(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024059061
(43)【公開日】2024-04-30
(54)【発明の名称】耐震装置
(51)【国際特許分類】
E04H 9/02 20060101AFI20240422BHJP
E04B 1/58 20060101ALI20240422BHJP
E04G 23/02 20060101ALI20240422BHJP
【FI】
E04H9/02 311
E04B1/58 D
E04G23/02 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023070911
(22)【出願日】2023-04-24
(31)【優先権主張番号】P 2022166375
(32)【優先日】2022-10-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000001317
【氏名又は名称】株式会社熊谷組
(71)【出願人】
【識別番号】800000068
【氏名又は名称】学校法人東京電機大学
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100070024
【弁理士】
【氏名又は名称】松永 宣行
(72)【発明者】
【氏名】野田 亜久里
(72)【発明者】
【氏名】笹谷 真通
【テーマコード(参考)】
2E125
2E139
2E176
【Fターム(参考)】
2E125AA33
2E139AA01
2E139AC19
2E139AC33
2E139AD04
2E139BD14
2E176BB28
(57)【要約】
【課題】片流れブレースに適用可能であり、既存の構造体の耐力または新設の架構フレームに求められる耐力に合わせて、任意の変形量までは設計者の判断で低減した初期剛性を与えることが可能であり、過大な変形に対してはブレースと架構フレームが一体となって抵抗できる耐震装置を提供する。
【解決手段】耐震装置16において、楔材32Aは、X方向における一方側に向かうほどZ方向における幅が狭くなる左端楔形部51および中央右側楔形部54と、他方側に向かうほどZ方向における幅が狭くなる右端楔形部52および中央左側楔形部53とを備える。楔材32Bは、左端楔形部51と右端楔形部52とを備える。楔材32A,32Bにはそれぞれ、鋼棒33が貫通し、楔材32A,32Bの鋼棒33に対するX方向の移動を許容する貫通孔32aが形成されている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向において互いに対向して配置された第1拘束材および第2拘束材と、
前記第1拘束材と前記第2拘束材とに挟まれ、前記第1方向に直交する第2方向に沿って互いに間隔を空けて配置された第1楔材および第2楔材と、
前記第1拘束材、前記第1楔材、および前記第2拘束材を貫通し、前記第1拘束材から突出する一端部、および前記第2拘束材から突出する他端部を有する第1鋼棒と、
前記第1拘束材、前記第2楔材、および前記第2拘束材を貫通し、前記第1拘束材から突出する一端部、および前記第2拘束材から突出する他端部を有する第2鋼棒と、
前記第1鋼棒の一端部に取り付けられ、前記第1拘束材を前記第1楔材に留め付ける第1一端留付部材と、
前記第1鋼棒の他端部に取り付けられ、前記第2拘束材を前記第1楔材に留め付ける第1他端留付部材と、
前記第2鋼棒の一端部に取り付けられ、前記第1拘束材を前記第2楔材に留め付ける第2一端留付部材と、
前記第2鋼棒の他端部に取り付けられ、前記第2拘束材を前記第2楔材に留め付ける第2他端留付部材とを備え、
前記第1拘束材と前記第1一端留付部材との間、前記第2拘束材と前記第1他端留付部材との間、前記第1拘束材と前記第2一端留付部材との間、および前記第2拘束材と前記第2他端留付部材との間のうちのすべてにばね部材が配置されているか、前記第1拘束材と前記第1一端留付部材との間および前記第1拘束材と前記第2一端留付部材との間のみに前記ばね部材が配置されているか、前記第2拘束材と前記第1他端留付部材との間および前記第2拘束材と前記第2他端留付部材との間のみに前記ばね部材が配置されており、
前記第1楔材および前記第2楔材はそれぞれ、
前記第1拘束材に接する平面および前記第2拘束材に接する平面を有し、前記第2方向における一方側に向かうほど前記第1方向における幅が狭くなる第1楔形部と、
前記第1拘束材に接する平面および前記第2拘束材に接する平面を有し、前記第2方向における他方側に向かうほど前記第1方向における幅が狭くなる第2楔形部とを備え、
前記第1楔形部の前記第1拘束材に接する平面が前記第2拘束材側において前記第2方向となす角度と、前記第2楔形部の前記第1拘束材に接する平面が前記第2拘束材側において前記第2方向となす角度とが等しく、
前記第1楔形部の前記第2拘束材に接する平面が前記第1拘束材側において前記第2方向となす角度と、前記第2楔形部の前記第2拘束材に接する平面が前記第1拘束材側において前記第2方向となす角度とが等しく、
前記第1拘束材および前記第2拘束材はそれぞれ、前記第1楔材の前記第1楔形部に接する平面、前記第1楔材の前記第2楔形部に接する平面、前記第2楔材の前記第1楔形部に接する平面、および前記第2楔材の前記第2楔形部に接する平面を有し、
前記第1楔材には、前記第1鋼棒が貫通し、前記第1楔材の前記第1鋼棒に対する前記第2方向の移動を許容する貫通孔が形成され、
前記第2楔材には、前記第2鋼棒が貫通し、前記第2楔材の前記第2鋼棒に対する前記第2方向の移動を許容する貫通孔が形成されていることを特徴とする耐震装置。
【請求項2】
第1方向において互いに対向して配置された第1拘束材および第2拘束材と、
前記第1拘束材と前記第2拘束材とに挟まれた楔材と、
前記第1拘束材、前記楔材、および前記第2拘束材を貫通し、前記第1拘束材から突出する一端部、および前記第2拘束材から突出する他端部を有する鋼棒と、
前記鋼棒の一端部に取り付けられ、前記第1拘束材を前記楔材に留め付ける一端留付部材と、
前記鋼棒の他端部に取り付けられ、前記第2拘束材を前記楔材に留め付ける他端留付部材とを備え、
前記第1拘束材と前記一端留付部材との間、および前記第2拘束材と前記他端留付部材との間の少なくともいずれか一方にばね部材が配置されており、
前記楔材は、
前記第1拘束材に接する平面および前記第2拘束材に接する平面を有し、前記第1方向に直交する第2方向における一方側に向かうほど前記第1方向における幅が狭くなる第1楔形部と、
前記第1拘束材に接する平面および前記第2拘束材に接する平面を有し、前記第2方向における他方側に向かうほど前記第1方向における幅が狭くなる第2楔形部とを備え、
前記第1楔形部の前記第1拘束材に接する平面が前記第2拘束材側において前記第2方向となす角度と、前記第2楔形部の前記第1拘束材に接する平面が前記第2拘束材側において前記第2方向となす角度とが等しく、
前記第1楔形部の前記第2拘束材に接する平面が前記第1拘束材側において前記第2方向となす角度と、前記第2楔形部の前記第2拘束材に接する平面が前記第1拘束材側において前記第2方向となす角度とが等しく、
前記第1拘束材および前記第2拘束材はそれぞれ、前記第1楔形部に接する平面と前記第2楔形部に接する平面とを有し、
前記楔材には、前記鋼棒が貫通し、前記楔材の前記鋼棒に対する前記第2方向の移動を許容する貫通孔が形成されていることを特徴とする耐震装置。
【請求項3】
前記一端留付部材および前記他端留付部材はそれぞれ、前記鋼棒の一端部および他端部に螺合されたナットからなることを特徴とする請求項2に記載の耐震装置。
【請求項4】
第1方向において互いに対向して配置された第1拘束材および第2拘束材と、
前記第1拘束材と前記第2拘束材とに挟まれ、前記第1方向に直交する第2方向に沿って互いに間隔を空けて配置された第1楔材および第2楔材と、
前記第1方向および前記第2方向に直交する前記第1拘束材および前記第2拘束材の幅方向において前記第1楔材および前記第2楔材より一方側に配置され、前記第1拘束材および前記第2拘束材を貫通し、前記第1拘束材から突出する一端部、および前記第2拘束材から突出する他端部を有する第1鋼棒と、
前記幅方向において前記第1楔材および前記第2楔材より他方側に配置され、前記第1拘束材および前記第2拘束材を貫通し、前記第1拘束材から突出する一端部、および前記第2拘束材から突出する他端部を有する第2鋼棒と、
前記第1鋼棒の一端部に取り付けられ、前記第1拘束材を前記第1楔材および前記第2楔材に留め付ける第1一端留付部材と、
前記第1鋼棒の他端部に取り付けられ、前記第2拘束材を前記第1楔材および前記第2楔材に留め付ける第1他端留付部材と、
前記第2鋼棒の一端部に取り付けられ、前記第1拘束材を前記第1楔材および前記第2楔材に留め付ける第2一端留付部材と、
前記第2鋼棒の他端部に取り付けられ、前記第2拘束材を前記第1楔材および前記第2楔材に留め付ける第2他端留付部材とを備え、
前記第1拘束材と前記第1一端留付部材との間、前記第2拘束材と前記第1他端留付部材との間、前記第1拘束材と前記第2一端留付部材との間、および前記第2拘束材と前記第2他端留付部材との間のうちのすべてにばね部材が配置されているか、前記第1拘束材と前記第1一端留付部材との間および前記第1拘束材と前記第2一端留付部材との間のみに前記ばね部材が配置されているか、前記第2拘束材と前記第1他端留付部材との間および前記第2拘束材と前記第2他端留付部材との間のみに前記ばね部材が配置されており、
前記第1楔材および前記第2楔材はそれぞれ、
前記第1拘束材に接する平面および前記第2拘束材に接する平面を有し、前記第2方向における一方側に向かうほど前記第1方向における幅が狭くなる第1楔形部と、
前記第1拘束材に接する平面および前記第2拘束材に接する平面を有し、前記第2方向における他方側に向かうほど前記第1方向における幅が狭くなる第2楔形部とを備え、
前記第1楔形部の前記第1拘束材に接する平面が前記第2拘束材側において前記第2方向となす角度と、前記第2楔形部の前記第1拘束材に接する平面が前記第2拘束材側において前記第2方向となす角度とが等しく、
前記第1楔形部の前記第2拘束材に接する平面が前記第1拘束材側において前記第2方向となす角度と、前記第2楔形部の前記第2拘束材に接する平面が前記第1拘束材側において前記第2方向となす角度とが等しく、
前記第1拘束材および前記第2拘束材はそれぞれ、前記第1楔材の前記第1楔形部に接する平面、前記第1楔材の前記第2楔形部に接する平面、前記第2楔材の前記第1楔形部に接する平面、および前記第2楔材の前記第2楔形部に接する平面を有することを特徴とする耐震装置。
【請求項5】
第1方向において互いに対向して配置された第1拘束材および第2拘束材と、
前記第1拘束材と前記第2拘束材とに挟まれた楔材と、
前記第1方向に直交する前記第1拘束材および前記第2拘束材の幅方向において前記楔材より一方側に配置され、前記第1拘束材および前記第2拘束材を貫通し、前記第1拘束材から突出する一端部、および前記第2拘束材から突出する他端部を有する第1鋼棒と、
前記幅方向において前記楔材より他方側に配置され、前記第1拘束材および前記第2拘束材を貫通し、前記第1拘束材から突出する一端部、および前記第2拘束材から突出する他端部を有する第2鋼棒と、
前記第1鋼棒の一端部に取り付けられ、前記第1拘束材を前記楔材に留め付ける第1一端留付部材と、
前記第1鋼棒の他端部に取り付けられ、前記第2拘束材を前記楔材に留め付ける第1他端留付部材と、
前記第2鋼棒の一端部に取り付けられ、前記第1拘束材を前記楔材に留め付ける第2一端留付部材と、
前記第2鋼棒の他端部に取り付けられ、前記第2拘束材を前記楔材に留め付ける第2他端留付部材とを備え、
前記第1拘束材と前記第1一端留付部材との間、前記第2拘束材と前記第1他端留付部材との間、前記第1拘束材と前記第2一端留付部材との間、および前記第2拘束材と前記第2他端留付部材との間のうちのすべてにばね部材が配置されているか、前記第1拘束材と前記第1一端留付部材との間および前記第1拘束材と前記第2一端留付部材との間のみに前記ばね部材が配置されているか、前記第2拘束材と前記第1他端留付部材との間および前記第2拘束材と前記第2他端留付部材との間のみに前記ばね部材が配置されており、
前記楔材は、
前記第1拘束材に接する平面および前記第2拘束材に接する平面を有し、前記第1方向および前記幅方向に直交する第2方向における一方側に向かうほど前記第1方向における幅が狭くなる第1楔形部と、
前記第1拘束材に接する平面および前記第2拘束材に接する平面を有し、前記第2方向における他方側に向かうほど前記第1方向における幅が狭くなる第2楔形部とを備え、
前記第1楔形部の前記第1拘束材に接する平面が前記第2拘束材側において前記第2方向となす角度と、前記第2楔形部の前記第1拘束材に接する平面が前記第2拘束材側において前記第2方向となす角度とが等しく、
前記第1楔形部の前記第2拘束材に接する平面が前記第1拘束材側において前記第2方向となす角度と、前記第2楔形部の前記第2拘束材に接する平面が前記第1拘束材側において前記第2方向となす角度とが等しく、
前記第1拘束材および前記第2拘束材はそれぞれ、前記第1楔形部に接する平面と前記第2楔形部に接する平面とを有することを特徴とする耐震装置。
【請求項6】
前記第1一端留付部材、前記第1他端留付部材、前記第2一端留付部材、および前記第2他端留付部材はそれぞれ、前記第1鋼棒の一端部、前記第1鋼棒の他端部、前記第2鋼棒の一端部、および前記第2鋼棒の他端部に螺合されたナットからなることを特徴とする請求項1,4,5のいずれか1項に記載の耐震装置。
【請求項7】
前記ばね部材は、皿ばねからなることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の耐震装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の耐震装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ブレースを用いた建物の耐震構造が知られている。
【0003】
この種の技術として、特許文献1には、上桁とその両端にそれぞれ結合する2本の斜材(ブレース)で構成された補強ブレースを用いた耐震補強方法が開示されている。
【0004】
この補強ブレースは、構造体の柱、上部梁、および下部梁で形成される構面の中に架設されている。補強ブレースの上桁にはブラケットが設けられ、構造体の上部梁と補強ブレースのブラケットとが互いに上下方向もしくは上下方向と左右方向とに移動可能に結合されている。
【0005】
また、補強をする既存建物の地震による変形を勘案して地震による水平力を躯体と補強ブレースとで分担するように、斜材の下部梁への取付角度の設定と、斜材の材質の選定とを行っている。
【0006】
これにより、既存建物の構造体による耐力を生かしながら、補強ブレースの耐力を有効に合体させて地震に対する大きな耐力を得ている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1の技術では、部材の取り付け上、斜材(ブレース)が2本必要であるが、1本の片流れブレースに適用可能な技術が要望されていた。
【0009】
また、特許文献1の技術では、補強ブレースの斜材と梁との結合角度の調整および斜材の材質の選定により補強ブレースの剛性を規定する必要があり、剛性の設定が煩雑であった。また、特許文献1の技術は、耐震補強を目的としており、既存の構造体の耐力に合わせて所定の変形量(つまり間隙の分)までは補強ブレースを機能させず、架構フレームのみが水平力を負担している。
【0010】
これに対し、既存の構造体の耐力に限らず、新設の架構フレームに対しても、求められる耐力に合わせて、任意の変形量までは設計者の判断で低減した初期剛性を与えることが可能であり、過大な変形に対してはブレースと架構フレームが一体となって抵抗できる技術が期待されていた。
【0011】
本発明は上記に鑑みてなされたもので、片流れブレースに適用可能な耐震装置を提供することを目的とする。
【0012】
また、本発明の他の目的は、既存の構造体の耐力または新設の架構フレームに求められる耐力に合わせて、任意の変形量までは設計者の判断で低減した初期剛性を与えることが可能であり、過大な変形に対してはブレースと架構フレームが一体となって抵抗できる耐震装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の一態様によれば、第1方向において互いに対向して配置された第1拘束材および第2拘束材と、前記第1拘束材と前記第2拘束材とに挟まれ、前記第1方向に直交する第2方向に沿って互いに間隔を空けて配置された第1楔材および第2楔材と、前記第1拘束材、前記第1楔材、および前記第2拘束材を貫通し、前記第1拘束材から突出する一端部、および前記第2拘束材から突出する他端部を有する第1鋼棒と、前記第1拘束材、前記第2楔材、および前記第2拘束材を貫通し、前記第1拘束材から突出する一端部、および前記第2拘束材から突出する他端部を有する第2鋼棒と、前記第1鋼棒の一端部に取り付けられ、前記第1拘束材を前記第1楔材に留め付ける第1一端留付部材と、前記第1鋼棒の他端部に取り付けられ、前記第2拘束材を前記第1楔材に留め付ける第1他端留付部材と、前記第2鋼棒の一端部に取り付けられ、前記第1拘束材を前記第2楔材に留め付ける第2一端留付部材と、前記第2鋼棒の他端部に取り付けられ、前記第2拘束材を前記第2楔材に留め付ける第2他端留付部材とを備え、前記第1拘束材と前記第1一端留付部材との間、前記第2拘束材と前記第1他端留付部材との間、前記第1拘束材と前記第2一端留付部材との間、および前記第2拘束材と前記第2他端留付部材との間のうちのすべてにばね部材が配置されているか、前記第1拘束材と前記第1一端留付部材との間および前記第1拘束材と前記第2一端留付部材との間のみに前記ばね部材が配置されているか、前記第2拘束材と前記第1他端留付部材との間および前記第2拘束材と前記第2他端留付部材との間のみに前記ばね部材が配置されており、前記第1楔材および前記第2楔材はそれぞれ、前記第1拘束材に接する平面および前記第2拘束材に接する平面を有し、前記第2方向における一方側に向かうほど前記第1方向における幅が狭くなる第1楔形部と、前記第1拘束材に接する平面および前記第2拘束材に接する平面を有し、前記第2方向における他方側に向かうほど前記第1方向における幅が狭くなる第2楔形部とを備え、前記第1楔形部の前記第1拘束材に接する平面が前記第2拘束材側において前記第2方向となす角度と、前記第2楔形部の前記第1拘束材に接する平面が前記第2拘束材側において前記第2方向となす角度とが等しく、前記第1楔形部の前記第2拘束材に接する平面が前記第1拘束材側において前記第2方向となす角度と、前記第2楔形部の前記第2拘束材に接する平面が前記第1拘束材側において前記第2方向となす角度とが等しく、前記第1拘束材および前記第2拘束材はそれぞれ、前記第1楔材の前記第1楔形部に接する平面、前記第1楔材の前記第2楔形部に接する平面、前記第2楔材の前記第1楔形部に接する平面、および前記第2楔材の前記第2楔形部に接する平面を有し、前記第1楔材には、前記第1鋼棒が貫通し、前記第1楔材の前記第1鋼棒に対する前記第2方向の移動を許容する貫通孔が形成され、前記第2楔材には、前記第2鋼棒が貫通し、前記第2楔材の前記第2鋼棒に対する前記第2方向の移動を許容する貫通孔が形成されていることを特徴とする耐震装置が提供される。
【0014】
本発明の他の態様によれば、第1方向において互いに対向して配置された第1拘束材および第2拘束材と、前記第1拘束材と前記第2拘束材とに挟まれた楔材と、前記第1拘束材、前記楔材、および前記第2拘束材を貫通し、前記第1拘束材から突出する一端部、および前記第2拘束材から突出する他端部を有する鋼棒と、前記鋼棒の一端部に取り付けられ、前記第1拘束材を前記楔材に留め付ける一端留付部材と、前記鋼棒の他端部に取り付けられ、前記第2拘束材を前記楔材に留め付ける他端留付部材とを備え、前記第1拘束材と前記一端留付部材との間、および前記第2拘束材と前記他端留付部材との間の少なくともいずれか一方にばね部材が配置されており、前記楔材は、前記第1拘束材に接する平面および前記第2拘束材に接する平面を有し、前記第1方向に直交する第2方向における一方側に向かうほど前記第1方向における幅が狭くなる第1楔形部と、前記第1拘束材に接する平面および前記第2拘束材に接する平面を有し、前記第2方向における他方側に向かうほど前記第1方向における幅が狭くなる第2楔形部とを備え、前記第1楔形部の前記第1拘束材に接する平面が前記第2拘束材側において前記第2方向となす角度と、前記第2楔形部の前記第1拘束材に接する平面が前記第2拘束材側において前記第2方向となす角度とが等しく、前記第1楔形部の前記第2拘束材に接する平面が前記第1拘束材側において前記第2方向となす角度と、前記第2楔形部の前記第2拘束材に接する平面が前記第1拘束材側において前記第2方向となす角度とが等しく、前記第1拘束材および前記第2拘束材はそれぞれ、前記第1楔形部に接する平面と前記第2楔形部に接する平面とを有し、前記楔材には、前記鋼棒が貫通し、前記楔材の前記鋼棒に対する前記第2方向の移動を許容する貫通孔が形成されていることを特徴とする耐震装置が提供される。
【0015】
本発明の他の態様によれば、第1方向において互いに対向して配置された第1拘束材および第2拘束材と、前記第1拘束材と前記第2拘束材とに挟まれ、前記第1方向に直交する第2方向に沿って互いに間隔を空けて配置された第1楔材および第2楔材と、前記第1方向および前記第2方向に直交する前記第1拘束材および前記第2拘束材の幅方向において前記第1楔材および前記第2楔材より一方側に配置され、前記第1拘束材および前記第2拘束材を貫通し、前記第1拘束材から突出する一端部、および前記第2拘束材から突出する他端部を有する第1鋼棒と、前記幅方向において前記第1楔材および前記第2楔材より他方側に配置され、前記第1拘束材および前記第2拘束材を貫通し、前記第1拘束材から突出する一端部、および前記第2拘束材から突出する他端部を有する第2鋼棒と、前記第1鋼棒の一端部に取り付けられ、前記第1拘束材を前記第1楔材および前記第2楔材に留め付ける第1一端留付部材と、前記第1鋼棒の他端部に取り付けられ、前記第2拘束材を前記第1楔材および前記第2楔材に留め付ける第1他端留付部材と、前記第2鋼棒の一端部に取り付けられ、前記第1拘束材を前記第1楔材および前記第2楔材に留め付ける第2一端留付部材と、前記第2鋼棒の他端部に取り付けられ、前記第2拘束材を前記第1楔材および前記第2楔材に留め付ける第2他端留付部材とを備え、前記第1拘束材と前記第1一端留付部材との間、前記第2拘束材と前記第1他端留付部材との間、前記第1拘束材と前記第2一端留付部材との間、および前記第2拘束材と前記第2他端留付部材との間のうちのすべてにばね部材が配置されているか、前記第1拘束材と前記第1一端留付部材との間および前記第1拘束材と前記第2一端留付部材との間のみに前記ばね部材が配置されているか、前記第2拘束材と前記第1他端留付部材との間および前記第2拘束材と前記第2他端留付部材との間のみに前記ばね部材が配置されており、前記第1楔材および前記第2楔材はそれぞれ、前記第1拘束材に接する平面および前記第2拘束材に接する平面を有し、前記第2方向における一方側に向かうほど前記第1方向における幅が狭くなる第1楔形部と、前記第1拘束材に接する平面および前記第2拘束材に接する平面を有し、前記第2方向における他方側に向かうほど前記第1方向における幅が狭くなる第2楔形部とを備え、前記第1楔形部の前記第1拘束材に接する平面が前記第2拘束材側において前記第2方向となす角度と、前記第2楔形部の前記第1拘束材に接する平面が前記第2拘束材側において前記第2方向となす角度とが等しく、前記第1楔形部の前記第2拘束材に接する平面が前記第1拘束材側において前記第2方向となす角度と、前記第2楔形部の前記第2拘束材に接する平面が前記第1拘束材側において前記第2方向となす角度とが等しく、前記第1拘束材および前記第2拘束材はそれぞれ、前記第1楔材の前記第1楔形部に接する平面、前記第1楔材の前記第2楔形部に接する平面、前記第2楔材の前記第1楔形部に接する平面、および前記第2楔材の前記第2楔形部に接する平面を有することを特徴とする耐震装置が提供される。
【0016】
本発明の他の態様によれば、第1方向において互いに対向して配置された第1拘束材および第2拘束材と、前記第1拘束材と前記第2拘束材とに挟まれた楔材と、前記第1方向に直交する前記第1拘束材および前記第2拘束材の幅方向において前記楔材より一方側に配置され、前記第1拘束材および前記第2拘束材を貫通し、前記第1拘束材から突出する一端部、および前記第2拘束材から突出する他端部を有する第1鋼棒と、前記幅方向において前記楔材より他方側に配置され、前記第1拘束材および前記第2拘束材を貫通し、前記第1拘束材から突出する一端部、および前記第2拘束材から突出する他端部を有する第2鋼棒と、前記第1鋼棒の一端部に取り付けられ、前記第1拘束材を前記楔材に留め付ける第1一端留付部材と、前記第1鋼棒の他端部に取り付けられ、前記第2拘束材を前記楔材に留め付ける第1他端留付部材と、前記第2鋼棒の一端部に取り付けられ、前記第1拘束材を前記楔材に留め付ける第2一端留付部材と、前記第2鋼棒の他端部に取り付けられ、前記第2拘束材を前記楔材に留め付ける第2他端留付部材とを備え、前記第1拘束材と前記第1一端留付部材との間、前記第2拘束材と前記第1他端留付部材との間、前記第1拘束材と前記第2一端留付部材との間、および前記第2拘束材と前記第2他端留付部材との間のうちのすべてにばね部材が配置されているか、前記第1拘束材と前記第1一端留付部材との間および前記第1拘束材と前記第2一端留付部材との間のみに前記ばね部材が配置されているか、前記第2拘束材と前記第1他端留付部材との間および前記第2拘束材と前記第2他端留付部材との間のみに前記ばね部材が配置されており、前記楔材は、前記第1拘束材に接する平面および前記第2拘束材に接する平面を有し、前記第1方向および前記幅方向に直交する第2方向における一方側に向かうほど前記第1方向における幅が狭くなる第1楔形部と、前記第1拘束材に接する平面および前記第2拘束材に接する平面を有し、前記第2方向における他方側に向かうほど前記第1方向における幅が狭くなる第2楔形部とを備え、前記第1楔形部の前記第1拘束材に接する平面が前記第2拘束材側において前記第2方向となす角度と、前記第2楔形部の前記第1拘束材に接する平面が前記第2拘束材側において前記第2方向となす角度とが等しく、前記第1楔形部の前記第2拘束材に接する平面が前記第1拘束材側において前記第2方向となす角度と、前記第2楔形部の前記第2拘束材に接する平面が前記第1拘束材側において前記第2方向となす角度とが等しく、前記第1拘束材および前記第2拘束材はそれぞれ、前記第1楔形部に接する平面と前記第2楔形部に接する平面とを有することを特徴とする耐震装置が提供される。
【発明の効果】
【0017】
本発明の耐震装置によれば、片流れブレースに適用可能である。
【0018】
また、本発明の耐震装置によれば、既存の構造体の耐力または新設の架構フレームに求められる耐力に合わせて、任意の変形量までは設計者の判断で低減した初期剛性を与えることが可能であり、過大な変形に対してはブレースと架構フレームが一体となって抵抗できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】第1実施形態に係る耐震装置が設けられた耐震構造を示す図である。
【
図2】(a)は、第1実施形態に係る耐震装置の正面図である。(b)は、第1実施形態に係る耐震装置の側面図である。
【
図3】
図2(a)のA-A線に沿った要部断面図である。
【
図4】
図2に示す耐震装置が圧縮力を受けた状態を示す図である。
【
図5】
図2に示す耐震装置が引張力を受けた状態を示す図である。
【
図6】(a)は、第2実施形態に係る耐震装置の正面図である。(b)は、第2実施形態に係る耐震装置の側面図である。
【
図7】
図6(a)のB-B線に沿った要部断面図である。
【
図8】
図6に示す耐震装置が圧縮力を受けた状態を示す図である。
【
図9】
図6に示す耐震装置が引張力を受けた状態を示す図である。
【
図10】第3実施形態に係る耐震装置の正面図である。
【
図11】第3実施形態に係る耐震装置の側面図である。
【
図13】
図10に示す耐震装置が圧縮力を受けた状態を示す図である。
【
図14】
図10に示す耐震装置が引張力を受けた状態を示す図である。
【
図15】第4実施形態に係る耐震装置の正面図である。
【
図16】第4実施形態に係る耐震装置の側面図である。
【
図18】
図15に示す耐震装置が圧縮力を受けた状態を示す図である。
【
図19】
図15に示す耐震装置が引張力を受けた状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。各図面を通じて同一もしくは同等の部位や構成要素には、同一もしくは同等の符号を付している。
【0021】
以下に示す実施形態は、この発明の技術的思想を具体化するための装置等を例示するものであって、この発明の技術的思想は、各構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。この発明の技術的思想は、特許請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。
【0022】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係る耐震装置が設けられた耐震構造を示す図である。
図2(a)は、第1実施形態に係る耐震装置の正面図である。
図2(b)は、第1実施形態に係る耐震装置の側面図である。
図3は、
図2(a)のA-A線に沿った要部断面図である。
【0023】
図1に示すように、第1実施形態に係る耐震構造1は、建物のフレーム架構2と、フレーム架構2内に配置された片流れブレースであるブレース3とを備える。
【0024】
フレーム架構2は、互いに相対する2つの鉄骨柱11と、2つの鉄骨柱11に接合された上部鉄骨梁12および下部鉄骨梁13とを備える。
【0025】
ブレース3は、2つの鉄骨ブレース材15と、2つの鉄骨ブレース材15の間に配置された耐震装置16とを備える。
【0026】
2つの鉄骨ブレース材15のうちの一方の鉄骨ブレース材15は、その一端がガセットプレート21を介して
図1における右側の鉄骨柱11および上部鉄骨梁12に接合され、他端が耐震装置16に接合されている。他方の鉄骨ブレース材15は、その一端が耐震装置16に接続され、他端がガセットプレート22を介して
図1における左側の鉄骨柱11および下部鉄骨梁13に接合されている。
【0027】
耐震装置16は、
図2、
図3に示すように、2つの拘束材31と、楔材32A,32Bと、3本の鋼棒33と、6つの留付部材34と、6つのばね部材35とを備える。
【0028】
ここで、耐震装置16の長手方向をX方向(第2方向に相当)とし、耐震装置16を正面から見てX方向に直交する方向をY方向とする。X方向およびY方向に直交する方向をZ方向(第1方向に相当)とする。耐震装置16がブレース3の2つの鉄骨ブレース材15の間に取り付けられた状態では、ブレース3の延びる方向が、X方向となる。
【0029】
また、便宜上、X方向においてプラス側を右側、マイナス側を左側と呼び、Y方向においてプラス側を前側、マイナス側を後側と呼び、Z方向においてプラス側を上側、マイナス側を下側と呼ぶ。
【0030】
2つの拘束材31は、Z方向(上下方向)において互いに対向して配置され、楔材32A,32Bを挟持する鋼製の部材である。なお、2つの拘束材31の一方が第1拘束材、他方が第2拘束材に相当する。
【0031】
拘束材31は、X方向に並んで配置され、X方向に対して傾斜した平面31a,31b,31c,31d,31e,31fを有する。2つの拘束材31は、Z方向において平面31a~31fが形成されている側を互いに対向させて配置されている。
【0032】
平面31a~31dはそれぞれ、後述する楔材32Aの左端楔形部51、中央左側楔形部53、中央右側楔形部54、右端楔形部52に接する平面である。平面31e,31fはそれぞれ、後述する楔材32Bの左端楔形部51、右端楔形部52に接する平面である。
【0033】
上側の拘束材31の平面31a~31fの傾斜角度は、後述する左端楔形部51の平面51a、右端楔形部52の平面52a、中央左側楔形部53の平面53a、および中央右側楔形部54の平面54aの傾斜角度αと等しい。ここで、上側の拘束材31の平面31a~31fの傾斜角度は、上側の拘束材31の平面31a~31fのそれぞれが上側においてX方向となす角度である。
【0034】
下側の拘束材31の平面31a~31fの傾斜角度は、後述する左端楔形部51の平面51b、右端楔形部52の平面52b、中央左側楔形部53の平面53b、および中央右側楔形部54の平面54bの傾斜角度βと等しい。ここで、下側の拘束材31の平面31a~31fの傾斜角度は、下側の拘束材31の平面31a~31fのそれぞれが下側においてX方向となす角度である。
【0035】
拘束材31には、それぞれ鋼棒33を貫通させる3つの貫通孔31gが形成されている。貫通孔31gは、鋼棒33よりわずかに大きい直径を有し、鋼棒33に対する拘束材31のX方向の移動を許容しない。貫通孔31gは、X方向において、平面31a,31b間、平面31c,31d間、平面31e,31f間に1つずつ形成されている。貫通孔31gは、Y方向においては、拘束材31の中央位置に形成されている。
【0036】
楔材32A,32Bは、Z方向において2つの拘束材31に挟まれ、X方向に沿って互いに間隔を空けて配置された鋼製の部材である。なお、楔材32A,32Bの一方が第1楔材、他方が第2楔材に相当する。
【0037】
楔材32A,32Bは、耐震装置16がX方向の圧縮力を受けることで、互いに近づくようにそれぞれが拘束材31および鋼棒33に対して相対的に移動しても、互いに接触はしない十分な間隔で配置されている。
【0038】
楔材32Aの左端、および楔材32Bの右端には、それぞれベース部41が接続されている。ベース部41は、耐震装置16を鉄骨ブレース材15に接続するためのものである。
【0039】
楔材32Aは、左端楔形部51と、右端楔形部52と、中央左側楔形部53と、中央右側楔形部54とを有する。
【0040】
左端楔形部51は、楔材32Aの左端部に配置されている。左端楔形部51は、X方向において左側に向かうほど上下方向(Z方向)における幅が狭くなるように形成されている。左端楔形部51は、上側の拘束材31に接する平面51aと、下側の拘束材31に接する平面51bとを有する。
【0041】
右端楔形部52は、楔材32Aの右端部に配置されている。右端楔形部52は、X方向において右側に向かうほど上下方向(Z方向)における幅が狭くなるように形成されている。右端楔形部52は、左端楔形部51を左右反転した形状に形成されている。右端楔形部52は、上側の拘束材31に接する平面52aと、下側の拘束材31に接する平面52bとを有する。
【0042】
中央左側楔形部53は、X方向において左端楔形部51と右端楔形部52との間の楔材32Aの中央部の左側に配置されている。中央左側楔形部53は、上側の拘束材31に接する平面53aと、下側の拘束材31に接する平面53bとを有する。中央左側楔形部53は、右端楔形部52と同じ形状に形成されている。
【0043】
中央右側楔形部54は、X方向において左端楔形部51と右端楔形部52との間の楔材32Aの中央部の右側に配置されている。中央右側楔形部54は、上側の拘束材31に接する平面54aと、下側の拘束材31に接する平面54bとを有する。中央右側楔形部54は、左端楔形部51と同じ形状に形成されている。
【0044】
楔材32Bは、楔材32Bの左端部に配置された上述の左端楔形部51と、楔材32Bの右端部に配置された上述の右端楔形部52とを有する。
【0045】
上述のように、左端楔形部51と中央右側楔形部54とは同じ形状であり、右端楔形部52および中央左側楔形部53は、左端楔形部51および中央右側楔形部54を左右反転した形状である。このため、左端楔形部51の平面51a、右端楔形部52の平面52a、中央左側楔形部53の平面53a、および中央右側楔形部54の平面54aは、すべて等しい傾斜角度αに形成されている。また、左端楔形部51の平面51b、右端楔形部52の平面52b、中央左側楔形部53の平面53b、および中央右側楔形部54の平面54bは、すべて等しい傾斜角度βに形成されている。平面51a~54aの傾斜角度αと平面51b~54bの傾斜角度βとが同じ角度であってもよい。
【0046】
ここで、平面51a~54aの傾斜角度αは、平面51a~54aが下側においてX方向となす角度である。また、平面51b~54bの傾斜角度βは、平面51b~54bが上側においてX方向となす角度である。
【0047】
左端楔形部51、右端楔形部52、中央左側楔形部53、および中央右側楔形部54のテーパ角度(α+β)は、例えば、30度~60度とすることができる。なお、上述の左端楔形部51、右端楔形部52、中央左側楔形部53、および中央右側楔形部54のテーパ角度(α+β)を、楔材32A,32Bのテーパ角度とも称する。
【0048】
ここで、耐震装置16では、楔材32A,32Bのテーパ角度により、耐震装置16の剛性(変位の大きさに対する荷重の大きさ)をコントロールできる。この楔材32A,32Bのテーパ角度による耐震装置16の剛性のコントロールについて説明する。
【0049】
後述するように、耐震装置16では、楔材32A,32BがX方向の外力(後述の押込み外力Paおよび引抜き外力Pb)を受けると、楔材32A,32BがX方向に移動し、2つの拘束材31が楔材32A,32BによりZ方向(上下方向)に押し開かれる。そして、ばね部材35のクリアランスなくなって耐震装置16が鋼棒33の剛性により外力(荷重)に抵抗する状態になるまで拘束材31が移動することがある。
【0050】
この際、楔材32A,32Bのテーパ角度が大きいほど、楔材32A,32Bの変位量に対する拘束材31の移動量が大きくなる。このため、楔材32A,32Bのテーパ角度が大きいほど、ばね部材35のクリアランスがなくなるのが早くなる。換言すれば、楔材32A,32Bのテーパ角度が大きいほど、ばね部材35のクリアランスがなくなるまでの楔材32A,32Bの変位量が小さい。したがって、楔材32A,32Bのテーパ角度が大きいほど、耐震装置16における変位の大きさに対する荷重が大きくなるので、耐震装置16の剛性が高くなる。このことから、楔材32A,32Bのテーパ角度により、耐震装置16の剛性をコントロールできる。
【0051】
なお、左端楔形部51、右端楔形部52、中央左側楔形部53、および中央右側楔形部54に油膜(摩擦を低減、またはなくすもの)を塗布してもよい。
【0052】
なお、左端楔形部51および右端楔形部52の一方が第1楔形部、他方が第2楔形部に相当する。また、中央左側楔形部53および中央右側楔形部54の一方が第1楔形部、他方が第2楔形部に相当する。
【0053】
楔材32A,32Bには、鋼棒33を貫通させる貫通孔32aが形成されている。
【0054】
楔材32Aには、2つの貫通孔32aが形成されている。楔材32Aにおいて、貫通孔32aは、左端楔形部51と中央左側楔形部53との間、および中央右側楔形部54と右端楔形部52との間に1つずつ形成されている。
【0055】
楔材32Bの貫通孔32aは、左端楔形部51と右端楔形部52との間に形成されている。
【0056】
貫通孔32aは、楔材32A,32Bの拘束材31および鋼棒33に対するX方向の移動を許容し、楔材32A,32Bが外力を受けて移動しても、X方向において貫通孔32aの内壁面が鋼棒33に接触しないような十分な大きさに形成されている。
【0057】
貫通孔32aは、例えば、平面視にて(Z方向から見て)、X方向(左右方向)に細長い長円形に形成されている。なお、貫通孔32aの平面視形状は、長円形に限らず、円形、長方形等でもよい。
【0058】
楔材32A,32Bの各貫通孔32aは、楔材32A,32BがX方向の外力(後述の押込み外力Paおよび引抜き外力Pb)を受けていない初期状態において、X方向における貫通孔32aの中央位置と鋼棒33の中心軸の位置とが一致する位置に形成されている。
【0059】
3本の鋼棒33のうちの2本の鋼棒33は、上側の拘束材31、楔材32A、および下側の拘束材31を貫通するものである。これら2本の鋼棒33は、上側の拘束材31の貫通孔31g、楔材32Aの貫通孔32a、下側の拘束材31の貫通孔31gに通されている。残りの1本の鋼棒33は、上側の拘束材31、楔材32B、および下側の拘束材31を貫通するものである。この鋼棒33は、上側の拘束材31の貫通孔31g、楔材32Bの貫通孔32a、下側の拘束材31の貫通孔31gに通されている。
【0060】
なお、楔材32A側の2本の鋼棒33、および楔材32B側の鋼棒33のうちの一方が第1鋼棒に相当し、他方が第2鋼棒に相当する。
【0061】
鋼棒33は、それぞれねじ山が設けられた上端部33aおよび下端部33bを有するピンからなる。鋼棒33の上端部33aは上側の拘束材31から上方に突出し、下端部33bは下側の拘束材31から下方に突出している。なお、鋼棒33の上端部33aおよび下端部33bの一方が一端部、他方が他端部に相当する。
【0062】
留付部材34は、各鋼棒33の上端部33aおよび下端部33bに取り付けられている。楔材32A側の各鋼棒33の上端部33aに取り付けられた留付部材34は、ばね部材35を介して、上側の拘束材31を楔材32Aに留め付ける。また、これらの鋼棒33の下端部33bに取り付けられた留付部材34は、ばね部材35を介して、下側の拘束材31を楔材32Aに留め付ける。
【0063】
楔材32B側の鋼棒33の上端部33aに取り付けられた留付部材34は、ばね部材35を介して、上側の拘束材31を楔材32Bに留め付ける。また、この鋼棒33の下端部33bに取り付けられた留付部材34は、ばね部材35を介して、下側の拘束材31を楔材32Bに留め付ける。
【0064】
留付部材34は、鋼棒33の上端部33aおよび下端部33bのそれぞれに螺合されたナットからなるものとすることができる。
【0065】
なお、楔材32A側の2本の鋼棒33および楔材32B側の鋼棒33のうちの一方における、鋼棒33の上端部33aの留付部材34および下端部33bの留付部材34のうちの一方が第1一端留付部材に相当し、他方が第1他端留付部材に相当する。楔材32A側の2本の鋼棒33および楔材32B側の鋼棒33のうちの他方における、鋼棒33の上端部33aの留付部材34および下端部33bの留付部材34のうちの一方が第2一端留付部材に相当し、他方が第2他端留付部材に相当する。
【0066】
ばね部材35は、拘束材31と留付部材34との間に、鋼棒33が挿通されて配置されている。本実施形態では、ばね部材35は、皿ばねからなる。
【0067】
ばね部材35は、拘束材31と留付部材34との間で、被圧縮状態で留め置かれている。これにより、上側の拘束材31、楔材32A、および下側の拘束材31が、被圧縮状態にあるばね部材35のばね力(復元力)により互いに接する状態におかれている。上側の拘束材31、楔材32B、および下側の拘束材31についても同様である。
【0068】
なお、本実施形態では、すべての留付部材34において拘束材31との間にばね部材35が配置されているが、各鋼棒33の下端部33bの留付部材34と下側の拘束材31との間のばね部材35を省略し、各鋼棒33の上端部33aの留付部材34と上側の拘束材31との間のみにばね部材35を配置してもよい。また、各鋼棒33の上端部33aの留付部材34と上側の拘束材31との間のばね部材35を省略し、各鋼棒33の下端部33bの留付部材34と下側の拘束材31との間のみにばね部材35を配置してもよい。
【0069】
また、本実施形態では、留付部材34と拘束材31との間に1枚のばね部材35を配置しているが、留付部材34と拘束材31との間に複数のばね部材35を重ねて配置してもよい。
【0070】
また、ばね部材35は、皿ばねに代えて、例えば、ばね座金、コイルばね、板ばねからなるものとすることができる。
【0071】
次に、耐震装置16の作用について説明する。
【0072】
耐震構造1が設けられた建物が地震力を受けると、フレーム架構2とその内部のブレース3とに水平方向おける一方および他方への繰り返しの変位が生じる。これに伴ってブレース3が圧縮力および引張力を交互に受ける。このため、耐震装置16がX方向の圧縮力および引張力を交互に受ける。
【0073】
耐震装置16が圧縮力を受けると、
図4に示すように、楔材32Aが右方向の押込み外力Paを受け、楔材32Bが左方向の押込み外力Paを受ける。
【0074】
これにより、楔材32Aは、その右端楔形部52の平面52a,52bがそれぞれ上側の拘束材31の平面31d、下側の拘束材31の平面31dに沿って滑動するとともに、中央左側楔形部53の平面53a,53bがそれぞれ上側の拘束材31の平面31b、下側の拘束材31の平面31bに沿って滑動しつつ、右方向へ移動する。また、楔材32Bは、その左端楔形部51の平面51a,51bがそれぞれ上側の拘束材31の平面31e、下側の拘束材31の平面31eに沿って滑動しつつ、左方向へ移動する。
【0075】
これにより、上側の拘束材31が上方向へ移動するとともに、下側の拘束材31が下方向へ移動する。すなわち、2つの拘束材31が楔材32A,32BによりZ方向(上下方向)に押し開かれる。これにより、各鋼棒33が、ばね部材35および留付部材34を介して軸方向に引っ張られる。
【0076】
また、耐震装置16が引張力を受けると、
図5に示すように、楔材32Aが左方向の引抜き外力Pbを受け、楔材32Bが右方向の引抜き外力Pbを受ける。
【0077】
これにより、楔材32Aは、その左端楔形部51の平面51a,51bがそれぞれ上側の拘束材31の平面31a、下側の拘束材31の平面31aに沿って滑動するとともに、中央右側楔形部54の平面54a,54bがそれぞれ上側の拘束材31の平面31c、下側の拘束材31の平面31cに沿って滑動しつつ、左方向へ移動する。また、楔材32Bは、その右端楔形部52の平面52a,52bがそれぞれ上側の拘束材31の平面31f、下側の拘束材31の平面31fに沿って滑動しつつ、右方向へ移動する。
【0078】
これにより、耐震装置16が圧縮力を受けたときと同様に、2つの拘束材31が楔材32A,32BによりZ方向(上下方向)に押し開かれる。これにより、各鋼棒33が、ばね部材35および留付部材34を介して軸方向に引っ張られる。
【0079】
地震力により耐震構造1が設けられた建物に働く水平力が比較的小さい中規模以下の地震時には、耐震装置16は、ばね部材35のクリアランスがある状態で、ばね部材35の剛性により、押込み外力Paおよび引抜き外力Pbに抵抗する。これにより、耐震構造1が設けられた建物の変形が抑制される。
【0080】
中規模以下の地震時には、ブレース3に設置された耐震装置16によってブレース3の剛性を小さくすることにより、フレーム架構2にあえて変形を許容させることで、大規模な地震に対応するための余力を残すことができる。
【0081】
大規模な地震時には、ばね部材35が、そのクリアランスがなくなるまで圧縮され、耐震装置16が設けられたブレース3とフレーム架構2とが一体化する。この状態になると、耐震装置16は、鋼棒33の剛性により押込み外力Paおよび引抜き外力Pbに抵抗する。この状態では、鋼棒33に直接荷重がかかることで、ブレース3およびフレーム架構2の両方に荷重がかかるので、耐震構造1の剛性が増す。この結果、大規模な地震時でも、耐震構造1が設けられた建物の変形が抑制される。
【0082】
ここで、前述のように、楔材32Aの平面51a,52a,53a,54a、および楔材32Bの平面51a,52aは、すべて等しい傾斜角度αに形成されている。また、楔材32Aの平面51b,52b,53b,54b、および楔材32Bの平面51b,52bは、すべて等しい傾斜角度βに形成されている。これにより、楔材32A,32Bが2つの拘束材31を押し開く際に拘束材31が傾くことが抑えられ、耐震装置16が本来の剛性を発揮できなくなることが抑えられる。
【0083】
以上説明したように、耐震装置16では、楔材32Aは、左端楔形部51、右端楔形部52、中央左側楔形部53、および中央右側楔形部54を有し、楔材32Bは、左端楔形部51および右端楔形部52を有する。また、楔材32A,32Bに形成されている貫通孔32aは、楔材32A,32Bの鋼棒33に対するX方向の移動を許容する。これにより、耐震装置16は、圧縮力(押込み外力Pa)および引張力(引抜き外力Pb)の両方に対応できるので、片流れブレースに適用可能である。
【0084】
なお、楔材32Aの中央左側楔形部53および中央右側楔形部54を省略し、楔材32Aの2つの貫通孔32aの間における上側の面および下側の面をX方向に平行な平面としてもよい。また、楔材32Aを、楔材32Bを左右反転したものとしてもよい。また、楔材32Bを、楔材32Aを左右反転したものとしてもよい。また、楔材32A,32Bが、左端楔形部51および右端楔形部52以外に、中央左側楔形部53と同様の楔形部(第1および第2楔形部のうちの一方)と中央右側楔形部54と同様の楔形部(第1および第2楔形部のうちの他方)との組み合わせを複数有するものでもよい。
【0085】
また、鋼棒33の本数および配置は、耐震装置16で実現したい剛性に応じて変更可能である。すなわち、鋼棒33の本数および配置により、耐震装置16の剛性をコントロールできる。例えば、楔材32A,32Bのそれぞれに対してY方向(前後方向)に並んだ2本ずつの鋼棒33が貫通する構成としてもよい。
【0086】
また、ばね部材35の種類、材質、ばね部材35を各鋼棒33の上端部33aの留付部材34と拘束材31との間および下端部33bの留付部材34と拘束材31との間の両方に配置するかいずれかのみに配置するか、留付部材34と拘束材31との間に配置するばね部材35の数量等によっても、耐震装置16の剛性をコントロールできる。また、前述のように、楔材32A,32Bのテーパ角度によっても、耐震装置16の剛性をコントロールできる。
【0087】
また、上記のようにして耐震装置16の剛性を設定(コントロール)することで、耐震構造1の初期剛性を設定できる。すなわち、耐震構造1の剛性の設定が、耐震装置16の剛性を設定するだけで済むので、耐震構造1の剛性の設定を容易にすることができる。
【0088】
また、耐震装置16によれば、前述のように、フレーム架構2に大規模地震等の水平力に対応するための余力を残しつつ、小中規模の地震動に対しても低減した剛性を発揮することができる。
【0089】
また、上述した実施形態のフレーム架構2は、既存の建物に設けられたものでもよいし、新築の建物に設けられたものでもよい。耐震装置16によれば、既存のフレーム架構2等の構造体の耐力または新設のフレーム架構2に求められる耐力に合わせて、任意の変形量までは設計者の判断で低減した初期剛性を与えることが可能であり、過大な変形に対してはブレース3とフレーム架構2が一体となって抵抗できる。
【0090】
(第2実施形態)
図6(a)は、第2実施形態に係る耐震装置の正面図である。
図6(b)は、第2実施形態に係る耐震装置の側面図である。
図7は、
図6(a)のB-B線に沿った要部断面図である。
【0091】
図6、
図7に示すように、第2実施形態に係る耐震装置16Aは、上述した第1実施形態の耐震装置16に対し、2つの拘束材31を2つの拘束材61に置き換え、楔材32A,32Bを楔材62に置き換え、2本の鋼棒33、4つの留付部材34、および4つのばね部材35を省略した構成である。耐震装置16Aは、第1実施形態の耐震装置16と同様に、建物のフレーム架構2内に配置された片流れブレースであるブレース3の2つの鉄骨ブレース材15の間に配置されている。
【0092】
2つの拘束材61は、Z方向(上下方向)において互いに対向して配置され、楔材62を挟持する鋼製の部材である。なお、2つの拘束材61の一方が第1拘束材、他方が第2拘束材に相当する。
【0093】
拘束材61は、X方向に並んで配置され、X方向に対して傾斜した平面61a,61bを有する。2つの拘束材61は、Z方向において平面61a,61bが形成されている側を互いに対向させて配置されている。
【0094】
平面61a,61bはそれぞれ、後述する楔材62の左端楔形部71、右端楔形部72に接する平面である。
【0095】
上側の拘束材61の平面61a,61bの傾斜角度は、後述する左端楔形部71の平面71a、右端楔形部72の平面72aの傾斜角度αと等しい。ここで、上側の拘束材61の平面61a,61bの傾斜角度は、第1実施形態における上側の拘束材31の平面31a~31fの傾斜角度と同様のものであり、上側の拘束材61の平面61a,61bのそれぞれが上側においてX方向となす角度である。
【0096】
下側の拘束材61の平面61a,61bの傾斜角度は、後述する左端楔形部71の平面71b、右端楔形部72の平面72bの傾斜角度βと等しい。ここで、下側の拘束材61の平面61a,61bの傾斜角度は、第1実施形態における下側の拘束材31の平面31a~31fの傾斜角度と同様のものであり、下側の拘束材61の平面61a,61bのそれぞれが下側においてX方向となす角度である。
【0097】
拘束材61には、鋼棒33を貫通させる貫通孔61cが形成されている。貫通孔61cは、鋼棒33よりわずかに大きい直径を有し、鋼棒33に対する拘束材61のX方向の移動を許容しない。貫通孔61cは、Y方向においては、拘束材61の中央位置に形成されている。
【0098】
拘束材61は、X方向における一方側の端(右端)がベースプレート66に固定されている。2つのベースプレート66のうちの一方に上側の拘束材61が接続され、他方に下側の拘束材61が接続されている。
【0099】
ベースプレート66は、2つのボルト67により、一方の鉄骨ブレース材15に取り付けられている。ベースプレート66には、上下方向に細長い2つの長穴66aが形成されており、長穴66aにボルト67が通される。ベースプレート66は、油膜(図示せず)を介して鉄骨ブレース材15に接しており、上下動可能になっている。これにより、拘束材61が、ベースプレート66を介して上下動可能に鉄骨ブレース材15に取り付けられている。
【0100】
楔材62は、Z方向において2つの拘束材61に挟まれた鋼製の部材である。楔材62の左端には、ベース部41が接続されている。楔材62は、ベース部41を介して、他方の鉄骨ブレース材15に取り付けられている。
【0101】
楔材62は、左端楔形部71と、右端楔形部72とを有する。
【0102】
左端楔形部71は、楔材62の左端部に配置されている。左端楔形部71は、第1実施形態における左端楔形部51と同様に、X方向において左側に向かうほど上下方向(Z方向)における幅が狭くなるように形成されている。左端楔形部71は、上側の拘束材61に接する平面71aと、下側の拘束材61に接する平面71bとを有する。
【0103】
右端楔形部72は、楔材62の右端部に配置されている。右端楔形部72は、第1実施形態における右端楔形部52と同様に、X方向において右側に向かうほど上下方向(Z方向)における幅が狭くなるように形成されている。右端楔形部72は、左端楔形部71を左右反転した形状に形成されている。右端楔形部72は、上側の拘束材61に接する平面72aと、下側の拘束材61に接する平面72bとを有する。
【0104】
左端楔形部71の平面71aと右端楔形部72の平面72aとは、互いに等しい傾斜角度αに形成されている。また、左端楔形部71の平面71bと右端楔形部72の平面72bとは、互いに等しい傾斜角度βに形成されている。平面71a,72aの傾斜角度αと平面71b,72bの傾斜角度βとが同じ角度であってもよい。
【0105】
ここで、平面71a,72aの傾斜角度αは、平面71a,72aが下側においてX方向となす角度である。また、平面71b,72bの傾斜角度βは、平面71b,72bが上側においてX方向となす角度である。
【0106】
左端楔形部71および右端楔形部72のテーパ角度(α+β)は、第1実施形態における左端楔形部51等と同様に、例えば、30度~60度とすることができる。
【0107】
ここで、耐震装置16Aでも、第1実施形態の耐震装置16と同様に、楔材62のテーパ角度により、耐震装置16Aの剛性(変位の大きさに対する荷重の大きさ)をコントロールできる。
【0108】
なお、左端楔形部71および右端楔形部72に油膜(摩擦を低減、またはなくすもの)を塗布してもよい。
【0109】
なお、左端楔形部71および右端楔形部72の一方が第1楔形部、他方が第2楔形部に相当する。
【0110】
楔材62には、鋼棒33を貫通させる貫通孔62aが形成されている。
【0111】
貫通孔62aは、楔材62の拘束材61および鋼棒33に対するX方向の移動を許容し、楔材62が外力を受けて移動しても、X方向において貫通孔62aの内壁面が鋼棒33に接触しないような十分な大きさに形成されている。
【0112】
貫通孔62aは、第1実施形態における貫通孔32aと同様に、例えば、平面視にて(Z方向から見て)、X方向(左右方向)に細長い長円形に形成されている。なお、貫通孔62aの平面視形状は、長円形に限らず、円形、長方形等でもよい。
【0113】
貫通孔62aは、楔材62がX方向の外力を受けていない初期状態において、X方向における貫通孔62aの中央位置と鋼棒33の中心軸の位置とが一致する位置に形成されている。
【0114】
鋼棒33は、上側の拘束材61、楔材62、および下側の拘束材61を貫通している。鋼棒33の上端部33aは上側の拘束材61から上方に突出し、下端部33bは下側の拘束材61から下方に突出している。
【0115】
留付部材34は、鋼棒33の上端部33aおよび下端部33bに取り付けられている。鋼棒33の上端部33aに取り付けられた留付部材34は、ばね部材35を介して、上側の拘束材61を楔材62に留め付ける。また、鋼棒33の下端部33bに取り付けられた留付部材34は、ばね部材35を介して、下側の拘束材61を楔材62に留め付ける。
【0116】
なお、耐震装置16Aにおける鋼棒33の上端部33aの留付部材34および下端部33bの留付部材34のうちの一方が一端留付部材に相当し、他方が他端留付部材に相当する。
【0117】
ばね部材35は、拘束材61と留付部材34との間に、鋼棒33が挿通されて配置されている。ばね部材35は、拘束材61と留付部材34との間で、被圧縮状態で留め置かれている。これにより、上側の拘束材61、楔材62、および下側の拘束材61が、被圧縮状態にあるばね部材35のばね力(復元力)により互いに接する状態におかれている。
【0118】
なお、鋼棒33の下端部33bの留付部材34と下側の拘束材61との間のばね部材35を省略し、鋼棒33の上端部33aの留付部材34と上側の拘束材61との間のみにばね部材35を配置してもよい。また、鋼棒33の上端部33aの留付部材34と上側の拘束材61との間のばね部材35を省略し、鋼棒33の下端部33bの留付部材34と下側の拘束材61との間のみにばね部材35を配置してもよい。鋼棒33の上端部33aの留付部材34と上側の拘束材61との間、および鋼棒33の下端部33bの留付部材34と下側の拘束材61との間の少なくともいずれか一方にばね部材35が配置されていればよい。
【0119】
また、第1実施形態と同様に、留付部材34と拘束材61との間に複数のばね部材35を重ねて配置してもよい。
【0120】
次に、耐震装置16Aの作用について説明する。
【0121】
地震により耐震装置16Aが圧縮力を受けると、
図8に示すように、楔材62が右方向の押込み外力Paを受ける。
【0122】
これにより、楔材62は、その右端楔形部72の平面72a,72bがそれぞれ上側の拘束材61の平面61b、下側の拘束材61の平面61bに沿って滑動しつつ、拘束材61に対して右方向へ移動する。
【0123】
これにより、2つの拘束材61が楔材62によりZ方向(上下方向)に押し開かれる。これにより、鋼棒33が、ばね部材35および留付部材34を介して軸方向に引っ張られる。
【0124】
また、耐震装置16Aが引張力を受けると、
図9に示すように、楔材62が左方向の引抜き外力Pbを受ける。
【0125】
これにより、楔材62は、その左端楔形部71の平面71a,71bがそれぞれ上側の拘束材61の平面61a、下側の拘束材61の平面61aに沿って滑動しつつ、拘束材61に対して左方向へ移動する。
【0126】
これにより、耐震装置16Aが圧縮力を受けたときと同様に、2つの拘束材61が楔材62によりZ方向(上下方向)に押し開かれる。これにより、鋼棒33が、ばね部材35および留付部材34を介して軸方向に引っ張られる。
【0127】
耐震装置16Aでも第1実施形態の耐震装置16と同様に、中規模以下の地震時には、ばね部材35のクリアランスがある状態で、ばね部材35の剛性により、押込み外力Paおよび引抜き外力Pbに抵抗する。これにより、耐震構造1が設けられた建物の変形が抑制される。
【0128】
中規模以下の地震時には、ブレース3に設置された耐震装置16Aによってブレース3の剛性を小さくすることにより、フレーム架構2にあえて変形を許容させることで、大規模な地震に対応するための余力を残すことができる。
【0129】
また、大規模な地震時には、耐震装置16Aでも第1実施形態の耐震装置16と同様に、ばね部材35が、そのクリアランスがなくなるまで圧縮され、耐震装置16Aが設けられたブレース3とフレーム架構2とが一体化する。この状態になると、耐震装置16Aは、鋼棒33の剛性により押込み外力Paおよび引抜き外力Pbに抵抗する。この状態では、鋼棒33に直接荷重がかかることで、ブレース3およびフレーム架構2の両方に荷重がかかるので、耐震構造1の剛性が増す。この結果、大規模な地震時でも、耐震構造1が設けられた建物の変形が抑制される。
【0130】
以上説明したように、耐震装置16Aでも第1実施形態の耐震装置16と同様に、圧縮力(押込み外力Pa)および引張力(引抜き外力Pb)の両方に対応できるので、片流れブレースに適用可能である。
【0131】
なお、楔材62が、左端楔形部71および右端楔形部72以外に、第1実施形態の中央左側楔形部53と同様の楔形部(第1および第2楔形部のうちの一方)と中央右側楔形部54と同様の楔形部(第1および第2楔形部のうちの他方)との組み合わせを1つまたは複数有するものでもよい。
【0132】
また、耐震装置16Aでも第1実施形態の耐震装置16と同様に、鋼棒33の本数および配置は、耐震装置16Aで実現したい剛性に応じて変更可能である。すなわち、鋼棒33の本数および配置により、耐震装置16の剛性をコントロールできる。
【0133】
また、耐震装置16Aでも第1実施形態の耐震装置16と同様に、ばね部材35の種類、材質、ばね部材35を鋼棒33の上端部33aの留付部材34と拘束材61との間および下端部33bの留付部材34と拘束材61との間の両方に配置するかいずれかのみに配置するか、留付部材34と拘束材61との間に配置するばね部材35の数量等によっても、耐震装置16Aの剛性をコントロールできる。また、楔材62のテーパ角度によっても、耐震装置16Aの剛性をコントロールできる。
【0134】
また、耐震装置16Aでも第1実施形態の耐震装置16と同様に、上記のようにして耐震装置16Aの剛性を設定(コントロール)することで、耐震構造1の初期剛性を設定できる。すなわち、耐震構造1の剛性の設定が、耐震装置16Aの剛性を設定するだけで済むので、耐震構造1の剛性の設定を容易にすることができる。
【0135】
また、耐震装置16Aでも第1実施形態の耐震装置16と同様に、フレーム架構2に大規模地震等の水平力に対応するための余力を残しつつ、小中規模の地震動に対しても低減した剛性を発揮することができる。
【0136】
また、耐震装置16Aでも第1実施形態の耐震装置16と同様に、既存のフレーム架構2等の構造体の耐力または新設のフレーム架構2に求められる耐力に合わせて、任意の変形量までは設計者の判断で低減した初期剛性を与えることが可能であり、過大な変形に対してはブレース3とフレーム架構2が一体となって抵抗できる。
【0137】
(第3実施形態)
図10は、第3実施形態に係る耐震装置の正面図である。
図11は、第3実施形態に係る耐震装置の側面図である。
図12は、
図10のC-C線に沿った要部断面図である。
【0138】
図10~
図12に示すように、第3実施形態に係る耐震装置76は、2つの拘束材81と、楔材82A,82Bと、8本の鋼棒33と、16個の留付部材34と、16個のばね部材35とを備える。耐震装置76は、第1実施形態の耐震装置16と同様に、建物のフレーム架構2内に配置された片流れブレースであるブレース3の2つの鉄骨ブレース材15の間に配置されている。
【0139】
2つの拘束材81は、Z方向(上下方向)において互いに対向して配置され、楔材82A,82Bを挟持する鋼製の部材である。なお、2つの拘束材81の一方が第1拘束材、他方が第2拘束材に相当する。
【0140】
拘束材81は、X方向に並んで配置され、X方向に対して傾斜した平面81a,81b,81c,81d,81e,81f,81g,81hを有する。2つの拘束材81は、Z方向において平面81a~81hが形成されている側を互いに対向させて配置されている。
【0141】
平面81a~81dはそれぞれ、後述する楔材82Aの左端楔形部91、中央左側楔形部93、中央右側楔形部94、右端楔形部92に接する平面である。平面81e~81hはそれぞれ、後述する楔材82Bの左端楔形部91、中央左側楔形部93、中央右側楔形部94、右端楔形部92に接する平面である。
【0142】
上側の拘束材81の平面81a~81hの傾斜角度は、後述する左端楔形部91の平面91a、右端楔形部92の平面92a、中央左側楔形部93の平面93a、および中央右側楔形部94の平面94aの傾斜角度αと等しい。ここで、上側の拘束材81の平面81a~81hの傾斜角度は、第1実施形態における上側の拘束材31の平面31a~31fの傾斜角度と同様のものであり、上側の拘束材81の平面81a~81hのそれぞれが上側においてX方向となす角度である。
【0143】
下側の拘束材81の平面81a~81fの傾斜角度は、後述する左端楔形部91の平面91b、右端楔形部92の平面92b、中央左側楔形部93の平面93b、および中央右側楔形部94の平面94bの傾斜角度βと等しい。ここで、下側の拘束材81の平面81a~81hの傾斜角度は、第1実施形態における下側の拘束材31の平面31a~31fの傾斜角度と同様のものであり、下側の拘束材81の平面81a~81fのそれぞれが下側においてX方向となす角度である。
【0144】
拘束材81には、それぞれ鋼棒33を貫通させる8つの貫通孔81iが形成されている。貫通孔81iは、鋼棒33よりわずかに大きい直径を有し、鋼棒33に対する拘束材81の移動を許容しない。それぞれ4つの貫通孔81iがX方向に並ぶ2つの列が、拘束材81の幅方向であるY方向において、楔材82A,82Bを挟んで互いに離間して配置されている。すなわち、それぞれX方向に並ぶ4つの貫通孔81iからなる2つの列のうちの一方の列は楔材82A,82Bより前側に配置され、他方の列は楔材82A,82Bより後側に配置されている。X方向の各列おいて、4つの貫通孔81iは、平面81a,81b間、平面81c,81d間、平面81e,81f間、平面81g,81h間に1つずつ形成されている。
【0145】
楔材82A,82Bは、Z方向において2つの拘束材81に挟まれ、X方向に沿って互いに間隔を空けて配置された鋼製の部材である。なお、楔材82A,82Bの一方が第1楔材、他方が第2楔材に相当する。
【0146】
楔材82A,82Bは、耐震装置76がX方向の圧縮力を受けることで、互いに近づくようにそれぞれが拘束材81に対して相対的に移動しても、互いに接触はしない十分な間隔で配置されている。
【0147】
楔材82A,82Bは、Y方向(拘束材81の幅方向)において、拘束材81よりも幅が小さい。楔材82A,82Bは、Y方向における拘束材81の中央位置に配置されている。
【0148】
楔材82Aの左端、および楔材82Bの右端には、それぞれベース部86が接続されている。ベース部86は、耐震装置76を鉄骨ブレース材15に接続するためのものである。
【0149】
楔材82A,82Bはそれぞれ、左端楔形部91と、右端楔形部92と、中央左側楔形部93と、中央右側楔形部94とを有する。
【0150】
左端楔形部91は、楔材82A,82Bの左端部に配置されている。左端楔形部91は、X方向において右側に向かうほど上下方向(Z方向)における幅が狭くなるように形成されている。左端楔形部91は、上側の拘束材81に接する平面91aと、下側の拘束材81に接する平面91bとを有する。
【0151】
右端楔形部92は、楔材82A,82Bの右端部に配置されている。右端楔形部92は、X方向において左側に向かうほど上下方向(Z方向)における幅が狭くなるように形成されている。右端楔形部92は、左端楔形部91を左右反転した形状に形成されている。右端楔形部92は、上側の拘束材81に接する平面92aと、下側の拘束材81に接する平面92bとを有する。
【0152】
中央左側楔形部93は、X方向において左端楔形部91と右端楔形部92との間の楔材82A,82Bの中央部の左側に配置されている。中央左側楔形部93は、上側の拘束材81に接する平面93aと、下側の拘束材81に接する平面93bとを有する。中央左側楔形部93は、右端楔形部92と同じ形状に形成されている。
【0153】
中央右側楔形部94は、X方向において左端楔形部91と右端楔形部92との間の楔材82A,82Bの中央部の右側に配置されている。中央右側楔形部94は、上側の拘束材81に接する平面94aと、下側の拘束材81に接する平面94bとを有する。中央右側楔形部94は、左端楔形部91と同じ形状に形成されている。
【0154】
上述のように、左端楔形部91と中央右側楔形部94とは同じ形状であり、右端楔形部92および中央左側楔形部93は、左端楔形部91および中央右側楔形部94を左右反転した形状である。このため、左端楔形部91の平面91a、右端楔形部92の平面92a、中央左側楔形部93の平面93a、および中央右側楔形部94の平面94aは、すべて等しい傾斜角度αに形成されている。また、左端楔形部91の平面91b、右端楔形部92の平面92b、中央左側楔形部93の平面93b、および中央右側楔形部94の平面94bは、すべて等しい傾斜角度βに形成されている。平面91a~94aの傾斜角度αと平面91b~94bの傾斜角度βとが同じ角度であってもよい。
【0155】
ここで、平面91a~94aの傾斜角度αは、平面91a~94aが下側においてX方向となす角度である。また、平面91b~94bの傾斜角度βは、平面91b~94bが上側においてX方向となす角度である。
【0156】
左端楔形部91、右端楔形部92、中央左側楔形部93、および中央右側楔形部94のテーパ角度(α+β)は、第1実施形態における左端楔形部51等と同様に、例えば、30度~60度とすることができる。なお、上述の左端楔形部91、右端楔形部92、中央左側楔形部93、および中央右側楔形部94のテーパ角度(α+β)を、楔材82A,82Bのテーパ角度とも称する。
【0157】
ここで、耐震装置76でも、第1実施形態の耐震装置16と同様に、楔材82A,82Bのテーパ角度により、耐震装置76の剛性(変位の大きさに対する荷重の大きさ)をコントロールできる。
【0158】
なお、左端楔形部91、右端楔形部92、中央左側楔形部93、および中央右側楔形部94に油膜(摩擦を低減、またはなくすもの)を塗布してもよい。
【0159】
なお、左端楔形部91および右端楔形部92の一方が第1楔形部、他方が第2楔形部に相当する。また、中央左側楔形部93および中央右側楔形部94の一方が第1楔形部、他方が第2楔形部に相当する。
【0160】
鋼棒33は、上側の拘束材81の貫通孔81iおよび下側の拘束材81の貫通孔81iに通され、2つの拘束材81を貫通している。鋼棒33の上端部33aは上側の拘束材81から上方に突出し、下端部33bは下側の拘束材81から下方に突出している。
【0161】
拘束材81の幅方向であるY方向において、8本の鋼棒33のうちの4本は楔材82A,82Bより前側に配置され、残りの4本は楔材82A,82Bより後側に配置されている。
【0162】
なお、楔材82A,82Bより前側に配置された各鋼棒33、および楔材82A,82Bより後側に配置された各鋼棒33のうちの一方が第1鋼棒に相当し、他方が第2鋼棒に相当する。
【0163】
留付部材34は、各鋼棒33の上端部33aおよび下端部33bに取り付けられている。各鋼棒33の上端部33aに取り付けられた各留付部材34は、ばね部材35を介して、上側の拘束材81を楔材82A,82Bに留め付ける。また、各鋼棒33の下端部33bに取り付けられた各留付部材34は、ばね部材35を介して、下側の拘束材81を楔材82A,82Bに留め付ける。
【0164】
なお、楔材82A,82Bより前側に配置された各鋼棒33、および楔材82A,82Bより後側に配置された各鋼棒33のうちの一方における、鋼棒33の上端部33aの留付部材34および下端部33bの留付部材34のうちの一方が第1一端留付部材に相当し、他方が第1他端留付部材に相当する。楔材82A,82Bより前側に配置された各鋼棒33、および楔材82A,82Bより後側に配置された各鋼棒33のうちの他方における、鋼棒33の上端部33aの留付部材34および下端部33bの留付部材34のうちの一方が第2一端留付部材に相当し、他方が第2他端留付部材に相当する。
【0165】
ばね部材35は、拘束材81と留付部材34との間に、鋼棒33が挿通されて配置されている。ばね部材35は、拘束材81と留付部材34との間で、被圧縮状態で留め置かれている。これにより、上側の拘束材81、楔材82A,82B、および下側の拘束材81が、被圧縮状態にあるばね部材35のばね力(復元力)により互いに接する状態におかれている。
【0166】
なお、第1実施形態と同様に、各鋼棒33の下端部33bの留付部材34と下側の拘束材81との間のばね部材35を省略し、各鋼棒33の上端部33aの留付部材34と上側の拘束材81との間のみにばね部材35を配置してもよい。また、各鋼棒33の上端部33aの留付部材34と上側の拘束材81との間のばね部材35を省略し、各鋼棒33の下端部33bの留付部材34と下側の拘束材81との間のみにばね部材35を配置してもよい。
【0167】
また、第1実施形態と同様に、留付部材34と拘束材81との間に複数のばね部材35を重ねて配置してもよい。
【0168】
次に、耐震装置76の作用について説明する。
【0169】
地震により耐震装置76が圧縮力を受けると、
図13に示すように、楔材82Aが右方向の押込み外力Paを受け、楔材82Bが左方向の押込み外力Paを受ける。
【0170】
これにより、楔材82Aは、その左端楔形部91の平面91a,91bがそれぞれ上側の拘束材81の平面81a、下側の拘束材81の平面81aに沿って滑動するとともに、中央右側楔形部94の平面94a,94bがそれぞれ上側の拘束材81の平面81c、下側の拘束材81の平面81cに沿って滑動しつつ、右方向へ移動する。
【0171】
また、楔材82Bは、その右端楔形部92の平面92a,92bがそれぞれ上側の拘束材81の平面81h、下側の拘束材81の平面81hに沿って滑動するとともに、中央左側楔形部93の平面93a,93bがそれぞれ上側の拘束材81の平面81f、下側の拘束材81の平面81fに沿って滑動しつつ、左方向へ移動する。
【0172】
これにより、上側の拘束材81が上方向へ移動するとともに、下側の拘束材81が下方向へ移動する。すなわち、2つの拘束材81が楔材82A,82BによりZ方向(上下方向)に押し開かれる。これにより、各鋼棒33が、ばね部材35および留付部材34を介して軸方向に引っ張られる。
【0173】
また、耐震装置76が引張力を受けると、
図14に示すように、楔材82Aが左方向の引抜き外力Pbを受け、楔材82Bが右方向の引抜き外力Pbを受ける。
【0174】
これにより、楔材82Aは、その中央左側楔形部93の平面93a,93bがそれぞれ上側の拘束材81の平面81b、下側の拘束材81の平面81bに沿って滑動するとともに、右端楔形部92の平面92a,92bがそれぞれ上側の拘束材81の平面81d、下側の拘束材81の平面81dに沿って滑動しつつ、左方向へ移動する。
【0175】
また、楔材82Bは、その中央右側楔形部94の平面94a,94bがそれぞれ上側の拘束材81の平面81g、下側の拘束材81の平面81gに沿って滑動するとともに、左端楔形部91の平面91a,91bがそれぞれ上側の拘束材81の平面81e、下側の拘束材81の平面81eに沿って滑動しつつ、右方向へ移動する。
【0176】
これにより、耐震装置76が圧縮力を受けたときと同様に、2つの拘束材81が楔材82A,82BによりZ方向(上下方向)に押し開かれる。これにより、各鋼棒33が、ばね部材35および留付部材34を介して軸方向に引っ張られる。
【0177】
耐震装置76でも第1実施形態の耐震装置16と同様に、中規模以下の地震時には、ばね部材35のクリアランスがある状態で、ばね部材35の剛性により、押込み外力Paおよび引抜き外力Pbに抵抗する。これにより、耐震構造1が設けられた建物の変形が抑制される。
【0178】
中規模以下の地震時には、ブレース3に設置された耐震装置76によってブレース3の剛性を小さくすることにより、フレーム架構2にあえて変形を許容させることで、大規模な地震に対応するための余力を残すことができる。
【0179】
また、大規模な地震時には、耐震装置76でも第1実施形態の耐震装置16と同様に、ばね部材35が、そのクリアランスがなくなるまで圧縮され、耐震装置76が設けられたブレース3とフレーム架構2とが一体化する。この状態になると、耐震装置76は、鋼棒33の剛性により押込み外力Paおよび引抜き外力Pbに抵抗する。この状態では、鋼棒33に直接荷重がかかることで、ブレース3およびフレーム架構2の両方に荷重がかかるので、耐震構造1の剛性が増す。この結果、大規模な地震時でも、耐震構造1が設けられた建物の変形が抑制される。
【0180】
ここで、前述のように、楔材82A,82Bの平面91a,92a,93a,94aは、すべて等しい傾斜角度αに形成されている。また、楔材82A,82Bの平面91b,92b,93b,94bは、すべて等しい傾斜角度βに形成されている。これにより、耐震装置76でも第1実施形態の耐震装置16と同様に、楔材82A,82Bが2つの拘束材81を押し開く際に拘束材81が傾くことが抑えられ、耐震装置76が本来の剛性を発揮できなくなることが抑えられる。
【0181】
以上説明したように、耐震装置76でも第1実施形態の耐震装置16と同様に、圧縮力(押込み外力Pa)および引張力(引抜き外力Pb)の両方に対応できるので、片流れブレースに適用可能である。
【0182】
また、耐震装置76では、鋼棒33は、楔材82A,82Bより前側と後側とに配置され、楔材82A,82Bを貫通しないため、Y方向(拘束材81の幅方向)における楔材82A,82Bの幅を小さくすることができる。このため、耐震装置76の軽量化を実現できる。
【0183】
なお、楔材82Aの中央左側楔形部93および中央右側楔形部94を省略し、左端楔形部91と右端楔形部92との間における上側の面および下側の面をX方向に平行な平面としてもよい。また、左端楔形部91および右端楔形部92を省略してもよい。楔材82Bについても同様である。
【0184】
また、楔材82Aが、左端楔形部91および右端楔形部92以外に、中央左側楔形部93と同様の楔形部(第1および第2楔形部のうちの一方)と中央右側楔形部94と同様の楔形部(第1および第2楔形部のうちの他方)との組み合わせを複数有するものでもよい。楔材82Bについても同様である。
【0185】
また、上述した耐震装置76では、X方向においては、鋼棒33を、拘束材81の平面81a,81b間、平面81c,81d間、平面81e,81f間、および平面81g,81h間に配置した。換言すれば、X方向においては、楔材82A,82Bのそれぞれの、左端楔形部91と中央左側楔形部93との間および中央右側楔形部94と右端楔形部94との間に鋼棒33を配置した。しかし、X方向における鋼棒33の本数および配置はこれに限らない。
【0186】
鋼棒33の本数および配置は、耐震装置76でも第1実施形態の耐震装置16と同様に、実現したい剛性に応じて変更可能である。すなわち、鋼棒33の本数および配置により、耐震装置76の剛性をコントロールできる。耐震装置76では、鋼棒33が楔材82A,82Bを貫通せず、楔材を貫通する場合であれば楔材に設けられる貫通穴の位置に影響されないため、鋼棒33の本数および配置の設計の自由度を高めることができる。
【0187】
また、耐震装置76でも第1実施形態の耐震装置16と同様に、ばね部材35の種類、材質、ばね部材35を各鋼棒33の上端部33aの留付部材34と拘束材81との間および下端部33bの留付部材34と拘束材81との間の両方に配置するかいずれかのみに配置するか、留付部材34と拘束材81との間に配置するばね部材35の数量等によっても、耐震装置76の剛性をコントロールできる。また、前述のように、楔材82A,82Bのテーパ角度によっても、耐震装置76の剛性をコントロールできる。
【0188】
また、耐震装置76でも第1実施形態の耐震装置16と同様に、上記のようにして耐震装置76の剛性を設定(コントロール)することで、耐震構造1の初期剛性を設定できる。すなわち、耐震構造1の剛性の設定が、耐震装置76の剛性を設定するだけで済むので、耐震構造1の剛性の設定を容易にすることができる。
【0189】
また、耐震装置76でも第1実施形態の耐震装置16と同様に、架構2に大規模地震等の水平力に対応するための余力を残しつつ、小中規模の地震動に対しても低減した剛性を発揮することができる。
【0190】
また、耐震装置76でも第1実施形態の耐震装置16と同様に、既存のフレーム架構2等の構造体の耐力または新設のフレーム架構2に求められる耐力に合わせて、任意の変形量までは設計者の判断で低減した初期剛性を与えることが可能であり、過大な変形に対してはブレース3とフレーム架構2が一体となって抵抗できる。
【0191】
(第4実施形態)
図15は、第4実施形態に係る耐震装置の正面図である。
図16は、第4実施形態に係る耐震装置の側面図である。
図17は、
図15のD-D線に沿った要部断面図である。
【0192】
図15~
図17に示すように、第4実施形態に係る耐震装置76Aは、上述した第3実施形態の耐震装置76に対し、2つの拘束材81を2つの拘束材101に置き換え、楔材82B、4本の鋼棒33、8つの留付部材34、および8つのばね部材35を省略した構成である。耐震装置76Aは、第1実施形態の耐震装置16と同様に、建物のフレーム架構2内に配置された片流れブレースであるブレース3の2つの鉄骨ブレース材15の間に配置されている。
【0193】
2つの拘束材101は、Z方向(上下方向)において互いに対向して配置され、楔材82Aを挟持する鋼製の部材である。なお、2つの拘束材101の一方が第1拘束材、他方が第2拘束材に相当する。
【0194】
拘束材101は、X方向に並んで配置され、X方向に対して傾斜した平面101a,101b,101c,101dを有する。2つの拘束材101は、Z方向において平面101a~101dが形成されている側を互いに対向させて配置されている。
【0195】
平面101a~101dはそれぞれ、楔材82Aの左端楔形部91、中央左側楔形部93、中央右側楔形部94、右端楔形部92に接する平面である。
【0196】
上側の拘束材101の平面101a~101dの傾斜角度は、左端楔形部91の平面91a、右端楔形部92の平面92a、中央左側楔形部93の平面93a、および中央右側楔形部94の平面94aの傾斜角度αと等しい。ここで、上側の拘束材101の平面101a~101dの傾斜角度は、第1実施形態における上側の拘束材31の平面31a~31fの傾斜角度と同様のものであり、上側の拘束材101の平面101a~101dのそれぞれが上側においてX方向となす角度である。
【0197】
下側の拘束材101の平面101a~101dの傾斜角度は、左端楔形部91の平面91b、右端楔形部92の平面92b、中央左側楔形部93の平面93b、および中央右側楔形部94の平面94bの傾斜角度βと等しい。ここで、下側の拘束材101の平面101a~101dの傾斜角度は、第1実施形態における下側の拘束材31の平面31a~31fの傾斜角度と同様のものであり、下側の拘束材101の平面101a~101dのそれぞれが下側においてX方向となす角度である。
【0198】
拘束材101には、それぞれ鋼棒33を貫通させる4つの貫通孔101eが形成されている。貫通孔101eは、鋼棒33よりわずかに大きい直径を有し、鋼棒33に対する拘束材101の移動を許容しない。それぞれ2つの貫通孔101eがX方向に並ぶ2つの列が、拘束材101の幅方向であるY方向において、楔材82Aを挟んで互いに離間して配置されている。すなわち、それぞれX方向に並ぶ2つの貫通孔101eからなる2つの列のうちの一方の列は楔材82Aより前側に配置され、他方の列は楔材82Aより後側に配置されている。X方向の各列おいて、2つの貫通孔101eは、平面101a,101b間、平面101c,101d間に1つずつ形成されている。
【0199】
拘束材101は、上述した第2実施形態の拘束材61と同様に、ベースプレート66を介して上下動可能に一方の鉄骨ブレース材15に取り付けられている。
【0200】
楔材82Aは、Z方向において2つの拘束材101に挟まれている。楔材82Aは、ベース部86を介して、他方の鉄骨ブレース材15に取り付けられている。
【0201】
鋼棒33は、上側の拘束材101の貫通孔101eおよび下側の拘束材101の貫通孔101eに通され、2つの拘束材101を貫通している。鋼棒33の上端部33aは上側の拘束材101から上方に突出し、下端部33bは下側の拘束材101から下方に突出している。
【0202】
拘束材101の幅方向であるY方向において、4本の鋼棒33のうちの2本は楔材82Aより前側に配置され、残りの2本は楔材82Aより後側に配置されている。
【0203】
なお、楔材82Aより前側に配置された各鋼棒33、および楔材82Aより後側に配置された各鋼棒33のうちの一方が第1鋼棒に相当し、他方が第2鋼棒に相当する。
【0204】
留付部材34は、各鋼棒33の上端部33aおよび下端部33bに取り付けられている。各鋼棒33の上端部33aに取り付けられた各留付部材34は、ばね部材35を介して、上側の拘束材101を楔材82Aに留め付ける。また、各鋼棒33の下端部33bに取り付けられた各留付部材34は、ばね部材35を介して、下側の拘束材101を楔材82Aに留め付ける。
【0205】
なお、楔材82Aより前側に配置された各鋼棒33、および楔材82Aより後側に配置された各鋼棒33のうちの一方における、鋼棒33の上端部33aの留付部材34および下端部33bの留付部材34のうちの一方が第1一端留付部材に相当し、他方が第1他端留付部材に相当する。楔材82Aより前側に配置された各鋼棒33、および楔材82Aより後側に配置された各鋼棒33のうちの他方における、鋼棒33の上端部33aの留付部材34および下端部33bの留付部材34のうちの一方が第2一端留付部材に相当し、他方が第2他端留付部材に相当する。
【0206】
ばね部材35は、拘束材101と留付部材34との間に、鋼棒33が挿通されて配置されている。ばね部材35は、拘束材101と留付部材34との間で、被圧縮状態で留め置かれている。これにより、上側の拘束材101、楔材82A、および下側の拘束材101が、被圧縮状態にあるばね部材35のばね力(復元力)により互いに接する状態におかれている。
【0207】
なお、第1実施形態と同様に、各鋼棒33の下端部33bの留付部材34と下側の拘束材101との間のばね部材35を省略し、各鋼棒33の上端部33aの留付部材34と上側の拘束材101との間のみにばね部材35を配置してもよい。また、各鋼棒33の上端部33aの留付部材34と上側の拘束材101との間のばね部材35を省略し、各鋼棒33の下端部33bの留付部材34と下側の拘束材101との間のみにばね部材35を配置してもよい。
【0208】
また、第1実施形態と同様に、留付部材34と拘束材101との間に複数のばね部材35を重ねて配置してもよい。
【0209】
次に、耐震装置76Aの作用について説明する。
【0210】
地震により耐震装置76Aが圧縮力を受けると、
図18に示すように、楔材82Aが右方向の押込み外力Paを受ける。
【0211】
これにより、楔材82Aは、その左端楔形部91の平面91a,91bがそれぞれ上側の拘束材101の平面101a、下側の拘束材101の平面101aに沿って滑動するとともに、中央右側楔形部94の平面94a,94bがそれぞれ上側の拘束材101の平面101c、下側の拘束材101の平面101cに沿って滑動しつつ、拘束材101に対して右方向へ移動する。
【0212】
これにより、2つの拘束材101が楔材82AによりZ方向(上下方向)に押し開かれる。これにより、各鋼棒33が、ばね部材35および留付部材34を介して軸方向に引っ張られる。
【0213】
また、耐震装置76Aが引張力を受けると、
図19に示すように、楔材82Aが左方向の引抜き外力Pbを受ける。
【0214】
これにより、楔材82Aは、その中央左側楔形部93の平面93a,93bがそれぞれ上側の拘束材101の平面101b、下側の拘束材101の平面101bに沿って滑動するとともに、右端楔形部92の平面92a,92bがそれぞれ上側の拘束材101の平面101d、下側の拘束材101の平面101dに沿って滑動しつつ、拘束材101に対して左方向へ移動する。
【0215】
これにより、耐震装置76Aが圧縮力を受けたときと同様に、2つの拘束材101が楔材82AによりZ方向(上下方向)に押し開かれる。これにより、各鋼棒33が、ばね部材35および留付部材34を介して軸方向に引っ張られる。
【0216】
耐震装置76Aでも第1実施形態の耐震装置16と同様に、中規模以下の地震時には、ばね部材35のクリアランスがある状態で、ばね部材35の剛性により、押込み外力Paおよび引抜き外力Pbに抵抗する。これにより、耐震構造1が設けられた建物の変形が抑制される。
【0217】
中規模以下の地震時には、ブレース3に設置された耐震装置76Aによってブレース3の剛性を小さくすることにより、フレーム架構2にあえて変形を許容させることで、大規模な地震に対応するための余力を残すことができる。
【0218】
また、大規模な地震時には、耐震装置76Aでも第1実施形態の耐震装置16と同様に、ばね部材35が、そのクリアランスがなくなるまで圧縮され、耐震装置76Aが設けられたブレース3とフレーム架構2とが一体化する。この状態になると、耐震装置76Aは、鋼棒33の剛性により押込み外力Paおよび引抜き外力Pbに抵抗する。この状態では、鋼棒33に直接荷重がかかることで、ブレース3およびフレーム架構2の両方に荷重がかかるので、耐震構造1の剛性が増す。この結果、大規模な地震時でも、耐震構造1が設けられた建物の変形が抑制される。
【0219】
以上説明したように、耐震装置76Aでも第1実施形態の耐震装置16と同様に、圧縮力(押込み外力Pa)および引張力(引抜き外力Pb)の両方に対応できるので、片流れブレースに適用可能である。
【0220】
また、耐震装置76Aでも第3実施形態の耐震装置76と同様に、Y方向(拘束材81の幅方向)における楔材82Aの幅を小さくすることができるため、耐震装置76Aの軽量化を実現できる。
【0221】
なお、耐震装置76Aでも第3実施形態の耐震装置76と同様に、楔材82Aの中央左側楔形部93および中央右側楔形部94を省略し、左端楔形部91と右端楔形部92との間における上側の面および下側の面をX方向に平行な平面としてもよい。また、左端楔形部91および右端楔形部92を省略してもよい。
【0222】
また、耐震装置76Aでも第3実施形態の耐震装置76と同様に、楔材82Aが、左端楔形部91および右端楔形部92以外に、中央左側楔形部93と同様の楔形部(第1および第2楔形部のうちの一方)と中央右側楔形部94と同様の楔形部(第1および第2楔形部のうちの他方)との組み合わせを複数有するものでもよい。
【0223】
また、上述した耐震装置76Aでは、X方向においては、鋼棒33を、拘束材101の平面101a,101b間および平面101c,101d間に配置した。換言すれば、X方向においては、楔材82Aの左端楔形部91と中央左側楔形部93との間および中央右側楔形部94と右端楔形部94との間に鋼棒33を配置した。しかし、X方向における鋼棒33の本数および配置はこれに限らない。
【0224】
鋼棒33の本数および配置は、耐震装置76Aでも第1実施形態の耐震装置16と同様に、実現したい剛性に応じて変更可能である。すなわち、鋼棒33の本数および配置により、耐震装置76Aの剛性をコントロールできる。耐震装置76Aでも第3実施形態の耐震装置76と同様に、鋼棒33が楔材82Aを貫通せず、楔材を貫通する場合であれば楔材に設けられる貫通穴の位置に影響されないため、鋼棒33の本数および配置の設計の自由度を高めることができる。
【0225】
また、耐震装置76Aでも第1実施形態の耐震装置16と同様に、ばね部材35の種類、材質、ばね部材35を各鋼棒33の上端部33aの留付部材34と拘束材101との間および下端部33bの留付部材34と拘束材101との間の両方に配置するかいずれかのみに配置するか、留付部材34と拘束材101との間に配置するばね部材35の数量等によっても、耐震装置76Aの剛性をコントロールできる。また、耐震装置76Aでも第1実施形態の耐震装置16と同様に、楔材82Aのテーパ角度によっても、耐震装置76Aの剛性をコントロールできる。
【0226】
また、耐震装置76Aでも第1実施形態の耐震装置16と同様に、上記のようにして耐震装置76Aの剛性を設定(コントロール)することで、耐震構造1の初期剛性を設定できる。すなわち、耐震構造1の剛性の設定が、耐震装置76Aの剛性を設定するだけで済むので、耐震構造1の剛性の設定を容易にすることができる。
【0227】
また、耐震装置76Aでも第1実施形態の耐震装置16と同様に、架構2に大規模地震等の水平力に対応するための余力を残しつつ、小中規模の地震動に対しても低減した剛性を発揮することができる。
【0228】
また、耐震装置76Aでも第1実施形態の耐震装置16と同様に、既存のフレーム架構2等の構造体の耐力または新設のフレーム架構2に求められる耐力に合わせて、任意の変形量までは設計者の判断で低減した初期剛性を与えることが可能であり、過大な変形に対してはブレース3とフレーム架構2が一体となって抵抗できる。
【0229】
本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合せてもよい。
【符号の説明】
【0230】
1 耐震構造
2 フレーム架構
3 ブレース
11 鉄骨柱
12 上部鉄骨梁
13 下部鉄骨梁
15 鉄骨ブレース材
16, 耐震装置
21,22 ガセットプレート
31,61 拘束材
31a~31f,61a,61b 平面
31g,61c 貫通孔
32A,32B 楔材
32a,62a 貫通孔
33 鋼棒
34 留付部材
35 ばね部材
41 ベース部
51,71 左端楔形部
51a~54a,51b~54b,71a,72a,71b,72b 平面
52,72 右端楔形部
53 中央左側楔形部
54 中央右側楔形部
66 ベースプレート
66a 長穴
67 ボルト
76,76A 耐震装置
81,101 拘束材
81a~81h,101a~101d 平面
81i,101e 貫通孔
82A,82B 楔材
86 ベース部
91 左端楔形部
91a~94a,91b~94b 平面
92 右端楔形部
93 中央左側楔形部
94 中央右側楔形部