(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024059039
(43)【公開日】2024-04-30
(54)【発明の名称】環境価値評価システム、環境価値評価方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/06 20240101AFI20240422BHJP
H02J 3/00 20060101ALI20240422BHJP
H02J 3/38 20060101ALI20240422BHJP
G06Q 30/018 20230101ALI20240422BHJP
【FI】
G06Q50/06
H02J3/00 170
H02J3/38 110
G06Q30/018
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022166542
(22)【出願日】2022-10-17
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】519329128
【氏名又は名称】株式会社電力シェアリング
(74)【代理人】
【識別番号】100137338
【弁理士】
【氏名又は名称】辻田 朋子
(72)【発明者】
【氏名】酒井 直樹
【テーマコード(参考)】
5G066
5L049
5L050
【Fターム(参考)】
5G066AA03
5G066HB02
5L049CC06
5L050CC06
(57)【要約】
【課題】電力需要者が電力消費によって創出する環境価値の数値化が可能なシステムを提供する。
【解決手段】電源種別の単位発電電力量あたりのCO
2排出量を示す電源種別排出係数データと、電力需要者の所在地域に電力を供給する電源群における電源種別の単位時間毎の発電電力量を示す電源種別発電電力量データと、当該電力需要者の前記単位時間毎の消費電力量を示す需要者消費電力量データと、を供給するデータ供給手段と、前記電源種別排出係数データと、前記電源種別発電電力量データと、前記需要者消費電力量データと、に基づいて、当該電力需要者の単位消費電力量あたりのCO
2排出量を示す需要者排出係数を算出する処理手段と、当該電力需要者と、算出された当該需要者排出係数と、を関連付けて記憶する記憶手段と、を備える。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源種別の単位発電電力量あたりのCO2排出量を示す電源種別排出係数データと、電力需要者の所在地域に電力を供給する電源群における電源種別の単位時間毎の発電電力量を示す電源種別発電電力量データと、当該電力需要者の前記単位時間毎の消費電力量を示す需要者消費電力量データと、を供給するデータ供給手段と、
前記電源種別排出係数データと、前記電源種別発電電力量データと、前記需要者消費電力量データと、に基づいて、当該電力需要者の単位消費電力量あたりのCO2排出量を示す需要者排出係数を算出する処理手段と、
当該電力需要者と、算出された当該需要者排出係数と、を関連付けて記憶する記憶手段と、を備えることを特徴とする、環境価値評価システム。
【請求項2】
前記処理手段は、前記電源種別排出係数データと、前記電源種別発電電力量データと、に基づいて、前記電源群の単位発電電力量あたりの排出量を示す電源群排出係数を算出することを特徴とする、請求項1に記載の環境価値評価システム。
【請求項3】
前記データ供給手段は、排出権単価データを更に供給し、
前記処理手段は、前記電源群排出係数と、前記需要者排出係数と、前記排出権単価データと、前記需要者消費電力量データと、に基づいて、前記需要者排出係数に関連付けられた前記電力需要者の排出権購入所要金額を算出することを特徴とする、請求項2に記載の環境価値評価システム。
【請求項4】
前記需要者消費電力量データに基づいて、前記電力需要者が自家発電を行う供給需要者であるか否かを判定する判定手段を更に備え、
前記判定手段が、当該電力需要者を前記供給需要者と判定した場合に、
前記処理手段は、当該供給需要者が前記単位時間毎に自家発電した電力量を示す供給需要者発電電力量と、当該供給需要者の前記単位時間毎の消費電力量を示す供給需要者消費電力量と、に基づいてレバレッジを算出し、
前記レバレッジと、前記電源群排出係数と、に基づいて、前記単位時間におけるレバレッジ調整後時間帯別需要者CO2排出量を算出することを特徴とする、請求項2に記載の環境価値評価システム。
【請求項5】
前記処理手段は、前記供給需要者消費電力量から前記供給需要者発電電力量を減算した差が正負いずれの場合にも、系統電力の消費量が自家発電消費量を上回らない限りにおいて、前記単位時間における前記レバレッジ調整後時間帯別需要者CO2排出量が負の値となるように算出することを特徴とする、請求項4に記載の環境価値評価システム。
【請求項6】
前記処理手段は、前記供給需要者消費電力量から前記供給需要者発電電力量を減算した差がゼロのとき、前記単位時間における前記レバレッジ調整後時間帯別需要者CO2排出量の値を所定値に基づいて算出することを特徴とする、請求項4に記載の環境価値評価システム。
【請求項7】
電源種別の単位発電電力量あたりのCO2排出量を示す電源種別排出係数データと、電力需要者の所在地域に電力を供給する電源群における電源種別の単位時間毎の発電電力量を示す電源種別発電電力量データと、当該電力需要者の前記単位時間毎の消費電力量を示す需要者消費電力量データと、を供給するデータ供給ステップと、
前記電源種別排出係数データと、前記電源種別発電電力量データと、前記需要者消費電力量データと、に基づいて当該電力需要者の単位消費電力量あたりのCO2排出量を示す需要者排出係数を算出する処理ステップと、
当該電力需要者と、算出された当該需要者排出係数と、を関連付けて記憶する記憶ステップと、をコンピュータに実行させる、環境価値評価方法。
【請求項8】
一又は複数のコンピュータを、請求項1~6の何れかに記載の環境価値評価システムとして機能させるための、環境価値評価プログラム。
【請求項9】
電源種別および電力供給者の単位発電電力量あたりのCO2排出量を示す電源種別排出係数データと、再生可能エネルギー発電設備もしくは低炭素型発電設備を利用して発電を行う電力供給者の所在地域に電力を供給する電源群における電源種別の単位時間毎の発電電力量を示す電源種別発電電力量データと、当該電力供給者の前記単位時間毎の発電電力量を示す供給者発電電力量データと、を供給するデータ供給手段と、
前記電源種別排出係数データと、前記電源種別発電電力量データと、前記供給者発電電力量データと、に基づいて、当該電力供給者の単位発電電力量あたりの再エネ価値の希少性を示す再エネ希少性係数を算出する処理手段と、当該電力供給者と、算出された当該供給者再エネ希少性係数と、を関連付けて記憶する記憶手段と、を備えることを特徴とする、環境価値評価システム。
【請求項10】
前記処理手段は、前記電源種別排出係数データと、前記電源種別発電電力量データと、に基づいて、前記電源群の単位発電電力量あたりのCO2排出量を示す電源群排出係数を算出する、請求項9に記載の環境価値評価システム。
【請求項11】
前記データ供給手段は、時間帯別の再エネ電力の希少価値を評価する報奨金単価データを更に供給し、
前記処理手段は、前記電源群排出係数と、前記供給者再エネ希少性係数と、前記報奨金単価データと、に基づいて、前記供給者再エネ希少性係数に関連付けられた前記電力供給者に対する報奨金額を算出することを特徴とする、請求項10に記載の環境価値評価システム。
【請求項12】
電源種別の単位発電電力量あたりのCO2排出量を示す電源種別排出係数データと、再生可能エネルギー発電設備を利用して発電を行う電力供給者の所在地域に電力を供給する電源群における電源種別の単位時間毎の発電電力量を示す電源種別発電電力量データと、当該電力供給者の前記単位時間毎の発電電力量を示す供給者発電電力量データと、を供給するデータ供給ステップと、
前記電源種別排出係数データと、前記電源種別発電電力量データと、前記供給者発電電力量データと、に基づいて、当該電力供給者の単位発電電力量あたり再エネ価値の希少性を示す供給者再エネ希少性係数を算出する処理ステップと、
当該電力供給者と、算出された当該供給者再エネ希少性係数と、を関連付けて記憶する記憶ステップと、をコンピュータに実行させる、環境価値評価方法。
【請求項13】
一又は複数のコンピュータを、請求項9~11の何れかに記載の環境価値評価システムとして機能させるための、環境価値評価プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力需要者や電力供給者等が電力の消費や発電によって創出された二酸化炭素排出量削減価値(環境価値)を算出・評価するための技術に関連する。
【背景技術】
【0002】
近年、持続可能な開発目標(SDGs)の提唱等によって、地球温暖化等の環境問題への関心は以前にも増して高まっている。
【0003】
こうした状況の中、直接的な環境活動を行うことが困難な者は、Jクレジットや、グリーン電力証書、非化石証書等の二酸化炭素(CO2)排出量削減価値を化体化したオフセット証書を利用した、環境価値取引等によって地球温暖化対策に貢献することが可能である。
【0004】
また、環境価値証書を利用したものに限らず、様々な環境価値取引を支援する技術も種々提案されている。
【0005】
例えば、特許文献1には、商用電力系統を介することなく、工場で発生した未利用エネルギーの有効活用を促進させると共に、得られた環境価値の取引を活発化させることが可能な環境価値取引システム等が提案されている。
【0006】
また、本発明者は、特許文献2に示すように、再生可能エネルギーを含む電力の取引で再生可能エネルギーが売れ残った場合に、売れ残った再生可能エネルギーに対する環境価値を有効に活用する電力取引システム等を提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2019-067250号公報
【特許文献2】特開2021-043669号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、過去に創出された環境価値オフセット証書を用いて、再エネ電気料金メニューとして電力需要者に提供し、実際に再生可能エネルギーで発電される電気のCO2排出量削減価値と同等に評価して取り扱う手法では、例えば夜間などの現実に再生可能エネルギー電源の構成比率が低い時間帯での電力消費を抑制し、再生可能エネルギー電源の構成比率が高い時間帯への電力需要のシフトを促すインセンティブが働きにくかった。
また、現在のオフセット証書取引は、電力需要者の構内に再生可能エネルギーを用いた発電設備を設置し、これを自家消費することによる、自家消費されるCO2排出量削減価値は主にJクレジットとして、一方、送配電ネットワーク(電力系統)で流通する再生可能エネルギー電源のCO2排出量削減価値は非化石証書として、相互互換がなく別々に取り扱われており、一貫性が担保されず、仕組みも複雑で、一般の理解が得にくかった。
一方で、再生可能エネルギー発電者に対しては、どの時間に発電しても環境価値が同等に取り扱われる手法においては、例えば晴天の昼間に発電が集中してしまう傾向にあり、例えば蓄電池や電気自動車を用いる、夜間にも発電可能な手法を採用するなどして供給が不足する時間帯への電力の提供を促すインセンティブが十分に付与されていない状況があった。
【0009】
これに対し、本発明者は、一般の電力需要者が電力消費によって創出し得る環境価値を、統一的な指標を用いて数値化できれば、これを対象とした個人-個人間、個人-事業者間も含めて環境価値取引が活性化し、電力需要者のピークシフトや需給逼迫時の消費抑制(デマンドレスポンス)や省エネ行動を促すインセンティブになると考えた。
また、再生可能エネルギーを用いた発電者や低炭素型電源を用いた発電者の時間帯別の価値の希少性を統一的な指標を用いて数値化できれば、再エネ電力および低炭素型電源供給の平準化を促すインセンティブになると考えた。
需要は再生可能エネルギー電力の供給にできる限り追従し、再生可能エネルギー電力供給は需要に極力追従することで、需給一体型の再生可能エネルギーの一層の活用を進める必要があると考えた。
【0010】
本発明は、上記のような課題に鑑みてなされたものであり、電力需要者が電力消費によって創出する環境価値の数値化が可能なシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明は、電源種別の単位発電電力量あたりのCO2排出量を示す電源種別排出係数データと、電力需要者の所在地域に電力を供給する電源群における電源種別の単位時間毎の発電電力量を示す電源種別発電電力量データと、当該電力需要者の前記単位時間毎の消費電力量を示す需要者消費電力量データ(電力需要者構内での発電量データを含む。以下同じ。)と、を供給するデータ供給手段と、前記電源種別排出係数データと、前記電源種別発電電力量データと、前記需要者消費電力量データと、に基づいて、当該電力需要者の単位消費電力量あたりのCO2排出量を示す需要者排出係数を算出する処理手段と、当該電力需要者と、算出された当該需要者排出係数と、を関連付けて記憶する記憶手段と、を備えることを特徴とする。
【0012】
本発明の好ましい形態では、前記処理手段は、前記電源種別排出係数データと、前記電源種別発電量データと、に基づいて、前記電源群の単位発電電力量あたりの排出量を示す電源群排出係数を算出する。
【0013】
本発明の好ましい形態では、前記データ供給手段は、排出権単価データを更に供給し、前記処理手段は、前記電源群排出係数と、前記需要者排出係数と、前記排出権単価と、需要者消費電力量データと、に基づいて、前記需要者排出係数に関連付けられた前記電力需要者の排出権購入所要金額を算出する。
【0014】
本発明の好ましい形態では、需要者消費電力量・発電電力量データに基づいて、前記電力需要者が自家発電を行う供給需要者であるか否かを判定する判定手段を更に備え、前記判定手段が、当該電力需要者を前記供給需要者と判定した場合に、前記処理手段は、当該供給需要者が前記単位時間あたりに自家発電かつ自家消費した電力量を示す供給需要者自家消費電力量と、当該供給需要者の前記単位時間あたりの送配電ネットワークからの電力消費量(買電量)、もしくは送配電ネットワークへの余剰電力供給量(売電量)のネットを示す供給需要者送配電ネットワーク(系統)電力消費量と、に基づいてレバレッジを算出し、前記レバレッジと、前記電源群電源排出係数と、に基づいて、前記単位時間におけるレバレッジ調整後時間帯別需要者CO2排出量を算出する。
【0015】
本発明の好ましい形態では、前記処理手段は、前記供給需要者消費電力量から前記供給需要者発電電力量を減算した差が正負いずれの場合にも、前記単位時間における前記レバレッジ調整後時間帯別需要者CO2排出量削減価値を、自家消費分を含めて算出する。
【0016】
本発明の好ましい形態では、前記処理手段は、前記供給需要者消費電力量から前記供給需要者発電電力量を減算した差がゼロのとき、前記単位時間における前記レバレッジ調整後時間帯別需要者CO2排出量の値を所定値に基づいて算出する。
【0017】
また、本発明は、電源種別の単位発電電力量あたりのCO2排出量を示す電源種別排出係数データと、電力需要者の所在地域に電力を供給する電源群における電源種別の単位時間毎の発電電力量を示す電源種別発電電力量データと、当該電力需要者の前記単位時間毎の消費電力量を示す需要者消費電力量データと、を供給するデータ供給ステップと、前記電源種別排出係数データと、前記電源種別発電電力量データと、前記需要者消費・発電電力量データと、に基づいて当該電力需要者の単位消費電力量あたりのCO2排出量を示す需要者排出係数を算出する処理ステップと、当該電力需要者と、算出された当該需要者排出係数と、を関連付けて記憶する記憶ステップと、をコンピュータに実行させる。
【0018】
また、本発明は、電源種別の単位発電電力量あたりのCO2排出量を示す電源種別排出係数データと、再生可能エネルギー発電設備もしくは低炭素型電源(低炭素型電源は再生可能エネルギー発電設備に含まれることとする。以下同じ。)を利用して発電を行う電力供給者の所在地域に電力を供給する電源群における電源種別の単位時間毎の発電電力量を示す電源種別発電電力量データと、当該電力供給者の前記単位時間毎の発電電力量を示す供給者発電電力量データと、を供給するデータ供給手段と、前記電源種別排出係数データと、前記電源種別発電電力量データと、前記供給者発電電力量データと、に基づいて、当該電力供給者の供給する再生可能エネルギー由来もしくは低炭素型電源の電力の時間帯別環境価値の希少価値の加重平均を示す再エネ電力供給者希少性係数を算出する処理手段と、当該電力供給者と、算出された当該供給者希少性係数と、を関連付けて記憶する記憶手段と、を備える。
【0019】
本発明の好ましい形態では、前記処理手段は、前記電源種別排出係数データと、前記電源種別発電電力量データと、に基づいて、前記電源群の単位発電電力量あたりのCO2排出量を示す電源群排出係数を算出する。
【0020】
本発明の好ましい形態では、前記データ供給手段は、報奨金単価データを更に供給し、前記処理手段は、前記電源群排出係数と、前記供給者希少性係数と、前記報奨金単価データと、に基づいて、前記供給者希少性係数に関連付けられた前記電力供給者に対する報奨金額を算出する。
【0021】
また、本発明は、電源種別の単位発電電力量あたりのCO2排出量を示す電源種別排出係数データと、再生可能エネルギー発電設備を利用して発電を行う電力供給者の所在地域に電力を供給する電源群における電源種別の単位時間毎の発電電力量を示す電源種別発電電力量データと、当該電力供給者の前記単位時間毎の発電電力量を示す供給者発電電力量データと、を供給するデータ供給ステップと、前記電源種別排出係数データと、前記電源種別発電電力量データと、前記供給者発電電力量データと、に基づいて、当該電力供給者の単位発電電力量あたり前記電源群において創出されたCO2排出削減価値の希少性を示す供給者希少性係数を算出する処理ステップと、当該電力供給者と、算出された当該供給者希少性係数を関連付けて記憶する記憶ステップと、をコンピュータに実行させる。
【0022】
また、本発明は、一又は複数のコンピュータを、上記何れかの環境価値評価システムとして機能させる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、電力需要者が電力消費・発電によって創出する環境価値の数値化が可能なシステムが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の実施形態に係る環境価値評価システムが接続されるネットワーク構成の例を示す図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る環境価値評価システムの構成を示す図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る電源種別発電電力量データの例を示す図である。
【
図4】本発明の実施形態に係る需要者消費・発電電力量データの例を示す図である。
【
図5】本発明の実施形態に係る需要者排出係数処理、電源群排出係数算出処理の過程で生じるデータの例を示す図である。
【
図6】本発明の実施形態に係る需要者排出係数算出処理の例を示すフローチャートである。
【
図7】本発明の実施形態に係る電源群排出係数算出処理の例を示すフローチャートである。
【
図8】本発明の実施形態に係る排出権購入所要金額算出処理の例を示すフローチャートである。
【
図9】本発明の実施形態に係る供給需要者処理の過程で生じ得るデータの例を示す図である。
【
図10】本発明の実施形態に係る供給需要者処理の例を示すフローチャートである。
【
図11】本発明の実施形態に係る供給者発電電力量データの例を示す図である。
【
図12】本発明の実施形態に係る供給者希少性係数算出処理の過程で生じるデータの例を示す図である。
【
図13】本発明の実施形態に係る供給者希少性係数算出処理の例を示すフローチャートである。
【
図14】本発明の実施形態に係る報奨金額算出処理の例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、
図1~
図14を用いて、本発明の実施形態に係る環境価値評価システムについて説明する。なお、以下に示す実施形態は本発明の一例であり、本発明を以下の実施形態に限定するものではなく、様々な構成を採用することもできる。
また、以下の説明では、再生可能エネルギーを「再エネ」と記載する。なお、「再エネ」は低炭素型電源を含むこととする。
【0026】
例えば、本実施形態では動画共有システムの構成、動作等について説明するが、同様の構成の方法、装置、コンピュータプログラム等も、同様の作用効果を奏することができる。また、プログラムは、記録媒体に記憶させてもよい。この記録媒体を用いれば、例えばコンピュータにプログラムをインストールすることができる。ここで、プログラムを記憶した記録媒体は、例えばCD-ROM等の非一過性の記録媒体であってもよい。
【0027】
図1は、環境価値評価システムXが接続されるネットワークの構成の例を示す図である。なお、各構成要素を結ぶ一点鎖線は送配電の流れを、各構成要素を結ぶ点線は信号やデータの流れを、それぞれ示している。
ここで、点線で示される信号やデータの流れは、有線/無線を問わない。
また、いくつかの構成要素について、図示された以外の同種の構成要素が複数存在し得ることを、図中…で示している。
【0028】
送配電ネットワークPNW1、PNW2は、それぞれ所定の地域に存在する発電所、電力需要者間を相互に結ぶネットワークである。
例えば日本では、北海道、東北、東京、中部、北陸、関西、中国、四国、九州、沖縄のように、所管する送配電事業者が異なる地域に存在する送配電ネットワークを、PNW1、PNW2、…のように区分することが可能である。
なお、場合によっては、送配電ネットワークが上記とは異なる区分にて再定義されてもよい。
また、PNW1、PNW2、以外の送配電ネットワークが存在してもよい。
【0029】
送配電ネットワークPNW1は、火力発電所PS1、揚水発電所PS2、原子力発電所PS3、再エネ発電所PS4等の各種電源を有する電源群PSGと接続され、各電源で発電された電力を送配電する。
なお、電源群PSGは、上記PS1~PS4以外の電源を有していてもよい。
【0030】
再エネ発電所PS4は、発電に伴うCO2排出の無い(又は少ない)発電を行うことが可能な電源を指し、具体的には、太陽光、風力、バイオマス、水力等により創出されるエネルギーを用いて発電を行う発電所のことを指す。なお、再エネ発電を蓄電池や電気自動車等に貯蔵して放出する機能や、再エネ発電所からの電力により揚水した水力エネルギーを用いた揚水発電所も、その全てまたは一部を再エネ発電所に含めてもよい。
【0031】
送配電ネットワークPNW1は、他の送配電ネットワークPNW2等と連係線でつながっており、互いに電力を融通し合うことも可能である。
【0032】
上記のようにして、送配電ネットワークPNW1を介して電力需要者C1~C3等を含む各電力需要者に配電される。
なお、電力需要者は、上記C1~C3以外にも多数存在してよい。
【0033】
電力需要者は、送配電ネットワークPNW1から配電された電力を、各々の活動によって消費する。例えば、電力需要者C1、C2のような一般家庭等では、日常生活に伴う電力消費がなされ得るし、電力需要者C3のような企業等では事業活動に伴う電力消費がなされ得る。
また、電力需要者は、需要場所構内(オンサイト)に設置された太陽光発電設備SP等により自家発電した電力を自家消費してもなお余剰となる分を、送配電ネットワークPNW1に戻してやる(逆潮流により売電する)こともできる。(例えば、電力需要者C2等)
【0034】
上記した電力消費・自家発電等の状況は、スマートメータSM1~SM3や電力需要者構内に設置されるHEMS(Home Energy Management System)機器Hやパワーコンディショナーを用いた計測機器等により、一定の時間毎(例えば、30分毎、60分毎等)に通信ネットワークDNWに送信され、データベースDB1に格納される。
データベースDB1は、例えば、小売電気事業者等が管理するデータベースであり、需要者別の単位時間毎の消費電力量・自家発電電力量を含むデータを各電力需要者のID等に関連付けて格納している。
【0035】
また、先に述べた電源群PSGにおける各種電源PS1~PS4等においては、一定の時間毎(例えば、30分毎、60分毎等)に、発電実績や放充電実績、電力連係記録が通信ネットワークDNWに送信され、データベースDB2に格納される。
データベースDB2は、例えば、送配電事業者等が管理するデータベースであり、電源種別の単位時間毎の発電電力量を含むデータを格納している。
【0036】
通信ネットワークDNWは、上記したデータベースDB1、DB2の他にも様々な関係機関のデータベースにアクセス可能にすることができる。
例えば、電力広域的運営推進機関(OCCTO)のデータベースや、日本卸電力取引所(JEPX)のデータベース等に任意でアクセス可能にされ得る。
【0037】
通信ネットワークDNWには、端末D1~D4等を含む端末群DGが接続されており、これに含まれる端末D1~D4等は、単独で、又は複数で協働して、環境価値評価システムXを構成することができる。
即ち、端末D1~D4等は、単独で、又は複数で協働して、後述するデータ供給手段1、処理手段2、判定手段3、記憶手段4の各要素を構成することができる。
【0038】
端末群DGに含まれる端末D1~D4等は、パーソナルコンピュータ、サーバコンピュータ、スマートフォン、タブレット等の任意のコンピュータ装置であり得る。また、端末群DGに含まれる端末D1~D4等は、それらの物理的な配置を限定されず、複数箇所に分散的に配置されていても、一箇所に集中的に配置されていてもよい。
【0039】
図2に示すように、環境価値評価システムXは、データ供給手段1と、処理手段2と、判定手段3と、を備える。また、記憶手段4を更に備えていてもよい。
【0040】
データ供給手段1と、処理手段2と、判定手段3と、記憶手段4と、のそれぞれについて、CPU(Central Processing Unit)やGPU(Graphics Processing Unit)等の演算装置、RAM(Random Access Memory)等の主記憶装置、HDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)、フラッシュメモリ等の補助記憶装置、ネットワークへの接続手段を含む種々の入出力装置等を備えた、任意のコンピュータ装置(パーソナルコンピュータ、サーバコンピュータ、スマートフォン、タブレット等)やその構成要素を適宜利用することができる。
【0041】
データ供給手段1は、通信ネットワークDNWを利用して、電源種別の単位発電電力量あたりのCO2排出量を示す電源種別CO2排出係数データと、電力需要者の所在地域に電力を供給する電源群における電源種別の単位時間毎の発電量を示す電源種別発電電力量データと、当該電力需要者の前記単位時間毎の消費電力量・発電電力量を示す需要者消費電力量・発電電力量データと、を含む種々のデータを環境価値評価システムXに供給する。
【0042】
なお、データ供給手段1が行う「データの供給」の処理は、ネットワーク上における所望のデータの収集、所望のデータの予測推定・算出、ユーザによる入力受付、記憶された所定値の参照等、を包含する。
【0043】
処理手段2は、電源種別CO2排出係数データと、前記電源種別発電電力量データと、前記需要者消費電力量・発電電力量データと、に基づいて、当該電力需要者の単位消費電力量あたりのCO2排出量を示す需要者CO2排出係数を算出する他、種々の演算処理を行う。
【0044】
判定手段3は、電力需要者が、再エネ発電設備を利用した自家発電かつ自家消費を行う供給需要者であるかどうか、を判定する。この判定は、各電力需要者のID等に関連付けられた供給需要者を示すラベルや、各電力需要者の発電・売電記録、各電力需要者の消費電力量データ(消費電力量が負の時間帯がある、など)等に基づいて行われ得る。
【0045】
記憶手段4は、データ供給手段1によって供給されたデータや、処理手段2による処理結果等を記憶しておくことができる。
【0046】
図3は、電源種別発電電力量データの例を示す図である。
図3に示すように、電源種別発電電力量データは、少なくとも、列CL1に示す日付と、列CL2に示す時間帯と、に関連付けて、列CL3~列CL10に示す各日の各時間帯における電源種別発電電力量を、データとして保持している。
例えば、
図3の例では、2022年4月1日の11時台において、火力発電が2392万kWh、水力発電が128万kWh、バイオマス発電が36万kWh、太陽光発電が806万kWh、風力発電が18万kWh行われたことがデータから読み取られる。
【0047】
図1の例に戻れば、電源群PSGにおける各種電源PS1~PS4等において、一定時間毎の電源種別の発電実績が通信ネットワークDNWに送信、電源群PSGを所管する送配電事業者データベースDB2に随時格納されるため、データ供給手段1は、通信ネットワークDNWを介したAPI連携やCSVファイル移送等の任意の方法で、このような電源種別発電電力量データを収集することができる。
【0048】
図4は、需要者消費電力量データの例を示す図である。
図4(A)に示すように、需要者消費電力量データは、少なくとも、行RW1に示す需要者IDと、列CL11に示す日付と、列CL12に示す時間帯と、に関連付けて、列CL13に示す当該日の当該時間帯における各需要者の消費電力量を、データとして保持している。
例えば、
図4(A)の例では、需要者ID000000001の電力需要者が、2022年4月1日の、5時台に10kWh、6時台に20kWh、7時台に15kWh、17時台に10kWh、18時台に25kWhの電力消費を行ったことがデータから読み取られる(列CL13)。
【0049】
図1の例に戻れば、電力需要者C1の、一定時間毎の電力消費状況は、スマートメータSM1により、一定の時間毎に通信ネットワークDNWに送信され、データベースDB1に随時格納される。これは、電力需要者C2、C3等においても同様である。
そのため、データ供給手段1は、通信ネットワークDNWを介してAPI連携やCSVファイル移送等の任意の方法で、各電力需要者に関連付けられた需要者消費電力量・発電電力量データを収集することができる。
【0050】
また、
図4(B)に示すように、電力需要者が、再エネ発電設備を利用した自家発電を行う供給需要者である場合、需要者消費電力量・発電電力量データは、ラベルLや、発電電力量の記録(列CL16)、消費電力量と発電電力量との差である系統電力消費量の記録(列CL18)、買電・売電電力量の記録(列CL19、列CL20)等を保持していてもよい。
ラベルLや、発電電力量、送配電ネットワーク(系統)電力消費量、買電・売電量の記録等から、これに関連付けられた電力需要者は、自家発電を行う供給需要者であることを示すことができる。
【0051】
以下、
図5~
図10を用いて、環境価値評価システムXで行われる具体的な処理を説明する。
なお、以下に示すフローチャートの各処理フローは、その機能や結果を損なわない限り、順序の変更、統合、分割が適宜可能である。
また、処理の過程で算出された値は、適宜記憶手段4に記憶させ、以降の処理に用いることができる。
【0052】
まず、
図6に示す、需要者排出係数算出処理について説明する。
図6に示すように、まず処理手段2は、データ供給手段1に対して必要なデータを要求し、参照する(ステップS11)。ここでは、少なくとも電源種別発電電力量データ(
図3に例示)と、需要者消費電力量データ(
図4に例示)と、電源種別排出係数データが要求、参照される。
【0053】
電源種別排出係数データは、各電源種の単位発電量あたりのCO
2排出量を示すものであり、通常大きな変動はないデータである。そこで本実施例では、
図5のように火力0.8(kg‐CO
2/kWh、以下単位省略)、水力0、バイオマス0、太陽光0、風力0とした所定値を利用する。
なお、電源種別排出係数データとしては、上記のような所定値に限らず、推定値や実測値、算出値等も、電力貯蔵機能を活用した放充電量や発電時のみならず製造・廃棄を含めたライフサイクル全体でのデータを含めて当然用いることができる。また、揚水発電の排出係数や、他のネットワークからの融通電力の排出係数についても、推定値や実測値、算出値等も当然用いることができる。
また、同一電源種でも発電方式や燃料等発電所毎に排出係数は異なっており、電源種を細分化してそれぞれ毎に係数を設定してもよい。
【0054】
次に、処理手段2は、電源種別発電電力量データに基づいて、電源群時間帯別合計発電電力量を算出する(ステップS12)。
なお、この時、電力需要者が需要場所構内に設置する太陽光発電等の発電システムからの発電電力量を含めてもよい。
具体的に、
図5を例にすると、2022年4月1日の0時台において、火力発電が2065万kWh、水力発電が133万kWh、バイオマス発電が37万kWh、風力発電が17万kWh行われている。
そうすると、2022年4月1日の0時台において、電源群時間帯別合計発電電力量は、下式で算出される。
【0055】
【0056】
処理手段2は、同様にして、各日、各時間帯における電源群時間帯別合計発電電力量を、一定の期間(一日、一月、一年等)分算出する(
図5、列CL21)。
なお、本実施例では、算出期間を一日と指定している。
【0057】
次に、処理手段2は、電源種別排出係数データと、電源種別発電電力量データとに基づいて、電源群時間帯別CO
2排出量を算出する(ステップS13)。
電源群時間帯別CO
2排出量は、電源種別の排出係数と電源種別発電電力量との積を各電源種別に求めた後、それらの総和から算出される。
具体的に、
図5を例にすると、2022年4月1日の0時台において、火力発電が2065万kWh、水力発電が133万kWh、バイオマス発電が37万kWh、風力発電が17万kWh行われている。
そうすると、火力0.8(kg‐CO
2/kWh、以下単位省略)、水力0、バイオマス0、太陽光0、風力0とした電源種別排出係数からは、2022年4月1日の0時台において、電源群時間帯別CO
2排出量は、下式で算出される。
【0058】
【0059】
処理手段2は、同様にして、各日、各時間帯における電源群時間帯別CO
2排出量を、一定の期間(一日、一月、一年等)分算出する(
図5、列CL22)。
なお、本実施例では、算出期間を一日としている。
【0060】
次に、処理手段2は、電源群時間帯別合計発電電力量と、電源群時間帯別CO
2排出量とに基づいて、電源群時間帯別排出係数を算出する(ステップS14)。
電源群時間帯別排出係数は、電源群時間帯別CO
2排出量を電源群時間帯別合計発電電力量で割ることで算出される。
具体的に、
図5を例にすると、2022年4月1日の0時台において、電源群時間帯別CO
2排出量は1652万kg、電源群時間帯別合計発電電力量は2252万kWhと算出されている。
そうすると、2022年4月1日の0時台において、電源群時間帯別排出係数は、下式で算出される。
【0061】
【0062】
処理手段2は、同様にして、各日、各時間帯における電源群時間帯別排出係数を、一定の期間(一日、一月、一年等)分算出する(
図5、列CL23)。
なお、本実施例では、算出期間を一日としている。
【0063】
次に、判定手段3は、需要者消費電力量データに基づいて、電力需要者が、再エネ発電設備を利用した自家発電を行う供給需要者であるか否かを判定する(ステップS15)。
ここで当該電力需要者が供給需要者であると判定された場合(S15でY)、供給需要者処理(ステップS40)へと進む。供給需要者処理の詳細は後述する。
ここで当該電力需要者が供給需要者でないと判定された場合(S15でN)、ステップS16)へと進む。
【0064】
次に、処理手段2は、需要者消費電力量データと、電源群時間帯別排出係数と、に基づいて、需要者の時間帯別CO
2排出量を算出する(ステップS16)。
具体的に、
図5を例にすると、2022年4月1日の5時台において、需要者Aは10kWhの電力を消費している(列CL24)。
そうすると、2022年4月1日の5時台において、需要者Aが電力消費によって間接的に排出したと考えられるCO
2排出量は、2022年4月1日の5時台の電源群時間帯別排出係数と需要者Aの消費電力量の積で表すことができ、下式で算出される。
【0065】
【0066】
処理手段2は、同様にして、各日、各時間帯における需要者Aの時間帯別CO
2排出量を、一定の期間(一日、一月、一年等)分算出する(
図5、列CL25)。
なお、本実施例では、算出期間を一日としている。
【0067】
次に、処理手段2は、需要者消費電力量データに基づいて、需要者の期間消費電力量を算出する(ステップS17)。
需要者の期間消費電力量は、一定期間内に需要者が消費した電力量の総和である。
具体的に、
図5を例にすると、2022年4月1日において、需要者Aは5時台に10kWh、6時台に20kWh、7時台に15kWh、17時台に10kWh、18時台に25kWhの電力を消費している(列CL24)。
そうすると、2022年4月1日において、需要者Aの期間消費電力量(一日)は、下式で算出される。
【0068】
【0069】
次に、処理手段2は、需要者消費電力量データに基づいて、需要者の期間CO
2排出量を算出する(ステップS18)。
需要者の期間CO
2排出量は、一定期間内に需要者が電力消費によって間接的に排出したと考えられるCO
2排出量の総和である。
具体的に、
図5を例にすると、2022年4月1日において、需要者Aは5時台に7.4kg、6時台に14.8kg、7時台に10.95kg、17時台に7.3kg、18時台に18.75kgのCO
2を、電力消費によって間接的に排出していると算出されている(列CL25)。
そうすると、2022年4月1日において、需要者Aの期間CO
2排出量(一日)は、下式で算出される。
【0070】
【0071】
最後に、処理手段2は、需要者の期間消費電力量と、需要者の期間CO
2排出量とに基づいて、その期間の需要者排出係数を算出する(ステップS19)。
需要者排出係数は、その需要者の期間CO
2排出量を期間消費電力量で割ることで算出される。
具体的に、
図5を例にすると、2022年4月1日において、需要者Aの期間CO
2排出量(一日)は59.2kg/日、期間消費電力量(一日)は80kWh/日と算出されている。
そうすると、2022年4月1日の需要者Aの需要者排出係数は、下式で算出される。
【0072】
【0073】
このようにして算出された需要者排出係数は、需要者が使用した電力1kWhあたりその電力を生み出すために発電所等の電源群で排出されたCO2の加重平均量を表し、需要者に関連付けて記憶手段4に記憶させることができる。
また、同様にして、各需要者について需要者排出係数を算出し、各需要者に関連付けて記憶手段4に記憶させることができる。
【0074】
需要者排出係数が小さいほど、その需要者による電力消費は、所在地域の電源群において再エネ電源による発電割合がより大きい時間帯(発電によるCO2排出が比較的少ない時間帯)に行われた、と言えるため、その需要者は環境貢献度が高いと言える。
このように、各需要者の消費電力単位あたりのCO2排出の低廉度とその他の需要者への相対的優位性、即ち需要者が生み出した環境価値を数値化し比較評価することができる。
例えば、同様にして需要者Bの需要者排出係数は、0.51(kg/kWh)と算出されるため、需要者排出係数0.74の需要者Aと比較して、需要者Bの電力消費態様の方が環境に配慮している、と言うことができる。
【0075】
次に、
図7に示す、電源群排出係数算出処理を説明する。
図7に示すように、まず処理手段2は、データ供給手段1に対して必要なデータを要求し、参照する(ステップS21)。ここでは、少なくとも電源種別発電電力量データ(
図3に例示)と、電源種別排出係数データが要求、参照される。
【0076】
次に、処理手段2は、電源種別発電電力量データに基づいて、電源群時間帯別合計発電電力量を算出する(ステップS22、数1)。
処理手段2は、同様にして、各日、各時間帯における電源群時間帯別合計発電電力量を、一定の期間(一日、一月、一年等)分算出する(
図5、列CL21)。
なお、本実施例では、算出期間を一日としている。
【0077】
次に、処理手段2は、各日、各時間帯における電源群時間帯別合計発電電力量に基づいて、電源群の期間発電電力量を算出する(ステップS23)。
電源群の期間発電電力量は、一定期間内に電源群が発電した電力量の総和である。
具体的に、
図5を例にすると、2022年4月1日において、電源群の発電電力量は0時台に2252kWh、1時台に2148kWh、2時台に2170kWh、…23時台に2790kWhというように算出されている。(列CL21)。
そうすると、2022年4月1日において、電源群の期間発電電力量(一日)は、下式で算出される。
【0078】
【0079】
次に、処理手段2は、電源種別発電電力量データ及び電源種別排出係数データに基づいて、電源群時間帯別CO
2排出量を算出する(ステップS24、数2)。
処理手段2は、同様にして、各日、各時間帯における電源群時間帯別CO
2排出量を、一定の期間(一日、一月、一年等)分算出する(
図5、列CL22)。
なお、本実施例では、算出期間を一日としている。
【0080】
次に、処理手段2は、各日、各時間帯における電源群時間帯別CO
2排出量に基づいて、電源群の期間CO
2排出量を算出する(ステップS25)。
電源群の期間CO
2排出量は、一定期間内に電源群が発電した電力によるCO
2排出量の総和である。
具体的に、
図5を例にすると、2022年4月1日において、電源群の発電に伴うCO
2排出量は0時台に1652万kg、1時台に1567万kg、2時台に1592万kg、…23時台に2098万kgというように算出されている。(列CL22)。
そうすると、2022年4月1日において、電源群の期間CO
2排出量(一日)は、下式で算出される。
【0081】
【0082】
最後に、処理手段2は、電源群の期間発電電力量と、電源群の期間CO
2排出量とに基づいて、その期間の電源群排出係数を算出する(ステップS26)。
電源群排出係数は、その電源群の期間CO
2排出量を期間発電電力量で割ることで算出される。
具体的に、
図5を例にすると、2022年4月1日において、電源群の期間CO
2排出量(一日)は47593万kg/日、期間発電電力量(一日)は70162万kWh/日と算出されている。
そうすると、2022年4月1日の電源群排出係数は、下式で算出される。
【0083】
【0084】
このようにして求められた電源群排出係数は、電源群が1kWhの電力の発電のために排出したCO2の量を表し、電源群に関連付けて記憶手段4に記憶させることができる。
【0085】
前述の需要者排出係数と、上記の電源群排出係数は比較が可能である。需要者排出係数が電源群排出係数に比較して小さいほど、その需要者による電力消費は、所在地域の電源群において再エネ電源による発電割合がより大きい時間帯(発電によるCO2排出が比較的少ない時間帯)に行われた、と言えるため、需要者の環境貢献度、即ち需要者が生み出した環境価値を、電源群排出係数をベースラインとして評価することができる。
【0086】
例えば、
図8に示す排出権購入所要金額算出処理を説明する。
図8に示すように、まず処理手段2は、データ供給手段1に対して必要なデータを要求し、参照する(ステップS31)。ここでは、少なくとも各需要者の需要者排出係数と、電源群排出係数と、排出権単価データと、需要者消費電力量データと、が要求、参照される。
排出権単価データは、日付と時間帯に関連付けられた、単位CO
2排出量あたりの取引価格を示すデータ、又は所定期間における単位CO
2排出量あたりの取引価格の平均値を示す値であってよく、所定値、算出値、ネットワーク上で収集された値等であってよい。
【0087】
次に、処理手段2は、需要者排出係数と、電源群排出係数と、に基づいて、超過排出係数ポイントを算出する(ステップS32)。
超過排出係数ポイントは、需要者排出係数から電源群排出係数を減算した差に、所定の倍率を乗算して算出され、例えば、需要者Aの超過排出係数ポイントは下式にて算出される。
【0088】
【0089】
次に、処理手段2は、排出権単価データと、超過排出係数ポイントと、に基づいて、需要者別排出権単価を算出する(ステップS33)。
具体的に、例えば排出権単価データとして、2円/ポイント、という数値が与えられている場合、需要者Aの需要者別排出権単価は下式にて算出される。
【0090】
【0091】
最後に、処理手段2は、需要者別排出権単価と、需要者消費電力量データと、に基づいて、各需要者の一定期間における排出権購入所要金額を算出する(ステップS34)。
具体的に、
図5を例にすると、2022年4月1日において、需要者Aは5時台に10kWh、6時台に20kWh、7時台に15kWh、17時台に10kWh、18時台に25kWhの電力を消費している(列CL24)。
そうすると、2022年4月1日の需要者Aの排出権購入所要金額(一日)は、下式で算出される。
【0092】
【0093】
同様に、需要者Bの排出権購入所要金額は、-1700円と算出され、需要者Bは、環境に配慮した電力消費によって1700円分の環境価値を生み出したことになる。
そして、需要者Bは、この環境価値を需要者Aや、排出権市場に売却することが可能となる。
【0094】
このようにすることで、需要者の環境貢献度、即ち需要者が生み出した環境価値を、電源群排出係数をベースラインとして評価するとともに、環境価値取引を推進し、電力需要者のピークシフトやデマンドレスポンス(再エネ発電量に適応した消費)の価値を可視化することにより、そのインセンティブを生じることができ、再エネ供給に合わせた電力需要の追従性の向上により、再エネ発電の柔軟性を高め、結果として再エネ発電導入拡大に寄与することができる。
また、電力消費によるCO2排出量の削減は、電力消費の量の削減のみならず電力消費量単位あたりのCO2排出削減量という効率性の向上の組合せによりもたらされるものであることを可視化することで、より効果的な省エネを促すインセンティブとなることが期待される。これは、自動車運転に例えれば、ガソリン消費量の削減は走行距離の削減と単位走行距離当たりの燃費の向上の両面でもたらされるものであることを可視化し、エコドライブ推進が国民の意識に定着化していることに類似する。
【0095】
同様にして、各需要者の排出権購入所要金額を一定期間ごとに算出し、各需要者に関連付けて記憶手段4に記憶させておくことができる。
【0096】
次に、
図9、
図10を用いて、
図6のステップS40に示した供給需要者処理について説明する。
【0097】
図10に示すように、まず処理手段2は、データ供給手段1に対して必要なデータを要求し、参照する(ステップS41)。ここでは、少なくとも電源群時間帯別排出係数と、供給需要者の需要者消費・発電電力量データ(供給需要者消費電力量データ)と、が要求、参照される。
【0098】
次に、処理手段2は、各日、各時間帯における、供給需要者の発電電力量と、供給需要者の消費電力量と、に基づいて、供給需要者の系統電力消費量(売買電量)を算出する(ステップS42)。
系統電力消費量は、送配電ネットワークからの送配電を受けて供給需要者が消費した電力量であり、消費電力量から発電電力量を減算した差として算出することができる。
具体的に、
図9を例にすると、2022年4月1日の10時台において、供給需要者Cの発電電力量は10kWh、消費電力量は8kWhである(列CL32、CL33)。
そうすると、2022年4月1日の10時台において、供給需要者Cの系統電力消費量は、下式で算出される。
【0099】
【0100】
次に、処理手段2は、当該時間帯の系統電力消費量がゼロか否かを判定する(ステップS43)。当該時間帯の系統電力消費量がゼロの場合(S43でY)の場合、レバレッジを算定せず、供給需要者の当該時間帯の発電量に当該時間帯の電源群排出係数と-1を乗じた値をもってレバレッジ調整後時間帯別CO2排出量と算出してもよい(ステップS47)。当該時間帯の系統電力消費量がゼロでない場合(S43でN)の場合、当該時間帯の系統電力消費量及び発電電力量に基づいてレバレッジの算出を行う(ステップS45)。
【0101】
例えば、2022年4月1日の13時台において、供給需要者Cの系統電力消費量は0kWhであるため、処理手段2は、レバレッジを算定せず、供給需要者の当該時間帯の発電量に当該時間帯の電源群排出係数と-1を乗じた値をもってレバレッジ調整後時間帯別CO2排出量と算出してもよい(ステップS47)。このようにすることで、下記のステップS45におけるゼロ除算を防止している。
【0102】
また例えば、2022年4月1日の10時台において、供給需要者Cの系統電力消費量は-2kWhであり、ゼロでないため、処理手段2は、各日、各時間帯における、供給需要者の自家消費電力量(発電電力量が消費電力量を上回る場合は消費電力量、そうでない場合は発電電力量と定義される)と、供給需要者の系統電力消費量と、に基づいて、当該時間帯のレバレッジを算出する(ステップS45)。
レバレッジは、当該時間帯の供給需要者の系統電力消費量に対する自家消費電力量に-1を乗じた値と系統電力消費量の和の比を表してもよい。
具体的に、
図9を例にすると、2022年4月1日の10時台において、供給需要者Cの発電電力量は10kWh、系統電力消費量は-2kWhである(列CL32、CL34)。
そうすると、2022年4月1日の10時台において、供給需要者Cのレバレッジは、下式で算出される。
【0103】
【数15】
あるいは、系統電力消費量がマイナスの場合、すなわち売電がなされている時は、売電による価値を自家消費分よりも高く評価して、レバレッジを求める算式を上記に替えて、以下の式としてもよい。また、レバレッジを求める算式はこの他であってもよい。
【0104】
【0105】
次に、処理手段2は、各日、各時間帯における、レバレッジと、電源群時間帯別排出係数と、に基づいて、レバレッジ調整後時間帯別CO
2排出係数を算出する(ステップS46)。
レバレッジ調整後時間帯別CO
2排出係数は、当該時間帯における、レバレッジと、電源群時間帯別CO
2排出係数と、を乗算することで算出される。
具体的に、
図9を例にすると、2022年4月1日の10時台において、供給需要者Cのレバレッジは5、電源群時間帯別CO
2排出係数は0.64kg/kWhである(列CL35、CL31)。
そうすると、2022年4月1日の10時台において、レバレッジ調整後時間帯別CO
2排出係数は、下式で算出される。
【0106】
【0107】
最後に、処理手段2は、各日、各時間帯における、系統電力消費量と、レバレッジ調整後時間帯別CO
2排出係数と、に基づいて、レバレッジ調整後時間帯別CO
2排出量を算出する(ステップS47)。
レバレッジ調整後時間帯別CO
2排出量は、当該時間帯における、系統電力消費量と、レバレッジ調整後時間帯別CO
2排出係数と、を乗算することで算出される。
具体的に、
図9を例にすると、2022年4月1日の10時台において、供給需要者Cの系統電力消費量は-2kWh、レバレッジ調整後時間帯別CO
2排出係数は3.2kg/kWhである(列CL35、CL31)。
そうすると、2022年4月1日の10時台において、供給需要者Cのレバレッジ調整後時間帯別CO
2排出量は、下式で算出される。
【0108】
【0109】
このようにすることで、再エネを利用した自家発電を行う供給需要者は、発電電力の自家消費分もレバレッジの形で評価されるため、大きな環境価値を生み出しやすくなる。
加えて、これまでは別個に扱われていた自家消費されるCO2排出量削減価値と系統電力の再エネ価値を統合的に算定・評価・取引することが可能となる。
このため、電力需要者が自家発電を行う供給需要者となるインセンティブを高め、電力需要者構内において太陽光発電パネル等のオンサイト再エネ発電設備を導入する動機を与えることができる。
【0110】
また、例えば、2022年4月1日の11時台、12時台、14時台において、系統電力消費量が正の値であっても、その量が自家発電消費量を下回る限りにおいて、レバレッジ調整後時間帯別CO2排出量は負の値が算出される。
これはレバレッジ算出時(ステップS45)の正負反転と、系統電力消費量の乗算(ステップS47)に基づいており、系統電力消費量の正負に関わらず、レバレッジ調整後時間帯別CO2排出量は負の値が算出されるようになっている。
【0111】
即ち、供給需要者が自家発電電力量を超えて電力消費を行ったとしても、その消費電力の一部を自家発電で賄っていること自体に環境価値(負のCO2排出量)が認められる仕組みになっている。
このため、電力需要者が自家発電を行う供給需要者となるインセンティブを更に高め、電力需要者に太陽光発電パネル等のオンサイト再エネ発電設備を導入する動機を与えることができる。
【0112】
供給需要者の場合、上記のように算出されたレバレッジ調整後時間帯別CO
2排出量に基づいて、調整された需要者排出係数が
図6のステップS17~S19により算出される。
【0113】
以下、
図11~
図14を用いて、環境価値評価システムXの別の実施態様を説明する。
【0114】
同じ再エネ発電所でも、電力システム全体の再エネ電源比率拡大への貢献度は異なる。例えば、九州地域では、電力需要が相対的に少ない春・秋の晴天週末の日中時間帯に、大量に導入された太陽光発電により需要を大幅に超過する発電がなされ、電気は基本的には貯蔵が難しい性格上、また再エネ発電の低い負荷追従能力(柔軟性)等の問題から出力抑制により発電を止めてしまうケースがみられる。
あるいは、極端な場合、火力発電などの化石燃料を用いるなどしてCO2を排出する電源が全て停止され、送配電ネットワーク・系統システムに流入する電力は再エネ電源だけとなり、ネットワーク全体のCO2排出係数がゼロになるということもありうる。
このようなケースでは、追加的に太陽光発電所を新設したとしても、その電力送配電ネットワーク・系統システムにおける新規発電1kWhあたりのCO2排出削減量の追加はゼロ又は極端に小さくなる。すなわち、新規に運転を開始する再エネ発電所での発電量1kWh当たりの電力システム全体の再エネ電源比率向上への寄与度は、ネットワーク全体でのCO2排出係数が小さいほど相対的に減少する傾向がある。
【0115】
一方で、例えば太陽光発電がなされない夜間においては、化石燃料発電の比率が高まり、それに応じて排出係数も高まる傾向がある。こうした時間帯での再エネ電源の希少価値は高まる。
このようなケースでは、再エネ発電所での発電量1kWh当たりの電力システム全体の再エネ電源比率向上への寄与度は、その希少性ゆえに排出係数が大きいほど増加する傾向がある。
なお、同様のことは、排出係数がゼロとなり得る再エネに限らず、例えばコンバインドサイクルLNG火力発電などの、排出係数が標準に比して低い、低炭素型発電者にも当てはまる。ある電力供給者の排出係数が、ある時間帯電源群排出係数を下回るならば、その電力供給者は電力システム全体のCO2排出削減に貢献しているとの解釈も可能である。
しかしながら、一般に再エネ電力(低炭素型電源電力を含む。以下同じ。)の価値は時間帯に関わらず同一と評価されており、それゆえに再エネ電源構成比率の低い時間帯に再エネ発電を行う、再エネで発電された電力を蓄電池等に充電して需給逼迫時に放電する、などの時間シフトの希少性価値が埋没し、時間帯に関わらず再エネ電力比率を向上・平準化・底上げさせるインセンティブが十分に付与されていない。
【0116】
こうした状況に鑑み、時間帯別の排出係数が大きいときは再エネ需要が相対的に高い時と判断して、発電した再エネの価値を高く評価する一方で、時間帯別の排出係数が小さいときは再エネ需要が相対的に低い時と判断して、その時間帯別の希少性を加味した再エネの評価を行うための、環境価値評価システムXを
図11~
図14を用いて説明する。
時間帯別の再エネの希少性は、当該時間帯の電源群排出係数と正の相関があるとみなすことも可能である。例えば、前記の自家消費されるCO
2排出量削減価値は、Jクレジットやグリーン電力証書では電源群排出係数を用いて算定されている。そこで、当該時間帯の電源群排出係数をもって、当該時間帯の再エネ電力の希少性を示す指標としてもよい。
また、排出係数がゼロではないが標準を下回る低炭素型電源電力の電力供給者の場合は、当該時間帯の電源群排出係数から電力供給者自身の排出係数を減算した値をもって、当該時間帯の再エネ電力の希少性を示す指標としてもよい。
再エネ発電設備を利用して発電を行う電力供給者(発電所・電源)が生み出す再エネの希少価値の総和を、自身が発電した電力を全量自家消費したと仮定した場合の時間帯ごとの発電量と電源群排出係数(再エネ希少性係数)から電力供給者自身の排出係数を減算した値の積算により算定されるCO
2排出削減量の総和と定義してもよい。
【0117】
図11は、再エネ発電設備を利用して発電を行う電力供給者(発電所・電源)の、単位時間毎の発電電力量を示す供給者発電電力量データの例を示す図である。
図11(A)に示すように、供給者発電電力量データは、少なくとも、行RW2に示す供給者IDと、列CL41に示す日付と、列CL42に示す時間帯と、に関連付けて、列CL43に示す当該日の当該時間帯における供給者の発電電力量を、データとして保持している。
例えば、
図11(A)の例では、供給者ID000000001の電力供給者が、2022年4月1日の、6時台に1kWh、7時台に2kWh、8時台に5kWh、…、16時台に12kWh、発電を行ったことがデータから読み取られる(列CL43)。
また、例えば、
図11(B)の例では、供給者ID000000002の電力供給者が、2022年4月1日の、0時台に5kWh、1時台に5kWh、2時台に5kWh、…、23時台に5kWh、発電を行ったことがデータから読み取られる(列CL46)。
【0118】
図1の例に戻れば、各電源PS1~PS4等の、一定時間毎の発電状況は、一定の時間毎に通信ネットワークDNWに送信され、データベースDB2に随時格納される。
そのため、データ供給手段1は、通信ネットワークDNWを介してAPI連携やCSVファイル移送等の任意の方法で、各電力供給者に関連付けられた供給者発電電力量データを収集することができる。
【0119】
以下、
図12、
図13を用いて、環境価値評価システムXで行われる供給者再エネ希少性係数算出処理について説明する。
図13に示すように、まず処理手段2は、データ供給手段1に対して必要なデータを要求し、参照する(ステップS51)。ここでは、少なくとも電源種別発電電力量データ(
図3に例示)と、供給者発電電力量データ(
図11に例示)と、電源種別排出係数データが要求、参照される。
【0120】
次に、処理手段2は、電源種別発電電力量データに基づいて、電源群時間帯別合計発電電力量を算出する(ステップS52)。
次に、処理手段2は、電源種別排出係数データと、電源種別発電電力量データとに基づいて、電源群時間帯別CO
2排出量を算出する(ステップS53)。
次に、処理手段2は、電源群時間帯別合計発電電力量と、電源群時間帯別CO
2排出量とに基づいて、電源群時間帯別排出係数(実効CO
2排出量削減係数あるいは希少性係数)を算出する(ステップS54)。
ステップS52~S54の具体的な処理は、
図6に示すステップS12~ステップS14の処理と同様の為、説明を省略する。
【0121】
次に、処理手段2は、供給者発電電力量データと、電源群時間帯別排出係数(実効CO
2排出量削減係数あるいは希少性係数)と、供給者自身の排出係数と、に基づいて、供給者の時間帯別実効CO
2削減量を算出する(ステップS55)。
具体的に、
図12を例にすると、2022年4月1日の8時台において、供給者Dは5kWhの電力を発電している(列CL54)。
そうすると、2022年4月1日の8時台において、供給者Dが供給する再エネ電力発電によってもたらされる再エネ希少価値を、供給者自身が自家消費した場合のCO
2排出削減量(実効CO
2排出削減量)と定義するとするならば、2022年4月1日の8時台の電源群時間帯別排出係数(低炭素型電源の場合はそこから供給者自身の排出係数を減じた値)と、供給者Dの発電電力量の積で表すことができ、下式で算出される。
【0122】
【0123】
処理手段2は、同様にして、各日、各時間帯における供給者Dの時間帯別CO
2削減量を、一定の期間(一日、一月、一年等)分算出する(
図5、列CL25)。
【0124】
次に、処理手段2は、供給者発電電力量データに基づいて、供給者の期間発電電力量を算出する(ステップS57)。
供給者の期間発電電力量は、一定期間内に供給者が発電した電力量の総和である。
具体的に、
図12を例にすると、2022年4月1日において、供給者Dは6時台に1kWh、7時台に2kWh、8時台に5kWh、…、16時台に12kWh、発電を行っている(列CL54)。
そうすると、2022年4月1日において、供給者Dの期間発電電力量(一日)は、下式で算出される。
【0125】
【0126】
次に、処理手段2は、供給者発電電力量データに基づいて、供給者者の期間実効CO
2削減量を算出する(ステップS57)。
需要者の期間実効CO
2削減量は、一定期間内に供給者が再エネ発電によってもたらした各時間帯別実効CO
2排出削減量の総和と定義する。
具体的に、
図12を例にすると、2022年4月1日において、供給者Dは6時台に0.74kg、7時台に1.46kg、8時台に3.55kg、…、16時台に8.04kgのCO
2排出が再エネ発電によって実効的に削減したと算出されている(列CL55)。
そうすると、2022年4月1日において、供給者Dの期間実効CO
2削減量(一日)は、下式で算出される。
【0127】
【0128】
最後に、処理手段2は、供給者の期間発電電力量と、供給者の期間実効CO
2削減量(希少価値創出量)とに基づいて、その期間の供給者実効CO
2削減係数(再エネ希少性係数)を算出する(ステップS58)。
供給者実効削減係数は、その供給者の期間実効CO
2削減量を期間発電電力量で割ることで算出される。
具体的に、
図12を例にすると、2022年4月1日において、供給者Dの期間CO
2削減量(一日)は131.38kg/日、期間発電電力量(一日)は240kWh/日と算出されている。
そうすると、2022年4月1日の供給者Dの供給者実効CO
2削減係数(再エネ希少性係数)は、下式で算出される。
【0129】
【0130】
このようにして算出された供給者実効削減係数(再エネ希少性係数)は、供給者が発電した電力1kWhあたりその電力を生み出すために発電所等の電源群で排出され得たCO2の削減量を表し、供給者に関連付けて記憶手段4に記憶させることができる。
また、同様にして、各供給者について供給者実効削減係数(再エネ希少性係数)を算出し、各供給者に関連付けて記憶手段4に記憶させることができる。
【0131】
供給者実効削減係数が大きいほど、その供給者による再エネ発電は、所在地域の電源群において再エネ電源による発電割合がより小さい時間帯(発電によるCO2排出が比較的多い時間帯)に行われた、と言えるため、その供給者の環境貢献度は相対的に高いと言える。
このように、各供給者の再エネ発電による環境への貢献度、即ち供給者が生み出した環境価値を、希少性を加味して数値化し比較することができる。
例えば、同様にして供給者Eの供給者実効削減係数(再エネ希少性係数)は、0.74(kg‐CO2/kWh)と算出されるため、供給者実効削減係数(再エネ希少性係数)0.55の供給者Dと比較して、供給者Eの再エネ発電態様の方が、送配電ネットワークや環境への貢献度が相対的に高い、と言うことができる。
【0132】
上記の供給者実効削減係数(再エネ希少性係数)と、
図7に示す処理フローで算出される電源群排出係数(標準の再エネ希少性係数)は比較が可能である。供給者実効削減係数(再エネ希少性係数)が電源群排出係数(標準の再エネ希少性係数)に比較して大きいほど、その供給者による再エネ発電は、所在地域の電源群において再エネ電源による発電割合がより小さい時間帯(発電によるCO
2排出が比較的多い時間帯)に行われた、と言えるため、供給者の環境貢献度、即ち供給者が生み出した希少価値の相対的優位性を、電源群排出係数をベースラインとして数値化することができる。
【0133】
例えば、
図14に示す期間再エネ価値希少性報奨金額算出処理を説明する。
図14に示すように、まず処理手段2は、データ供給手段1に対して必要なデータを要求し、参照する(ステップS61)。ここでは、少なくとも各供給者の供給者実効削減係数と、電源群排出係数と、報奨金単価データと、供給者発電電力量データと、が要求、参照される。
希少性報奨金単価データは、日付と時間帯に関連付けられた、単位CO
2排出量あたりの取引価格を示すデータ、又は所定期間における単位CO
2排出量あたりの取引価格の平均値を示す値であってよく、所定値、算出値、ネットワーク上で収集された値であってよい。
【0134】
次に、処理手段2は、供給者実効削減係数と、電源群排出係数と、に基づいて、再エネ価値希少性ポイントを算出する(ステップS62)。
再エネ価値希少性ポイントは、供給者実効削減係数から電源群排出係数を減算した差に、所定の倍率を乗算して算出され、例えば、供給者Dのポイントは下式にて算出される。
【0135】
【0136】
次に、処理手段2は、報奨金単価データと、超過削減係数ポイントと、に基づいて、供給者別報奨金単価を算出する(ステップS63)。
具体的に、例えば報奨金単価データとして、2円/ポイント、という数値が与えられている場合、供給者Dの供給者別報奨金単価は下式にて算出される。
【0137】
【0138】
最後に、処理手段2は、供給者別再エネ価値希少性報奨金単価と、供給者発電電力量データと、に基づいて、各供給者の一定期間における期間再エネ価値希少性報奨金額を算出する(ステップS64)。
具体的に、
図12を例にすると、2022年4月1日において、供給者Dは6時台に1kWh、7時台に2kWh、8時台に5kWh、…、16時台に12kWh、発電を行っている(列CL54)。
そうすると、2022年4月1日の供給者Dの期間再エネ価値希少性報奨金額(一日)は、下式で算出されうる。
【0139】
【0140】
同様に、供給者Eの期間再エネ価値希少性報奨金額は、780円と算出される。
なお、ステップS64では、このようにして算出された期間再エネ価値希少性報奨金額を、これとは別に例えば希少性を加味しないで再エネ発電電力量に応じて一律に算定する標準環境価値(標準の再エネ希少性係数の場合の環境価値)の標準評価額と合算することで最終的な期間報奨金額としてもよい。例えば、50円/kWhの再エネ価値標準評価額額が設定されていれば、一旦算出金額がマイナスとなってしまった供給者Dも、5,760円の期間報奨金を得ることができ、再エネ発電のモチベーションが大きく下がらない。
【0141】
このようにすることで、供給者の環境貢献度、即ち供給者が生み出した環境価値の希少性を、電源群排出係数をベースラインとして数値化するとともに、標準環境価値評価額を組み合わせた報奨金によって電力供給者の再エネ発電が低い時間帯へのシフトへのインセンティブを生じしめ、再エネ電源構成比率の全時間帯での底上げと平準化を図ることができる。
【0142】
なお、同様にして、各供給者の期間報奨金額を一定期間ごとに算出し、各供給者に関連付けて記憶手段4に記憶させておくことができる。
【0143】
上述の実施形態において示した各構成や機能は、あくまでも一例であって、設計要求等に基づき種々変更可能である。
【符号の説明】
【0144】
X 環境価値評価システム
1 データ供給手段
2 処理手段
3 判定手段
PNW1、PNW2 送配電ネットワーク
PSG 電源群
PS1、PS2、PS3、PS4 電源
C1、C2、C3 電力需要者
SM1、SM2、SM3 スマートメータ
DNW 通信ネットワーク
DB1、DB2 データベース
DG 端末群
D1、D2、D3、D4 端末
【手続補正書】
【提出日】2023-01-11
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源種別の単位発電電力量あたりのCO2排出量を示す電源種別排出係数データと、電力需要者の所在地域に電力を供給する電源群における電源種別の単位時間毎の発電電力量を示す電源種別発電電力量データと、当該電力需要者の前記単位時間毎の消費電力量を示す需要者消費電力量データと、を供給するデータ供給手段と、
前記電源種別排出係数データと、前記電源種別発電電力量データと、前記需要者消費電力量データと、に基づいて、当該電力需要者の単位消費電力量あたりのCO2排出量を示す需要者排出係数を算出する処理手段と、
当該電力需要者と、算出された当該需要者排出係数と、を関連付けて記憶する記憶手段と、を備えることを特徴とする、環境価値評価システム。
【請求項2】
前記処理手段は、前記電源種別排出係数データと、前記電源種別発電電力量データと、に基づいて、前記電源群の単位発電電力量あたりの排出量を示す電源群排出係数を算出することを特徴とする、請求項1に記載の環境価値評価システム。
【請求項3】
前記データ供給手段は、排出権単価データを更に供給し、
前記処理手段は、前記電源群排出係数と、前記需要者排出係数と、前記排出権単価データと、前記需要者消費電力量データと、に基づいて、前記需要者排出係数に関連付けられた前記電力需要者の排出権購入所要金額を算出することを特徴とする、請求項2に記載の環境価値評価システム。
【請求項4】
前記需要者消費電力量データに基づいて、前記電力需要者が自家発電を行う供給需要者であるか否かを判定する判定手段を更に備え、
前記判定手段が、当該電力需要者を前記供給需要者と判定した場合に、
前記処理手段は、当該供給需要者が前記単位時間毎に自家発電した電力量を示す供給需要者発電電力量と、当該供給需要者の前記単位時間毎の消費電力量を示す供給需要者消費電力量と、に基づいてレバレッジを算出し、
前記レバレッジと、前記電源群排出係数と、に基づいて、前記単位時間におけるレバレッジ調整後時間帯別需要者CO2排出量を算出することを特徴とする、請求項2に記載の環境価値評価システム。
【請求項5】
前記処理手段は、前記供給需要者消費電力量から前記供給需要者発電電力量を減算した差が正負いずれの場合にも、系統電力の消費量が自家発電消費量を上回らない限りにおいて、前記単位時間における前記レバレッジ調整後時間帯別需要者CO2排出量が負の値となるように算出することを特徴とする、請求項4に記載の環境価値評価システム。
【請求項6】
前記処理手段は、前記供給需要者消費電力量から前記供給需要者発電電力量を減算した差がゼロのとき、前記単位時間における前記レバレッジ調整後時間帯別需要者CO2排出量の値を所定値に基づいて算出することを特徴とする、請求項4に記載の環境価値評価システム。
【請求項7】
電源種別の単位発電電力量あたりのCO2排出量を示す電源種別排出係数データと、電力需要者の所在地域に電力を供給する電源群における電源種別の単位時間毎の発電電力量を示す電源種別発電電力量データと、当該電力需要者の前記単位時間毎の消費電力量を示す需要者消費電力量データと、を供給するデータ供給ステップと、
前記電源種別排出係数データと、前記電源種別発電電力量データと、前記需要者消費電力量データと、に基づいて当該電力需要者の単位消費電力量あたりのCO2排出量を示す需要者排出係数を算出する処理ステップと、
当該電力需要者と、算出された当該需要者排出係数と、を関連付けて記憶する記憶ステップと、をコンピュータに実行させる、環境価値評価方法。
【請求項8】
一又は複数のコンピュータを、請求項1~6の何れかに記載の環境価値評価システムとして機能させるための、環境価値評価プログラム。
【請求項9】
電源種別および電力供給者の単位発電電力量あたりのCO2排出量を示す電源種別排出係数データと、再生可能エネルギー発電設備もしくは低炭素型発電設備を利用して発電を行う電力供給者の所在地域に電力を供給する電源群における電源種別の単位時間毎の発電電力量を示す電源種別発電電力量データと、当該電力供給者の前記単位時間毎の発電電力量を示す供給者発電電力量データと、を供給するデータ供給手段と、
前記電源種別排出係数データと、前記電源種別発電電力量データと、前記供給者発電電力量データと、に基づいて、当該電力供給者の単位発電電力量あたりの再エネ価値の希少性を示す供給者再エネ希少性係数を算出する処理手段と、当該電力供給者と、算出された当該供給者再エネ希少性係数と、を関連付けて記憶する記憶手段と、を備えることを特徴とする、環境価値評価システム。
【請求項10】
前記処理手段は、前記電源種別排出係数データと、前記電源種別発電電力量データと、に基づいて、前記電源群の単位発電電力量あたりのCO2排出量を示す電源群排出係数を算出する、請求項9に記載の環境価値評価システム。
【請求項11】
前記データ供給手段は、時間帯別の再エネ電力の希少価値を評価する報奨金単価データを更に供給し、
前記処理手段は、前記電源群排出係数と、前記供給者再エネ希少性係数と、前記報奨金単価データと、に基づいて、前記供給者再エネ希少性係数に関連付けられた前記電力供給者に対する報奨金額を算出することを特徴とする、請求項10に記載の環境価値評価システム。
【請求項12】
電源種別の単位発電電力量あたりのCO2排出量を示す電源種別排出係数データと、再生可能エネルギー発電設備を利用して発電を行う電力供給者の所在地域に電力を供給する電源群における電源種別の単位時間毎の発電電力量を示す電源種別発電電力量データと、当該電力供給者の前記単位時間毎の発電電力量を示す供給者発電電力量データと、を供給するデータ供給ステップと、
前記電源種別排出係数データと、前記電源種別発電電力量データと、前記供給者発電電力量データと、に基づいて、当該電力供給者の単位発電電力量あたり再エネ価値の希少性を示す供給者再エネ希少性係数を算出する処理ステップと、
当該電力供給者と、算出された当該供給者再エネ希少性係数と、を関連付けて記憶する記憶ステップと、をコンピュータに実行させる、環境価値評価方法。
【請求項13】
一又は複数のコンピュータを、請求項9~11の何れかに記載の環境価値評価システムとして機能させるための、環境価値評価プログラム。