示す断面図である(その3)。
【
図16】従来の半導体装置の製造方法によるトレンチ構造の形成途中の状態を示す断面図である(その4)。
【
図17】従来の半導体装置の製造方法によるトレンチ構造の形成途中の状態を示す断面図である(その5)。
【
図18】従来の半導体装置の製造方法によるトレンチ構造の形成途中の状態を示す断面図である(その6)。
【
図19】従来の半導体装置の製造方法によるトレンチ構造の形成途中の状態を示す断面図である(その7)。
【
図20】従来の半導体装置の製造方法によるトレンチ構造の形成途中の状態を示す断面図である(その8)。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に添付図面を参照して、この発明にかかる半導体装置および半導体装置の製造方法の好適な実施の形態を詳細に説明する。本明細書および添付図面においては、nまたはpを冠記した層や領域では、それぞれ電子または正孔が多数キャリアであることを意味する。また、nやpに付す+および-は、それぞれそれが付されていない層や領域よりも高不純物濃度および低不純物濃度であることを意味する。なお、以下の実施の形態の説明および添付図面において、同様の構成には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。本明細書では、ミラー指数の表記において、“-”はその直後の指数につくバーを意味しており、指数の前に“-”を付けることで負の指数を表している。そして、同じまたは同等との記載は製造におけるばらつきを考慮して5%以内まで含むとするのがよい。
【0026】
(実施の形態)
実施の形態にかかる半導体装置の構造について、IGBTを例に説明する。
図1は、実施の形態にかかる半導体装置の構造を示す断面図である。
図1では、オン状態の時に電流の流れる活性領域のみを記載し、活性領域の周囲を略矩形状に囲み、耐圧構造が設けられているエッジ終端領域の記載を省略している。耐圧構造は、活性領域とエッジ終端領域との境界付近の電界を緩和して耐圧を保持する機能を有する。耐圧とは、pn接合でアバランシェ降伏が起きたことでドレイン・ソース間電流が増加してもそれ以上ドレイン・ソース間電圧が増加しない限界の電圧である。
【0027】
IGBT50は、n-型ドリフト層となるn-型半導体基板(第1導電型の半導体基板)18のおもて面側の表面層に、n型蓄積層16が設けられていてもよい。n型蓄積層16は、キャリアの広がり抵抗を低減させる、いわゆる電流拡散層(Current Spreading Layer:CSL)である。n型蓄積層16上(n-型半導体基板18のおもて面側)にp型ベース領域(第2導電型の第1半導体層)14が設けられている。p型ベース領域14を貫通してn-型半導体基板18に達するゲートトレンチ46が設けられている。ゲートトレンチ46は、両側にn+型エミッタ領域(第1導電型の第1半導体領域)12が設けられ、所定の間隔で例えばストライプ状の平面レイアウトに配置され、p型ベース領域14を複数の領域(メサ部)に分離する。ゲートトレンチ46の内部には、ゲートトレンチ46の内壁に沿ってゲート絶縁膜8が設けられ、ゲート絶縁膜8の内側にゲート電極10が設けられている。
【0028】
p型ベース領域14の内部には、各メサ部にそれぞれn+型エミッタ領域12およびp+型コンタクト領域13が選択的に設けられている。n+型エミッタ領域12は、ゲートトレンチ46の内壁に設けられたゲート絶縁膜8を挟んでゲート電極10に対向する。n+型エミッタ領域12は、p+型コンタクト領域13よりもトレンチ46側に設けられている。p+型コンタクト領域13は設けられていなくてもよい。p+型コンタクト領域13が設けられていない場合、n+型エミッタ領域12よりもトレンチ46から離れた箇所でp型ベース領域14が半導体基体44のおもて面まで達し、半導体基体44のおもて面に露出されている。
【0029】
おもて面電極37は、コンタクトホール42を介してn+型エミッタ領域12に接するとともに、層間絶縁膜24によってゲート電極10と電気的に絶縁されている。n+型エミッタ領域12には、選択的に開口が設けられ、その開口において、おもて面電極37とp型ベース領域14が電気的に接続していてもよい。おもて面電極37は、エミッタ電極として機能する。
【0030】
n-型半導体基板18の内部には、基板裏面側に、n+型フィールドストップ(FS)層20が設けられていてもよい。n+型FS層20は、オフ時にp型ベース領域14とn-型半導体基板18との間のpn接合から後述するp+型コレクタ領域22側に伸びる空乏層の伸びを抑制する機能を有する。
【0031】
n-型半導体基板18の裏面側の表面層の、n+型FS層20よりもn-型半導体基板18の裏面から浅い位置には、p+型コレクタ領域22が設けられ、裏面電極38は、p+型コレクタ領域22の表面(n-型半導体基板の裏面全体)に設けられている。裏面電極38は、コレクタ電極として機能する。p+型コレクタ領域22、n-型半導体基板18、n+型FS層20、n型蓄積層16およびp型ベース領域14を合わせて半導体基体44と称する。
【0032】
また、コンタクトホール42は、その底面および側面に、Ti(チタン)、TiN(窒化チタン)、Ta(タンタル)、TaN(窒化タンタル)などからなる、またはこれらの積層からなる、バリアメタル25を形成してもよい。また、おもて面電極37と、n+型エミッタ領域12およびp+型コンタクト領域13とを良好に接続させるため、コンタクトホール42は、タングステン(W)やモリブデン(Mo)からなる、金属プラグ43を形成してもよい。
【0033】
実施の形態では、ゲート電極10はn
+型エミッタ領域12の表面より落ち込んでいる。
図1には記載していないが、落ち込み量は、中央が最も落ち込みが大きく、トレンチ46側壁のゲート絶縁膜8に接する領域では最も小さくなっている(
図8参照)。実施の形態では、後述する方法で製造(作製)されているため、n
+型エミッタ領域12のおもて面電極37側の表面に最も近いゲート電極10の表面と、n
+型エミッタ領域12のおもて面電極37側の表面との距離Lは、0.1μm以上0.3μm以下となっている。距離Lは、厚み方向の距離であってもよい。n
+型エミッタ領域12のおもて面電極37側の表面に最も近いゲート電極10の表面は、ゲート電極10の最も落ち込みが少ない表面である。
【0034】
(実施の形態にかかる半導体装置の製造方法)
次に、実施の形態にかかる半導体装置の製造方法について説明する。
図2は、実施の形態にかかる半導体装置の製造方法によるトレンチ構造形成のフローチャートである。
図3~
図11は、実施の形態にかかる半導体装置の製造方法によるトレンチ構造の形成途中の状態を示す断面図である。ここでは、
図1のIGBT50のトレンチ構造の形成を主に説明する。
【0035】
まず、例えばシリコンからなるn-型半導体基板(半導体ウェハ)18のおもて面側に、トレンチゲート型IGBT50のMOSゲート部等のおもて面素子構造を形成する。例えば、次のようにして、おもて面素子構造が形成される。まず、n-型ドリフト領域となるn-型半導体基板18を用意する。次に、n-型半導体基板18のおもて面上に、フォトリソグラフィ技術によって所定の開口部を有するイオン注入用マスク(不図示)を例えばフォトレジストで形成する。開口部は、n型蓄積層16が設けられる位置に形成される。このイオン注入用マスクをマスクとして、n型不純物、例えばリン(P)、砒素(As)などのイオン注入を行う。このイオン注入により、n-型半導体基板18の内部にn型不純物が注入されたn型蓄積層16が形成される。
【0036】
次に、n-型半導体基板18のおもて面上に、フォトリソグラフィ技術によって所定の開口部を有するイオン注入用マスク(不図示)を例えばフォトレジストで形成する。開口部は、p型ベース領域14が設けられる位置に形成される。このイオン注入用マスクをマスクとして、p型不純物、例えばホウ素(B)などのイオン注入を行う。このイオン注入により、n-型半導体基板18のおもて面側の表面層にp型不純物が注入されたp型ベース領域14が形成される(第1工程)。
【0037】
次に、
図3に示すように、半導体基体44の表面上に、熱酸化膜(SiO
2)23を成長させる(ステップS1:第2工程)。
図3~
図11での半導体基体44は、n
-型半導体基板18内に、p型ベース領域14、n型蓄積層16等のおもて面素子構造が形成されたものである。
【0038】
次に、
図4に示すように、熱酸化膜23をエッチングすることにより、所定の開口幅を有するトレンチ用マスク27を形成する(ステップS2:第3工程)。トレンチ用マスク27は、窒化膜、例えば、窒化シリコン膜(Si
3N
4)を成長させ、フォトリソグラフィによって、所定の開口幅を有するように形成することもできる。窒化膜は、熱酸化膜23よりもエッチングレートが少ないため、熱酸化膜23より薄い膜で同じ効果を得ることができる。次に、
図5に示すように、トレンチ用マスク27をマスクとして、ドライエッチングによってシリコンをエッチングして、p型ベース領域14を貫通し、n
-型半導体基板18に達するゲートトレンチ46を形成する(ステップS3:第4工程)。
【0039】
ゲートトレンチ46を形成した後、トレンチ用マスク27をゲートトレンチ46の開口部より、
図10に示すように、幅h2だけ除去して、ゲートトレンチ46のダメージを除去するための等方性エッチングや、ゲートトレンチ46の底部およびゲートトレンチ46の開口部の角を丸めるための犠牲酸化を行ってもよい。幅h2は、例えば、0.1μm~0.15μmである。
図11は、底部および開口部の角を丸めた後のゲートトレンチ46を示す。等方性エッチングと犠牲酸化はどちらか一方のみを行ってもよい。また、等方性エッチングを行った後に犠牲酸化を行ってもよい。これにより、シリコンのきれいな表面を出すことができ、角を丸めることにより、トレンチ46の底部や開口部での電界集中を抑えることができる。
【0040】
次に、
図6に示すように、実施の形態では、トレンチ用マスク27を残したまま、半導体基体44の表面と、ゲートトレンチ46の底部および側壁と、に沿ってゲート絶縁膜8を形成する(ステップS4:第5工程)。ゲート絶縁膜8は、熱酸化により形成されてよい。ゲート絶縁膜8は、CVD法により形成されてもよい。
【0041】
次に、
図7に示すように、ゲート絶縁膜8上に、例えばリン原子がドーピングされた多結晶シリコン層(ポリシリコン)26を形成する(ステップS5:第6工程)。この多結晶シリコン層26はゲートトレンチ46内を埋めるように形成する。この多結晶シリコン層26は、CVD法により形成されてよい。
【0042】
次に、
図8に示すように、多結晶シリコン層26をエッチングし、ゲートトレンチ46内部に残すことによって、ゲート電極10を形成する(ステップS6:第7工程)。このエッチングでは、メサ表面の多結晶シリコン層26をすべてエッチングし、トレンチ用マスク27が露出するまで行う。このとき、トレンチ46内に埋め込まれた多結晶シリコン層26も同時にエッチングされるため、多結晶シリコン層26はSi表面より落ち込む。落ち込み量は、中央が最も落ち込みが大きく、トレンチ46側壁のゲート絶縁膜8に接する領域では最も小さくなっている。
【0043】
次に、
図9に示すように、半導体基体44の表面上に、フォトリソグラフィ技術によって所定の開口部を有するイオン注入用マスク(不図示)を例えばフォトレジストで形成する。開口部は、p型ベース領域14内に形成されるn
+型エミッタ領域12が設けられる位置に形成される。このイオン注入用マスクをマスクとして、n型不純物、例えばリン(P)、砒素(As)などのイオン注入を行う。このイオン注入により、p型ベース領域13の表面層にn型不純物が注入されたn
+型エミッタ領域12が形成される(ステップS7:第8工程)。
【0044】
このように、実施の形態では、ゲートトレンチ46形成後に、ゲートトレンチ46間の半導体基体44表面(メサ表面)にあるトレンチエッチング時のハードマスクであるトレンチ用マスク27の全部または一部を残した状態でゲート絶縁膜8を形成する工程以降の工程を行っている。
【0045】
ステップS3のシリコンをエッチングする際、ハードマスクとして用いたトレンチ用マスク27は、エッチングの選択比に従ってエッチングされる。例えば、あるエッチング条件においては、シリコンをエッチングする前、0.4μmあったトレンチ用マスク27は、エッチング後では0.2μm程度になる。トレンチ用マスク27は、表面が重金属で汚染されているため、ゲート絶縁膜8の形成前に、軽くエッチングして表面を除去して、厚さを0.1μm以上0.15μm以下程度にしてもよい。
【0046】
実施の形態のように、トレンチ用マスク27を残した状態では、メサ表面のゲート絶縁膜8とトレンチ用マスク27とからなる下地酸化膜の厚さ(0.3μm)は、従来のゲート絶縁膜8(0.1μm)だけの場合よりも厚くなり、多結晶シリコン層26をエッチング後の多結晶シリコン層26の落ち込み量は変わらなくても、半導体基体44表面からの落ち込み量を低減することができる。
【0047】
例えば、メサ表面の下地酸化膜の厚さが0.3μmmの場合、半導体基体44表面(Si表面)と多結晶シリコン層26の最も落ち込みが少ない部分との距離h1(従来技術では0.3μm~0.5μm程度)は、Si表面から0.1~0.3μm程度に低減することができる(
図9参照)。このため、トレンチIGBTのn
+型エミッタ領域12、トレンチMOSFETのn
+型ソース領域の深さを浅くしても、n
+型エミッタ領域12やn
+型ソース領域が、ゲート電極10(多結晶シリコン層26)と接し、IGBT、MOSFETが動作しなくなることを防ぐことができる。このように、多結晶シリコン層26の落ち込み量を低減することができるため、CMP技術を適用せずともトレンチIGBTのn
+型エミッタ領域12、トレンチMOSFETのn
+型ソース領域の深さを浅くすることができる。
【0048】
次に、n-型半導体基板18の表面上に、フォトリソグラフィ技術によって所定の開口部を有するイオン注入用マスク(不図示)を例えばフォトレジストで形成する。開口部は、p型ベース領域14内に形成されるp+型コンタクト領域13が設けられる位置に形成される。このイオン注入用マスクをマスクとして、p型不純物、例えばBなどのイオン注入を行う。このイオン注入により、p型ベース領域13の表面層にp型不純物が注入されたp+型コンタクト領域13が形成される。
【0049】
次に、イオン注入で形成したp型ベース領域14、n型蓄積層16、n+型エミッタ領域12、p+型コンタクト領域13を活性化するための熱処理(活性化アニール)を行う。例えば、1000℃程度の不活性ガス雰囲気で熱処理(アニール)を行う。活性化アニールは、このように一括して行ってよいし、イオン注入する毎に行ってもよい。
【0050】
次に、トレンチゲート型IGBT50のゲート電極10を覆うように、n-型半導体基板18のおもて面の全面に、層間絶縁膜24を形成する。層間絶縁膜24は、例えば、HTO膜を形成し、BPSGをHTO膜上に堆積することで形成されてよい。HTO膜およびBPSGは、CVD法により形成されてよい。次に、熱処理(リフロー)や化学機械研磨(CMP)等により層間絶縁膜24を平坦化し、おもて面電極の被覆性(ステップカバレッジ)を向上させてよい。次に、層間絶縁膜24上に、フォトレジスト塗布、露光、現像プロセスからなるパターニングを行い、所定領域が開口したレジスト膜を形成する。
【0051】
レジスト膜は、トレンチゲート型IGBT50のコンタクトホール42の形成領域に対応する部分に開口部を有する。次に、レジスト膜をマスクとしてドライエッチングを行い、層間絶縁膜24を選択的に除去する。ドライエッチングにより、レジスト膜の開口部に露出された部分において層間絶縁膜24を深さ方向に貫通して、n-型半導体基板18のおもて面に達するコンタクトホール42を形成する。
【0052】
次に、コンタクトホール42の側壁および底部にバリアメタル25を形成する。バリアメタル25は、層間絶縁膜24上にも形成されていなくてよい。バリアメタル25は、層間絶縁膜24上に形成されていてもよい。バリアメタル25は、CVD方式、あるいは、スパッタ方式で形成されてよい。
【0053】
次に、コンタクトホール42に埋め込むように金属プラグ43を形成する。金属プラグ43はタングステン(W)であってよい。金属プラグ43は、n-型半導体基板18のおもて面全面にタングステン膜を形成し、エッチバックすることでコンタクトホール42を埋め込むように形成してよい。
【0054】
次に、n-型半導体基板18のおもて面の全面にエミッタ電極となるおもて面電極37を形成する(第9工程)。おもて面電極37は、例えば、アルミニウム(Al)を主成分とする金属膜である。おもて面電極37は、例えば、スパッタ法で形成される。おもて面電極37は、コンタクトホール42内の金属プラグ43およびバリアメタル25を介して、n+型エミッタ領域12およびp+型コンタクト領域13と電気的に接続する。
【0055】
次に、n-型半導体基板18を裏面側から研削していき、半導体装置として用いる製品厚さの位置まで研削する。次に、n-型半導体基板18の研削後の裏面からリン(P)やセレン(Se)をイオン注入し、n-型半導体基板18の裏面側の内部に、n+型FS層20を形成する。
【0056】
次に、n-型半導体基板18の裏面からホウ素(B)をイオン注入し、n-型半導体基板18の裏面の表面層の、n+型FS層20よりも浅い位置に、p+型コレクタ領域22を形成する。
【0057】
次に、n
-型半導体基板18にイオン注入した不純物を熱処理により拡散させる。次に、n
-型半導体基板18の裏面にコレクタ電極となる裏面電極38を形成する(第10工程)。裏面電極38は、例えば、アルミニウム(Al)を主成分とする金属膜である。裏面電極38は、例えば、スパッタ法で形成される。その後、n
-型半導体基板18を切断して個々のチップ状に個片化することで、
図1の半導体装置が完成する。
【0058】
以上、説明したように、実施の形態によれば、トレンチ用マスクの全部または一部を残した状態でゲート絶縁膜を形成する工程以降の工程を行っている。これにより、半導体基体表面のゲート絶縁膜とトレンチ用マスクとからなる下地酸化膜の厚さは、従来よりも厚くなり、エッチング後の多結晶シリコン層の落ち込み量を低減することができる。このため、トレンチIGBTのn+型エミッタ領域、トレンチMOSFETのn+型ソース領域の深さを浅くしても、n+型エミッタ領域やn+型ソース領域が、ゲート電極(多結晶シリコン層)と接し、IGBT、MOSFETが動作しなくなることを防ぐことができる。
【0059】
以上において本発明では、シリコン基板の第1主面上にMOSゲート構造を構成した場合を例に説明したが、これに限らず、半導体の種類(例えば、炭化珪素(SiC)など)、基板主面の面方位などを種々変更可能である。また、本発明の実施の形態では、トレンチ型IGBTを例に説明したが、これに限らず、トレンチ型MOSFETなど様々な構成の半導体装置に適用可能である。また、本発明では、各実施の形態では第1導電型をn型とし、第2導電型をp型としたが、本発明は第1導電型をp型とし、第2導電型をn型としても同様に成り立つ。
【産業上の利用可能性】
【0060】
以上のように、本発明にかかる半導体装置および半導体装置の製造方法は、電力変換装置や種々の産業用機械などの電源装置などに使用される高耐圧半導体装置に有用である。
【符号の説明】
【0061】
8、108 ゲート絶縁膜
10、110 ゲート電極
12、112 n+型エミッタ領域
13 p+型コンタクト領域
14 p型ベース領域
16 n型蓄積層
18 n-型半導体基板
20 n+型FS層
22 p+型コレクタ領域
23、123 熱酸化膜
24 層間絶縁膜
25 バリアメタル
26、126 多結晶シリコン層
27、127 トレンチ用マスク
37 おもて面電極
38 裏面電極
42 コンタクトホール
43 金属プラグ
44、144 半導体基体
46、146 ゲートトレンチ
50 IGBT