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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024059045
(43)【公開日】2024-04-30
(54)【発明の名称】GSR素子の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H10N 50/01 20230101AFI20240422BHJP
   G01R 33/02 20060101ALI20240422BHJP
   H01L 21/822 20060101ALI20240422BHJP
【FI】
H10N50/01
G01R33/02 D
H01L27/04 L
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022166553
(22)【出願日】2022-10-17
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-01-18
(71)【出願人】
【識別番号】713000630
【氏名又は名称】マグネデザイン株式会社
(72)【発明者】
【氏名】工藤 一恵
(72)【発明者】
【氏名】田辺 淳一
(72)【発明者】
【氏名】本蔵 義信
(72)【発明者】
【氏名】菊池 永喜
(72)【発明者】
【氏名】本蔵 晋平
【テーマコード(参考)】
2G017
5F038
5F092
【Fターム(参考)】
2G017AA02
2G017AB07
2G017AD02
5F038AZ04
5F038CA01
5F038CA16
5F038EZ01
5F038EZ14
5F038EZ15
5F038EZ17
5F038EZ20
5F092AA01
5F092AA11
5F092AA12
5F092AB01
5F092AC01
5F092AC30
5F092BD02
5F092BD20
5F092BD21
5F092CA19
5F092CA20
5F092EA04
5F092EA06
5F092EA08
(57)【要約】      (修正有)
【課題】磁界検出素子と特定用途向け集積回路ASICとしいうとの一体化プロセスにおいて、視認性の高いアライメントマークを用いたGSR素子の製造方法を提供する。
【解決手段】方法は、ASIC基板20上に機能の異なる樹脂被膜を2回に分けて形成する2層樹脂被膜法を採用し、磁性ワイヤ223を配置・固定する溝221を形成する溝形成部22とアライメントマーク形成部23を、樹脂被膜上に同時に形成することと、第一層樹脂被膜に残るASIC基板に由来する凹凸を研磨除去した平坦面に第二層樹脂被膜225を形成することと、を含む。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁性ワイヤと前記磁性ワイヤを周回する下部コイルと上部コイルとからなる5μm以下のコイルピッチを有する検出コイルと電極配線からなるGSR素子を特定用途向け集積回路(以下、ASICという。)の基板上に直接作製するGSR素子の製造方法において、
(1)前記ASIC基板上にネガレジスト系の第一樹脂被膜を塗布して、平坦で硬い樹脂製の溝形成部とアライメントマーク形成部に第一台座を形成し、
(2)前記第一台座の上に溝深さよりも厚いポジレジスト系の第二樹脂被膜を塗布して第二台座とし、前記第二台座の前記溝形成部には前記磁性ワイヤを配置するための逆台形状の溝(以下、溝という。)を形成するための長方形の凹部と前記アライメントマーク形成部にはアライメントマーク用凹部を形成するための凹部を同時に形成し、キュア熱処理して硬化させるとともに逆台形状の前記溝と前記アライメントマーク用凹部を形成し、
(3)前記溝部にネガレジスト系の樹脂被膜を塗布し、露光、現像して溝部のみに樹脂被膜を残してキュア熱処理によって溝の底部にR形状を形成し、前記溝よりなる前記溝形成部と、アライメントマーク凹部よりなるアライメントマーク形成部に金属膜を成膜し、
(4)前記アライメントマーク形成部の前記金属膜の成膜された前記アライメントマーク凹部と、前記アライメントマーク形成部の平坦面に成膜された反射膜とからなる視認性の高いアライメントマークを用いて、前記金属膜の成膜された前記溝形成部の金属皮膜を前記溝の面に沿って前記下部コイルと、前記溝形成部の平坦面の上部コイル接続部(以下、下部コイルと上部コイル接続部とを下部コイルという。)を形成し、
(5)前記溝の前記下部コイルの上に前記磁性ワイヤを張力付加して配置し、樹脂により前記溝内に仮固定し、さらに張力を付加したままキュア熱処理することで、前記磁性ワイヤを溝に固定し、
(6)前記ワイヤと電極配線を接合するためのワイヤ電極部にある前記ワイヤを被覆している絶縁性ガラスをCF-RIEにより除去する工程と、
(7)基板全面にポジレジスト系樹脂被膜を塗布し、露光、現像して前記溝と磁性ワイヤ部のみにポジレジスト系樹脂被膜を残し、キュア熱処理して段差部を滑らかにする工程と、
(8)前記樹脂の上部に、オートアライメント機構により前記アライメントマークを用いて前記上部コイルと前記電極を形成し、
(9)前記磁性ワイヤと前記検出コイルと前記電極からなる素子の集合体からなる素子基板を個片化する
ことを特徴とするGSR素子の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載載された工程(2)において、
(2’)前記第一台座の上に溝深さよりも厚いポジレジスト系の第二樹脂被膜を塗布して第二台座とし、前記第二台座の前記溝形成部には前記磁性ワイヤを配置するための逆台形状の溝(以下、溝という。)を形成するための長方形の凹部と前記アライメントマーク形成部にはアライメントマーク用凹部を同時に形成し、キュア熱処理して硬化させるとともに前記溝と前記アライメントマーク用凹部を形成し、さらに前記アライメントマーク用凹部は第二台座をマスクにRIE加工をして第一台座を掘りこむ
ことを特徴とするGSR素子の製造方法。
【請求項3】
請求項1に記載された工程(5)において、
(5’) 前記溝の前記下部コイルの上に前記磁性ワイヤに張力30~100kg/mm2を負荷して配置し、前記磁性ワイヤを樹脂により前記溝内に埋設し、250~350℃の温度にて張力熱処理して前記磁性ワイヤを固定すると同時にGSR特性の向上を図ることを特徴とするGSR素子の製造方法。
【請求項4】
請求項1~請求項3に記載されたいずれか一項において、
前記ネガレジスト系の第一樹脂被膜の膜厚は、前記ASIC基板上の凹凸の3倍以上であることを特徴とするGSR素子の製造方法。






























【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁界検出素子と特定用途向け集積回路(以下、ASICとしいう。)との一体化プロセスにおいて、視認性の高いアライメントマークを用いたGSR素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高感度磁気センサには、ホールセンサ、GMRセンサ、TMRセンサ、高周波キャリアセンサ、FGセンサ、MIセンサ、GSRセンサなどがある。これらのセンサのうち、ホールセンサ、GMRセンサ、TMRセンサ、キャリアセンサは素子とASICが一体化されて小型化、薄型化は実現されているが、検出感度の改善が課題である。
一方、FGセンサ、MIセンサ、GSRセンサは高い感度を有するが、素子とASICが別々に配置されてワイヤボンディングで接合されており、センサの薄型化が課題である。
【0003】
この課題を解決するために、本発明者らは、GSR素子をASIC表面の上に形成する技術開発に取り組んだ結果、センサの小型化、薄型化を実現した(特許文献1)。
特許文献1にて、ASIC面上に絶縁性レジストを塗布し、そこに磁性ワイヤを配置する溝を形成し、磁性ワイヤと磁性ワイヤを周回する検出コイルおよび電極からなるGSR素子をASIC面上に一体形成した薄型高感度磁気センサが開示されている。しかし、その製造方法についてはその技術は公開されていない。さらにその製造技術に関しては現在に至るまで改良が続けられているが、公開されていない。
【0004】
一方、センサの高感度化のためには、微細ピッチコイルを形成してコイルの巻き数を増やす必要がある。しかし、コイルピッチを微細化するほど、ASIC基板の位置とマスクの位置をさらに精度よく合わせることが求められる。その精度を実現するためには、溝形成時に同時に視認性の高いアライメントマークを形成することで、合わせ精度の向上が期待できる。
【0005】
一般的には、アライメントマークは平坦な部分に作られたSiO膜に形成するために、高い視認性は容易に得ることができていた。またアライメントマークの形成方法は、特許文献2、特許文献3および特許文献4などに開示されているが、いずれも感光性樹脂の上にアライメントマークを形成するものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2019-191016号公報
【特許文献2】特開2006-229132号公報
【特許文献3】特開2009-004793号公報
【特許文献4】特許第2016776号公報
【特許文献5】特許第5747294号公報
【特許文献6】特許第6438616号公報
【特許文献7】特許第3693119号公報
【特許文献8】特許第4529783号公報
【特許文献9】特許第4835805号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】2018 IEICE The Development of a High Sensitive Micro Size Magnetic Sensor Named as GSR Sensor Exited by GHz Pulse Current p.325
【非特許文献2】2020 JMMN The development of micro-coil-on-ASIC type GSR sensor driven by GHz Pulse current p.5
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ASIC基板上にGSR素子を一体化形成する際、磁性ワイヤを周回するコイルをワイヤ近傍に形成する必要があり、磁性ワイヤを配置するための溝形状は、逆台形状が必須となる。SiO2などの絶縁膜にRIE(Reactive Ion Etching) などで溝を作製すると直方体形状となってしまい溝に沿って下部コイルを形成することは困難である。
【0009】
この逆台形状の溝を形成するためにはポジレジスト系の樹脂被膜に溝をマスク露光、現像をした後にキュア熱処理を加えることで達成できる。すなわち、逆台形状の溝を形成するにはポジレジスト系の樹脂被膜が必須となる。また、本プロセスでは合わせ精度向上のため、アライメントマークは溝と同時に形成する。したがって、アライメントマークは従来のSiO2上ではなく樹脂被膜上に形成することになる。
【0010】
しかし、ASIC基板面には通常は集積回路配線起因の2~3μmの凹凸(図1)があり、樹脂被膜を溝形成のために必要な膜厚(5~15μm程度)塗布しても、その表面には凹凸が転写され残ってしまい、アライメントマーク形成に必要な、平坦な樹脂被膜を得ることが困難である。
【0011】
一方、センサの高感度化には、コイルピッチを5μm以下へと微細化しコイルの巻き数を増やす必要がある。しかし、コイルピッチを微細化するほど、ASIC基板の位置と複数個のマスクの位置をさらに精度よく合わせることが求められる。その精度を実現するためには、オートアライメント機構が必要である。オートアライメント機構はアライメントマーク画像のコントラストの度合いに左右される。前述のようにASIC基板表面の凹凸があると、シグナルが乱れてマークの画像のコントラストが歪んでしまう。そのため、マークを誤認識し、コイルピッチ5μm以下の微細なコイルを形成しようとすると、下部コイル形成の後に上部コイルを形成する際に、両者の接続位置がずれて、コイルの接続不良という問題が発生する。
【0012】
本発明は、これらの問題を解決して、磁界検出素子と特定用途向け集積回路(以下、ASICという。)を直接連結するプロセスにおいて、数ミクロンの凹凸があるASIC基板上の樹脂被膜上に磁性ワイヤを配置する溝とコントラスト性に優れたアライメントマークを同時に形成し、5μm以下の微細コイルピッチで形成された検出コイルを有する多数のGSR素子をASIC基板上に一体化形成する製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、従来の1回の樹脂被膜を使った方法に代えて、機能の異なる樹脂被膜を2回に分けて形成する2層樹脂被膜法を考案して、溝とアライメントマークを樹脂被膜上に同時に形成できることを見出した。
【0014】
ここで、本発明によるASIC基板上に作製したGSR素子と製造に用いられたアライメントマークについて、その断面図を図3により説明する。両者の関係が分かるようにそれぞれ1個ずつに図示し、以下発明の詳細な説明を行なう。
また、製造工程のある工程における溝形成部とアライメントマーク形成部の平面図と断面図を図4により説明する。
なお、素子のみの製造については、本発明者らは特許第5747294号公報(特許文献5、6)、国際学会での発表(非特許文献1、2)を開示しており、また愛知製鋼(株)により特許文献7、特許文献8および特許文献9などが開示され、周知技術である。
【0015】
まず、図2を用いて、ASIC基板上に作製したGSR素子と製造に用いられたアライメントについて説明する。
ASIC基板20は、その表面には集積回路配線に起因する2~3μm程度の凹凸201が存在する。そのため、通常の溝形成部22に加えてアライメントマーク形成部23が必要となる。
【0016】
溝形成部(素子形成部)22は、ASIC20の上に第一台座211が形成されている。その平坦な表面の上には素子を構成する第二台座212に、逆台形状の溝221が形成されている。溝221面には下部コイル222が形成され、その上部に絶縁性ガラス被覆付きの磁性ワイヤ223が配置され、樹脂でもって磁性ワイヤを固定するとともに溝221内に埋設されている。
樹脂を介して磁性ワイヤ223の上に上部コイル224が形成され、両端にて下部コイル222と接続され、磁性ワイヤ223を周回する構造である。
磁性ワイヤ223の両端と周回コイルの両端にはそれぞれワイヤ電極が形成される。
【0017】
アライメントマーク形成部23は、ASIC20の上に第一台座211が形成されている。その平坦な表面の上にはアライメントマークを構成する第二台座212には、細長く急峻な擬逆台形状の溝231であるアライメントマーク凹部が形成され、その凹部表面は金属膜が形成されている。併せて平坦な面も金属膜からなる反射膜が形成されている。
【0018】
このアライメントマークを用いることにより正確かつ精密な位置合わせが可能となり、オートアライメント機構により下部コイルの形成、上部コイルの形成において5μm以下のコイルピッチでコイルの形成が可能となる。
コイルピッチとは、例えば3μmのコイルピッチの場合、コイル幅を2.0μmとするとコイル間隔は1.0となる。精度は隣のコイルを考慮すると0.5μm以下が求められる。
【0019】
次に、図3を用いて、製造工程のある工程における溝形成部とアライメントマーク形成部の平面図と断面図により説明する。
(a)は平面図で、(b)は(a)平面図のA1-A2線の断面図である。
ASIC基板30の上に溝形成部32とアライメントマーク形成部33が形成されている。溝形成部32には、上面が平坦な第一台座311の上に逆台形状の溝と平坦面からなる第二台座が形成されている。
【0020】
アライメントマーク部には、上面が平坦な第一台座311の上に細長い逆台形状の溝331であるアライメントマーク凹部と平坦面からなる第二台座312が形成されている。
【0021】
以下、本発明の2層樹脂被膜法について説明する。
第1ステップは、凹凸の存在するASIC基板上において第一樹脂被膜(ネガレジスト)を塗布して第1層を形成し、逆台形状の溝とアライメントマークを配置する下に平坦化した硬い樹脂製の第一台座を配置し、第一樹脂被膜に生じる凹凸を除去することである。それ以外のASIC表面である第一台座非配置部の凹凸は電極配線として使用するため、この凹凸は残した。
【0022】
第2ステップは、第一台座の上に溝の深さより厚い第二樹脂被膜(ポジレジスト)を塗布して第2層を形成し第二台座とし、この第二台座に(第2層の第二樹脂被膜)に逆台形状の溝とアライメントマーク用凹部を同時に形成し、その上に金属膜を成膜することである。
【0023】
次に、各ステップについて
第1ステップにおける1層目の第一樹脂被膜は、台座上部が平坦で、かつそのエッジ部は急峻な台座形状を確保することが好ましいので、ポリイミド系のネガレジストが好ましい。ただし、ポジレジストの使用も可能である。
なお、第2ステップにおける2層目の第二樹脂被膜は平坦化された第一台座の上に塗布され、キュア熱処理後に逆台形状の溝を形成するためにポジレジストを使用することが必要である。
【0024】
1層目の第一台座のキュア熱処理した第一樹脂と2層目の第二樹脂被膜との密着性については、懸念課題であったが、樹脂の種類が異なっても強固に一体化することを確認して解決した。また、アライメントマーク部は、溝部と同時に形成するため、溝部と同様に逆台形状となる。そこで、この逆台形状の第2の台座そのものをマスクとして、第1台座をRIEで掘りこむことで、アライメントマーク凹部の急峻度を高める。そして、さらに金属膜を反射膜とすることによりアライメントマークの視認性の向上が可能となる。このように2層構造の樹脂被膜を採用することで、1層構造では実現できない凹凸の除去が可能となる。
【0025】
第1ステップでは、凹凸のあるASIC基板面上に第一樹脂被膜を塗布して、溝形成部とアライメントマーク形成部にそれぞれ第一台座を形成するが、凹凸が生じる。キュア熱処理後にも第一台座の表面上には凹凸が残存するので、硬化させた第一台座の上面をCMP(Chemical-Mechanical Polishing)で平坦化する必要がある。
このCMPによりASICの電極部の破損が生じてしまう場合がある。その場合には、CMP前にASIC全面にレジストを塗布し、台座部以外のASIC面を保護し、CMP後にレジスト剥離液で除去することにより平坦化することが好ましい。
【0026】
樹脂被膜を塗布し、溝とアライメントマーク凹部をマスク露光、現像して、キュア熱処理をすると、溝は直方形から逆台形状へ、アライメントマーク凹部も直方形から逆台形状へと変化する。これがSiO2被膜に代えて、ポジレジスト系の樹脂被膜を採用した効果である。すでに、第一台座を平坦化しているので、溝面とアライメントマーク部自体は凹凸の無いものとなる。
【0027】
ここで、アライメントマーク凹部の形状も逆台形状となってしまうので、アライメントマーク部のエッジを急峻化するため、さらにアライメントマーク部以外をレジストで保護し、アライメントマーク部はこの逆台形状の第2台座そのものをマスクにしてRIEを行い、第1台座を掘りこむ。この時、第2台座も樹脂被膜であることから、RIEのエッチングの選択比はほぼ同じである。したがって、その掘り込み量は0.5~1.5μmが好ましい。0.5μm以下では、急峻化の効果が小さく、視認性の向上が認められない。1.5μm以上では、第2台座の膜べりが大きくなり、視認性に影響がでる。
【0028】
しかしながら、この状態では、ASIC基板上の凹凸が第一樹脂、第二樹脂を通して見えるため、アライメントに必要な視認性の高いコントラストが確保できない。
そこで、アライメントマーク上に反射機能を強化する金属膜を成膜することにより、アライメントマークの視認性を高めることができる。なお、第一台座を平坦化しない場合は、金属膜を成膜してもASIC基板の凹凸が解消できないため、アライメントマークの十分な視認性を確保することができない。つまり、台座の平坦化と反射機能を強める金属膜成膜が必須である。他方、逆台形状の溝に下部コイルを形成するために、金属膜生成が必要であるので、反射機能を高めるアライメントマーク部の金属膜と下部コイルのそれとは同じ金属膜とすることが望ましい。また、金属膜を成膜する前に、前記溝部にネガレジスト系の樹脂被膜を塗布し、露光、現像して溝部のみに樹脂被膜を残してキュア熱処理によって溝の底部にR形状を形成することで、金属膜の断線を防止できる。
【0029】
2層樹脂被膜法によって、溝とアライメントマークを同時に形成し、かつ視認性の高いアライメントマークを樹脂被膜上に形成することが可能になる。
なお、第1層目の第一台座を形成する第一樹脂被膜の膜厚は、CMPを行うために、ASIC表面の凹凸(通常2μm~3μm程度)の3倍以上が好ましい。
第2層目の第二樹脂の膜厚は、溝形成(溝の深さ5μm~10μm程度)を可能にするため、最低溝の深さ以上の厚さを確保する必要がある。
【発明の効果】
【0030】
本発明により、ASIC基板に損傷を与えることなく、磁性ワイヤを配置するための逆台形状の溝と視認性の高いアライメントマークを樹脂被膜上に同時に形成することが可能となり、このアライメントマークを使って、ASIC基板上に5μm以下、さらに3μm程度の微細なコイルピッチを有するGSR素子を一体化形成することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】ASIC基板の表面の凹凸状態を示す図である。
図2】ASIC基板上に2層樹脂被膜法により作製したGSR素子およびアライメントマークの概念図である。
図3】ASIC基板上の逆台形状の溝とアライメントマークを示す(a)平面図と(b)断面図である。
図4】GSR素子作製用の溝形成部およびアライメントマークの作製の断面図を示すフロー図の1番目と2番目である。
図5】GSR素子作製用の溝形成部およびアライメントマークの作製の断面図を示すフロー図の3番目と4番目である。
図6】GSR素子作製用の溝形成部およびアライメントマークの作製の断面図を示すフロー図の5番目と6番目である。
図7】GSR素子作製用の溝形成部およびアライメントマークの作製の断面図を示すフロー図の7番目と8番目である。
図8】ASIC基板の金属膜の成膜前の表面のアライメントマークとA1-A2線におけるマークおよび凹凸のシグナルを示す図(a)である。
図9】ASIC基板の金属膜の成膜後の表面のC1-C2線におけるアライメントマークのシグナルを示す図(b)である。
図10】本発明により作製された3.0μmコイルピッチを示すSEM観察写真と比較例の5.5μmコイルピッチを示すSEM観察写真である。
図11】第1台座をCMPした後の台座表面の凹凸状態を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
本発明のGSR素子の製造方法は、
磁性ワイヤと前記磁性ワイヤを周回する下部コイルと上部コイルとからなる5μm以下のコイルピッチを有する検出コイルと電極配線からなるGSR素子を特定用途向け集積回路(以下、ASICという。)の基板上に直接作製するGSR素子の製造方法において、
(1)前記ASIC基板上にネガレジスト系の第一樹脂被膜を塗布して、平坦で硬い樹脂製の溝形成部とアライメントマーク形成部第一台座を形成し、
(2)前記第一台座の上に溝深さよりも厚いポジレジスト系の第二樹脂被膜を塗布して第二台座とし、前記第二台座の前記溝形成部には前記磁性ワイヤを配置するための逆台形状の溝(以下、溝という。)を形成するための長方形の凹部と前記アライメントマーク形成部にはアライメントマーク用凹部を形成するための凹部を同時に形成し、キュア熱処理して硬化させるとともに逆台形状の前記溝と前記アライメントマーク用凹部を形成し、
(3)前記溝部にネガレジスト系の樹脂被膜を塗布し、露光、現像して溝部のみに樹脂被膜を残してキュア熱処理によって溝の底部にR形状を形成し、前記溝よりなる前記溝形成部と、アライメントマーク凹部よりなるアライメントマーク形成部に金属膜を成膜し、
(4)前記アライメントマーク形成部の前記金属膜の成膜された前記アライメントマーク凹部と、前記アライメントマーク形成部の平坦面に成膜された反射膜とからなる視認性の高いアライメントマークを用いて、前記金属膜の成膜された前記溝形成部の金属皮膜を前記溝の面に沿って前記下部コイルと、前記溝形成部の平坦面の上部コイル接続部(以下、下部コイルと上部コイル接続部とを下部コイルという。)を形成し、
(5)前記溝の前記下部コイルの上に前記磁性ワイヤを配置し、前記ワイヤを樹脂により前記溝内に埋設するとともに前記磁性ワイヤを固定し、
(6)前記樹脂の上部に、オートアライメント機構により前記アライメントマークを用いて前記上部コイルと前記電極を形成し、
(7)前記磁性ワイヤと前記検出コイルと前記電極からなる素子の集合体を個片化する
ことを特徴とする。
【0033】
また、請求項1に記載載された工程(2)において、
(2’)前記第一台座の上に溝深さよりも厚いポジレジスト系の第二樹脂被膜を塗布して第二台座とし、前記第二台座の前記溝形成部には前記磁性ワイヤを配置するための逆台形状の溝(以下、溝という。)を形成するための長方形の凹部と前記アライメントマーク形成部にはアライメントマーク用凹部を形成するための細長い凹部を同時に形成し、キュア熱処理して硬化させるとともに前記溝と前記アライメントマーク用凹部を形成し、さらに前記アライメントマーク用凹部はRIE加工で第一台座まで掘り下げたアライメントマーク用凹部を形成
することを特徴とする。
【0034】
また、(5’) 前記溝の前記下部コイルの上に前記磁性ワイヤに張力30~100kg/mm2を負荷して配置し、前記磁性ワイヤを樹脂により前記溝内に埋設し、250~350℃の温度にて張力熱処理して前記磁性ワイヤを固定すると同時にGSR特性の向上を図ることを特徴とする。
【0035】
前記ネガレジスト系の第一樹脂被膜の膜厚は、前記ASIC基板上の凹凸の3倍以上であることを特徴とする。
【0036】
以下、発明を実施する最良の実施形態について、図4(a)~(h)を用いて工程ごとに詳細に説明する。
前段において本発明は、磁性ワイヤと検出コイルと電極とからなるGSR素子をASIC基板上に直接作製するものである。なお、磁性ワイヤと検出コイルと電極とからなり、コイルピッチを5μm以下の磁気検出素子は本発明の技術思想に包含されるものである。
【0037】
<工程(1)>
図4(a)~(h)を用いて説明する。
4aは、ASIC基板40aの表面には凹凸401aが存在していることを示す。凹凸1は図1に示している。
以下、ASIC基板は40x(x:b~h)、凹凸は401x(x:a~h)で表示する。溝形成部は4Gx(x:b~h)、アライメントマーク形成部は4Ax(x:b~h)で表示する。
【0038】
4bは、ASIC基板40b上にネガレジスト系の第一樹脂被膜41bを塗布し、フォトリソによるマスク材を用いて露光、現像を行なってGSR素子形成のための溝を形成する溝形成部4Gbとアライメントマークを形成するアライメントマーク形成部4Abからなる第一台座を形成する。これにより第一台座となる部分にのみ第一樹脂被膜が配置される。
ASIC基板40b上の凹凸401bは、第一樹脂被膜41bを塗布した溝形成部4Gbおよびアライメントマーク形成部4Abからなる第一台座にも転写により残存している。
【0039】
4cは、第一樹脂被膜にキュア熱処理を行ない、第一樹脂被膜を硬化させる。この時点においても、第一台座となる第一樹脂被膜51cの表面にはASIC40c上の凹凸401cが転写されて残存している。
なお、キュア熱処理の温度は250~350℃で行なう。250℃未満では硬化が不十分で後工程で形状が変化する懸念が残り、350℃を超えるとASIC回路に不具合が生じる懸念がある。
【0040】
4dは、凹凸401cが転写されて硬化している溝形成部4Gcとアライメントマーク形成部4Acからなる第一台座の第一樹脂被膜41d上に残存している凹凸401dをCMPにより平坦化して、溝形成部4Gdとアライメントマーク形成部4Adからなる平坦な第一台座1Aを形成する。
【0041】
また、第一台座1Aの形成において、ASIC基板40cの全面にレジストを塗布した後、第一台座の上のレジストを除去し、第一台座以外のASIC基板の表面を保護した後、第一台座を平坦化するためCMPを行ない、第一台座以外のASIC基板の表面を保護していたレジストを剥離する方法でもよい。
【0042】
第一台座1Aを形成する第一樹脂被膜41bの膜厚は、第一台座を配置するASIC基板40bの表面の凹凸401bの3倍以上が好ましい。3倍未満では、本工程のCMPで第一台座の凹凸401cを平坦化する前に、第一台座自身が薄くなってしまうためである。
【0043】
図8には、CMPにより平坦化した第一台座1Aの表面の凹凸を示す。
図1に示すASIC基板の表面の2μmの凹凸は第一樹脂被膜を塗布し、キュア熱処理しても転写されて残存していたが、図8に示すように第一台座のCMPにより0.02μm以下に平坦化できていることがわかる。
この0.02μm以下に平坦化した第一台座A1を用いて次工程(2)に入る。
【0044】
<工程(2)>
4eは、溝とアライメントマークを形成するため、溝深さより厚い第二樹脂被膜42eを塗布する。第一台座1Aは平坦化しているので、溝とアライメントマークを形成する第二台座1Bは、ASIC基板40eの凹凸401eの影響は受けない。すなわち、第二台座1Bは平坦な面からなっている。
【0045】
ここで、第二樹脂被膜42eの膜厚は、溝に配置する磁性ワイヤの径によるが、7μm~17μmである。その後、溝と複数のアライメントマークのパターンが配置されたマスク材を用いて露光、現像を行なう。この時、溝の形状は直方形の凹部(直方体形状)である。アライメントマークは凹部である。
【0046】
4fは、キュア熱処理を行ない、第二樹脂被膜42eを硬化させる。キュア熱処理温度は、250℃~350℃で行なう。250℃未満では、硬化が不十分となり、後工程で形状が変化する懸念がある。350℃を超えるとASIC回路に不具合が生じる懸念がある。
【0047】
熱処理後、溝の形状はキュア熱処理時に発生する応力により直方体形状から逆台形状4Gfとなる。第二台座1Bの上面は平坦を維持しており、この時、溝深さは5μm~15μmである。
また、アライメントマーク凹部の形状も同様に逆台形状44Afとなる。
【0048】
4gは、アライメントマーク形成部4Ag以外をレジストで保護した後、アライメントマーク部の第二台座1Bをマスクにして酸素RIEを行なって第一台座1Aにアライメントマーク凹部を掘り込み、アライメントマーク凹部44Agの形状を急峻化することが好ましい。
【0049】
<工程(3)>
4hは、前記溝部にネガレジスト系の樹脂被膜を塗布し、露光、現像して溝部のみに樹脂被膜を残してキュア熱処理によって溝の底部にR形状43hを形成後、ASIC基板40hの全面に金属膜を成膜する。この金属膜(45G、45A)はアライメントマーク部では反射膜(44Ah、45A)として用い、視認性の高い複数個のアライメントマークを形成する。金属膜の膜厚は、0.2μm~1μmである。
【0050】
図5に金属膜成膜前のアライメントマーク形成部44Agとマスクのアライメントマークの平面およびB1-B2線における波形(シグナル)を示す。
(a)は、ASIC基板40aの表面に塗布した第一樹脂被膜41bをキュア熱処理41bした後にCMPで平坦化し、その平坦面1Aの上に第二樹脂被膜42eを塗布し、キュア熱処理したアライメントマーク凹部44Agよりなるアライメントマーク形成部44Agの平面、およびマスクのアライメントマークを示す。
(b)は、(a)のB1-B2線における波形(シグナル)を示す。
【0051】
図6に金属膜成膜後のアライメントマーク形成部44Ahとマスクのアライメントマークマークの平面およびC1-C2線における波形(シグナル)を示す。
(a)は、アライメントマーク凹部44Agよりなるアライメントマーク形成部44Agに金属膜を成膜したアライメントマーク44Ahと反射膜45Aの平面、およびマスクのアライメントマークを示す。
(b)は、(a)のC1-C2線における波形(シグナル)を示す。
【0052】
金属膜を成膜する前は、溝とアライメントマークを配置する部分には第一樹脂被膜で平坦なかつ硬い第一台座1Aが形成されているが、図5(a)に示すようにアライメントに必要なコントラストが確保されていない。
これは、ASIC基板40g上の配線が樹脂被膜(第一樹脂被膜および第二樹脂被膜)を通して見えるためと推測し、さらに、ASIC基板40hの全面に金属膜を成膜した。
【0053】
この金属膜は、アライメントマークの反射膜45Aとしても機能する。このアライメントマークは、図6(b)に示すように、アライメントマーク、ウエハマークともにマークのシグナル強度が高く、段差起因のシグナルもないことからオートアライメント機構により問題なく認識できていることがわかる。
【0054】
<工程(4)>
上記の工程で形成された視認性の高いアライメントマークと金属膜を使ってレジスト塗布、露光、現像、エッチング工程を経て、逆台形状の溝に沿って下部コイルを形成する。
ここで、下部コイルには、逆台形状の溝の底面、側面に形成されたコイルに加えて溝形成部の平坦面に形成され、上部コイルとの接続部を同時に形成することから含むものとする。
【0055】
<工程(5)>
溝内に形成した下部コイルの上に絶縁性ガラス被覆されている磁性ワイヤを配置し、樹脂で埋設・固定する。
磁性ワイヤを固定する際に磁性ワイヤに張力30~100kg/mm2を負荷するとともに埋設用の樹脂を250~350℃の温度にてキュア処理して固定することが好ましい。これにより、磁気特性が改善される。
また、絶縁性ガラスで被覆されていない磁性ワイヤを配置する場合には、その配置の前に下部コイルの表面に絶縁性レジストを予め塗布することが好ましい。これにより下部コイルと金属製の磁性ワイヤとの短絡を防止することが可能となる。
【0056】
<工程(6)>
磁性ワイヤを固定している樹脂の上部に、オートアライメント機構により視認性の高いアライメントマークを使って、厚み1~2μmの金属膜の蒸着(メッキでもよい。)、レジスト塗布、露光、現像、エッチング工程を経て上部コイルを形成してGSR素子を作製する。
また、電極、電極とコイル・磁性ワイヤとの配線は同時に形成することが好ましい。配線の形成に先立って磁性ワイヤの両端の絶縁性ガラス被覆をCF4-RIEで除去する。
【0057】
上部コイルの形成において、アライメントマークと複数個のマスクの位置合わせ精度は1μm以下好ましくは0.5μm以下とした。この時、アライメントマークは第一台座1Aおよび反射膜(金属膜)を有することによりシグナル強度も十分であるため、なんの問題もなくオートアライメントにより、下部コイルと上部コイルを接合させることができる。
【0058】
図7に、本発明により作製した3.0μmの狭ピッチコイルのSEM写真を比較例の5.5μmピッチコイルとともに示す。
3.0μmピッチのコイルが上部コイル-下部コイルのずれなく形成できることがわかる。
【実施例0059】
2層樹脂被膜法によって、ASIC基板上の樹脂被膜に溝とアライメントマークを同時に形成し、かつ視認性の高いアライメントマークを用いて狭ピッチコイルからなるGSR素子の製造フローを、図4(a)~(h)を用いて以下に説明する。
【0060】
工程ア)ASIC基板40aの表面には、集積回路起因の数μmの凹凸401aが存在している(図4(a))。
工程イ)ASIC基板40bに第一樹脂被膜41bを塗布した後、マスク材を用いて露光、現像を行なって図4(b)を形成する。
すなわち、溝を形成する溝形成部4Gbとアライメントマーク凹部を形成するアライメントマーク形成部4Abからなる第一台座を形成する。
これにより、第一台座となる部分のみに第一樹脂被膜41bが配置される。このとき、第一台座の厚みは10μmである。
【0061】
工程ウ)280℃、1時間のキュア熱処理を行なって第一樹脂被膜41cを硬化させる(図4(c))。この時点においても、第一台座となる第一樹脂被膜41cの表面にはASIC基板40cの凹凸401cが転写されて残っている。
工程エ)ASIC基板の全体にレジストを塗布した後、マスク材を用いて露光、現像を行なって第一台座上のレジストを除去する。
【0062】
工程オ)第一台座を平坦化するためにCMPを行ない、第一台座1Aを形成する(図4(d))。第一台座の厚みは、工程イ)により10μmで、キュア熱処理後でも8μm程度はあることからCMPには問題はない。
工程カ)溝とアライメントマークを形成するために、第一台座1Aの上に厚み10μmの第二樹脂被膜42eを塗布する。第一台座1Aは平坦化しているので、溝を形成する溝形成部4Gfとアライメントマークを形成するアライメントマーク形成部4Afからなる第二台座1BはASIC基板40eの凹凸401e影響は受けない(図4(e))。
【0063】
工程キ)280℃、1時間のキュア熱処理を行なって第二樹脂被膜41fを硬化させる(図4(g))。熱処理によって溝はキュア熱処理時に発生する応力で直方体形状(44Gf、44Af)から逆台形状(44Gg、44Ag)へ変形する。第二台座1Bの上面は平坦を維持する。溝の深さは8μmである。
【0064】
工程ク)アライメントマーク凹部の形状を急峻化するために樹脂を全面に塗布した後、マスク露光・現像してアライメントマーク形成部以外をレジストで保護する。
アライメントマーク形成部4Agの第二台座1Bをマスクにして酸素RIEを行ない、第一台座1Aにアライメントマーク凹部44Agを掘り込み、レジストを剥離する(図4(g))。この時、アライメントマークは18個形成した。
工程ケ)ASIC基板の全面に金属膜を成膜した(図4(h))。金属蒸着により厚み0.2μmである。
【0065】
工程コ)ASIC基板全体にレジストを塗布し、溝部に下部コイルを形成するためのパターン、アライメントマークには保護するためのパターンを配置したマスク材を用いて露光、現像を行なった。
工程サ)コイル部にめっき後、レジスト膜を除去し、コイル部以外の金属膜をエッチングで除去する。これにより、溝部の金属膜は下部コイルとして、アライメントマークの金属膜は反射膜としてそれぞれ機能する。下部コイルの幅は2.0μm、厚みは1.0μmである。
【0066】
工程シ)溝の下部コイルの上部に、厚さ1μmの絶縁性ガラスで被覆されているCoFeB系の磁性ワイヤに50kg/mm2の張力を負荷して配置し、接着剤、テープなどで仮止めした後、磁性ワイヤを樹脂により溝内に埋設する。さらに、この樹脂を280℃の温度にてキュア熱処理により硬化させ、磁性ワイヤを固定する。この時、磁性ワイヤには張力が付加されたまま熱処理されるため、GSR特性を改善できる。
工程ス)磁性ワイヤ用電極との配線と接続するために磁性ワイヤの両端部の絶縁性ガラスをCF4-RIEで除去して導通部を形成する。
【0067】
工程セ)溝とワイヤの段差を解消するため、ポジレジスト系の樹脂被膜を塗布、露光、ベーク、現像、280℃、1時間のキュア熱処理をして溝上部の形状をなだらかにした後、ASIC基板の全体に金属膜を成膜し、レジストを塗布する。
工程ソ)溝部の上部コイルと磁性ワイヤの導通部の引き出し線(配線)を形成するためのパターンとアライメント部保護するためのパターンを配置したマスク材を用いて露光、現像を行なう。
なお、この時、アライメントマークは第一台座1Aおよび反射膜を有することによりシグナル強度も十分にあり、何の問題もなくオートアライメントにより、下部コイルの接続部と上部コイルの接続部との合わせを行なうことができる。
【0068】
工程タ)コイル部にめっき後、レジスト膜を除去し、コイル部以外の金属膜をエッチングで除去する。ここで上部コイル、電極および磁性ワイヤの導通部の引き出し線(配線)が形成されてそれぞれ機能する。
上部コイルの幅は2.0μm、厚みは1.0μmである。そして、下部コイルの接続部と上部コイルの接続部からなるコイル接続部は線幅2.0μm、コイルピッチは3.0μmで形成されている。
【0069】
以上のプロセスにより、溝とアライメントマークを樹脂被膜で同時に形成し、かつ樹脂被膜上に視認性の高いアライメントマークを形成できるため、ASIC基板上に微細なピッチコイルからなるGSR素子を一体化形成することが可能となる。
図7に本発明による3.0μmコイルピッチのSEM写真(a)を、従来例5.5μmコイルピッチのSEM写真(b)と比較して示す。
【産業上の利用可能性】
【0070】
ASIC基板上に微細なコイルピッチからなるGSR素子を一体化形成することが可能となり、GSR素子の薄型化・小型化に加えて一層の高感度化が達成される。
このGSRセンサは生体磁気への応用が期待される。
【符号の説明】
【0071】
1:ASIC基板の表面の凹凸
2:ASIC基板上のGSR素子およびアライメントマーク
20:ASIC基板、201:ASIC基板の凹凸、211:第一樹脂被膜(第一台座1A)、212:第二樹脂被膜(第二台座1B)、22:溝形成部、221:樹脂、222:下部コイル、223:磁性ワイヤ、224:上部コイル、225:溝底部にR形状を形成する樹脂被膜、 23:アライメントマーク形成部、231:アライメントマーク、232:反射膜
3:逆台形状の溝とアライメントマーク
30:ASIC基板、311:第一樹脂被膜(第一台座1A)、312:第二樹脂被膜(第二台座1B)、32:溝形成部、321:逆台形状の溝、33:アライメントマーク形成部、331:細長い逆台形状の溝(アライメントマーク凹部)
【0072】
4a:ASIC基板の表面の凹凸状態
40a:ASIC基板、401a:ASIC基板の凹凸
4b:第一樹脂被膜を塗布したASIC基板
4Gb:溝形成部、4Ab:アライメントマーク形成部
40b:ASIC基板、401b:ASIC基板の凹凸
4c:第一樹脂被膜キュア熱処理したASIC基板
4Gc:溝形成部、4Ac:アライメントマーク形成部
40c:ASIC基板、401c:ASIC基板の凹凸、41c:キュア処理した第一樹枝被膜
4d:CMPしたASIC基板
4Gd:溝形成部、4Ad:アライメントマーク形成部
40d:ASIC基板、401d:ASIC基板の凹凸、41d:CMP後の平坦化した第一樹脂被膜(第一台座1A)
4e:第二樹脂被膜を塗布したASIC基板
4Ge:溝形成部、4Ae:アライメントマーク形成部
40e:ASIC基板、41e:第一樹脂被膜(第一台座1A)、42e:第二樹脂被膜、1B:平坦面からなる第二台座
4f:第二樹脂被膜に溝を形成したASIC基板
4Gf:溝形成部、4Af:アライメントマーク形成部
40f:ASIC基板、401f:ASIC基板の凹凸、41f:第一樹脂被膜(第一台座1A)、42f:キュア処理した第二樹枝被膜、44Gf:長方形の溝、44Af:細長い長方形の溝
4g:溝を形成した第二樹脂被膜をキュア処理したASIC基板
4Gg:溝形成部、4Ag:アライメントマーク形成部
40g:ASIC基板、401g:ASIC基板の凹凸、41g:第一樹脂被膜(第一台座1A)、42g:キュア処理した第二樹枝被膜、44Gg:逆台形状の溝、44Ag:細長い逆台形状の溝
4h:金属膜を成膜したASIC基板
4Gh:溝形成部、4Ah:アライメントマーク形成部
40h:ASIC基板、401h:ASIC基板の凹凸、41h:第一樹脂被膜(第一台座1A)、42h:キュア処理した第二樹枝被膜、43h:溝底部のR形状を作る樹脂被膜、44Gh:逆台形状の溝、44Ah:細長い逆台形状の溝からなるアライメントマーク
45G:金属膜、45A:金属膜からなる反射膜
【0073】
5:金属膜成膜前のアライメントマーク
50:基板、51:アライメントマーク凹部、52:マスクのアライメントマーク
501:基板凹凸起因のシグナル、511:アライメントマーク凹部のシグナル、512:マスクのアライメントマークのシグナル
6:金属膜成膜後のアライメントマーク
60:基板、61:アライメントマーク凹部、62:マスクのアライメントマーク
611:アライメントマーク凹部のシグナル、612:マスクのアライメントマークのシグナル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
【手続補正書】
【提出日】2022-10-26
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項1
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項1】
磁性ワイヤと前記磁性ワイヤを周回する下部コイルと上部コイルとからなる5μm以下のコイルピッチを有する検出コイルと電極配線からなるGSR素子を特定用途向け集積回路(以下、ASICという。)の基板上に直接作製するGSR素子の製造方法において、
(1)前記ASIC基板上にネガレジスト系の第一樹脂被膜を塗布して、平坦で硬い樹脂製の溝形成部とアライメントマーク形成部に第一台座を形成し、
(2)前記第一台座の上に溝深さよりも厚いポジレジスト系の第二樹脂被膜を塗布して第二台座とし、前記第二台座の前記溝形成部には前記磁性ワイヤを配置するための逆台形状の溝(以下、溝という。)を形成するための長方形の凹部と前記アライメントマーク形成部にはアライメントマーク用凹部を形成するための凹部を同時に形成し、キュア熱処理して硬化させるとともに逆台形状の前記溝と前記アライメントマーク用凹部を形成し、
(3)前記溝部にネガレジスト系の樹脂被膜を塗布し、露光、現像して溝部のみに樹脂被膜を残してキュア熱処理によって溝の底部にR形状を形成し、前記溝よりなる前記溝形成部と、アライメントマーク凹部よりなるアライメントマーク形成部に金属膜を成膜し、
(4)前記アライメントマーク形成部の前記金属膜の成膜された前記アライメントマーク凹部と、前記アライメントマーク形成部の平坦面に成膜された反射膜とからなる視認性の高いアライメントマークを用いて、前記金属膜の成膜された前記溝形成部の金属皮膜を前記溝の面に沿って前記下部コイルと、前記溝形成部の平坦面の上部コイル接続部(以下、下部コイルと上部コイル接続部とを下部コイルという。)を形成し、
(5)前記溝の前記下部コイルの上に前記磁性ワイヤを張力付加して配置し、樹脂により前記溝内に仮固定し、さらに張力を付加したままキュア熱処理することで、前記磁性ワイヤを溝に固定し、
(6)前記ワイヤと電極配線を接合するためのワイヤ電極部にある前記ワイヤを被覆している絶縁性ガラスをCF-RIEにより除去する工程と、
(7)基板全面にポジレジスト系樹脂被膜を塗布し、露光、現像して前記溝と磁性ワイヤ部のみにポジレジスト系樹脂被膜を残し、キュア熱処理して段差部を滑らかにする工程と、
(8)前記樹脂の上部に、オートアライメント機構により前記アライメントマークを用いて前記上部コイルと前記電極を形成し、
(9)前記磁性ワイヤと前記検出コイルと前記電極からなる前記GSR素子の集合体からなる素子基板を個片化する
ことを特徴とするGSR素子の製造方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0032
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0032】
本発明のGSR素子の製造方法は、
磁性ワイヤと前記磁性ワイヤを周回する下部コイルと上部コイルとからなる5μm以下のコイルピッチを有する検出コイルと電極配線からなるGSR素子を特定用途向け集積回路(以下、ASICという。)の基板上に直接作製するGSR素子の製造方法において、
(1)前記ASIC基板上にネガレジスト系の第一樹脂被膜を塗布して、平坦で硬い樹脂製の溝形成部とアライメントマーク形成部第一台座を形成し、
(2)前記第一台座の上に溝深さよりも厚いポジレジスト系の第二樹脂被膜を塗布して第二台座とし、前記第二台座の前記溝形成部には前記磁性ワイヤを配置するための逆台形状の溝(以下、溝という。)を形成するための長方形の凹部と前記アライメントマーク形成部にはアライメントマーク用凹部を形成するための凹部を同時に形成し、キュア熱処理して硬化させるとともに逆台形状の前記溝と前記アライメントマーク用凹部を形成し、
(3)前記溝部にネガレジスト系の樹脂被膜を塗布し、露光、現像して溝部のみに樹脂被膜を残してキュア熱処理によって溝の底部にR形状を形成し、前記溝よりなる前記溝形成部と、アライメントマーク凹部よりなるアライメントマーク形成部に金属膜を成膜し、
(4)前記アライメントマーク形成部の前記金属膜の成膜された前記アライメントマーク凹部と、前記アライメントマーク形成部の平坦面に成膜された反射膜とからなる視認性の高いアライメントマークを用いて、前記金属膜の成膜された前記溝形成部の金属皮膜を前記溝の面に沿って前記下部コイルと、前記溝形成部の平坦面の上部コイル接続部(以下、下部コイルと上部コイル接続部とを下部コイルという。)を形成し、
(5)前記溝の前記下部コイルの上に前記磁性ワイヤを配置し、前記ワイヤを樹脂により前記溝内に埋設するとともに前記磁性ワイヤを固定し、
(6)前記樹脂の上部に、オートアライメント機構により前記アライメントマークを用いて前記上部コイルと前記電極を形成し、
(7)前記磁性ワイヤと前記検出コイルと前記電極からなる前記GSR素子の集合体を個片化する
ことを特徴とする。
【手続補正書】
【提出日】2022-11-22
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項1
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項1】
磁性ワイヤと前記磁性ワイヤを周回する下部コイルと上部コイルとからなる5μm以下のコイルピッチを有する検出コイルと電極配線からなるGSR素子を特定用途向け集積回路(以下、ASICという。)の基板上に直接作製するGSR素子の製造方法において、
(1)前記ASIC基板上にネガレジスト系の第一樹脂被膜を塗布して、平坦で硬い樹脂製の溝形成部とアライメントマーク形成部に第一台座を形成し、
(2)前記第一台座の上に溝深さよりも厚いポジレジスト系の第二樹脂被膜を塗布して第二台座とし、前記第二台座の前記溝形成部には前記磁性ワイヤを配置するための逆台形状の溝(以下、溝という。)を形成するための長方形の凹部と前記アライメントマーク形成部にはアライメントマーク用凹部を形成するための凹部を同時に形成し、キュア熱処理して硬化させるとともに逆台形状の前記溝と前記アライメントマーク用凹部を形成し、
(3)前記溝部にネガレジスト系の樹脂被膜を塗布し、露光、現像して溝部のみに樹脂被膜を残してキュア熱処理によって溝の底部にR形状を形成し、前記溝よりなる前記溝形成部と、アライメントマーク凹部よりなるアライメントマーク形成部に金属膜を成膜し、
(4)前記アライメントマーク形成部の前記金属膜の成膜された前記アライメントマーク凹部と、前記アライメントマーク形成部の平坦面に成膜された反射膜とからなる視認性の高いアライメントマークを用いて、前記金属膜の成膜された前記溝形成部の金属皮膜を前記溝の面に沿って前記下部コイルと、前記溝形成部の平坦面の上部コイル接続部(以下、下部コイルと上部コイル接続部とを下部コイルという。)を形成し、
(5)前記溝の前記下部コイルの上に前記磁性ワイヤを張力付加して配置し、樹脂により前記溝内に仮固定し、さらに張力を付加したままキュア熱処理することで、前記磁性ワイヤを溝に固定し、
(6)前記ワイヤと前記電極配線を接合するためのワイヤ電極部にある前記ワイヤを被覆している絶縁性ガラスをCF-RIEにより除去する工程と、
(7)基板全面にポジレジスト系樹脂被膜を塗布し、露光、現像して前記溝と磁性ワイヤ部のみにポジレジスト系樹脂被膜を残し、キュア熱処理して段差部を滑らかにする工程と、
(8)前記樹脂の上部に、オートアライメント機構により前記アライメントマークを用いて前記上部コイルと前記電極配線を形成し、
(9)前記磁性ワイヤと前記検出コイルと前記電極配線からなる素子の集合体からなる素子基板を個片化する
ことを特徴とするGSR素子の製造方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁界検出素子と特定用途向け集積回路(以下、ASICとしいう。)との一体化プロセスにおいて、視認性の高いアライメントマークを用いたGSR素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高感度磁気センサには、ホールセンサ、GMRセンサ、TMRセンサ、高周波キャリアセンサ、FGセンサ、MIセンサ、GSRセンサなどがある。これらのセンサのうち、ホールセンサ、GMRセンサ、TMRセンサ、キャリアセンサは素子とASICが一体化されて小型化、薄型化は実現されているが、検出感度の改善が課題である。
一方、FGセンサ、MIセンサ、GSRセンサは高い感度を有するが、素子とASICが別々に配置されてワイヤボンディングで接合されており、センサの薄型化が課題である。
【0003】
この課題を解決するために、本発明者らは、GSR素子をASIC表面の上に形成する技術開発に取り組んだ結果、センサの小型化、薄型化を実現した(特許文献1)。
特許文献1にて、ASIC面上に絶縁性レジストを塗布し、そこに磁性ワイヤを配置する溝を形成し、磁性ワイヤと磁性ワイヤを周回する検出コイルおよび電極からなるGSR素子をASIC面上に一体形成した薄型高感度磁気センサが開示されている。しかし、その製造方法についてはその技術は公開されていない。さらにその製造技術に関しては現在に至るまで改良が続けられているが、公開されていない。
【0004】
一方、センサの高感度化のためには、微細ピッチコイルを形成してコイルの巻き数を増やす必要がある。しかし、コイルピッチを微細化するほど、ASIC基板の位置とマスクの位置をさらに精度よく合わせることが求められる。その精度を実現するためには、溝形成時に同時に視認性の高いアライメントマークを形成することで、合わせ精度の向上が期待できる。
【0005】
一般的には、アライメントマークは平坦な部分に作られたSiO膜に形成するために、高い視認性は容易に得ることができていた。またアライメントマークの形成方法は、特許文献2、特許文献3および特許文献4などに開示されているが、いずれも感光性樹脂の上にアライメントマークを形成するものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2019-191016号公報
【特許文献2】特開2006-229132号公報
【特許文献3】特開2009-004793号公報
【特許文献4】特許第2016776号公報
【特許文献5】特許第5747294号公報
【特許文献6】特許第6438616号公報
【特許文献7】特許第3693119号公報
【特許文献8】特許第4529783号公報
【特許文献9】特許第4835805号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】2018 IEICE The Development of a High Sensitive Micro Size Magnetic Sensor Named as GSR Sensor Exited by GHz Pulse Current p.325
【非特許文献2】2020 JMMN The development of micro-coil-on-ASIC type GSR sensor driven by GHz Pulse current p.5
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ASIC基板上にGSR素子を一体化形成する際、磁性ワイヤを周回するコイルをワイヤ近傍に形成する必要があり、磁性ワイヤを配置するための溝形状は、逆台形状が必須となる。SiO2などの絶縁膜にRIE(Reactive Ion Etching) などで溝を作製すると直方体形状となってしまい溝に沿って下部コイルを形成することは困難である。
【0009】
この逆台形状の溝を形成するためにはポジレジスト系の樹脂被膜に溝をマスク露光、現像をした後にキュア熱処理を加えることで達成できる。すなわち、逆台形状の溝を形成するにはポジレジスト系の樹脂被膜が必須となる。また、本プロセスでは合わせ精度向上のため、アライメントマークは溝と同時に形成する。したがって、アライメントマークは従来のSiO2上ではなく樹脂被膜上に形成することになる。
【0010】
しかし、ASIC基板面には通常は集積回路配線起因の2~3μmの凹凸(図1)があり、樹脂被膜を溝形成のために必要な膜厚(5~15μm程度)塗布しても、その表面には凹凸が転写され残ってしまい、アライメントマーク形成に必要な、平坦な樹脂被膜を得ることが困難である。
【0011】
一方、センサの高感度化には、コイルピッチを5μm以下へと微細化しコイルの巻き数を増やす必要がある。しかし、コイルピッチを微細化するほど、ASIC基板の位置と複数個のマスクの位置をさらに精度よく合わせることが求められる。その精度を実現するためには、オートアライメント機構が必要である。オートアライメント機構はアライメントマーク画像のコントラストの度合いに左右される。前述のようにASIC基板表面の凹凸があると、シグナルが乱れてマークの画像のコントラストが歪んでしまう。そのため、マークを誤認識し、コイルピッチ5μm以下の微細なコイルを形成しようとすると、下部コイル形成の後に上部コイルを形成する際に、両者の接続位置がずれて、コイルの接続不良という問題が発生する。
【0012】
本発明は、これらの問題を解決して、磁界検出素子と特定用途向け集積回路(以下、ASICという。)を直接連結するプロセスにおいて、数ミクロンの凹凸があるASIC基板上の樹脂被膜上に磁性ワイヤを配置する溝とコントラスト性に優れたアライメントマークを同時に形成し、5μm以下の微細コイルピッチで形成された検出コイルを有する多数のGSR素子をASIC基板上に一体化形成する製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、従来の1回の樹脂被膜を使った方法に代えて、機能の異なる樹脂被膜を2回に分けて形成する2層樹脂被膜法を考案して、溝とアライメントマークを樹脂被膜上に同時に形成できることを見出した。
【0014】
ここで、本発明によるASIC基板上に作製したGSR素子と製造に用いられたアライメントマークについて、その断面図を図2により説明する。両者の関係が分かるようにそれぞれ1個ずつに図示し、以下発明の詳細な説明を行なう。
また、製造工程のある工程における溝形成部とアライメントマーク形成部の平面図と断面図を図3により説明する。
なお、素子のみの製造については、本発明者らは特許第5747294号公報(特許文献5、6)、国際学会での発表(非特許文献1、2)を開示しており、また愛知製鋼(株)により特許文献7、特許文献8および特許文献9などが開示され、周知技術である。
【0015】
まず、図2を用いて、ASIC基板上に作製したGSR素子と製造に用いられたアライメントについて説明する。
ASIC基板20は、その表面には集積回路配線に起因する2~3μm程度の凹凸201が存在する。そのため、通常の溝形成部22に加えてアライメントマーク形成部23が必要となる。
【0016】
溝形成部(素子形成部)22は、ASIC20の上に第一台座211が形成されている。その平坦な表面の上には素子を構成する第二台座212に、逆台形状の溝221が形成されている。溝221面には下部コイル222が形成され、その上部に絶縁性ガラス被覆付きの磁性ワイヤ223が配置され、樹脂でもって磁性ワイヤを固定するとともに溝221内に埋設されている。
樹脂を介して磁性ワイヤ223の上に上部コイル224が形成され、両端にて下部コイル222と接続され、磁性ワイヤ223を周回する構造である。
磁性ワイヤ223の両端と周回コイルの両端にはそれぞれ電極が形成される。
【0017】
アライメントマーク形成部23は、ASIC20の上に第一台座211が形成されている。その平坦な表面の上にはアライメントマークを構成する第二台座212には、細長く急峻な擬逆台形状の溝231であるアライメントマーク凹部が形成され、その凹部表面は金属膜が形成されている。併せて平坦な面も金属膜からなる反射膜が形成されている。
【0018】
このアライメントマークを用いることにより正確かつ精密な位置合わせが可能となり、オートアライメント機構により下部コイルの形成、上部コイルの形成において5μm以下のコイルピッチでコイルの形成が可能となる。
コイルピッチとは、例えば3μmのコイルピッチの場合、コイル幅を2.0μmとするとコイル間隔は1.0となる。精度は隣のコイルを考慮すると0.5μm以下が求められる。
【0019】
次に、図3を用いて、製造工程のある工程における溝形成部とアライメントマーク形成部の平面図と断面図により説明する。
(a)は平面図で、(b)は(a)平面図のA1-A2線の断面図である。
ASIC基板30の上に溝形成部32とアライメントマーク形成部33が形成されている。溝形成部32には、上面が平坦な第一台座311の上に逆台形状の溝と平坦面からなる第二台座が形成されている。
【0020】
アライメントマーク部には、上面が平坦な第一台座311の上に細長い逆台形状の溝331であるアライメントマーク凹部と平坦面からなる第二台座312が形成されている。
【0021】
以下、本発明の2層樹脂被膜法について説明する。
第1ステップは、凹凸の存在するASIC基板上において第一樹脂被膜(ネガレジスト)を塗布して第1層を形成し、逆台形状の溝とアライメントマークを配置する下に平坦化した硬い樹脂製の第一台座を配置し、第一樹脂被膜に生じる凹凸を除去することである。それ以外のASIC表面である第一台座非配置部の凹凸は電極配線として使用するため、この凹凸は残した。
【0022】
第2ステップは、第一台座の上に溝の深さより厚い第二樹脂被膜(ポジレジスト)を塗布して第2層を形成し第二台座とし、この第二台座に(第2層の第二樹脂被膜)に逆台形状の溝とアライメントマーク用凹部を同時に形成し、その上に金属膜を成膜することである。
【0023】
次に、各ステップについて
第1ステップにおける1層目の第一樹脂被膜は、台座上部が平坦で、かつそのエッジ部は急峻な台座形状を確保することが好ましいので、ポリイミド系のネガレジストが好ましい。ただし、ポジレジストの使用も可能である。
なお、第2ステップにおける2層目の第二樹脂被膜は平坦化された第一台座の上に塗布され、キュア熱処理後に逆台形状の溝を形成するためにポジレジストを使用することが必要である。
【0024】
1層目の第一台座のキュア熱処理した第一樹脂と2層目の第二樹脂被膜との密着性については、懸念課題であったが、樹脂の種類が異なっても強固に一体化することを確認して解決した。また、アライメントマーク部は、溝部と同時に形成するため、溝部と同様に逆台形状となる。そこで、この逆台形状の第2の台座そのものをマスクとして、第一台座をRIEで掘りこむことで、アライメントマーク凹部の急峻度を高める。そして、さらに金属膜を反射膜とすることによりアライメントマークの視認性の向上が可能となる。このように2層構造の樹脂被膜を採用することで、1層構造では実現できない凹凸の除去が可能となる。
【0025】
第1ステップでは、凹凸のあるASIC基板面上に第一樹脂被膜を塗布して、溝形成部とアライメントマーク形成部にそれぞれ第一台座を形成するが、凹凸が生じる。キュア熱処理後にも第一台座の表面上には凹凸が残存するので、硬化させた第一台座の上面をCMP(Chemical-Mechanical Polishing)で平坦化する必要がある。
このCMPによりASICの電極部の破損が生じてしまう場合がある。その場合には、CMP前にASIC全面にレジストを塗布し、台座部以外のASIC面を保護し、CMP後にレジスト剥離液で除去することにより平坦化することが好ましい。
【0026】
第二樹脂被膜を塗布し、溝とアライメントマーク凹部をマスク露光、現像して、キュア熱処理をすると、溝は直方形から逆台形状へ、アライメントマーク凹部も直方形から逆台形状へと変化する。これがSiO2被膜に代えて、ポジレジスト系の樹脂被膜を採用した効果である。すでに、第一台座を平坦化しているので、溝面とアライメントマーク部自体は凹凸の無いものとなる。
【0027】
ここで、アライメントマーク凹部の形状も逆台形状となってしまうので、アライメントマーク部のエッジを急峻化するため、さらにアライメントマーク部以外をレジストで保護し、アライメントマーク部はこの逆台形状の第二台座そのものをマスクにしてRIEを行い、第一台座を掘りこむ。この時、第二台座も樹脂被膜であることから、RIEのエッチングの選択比はほぼ同じである。したがって、その掘り込み量は0.5~1.5μmが好ましい。0.5μm以下では、急峻化の効果が小さく、視認性の向上が認められない。1.5μm以上では、第2台座の膜べりが大きくなり、視認性に影響がでる。
【0028】
しかしながら、この状態では、ASIC基板上の凹凸が第一樹脂、第二樹脂を通して見えるため、アライメントに必要な視認性の高いコントラストが確保できない。
そこで、アライメントマーク上に反射機能を強化する金属膜を成膜することにより、アライメントマークの視認性を高めることができる。なお、第一台座を平坦化しない場合は、金属膜を成膜してもASIC基板の凹凸が解消できないため、アライメントマークの十分な視認性を確保することができない。つまり、台座の平坦化と反射機能を強める金属膜成膜が必須である。他方、逆台形状の溝に下部コイルを形成するために、金属膜生成が必要であるので、反射機能を高めるアライメントマーク部の金属膜と下部コイルのそれとは同じ金属膜とすることが望ましい。また、金属膜を成膜する前に、前記溝部にネガレジスト系の樹脂被膜を塗布し、露光、現像して溝部のみに樹脂被膜を残してキュア熱処理によって溝の底部にR形状を形成することで、金属膜の断線を防止できる。
【0029】
2層樹脂被膜法によって、溝とアライメントマークを同時に形成し、かつ視認性の高いアライメントマークを樹脂被膜上に形成することが可能になる。
なお、第1層目の第一台座を形成する第一樹脂被膜の膜厚は、CMPを行うために、ASIC表面の凹凸(通常2μm~3μm程度)の3倍以上が好ましい。
第2層目の第二樹脂の膜厚は、溝形成(溝の深さ5μm~10μm程度)を可能にするため、最低溝の深さ以上の厚さを確保する必要がある。
【発明の効果】
【0030】
本発明により、ASIC基板に損傷を与えることなく、磁性ワイヤを配置するための逆台形状の溝と視認性の高いアライメントマークを樹脂被膜上に同時に形成することが可能となり、このアライメントマークを使って、ASIC基板上に5μm以下、さらに3μm程度の微細なコイルピッチを有するGSR素子を一体化形成することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】ASIC基板の表面の凹凸状態を示す図である。
図2】ASIC基板上に2層樹脂被膜法により作製したGSR素子およびアライメントマークの概念図である。
図3】ASIC基板上の逆台形状の溝とアライメントマークを示す(a)平面図と(b)断面図である。
図4】GSR素子作製用の溝形成部およびアライメントマークの作製の断面図を示すフロー図の1番目(a)と2番目(b)である。
図5】GSR素子作製用の溝形成部およびアライメントマークの作製の断面図を示すフロー図の3番目(c)と4番目(d)である。
図6】GSR素子作製用の溝形成部およびアライメントマークの作製の断面図を示すフロー図の5番目(e)と6番目(f)である。
図7】GSR素子作製用の溝形成部およびアライメントマークの作製の断面図を示すフロー図の7番目(g)と8番目(h)である。
図8】ASIC基板の金属膜の成膜前の表面のアライメントマークとA1-A2線におけるマークおよび凹凸のシグナルを示す図(a)である。
図9】ASIC基板の金属膜の製膜後の表面のC1-C2線におけるアライメントマークのシグナルを示す図(b)である。
図10】本発明により作製された3.0μmコイルピッチを示すSEM観察写真と比較例の5.5μmコイルピッチを示すSEM観察写真である。
図11第一台座をCMPした後の台座表面の凹凸状態を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
本発明のGSR素子の製造方法は、
磁性ワイヤと前記磁性ワイヤを周回する下部コイルと上部コイルとからなる5μm以下のコイルピッチを有する検出コイルと電極配線からなるGSR素子を特定用途向け集積回路(以下、ASICという。)の基板上に直接作製するGSR素子の製造方法において、
(1)前記ASIC基板上にネガレジスト系の第一樹脂被膜を塗布して、平坦で硬い樹脂製の溝形成部とアライメントマーク形成部第一台座を形成し、
(2)前記第一台座の上に溝深さよりも厚いポジレジスト系の第二樹脂被膜を塗布して第二台座とし、前記第二台座の前記溝形成部には前記磁性ワイヤを配置するための逆台形状の溝(以下、溝という。)を形成するための長方形の凹部と前記アライメントマーク形成部にはアライメントマーク用凹部を形成するための凹部を同時に形成し、キュア熱処理して硬化させるとともに逆台形状の前記溝と前記アライメントマーク用凹部を形成し、
(3)前記溝部にネガレジスト系の樹脂被膜を塗布し、露光、現像して溝部のみに樹脂被膜を残してキュア熱処理によって溝の底部にR形状を形成し、前記溝よりなる前記溝形成部と、アライメントマーク凹部よりなるアライメントマーク形成部に金属膜を成膜し、
(4)前記アライメントマーク形成部の前記金属膜の成膜された前記アライメントマーク凹部と、前記アライメントマーク形成部の平坦面に成膜された反射膜とからなる視認性の高いアライメントマークを用いて、前記金属膜の成膜された前記溝形成部の金属皮膜を前記溝の面に沿って前記下部コイルと、前記溝形成部の平坦面の上部コイル接続部(以下、下部コイルと上部コイル接続部とを下部コイルという。)を形成し、
(5)前記溝の前記下部コイルの上に前記磁性ワイヤを配置し、前記ワイヤを樹脂により前記溝内に埋設するとともに前記磁性ワイヤを固定し、
(6)前記ワイヤと前記電極配線を接合するためのワイヤ電極部にある前記ワイヤを被覆している絶縁性ガラスをCF -RIEにより除去する工程と、
(7)基板全面にポジレジスト系樹脂被膜を塗布し、露光、現像して前記溝と磁性ワイヤ部のみにポジレジスト系樹脂被膜を残し、キュア熱処理して段差部を滑らかにする工程と、
(8)前記樹脂の上部に、オートアライメント機構により前記アライメントマークを用いて前記上部コイルと前記電極配線を形成し、
(9)前記磁性ワイヤと前記検出コイルと前記電極配線からなる素子の集合体からなる素子基板を個片化する
ことを特徴とする。
【0033】
また、請求項1に記載載された工程(2)において、
(2’)前記第一台座の上に溝深さよりも厚いポジレジスト系の第二樹脂被膜を塗布して第二台座とし、前記第二台座の前記溝形成部には前記磁性ワイヤを配置するための逆台形状の溝(以下、溝という。)を形成するための長方形の凹部と前記アライメントマーク形成部にはアライメントマーク用凹部を形成するための細長い凹部を同時に形成し、キュア熱処理して硬化させるとともに前記溝と前記アライメントマーク用凹部を形成し、さらに前記アライメントマーク用凹部は第二台座をマスクにRIE加工で第一台座まで掘り下げたアライメントマーク用凹部を形成
することを特徴とする。
【0034】
また、(5’) 前記溝の前記下部コイルの上に前記磁性ワイヤに張力30~100kg/mm2を負荷して配置し、前記磁性ワイヤを樹脂により前記溝内に埋設し、250~350℃の温度にて張力熱処理して前記磁性ワイヤを固定すると同時にGSR特性の向上を図ることを特徴とする。
【0035】
前記ネガレジスト系の第一樹脂被膜の膜厚は、前記ASIC基板上の凹凸の3倍以上であることを特徴とする。
【0036】
以下、発明を実施する最良の実施形態について、図4(a)~(h)を用いて工程ごとに詳細に説明する。
前段において本発明は、磁性ワイヤと検出コイルと電極とからなるGSR素子をASIC基板上に直接作製するものである。なお、磁性ワイヤと検出コイルと電極とからなり、コイルピッチを5μm以下の磁気検出素子は本発明の技術思想に包含されるものである。
【0037】
<工程(1)>
図4(a)~(h)図4図7;フロー図の1番目(a)~8番目(h))を用いて説明する。
4aは、ASIC基板40aの表面には凹凸401aが存在していることを示す。凹凸1は図1に示している。
以下、ASIC基板は40x(x:b~h)、凹凸は401x(x:a~h)で表示する。溝形成部は4Gx(x:b~h)、アライメントマーク形成部は4Ax(x:b~h)で表示する。
【0038】
4bは、ASIC基板40b上にネガレジスト系の第一樹脂被膜41bを塗布し、フォトリソによるマスク材を用いて露光、現像を行なってGSR素子形成のための溝を形成する溝形成部4Gbとアライメントマークを形成するアライメントマーク形成部4Abからなる第一台座を形成する。これにより第一台座となる部分にのみ第一樹脂被膜が配置される。
ASIC基板40b上の凹凸401bは、第一樹脂被膜41bを塗布した溝形成部4Gbおよびアライメントマーク形成部4Abからなる第一台座にも転写により残存している。
【0039】
4cは、第一樹脂被膜にキュア熱処理を行ない、第一樹脂被膜を硬化させる。この時点においても、第一台座となる第一樹脂被膜41cの表面にはASIC40c上の凹凸401cが転写されて残存している。
なお、キュア熱処理の温度は250~350℃で行なう。250℃未満では硬化が不十分で後工程で形状が変化する懸念が残り、350℃を超えるとASIC回路に不具合が生じる懸念がある。
【0040】
4dは、凹凸401cが転写されて硬化している溝形成部4Gcとアライメントマーク形成部4Acからなる第一台座の第一樹脂被膜41d上に残存している凹凸401dをCMPにより平坦化して、溝形成部4Gdとアライメントマーク形成部4Adからなる平坦な第一台座1Aを形成する。
【0041】
また、第一台座1Aの形成において、ASIC基板40cの全面にレジストを塗布した後、第一台座の上のレジストを除去し、第一台座以外のASIC基板の表面を保護した後、第一台座を平坦化するためCMPを行ない、第一台座以外のASIC基板の表面を保護していたレジストを剥離する方法でもよい。
【0042】
第一台座1Aを形成する第一樹脂被膜41bの膜厚は、第一台座を配置するASIC基板40bの表面の凹凸401bの3倍以上が好ましい。3倍未満では、本工程のCMPで第一台座の凹凸401cを平坦化する前に、第一台座自身が薄くなってしまうためである。
【0043】
図11には、CMPにより平坦化した第一台座1Aの表面の凹凸を示す。
図1に示すASIC基板の表面の2μmの凹凸は第一樹脂被膜を塗布し、キュア熱処理しても転写されて残存していたが、図11に示すように第一台座のCMPにより0.02μm以下に平坦化できていることがわかる。
この0.02μm以下に平坦化した第一台座A1を用いて次工程(2)に入る。
【0044】
<工程(2)>
4eは、溝とアライメントマークを形成するため、溝深さより厚い第二樹脂被膜42eを塗布する。第一台座1Aは平坦化しているので、溝とアライメントマークを形成する第二台座1Bは、ASIC基板40eの凹凸401eの影響は受けない。すなわち、第二台座1Bは平坦な面からなっている。
【0045】
ここで、第二樹脂被膜42eの膜厚は、溝に配置する磁性ワイヤの径によるが、7μm~17μmである。その後、溝と複数のアライメントマークのパターンが配置されたマスク材を用いて露光、現像を行なう。この時、溝の形状は直方形の凹部(直方体形状)である。アライメントマークは凹部である。
【0046】
4fは、キュア熱処理を行ない、第二樹脂被膜42eを硬化させる。キュア熱処理温度は、250℃~350℃で行なう。250℃未満では、硬化が不十分となり、後工程で形状が変化する懸念がある。350℃を超えるとASIC回路に不具合が生じる懸念がある。
【0047】
熱処理後、溝の形状はキュア熱処理時に発生する応力により直方体形状から逆台形状4Gfとなる。第二台座1Bの上面は平坦を維持しており、この時、溝深さは5μm~15μmである。
また、アライメントマーク凹部の形状も同様に逆台形状44Afとなる。
【0048】
4gは、アライメントマーク形成部4Ag以外をレジストで保護した後、アライメントマーク部の第二台座1Bをマスクにして酸素RIEを行なって第一台座1Aにアライメントマーク凹部を掘り込み、アライメントマーク凹部44Agの形状を急峻化することが好ましい。
【0049】
<工程(3)>
4hは、前記溝部にネガレジスト系の樹脂被膜を塗布し、露光、現像して溝部のみに樹脂被膜を残してキュア熱処理によって溝の底部にR形状43hを形成後、ASIC基板40hの全面に金属膜を成膜する。この金属膜(45G、45A)はアライメントマーク部では反射膜(44Ah、45A)として用い、視認性の高い複数個のアライメントマークを形成する。金属膜の膜厚は、0.2μm~1μmである。
【0050】
図8に金属膜成膜前のアライメントマーク形成部44Agとマスクのアライメントマークの平面およびB1-B2線における波形(シグナル)を示す。
(a)は、ASIC基板40aの表面に塗布した第一樹脂被膜41bをキュア熱処理41bした後にCMPで平坦化し、その平坦面1Aの上に第二樹脂被膜42eを塗布し、キュア熱処理したアライメントマーク凹部44Agよりなるアライメントマーク形成部44Agの平面、およびマスクのアライメントマークを示す。
(b)は、(a)のB1-B2線における波形(シグナル)を示す。
【0051】
図9に金属膜成膜後のアライメントマーク形成部44Ahとマスクのアライメントマークマークの平面およびC1-C2線における波形(シグナル)を示す。
(a)は、アライメントマーク凹部44Agよりなるアライメントマーク形成部44Agに金属膜を成膜したアライメントマーク44Ahと反射膜45Aの平面、およびマスクのアライメントマークを示す。
(b)は、(a)のC1-C2線における波形(シグナル)を示す。
【0052】
金属膜を成膜する前は、溝とアライメントマークを配置する部分には第一樹脂被膜で平坦なかつ硬い第一台座1Aが形成されているが、図8(a)に示すようにアライメントに必要なコントラストが確保されていない。
これは、ASIC基板40g上の配線が樹脂被膜(第一樹脂被膜および第二樹脂被膜)を通して見えるためと推測し、さらに、ASIC基板40hの全面に金属膜を成膜した。
【0053】
この金属膜は、アライメントマークの反射膜45Aとしても機能する。このアライメントマークは、図9(b)に示すように、アライメントマーク、ウエハマークともにマークのシグナル強度が高く、段差起因のシグナルもないことからオートアライメント機構により問題なく認識できていることがわかる。
【0054】
<工程(4)>
上記の工程で形成された視認性の高いアライメントマークと金属膜を使ってレジスト塗布、露光、現像、エッチング工程を経て、逆台形状の溝に沿って下部コイルを形成する。
ここで、下部コイルには、逆台形状の溝の底面、側面に形成されたコイルに加えて溝形成部の平坦面に形成され、上部コイルとの接続部を同時に形成することから含むものとする。
【0055】
<工程(5)>
溝内に形成した下部コイルの上に絶縁性ガラス被覆されている磁性ワイヤを配置し、樹脂で埋設・固定する。
磁性ワイヤを固定する際に磁性ワイヤに張力30~100kg/mm2を負荷するとともに埋設用の樹脂を250~350℃の温度にてキュア熱処理して固定することが好ましい。これにより、磁気特性が改善される。
また、絶縁性ガラスで被覆されていない磁性ワイヤを配置する場合には、その配置の前に下部コイルの表面に絶縁性レジストを予め塗布することが好ましい。これにより下部コイルと金属製の磁性ワイヤとの短絡を防止することが可能となる。
【0056】
<工程(6)>
磁性ワイヤを固定している樹脂の上部に、オートアライメント機構により視認性の高いアライメントマークを使って、厚み1~2μmの金属膜の蒸着(メッキでもよい。)、レジスト塗布、露光、現像、エッチング工程を経て上部コイルを形成してGSR素子を作製する。
また、電極、電極とコイル・磁性ワイヤとの配線は同時に形成することが好ましい。配線の形成に先立って磁性ワイヤの両端の絶縁性ガラス被覆をCF4-RIEで除去する。
【0057】
上部コイルの形成において、アライメントマークと複数個のマスクの位置合わせ精度は1μm以下好ましくは0.5μm以下とした。この時、アライメントマークは第一台座1Aおよび反射膜(金属膜)を有することによりシグナル強度も十分であるため、なんの問題もなくオートアライメントにより、下部コイルと上部コイルを接合させることができる。
【0058】
図7に、本発明により作製した3.0μmの狭ピッチコイルのSEM写真を比較例の5.5μmピッチコイルとともに示す。
3.0μmピッチのコイルが上部コイル-下部コイルのずれなく形成できることがわかる。
【実施例0059】
2層樹脂被膜法によって、ASIC基板上の樹脂被膜に溝とアライメントマークを同時に形成し、かつ視認性の高いアライメントマークを用いて狭ピッチコイルからなるGSR素子の製造フローを、図4(a)~(h)を用いて以下に説明する。
【0060】
工程ア)ASIC基板40aの表面には、集積回路起因の数μmの凹凸401aが存在している(図4(a))。
工程イ)ASIC基板40bに第一樹脂被膜41bを塗布した後、マスク材を用いて露光、現像を行なって図4(b)を形成する。
すなわち、溝を形成する溝形成部4Gbとアライメントマーク凹部を形成するアライメントマーク形成部4Abからなる第一台座を形成する。
これにより、第一台座となる部分のみに第一樹脂被膜41bが配置される。このとき、第一台座の厚みは10μmである。
【0061】
工程ウ)280℃、1時間のキュア熱処理を行なって第一樹脂被膜41cを硬化させる(図4(c))。この時点においても、第一台座となる第一樹脂被膜41cの表面にはASIC基板40cの凹凸401cが転写されて残っている。
工程エ)ASIC基板の全体にレジストを塗布した後、マスク材を用いて露光、現像を行なって第一台座上のレジストを除去する。
【0062】
工程オ)第一台座を平坦化するためにCMPを行ない、第一台座1Aを形成する(図4(d))。第一台座の厚みは、工程イ)により10μmで、キュア熱処理後でも8μm程度はあることからCMPには問題はない。
工程カ)溝とアライメントマークを形成するために、第一台座1Aの上に厚み10μmの第二樹脂被膜42eを塗布する。第一台座1Aは平坦化しているので、溝を形成する溝形成部4Gfとアライメントマークを形成するアライメントマーク形成部4Afからなる第二台座1BはASIC基板40eの凹凸401e影響は受けない(図4(e))。
【0063】
工程キ)280℃、1時間のキュア熱処理を行なって第二樹脂被膜41fを硬化させる(図4(g))。熱処理によって溝はキュア熱処理時に発生する応力で直方体形状(44Gf、44Af)から逆台形状(44Gg、44Ag)へ変形する。第二台座1Bの上面は平坦を維持する。溝の深さは8μmである。
【0064】
工程ク)アライメントマーク凹部の形状を急峻化するために樹脂を全面に塗布した後、マスク露光・現像してアライメントマーク形成部以外をレジストで保護する。
アライメントマーク形成部4Agの第二台座1Bをマスクにして酸素RIEを行ない、第一台座1Aにアライメントマーク凹部44Agを掘り込み、レジストを剥離する(図4(g))。この時、アライメントマークは18個形成した。
工程ケ)ASIC基板の全面に金属膜を成膜した(図4(h))。金属蒸着により厚み0.2μmである。
【0065】
工程コ)ASIC基板全体にレジストを塗布し、溝部に下部コイルを形成するためのパターン、アライメントマークには保護するためのパターンを配置したマスク材を用いて露光、現像を行なった。
工程サ)コイル部にめっき後、レジスト膜を除去し、コイル部以外の金属膜をエッチングで除去する。これにより、溝部の金属膜は下部コイルとして、アライメントマークの金属膜は反射膜としてそれぞれ機能する。下部コイルの幅は2.0μm、厚みは1.0μmである。
【0066】
工程シ)溝の下部コイルの上部に、厚さ1μmの絶縁性ガラスで被覆されているCoFeB系の磁性ワイヤに50kg/mm2の張力を負荷して配置し、接着剤、テープなどで仮止めした後、磁性ワイヤを樹脂により溝内に埋設する。さらに、この樹脂を280℃の温度にてキュア熱処理により硬化させ、磁性ワイヤを固定する。この時、磁性ワイヤには張力が付加されたまま熱処理されるため、GSR特性を改善できる。
工程ス)磁性ワイヤ用電極との配線と接続するために磁性ワイヤの両端部の絶縁性ガラスをCF4-RIEで除去して導通部を形成する。
【0067】
工程セ)溝とワイヤの段差を解消するため、ポジレジスト系の樹脂被膜を塗布、露光、ベーク、現像、280℃、1時間のキュア熱処理をして溝上部の形状をなだらかにした後、ASIC基板の全体に金属膜を成膜し、レジストを塗布する。
工程ソ)溝部の上部コイルと磁性ワイヤの導通部の引き出し線(配線)を形成するためのパターンとアライメント部保護するためのパターンを配置したマスク材を用いて露光、現像を行なう。
なお、この時、アライメントマークは第一台座1Aおよび反射膜を有することによりシグナル強度も十分にあり、何の問題もなくオートアライメントにより、下部コイルの接続部と上部コイルの接続部との合わせを行なうことができる。
【0068】
工程タ)コイル部にめっき後、レジスト膜を除去し、コイル部以外の金属膜をエッチングで除去する。ここで上部コイル、電極および磁性ワイヤの導通部の引き出し線(配線)が形成されてそれぞれ機能する。
上部コイルの幅は2.0μm、厚みは1.0μmである。そして、下部コイルの接続部と上部コイルの接続部からなるコイル接続部は線幅2.0μm、コイルピッチは3.0μmで形成されている。
【0069】
以上のプロセスにより、溝とアライメントマークを樹脂被膜で同時に形成し、かつ樹脂被膜上に視認性の高いアライメントマークを形成できるため、ASIC基板上に微細なピッチコイルからなるGSR素子を一体化形成することが可能となる。
図7に本発明による3.0μmコイルピッチのSEM写真(a)を、従来例5.5μmコイルピッチのSEM写真(b)と比較して示す。
【産業上の利用可能性】
【0070】
ASIC基板上に微細なコイルピッチからなるGSR素子を一体化形成することが可能となり、GSR素子の薄型化・小型化に加えて一層の高感度化が達成される。
このGSRセンサは生体磁気への応用が期待される。
【符号の説明】
【0071】
1:ASIC基板の表面の凹凸
2:ASIC基板上のGSR素子およびアライメントマーク
20:ASIC基板、201:ASIC基板の凹凸、211:第一樹脂被膜(第一台座1A)、212:第二樹脂被膜(第二台座1B)、22:溝形成部、221:樹脂、222:下部コイル、223:磁性ワイヤ、224:上部コイル、225:溝底部にR形状を形成する樹脂被膜、 23:アライメントマーク形成部、231:アライメントマーク、232:反射膜
3:逆台形状の溝とアライメントマーク
30:ASIC基板、311:第一樹脂被膜(第一台座1A)、312:第二樹脂被膜(第二台座1B)、32:溝形成部、321:逆台形状の溝、33:アライメントマーク形成部、331:細長い逆台形状の溝(アライメントマーク凹部)
【0072】
4a:ASIC基板の表面の凹凸状態
40a:ASIC基板、401a:ASIC基板の凹凸
4b:第一樹脂被膜を塗布したASIC基板
4Gb:溝形成部、4Ab:アライメントマーク形成部
40b:ASIC基板、401b:ASIC基板の凹凸
4c:第一樹脂被膜キュア熱処理したASIC基板
4Gc:溝形成部、4Ac:アライメントマーク形成部
40c:ASIC基板、401c:ASIC基板の凹凸、41c:キュア熱処理した第一樹脂被膜
4d:CMPしたASIC基板
4Gd:溝形成部、4Ad:アライメントマーク形成部
40d:ASIC基板、401d:ASIC基板の凹凸、41d:CMP後の平坦化した第一樹脂被膜(第一台座1A)
4e:第二樹脂被膜を塗布したASIC基板
4Ge:溝形成部、4Ae:アライメントマーク形成部
40e:ASIC基板、41e:第一樹脂被膜(第一台座1A)、42e:第二樹脂被膜、1B:平坦面からなる第二台座
4f:第二樹脂被膜に溝を形成したASIC基板
4Gf:溝形成部、4Af:アライメントマーク形成部
40f:ASIC基板、401f:ASIC基板の凹凸、41f:第一樹脂被膜(第一台座1A)、42f:キュア熱処理した第二樹脂被膜、44Gf:長方形の溝、44Af:細長い長方形の溝
4g:溝を形成した第二樹脂被膜をキュア熱処理したASIC基板
4Gg:溝形成部、4Ag:アライメントマーク形成部
40g:ASIC基板、401g:ASIC基板の凹凸、41g:第一樹脂被膜(第一台座1A)、42g:キュア熱処理した第二樹脂被膜、44Gg:逆台形状の溝、44Ag:細長い逆台形状の溝
4h:金属膜を成膜したASIC基板
4Gh:溝形成部、4Ah:アライメントマーク形成部
40h:ASIC基板、401h:ASIC基板の凹凸、41h:第一樹脂被膜(第一台座1A)、42h:キュア熱処理した第二樹脂被膜、43h:溝底部のR形状を作る樹脂被膜、44Gh:逆台形状の溝、44Ah:細長い逆台形状の溝からなるアライメントマーク
45G:金属膜、45A:金属膜からなる反射膜
【0073】
5:金属膜成膜前のアライメントマーク
50:基板、51:アライメントマーク凹部、52:マスクのアライメントマーク
501:基板凹凸起因のシグナル、511:アライメントマーク凹部のシグナル、512:マスクのアライメントマークのシグナル
6:金属膜成膜後のアライメントマーク
60:基板、61:アライメントマーク凹部、62:マスクのアライメントマーク
611:アライメントマーク凹部のシグナル、612:マスクのアライメントマークのシグナル