(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024059035
(43)【公開日】2024-04-30
(54)【発明の名称】架構構造
(51)【国際特許分類】
E04B 5/48 20060101AFI20240422BHJP
E04B 5/40 20060101ALI20240422BHJP
E04B 5/10 20060101ALI20240422BHJP
E04H 5/02 20060101ALI20240422BHJP
F24F 5/00 20060101ALI20240422BHJP
【FI】
E04B5/48 D
E04B5/40 A
E04B5/10
E04H5/02 B
F24F5/00 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022166521
(22)【出願日】2022-10-17
(71)【出願人】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】玉村 典士
(72)【発明者】
【氏名】大野 正人
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼山 秀俊
(72)【発明者】
【氏名】大堀 太志
(72)【発明者】
【氏名】塩澤 秀剛
(72)【発明者】
【氏名】藤原 浩士
(72)【発明者】
【氏名】潮崎 有弘
(72)【発明者】
【氏名】三田村 聡
(72)【発明者】
【氏名】布上 亮介
(72)【発明者】
【氏名】大倉 栄志
(72)【発明者】
【氏名】中野 諒
(72)【発明者】
【氏名】前川 眞佐和
(72)【発明者】
【氏名】新井 宗亮
(57)【要約】
【課題】空調機械室と空調対象室との境界部に沿って境界大梁を配置しつつ、空調空気の還流効率の低下を抑制することを目的とする。
【解決手段】架構構造は、空調対象室20と、空調対象室20と隣接するとともに、空調対象室20に空調空気を供給する空調機械42が設置される空調機械室40と、空調対象室20と空調機械室40とに亘る天井スラブ30と、空調対象室20と空調機械室40との境界部に沿って配置されるとともに、天井スラブ30の下面から下方に離れて配置され、天井スラブ30の下面との間に、空調対象室20から空調機械室40に空調空気を還流させる還流流路54を形成する境界大梁52と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
空調対象室と、
前記空調対象室と隣接するとともに、前記空調対象室に空調空気を供給する空調機械が設置される空調機械室と、
前記空調対象室と前記空調機械室とに亘る天井スラブと、
前記空調対象室と前記空調機械室との境界部に沿って配置されるとともに、前記天井スラブの下面から下方に離れて配置され、前記天井スラブの下面との間に、前記空調対象室から前記空調機械室に空調空気を還流させる還流流路を形成する境界大梁と、
を備える架構構造。
【請求項2】
前記空調対象室に、前記境界大梁と交差する方向に沿って配置され、前記天井スラブを支持する小梁を備える、
請求項1に記載の架構構造。
【請求項3】
前記境界大梁に対して前記空調対象室側に配置され、平面視にて前記境界大梁と対向するとともに、前記天井スラブを支持する対向大梁と、
前記境界大梁から立ち上げられ、前記天井スラブを支持する束柱と、
を備え、
前記小梁は、前記対向大梁と前記束柱とに架設される、
請求項2に記載の架構構造。
【請求項4】
前記空調対象室に、前記境界大梁と交差する方向に沿って配置され、前記天井スラブを支持する交差大梁を備え、
前記天井スラブは、前記小梁と前記交差大梁とに架設される一方向版デッキスラブとされる、
請求項2又は請求項3に記載の架構構造。
【請求項5】
前記空調対象室の柱割は、前記空調対象室に設置されるサーバの配列に応じて設定される、
請求項1に記載の架構構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、架構構造に関する。
【背景技術】
【0002】
サーバ室等を空調する空調システムが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、柱の左右両側に梁を接合する柱梁接合構造において、両側の梁に段差がつけられた柱梁接合構造が知られている(例えば、特許文献2,3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011-174286号公報
【特許文献2】特開2005-126973号公報
【特許文献3】特開2018-162645号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、空調機械が設置される空調機械室から、隣接するサーバ室等の空調対象室に空調空気を供給する空調システムが知られている。この空調システムでは、空調機械室の空調機械から空調対象室に空調空気が供給される。空調対象室に供給された空調空気は、サーバを冷却した後、天井スラブの下面に沿って空調機械室に還流される。
【0006】
ここで、空調機械室と空調対象室との境界部に、天井スラブを支持する境界大梁が配置される場合がある。この場合、空調対象室から空調機械室へ還流される空調空気が境界大梁によって遮られ、空調空気の還流効率が低下する。
【0007】
この対策として、例えば、境界大梁に空調空気を通す開口を形成することが考えられる。しかしながら、この場合、十分な開口面積を確保することが難しく、また、境界大梁に開口補強等が必要になる可能性がある。
【0008】
本発明は、上記の事実を考慮し、空調機械室と空調対象室との境界部に沿って境界大梁を配置しつつ、空調空気の還流効率の低下を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載の架構構造は、空調対象室と、前記空調対象室と隣接するとともに、前記空調対象室に空調空気を供給する空調機械が設置される空調機械室と、前記空調対象室と前記空調機械室とに亘る天井スラブと、前記空調対象室と前記空調機械室との境界部に沿って配置されるとともに、前記天井スラブの下面から下方に離れて配置され、前記天井スラブの下面との間に、前記空調対象室から前記空調機械室に空調空気を還流させる還流流路を形成する境界大梁と、を備える。
【0010】
請求項1に係る架構構造によれば、空調機械室は、空調対象室と隣接する。この空調機械室には、空調対象室に空調空気を供給する空調機械が設置される。
【0011】
また、境界大梁は、空調対象室と空調機械室との境界部に沿って配置される。この境界大梁は、空調対象室と空調機械室とに亘る天井スラブの下面から下方に離れて配置され、天井スラブの下面との間に還流流路を形成する。これにより、還流流路を介して、空調対象室から空調機械室に空調空気が還流される。
【0012】
したがって、本発明では、空調機械室と空調対象室との境界部に沿って境界大梁を配置しつつ、空調空気の還流効率の低下を抑制することができる。
【0013】
請求項2に記載の架構構造は、請求項1に記載の架構構造において、前記空調対象室に、前記境界大梁と交差する方向に沿って配置され、前記天井スラブを支持する小梁を備える。
【0014】
請求項2に係る架構構造によれば、小梁は、空調対象室に配置され、天井スラブを支持する。この小梁は、境界大梁と交差する方向に沿って配置される。これにより、空調対象室の空調空気が小梁に沿って空調機械室へ流れる。したがって、本発明では、小梁が境界大梁の材軸方向に沿って配置される場合と比較して、空調空気の還流効率を高めることができる。
【0015】
請求項3に記載の架構構造は、請求項2に記載の架構構造において、前記境界大梁に対して前記空調対象室側に配置され、平面視にて前記境界大梁と対向するとともに、前記天井スラブを支持する対向大梁と、前記境界大梁から立ち上げられ、前記天井スラブを支持する束柱と、を備え、前記小梁は、前記対向大梁と前記束柱とに架設される。
【0016】
請求項3に係る架構構造によれば、境界大梁に対する空調対象室側には、対向大梁が配置される。対向大梁は、平面視にて境界大梁と対向するとともに、天井スラブを支持する。つまり、対向大梁は、境界大梁よりも梁レベルが高くされている。
【0017】
一方、境界大梁からは、天井スラブを支持する束柱が立ち上げられる。この対向大梁と束柱とに小梁が架設される。これにより、天井スラブの下面と境界大梁との間に還流流路を確保しつつ、小梁のスパンを短くすることができる。さらに、天井スラブに作用する地震力を、小梁及び束柱を介して境界大梁に伝達することができる。したがって、耐震性能が向上する。
【0018】
請求項4に記載の架構構造は、請求項2又は請求項3に記載の架構構造において、前記空調対象室に、前記境界大梁と交差する方向に沿って配置され、前記天井スラブを支持する交差大梁を備え、前記天井スラブは、前記小梁と前記交差大梁とに架設される一方向版デッキスラブとされる。
【0019】
請求項4に係る架構構造によれば、空調対象室には、天井スラブを支持する交差大梁が配置される。交差大梁は、境界大梁と交差する方向に沿って配置される。
【0020】
ここで、天井スラブは、小梁と交差大梁とに架設される一方向版デッキスラブとされる。これにより、天井スラブのデッキプレートの敷き込みが容易になるため、天井スラブの施工性が向上する。
【0021】
請求項5に記載の架構構造は、請求項1に記載の架構構造において、前記空調対象室の柱割は、前記空調対象室に設置されるサーバの配列に応じて設定される。
【0022】
請求項5に係る架構構造によれば、空調対象室の柱割は、空調対象室に設置されるサーバの配列に応じて設定される。これにより、空調対象室の空調効率、及び空調空気の還流効率を高めることができる。
【発明の効果】
【0023】
以上説明したように、本発明によれば、空調機械室と空調対象室との境界部に沿って境界大梁を配置しつつ、空調空気の還流効率の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】一実施形態に係る架構構造が適用された構造物の所定階を示す平面図である。
【
図4】
図3に示される束柱を下から見上げた斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照しながら、一実施形態について説明する。
【0026】
図1には、本実施形態に係る架構構造が適用された構造物10の所定階が示されている。構造物10は、一例として、複数層からなるデータセンタとされている。この構造物10の所定階には、隣接する空調対象室20及び空調機械室40が設けられている。
【0027】
なお、
図1に示される矢印Xは、空調対象室20及び空調機械室40の隣接方向を示している。また、矢印Yは、空調対象室20及び空調機械室40の隣接方向と直交する水平方向を示している。
【0028】
(空調対象室)
空調対象室20は、サーバ室(データホール)とされている。この空調対象室20には、複数のサーバ(情報処理装置)22が設置されている。複数のサーバ22は、矢印X方向に列(以下、「サーバ列R」という)を成すとともに、矢印Y方向に複数列で配列されている。また、矢印Y方向に隣り合うサーバ列Rの間には、給気通路(コールドアイル)24と排気通路(ホットアイル)26とが交互に形成されている。
【0029】
給気通路24には、矢印Fで示されるように、後述する空調機械室40から空調空気が供給される。給気通路24に供給された空調空気は、矢印Fで示されるように、サーバ列Rを通過して排気通路26に排気される。この際、空調空気によってサーバ22が冷却される。
【0030】
図2に示されるように、排気通路26は、キャッピング28によって区画されている。この排気通路26に排気された空調空気は、矢印Fで示されるように、天井材32に形成された排気口34から還流チャンバ36を介して空調機械室40に還流される。なお、キャッピング28は、必要に応じて設ければ良く、適宜省略可能である。
【0031】
還流チャンバ36は、空調対象室20及び空調機械室40の天井スラブ30と、天井スラブ30の下方に配置された天井材32との間に形成されている。また、還流チャンバ36には、後述する交差大梁80、第一小梁82、交差梁90、及び第二小梁94が配置されている。
【0032】
(空調機械室)
空調機械室40には、複数の空調機械42が設置されている。空調機械42は、空調対象室20へ供給する空調空気を生成する。具体的には、空調機械42は、空調対象室20から還流された空調空気を取り込んで温度等を調整した後、矢印Fで示されるように、送風チャンバ44を介して空調対象室20へ送風する。
【0033】
図2に示されるように、送風チャンバ44は、空調機械室40における空調対象室20側に設けられている。送風チャンバ44は、矢印X方向に対向する一対の仕切壁44A,44Bを有している。一対の仕切壁44A,44Bのうち、空調機械42側の仕切壁44Aの下部には、空調機械42の吹出口42Aが接続されている。
【0034】
また、一対の仕切壁44A,44Bのうち、空調対象室20側の仕切壁44Bには、複数の送風口46が形成されている。送風口46は、例えば、仕切壁44Bの高さ方向の中間部に形成されるとともに、仕切壁44Bの幅方向(
図1の矢印Y方向)の一端側から他端側に亘って形成されている。この送風口46は、例えば、仕切壁44Bの中間部を構成するパンチングメタル等によって形成されている。
【0035】
ここで、矢印Fで示されるように、空調機械42から送風チャンバ44の下部に供給された空調空気は、送風チャンバ44において拡散された後に、送風チャンバ44の中間部の送風口46から空調対象室20に供給される。この空調空気は、前述したように、隣り合うサーバ列Rの間に形成された給気通路24に供給される。
【0036】
なお、送風チャンバ44は、空調機械室40ではなく、空調対象室20に設けられても良いし、空調機械室40と空調対象室20とに亘って設けられても良い。また、送風チャンバ44は、必要に応じて設ければ良く、適宜省略可能である。
【0037】
(架構構造)
次に、本実施形態に係る架構構造について説明する。
【0038】
図1に示されるように、架構構造は、一対の境界柱50と、境界大梁52と、複数の束柱60と、一対の対向柱70と、対向大梁72と、一対の交差大梁80と、複数の第一小梁82と、一対の交差梁90と、複数の第二小梁94とを有している。
【0039】
一対の境界柱50は、空調対象室20と空調機械室40との境界部に、所定の間隔を空けて配置されている。また、一対の境界柱50は、一例として、角形鋼管によって形成された鉄骨柱とされている。この一対の境界柱50には、境界大梁52が架設されている。
【0040】
境界大梁52は、空調対象室20と空調機械室40との境界部に沿って配置されており、一対の境界柱50に架設されている。この境界大梁52及び一対の境界柱50によって、矢印Y方向に沿った架構(境界架構)が構成されている。
【0041】
図3及び
図4に示されるように、境界大梁52は、一例として、H形鋼によって形成された鉄骨梁とされている。この境界大梁52は、上下方向に対向する上側フランジ部52A及び下側フランジ部52Bと、上側フランジ部52A及び下側フランジ部52Bを接続するウェブ部52Cとを有している。
【0042】
境界大梁52は、還流チャンバ36を流れる空調空気を遮らないように、天井スラブ30の下面から下方へ離れた位置に配置されている。つまり、境界大梁52は、後述する対向大梁72(
図1参照)よりも梁レベルが低くされている。これにより、境界大梁52の上側フランジ部52Aの上面(天端)と天井スラブ30の下面との間に、空調空気が流れる還流流路54が形成されている。また、境界大梁52は、送風チャンバ44(
図2参照)に配置されている。
【0043】
また、境界大梁52の上側フランジ部52Aの上面からは、複数の束柱60が立ち上げられている。複数の束柱60は、いわゆる丘立て柱(丘立ち柱)とされている。これらの束柱60は、例えば、角型鋼管によって形成された鉄骨柱とされており、境界大梁52の材軸方向(矢印Y方向)に間隔を空けて配置されている。
【0044】
図3に示されるように、束柱60の下端部は、境界大梁52の上側フランジ部52Aの上面に溶接等によって接合されている。一方、束柱60の上端部には、図示しないトッププレートが設けられている。トッププレートは、束柱60の上端部に溶接等によって接合されている。
【0045】
トッププレートの上面には、複数のスタッド(頭付きスタッド)62が設けられている。複数のスタッド62は、トッププレートから上方へ延出し、天井スラブ30に埋設されている。これらのスタッド62を介して、束柱60と天井スラブ30とがせん断力を伝達可能に接合されている。
【0046】
なお、束柱60には、後述する第一小梁82及び第二小梁94(
図1参照)が接合されている。また、束柱60の本数は、第一小梁82及び第二小梁94の本数に応じて適宜変更可能である。
【0047】
境界柱50には、天井スラブ30を受ける受けプレート56が設けられている。受けプレート56の上面には、複数のスタッド58が設けられている。複数のスタッド58は、受けプレート56から上方へ延出し、天井スラブ30に埋設されている。これらのスタッド58を介して、境界柱50と天井スラブ30とがせん断力を伝達可能に接合されている。
【0048】
図1に示されるように、一対の対向柱(第一対向柱)70は、複数の境界柱50に対して空調対象室20側に配置されている。また、一対の対向柱70は、矢印Y方向に間隔を空けて配置されており、複数の境界柱50の各々と矢印X方向に対向している。この一対の対向柱70は、一例として、角形鋼管によって形成された鉄骨柱とされている。また、一対の対向柱70には、対向大梁72が架設されている。
【0049】
対向大梁72は、境界大梁52に対して空調対象室20側に配置されており、平面視にて境界大梁52と矢印X方向に対向している。また、対向大梁72は、境界大梁52の材軸方向(矢印Y方向)に沿って配置されている。この対向大梁72及び一対の対向柱70によって、矢印Y方向に沿った架構(対向架構)が構成されている。
【0050】
対向大梁72は、一例として、H形鋼によって形成された鉄骨梁とされている。この対向大梁72は、空調対象室20の天井スラブ30の下面に沿って配置されており、当該天井スラブ30を支持している。つまり、対向大梁72は、境界大梁52よりも梁レベルが高くされている。なお、対向大梁72には、後述する複数の第一小梁82が接合されている。
【0051】
対向する境界柱50と対向柱70とには、交差大梁80が架設されている。交差大梁80は、空調対象室20に配置されている。また、交差大梁80は、境界大梁52及び対向大梁72と交差(本実施形態では直交)する方向(矢印X方向)に沿って配置されており、対向する境界柱50と対向柱70とに架設されている。これらの交差大梁80、境界大梁52、及び対向大梁72によって、矢印X方向に沿った架構(交差架構)が構成されている。
【0052】
境界柱50には、交差梁90が接合されている。交差梁90は、境界柱50を挟んで交差大梁80と反対側に配置されている。つまり、交差梁90は、空調機械室40に配置されている。また、交差梁90は、境界大梁52及び対向大梁72と交差(本実施形態では直交)する方向(矢印X方向)に沿って配置されている。この交差梁90は、一例として、境界柱50から空調機械室40側へ跳ね出す跳ね出し梁とされており、境界柱50に片持ち状態で支持されている。
【0053】
一対の交差梁90の跳ね出し方向の先端部には、対向梁92が架設されている。対向梁92は、境界大梁52に対して空調機械室40側に配置されており、平面視にて境界大梁52と矢印X方向に対向している。また、対向梁92は、境界大梁52の材軸方向に沿って配置されている。この対向梁92には、後述する第二小梁94が接合されている。
【0054】
なお、交差梁90は、跳ね出し梁に限らず、境界柱50と他の柱(第二対向柱)とに架設される大梁(第二交差大梁)でも良い。この場合、対向梁92は、対向大梁(第二対向大梁)となる。つまり、交差梁90は、跳ね出し梁及び大梁を含む概念である。また、対向梁92は、小梁及び大梁を含む概念である。
【0055】
境界大梁52から立ち上げられた複数の束柱60と対向大梁72とには、第一小梁82がそれぞれ架設されている。複数の第一小梁82は、空調対象室20に配置されている。これらの第一小梁82は、境界大梁52及び対向大梁72と交差(本実施形態では直交)する方向(矢印X方向)に沿って配置されるとともに、矢印Y方向に間隔を空けて配置されている。
【0056】
複数の束柱60と対向梁92とには、第二小梁94がそれぞれ架設されている。各第二小梁94は、束柱60を挟んで第一小梁82と反対側に配置されている。つまり、複数の第二小梁94は、空調機械室40に配置されている。これらの第二小梁94は、境界大梁52及び対向梁92と交差(本実施形態では直交)する方向(矢印X方向)に沿って配置されるとともに、矢印Y方向に間隔を空けて配置されている。
【0057】
ここで、空調対象室20の柱割は、サーバ22の配列に応じて設定されている。具体的には、排気通路26を形成する一対のサーバ列R上から外れた位置に交差大梁80が配置されるように、複数の境界柱50及び対向柱70の位置(柱割)が設定されている。また、複数の第一小梁82は、排気通路26から外れた位置に配置されている。これにより、排気通路26から、隣り合う交差大梁80及び第一小梁82の間、又は隣り合う第一小梁82同士の間に、空調空気が排気される。
【0058】
なお、本実施形態では、前述したように、境界柱50及び対向柱70が角形鋼管によって形成された鉄骨柱(鉄骨造)とされている。しかし、境界柱50及び対向柱70は、鉄骨造に限らず、鉄筋コンクリート造や鉄骨鉄筋コンクリート造等でも良い。
【0059】
また、本実施形態では、境界大梁52、対向大梁72、及び交差大梁80、第一小梁82、交差梁90、対向梁92、及び第二小梁94が、H形鋼によって鉄骨梁(鉄骨造)とされている。しかし、境界大梁52、対向大梁72、及び交差大梁80、第一小梁82、交差梁90、対向梁92、及び第二小梁94は、鉄骨造に限らず、鉄筋コンクリート造や鉄骨鉄筋コンクリート造等でも良い。
【0060】
(天井スラブ)
天井スラブ30は、鉄筋コンクリート造とされており、空調対象室20と空調機械室40とに亘っている。空調対象室20の天井スラブ30は、対向大梁72、一対の交差大梁80、及び複数の第一小梁82によって支持されている。つまり、対向大梁72、一対の交差大梁80、及び複数の第一小梁82は、空調対象室20の天井スラブ30の下面に沿って配置されており、当該天井スラブ30を支持している。
【0061】
一方、空調機械室40の天井スラブ30は、一対の交差梁90、対向梁92、及び複数の第二小梁94によって支持されている。つまり、一対の交差梁90、対向梁92、及び複数の第二小梁94は、空調機械室40の天井スラブ30の下面に沿って配置されており、当該天井スラブ30を支持している。
【0062】
天井スラブ30は、一方向版デッキスラブとされている。具体的には、空調対象室20の天井スラブ30は、隣り合う第一小梁82と交差大梁80、又は隣り合う第一小梁82同士に架設されたデッキプレート30A上にコンクリートを打設することにより形成されている。
【0063】
これと同様に、空調機械室40の天井スラブ30は、隣り合う第二小梁94と交差梁90、又は隣り合う第二小梁94同士に架設された図示しないデッキプレート上にコンクリートを打設することにより形成されている。
【0064】
(作用)
次に、本実施形態の作用について説明する。
【0065】
図1に示されるように、本実施形態によれば、一対の境界柱50及び境界大梁52は、空調対象室20と空調機械室40との境界部に配置されている。これにより、空調対象室20と空調機械室40との区画が容易になる。
【0066】
ここで、比較例として、境界大梁が天井スラブ30の下面に沿って配置された場合、境界大梁によって、還流チャンバ36を流れる空調空気が遮られ、空調対象室20から空調機械室40への空調空気の還流効率が低下する。
【0067】
この対策として、例えば、境界大梁のウェブ部に空調空気を通す開口を形成することが考えられる。しかしながら、この場合、十分な開口面積を確保することが難しく、また、境界大梁のウェブ部に開口補強等が必要になる可能性がある。
【0068】
これに対して本実施形態では、
図2に示されるように、境界大梁52が天井スラブ30の下面から下方に離れて配置されている。これにより、天井スラブ30の下面と境界大梁52の上面との間に還流流路54が形成されている。この還流流路54を介して空調対象室20から空調機械室40に空調空気を還流される。
【0069】
したがって、本実施形態では、空調対象室20と空調機械室40との境界部に沿って境界大梁52を配置しつつ、空調空気の還流効率の低下を抑制することができる。また、境界大梁52を送風チャンバ44に配置することにより、スペースの有効利用を図ることができる。
【0070】
また、還流チャンバ36には、第一小梁82及び第二小梁94が配置されている。これらの第一小梁82及び第二小梁94は、境界大梁52と交差する方向(矢印X方向)に沿って配置されている。これにより、還流チャンバ36の空調空気が、第一小梁82及び第二小梁94に沿って空調機械室40へ流れる。
【0071】
したがって、本実施形態では、第一小梁82及び第二小梁94が境界大梁52の材軸方向(矢印Y方向)に沿って配置される場合と比較して、空調空気の還流効率を高めることができる。
【0072】
また、境界大梁52に対する空調対象室20側には、対向大梁72が配置されている。対向大梁72は、天井スラブ30の下面に沿って配置されており、当該天井スラブ30を支持している。つまり、境界大梁52は、境界大梁52よりも梁レベルが高くされている。
【0073】
これと同様に、境界大梁52に対する空調機械室40側には、対向梁92が配置されている。対向梁92は、天井スラブ30の下面に沿って配置されており、当該天井スラブ30を支持している。つまり、対向梁92は、境界大梁52よりも梁レベルが高くされている。
【0074】
一方、境界大梁52には、天井スラブ30を支持する束柱60が設けられている。この束柱60と対向大梁72とに第一小梁82を架設することにより、天井スラブ30と境界大梁52との間に還流流路54を確保しつつ、第一小梁82のスパンを短くすることができる。
【0075】
これと同様に、束柱60と境界大梁52とに第二小梁94を架設することにより、天井スラブ30と境界大梁52との間に還流流路54を確保しつつ、第二小梁94のスパンを短くすることができる。
【0076】
また、境界大梁52に設けられた束柱60によって天井スラブ30を支持することにより、天井スラブ30に作用する地震力を、第一小梁82、第二小梁94、及び束柱60を介して境界大梁52に伝達することができる。したがって、構造物10の耐震性能が向上する。
【0077】
さらに、本実施形態では、空調対象室20の天井スラブ30が、隣り合う交差大梁80及び第一小梁82、又は隣り合う第一小梁82同士に架設される一方向版デッキスラブとされている。これと同様に、空調機械室40の天井スラブ30は、隣り合う交差梁90及び第二小梁94、又は隣り合う第二小梁94同士に架設される一方向版デッキスラブとされている。
【0078】
これにより、天井スラブ30のデッキプレート30A(
図1参照)の敷き込みが容易になるため、天井スラブ30の施工性が向上する。
【0079】
また、空調対象室20の柱割は、空調対象室20に設置されるサーバ列Rに応じて設定されている。さらに、複数の第一小梁82は、排気通路26から外れた位置に配置されている。これにより、排気通路26から、隣り合う交差大梁80及び第一小梁82の間、又は隣り合う第一小梁82同士の間に空調空気を流すことができる。したがって、空調対象室20の空調効率、及び空調空気の還流効率を高めることができる。
【0080】
(変形例)
次に、上記実施形態の変形例について説明する。
【0081】
上記実施形態では、第一小梁82が対向大梁72と束柱60とに架設されている。しかし、例えば、束柱60を省略し、対向大梁72と対向梁92とに第一小梁82を架設しても良い。この場合、第一小梁82は、還流流路54を貫通する。
【0082】
また、上記実施形態では、空調機械室40から空調対象室20に空調空気を供給した。しかし、例えば、空調機械室40を二重床とし、空調機械室40から二重床内のチャンバを介して空調機械室40に空調空気を供給しても良い。
【0083】
また、上記実施形態では、空調対象室20がサーバ室とされている。しかし、空調対象室20は、サーバ室に限らず、例えば、電子部品を製造するクリーンルームや、医療施設の治療室等でも良い。
【0084】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明はこうした実施形態に限定されるものでなく、一実施形態及び各種の変形例を適宜組み合わせて用いても良いし、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0085】
20 空調対象室
22 サーバ
30 天井スラブ
40 空調機械室
42 空調機械
52 境界大梁
54 還流流路
60 束柱
72 対向大梁
80 交差大梁
82 第一小梁(小梁)