(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024059046
(43)【公開日】2024-04-30
(54)【発明の名称】羽ばたき装置
(51)【国際特許分類】
B64C 33/02 20060101AFI20240422BHJP
【FI】
B64C33/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022166557
(22)【出願日】2022-10-17
(71)【出願人】
【識別番号】592050814
【氏名又は名称】株式会社中北製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100180644
【弁理士】
【氏名又は名称】▲崎▼山 博教
(72)【発明者】
【氏名】濱本 将樹
(57)【要約】 (修正有)
【課題】小型で高機動力が得られる羽ばたき装置を提供する。
【解決手段】羽ばたき装置1は、羽根2と、羽根2に対応して設けられた一対の駆動部3とを有し、駆動部3は、第1駆動源30Uと、第2駆動源30Dと、第1駆動源30Uにより第1回動軸線周りに回動する第1従動部10Uと、第2駆動源30Dにより第2回動軸線周りに回動する第2従動部10Dと、第1従動部10Uの回動方向とは逆に第1従動部10Uを付勢する第1付勢部材40Uと、第2従動部10Dの回動方向とは逆に第2従動部10Dを付勢する第2付勢部材40Dと、制御部60とを備える。羽根2は、第1従動部10Uに接続され、第1回動軸線に交差する第3回動軸線周りに回動可能な第1羽根軸20と、第2従動部10Dに接続され、第2回動軸線に交差する第4回動軸線周りに回動可能な第2羽根軸21と、羽根本体22とを有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の羽根と、
一対の前記羽根のそれぞれに対応して設けられた一対の駆動部と、
を有し、
前記駆動部は、
第1駆動源と、
第2駆動源と、
前記第1駆動源から出力された動力を受けて第1回動軸線周りに回動する第1従動部と、
前記第2駆動源から出力される動力を受けて第2回動軸線周りに回動する第2従動部と、
前記第1従動部の回動に伴って、前記第1従動部の回動方向とは逆方向への付勢力を前記第1従動部に対して付与する第1付勢部材と、
前記第2従動部の回動に伴って、前記第2従動部の回動方向とは逆方向への付勢力を前記第2従動部に対して付与する第2付勢部材と、
前記第1駆動源及び前記第2駆動源による駆動力の出力制御を行う制御部と、
を備えたものであり、
前記羽根は、
所定の軸線方向に延びると共に、一端側において前記第1従動部に対して接続され、前記第1回動軸線に対して交差する第3回動軸線周り方向に回動可能に接続された第1羽根軸と、
前記第1羽根軸に対して交差する方向に延びると共に、一端側において前記第2従動部に対して接続され、前記第2回動軸線に対して交差する第4回動軸線周り方向に回動可能に接続された第2羽根軸と、
前記第1羽根軸及び前記第2羽根軸に亘って設けられた羽根本体と、
を有するものであること、
を特徴とする羽ばたき装置。
【請求項2】
一対の羽根と、
一対の前記羽根のそれぞれに対応して設けられた一対の駆動部と、
を有し、
前記駆動部は、
第1駆動源と、
第2駆動源と、
前記第1駆動源から出力された動力を受けて第1回動軸線周りに回動する第1従動部と、
前記第2駆動源から出力される動力を受けて第2回動軸線周りに回動する第2従動部と、
前記第1従動部の回動に伴って、前記第1従動部の回動方向とは逆方向への付勢力を前記第1従動部に対して付与する第1付勢部材と、
前記第2従動部の回動に伴って、前記第2従動部の回動方向とは逆方向への付勢力を前記第2従動部に対して付与する第2付勢部材と、
前記第1駆動源及び前記第2駆動源による駆動力の出力制御を行う制御部と、
を備えたものであり、
前記羽根は、
所定の軸線方向に延びると共に、一端側において前記第1従動部に対して接続され、前記第1回動軸線に対して交差する第3回動軸線周り方向に回動可能に接続された第1羽根軸と、
前記第1羽根軸に対して交差する方向に延びると共に、一端側において前記第2従動部に対して接続され、前記第2回動軸線に対して交差する第4回動軸線周り方向に回動可能に接続された第2羽根軸と、
前記第1羽根軸及び前記第2羽根軸に亘って設けられた羽根本体と、
を有するものであり、
前記第1付勢部材は、
一端側において前記第1従動部に対して接続され、他端側において前記第1羽根軸に対して直接的又は間接的に接続されており、
前記第2付勢部材は、
一端側において前記第2従動部に対して接続され、他端側において前記第2羽根軸に対して直接的又は間接的に接続されていること、
を特徴とする羽ばたき装置。
【請求項3】
一端側において前記第2回動軸線に対して交差する第5軸線周り方向に回動可能なように前記第2従動部に接続されたリンク部材を有しており、
前記リンク部材は、
他端側が前記第2羽根軸に向けて延びるように形成されると共に、前記第4回動軸線周り方向に回動可能に前記第2羽根軸が接続されていること、
を特徴とする請求項1又は2に記載の羽ばたき装置。
【請求項4】
前記第1駆動源及び前記第2駆動源が、DCモータにおけるアウトランナーモータで構成されていること、を特徴とする請求項1又は2に記載の羽ばたき装置。
【請求項5】
前記制御部は、
前記第1駆動源及び前記第2駆動源の正転又は逆転の切り替えにおいて前記第1駆動源及び前記第2駆動源の回転数がゼロとなる所定時間前に前記第1駆動源及び前記第2駆動源の駆動力の出力を停止させる制御を行うと共に、前記第1付勢部材及び前記第2付勢部材の復元力により、前記羽根における往動又は復動が切り替わった時点で、前記第1駆動源及び前記第2駆動源による駆動力の出力を再開させる制御を行うこと、を特徴とする請求項1又は2に記載の羽ばたき装置。
【請求項6】
前記制御部は、
前記第1付勢部材の振幅中心を、前記第1回動軸線周りの一方側又は他方側に所定量でオフセットする第1オフセット制御と、
前記第2付勢部材の振幅中心を、前記第2回動軸線周りの一方側又は他方側に所定量でオフセットする第2オフセット制御と、
を実行可能であり、
前記第1オフセット制御及び前記第2オフセット制御は、前記第1駆動源及び前記第2駆動源における駆動電圧波形に所定量のオフセットを付与することで実行されること、を特徴とする請求項1又は2に記載の羽ばたき装置。
【請求項7】
前記一対の駆動部を支持する躯体を有しており、
前記第1従動部の回動に伴って、前記第1従動部の回動方向とは逆方向への付勢力を前記第1従動部に対して付与する第3付勢部材と、
前記第2従動部の回動に伴って、前記第2従動部の回動方向とは逆方向への付勢力を前記第2従動部に対して付与する第4付勢部材と、
を有しており、
前記第3付勢部材は、
一端側において前記躯体に対して接続されると共に、他端側において、前記第1羽根軸に直接的又は間接的に接続されており、
前記第4付勢部材は、
一端側において前記躯体に対して接続されると共に、他端側において、前記第2羽根軸に直接的又は間接的に接続されており、
前記第3付勢部材及び前記第4付勢部材は、前記第1付勢部材及び前記第2付勢部材における付勢力よりも小さい付勢力を発揮可能、かつ、前記第1付勢部材及び前記第2付勢部材における振幅中心を基準位置に戻すことが可能な付勢力を発揮可能に形成されていること、を特徴とする請求項2に記載の羽ばたき装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記羽根が、進行方向に対して反対方向に所定の角度で傾斜するように前記第1駆動源及び前記第2駆動源における出力の位相に差を設ける制御を行うこと、を特徴とする請求項1又は2に記載の羽ばたき装置。
【請求項9】
前記一対の駆動部を支持する躯体を有しており、
前記躯体は、間隔を空けて配された一対の支持部を有しており、
前記第1駆動源及び前記第2駆動源が、前記一対の支持部の外側に配されており、
前記第1付勢部材、前記第2付勢部材、前記第1従動部、及び前記第2従動部が、前記一対の支持部の間に配されていること、を特徴とする請求項1又は2に記載の羽ばたき装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、羽根を揺動させることによって浮上力を得る羽ばたき装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、上空からの監視、撮影、各種の点検等に羽ばたき装置が利用されている。上述した羽ばたき装置として、DCモータにより、直接的に羽ばたき翼(羽根に相当)を駆動する羽ばたき翼超小型飛行機システム(以下、単に羽ばたき装置と称する)が知られている。DCモータは小型化に伴い設計上高いトルクを出す事が困難になること、及び高速回転(概ね無負荷回転数の70~85%)領域において電気-機械エネルギー変換効率(以後、単に効率と称する)がピークを取る事から、リンク機構を用いて一方向回転運動を往復回動運動に変換して羽根を羽ばたかせる羽ばたき機構が多く用いられてきた。一方で近年、昆虫などの生体の羽ばたきにおいて共振現象を用いた羽ばたきストロークの拡大機構が用いられている事が見いだされ、この知見を利用して、トーションバネにより共振系を構築する事で、トルクが小さい小型のDCモータを用いた構成でもスタンドアロン浮上が可能な機体が実現されている(例えば、特許文献1)。
【0003】
上述した特許文献1に記載の羽ばたき装置は、トーションバネに接続されたDCモータを駆動することで羽根を直接駆動するものとされている。また、上述した特許文献1に記載の羽ばたき装置は、DCモータを往復回動運動することで、当該トーションバネの復元力と、システム全体(羽根、駆動力伝達系、上記DCモータのロータ)の慣性力にて構成されるバネ-マス系を加振しているものと考えられる。このDCモータの加振周波数が、上記バネ-マス系の固有振動数(2*π*√(K/I)、但しKは当該トーションバネのバネ定数、Iは上記システム全体の回転慣性)に等しいとき、モータの駆動効率が最大となり、また羽ばたき振幅、及び浮上力も最大となることが上記特許文献1により示されている。すなわち当該構成においては上記バネ-マス系の固有振動数近傍に羽ばたき周波数を設定することが浮上に有利である。このため、羽根の質量が大きいケースや、モータのロータの回転慣性が大きい場合、おのずとバネ定数の高いトーションバネを用いることとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許出願公開第2016/159477号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、近年、羽ばたき装置の利用の多様化に伴い、小型で高機動力の羽ばたき装置が求められている。しかしながら、上述した特許文献1に記載の羽ばたき装置は、羽根の駆動が1自由度で構成されており、例えば羽根の迎え角をストロークと独立して変更する事はできず、高精細な羽根の駆動を行うことが困難であった。また、上述した特許文献1に記載の羽ばたき装置は、例えば、左右の羽根の運動の差を大きくするような場合(大きな姿勢制御トルクを発生させる場合)にモータの出力を高める必要があった。
【0006】
また、羽ばたき装置の高機動力化にあたり、モータの容量を大きくすることが考えられるが、羽ばたき装置の大型化や、コスト増大の懸念があった。また、モータの大容量化に代えて、トーションバネのバネ定数を上げて、羽ばたきに係る周波数を高めることが考えられる。しかしながら、上述した特許文献1に記載の羽ばたき装置は、トーションバネのバネ定数を大きくした場合、ヨー方向への運動に影響を及ぼす懸念や羽根のストロークを確保しにくくなる懸念があった。
【0007】
そこで、本発明は、小型で高機動力が得られる羽ばたき装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)上述した課題を解決すべく提供される本発明の羽ばたき装置は、一対の羽根と、一対の前記羽根のそれぞれに対応して設けられた一対の駆動部と、を有し、前記駆動部は、第1駆動源と、第2駆動源と、前記第1駆動源から出力された動力を受けて第1回動軸線周りに回動する第1従動部と、前記第2駆動源から出力される動力を受けて第2回動軸線周りに回動する第2従動部と、前記第1従動部の回動に伴って、前記第1従動部の回動方向とは逆方向への付勢力を前記第1従動部に対して付与する第1付勢部材と、前記第2従動部の回動に伴って、前記第2従動部の回動方向とは逆方向への付勢力を前記第2従動部に対して付与する第2付勢部材と、前記第1駆動源及び前記第2駆動源による駆動力の出力制御を行う制御部と、を備えたものであり、前記羽根は、所定の軸線方向に延びると共に、一端側において前記第1従動部に対して接続され、前記第1回動軸線に対して交差する第3回動軸線周り方向に回動可能に接続された第1羽根軸と、前記第1羽根軸に対して交差する方向に延びると共に、一端側において前記第2従動部に対して接続され、前記第2回動軸線に対して交差する第4回動軸線周り方向に回動可能に接続された第2羽根軸と、前記第1羽根軸及び前記第2羽根軸に亘って設けられた羽根本体と、を有するものであること、を特徴とするものである。
【0009】
上述した羽ばたき装置は、第1羽根軸が、第1駆動源により駆動され、第2羽根軸が、第2駆動源により駆動される。すなわち、羽根は、第1駆動源及び第2駆動源の双方により駆動され、第一駆動源の回転角により羽のストローク角が、第1駆動源と第2駆動源の回転角の差により羽の迎え角として規定される。これにより、上述した羽ばたき装置は、ストロークと迎え角を個別に制御する事が可能となり、姿勢を保ったまま水平方向に移動する等の、より機動力が高い飛行が可能になる。
【0010】
ここで、第1駆動源及び第2駆動源(単に、両者を併せて駆動源とも称する)には、各種のモータ等が利用できるが、正逆転が容易でありパワーウェイトレシオの高いブラシレスDCモータが好ましく利用できる。これにより、バッテリ駆動が容易になり、制御も容易に行うことができる。
【0011】
また、上述した羽ばたき装置は、第1付勢部材及び第2付勢部材(両者を併せて付勢部材とも称する)による付勢により、第1羽根軸及び第2羽根軸を、第1回動軸線周り方向及び第2回動軸線周り方向に励振することができる。したがって、上述した羽ばたき装置は、一対の羽根の羽ばたき周波数を励振により増幅できるので、一対の羽根を高速で駆動できる。なお、上述した付勢部材には、例えば、トーションバネ等の捩り方向にトルクを付勢できるものが好ましく利用できる。
【0012】
ここで、本発明の発明者等が鋭意検討の結果、羽ばたき装置における羽ばたき周波数を向上させれば、外乱の影響を低減でき、制御も容易になるという知見が得られた。上述した知見に基づき、羽ばたき周波数を向上させるには、例えば、付勢部材に用いられるトーションバネ等のバネ定数を上げることが考えられる。しかしながら、付勢部材(例えば、トーションバネ)のバネ定数を上げた場合は、復元力も強くなるため、負荷が大きくなり、羽根軸をストロークさせにくくなる懸念があった。その結果、浮上力が低下する懸念があった。
【0013】
また、例えば、羽ばたき装置をピッチ方向へ移動させるためには、第1付勢部材及び第2付勢部材の振幅中心を、第1回動軸線周り方向及び第2回動軸線周り方向の一方側又は他方側(以下、前後方向とも称する)にオフセットする必要がある。しかしながら、羽ばたき装置を前後方向にオフセットさせる場合は、付勢部材の復元力によりオフセットが困難になる問題があった。また、付勢部材のバネ定数を上げる場合は、より一層復元力が強くなるため、前記オフセットがより困難となる問題があった。そのため、羽ばたき周波数を向上させつつ、駆動部の制御の安定化を図ることが可能な羽ばたき装置が求められている。
【0014】
(2)そこで、上述した課題を解決すべく提供される本発明の羽ばたき装置は、一対の羽根と、一対の前記羽根のそれぞれに対応して設けられた一対の駆動部と、を有し、前記駆動部は、第1駆動源と、第2駆動源と、前記第1駆動源から出力された動力を受けて第1回動軸線周りに回動する第1従動部と、前記第2駆動源から出力される動力を受けて第2回動軸線周りに回動する第2従動部と、前記第1従動部の回動に伴って、前記第1従動部の回動方向とは逆方向への付勢力を前記第1従動部に対して付与する第1付勢部材と、前記第2従動部の回動に伴って、前記第2従動部の回動方向とは逆方向への付勢力を前記第2従動部に対して付与する第2付勢部材と、前記第1駆動源及び前記第2駆動源による駆動力の出力制御を行う制御部と、を備えたものであり、前記羽根は、所定の軸線方向に延びると共に、一端側において前記第1従動部に対して接続され、前記第1回動軸線に対して交差する第3回動軸線周り方向に回動可能に接続された第1羽根軸と、前記第1羽根軸に対して交差する方向に延びると共に、一端側において前記第2従動部に対して接続され、前記第2回動軸線に対して交差する第4回動軸線周り方向に回動可能に接続された第2羽根軸と、前記第1羽根軸及び前記第2羽根軸に亘って設けられた羽根本体と、を有するものであり、前記第1付勢部材は、一端側において前記第1従動部に対して接続され、他端側において前記第1羽根軸に対して直接的又は間接的に接続されており、前記第2付勢部材は、一端側において前記第2従動部に対して接続され、他端側において前記第2羽根軸に対して直接的又は間接的に接続されていること、を特徴とするものである。
【0015】
上述した羽ばたき装置は、第1付勢部材の一端側が第1従動部に接続され、他端側が第1羽根軸に直接的又は間接的に接続されている。また、上述した羽ばたき装置は、第2付勢部材の一端側が第2従動部に接続され、他端側が第2羽根軸に接続されている。すなわち、第1付勢部材及び第2付勢部材(両者を併せて付勢部材とも称する)は、一端側が、羽ばたき装置を構成する躯体に固定されるのではなく、第1従動部及び第2従動部に固定されている。言い換えると、付勢部材は、一端側が自由端をなしている。したがって、上述した羽ばたき装置は、付勢部材にトルク(付勢力)を加えた場合であっても、付勢部材の復元力による影響を受けずに第1羽根軸及び第2羽根軸を励振することができる。すなわち、上述した羽ばたき装置は、第1羽根軸及び第2羽根軸に対して直接的にトルクを付与できる。これにより、駆動源の出力制御の安定化が期待できる。なお、上述した付勢部材には、例えば、トーションバネ等の捩り方向にトルクを付勢できるものが好ましく利用できる。
【0016】
また、上述した羽ばたき装置は、付勢部材の一端側が自由端とされているので、付勢部材のバネ定数を上げても付勢部材の復元力による影響を受けにくいものとされている。したがって、上述した羽ばたき装置によれば、付勢部材のバネ定数を上げて、羽ばたき周波数を向上させることができるので、駆動源の出力制御の安定化が期待できる。また、付勢部材のバネ定数の向上に伴い、付勢部材の重量を大きくできるので、外乱による影響のより一層の低減が期待できる。
【0017】
また、上述した羽ばたき装置は、第1羽根軸が、第1駆動源により駆動され、第2羽根軸が、第2駆動源により駆動される。すなわち、羽根は、第1駆動源及び第2駆動源の双方により駆動され、第一駆動源の回転角により羽のストローク角が、第1駆動源と第2駆動源の回転角の差により羽の迎え角として規定される。これにより、上述した羽ばたき装置は、ストロークと迎え角を個別に制御する事が可能となり、姿勢を保ったまま水平方向に移動する等の、より機動力が高い飛行が可能になる。
【0018】
ここで、第1駆動源及び第2駆動源(単に、両者を併せて駆動源とも称する)には、各種のモータ等が利用できるが、正逆転が容易でありパワーウェイトレシオの高いブラシレスDCモータが好ましく利用できる。これにより、バッテリ駆動が容易になり、制御も容易に行うことができる。
【0019】
ここで、例えば、羽根が扇形状に形成されている場合は、第2羽根軸が、第1羽根軸における第3回動軸線に対して傾斜する第4回動軸線方向に配されるため、第2羽根軸は、第1羽根軸に対して交差する第4回動軸線周りに回動可能に支持する必要がある。そのため、第2羽根軸の支持部は、第4回動軸線に応じて傾斜させることが望ましい。
【0020】
(3)そこで、上述した本発明の羽ばたき装置は、一端側において前記第2回動軸線に対して交差する第5軸線周り方向に回動可能なように前記第2従動部に接続されたリンク部材を有しており、前記リンク部材は、他端側が前記第2羽根軸に向けて延びるように形成されると共に、前記第4回動軸線周り方向に回動可能に前記第2羽根軸が接続されていること、を特徴とするとよい。
【0021】
上述した羽ばたき装置は、かかる構成とすることにより、第1羽根軸に対して第2羽根軸が傾斜する場合(例えば、羽根が扇形状に形成されている場合)であっても、傾斜方向(第4回動軸線方向)に合わせて、第2羽根軸を確実に回動可能に支持できる。これにより、羽根の設計の自由度と空力特性の向上と、が期待できる。
【0022】
ここで、駆動源としてインランナ―モータを使用する場合は、モータのロータによるイナーシャが小さいため、羽の姿勢(迎え角)変化にともなう、第1羽根軸、及び第2羽根軸に加わる羽根のイナーシャ変化の影響が相対的に大きくなる。これに伴い共振周波数も大きく変化し、さらに共振係数(羽根振幅の増幅率)も大きく変化するため、羽根の制御に羽根振幅の変化を考慮する必要があり、制御が複雑となる問題があった。そこで、発明者等がさらに鋭意検討を進めた結果、インランナ―モータに比べて、ロータによるイナーシャが大きいアウトランナーモータを用いれば、羽根の姿勢変化に伴う第1羽根軸、第2羽根軸のイナーシャの変化量は、アウトランナーモータのロータの有する大きなイナーシャに比べれば相対的に小さいため、共振系の共振周波数変化、ないしは羽根振幅の変化も小さくなり、制御が容易になるという知見が得られた。
【0023】
(4)そこで、上述した本発明の羽ばたき装置は、前記第1駆動源及び前記第2駆動源が、DCモータにおけるアウトランナーモータで構成されていること、を特徴とするとよい。
【0024】
上述した羽ばたき装置は、インランナ―モータに比べて安価なアウトランナーモータを使用することにより、第1駆動源及び第2駆動源のコストを低減できる。したがって、上述した羽ばたき装置は、一対の第1駆動源及び一対の第2駆動源の4基をアウトランナーモータに置き換えることにより、より一層のコスト低減が期待できる。また、上述した羽ばたき装置は、アウトランナーモータを使用することにより、共振系の共振周波数変化、及び羽根振幅の変化を小さくできるため、より一層の制御の安定化が期待できる。
【0025】
ここで、発明者等が鋭意検討した結果、上述した羽ばたき装置においては、羽根の往復運動における折り返し(往動と復動との切り替え)の際に駆動部(例えば、モータ)における電気及び機械の変換効率が低下する傾向にあるという知見が得られた。また、上述した羽ばたき装置においては、第1付勢部材及び第2付勢部材の復元力により、羽根の往復運動における折り返し端において、自律的に往復運動の切り返しが行われる。そのため、羽根の往復運動における折り返し端において、モータを停止させ、羽ばたき中央付近の羽の角速度が大きい領域でのみで励振を行うようにすれば、モータの効率が向上するものと考えられる。
【0026】
(5)そこで、上述した羽ばたき装置において、前記制御部は、前記第1駆動源及び前記第2駆動源の正転又は逆転の切り替えにおいて前記第1駆動源及び前記第2駆動源の回転数がゼロとなる所定時間前に前記第1駆動源及び前記第2駆動源の駆動力の出力を停止させる制御を行うと共に、前記第1付勢部材及び前記第2付勢部材の復元力により、前記羽根における往動又は復動が切り替わった時点で、前記第1駆動源及び前記第2駆動源による駆動力の出力を再開させる制御を行うこと、を特徴とするとよい。
【0027】
上述した羽ばたき装置は、第1駆動源及び第2駆動源(以下、単に駆動源とも称する)の正転又は逆転の切り替えにおいて駆動源の回転数がゼロとなる所定時間前に前記駆動源の駆動を停止させる制御を行うものとされている。これにより、前記駆動源の効率が低下する部分での前記駆動源による駆動を停止できるので、前記駆動源の出力による無駄を低減でき、駆動バッテリの電費の向上が期待できる。このように、上述した羽ばたき装置は、効率的に羽根を往復運動させることができる。また、上述した羽ばたき装置は、第1付勢部材及び第2付勢部材の復元力により、一対の羽根における往動又は復動が切り替わった時点で、駆動源の駆動を再開させる制御を行うものとされている。これにより、上述した羽ばたき装置は、羽ばたき中央付近の羽根の角速度が大きい領域で羽根の励振を行うことができる。また、上述した羽ばたき装置は、駆動源の容量を大きくせずとも、羽ばたき運動を効率的に行うことができる。そのため、上述した羽ばたき装置の小型化が期待できる。
【0028】
(6)上述した本発明の羽ばたき装置において、前記制御部は、前記第1付勢部材の振幅中心を、前記第1回動軸線周りの一方側又は他方側に所定量でオフセットする第1オフセット制御と、前記第2付勢部材の振幅中心を、前記第2回動軸線周りの一方側又は他方側に所定量でオフセットする第2オフセット制御と、を実行可能であり、前記第1オフセット制御及び前記第2オフセット制御は、前記第1駆動源及び前記第2駆動源における駆動電圧波形に所定量のオフセットを付与することで実行されること、を特徴とするとよい。
【0029】
上述した羽ばたき装置は、第1駆動源及び第2駆動源における駆動電圧波形に所定量のオフセットを付与することで、容易に第1オフセット制御及び第2オフセット制御を実行することができる。そのため、上述した羽ばたき装置によれば、高精度な制御を行いつつ制御の安定化が期待できる。
【0030】
ここで、上述した第1オフセット制御及び第2オフセット制御においては、第1付勢部材及び第2付勢部材(両者を併せて付勢部材とも称する)における一端側が、自由端とされている場合、オフセット後の付勢部材の振幅中心が、付勢部材の励振に伴い、予定振幅中心(基準位置とも称する)からずれる懸念がある。
【0031】
(7)そこで、上述した本発明の羽ばたき装置は、前記一対の駆動部を支持する躯体を有しており、前記第1従動部の回動に伴って、前記第1従動部の回動方向とは逆方向への付勢力を前記第1従動部に対して付与する第3付勢部材と、前記第2従動部の回動に伴って、前記第2従動部の回動方向とは逆方向への付勢力を前記第2従動部に対して付与する第4付勢部材と、を有しており、前記第3付勢部材は、一端側において前記躯体に対して接続されると共に、他端側において、前記第1羽根軸に直接的又は間接的に接続されており、前記第4付勢部材は、一端側において前記躯体に対して接続されると共に、他端側において、前記第2羽根軸に直接的又は間接的に接続されており、前記第3付勢部材及び前記第4付勢部材は、前記第1付勢部材及び前記第2付勢部材における付勢力よりも小さい付勢力を発揮可能、かつ、前記第1付勢部材及び前記第2付勢部材における振幅中心を基準位置に戻すことが可能な付勢力を発揮可能に形成されていること、を特徴とするとよい。
【0032】
上述した羽ばたき装置は、かかる構成とすることにより、第1付勢部材及び第2付勢部材の一端側が、自由端とされていても、第1付勢部材及び第2付勢部材における振幅中心を、基準位置(予定振幅中心)に戻すことができる。そのため、上述した羽ばたき装置によれば、より一層の制御の高精度化と安定化が期待できる。
【0033】
(8)上述した本発明の羽ばたき装置において、前記制御部は、前記羽根が、進行方向に対して反対方向に所定の角度で傾斜するように前記第1駆動源及び前記第2駆動源における出力の位相に差を設ける制御を行うこと、を特徴とするとよい。
【0034】
上述した羽ばたき装置は、かかる構成とすることにより、効率良く浮上力を発生させることができる。
【0035】
ここで、第1駆動源や第2駆動源にアウトランナーモータを使用する場合は、外周部分の回転子が回転する関係上、回転子と各部が干渉する懸念がある。
【0036】
(9)そこで、上述した本発明の羽ばたき装置は、前記一対の駆動部を支持する躯体を有しており、前記躯体は、間隔を空けて配された一対の支持部を有しており、前記第1駆動源及び前記第2駆動源が、前記一対の支持部の外側に配されており、前記第1付勢部材、前記第2付勢部材、前記第1従動部、及び前記第2従動部が、前記一対の支持部の間に配されていること、を特徴とするとよい。
【0037】
上述した羽ばたき装置は、かかる構成とすることにより、第1駆動源及び第2駆動源(両者を併せて駆動源とも称する)と、第1付勢部材、第2付勢部材、第1従動部、及び第2従動部とが、干渉しない。そのため、上述した羽ばたき装置は、例えば、駆動源にアウトランナーモータを使用する場合において、アウトランナーモータの回転子が、第1付勢部材、第2付勢部材、第1従動部、及び第2従動部に干渉することを抑制できる。このように、上述した羽ばたき装置は、アウトランナーモータのように回転子が露出する場合であっても、装置が大型化することを抑制できる。
【発明の効果】
【0038】
本発明によれば、小型で高機動力が得られる羽ばたき装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【
図1】本発明の第一実施形態に係る羽ばたき装置の全体斜視図である。
【
図2】本発明の第一実施形態に係る羽ばたき装置の平面図である。
【
図3】本発明の第一実施形態に係る羽ばたき装置を斜め後方側から見た斜視図である。
【
図4】本発明の第一実施形態に係る羽ばたき装置を後方側から見た斜視図である。
【
図5】本発明の第一実施形態に係る羽ばたき装置の一部切欠き概略構成図である。
【
図6】本発明の第一実施形態に係る羽ばたき装置を構成する羽根の駆動の説明図である。
【
図7】本発明の第一実施形態に係る羽ばたき装置で利用されるモータの出力特性、及びモータの出力領域の説明図である。
【
図8】(a)は、振幅中心をオフセットさせる場合の説明図であり、(b)は、本発明の第一実施形態に係る羽ばたき装置におけるオフセット制御の説明図である。
【
図9】本発明の第二実施形態に係る羽ばたき装置の一部切欠き概略構成図である。
【
図10】本発明の第二実施形態に係る羽ばたき装置におけるオフセット制御の説明図である。
【
図11】本発明の第三実施形態に係る羽ばたき装置の一部切欠き概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、添付図面を参照して、本発明の第一実施形態に係る羽ばたき装置1の詳細を説明する。なお、これらの図は模式図であって、必ずしも大きさを正確な比率で記したものではない。また、図中、同様の構成部品は、同様の符号を付していることに留意されたい。また、
図2に示すように、図示上下方向をZ方向、左右方向をX方向、図示奥行き方向をY方向とし、Z軸周り方向への回動をヨー方向、X軸周り方向への回動をピッチ方向、Y軸周り方向への回動をロール方向と称することがある。
【0041】
≪第一実施形態≫
図1~
図5に示すように、羽ばたき装置1は、一対の羽根2,2と、一対の羽根2,2のそれぞれに対して設けられた一対の駆動部3,3(合計4基の駆動部3,3,3,3)と、を有している。駆動部3,3,3,3は、それぞれ躯体7に支持されている。本実施形態における羽ばたき装置1は、一対の羽根2,2を水平方向(図示、紙面の前後方向)に往復駆動することにより、上方側への浮上力を得るものとされている。なお、一対の羽根2,2、及び4基の駆動部3,3,3,3は、左右対称に配されているので、以下の説明では、特に区別する必要がない場合は、左右一方側(右側)について説明し、他方側(左側)の説明は省略する。また、
図1~
図5において、図示上方側を上方側(U側)、図示下方側を下方側(U側)として説明する場合があることに留意されたい。
【0042】
躯体7は、上下方向に間隔を空けて配された一対の支持部70U,70Dと、支持部70U,70Dの間に配された中間支持部70Mと、を備えている。本実施形態では、支持部70U,70D及び中間支持部70Mが、それぞれ板状部材で形成されている。
【0043】
駆動部3,3は、第1駆動源30Uと、第2駆動源30Dと、第1従動部10Uと、第2従動部10Dと、を備えている。また、駆動部3,3は、第1付勢部材40Uと、第2付勢部材40Dと、制御部60等を備えている。本実施形態では、第1駆動源30U及び第2駆動源30Dが、DCモータにおけるアウトランナーモータで構成されている。なお、第1駆動源30U及び第2駆動源30Dを駆動するための電源(バッテリ)は、図示及び説明を省略する。
【0044】
第1駆動源30Uは、上部側に位置する支持部70Uの外側面に、台座31を介して支持されている。また、第2駆動源30Dは、下部側に位置する支持部70Dの外側面に、台座31を介して支持されている。本実施形態では、第2駆動源30Dが、中間支持部70Mを介して、第1駆動源30Uに対して上下対称となるように配されている。
【0045】
図5に示すように、第1駆動源30Uの駆動軸32Uは、適宜の軸受(図示せず)を介して支持部70Uに対して回動可能に支持されている。また、駆動軸32Uの先端側は、適宜の軸受(図示せず)を介して中間支持部70Mに対して回動可能に支持されている。また、駆動軸32Uの中間部には、ピニオンギヤとしての第1駆動ギヤ15Uが外嵌されている。
【0046】
第2駆動源30Dの駆動軸32Dは、適宜の軸受(図示せず)を介して支持部70Dに対して回動可能に支持されている。また、駆動軸32Dの先端側は、適宜の軸受(図示せず)を介して中間支持部70Mに対して回動可能に支持されている。また、駆動軸32Dの中間部には、ピニオンギヤとしての第2駆動ギヤ15Dが外嵌されている。
【0047】
図1~
図5に示すように、第1従動部10Uは、一部が切り欠かれたスパーギヤ(平歯車)で形成されている。第1従動部10Uの切り欠かれた部分は、羽根2等との干渉を抑制するために形成されている。第1従動部10Uは、支持部70U及び中間支持部70Mに対して第1回動軸11Uの軸線周り方向に回動可能に支持されている。具体的には、本実施形態では、第1回動軸11Uが、支持部70U及び中間支持部70Mに対して回動可能に支持されており、第1従動部10Uが第1回動軸11Uに圧入等で固定されている。また、本実施形態では、第1従動部10Uが、中間支持部70M側寄りに配されている。第1従動部10Uは、第1駆動ギヤ15Uと噛合っており、第1駆動源30Uから出力された動力を受けて第1回動軸11U(
図5参照)の軸線周り方向(第1回動軸線周り方向とも称する)に回動可能である。
【0048】
また、第1従動部10Uには、後述する第1羽根軸20を保持するための第1羽根軸保持部50Uが支持されている。第1羽根軸保持部50Uは、第1従動部10Uと一体的に第1回動軸線周り方向に回動するものとされている。
【0049】
また、第1羽根軸保持部50Uには、第1従動部10Uの径方向外側を向くようにベアリング51が支持されている。言い換えると、ベアリング51は、第1回動軸11Uと交差する方向(本実施形態では直交する方向、以下、第3軸線周り方向とも称する)に向けて、第1従動部10Uに支持されている。ベアリング51には、後述する第1羽根軸20が第3軸線周り方向に回動可能なように支持されている。
【0050】
第2従動部10Dは、一部が切り欠かれたスパーギヤ(平歯車)で形成されている。第2従動部10Dの切り欠かれた部分は、羽根2等との干渉を抑制するために形成されている。第2従動部10Dは、支持部70D及び中間支持部70Mに対して第2回動軸11Dの軸線周り方向に回動可能に支持されている。具体的には、本実施形態では、第2回動軸11Dが、支持部70D及び中間支持部70Mに対して回動可能に支持されており、第2従動部10Dが第2回動軸11Dに圧入等で固定されている。また、本実施形態では、第2従動部10Dが、中間支持部70M側寄りに配されている。第2従動部10Dは、第2駆動ギヤ15Dと噛合っており、第2駆動源30Dから出力された動力を受けて第2回動軸11Dの軸線周り方向(第2回動軸線周り方向とも称する)に回動可能である。すなわち、第2従動部10Dは、中間支持部70Mを介して、第1従動部10Uと略上下対称となるように配されている。
【0051】
また、第2従動部10Dには、後述する第2羽根軸21を保持するための第2羽根軸保持部50Dが支持されている。第2羽根軸保持部50Dは、第2従動部10Dと一体的に第2回動軸線周り方向に回動するものとされている。
【0052】
図3及び
図4に示すように、第2羽根軸保持部50Dには、第2従動部10Dの外側を向くようにベアリング52(
図4参照)が支持されている。言い換えると、ベアリング52は、第2回動軸11Dと交差する方向(本実施形態では第2回動軸11Dの径方向、以下、第5軸線周り方向とも称する)に向けて支持されている。ベアリング52には、リンク部材53が第5軸線周り方向に回動可能なように支持されている。
【0053】
リンク部材53は、他端側が後述する第2羽根軸21に向けて延びるように形成されている。リンク部材53の他端側には、ベアリング54が第4軸線方向に向けて支持されている。ベアリング54には、後述する第2羽根軸21が第4軸線周り方向に回動可能なように支持されている。
【0054】
図1~
図5に示すように、第1付勢部材40Uは、トーションバネで形成され、支持部70Uと第1従動部10Uとの間に配されている。また、第1付勢部材40Uは、第1回動軸11Uの軸線周りに配されている。第1付勢部材40Uは、第1従動部10Uの回動に伴って、第1従動部10Uの回動方向とは逆方向への付勢力を第1従動部10Uに対して付与するものとされている。具体的には、第1付勢部材40Uは、一端側(前端側)が、支持部70Uに接続されており、他端側(後方側)が、第1従動部10Uに接続されている。したがって、第1付勢部材40Uは、第1従動部10Uの回動に伴って、第1従動部10Uの回動方向とは逆方向に付勢力を付与することができる。
【0055】
第2付勢部材40Dは、第1付勢部材40Uと同様にトーションバネで形成され、支持部70Dと第2従動部10Dとの間に配されている。また、第2付勢部材40Dは、第2回動軸11Dの軸線周りに配されている。第2付勢部材40Dは、第2従動部10Dの回動に伴って、第2従動部10Dの回動方向とは逆方向への付勢力を第2従動部10Dに対して付与するものとされている。具体的には、第2付勢部材40Dは、一端側(後端側)が、支持部70Dに接続されており、他端側(前端側)が、第2従動部10Dに接続されている。したがって、第2付勢部材40Dは、第2従動部10Dの回動に伴って、第1従動部10Uの回動方向とは逆方向に付勢力を付与することができる。
【0056】
羽根2は、第1羽根軸20と、第2羽根軸21と、羽根本体22等を有している。
【0057】
第1羽根軸20は、所定の軸線方向(本実施形態では、第1回動軸11Uの径方向)に延びるように形成されている。第1羽根軸20は、一端側において第1従動部10Uに対して接続され、第1回動軸11Uの軸線に対して交差する第3回動軸線周り方向に回動可能に接続されている。具体的には、第1羽根軸20は、一端側において、第1羽根軸保持部50Uのベアリング51に回動可能に支持されている。また、第1羽根軸20は、第1従動部10Uの回動に伴って、回動方向とは逆方向に第1付勢部材40Uによる付勢力が付与される。これにより、第1羽根軸20が第1従動部10Uの回動方向(第1回動軸線周り方向)に励振される。
【0058】
第2羽根軸21は、所定の軸線方向(本実施形態では、第1羽根軸20に対して所定の傾斜角で傾斜する方向)に延びるように形成されている。第2羽根軸21は、一端側において第2従動部10Dに対して接続され、第2回動軸11Dの軸線に対して交差する第4回動軸線周り方向に回動可能に接続されている。具体的には、第2羽根軸21は、一端側において、リンク部材53のベアリング54に回動可能に支持されている。言い換えれば、第2羽根軸21は、第2羽根軸保持部50Dにおけるリンク部材53を介して、第2従動部10Dに対して第4回動軸線周り方向に回動可能に接続されている。
【0059】
これにより、上述した羽ばたき装置1は、第1羽根軸20に対して第2羽根軸21が傾斜する場合(例えば、羽根2が扇形状に形成されている場合)であっても、傾斜方向(第4回動軸線方向)に合わせて、第2羽根軸21を確実に回動可能に支持できる。これにより、羽根2の設計の自由度と空力特性の向上と、が期待できる。
【0060】
また、第2羽根軸21は、第2従動部10Dの回動に伴って、回動方向とは逆方向に第2付勢部材40Dによる付勢力が付与される。これにより、第2羽根軸21が第2従動部10Dの回動方向(第2回動軸線周り方向)に励振される。
【0061】
羽根本体22は、第1羽根軸20及び第2羽根軸21に亘って設けられている。羽根本体22は、本実施形態では、略扇形状に形成されている。羽根本体22は、第1駆動源30U及び第2駆動源30Dの駆動により、往復揺動し、浮上力を発生させることができる。
【0062】
制御部60は、第1駆動源30U及び第2駆動源30Dによる駆動力の出力制御を行うものとされている。すなわち、第1駆動源30U及び第2駆動源30Dによる駆動力の出力制御を行うことで、羽根2に往復運動が付与される。
【0063】
図6は、制御部60において、第1駆動源30Uの出力の位相と、第2駆動源30Dの出力の位相とに所定量の差を設ける制御を行った場合の羽根2の動きを表した説明図である。
図6における例示は、例えば、第1駆動源30Uの出力の位相を、第2駆動源30Dの出力の位相に対して3%進めるようにシフトさせたものである。このように、第1駆動源30U及び第2駆動源30D(両者を併せて駆動源30,30とも称する)の位相に差を設けることにより、羽根2が、進行方向に対して反対方向に所定の角度(例えば、30度)で傾斜する。具体的には、図示のように、羽根2を例えば、前方側にストロークさせた場合、羽根2が後方側に所定の角度で傾斜する。また、羽根2を例えば、後方側にストロークさせた場合、羽根2が前方側に所定の角度で傾斜する。すなわち、第1羽根軸20及び第2羽根軸21の振幅における位相に差を設けることにより、羽根2が、進行方向に対して反対方向に所定の角度で傾斜する。これにより、上述した羽ばたき装置1は、効率良く浮上力を発生させることができる。なお、羽根2の傾斜角度は、飛行態様に応じて適宜変更すればよい。
【0064】
ここで、制御部60は、例えば、一対の羽根2,2の振幅を同じだけ増減するように駆動源30の出力を制御することで、浮上力を増減させることができる。また、制御部60は、例えば、一対の羽根2,2の振幅に差を設けるように駆動源30,30の出力を制御することで、左右の浮上力の差により、ロール方向のトルク(駆動力)を発生させることができる。
【0065】
また、制御部60は、第1付勢部材40Uの振幅中心を、第1回動軸線周りの一方側又は他方側に所定量でオフセットする第1オフセット制御と、第2付勢部材40Dの振幅中心を、第2回動軸線周りの一方側又は他方側に所定量でオフセットする第2オフセット制御と、を実行可能なものとされている。
【0066】
図8(a)は、付勢部材40の振幅中心をオフセットさせる場合の説明図である。なお、
図8(a)において、付勢部材40の振幅中心をオフセットさせた角度は、理解を容易にするため誇張して描いていることに留意されたい。前記第1オフセット制御及び前記第2オフセット制御は、第1付勢部材40U及び第2付勢部材40Dのいずれか一方又は双方の振幅中心を前後方向(本実施形態では前方側の実線位置)にオフセットさせるものとされている。すなわち、前記第1オフセット制御及び前記第2オフセット制御は、前後方向(本実施形態では前方側)に浮上力の中心を偏らせるものとされている。
【0067】
具体的には、
図8(b)に示すように、前記第1オフセット制御及び前記第2オフセット制御は、第1駆動源30U及び第2駆動源30Dのいずれか一方又は双方における駆動電圧波形(出力波形とも称する)に所定量Tのオフセットを付与することにより、実行することができる。駆動電圧波形へのオフセットの付与は、例えば、前進方向への駆動電圧の出力と、後退方向への駆動電圧の出力と、に差を設けることで、実行することができる。すなわち、付勢部材40の振幅中心が、オフセットされる(
図8(a)参照)。これにより、制御部60は、ピッチ方向のトルクを発生させることができる。ここで、付勢部材40の振幅中心をオフセットさせる角度は、例えば、5~10度とするとよい。なお、第一実施形態における羽ばたき装置1では、上述したオフセットをさせる場合、付勢部材40,40に抗して、駆動源30,30の出力を上げる必要がある。また、羽ばたき装置1の飛行態様に応じて、第1駆動源30U及び第2駆動源30Dのそれぞれのオフセット量は、同一のもの、あるいは、互いに異なるものとしてもよい。
【0068】
また、制御部60は、例えば、往復運動における前後方向の速度に差を設けるように駆動源30,30の出力の制御を行うと共に、左右の羽根2,2の速度差を逆向きとするように駆動源30,30の出力の制御を行うことにより、ヨー方向へのトルクを発生させることができる。
【0069】
図7は、駆動源30における出力特性、及び本発明の羽ばたき装置1で利用されるの出力領域の説明図である。図示のように、駆動源30にモータ(本実施形態では、アウトランナーモータ)を使用する場合は、羽根2の往復運動における折り返し(往動と復動との切り替え)の際に駆動源30における電気及び機械の変換効率が低下する傾向にある。また、上述した羽ばたき装置1においては、第1付勢部材40U及び第2付勢部材40Dの復元力により、羽根2の往復運動における折り返し端において、自律的に往復運動の切り返しが行われる。
【0070】
そこで、本実施形態において、制御部60は、第1駆動源30U及び第2駆動源30Dの正転又は逆転の切り替えにおいて第1駆動源30U及び第2駆動源30Dの回転数がゼロとなる所定時間前に第1駆動源30U及び第2駆動源30Dの駆動力の出力を停止させる制御を行っている。ここで、前記所定時間は、使用する第1駆動源30U及び第2駆動源30Dの特性(例えば、出力の効率)に応じて、任意に設定することができる。また、制御部60は、上記と共に、第1付勢部材40U及び第2付勢部材40Dの復元力により、羽根2における往動又は復動が切り替わった時点で、第1駆動源30U及び第2駆動源30Dによる駆動力の出力を再開させる制御を行うものとされている。
【0071】
これらにより、駆動源30の効率が低下する部分での駆動源30による駆動を停止できるので、駆動源30の出力による無駄を低減でき、駆動バッテリの電費の向上が期待できる。このように、上述した羽ばたき装置1は、効率的に羽根2を往復運動させることができる。また、上述した羽ばたき装置1は、第1付勢部材40U及び第2付勢部材40Dの復元力により、一対の羽根2,2における往動又は復動が切り替わった時点で、駆動源30の駆動を再開させる制御を行うものとされている。これにより、上述した羽ばたき装置1は、羽ばたき中央付近の羽根2の角速度が大きい領域で羽根2の励振を行うことができる。また、上述した羽ばたき装置1は、駆動源30の容量を大きくせずとも、羽ばたき運動を効率的に行うことができる。そのため、上述した羽ばたき装置1の小型化が期待できる。
【0072】
以上が、本発明の第一実施形態に係る羽ばたき装置1の構成である。なお、上述において、左右対称に配されている部分の構成は、同様であるので説明を省略する。次に、本発明の一実施形態に係る羽ばたき装置1の作用効果について、以下に説明する。
【0073】
上述した羽ばたき装置1は、第1羽根軸20が、第1駆動源30Uにより駆動され、第2羽根軸21が、第2駆動源30Dにより駆動される。すなわち、羽根2は、第1駆動源30U及び第2駆動源30Dの双方により駆動され、第1駆動源30Uの回転角により羽根2のストローク角が、第1駆動源30Uと第2駆動源30Dの回転角の差により羽根2の迎え角として規定される。これにより、上述した羽ばたき装置1は、ストロークと迎え角を個別に制御する事が可能となり、姿勢を保ったまま水平方向に移動する等の、より機動力が高い飛行が可能になる。
【0074】
また、上述した羽ばたき装置1は、第1付勢部材40U及び第2付勢部材40D(両者を併せて付勢部材40とも称する)による付勢により、第1羽根軸20及び第2羽根軸21を、第1回動軸線周り方向及び第2回動軸線周り方向に励振することができる。したがって、上述した羽ばたき装置1は、一対の羽根2,2の羽ばたき周波数を励振により増幅できるので、一対の羽根2,2を高速で駆動できる。
【0075】
また、本実施形態において、上述した羽ばたき装置1は、第1駆動源30U及び第2駆動源30Dが、DCモータにおけるアウトランナーモータで構成されている。そのため、上述した羽ばたき装置1は、モータを構成するロータによるイナーシャを大きくできる。これにより、上述した羽ばたき装置1は、共振系の共振周波数変化、及び羽根振幅の変化を小さくできるので、制御が安定する。したがって、上述した羽ばたき装置1は羽ばたき装置1が受ける外乱(例えば、気流)による影響を軽減でき、より一層の制御の安定化が期待できる。
【0076】
また、上述した羽ばたき装置1は、インランナ―モータに比べて安価なアウトランナーモータを使用することにより、第1駆動源30U及び第2駆動源30Dのコストを低減できる。したがって、上述した羽ばたき装置1は、左右一対の第1駆動源30U,30U及び左右一対の第2駆動源30D,30Dの4基をアウトランナーモータに置き換えることにより、より一層のコスト低減が期待できる。
【0077】
また、上述した羽ばたき装置1は、一対の駆動部3,3を支持する躯体7を有しており、躯体7は、間隔を空けて配された一対の支持部70U,70Dを有している。また、第1駆動源30U及び第2駆動源30Dが、一対の支持部70U,70Dの外側に配されており、第1付勢部材40U、第2付勢部材40D、第1従動部10U、及び第2従動部10Dが、一対の支持部70U,70Dの間に配されている。
【0078】
これにより、上述した羽ばたき装置1は、駆動源30と、第1付勢部材40U、第2付勢部材40D、第1従動部10U、及び第2従動部10Dとが干渉しない。そのため、上述した羽ばたき装置1は、例えば、駆動源30にアウトランナーモータを使用する場合において、アウトランナーモータのロータが、第1付勢部材40U、第2付勢部材40D、第1従動部10U、及び第2従動部10Dに干渉することを抑制できる。このように、上述した羽ばたき装置1は、アウトランナーモータのようにロータが露出する場合であっても、装置が大型化することを抑制できる。
【0079】
以上が、本発明の第一実施形態に係る羽ばたき装置1の構成及び作用効果であり、次に、本発明の第二実施形態に係る羽ばたき装置100についての詳細を説明する。なお、第二実施形態に係る羽ばたき装置100は、上述した羽ばたき装置1と第1付勢部材40U及び第2付勢部材40Dの接続の仕方と、各部品の配置が一部異なる以外の構成は同様であるので、同様部分の説明は省略する。また、上述した羽ばたき装置1と同一の部材については、同一の符号を用いていることに留意されたい。また、羽ばたき装置100は、左右対称に構成されているので、一方側について説明し、他方側の説明を省略する。
【0080】
ところで、上述した第一実施形態に係る羽ばたき装置1では、付勢部材40,40の一端側が支持部70U,70Dに接続され、他方側が、第1従動部10U又は第2従動部10Dに接続されている。ここで、外乱の影響を低減するために羽ばたき装置1における羽ばたき周波数を向上させるには、例えば、付勢部材40,40に用いられるトーションバネ等のバネ定数を上げることが考えられる。しかしながら、付勢部材40,40のバネ定数を上げた場合は、復元力も強くなるため、負荷が大きくなり、第1羽根軸20及び第2羽根軸21をストロークさせにくくなる懸念があった。その結果、浮上力が低下する懸念があった。そこで、第二実施形態では、第一実施形態に係る懸念を抑制することで、更なる浮上力の向上と、制御の安定化が可能な羽ばたき装置100を提供することを目的としている。
【0081】
≪第二実施形態≫
図9に示すように、第二実施形態に係る羽ばたき装置100は、一対の羽根2,2と、一対の羽根2,2のそれぞれに対応して設けられた一対の駆動部3,3と、を備えている。また、駆動部3は、第1駆動源30Uと、第2駆動源30Dと、第1従動部10Uと、第2従動部10Dと、を備えている。また、駆動部3は、前記の他、第1付勢部材40Uと、第2付勢部材40Dと、第1駆動源30U及び第2駆動源30Dによる駆動力の出力制御を行う制御部60等を備えている。
【0082】
羽ばたき装置100における第1付勢部材40Uは、一端側において第1従動部10Uに対して接続され、他端側において第1羽根軸20に対して直接的又は間接的に接続されている。具体的に説明すると、第1付勢部材40Uは、一端側において第1従動部10Uに対して接続され、他端側において第1羽根軸保持部50Uに対して接続されている。
【0083】
また、第2付勢部材40Dは、一端側において第2従動部10Dに対して接続され、他端側において第2羽根軸21に対して直接的又は間接的に接続されている。具体的に説明すると、第2付勢部材40Dは、一端側において第2従動部10Dに対して接続され、他端側において第2羽根軸保持部50Dに対して接続されている。すなわち、第1付勢部材40U及び第2付勢部材40D(両者を併せて付勢部材40,40とも称する)は、一端側が、羽ばたき装置100を構成する躯体7に固定されるのではなく、第1従動部10U及び第2従動部10Dに固定されている。言い換えると、付勢部材40,40は、一端側が自由端をなしている。また、第二実施形態では、第1従動部10Uが、第1回動軸11Uに対して回動可能に支持されており、第2従動部10Dが、第2回動軸11Dに対して回動可能に支持されている。
【0084】
以上が、本発明の第二実施形態に係る羽ばたき装置100の構成であるが、羽ばたき装置100は、第一実施形態と同様に付勢部材40,40の振幅中心をオフセットさせることができる。すなわち、第二実施形態に係る羽ばたき装置100は、上述した第1オフセット制御及び第2オフセット制御を実行できる。
【0085】
図10に示すように、前記第1オフセット制御及び前記第2オフセット制御は、第1駆動源30U及び第2駆動源30Dのいずれか一方又は双方における駆動電圧波形(出力波形)に所定量Tのオフセットを付与することで実行することができる。なお、羽ばたき装置100の飛行態様に応じて、第1駆動源30U及び第2駆動源30Dのそれぞれのオフセット量は、同一のもの、あるいは、互いに異なるものとしてもよい。
【0086】
このように、上述した羽ばたき装置100は、第1駆動源30U及び第2駆動源30Dにおける駆動電圧波形に所定量Tのオフセットを付与することで、容易に第1オフセット制御及び第2オフセット制御を実行することができる。そのため、上述した羽ばたき装置100によれば、高精度な制御を行いつつ制御の安定化が期待できる。また、第二実施形態に係る羽ばたき装置100は、付勢部材40,40における一端側が自由端をなしているので、
図10に示すように、駆動源30,30の駆動電圧波形にオフセットを容易に付与することができる。すなわち、付勢部材40,40の復元力に依存することなく、容易に駆動電圧波形にオフセットを付与することができる(相対的にオフセットさせることができる)。
【0087】
以上が、本発明の第二実施形態に係る羽ばたき装置100の構成であり、次に、羽ばたき装置100の作用効果についての詳細を説明する。
【0088】
上述したように羽ばたき装置100は、付勢部材40,40にトルク(付勢力)を加えた場合であっても、付勢部材40,40の復元力による影響を受けずに第1羽根軸20及び第2羽根軸21を励振することができる。すなわち、上述した羽ばたき装置100は、第1羽根軸20及び第2羽根軸21に対して直接的にトルクを付与できる。これにより、駆動源30,30の出力制御の安定化が期待できる。なお、上述した付勢部材40,40には、例えば、トーションバネ等の捩り方向にトルクを付勢できるものが好ましく利用できる。
【0089】
また、上述した羽ばたき装置100は、付勢部材40,40の一端側が自由端とされているので、付勢部材40,40のバネ定数を上げても付勢部材40,40の復元力による影響を受けにくいものとされている。したがって、上述した羽ばたき装置100によれば、付勢部材40,40のバネ定数を上げて、羽ばたき周波数を向上させることができるので、駆動源30,30の出力制御の安定化が期待できる。また、付勢部材40,40のバネ定数の向上に伴い、付勢部材40,40の重量を大きくできるので、外乱による影響のより一層の低減が期待できる。
【0090】
また、上述した羽ばたき装置100は、第1羽根軸20が、第1駆動源30Uにより駆動され、第2羽根軸21が、第2駆動源30Dにより駆動され、第1駆動源30Uの回転角により羽根2のストローク角が、第1駆動源30Uと第2駆動源30Dの回転角の差により羽根2の迎え角として規定される。これにより、上述した羽ばたき装置100は、ストロークと迎え角を個別に制御する事が可能となり、姿勢を保ったまま水平方向に移動する等の、より機動力が高い飛行が可能になる。
【0091】
また、上述した羽ばたき装置100は、第1駆動源30U及び第2駆動源30Dをそれぞれ独立して駆動制御することができるので、様々な方向への飛行が可能となる。ここで、第1駆動源30U及び第2駆動源30D(単に、両者を併せて駆動源30,30とも称する)には、各種のモータ等が利用できるが、正逆転が容易でありパワーウェイトレシオの高いブラシレスDCモータが好ましく利用できる。これにより、バッテリ駆動が容易になり、制御も容易に行うことができる。
【0092】
ここで、上述した第1オフセット制御及び第2オフセット制御においては、付勢部材40,40における一端側が、自由端とされている。そのため、オフセット後の付勢部材40,40の振幅中心が、付勢部材40,40の励振に伴い、予定振幅中心(基準位置とも称する)からずれる懸念がある。そこで、第三実施形態に係る羽ばたき装置200は、
図11に示すように、さらに第3付勢部材41U及び第4付勢部材41Dを設け、オフセット後の付勢部材40,40の振幅中心を、基準位置に戻すようにしている。以下、第三実施形態に係る羽ばたき装置200についての詳細を説明する。なお、第三実施形態に係る羽ばたき装置200は、第二実施形態に係る羽ばたき装置100に対して、第3付勢部材41U及び第4付勢部材41Dを設けたものであるので、第二実施形態に係る羽ばたき装置100と同様の部分についての説明は省略する。また、第三実施形態に係る羽ばたき装置200は、左右対称に構成されているため、一方側の説明を行い、他方側の説明は省略する。
【0093】
≪第三実施形態≫
図11に示すように、第三実施形態に係る羽ばたき装置200は、第二実施形態に係る羽ばたき装置100(
図9参照)の構成に加えて、第3付勢部材41U及び第4付勢部材41Dを有している。
【0094】
第3付勢部材41Uは、例えば、トーションバネが用いられている。第3付勢部材41Uは、第1従動部10Uの回動に伴って、第1従動部10Uの回動方向とは逆方向への付勢力を第1従動部10Uに対して付与するものとされている。具体的には、第3付勢部材41Uは、一端側において躯体7(本実施形態では、中間支持部70M)に対して接続されると共に、他端側において、第1従動部10Uに接続されている。
【0095】
また、第3付勢部材41Uは、第1付勢部材40Uにおける付勢力よりも小さい付勢力を発揮可能、かつ、第1付勢部材40Uにおける振幅中心を基準位置に戻すことが可能な付勢力を発揮可能なものとされている。例えば、第3付勢部材41Uには、第1付勢部材40Uよりもバネ係数が小さいトーションバネが用いられている。そのため、第3付勢部材41Uが第1付勢部材40Uに及ぼす影響は限定的なものとされている。
【0096】
ここで、第3付勢部材41Uにおけるバネ係数は、第1付勢部材40Uにおける振幅中心を基準位置に戻すことが可能な付勢力を発揮可能な各種のものを利用できる。また、第3付勢部材41Uにおけるバネ係数は、第1付勢部材40Uに及ぼす影響と、振幅中心を基準位置に戻すための付勢力とのバランスを考慮し、決定するとよい。
【0097】
第4付勢部材41Dは、例えば、トーションバネが用いられている。第4付勢部材41Dは、第2従動部10Dの回動に伴って、第2従動部10Dの回動方向とは逆方向への付勢力を第2従動部10Dに対して付与するものとされている。具体的には、第4付勢部材41Dは、一端側において躯体7(本実施形態では、中間支持部70M)に対して接続されると共に、他端側において、第2従動部10Dに接続されている。
【0098】
また、第4付勢部材41Dは、第2付勢部材40Dにおける付勢力よりも小さい付勢力を発揮可能、かつ、第2付勢部材40Dにおける振幅中心を基準位置に戻すことが可能な付勢力を発揮可能なものとされている。例えば、第4付勢部材41Dには、第2付勢部材40Dよりもバネ係数が小さいトーションバネが用いられている。そのため、第4付勢部材41Dが第2付勢部材40Dに及ぼす影響は限定的なものとされている。
【0099】
ここで、第4付勢部材41Dにおけるバネ係数は、第2付勢部材40Dにおける振幅中心を基準位置に戻すことが可能な付勢力を発揮可能な各種のものを利用できる。また、第4付勢部材41Dにおけるバネ係数は、第2付勢部材40Dに及ぼす影響と、振幅中心を基準位置に戻すための付勢力とのバランスを考慮し、決定するとよい。
【0100】
このように、第三実施形態に係る羽ばたき装置200は、第1付勢部材40U及び第2付勢部材40Dの一端側が、自由端とされていても、第1付勢部材40U及び第2付勢部材40Dにおける振幅中心を、基準位置(予定振幅中心)に戻すことができる。そのため、上述した羽ばたき装置200によれば、より一層の制御の高精度化と安定化が期待できる。
【0101】
以上が、本発明の第一実施形態~第三実施形態に係る羽ばたき装置1,100,200の構成及び作用効果であるが、本発明の羽ばたき装置1,100,200は、上記実施形態には限定されず、各種の変形を行うことができる。
【0102】
例えば、一対の羽根2,2は、各種の形状や大きさに形成することができる。また、本実施形態では、一対の羽根2,2が設けられているが、羽根2は、例えば、二対のものなど、設ける数量を適宜、変更することが可能である。また、第1羽根軸20、第2羽根軸21、及び羽根本体22は、各種の形状や大きさに形成することができ、形成方向も適宜変更することが可能である。
【0103】
また、本実施形態では、駆動源30,30にDCモータにおけるアウトランナーモータを利用する場合を例示したが、駆動源30,30には、駆動力を発揮可能な各種のモータ等が利用できる。例えば、駆動源30,30が、DCモータにおけるインランナ―モータで構成されていてもよい。また、本実施形態では、第1駆動源30Uと、第2駆動源30Dとが、同一のアウトランナーモータで構成されているが、それぞれ異なる種類の駆動源を用いることも可能である。
【0104】
また、本実施形態では、第1従動部10U及び第2従動部10Dにスパーギヤ(平歯車)を用い、これらをピニオンギヤである第1駆動ギヤ15U及び第2駆動ギヤ15Dで駆動するようにしているが、本発明は、これには限定されない。第1従動部10U及び第2従動部10Dには、各種の形態のものが利用できる。例えば、第1従動部10U及び第2従動部10Dが、プーリ等で形成され、ベルト等で駆動されるようにしてもよい。また、第1従動部10U及び第2従動部10Dの態様に合わせて、第1駆動ギヤ15U及び第2駆動ギヤ15Dもギヤだけではなく、各種の態様のものが利用できる。
【0105】
また、本実施形態では、第1付勢部材40U、第2付勢部材40D、第3付勢部材41U、及び第4付勢部材41Dとしてトーションバネが用いられているが、これには限定されない。第1付勢部材40U、第2付勢部材40D、第3付勢部材41U、及び第4付勢部材41Dは、トーションバネに限定されるものではなく、各種のものが利用できる。また、本実施形態では、第1付勢部材40U、第2付勢部材40D、第3付勢部材41U、及び第4付勢部材41Dとして同種のトーションバネが用いられているが、それぞれ異種の付勢部材を用いることも可能である。また、第1付勢部材40U、第2付勢部材40D、第3付勢部材41U、及び第4付勢部材41Dの配置は、本発明の範囲内で、各種の変更を行うことができる。 また、本実施形態では、単一の制御部60によって統合的に制御を行うようにしているが、制御部60は、機能毎に制御を分けるなど、複数で構成されていてもよい。
【0106】
また、本実施形態では、第2羽根軸21が、リンク部材53に対して第4回動軸周り方向に回動可能に接続されているが、第2羽根軸21は、リンク部材53を介して接続されるものだけではなく、第2従動部10Dに直接的又は間接的に接続されていてもよい。また、リンク部材53は、第2羽根軸21の形成方向に応じて、各種の形状や大きさに形成できる。また、リンク部材53は、必要に応じて複数設けられていてもよい。また、第4回動軸線方向及び第5軸線方向は、第2羽根軸21の形成方向に応じて、各種の方向に形成することができる。
【0107】
また、本実施形態では、第1駆動源30U及び第2駆動源30Dの回転数がゼロとなる所定時間前に第1駆動源30U及び第2駆動源30Dの駆動力の出力を停止させる制御を行うものとしたが、出力を停止させるタイミングは、使用するモータ等の特性に応じて、適宜変更することが可能である。また、本実施形態では、第1付勢部材40U及び第2付勢部材40Dの復元力により、羽根2における往動又は復動が切り替わった時点で、第1駆動源30U及び第2駆動源30Dによる駆動力の出力を再開させる制御を行うものとしたが、駆動力の出力を再開させるタイミングも、使用するモータ等の特性に応じて、適宜変更することが可能である。
【0108】
また、制御部60による第1オフセット制御及び第2オフセット制御におけるオフセット量は、羽ばたき装置1,100,200の飛行態様に応じて、各種のオフセット量を設定することができる。また、第1オフセット制御及び第2オフセット制御におけるオフセット量は、それぞれ同じものでもよいし、飛行態様に応じてそれぞれ異なるものとしてもよい。
【0109】
また、本実施形態では、制御部60において、羽根2が、進行方向に対して反対方向に所定の角度で傾斜するように第1駆動源30U及び第2駆動源30Dにおける出力の位相に差を設ける制御を行うものとしたが、羽根2を傾斜させる角度は、飛行態様や飛行環境等に応じて、各種の角度に設定できる。また、羽根2の制御は、上述した実施形態のものには限定されず、飛行態様等に応じて、各種の制御を行うことが可能である。
【0110】
以上が、本発明に係る羽ばたき装置の各種の実施形態や変形例であるが、本発明は上述した実施形態や変形例において例示したものに限定されるものではなく、特許請求の範囲を逸脱しない範囲でその教示及び精神から他の実施形態があり得ることは当業者に容易に理解できよう。
【産業上の利用可能性】
【0111】
本発明の羽ばたき装置は、空中における各種の調査や補修、撮影等に利用することができる。
【符号の説明】
【0112】
1 :羽ばたき装置
2 :羽根
3 :駆動部
7 :躯体
10U:第1従動部
10D:第2従動部
20 :第1羽根軸
21 :第2羽根軸
22 :羽根本体
30 :駆動源
30U:第1駆動源
30D:第2駆動源
40 :付勢部材
40U:第1付勢部材
40D:第2付勢部材
41U:第3付勢部材
41D:第4付勢部材
53 :リンク部材
60 :制御部
70U:支持部
70D:支持部
70M:中間支持部
100 :羽ばたき装置
200 :羽ばたき装置