IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 池田食研株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024059055
(43)【公開日】2024-04-30
(54)【発明の名称】風味付与増強剤
(51)【国際特許分類】
   A23L 27/00 20160101AFI20240422BHJP
   A23L 2/00 20060101ALI20240422BHJP
   A23L 2/02 20060101ALI20240422BHJP
   A23L 27/12 20160101ALI20240422BHJP
   A23G 9/00 20060101ALI20240422BHJP
   A23G 9/32 20060101ALI20240422BHJP
【FI】
A23L27/00 Z
A23L27/00 F
A23L2/00 B
A23L2/02 A
A23L2/02 C
A23L27/12
A23G9/00 101
A23G9/32
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2022176764
(22)【出願日】2022-10-17
(71)【出願人】
【識別番号】000210067
【氏名又は名称】池田食研株式会社
(72)【発明者】
【氏名】竹尻 崇人
【テーマコード(参考)】
4B014
4B047
4B117
【Fターム(参考)】
4B014GB21
4B014GG07
4B014GG09
4B014GG12
4B014GK02
4B014GK03
4B014GL10
4B014GP14
4B014GP27
4B047LB10
4B047LF07
4B047LF09
4B047LG23
4B047LG24
4B047LG25
4B047LG28
4B047LG37
4B047LG38
4B047LG70
4B047LP05
4B047LP20
4B117LC03
4B117LG03
4B117LG05
4B117LG24
4B117LK07
4B117LK12
4B117LK13
4B117LL02
4B117LL09
4B117LP20
(57)【要約】
【課題】 本発明は、飲食品の風味に、厚み、余韻等を付与又は増強して、飲食品に熟成感を付与し、飲食品の価値を高めることができる風味付与増強剤及びその製造方法、風味付与増強方法、並びに該風味付与増強剤を含む飲食品を提供することを目的とする。
【解決手段】 植物素材を加熱して発生させた煙を糖含有液に通気することで、該糖含有液を有効成分とする風味付与増強剤が得られることを見出し、本発明を完成した。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物素材を加熱して発生させた煙を通気した糖含有液を有効成分とする風味付与増強剤。
【請求項2】
植物素材が燻製材である、請求項1記載の風味付与増強剤。
【請求項3】
熟成感付与増強用である、請求項1又は2記載の風味付与増強剤。
【請求項4】
厚み又は余韻付与増強用である、請求項1又は2記載の風味付与増強剤。
【請求項5】
植物素材を加熱して発生させた煙を糖含有液に通気することを特徴とする、風味付与増強剤の製造方法。
【請求項6】
植物素材が燻製材である、請求項5記載の風味付与増強剤の製造方法。
【請求項7】
熟成感付与増強用の風味付与増強剤の製造方法である、請求項5又は6記載の風味付与増強剤の製造方法。
【請求項8】
飲食品に、植物素材を加熱して発生させた煙を通気した糖含有液を添加することを特徴とする、飲食品の風味付与増強方法。
【請求項9】
植物素材が燻製材である、請求項8記載の風味付与増強方法。
【請求項10】
熟成感の付与増強方法である、請求項8又は9記載の風味付与増強方法。
【請求項11】
請求項1又は2記載の風味付与増強剤を含む、飲食品。
【請求項12】
請求項1又は2記載の風味付与増強剤を飲食品に添加することを特徴とする、飲食品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は風味付与増強剤及びその製造方法、風味付与増強方法、並びに該風味付与増強剤を含む飲食品等に関する。
【背景技術】
【0002】
これまでに、燻煙を利用した各種風味改善方法が開発されており、例えば、特許文献1には、食品粉末を、内周に攪拌羽根を有し回転支持台上にほぼ水平に設置された回転ドラムに充填し、この回転ドラムを回転させつつ、該回転ドラム内に燻煙を通過させることにより燻煙処理して得られた燻煙処理食品粉末を、食品中に0.1~3.0質量%含有させることを特徴とする食品の風味改善方法が記載されている。
【0003】
特許文献2には、特定の方法で製造した脱臭ハーブを有効成分とする飲食品の風味付与ないし増強剤が開示され、熟成感等を付与できることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5164949号公報
【特許文献2】特許第7039142号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、飲食品の風味に、厚み、余韻等を付与又は増強して、飲食品に熟成感を付与し、飲食品の価値を高めることができる風味付与増強剤及びその製造方法、風味付与増強方法、並びに該風味付与増強剤を含む飲食品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
発明者は、植物素材を加熱して発生させた煙を糖含有液に通気することで、該糖含有液を有効成分とする風味付与増強剤が得られることを見出し、本発明を完成した。
【0007】
すなわち、本発明は、以下の[1]~[12]の態様に関する。
[1]植物素材を加熱して発生させた煙を通気した糖含有液を有効成分とする風味付与増強剤。
[2]植物素材が燻製材である、[1]記載の風味付与増強剤。
[3]熟成感付与増強用である、[1]又は[2]記載の風味付与増強剤。
[4]厚み又は余韻付与増強用である、[1]又は[2]記載の風味付与増強剤。
[5]植物素材を加熱して発生させた煙を糖含有液に通気することを特徴とする、風味付与増強剤の製造方法。
[6]植物素材が燻製材である、[5]記載の風味付与増強剤の製造方法。
[7]熟成感付与増強用の風味付与増強剤の製造方法である、[5]又は[6]記載の風味付与増強剤の製造方法。
[8]飲食品に、植物素材を加熱して発生させた煙を通気した糖含有液を添加することを特徴とする、飲食品の風味付与増強方法。
[9]植物素材が燻製材である、[8]記載の風味付与増強方法。
[10]熟成感の付与増強方法である、[8]又は[9]記載の風味付与増強方法。
[11][1]又は[2]記載の風味付与増強剤を含む、飲食品。
[12][1]又は[2]記載の風味付与増強剤を飲食品に添加することを特徴とする、飲食品の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によって、飲食品の風味に、厚み、余韻等を付与又は増強して、飲食品に熟成感を付与して飲食品の価値を高めることができる風味付与増強剤を提供でき、該風味付与増強剤を使用することで、長期間の熟成を経ることなく飲食品に簡便に熟成感を付与又は増強でき、価値を高めた飲食品を提供できるようになった。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の風味付与増強剤は、植物素材を加熱して発生させた煙を通気した糖含有液を有効成分とし、植物素材を加熱して発生させた煙を糖含有液に通気することで得られる。また、該風味付与増強剤を飲食品に添加することで、飲食品に風味を付与又は飲食品の風味を増強することができる。
【0010】
本発明に記載の糖含有液は、糖類、多糖類、糖アルコール等の糖質を含む液であれば特に限定されず、水あめ、還元水あめ、果糖ぶどう糖液糖、砂糖混合ぶどう糖果糖液糖、グルコオリゴ糖シラップ、異性化液糖、液状デキストリン、グリセリン等が例示でき、糖を含む果汁、野菜汁等でもよく、単体で又は二種以上を混合して用いてもよい。糖含有液のBrixは特に限定されないが、2%~85%が好ましく、4%~80%がより好ましく、6%以上がさらに好ましく、8%以上が特に好ましく、該Brixの糖含有液を使用することで、飲食品に好ましくない風味を付与することなく、厚み、余韻等を付与又は増強して、飲食品に熟成感を付与することができる。Brixは、20℃のショ糖溶液の質量百分率に相当する値であって、市販の糖度計を使用して測定できる。
【0011】
本発明に記載の加熱する植物素材は、特に限定されず、サクラ、ブナ、ナラ、オニグルミ、クヌギ、リンゴ、カエデ等の燻製剤、豆類、穀類、果物、コーヒー等から適宜選択でき、二種類以上を使用してもよいが、燻製剤が好ましい。植物素材の使用量は特に限定されないが、糖含有液1重量部に対して、0.02~5重量部が好ましく、0.05~4重量部がより好ましく、0.0~2重量部がさらに好ましい。
【0012】
本発明において、植物素材を加熱して煙を発生させる方法としては、一般的な燻煙発生方法で行うことができ、特に限定されないが、植物素材を加熱する温度は、煙が発生する温度に適宜設定でき、100℃~2,000℃が好ましく、150℃~1,000℃がより好ましく、200℃~600℃がさらに好ましく、公知の燻煙発生装置を使用してもよい。
【0013】
発生させた煙を糖含有液に通気する方法としては、特に限定されず、発生させた煙を、配管、ポンプ等を使用して移送し、タンク中の糖含有液に通気すればよい。通気時間は好ましい燻香が付与できるように適宜設定できるが、例えば30秒~60分間が好ましく、1分~30分間がより好ましい。
【0014】
本発明に記載の風味付与増強剤は、植物素材を加熱して発生させた煙を糖含有液に通気することで得られ、燻香を有し、風味付与増強剤として飲食品に風味を付与又は増強することができ、厚み付与増強用、余韻付与増強用又は熟成感付与増強用として使用するのが好ましい。
【0015】
本発明の風味付与増強剤は、非アルコール飲料、アルコール飲料等の飲料、洋菓子、和菓子、チョコレート、冷菓、氷菓、生菓子、焼き菓子、キャンディー、ゼリー、グミ、ガム、錠菓等の菓子類、ジャム等の瓶詰食品、スープ等の飲食品に添加することにより、飲食品の風味に、厚み、余韻等を付与又は増強して、飲食品に熟成感を付与することができる。各飲食品への添加量は特に限定されないが、好ましくは0.01~30%、より好ましくは0.05~20%、さらに好ましくは0.1~10%である。
【実施例0016】
以下、実施例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の例によって限定されるものではない。尚、本発明において、%は別記がない限り全て重量%である。
【実施例0017】
ウッドチップ(オニグルミ)10gを300℃~425℃にて加熱して発生させた燻煙を、チューブとポンプを使用して、糖含有液である還元水あめ(Brix70.0%、アマミール(登録商標)、三菱商事ライフサイエンス株式会社製)120gに、2分間通気することを繰り返し、合計約4分間通気することにより、燻香が付与された実施品1の糖含有液を得た。尚、ウッドチップは、合計20gを使用した。
【0018】
[評価試験1]
実施品1を2%含むブドウジュース(実施品1-1)又は実施品1を0.5%含むリンゴシャーベット(実施品1-2)を表1記載の割合で調製し、実施品1の代わりに還元水あめ(アマミール(登録商標))を使用して調製したブドウジュース(比較品1-1)又はリンゴシャーベット(比較品1-2)を各々比較品とし、訓練された8名のパネラーにより、官能評価を行い、結果を表2に示した。官能評価は、フレッシュさ、厚み(重厚感)及び余韻(風味の持続性)について、比較品1-1又は比較品1-2の評価を「2」とし、比較品より強いものを「4」、やや強いものを「3」、同程度のものを「2」、やや弱いものを「1」、弱い又は感じないものを「0」として評価し、各パネラーの平均値を算出して結果を表2に示した。厚み及び余韻の持続性の数値が何れも3.0以上を「○:熟成感あり」とした。
【0019】
【表1】
【0020】
【表2】
【0021】
実施品1の薫香を有する糖含有液を使用して調製したブドウジュース及びリンゴシャーベットは何れも、実施品1無添加のものに比べ、フレッシュさは弱くなり、厚み及び余韻は強くなり、熟成感が付与されていた。
また、実施品1-1のブドウジュースについては、ワインのような風味が感じられる、味の広がり、複雑さが付与されているという感想があり、実施品1-2のリンゴシャーベットについては、洋酒のような風味、苦み、コクが付与されている、加熱感があるという感想があった。
【0022】
よって、薫香を有する糖含有液を使用することで、フレッシュさは抑えられるが、複雑さやコクが付与されるとともに、厚みや余韻が増強され、本来長期間かけて熟成されることで醸し出される熟成感を、本発明の糖含有液で付与できることが分かった。
【実施例0023】
還元水あめの代わりに、砂糖混合ブドウ糖果糖液糖と水あめとの混合品(Brix68.0%)を使用する以外は、実施例1と同様に実施し、燻香が付与された実施品2の糖含有液を得た。
30gの実施品2を、リンゴ濃縮果汁50g及び水20gを含むリンゴジュースに添加したところ、熟成感のあるリンゴジュースが得られた。
【実施例0024】
還元水あめの代わりに、液状デキストリン(Brix75.0%、K.D.L.液状デキストリンN75C、日本コーンスターチ株式会社製)を使用する以外は、実施例1と同様に実施し、燻臭が付与された実施品3の糖含有液を得た。
30gの実施品3を、リンゴ濃縮果汁50g及び水20gを含むリンゴジュースに添加したところ、熟成感のあるリンゴジュースが得られた。
【実施例0025】
還元水あめの代わりに、リンゴ濃縮果汁(Brix50.0%)を使用する以外は、実施例1と同様に実施し、燻臭が付与された実施品4の糖含有液を得た。
1gの実施品4を、リンゴ濃縮果汁19g及び水80gを含むリンゴジュースに添加したところ、熟成感のあるリンゴジュースが得られた。
【実施例0026】
還元水あめの代わりに、リンゴ濃縮果汁(Brix50.0%)100gとエタノール40gとの混合品を使用する以外は、実施例1と同様に実施し、燻臭が付与された実施品5の糖含有液を得た。
1gの実施品5を、リンゴ濃縮果汁19g及び水80gを含むリンゴジュースに添加したところ、熟成感のあるリンゴジュースが得られた。
【実施例0027】
還元水あめの代わりに、グリセリン(阪本薬品工業株式会社製)を使用する以外は、実施例1と同様に実施し、燻臭が付与された実施品6の糖含有液を得た。
30gの実施品6を、リンゴ濃縮果汁50g及び水20gを含むリンゴジュースに添加したところ、熟成感のあるリンゴジュースが得られた。
【実施例0028】
3gの実施品1を、ブルーベリー香料0.08g及び水150gを含むブルーベリージュースに添加したところ、熟成感のあるブルーベリージュースが得られた。
【実施例0029】
ウッドチップ(カシ)10gを300℃~425℃にて加熱して発生させた燻煙を、チューブとポンプを使用して、糖含有液であるリンゴ濃縮果汁(Brix50.0%)と20gと水80gとの混合品(Brix10.0%)に、2分間通気することを繰り返し、合計約4分間通気することにより、燻香が付与された実施品8の糖含有液を得た。尚、ウッドチップは、合計20gを使用した。
1gの実施品8を、リンゴ濃縮果汁19g及び水80gを含むリンゴジュースに添加したところ、熟成感のあるリンゴジュースが得られた。
【0030】
[比較例]
0.03gの燻液(香味煙SF(東海化成株式会社製))を、りんご濃縮果汁20g及び水79.97gを含むリンゴジュースに添加したところ、酸味のあるタール様の好ましくない燻風味が先味に付与されたが、熟成感は感じられなかった。尚、該燻液のBrixを測定したところ、5%だった。