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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024059065
(43)【公開日】2024-04-30
(54)【発明の名称】流路切替装置
(51)【国際特許分類】
   F16K 11/076 20060101AFI20240422BHJP
【FI】
F16K11/076 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023077987
(22)【出願日】2023-05-10
(31)【優先権主張番号】P 2022166109
(32)【優先日】2022-10-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000116574
【氏名又は名称】愛三工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 衛
(72)【発明者】
【氏名】河井 伸二
(72)【発明者】
【氏名】中島 一真
(72)【発明者】
【氏名】岩出 翔伍
(72)【発明者】
【氏名】栗田 昌直
【テーマコード(参考)】
3H067
【Fターム(参考)】
3H067AA13
3H067CC02
3H067DD03
3H067DD05
3H067DD12
3H067EA02
3H067EA15
3H067EA33
3H067EA38
3H067EA39
3H067FF11
3H067GG12
(57)【要約】
【課題】シール部材によるシール性を確保できる流路切替え装置を提供すること。
【解決手段】本開示の一態様は、ハウジング11の流入流路20と回転ディスク40の回
転ディスク連通路60と固定ディスク50の固定ディスク連通路70を連通させて流体が
流れる流路を形成する流路切替装置1において、回転ディスク40に設けられ、押圧力が
作用する状態でハウジング11や固定ディスク50に接触して流入流路20や固定ディス
ク連通路70と当該流入流路20や固定ディスク連通路70に連通する回転ディスク連通
路60との間を封止するシール部材81A,81Bを有し、回転ディスク40は、固定デ
ィスク50よりも高剛性である。
【選択図】図12
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つ設けられる固定部材と、
駆動部材と、を有し、
前記固定部材は、ポートを備え、
前記駆動部材は、連通路を備え、
前記固定部材のポートと前記駆動部材の連通路とを連通させて流体が流れる流路を形成する流路切替装置において、
前記駆動部材に設けられ、押圧力が作用する状態で前記固定部材に接触して前記固定部材のポートと当該固定部材のポートに連通する前記駆動部材の連通路との間を封止するシール部材を有し、
前記駆動部材は、少なくとも1つの前記固定部材よりも高剛性であること、
を特徴とする流路切替装置。
【請求項2】
請求項1の流路切替装置において、
前記固定部材として、第1固定部材と第2固定部材とを有し、
前記駆動部材は、前記第1固定部材と前記第2固定部材の間に配置され、
前記シール部材として、前記第1固定部材と前記駆動部材との間に設けられる第1シール部材と、前記駆動部材と前記第2固定部材との間に設けられる第2シール部材と、を有し、
前記駆動部材は、前記第2固定部材と前記第2シール部材を介して前記押圧力が作用する状態で前記第1固定部材と前記第2固定部材とにより挟持され、
前記第2固定部材のポートは、前記駆動部材を駆動させて前記流路のパターンを切り替えるときに前記第2シール部材が横切らない位置に配置されていること、
を特徴とする流路切替装置。
【請求項3】
請求項1または2の流路切替装置において、
前記固定部材のポートにおける前記駆動部材側の開口部の縁には、Rまたはテーパが形成されており、
前記Rの大きさまたは前記テーパの大きさは、前記開口部の縁における前記駆動部材の駆動方向の端部である第1端部にて、前記開口部の縁における前記駆動部材の駆動方向に直交する方向の端部である第2端部よりも大きく、前記第1端部から前記第2端部に向かうに連れて徐々に小さくなっていること、
を特徴とする流路切替装置。
【請求項4】
請求項1または2の流路切替装置において、
前記駆動部材を駆動させて前記流路のパターンを切り替えるときに、前記シール部材が前記固定部材のポートを横切る間は、前記駆動部材の駆動速度を通常の速度よりも遅い第1低速度にすること、
を特徴とする流路切替装置。
【請求項5】
請求項4の流路切替装置において、
前記駆動部材を駆動させて前記流路のパターンを切り替えるときに、前記シール部材が前記固定部材のポートを横切る状態から横切らない状態に移行する時に、前記駆動部材の駆動速度を前記第1低速度よりも遅い第2低速度にすること、
を特徴とする流路切替装置。
【請求項6】
請求項1または2の流路切替装置において、
前記固定部材のポートにおける前記駆動部材側の開口部の縁には、Rまたはテーパが形成されており、
前記Rの大きさまたは前記テーパの大きさは、前記開口部の縁における前記駆動部材の駆動方向の端部である第1端部にて、前記開口部の縁における前記駆動部材の駆動方向に直交する方向の端部である第2端部よりも大きく、
かつ、
前記第1端部および前記第2端部にて、前記開口部の縁の内周の半径、および、前記開口部の縁の外周の半径が、それぞれ、等しい、または、略等しいこと、
を特徴とする流路切替装置。
【請求項7】
請求項6の流路切替装置において、
前記開口部の縁の内周の半径をr1、前記開口部の縁の外周の半径をr2とするとき、前記第1端部における前記Rの大きさは、(r2-r1)よりも大きいこと、
を特徴とする流路切替装置。
【請求項8】
請求項1または2の流路切替装置において、
前記固定部材のポートにおける前記駆動部材側の開口部の縁の形状について、前記開口部の縁における前記駆動部材の駆動方向の端部である第1端部での曲率である第1開口曲率が、前記開口部の縁における前記駆動部材の駆動方向に直交する方向の端部である第2端部での曲率である第2開口曲率よりも小さいこと、
を特徴とする流路切替装置。
【請求項9】
請求項1または2の流路切替装置において、
前記固定部材のポートにおける前記駆動部材側の開口部の縁の形状について、前記開口部の縁における前記駆動部材の駆動方向の端部である第1端部に、前記駆動方向に直交するようにして直線状に形成される縁ストレート部が形成されていること、
を特徴とする流路切替装置。
【請求項10】
請求項1または2の流路切替装置において、
前記シール部材の形状について、前記駆動部材の駆動方向の端部に、前記駆動方向に直交するように、直線状に形成されるシール部材ストレート部、または、略直線状に形成されるシール部材略ストレート部が形成されていること、
を特徴とする流路切替装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、流体が流れる流路パターンを切り替える流路切替装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ロータが回転するときに、ロータに備わるロータシールがステータに摺動する流路切替バルブが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-144027号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示される流路切替バルブにおいて、ロータシールがステータ流路を横切るときに、ロータシールにて、ステータ流路内に解放されてステータに接触しない非接触部と、ステータに接触する接触部とが生じる。そのため、ロータシールにおける非接触部と接触部との境界部分にて、局所的に応力が発生するおそれがある。したがって、ロータシールの摩耗や亀裂が生じるおそれがあり、ロータシールによるシール性が低下するおそれがある。
【0005】
そこで、本開示は上記した課題を解決するためになされたものであり、シール部材によるシール性を確保できる流路切替装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するためになされた本開示の一形態は、少なくとも1つ設けられる固定部材と、駆動部材と、を有し、前記固定部材は、ポートを備え、前記駆動部材は、連通路を備え、前記固定部材のポートと前記駆動部材の連通路とを連通させて流体が流れる流路を形成する流路切替装置において、前記駆動部材に設けられ、押圧力が作用する状態で前記固定部材に接触して前記固定部材のポートと当該固定部材のポートに連通する前記駆動部材の連通路との間を封止するシール部材を有し、前記駆動部材は、少なくとも1つの前記固定部材よりも高剛性であること、を特徴とする。
【0007】
この態様によれば、駆動部材が高剛性であり変形し難いので、駆動部材に設けられるシール部材の姿勢が保持される。そのため、シール部材に局所的に応力が発生することを抑制できるので、シール部材の摩耗や亀裂の発生を抑制できる。したがって、シール部材によるシール性を確保できる。
【0008】
上記の態様においては、前記固定部材として、第1固定部材と第2固定部材とを有し、前記駆動部材は、前記第1固定部材と前記第2固定部材の間に配置され、前記シール部材として、前記第1固定部材と前記駆動部材との間に設けられる第1シール部材と、前記駆動部材と前記第2固定部材との間に設けられる第2シール部材と、を有し、前記駆動部材は、前記第2固定部材と前記第2シール部材を介して前記押圧力が作用する状態で前記第1固定部材と前記第2固定部材とにより挟持され、前記第2固定部材のポートは、前記駆動部材を駆動させて前記流路のパターンを切り替えるときに前記第2シール部材が横切らない位置に配置されていること、が好ましい。
【0009】
この態様によれば、駆動部材を駆動させて流路のパターンを切り替えるときに、第2シール部材が第2固定部材のポートを横切らない。そのため、第2固定部材が変形することを抑制できる。したがって、第2固定部材を薄肉化(低剛性化)できる。また、第2固定部材が変形することにより第2シール部材に局所的に応力が発生することを抑制できるので、第2シール部材の摩耗や亀裂の発生を抑制できる。ゆえに、第2シール部材によるシール性を確保できる。
【0010】
上記の態様においては、前記固定部材のポートにおける前記駆動部材側の開口部の縁には、Rまたはテーパが形成されており、前記Rの大きさまたは前記テーパの大きさは、前記開口部の縁における前記駆動部材の駆動方向の端部である第1端部にて、前記開口部の縁における前記駆動部材の駆動方向に直交または略直交する方向の端部である第2端部よりも大きく、前記第1端部から前記第2端部に向かうに連れて徐々に小さくなっていること、が好ましい。
【0011】
この態様によれば、駆動部材を駆動させて流路のパターンを切り替えるときにおいて、シール部材が固定部材のポートを横切るときに、シール部材における固定部材のポート内に解放されて固定部材に接触していない非接触部が、ポート外に移動して固定部材と接触するときに、固定部材のポートの縁に引っ掛かり難くなる。そのため、シール部材に摩耗や亀裂が生じることを抑制できる。したがって、シール部材によるシール性を確保できる。
【0012】
上記の態様においては、前記駆動部材を駆動させて前記流路のパターンを切り替えるときに、前記シール部材が前記固定部材のポートを横切る間は、前記駆動部材の駆動速度を通常の速度よりも遅い第1低速度にすること、が好ましい。
【0013】
この態様によれば、シール部材が固定部材のポートを横切る間において、シール部材にて局所的に応力が発生する箇所を徐々に移動させることができる。そのため、シール部材の摩耗や亀裂の発生を抑制できる。したがって、シール部材によるシール性を確保できる。
【0014】
上記の態様においては、前記駆動部材を駆動させて前記流路のパターンを切り替えるときに、前記シール部材が前記固定部材のポートを横切る状態から横切らない状態に移行する時に、前記駆動部材の駆動速度を前記第1低速度よりも遅い第2低速度にすること、が好ましい。
【0015】
この態様によれば、シール部材が固定部材のポートを横切る状態から横切らない状態に移行するとき、すなわち、シール部材における固定部材のポート内に解放されて固定部材と非接触である非接触部が固定部材のポート内からポート外へ移行して固定部材との接触面に乗り上げるときに、シール部材にて局所的に応力が発生する箇所を徐々に移動させる。そのため、より効果的に、シール部材の摩耗や亀裂の発生を抑制できる。したがって、より効果的に、シール部材によるシール性を確保できる。
【0016】
上記の態様においては、前記固定部材のポートにおける前記駆動部材側の開口部の縁には、Rまたはテーパが形成されており、前記Rの大きさまたは前記テーパの大きさは、前記開口部の縁における前記駆動部材の駆動方向の端部である第1端部にて、前記開口部の縁における前記駆動部材の駆動方向に直交する方向の端部である第2端部よりも大きく、かつ、前記第1端部および前記第2端部にて、前記開口部の縁の内周の半径、および、前記開口部の縁の外周の半径が、それぞれ、等しい、または、略等しいこと、が好ましい。
【0017】
この態様によれば、固定部材のポートにおける駆動部材側の開口部の縁において、Rの大きさまたはテーパの大きさを第1端部にて第2端部よりも大きくしながら、開口部の縁の内周および外周の半径については第1端部および第2端部にて、それぞれ、等しく(または、略等しく)している。
【0018】
これにより、駆動部材が固定部材に対して相対的に駆動することによりシール部材が固定部材のポートを通過するときにおいて、シール部材にて固定部材のポート内に一旦解放される部分が開口部の縁の第1端部に乗り上がるときに、シール部材を効果的に押し上げることができる。そのため、シール部材を滑らかに開口部の縁の第1端部に乗り上げることができる。したがって、シール部材について滑らかに固定部材のポートを通過させることができる。
【0019】
上記の態様においては、前記開口部の縁の内周の半径をr1、前記開口部の縁の外周の半径をr2とするとき、前記第1端部における前記Rの大きさは、(r2-r1)よりも大きいこと、が好ましい。
【0020】
この態様によれば、開口部の縁の第1端部にて、Rの大きさを確実に大きくする。そのため、シール部材にて固定部材のポート内に一旦解放される部分が開口部の縁の第1端部に乗り上がるときに、より確実に、シール部材を効果的に押し上げることができる。
【0021】
上記の態様においては、前記固定部材のポートにおける前記駆動部材側の開口部の縁の形状について、前記開口部の縁における前記駆動部材の駆動方向の端部である第1端部での曲率である第1開口曲率が、前記開口部の縁における前記駆動部材の駆動方向に直交する方向の端部である第2端部での曲率である第2開口曲率よりも小さいこと、が好ましい。
【0022】
この態様によれば、開口部の縁の形状について、第1端部での曲率(すなわち、第1開口曲率)を小さくしている。
【0023】
これにより、駆動部材が固定部材に対して相対的に駆動することによりシール部材が固定部材のポートを通過するときにおいて、シール部材にて固定部材のポート内に一旦解放される部分が開口部の縁の第1端部に乗り上がる直前にて、シール部材に作用する圧縮応力が抑制される。そのため、シール部材の固定部材のポート内への飛び出し量が低減される。したがって、シール部材を滑らかに開口部の縁の第1端部に乗り上げることができる。
【0024】
上記の態様においては、前記固定部材のポートにおける前記駆動部材側の開口部の縁の形状について、前記開口部の縁における前記駆動部材の駆動方向の端部である第1端部に、前記駆動方向に直交するようにして直線状に形成される縁ストレート部が形成されていること、が好ましい。
【0025】
この態様によれば、開口部の縁の形状について、第1端部を駆動部材の駆動方向に直交するように直線状に形成している。
【0026】
これにより、駆動部材が固定部材に対して相対的に駆動することによりシール部材が固定部材のポートを通過するときにおいて、シール部材にて固定部材のポート内に一旦解放される部分が開口部の縁の第1端部に乗り上がる直前にて、シール部材に作用する圧縮応力が抑制される。そのため、シール部材の固定部材のポート内への飛び出し量が低減される。したがって、シール部材を滑らかに開口部の縁の第1端部に乗り上げることができる。
【0027】
上記の態様においては、前記シール部材の形状について、前記駆動部材の駆動方向の端部に、前記駆動方向に直交するように、直線状に形成されるシール部材ストレート部、または、略直線状に形成されるシール部材略ストレート部が形成されていること、が好ましい。
【0028】
この態様によれば、シール部材の形状について、駆動部材の駆動方向の端部、すなわち、駆動部材が固定部材に対して相対的に駆動することによりシール部材が固定部材のポートを通過するときにおいて固定部材のポート内に一旦解放されて開口部の縁の第1端部に乗り上がる部分、を駆動部材の駆動方向に直交するように直線状または略直線状に形成している。
【0029】
これにより、シール部材にて固定部材のポート内に一旦解放される部分が開口部の縁の第1端部に乗り上がる直前にて、シール部材に作用する圧縮応力が抑制される。そのため、シール部材の固定部材のポート内への飛び出し量が低減される。したがって、シール部材を滑らかに開口部の縁の第1端部に乗り上げることができる。
【発明の効果】
【0030】
本開示の流路切替装置によれば、シール部材によるシール性を確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】第1,2実施形態の流路切替装置(六方弁である場合)の外観斜視図である。
図2】第1,2実施形態の流路切替装置の分解斜視図である(駆動部と制御部は図示を省略している)。
図3】第1,2実施形態の流路切替装置の断面図である(駆動部と制御部は図示を省略している)。
図4】回転ディスクの上面図である。
図5】固定ディスクの上面図である。
図6】第1の流路パターンを模式的に示す図であり、流路切替装置の上方から見たときをイメージした図である。
図7】第2の流路パターンを模式的に示す図であり、流路切替装置の上方から見たときをイメージした図である。
図8】流路パターンを切り替えるときにおける第1シール部材と流入流路との位置関係を示す図である。
図9図8の(A)における第3流入流路とその周辺の拡大図である。
図10図8の(A)におけるハウジングと回転ディスクと固定ディスクの断面図である。
図11図8の(B)における第3流入流路とその周辺の拡大図である。
図12図8の(B)におけるハウジングと回転ディスクと固定ディスクの断面図である。
図13】流路パターンを切り替えるときにおける第2シール部材と固定ディスク連通路との位置関係を示す図である。
図14図11のA-A断面図である。
図15図11のB-B断面図である。
図16】回転部材の回転速度に関する第1の制御の内容を示すフローチャート図である。
図17図16の制御を行ったときの第1シール部材の移動の軌跡を示す図である。
図18】回転部材の回転速度に関する第2の制御の内容を示すフローチャート図である。
図19図18の制御を行ったときの第1シール部材の移動の軌跡を示す図である。
図20】スライド式の流路切替装置の全体概要図(第1の流路パターンを示す図)である。
図21図20のC-C断面図である。
図22】スライド式の流路切替装置の全体概要図(第2の流路パターンを示す図)である。
図23図22のD-D断面図である。
図24】第2シール部材が固定ディスク連通路を横切る場合を示す図である。
図25】第2シール部材が固定ディスク連通路を横切る場合を示す図である。
図26】流入流路の開口部の縁に第1シール部材が引っ掛かることを示す図である。
図27】第2実施形態において、回転ディスク側からハウジングを見た図であって、流入流路の開口部の縁と第1シール部材を示す図である。
図28】(A)は図27のE-E矢視図であり、(B)は図27のF-F矢視図であり、(C)は流入流路の開口部の縁の内周の位置を示す図である。
図29】第2実施形態において、第1シール部材にて流入流路に一旦解放された部分が流入流路の開口部の縁の第1端部に乗り上がる様子を示す図である。
図30】第1変形例を示す図である。
図31】第2変形例を示す図である。
図32】第2変形例の別例を示す図である。
図33】第3変形例を示す図である。
図34】第1シール部材が、流入流路の開口部の縁における回転ディスクの回転方向とは反対側にある第1端部から第2端部へ向かって移動するときを示す図である。
図35図34に示すときに、第1シール部材に引張り応力が発生することを示す図である。
図36】第1シール部材が、流入流路の開口部の縁における第2端部から回転ディスクの回転方向側にある第1端部へ向かって移動するときを示す図である。
図37図36に示すときに、第1シール部材に圧縮応力が発生することを示す図である。
図38】第1シール部材にて流入流路に一旦解放された部分が、流入流路から押し上げられることを示す図である。
図39】比較例において、第1シール部材にて流入流路内に一旦解放された部分が、流入流路の開口部の縁の第1端部に乗り上がる様子を示す図である。
図40】第1実施形態において、第1シール部材にて流入流路内に一旦解放された部分が、流入流路の開口部の縁の第1端部に乗り上がる様子を示す図である。
図41】第1実施形態において、回転ディスク側からハウジングを見た図であって、流入流路の開口部の縁と第1シール部材を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本開示の実施形態の一例である流路切替装置について説明する。
【0033】
〔第1実施形態〕
<流路切替装置の全体の概要説明>
まず、本実施形態の流路切替装置1の全体の概要について説明する。
【0034】
図1図3に示すように、流路切替装置1は、ハウジング11と、弁体部12と、駆動部13と、制御部14を有する。
【0035】
ハウジング11は、流体が流入する流入流路20と、流体が流出する流出流路30と、を備えている。ここでは、流路切替装置1は、一例として六方弁であり、ハウジング11は、3つの流入流路20と3つの流出流路30とを備えている。そして、3つの流入流路20として、第1流入流路21と第2流入流路22と第3流入流路23とが設けられている。また、3つの流出流路30として、第1流出流路31と第2流出流路32と第3流出流路33とが設けられている。
【0036】
なお、ハウジング11は、例えば樹脂により形成されている。また、ハウジング11は本開示の「固定部材」や「第1固定部材」の一例であり、流入流路20(すなわち、第1流入流路21と第2流入流路22と第3流入流路23)は本開示の「ポート」の一例である。
【0037】
弁体部12は、ハウジング11の内部に設けられている。この弁体部12は、図2図3に示すように、回転する板状の回転ディスク40と、板状の固定ディスク50と、を備えている。そして、回転ディスク40と固定ディスク50は、後述する回転ディスク40の円板部41や固定ディスク50の円板部51の中心軸L方向(以下、単に「軸方向」という。)に積層して配置されている。
【0038】
なお、回転ディスク40と固定ディスク50は、例えば樹脂により形成されている。また、回転ディスク40は本開示の「駆動部材」の一例であり、固定ディスク50は本開示の「固定部材」や「第2固定部材」の一例である。
【0039】
図2図4に示すように、回転ディスク40は、ハウジング11と固定ディスク50の間に配置されており、固定ディスク50と後述する第2シール部材81Bを介して後述するディスク保持スプリング82の押圧力による応力が作用する状態でハウジング11と固定ディスク50とにより挟持されている。そして、このような回転ディスク40は、円板部41と回転軸部42を備えている。
【0040】
円板部41は、円板状に形成されており、回転ディスク連通路60を備えている。この回転ディスク連通路60は、円板部41を軸方向に貫通し、流入流路20や後述する固定ディスク連通路70と連通可能である。ここでは、円板部41は、3つの回転ディスク連通路60を備えている。そして、図2図4に示すように、3つの回転ディスク連通路60として、第1回転ディスク連通路61と第2回転ディスク連通路62と第3回転ディスク連通路63を備えている。なお、回転ディスク連通路60(すなわち、第1回転ディスク連通路61と第2回転ディスク連通路62と第3回転ディスク連通路63)は、本開示の「連通路」の一例である。
【0041】
回転軸部42は、その中心軸方向について、一端側にて円板部41と接続しており、他端側にて駆動部13に接続している。この回転軸部42は、その中心軸が円板部41の中心軸Lと一致するようにして、円板部41の中央の位置に設けられている。そして、駆動部13から回転する動力を得て回転軸部42がその中心軸を中心に回転することにより、回転軸部42に接続する円板部41がその中心軸Lを中心に回転する。このようにして、回転ディスク40は、駆動部13から回転する動力を得ることにより、中心軸Lを中心に回転する。
【0042】
図2図3図5に示すように、固定ディスク50は、円板部51と円筒部52とを備えている。
【0043】
円板部51は、円板状に形成されており、軸方向に貫通する固定ディスク連通路70を備えている。ここでは、円板部51は、3つの固定ディスク連通路70を備えている。そして、図2図5に示すように、3つの固定ディスク連通路70として、第1固定ディスク連通路71と第2固定ディスク連通路72と第3固定ディスク連通路73を備えている。なお、固定ディスク連通路70(すなわち、第1固定ディスク連通路71と第2固定ディスク連通路72と第3固定ディスク連通路73)は、本開示の「ポート」の一例である。
【0044】
円筒部52は、円板部51に接続しており、固定ディスク連通路70を囲うようにして円板部51から軸方向に延びるようにして形成されている。ここでは、円筒部52は、3つの固定ディスク連通路70のそれぞれに対応するようにして、3つ形成されている。
【0045】
駆動部13は、回転ディスク40の回転軸部42に回転する動力を与えるためのモータ(不図示)を備えている。
【0046】
制御部14は、例えば、CPUとROM,RAM等のメモリを備え、メモリに予め格納されているプログラムに応じて、流路切替装置1を制御する。
【0047】
以上のような構成の流路切替装置1は、流入流路20と回転ディスク連通路60と固定ディスク連通路70(流出流路30)とを連通させることで、流体が流れる流路を形成する。そして、流路切替装置1は、駆動部13により回転ディスク40を回転駆動させて、連通させる流入流路20や固定ディスク連通路70と回転ディスク連通路60との組み合わせを切り替えることにより、流体が流れる流路のパターン(以下、「流路パターン」という。)を切り替える。
【0048】
例えば、図6に示すように、第1の流路パターンとして、3つの回転ディスク連通路60(すなわち、第1回転ディスク連通路61と第2回転ディスク連通路62と第3回転ディスク連通路63)により、第1流入流路21と第3固定ディスク連通路73(第3流出流路33)とを連通させ、第2流入流路22と第1固定ディスク連通路71(第1流出流路31)とを連通させ、第3流入流路23と第2固定ディスク連通路72(第2流出流路32)とを連通させる。
【0049】
そして、図6に示す第1の流路パターンの状態から、駆動部13により回転ディスク40を反時計回りに回転させて、図7に示す第2の流路パターンに切り替えることができる。
【0050】
すなわち、図7に示すように、第2の流路パターンとして、3つの回転ディスク連通路60により、第1流入流路21と第1固定ディスク連通路71(第1流出流路31)とを連通させ、第2流入流路22と第2固定ディスク連通路72(第2流出流路32)とを連通させ、第3流入流路23と第3固定ディスク連通路73(第3流出流路33)とを連通させる。
【0051】
なお、図7に示す第2の流路パターンの状態から、駆動部13により回転ディスク40を時計回りに回転させて、図6に示す第1の流路パターンに切り替えることもできる。また、流路切替装置1は、六方弁に限らず、三方弁や四方弁などのその他の多方弁にすることもできる。
【0052】
また、本実施形態では、軸方向について、ハウジング11と回転ディスク40との間、および、回転ディスク40と固定ディスク50との間、および、固定ディスク50とハウジング11との間に、それぞれ、弾性部材を設けている。
【0053】
具体的には、図3に示すように、ハウジング11と回転ディスク40との間、および、回転ディスク40と固定ディスク50との間には、それぞれ、弾性部材として第1シール部材81Aと第2シール部材81Bが設けられている。
【0054】
この第1シール部材81Aと第2シール部材81Bは、図2図4などに示すように、回転ディスク40における円板部41の上面41aと下面41bにて、長孔状に形成される回転ディスク連通路60の周囲を囲むようにして周状に設けられている。そして、第1シール部材81Aは、ハウジング11に接触して、流入流路20と当該流入流路20に連通する回転ディスク連通路60との間に形成される流路を、外部から封止(シール)する。また、第2シール部材81Bは、固定ディスク50に接触して、固定ディスク連通路70と当該固定ディスク連通路70に連通する回転ディスク連通路60との間に形成される流路を、外部から封止する。
【0055】
なお、第1シール部材81Aと第2シール部材81Bは、例えばフッ素樹脂(例えば、テフロン(登録商標))により形成されている。また、第1シール部材81Aと第2シール部材81Bは、フッ素樹脂を貼付したゴムにより形成されていてもよい。さらに、第1シール部材81Aと第2シール部材81Bは、フッ素樹脂やゴム以外の材料により形成されていてもよい。
【0056】
また、固定ディスク50の円板部51とハウジング11との間に、弾性部材としてディスク保持スプリング82が設けられている。そして、このディスク保持スプリング82の押圧力による応力が、固定ディスク50の円板部51に作用している。このようなディスク保持スプリング82は、固定ディスク50の3つの円筒部52のそれぞれに配置されるようにして、合計3つ設けられている。なお、3つのディスク保持スプリング82は、互いに等間隔空けて設けられている。また、3つのディスク保持スプリング82は、3つの円筒部52のそれぞれの間の位置に配置されていてもよい。また、ディスク保持スプリング82は、4つ以上設けられていてもよい。
【0057】
また、固定ディスク50の円筒部52とハウジング11との間に、固定ディスク連通路70のシール性を確保するためのリップシール83が設けられている。
【0058】
<シール部材によるシール性の確保に関して>
(回転ディスクの剛性について)
回転ディスク40を回転させて流路パターンを切り替えるときに、第1シール部材81Aが流入流路20を横切ると、第1シール部材81Aにて、流入流路20内に解放されてハウジング11に接触しない非接触部と、ハウジング11に接触する接触部とが生じる。ここで、第1シール部材81Aには、ディスク保持スプリング82の押圧力による応力が作用している。そうすると、第1シール部材81Aにおける非接触部と接触部との境界部分にて、局所的に応力が発生するおそれがある。
【0059】
具体的には、流路パターンをパターンAとパターンBに切り替えるときに、第1シール部材81Aと流入流路20(例えば、第2流入流路22と第3流入流路23)との位置関係は、図8に示すようになる。なお、パターンAとは前記の図6に示す第1の流路パターンであり、パターンBとは前記の図7に示す第2の流路パターンであるとする。
【0060】
すると、まず、図8の(A)の状態では、図9図10に示すように第1シール部材81Aは、流入流路20(例えば、第3流入流路23)を横切っていない。そのため、第1シール部材81Aは、全体的にハウジング11に接触している。したがって、第1シール部材81Aには、全体的に、固定ディスク50と第2シール部材81Bと回転ディスク40とを介して、ディスク保持スプリング82の押圧力による応力(図10参照)が作用している。
【0061】
しかしながら、図8の(B)の状態では、図11図12に示すように第1シール部材81Aが流入流路20(例えば、第3流入流路23)を横切っている。そのため、図11に示すように、第1シール部材81Aには、流入流路20内に解放されてハウジング11に接触していない非接触部と、ハウジング11に接触している接触部とが生じる。
【0062】
そして、図12に示すように、第1シール部材81Aには固定ディスク50と第2シール部材81Bと回転ディスク40とを介してディスク保持スプリング82の押圧力による応力が作用している。そのため、回転ディスク40にて、矢印に示すような(第1シール部材81Aの)非接触部における応力抜けによる回転ディスク40の変位(以下、「応力抜けによる変位」という。)が生じる。
【0063】
そして、この応力抜けによる変位が大きくなると、回転ディスク40に設けられる第1シール部材81Aの姿勢が保持され難くなり、第1シール部材81Aにおいて、その非接触部と接触部との境界部分にて、局所的に大きな応力が発生するおそれがある。そうすると、第1シール部材81Aの摩耗や亀裂が生じ易くなり、第1シール部材81Aによるシール性が低下するおそれがある。
【0064】
そこで、本実施形態では、回転ディスク40を、高剛性にして、曲がり難くすることにより、応力抜けによる変位を小さくする。具体的には、回転ディスク40の板厚を固定ディスク50の板厚よりも大きくして、回転ディスク40を固定ディスク50よりも高剛性にする。
【0065】
このようにして、回転ディスク40を高剛性にして、変形し難くすることにより、回転ディスク40にて応力抜けによる変位を小さくすることができるので、回転ディスク40に設けられる第1シール部材81Aの姿勢が保持される。そのため、第1シール部材81Aの非接触部と接触部との境界部分にて局所的に大きな応力が発生することを抑制できる。したがって、第1シール部材81Aの摩耗や亀裂が生じることを抑制できるので、第1シール部材81Aによるシール性を確保できる。
【0066】
(第2シール部材について)
回転ディスク40を回転させて流路パターンを切り替えるときに、第2シール部材81Bが固定ディスク連通路70(例えば、第2固定ディスク連通路72)を横切ると、図24に示すように、第2シール部材81Bには、固定ディスク連通路70内に解放されて固定ディスク50に接触していない非接触部と、固定ディスク50に接触している接触部とが生じる。
【0067】
そして、図25に示すように、固定ディスク50にはディスク保持スプリング82の押圧力による応力が作用しているので、固定ディスク50にて、矢印に示すような応力抜けによる変位が生じる。ここで、固定ディスク50は板厚が小さく低剛性であるので、応力抜けによる変位が大きくなることから、第2シール部材81Bにおける非接触部と接触部との境界部分にて局所的に大きな応力が発生するおそれがある。そうすると、第2シール部材81Bの摩耗や亀裂が生じ易くなり、第2シール部材81Bによるシール性が低下するおそれがある。
【0068】
さらに、回転ディスク40に作用するディスク保持スプリング82の押圧力による応力も減少するので、回転ディスク40に設けられる第1シール部材81Aのシール性も低下するおそれがある。
【0069】
そこで、本実施形態では、回転ディスク40を回転させて流路パターンをパターンAとパターンBに切り替えるときに、図13に示すように、第2シール部材81Bが、固定ディスク50の固定ディスク連通路70(例えば、第2固定ディスク連通路72)を横切らないようにする。具体的には、固定ディスク50の固定ディスク連通路70を、回転ディスク40が回転して流路パターンをパターンAとパターンBに切り替えるときに第2シール部材81Bが横切らない位置に配置する。
【0070】
これにより、回転ディスク40を回転させて流路パターンをパターンAとパターンBに切り替えるときに、第2シール部材81Bが固定ディスク50の固定ディスク連通路70を横切らない。そのため、固定ディスク50が変形することを抑制できる。したがって、固定ディスク50を薄肉化(低剛性化)できる。また、低剛性の固定ディスク50が変形することにより第2シール部材81Bの非接触部と接触部との境界部分に局所的に大きな応力が発生することを抑制できるので、第2シール部材81Bの摩耗や亀裂が生じることを抑制できる。ゆえに、第2シール部材81Bによるシール性を確保できる。
【0071】
(流入流路の開口部の縁について)
第1シール部材81Aが流入流路20を横切るときに、第1シール部材81Aにおける非接触部は、やがて流入流路20内から流入流路20外に乗り上がって、ハウジング11に接触することになる。そして、このとき、図26に示すように、ハウジング11の流入流路20の開口部の縁20aが段差となって、この段差に第1シール部材81Aにおける非接触部が引っ掛かって、第1シール部材81Aに摩耗や亀裂が生じるおそれがある。
【0072】
そこで、ハウジング11の流入流路20における回転ディスク40側の開口部の縁20aには、R(曲線形状)が形成されていてもよい。
【0073】
ただし、縁20aの全周に亘って一定の大きさのRを形成すると縁20aの径が全周に亘って大きくなって、ハウジング11の体格が大きくなるおそれがある。そこで、縁20aの周方向の位置によってRの大きさを変える。
【0074】
具体的には、図14図15(a)に示すように、Rの大きさは、開口部の縁20aにおける回転ディスク40の回転方向の端部である第1端部20b(図11参照)の位置にて、回転ディスク40の回転方向に直交(または、略直交)する方向の端部である第2端部20c(図11参照)の位置よりも大きくなっている。そして、Rの大きさは、縁20aの周方向について、第1端部20bから第2端部20cに向かうに連れて徐々に小さくなっている。なお、例えば、第1端部20bのRの大きさを2mmとするときに、第2端部20cのRの大きさを0.5mmとする。また、「回転方向」は、本開示の「駆動方向」の一例である。
【0075】
これにより、第1シール部材81Aがハウジング11の流入流路20を横切るときにおいて、第1シール部材81Aにおける非接触部が流入流路20外に移動してハウジング11と接触するときに、流入流路20の開口部の縁20aに引っ掛かり難くなる。そのため、第1シール部材81Aに摩耗や亀裂が生じることを抑制できる。したがって、第1シール部材81Aによるシール性を確保できる。
【0076】
また、縁20aの周方向の位置によってRの大きさを変えているので、ハウジング11の体格が大きくなることを抑制できる。例えば、第2端部20cの位置でRを小さくしているので、図15(a)に示すように、ハウジング11の体格を図15(b)の場合(すなわち、Rを大きくした場合)よりも小さくすることができる。
【0077】
なお、流入流路20における回転ディスク40側の開口部の縁20aには、Rの代わりに、テーパが形成されていてもよい。また、図24図25で示すように、固定ディスク連通路70を第2シール部材81Bが横切る構成の場合は、固定ディスク連通路70における回転ディスク40側の開口部の縁に、Rやテーパが形成されていてもよい。
【0078】
(回転ディスクの回転速度に関する第1の制御について)
回転ディスク40の回転速度に関する第1の制御として、回転ディスク40を回転させて流路パターンを切り替えるときにおいて、第1シール部材81Aがハウジング11の流入流路20を横切るときに、回転ディスク40の回転速度を遅くするように制御してもよい。そして、これにより、第1シール部材81Aにて、応力が集中して発生する非接触部と接触部の境界部分を徐々に移動させることで、第1シール部材81Aに摩耗や亀裂が生じることを抑制できる。
【0079】
具体的には、制御部14は、回転ディスク40の回転速度に関する第1の制御として、図16に示す内容の制御を行う。
【0080】
図16に示すように、制御部14は、切替え弁位置角度tdegを取込み(ステップS1)、流路パターンの切替え要求があるか否かを判断する(ステップS2)。
【0081】
ここで、「切替え弁位置角度tdeg」とは、回転ディスク40の回転方向における第1シール部材81Aの位置を示すものである。詳しくは、「切替え弁位置角度tdeg」とは、図17に示すように、回転ディスク40が反時計回りに回転するときに第1シール部材81Aの最後方部となる位置(すなわち、回転ディスク40が時計回りに回転するときに第1シール部材81Aの最前方部となる位置)と、回転ディスク40の回転中心Oの位置とを結ぶ線が、角度0の線αとなす角度である。なお、制御部14は、不図示の角度センサから回転ディスク40の回転角度の検出値を取得している。
【0082】
そして、流路パターンの切替え要求がある場合(ステップS2:YES)には、制御部14は、切替えフラグ(X切替え)が「0」であるか否かを判断する(ステップS3)。
【0083】
そして、切替えフラグが「0」である場合には(ステップS3:YES)、流路パターンの切り替えを開始するため、制御部14は、現在パターンAであるか否か、すなわち、現在の流路パターンがパターンAであるか否かを判断する(ステップS4)。ここで、パターンAとは、前記の図6に示す第1の流路パターンである。
【0084】
そして、現在パターンAである場合(ステップS4:YES)には、回転ディスク40について反時計回りに回転させて、流路パターンをパターンAからパターンBに切り替えるため、制御部14は、切替えフラグと切替えAフラグ(X切替えA)を「1」にして(ステップS5)、回転ディスク40について反時計回りに低速駆動を実行する(ステップS6)。すなわち、制御部14は、回転ディスク40を反時計回りに低速で回転させる。ここで、「低速」とは、流路パターンの切り替えを行うときの通常の速度よりも低い速度(例えば、通常の速度の1/2の速度)であり、本開示の「第1低速度」の一例である。
【0085】
次に、制御部14は、切替え弁位置角度tdegが角度A(図17参照)未満であるか否かを判断する(ステップS7)。
【0086】
そして、切替え弁位置角度tdegが角度A未満である場合(ステップS7:YES)には、制御部14は、切替え駆動を停止して、すなわち、回転ディスク40の回転を停止して、切替えフラグを「0」にする(ステップS8)。
【0087】
一方、切替え弁位置角度tdegが角度A以上である場合(ステップS7:NO)には、制御部14は、回転ディスク40を反時計回りに低速で回転させることを継続する。
【0088】
また、ステップS4において、現在パターンAでない場合(ステップS4:NO)、すなわち、現在の流路パターンがパターンBである場合には、回転ディスク40を時計回りに回転させて、流路パターンをパターンBからパターンAへ切り替えるため、制御部14は、切替えフラグを「1」にして、かつ、切替えAフラグを「0」にする(ステップS9)。ここで、パターンBとは、前記の図7に示す第2の流路パターンである。
【0089】
次に、制御部14は、回転ディスク40について時計回りに低速駆動を実行する(ステップS10)。すなわち、制御部14は、回転ディスク40を時計回りに低速で回転させる。
【0090】
次に、制御部14は、切替え弁位置角度tdegが角度H(図17参照)以上であるか否かを判断する(ステップS11)。
【0091】
そして、切替え弁位置角度tdegが角度H以上である場合(ステップS11:YES)には、制御部14は、切替え駆動を停止して、切替えフラグを「0」にする(ステップS8)。
【0092】
一方、切替え弁位置角度tdegが角度H未満である場合(ステップS11:NO)には、制御部14は、回転ディスク40を時計回りに低速で回転させることを継続する。
【0093】
また、ステップS3において、切替えフラグが「1」である場合には(ステップS3:NO)、流路パターンを切り替えているので、制御部14は、切替えAフラグが「1」であるか否かを判断する(ステップS12)。
【0094】
そして、切替えAフラグが「1」である場合(ステップS12:YES)には、回転ディスク40を反時計回りに回転させて、流路パターンをパターンAからパターンBへ切り替えているので、制御部14は、切替え弁位置角度tdegが角度D(図17参照)以上であるか否かを判断する(ステップS13)。
【0095】
そして、切替え弁位置角度tdegが角度D以上である場合(ステップS13:YES)には、制御部14は、切替え弁位置角度tdegが角度E(図17参照)未満であるか否かを判断する(ステップS14)。
【0096】
そして、切替え弁位置角度tdegが角度E未満である場合(ステップS14:YES)には、制御部14は、回転ディスク40について反時計回りに高速駆動を実行する(ステップS15)。すなわち、制御部14は、回転ディスク40を反時計回りに高速で回転させる。
【0097】
このようにして、図17に示すように、回転ディスク40を反時計回りに回転させて、流路パターンをパターンAからパターンBへ切り替えるときに、切替え弁位置角度tdegが角度D以上かつ角度E未満である場合、すなわち、第1シール部材81Aが流入流路20(例えば、第2流入流路22や第3流入流路23)を横切っていない場合には、回転ディスク40を反時計回りに高速で回転させる。ここで、「高速」とは、流路パターンの切り替えを行うときの通常の速度である。
【0098】
一方、切替え弁位置角度tdegが角度E以上である場合(ステップS14:NO)には、制御部14は、回転ディスク40について反時計回りに低速駆動を実行し(ステップS16)、切替え弁位置角度tdegが角度H以上であるか否かを判断する(ステップS11)。
【0099】
また、ステップS13において、切替え弁位置角度tdegが角度D未満である場合(ステップS13:NO)には、制御部14は、回転ディスク40について反時計回りに低速駆動を実行する(ステップS6)。すなわち、制御部14は、回転ディスク40を反時計回りに低速で回転させる。
【0100】
このようにして、図17に示すように、回転ディスク40を反時計回りに回転させている場合に、切替え弁位置角度tdegが角度A以上かつ角度D未満である場合、かつ、切替え弁位置角度tdegが角度E以上かつ角度H未満である場合、すなわち、第1シール部材81Aが流入流路20(例えば、第2流入流路22や第3流入流路23)を横切っている場合には、回転ディスク40は反時計回りに低速で回転する。
【0101】
また、ステップS12において、切替えAフラグが「0」である場合(ステップS12:NO)には、すなわち、回転ディスク40は時計回りに回転させて、流路パターンをパターンBからパターンAへ切り替えている場合には、制御部14は、切替え弁位置角度tdegが角度E未満であるか否かを判断する(ステップS17)。
【0102】
そして、切替え弁位置角度tdegが角度E未満である場合(ステップS17:YES)には、制御部14は、切替え弁位置角度tdegが角度D以上であるか否かを判断する(ステップS18)。
【0103】
そして、切替え弁位置角度tdegが角度D以上である場合(ステップS18:YES)には、制御部14は、回転ディスク40について時計回りに高速駆動を実行する(ステップS19)。すなわち、制御部14は、回転ディスク40を時計回りに高速で回転させる。
【0104】
一方、切替え弁位置角度tdegが角度D未満である場合(ステップS18:NO)には、制御部14は、回転ディスク40について時計回りに低速駆動を実行し(ステップS20)、切替え弁位置角度tdegが角度A未満であるか否かを判断する(ステップS7)。
【0105】
このようにして、図17に示すように、回転ディスク40を時計回りに回転させて、流路パターンをパターンBからパターンAへ切り替えるときに、切替え弁位置角度tdegが角度D以上、かつ、角度E未満である場合、すなわち、第1シール部材81Aが流入流路20(例えば、第2流入流路22や第3流入流路23)を横切っていない場合には、回転ディスク40を時計回りに高速で回転させる。
【0106】
一方、切替え弁位置角度tdegが角度E以上である場合(ステップS17:NO)には、制御部14は、回転ディスク40について時計回りに低速駆動を実行する(ステップS10)。すなわち、制御部14は、回転ディスク40を時計回りに低速で回転させる。
【0107】
このようにして、図17に示すように、回転ディスク40を時計回りに回転させて、流路パターンをパターンBからパターンAへ切り替えるときに、切替え弁位置角度tdegが角度E以上、かつ、角度H未満である場合や、切替え弁位置角度tdegが角度A以上、かつ、角度D未満である場合、すなわち、第1シール部材81Aが流入流路20(例えば、第2流入流路22や第3流入流路23)を横切っている場合には、制御部14は、回転ディスク40を時計回りに低速で回転させる。
【0108】
また、ステップS2において、流路パターンの切替え要求がない場合(ステップS2:NO)には、制御部14は、バルブ切替え位置を保持(ステップS19)、すなわち、回転ディスク40の停止位置をそのまま維持する。
【0109】
以上のような制御を行うことにより、図17に示すように、回転ディスク40を反時計回りに回転させて、流路パターンをパターンAからパターンBへ切り替える場合において、切替え弁位置角度tdegが角度A以上かつ角度D未満であるとき、および、切替え弁位置角度tdegが角度E以上かつ角度H未満であるときに、回転ディスク40を反時計回りに低速で回転させる。その一方、切替え弁位置角度tdegが角度D以上かつ角度E未満であるときに、回転ディスク40を反時計回りに高速で回転させる。
【0110】
すなわち、流路パターンがパターンAからパターンBへ切り替える場合において、第1シール部材81Aが流入流路20を横切るときに回転ディスク40を低速で反時計回りに回転させる一方で、第1シール部材81Aが流入流路20を横切らないときに回転ディスク40を高速で反時計回りに回転させる。
【0111】
また、図17に示すように、回転ディスク40を時計回りに回転させて、流路パターンをパターンBからパターンAへ切り替える場合において、切替え弁位置角度tdegが角度E以上かつ角度H未満であるとき、および、切替え弁位置角度tdegが角度A以上かつ角度D未満であるときに、回転ディスク40を時計回りに低速で回転させる。その一方、切替え弁位置角度tdegが角度D以上かつ角度E未満であるときに、回転ディスク40を時計回りに高速で回転させる。
【0112】
すなわち、流路パターンがパターンBからパターンAへ切り替える場合において、第1シール部材81Aが流入流路20を横切るときに回転ディスク40を低速で時計回りに回転させる一方で、第1シール部材81Aが流入流路20を横切らないときに回転ディスク40を高速で時計回りに回転させる。
【0113】
このようにして、回転ディスク40を回転させて流路パターンをパターンAとパターンBで切り替える場合に、第1シール部材81Aが流入流路20を横切るときに回転ディスク40は低速で回転する一方で、第1シール部材81Aが流入流路20を横切らないときに回転ディスク40は高速で回転する。
【0114】
以上のように、制御部14は、回転ディスク40を回転させて流路パターンを切り替えるときに、第1シール部材81Aがハウジング11の流入流路20を横切る間は、回転ディスク40の回転速度を低速にする。
【0115】
これにより、第1シール部材81Aがハウジング11の流入流路20を横切る間にて、第1シール部材81Aにて局所的に応力が発生する箇所を徐々に移動させる。そのため、第1シール部材81Aの摩耗や亀裂の発生を抑制できる。したがって、第1シール部材81Aによるシール性を確保できる。
【0116】
なお、回転ディスク40の回転速度に関する第1の制御については、第2シール部材81Bが固定ディスク50の固定ディスク連通路70を横切る場合に適用してもよい。
【0117】
(回転ディスクの回転速度に関する第2の制御について)
回転ディスク40の回転速度に関する第2の制御として、回転ディスク40を回転させて流路パターンを切り替えるときにおいて、第1シール部材81Aがハウジング11の流入流路20を横切っている状態から横切らない状態に移行するときに、回転ディスク40の回転速度をさらに遅くするように制御してもよい。
【0118】
具体的には、制御部14は、回転ディスク40の回転速度に関する第2の制御として、図18に示す内容の制御を行う。なお、以下の説明では、図16に示す回転ディスク40の回転速度に関する第1の制御の内容と異なる点のみ説明する。
【0119】
図18に示すように、ステップS112において、切替えAフラグが「1」である場合(ステップS112:YES)、すなわち、回転ディスク40を反時計回りに回転させて、流路パターンをパターンAからパターンBに切り替える場合には、制御部14は、切替え弁位置角度tdegが角度C以上であるか否かを判断する(ステップS113)。
【0120】
そして、切替え弁位置角度tdegが角度C以上である場合(ステップS113:YES)には、制御部14は、回転ディスク40について反時計回りに超低速駆動を実行する(ステップS114)。すなわち、制御部14は、回転ディスク40を反時計回りに超低速で回転させる。ここで、「超低速」とは、低速よりも遅い速度(例えば、通常の速度の1/3の速度)であり、本開示の「第2低速度」の一例である。
【0121】
次に、制御部14は、切替え弁位置角度tdegが角度D未満であるか否かを判断する(ステップS115)。
【0122】
そして、切替え弁位置角度tdegが角度D未満である場合(ステップS115:YES)には、制御部14は、回転ディスク40を反時計回りに超低速で回転させることを継続する。
【0123】
このようにして、図19に示すように、回転ディスク40を反時計回りに回転させて、流路パターンをパターンAからパターンBに切り替える場合において、切替え弁位置角度tdegが角度C以上かつ角度D未満であるときに、すなわち、第1シール部材81A(の移動方向の後方部、角度Cと角度Dとの間に位置する部分)がハウジング11の流入流路20(例えば、第3流入流路23)を横切っている状態から横切らない状態に移行するときに、制御部14は、回転ディスク40を反時計回りに超低速で回転させる。
【0124】
また、ステップS117において、切替え弁位置角度tdegが角度E以上である場合(ステップS117:NO)には、制御部14は、切替え弁位置角度tdegが角度G以上であるか否かを判断する(ステップS119)。
【0125】
そして、切替え弁位置角度tdegが角度G以上である場合(ステップS119:YES)には、制御部14は、反時計回りに超低速駆動を実行する(ステップS120)。すなわち、制御部14は、回転ディスク40を反時計回りに超低速で回転させる。
【0126】
次に、制御部14は、切替え弁位置角度tdegが角度H未満であるか否かを判断する(ステップS121)。
【0127】
そして、切替え弁位置角度tdegが角度H未満である場合(ステップS121:YES)には、制御部14は、回転ディスク40を反時計回りに超低速で回転させることを継続する。
【0128】
このようにして、図19に示すように、回転ディスク40を反時計回りに回転させて、流路パターンをパターンAからパターンBに切り替える場合において、切替え弁位置角度tdegが角度G以上かつ角度H未満であるときに、すなわち、第1シール部材81A(の移動方向の前方部、角度(G)と角度(H)との間に位置する部分)がハウジング11の流入流路20(例えば、第2流入流路22)を横切っている状態から横切らない状態に移行するときに、制御部14は、回転ディスク40を反時計回りに超低速で回転させる。
【0129】
また、ステップS112において、切替えAフラグが「0」である場合(ステップS112:NO)には、すなわち、回転ディスク40を時計回りに回転させて、流路パターンをパターンBからパターンAに切り替える場合には、制御部14は、切替え弁位置角度tdegが角度F未満であるか否かを判断する(ステップS122)。
【0130】
そして、切替え弁位置角度tdegが角度F未満である場合(ステップS122:YES)には、制御部14は、回転ディスク40について時計回りに超低速駆動を実行する(ステップS123)。すなわち、制御部14は、回転ディスク40を時計回りに超低速で回転させる。
【0131】
次に、制御部14は、切替え弁位置角度tdegが角度E以上であるか否かを判断する(ステップS124)。
【0132】
そして、切替え弁位置角度tdegが角度E以上である場合(ステップS124:YES)には、制御部14は、回転ディスク40を時計回りに超低速で回転させることを継続する。
【0133】
このようにして、図19に示すように、回転ディスク40を時計回りに回転させて、流路パターンをパターンBからパターンAに切り替える場合において、切替え弁位置角度tdegが角度E以上かつ角度F未満であるときに、すなわち、第1シール部材81A(の移動方向の後方部、角度(E)と角度(F)との間に位置する部分)がハウジング11の流入流路20(例えば、第2流入流路22)を横切っている状態から横切らない状態に移行するときに、制御部14は、回転ディスク40を時計回りに超低速で回転させる。
【0134】
また、ステップS126において、切替え弁位置角度tdegが角度D未満である場合(ステップS126:NO)には、制御部14は、切替え弁位置角度tdegが角度B未満であるか否かを判断する(ステップS128)。
【0135】
そして、切替え弁位置角度tdegが角度B未満である場合(ステップS128:YES)には、制御部14は、回転ディスク40について時計回りに超低速駆動を実行する(ステップS129)。すなわち、制御部14は、回転ディスク40を時計回りに超低速で回転させる。
【0136】
次に、制御部14は、切替え弁位置角度tdegが角度A以上であるか否かを判断する(ステップS130)。
【0137】
そして、切替え弁位置角度tdegが角度A以上である場合(ステップS130:YES)には、制御部14は、回転ディスク40を時計回りに超低速で回転させることを継続する。
【0138】
このようにして、図19に示すように、回転ディスク40を時計回りに回転させて、流路パターンをパターンBからパターンAに切り替える場合において、切替え弁位置角度tdegが角度A以上かつ角度B未満であるときに、すなわち、第1シール部材81A(の移動方向の前方部、角度Aと角度Bとの間に位置する部分)がハウジング11の流入流路20(例えば、第3流入流路23)を横切っている状態から横切らない状態に移行するときに、制御部14は、回転ディスク40を時計回りに超低速で回転させる。
【0139】
以上のように、制御部14は、回転ディスク40を回転させて流路パターンを切り替えるときに、第1シール部材81Aがハウジング11の流入流路20を横切る状態から横切らない状態に移行する時に、回転ディスク40の回転速度を低速よりも遅い超低速にする。
【0140】
これにより、第1シール部材81Aがハウジング11の流入流路20を横切る状態から横切らない状態に移行するとき、すなわち、第1シール部材81Aにおけるハウジング11の流入流路20内に解放されてハウジング11と非接触である非接触部がハウジング11の流入流路20内から流入流路20外へ移行してハウジング11との接触面に乗り上げるときに、第1シール部材81Aにて局所的に応力が発生する箇所を徐々に移動させる。そのため、より効果的に、第1シール部材81Aの摩耗や亀裂の発生を抑制できる。したがって、より効果的に、第1シール部材81Aによるシール性を確保できる。
【0141】
なお、回転ディスク40の回転速度に関する第2の制御については、第2シール部材81Bが固定ディスク50の固定ディスク連通路70を横切る場合に適用してもよい。
【0142】
(スライド式の流路切替装置について)
上記の本開示の内容は、図20図23に示す流路切替装置2にも適用できる。図20図23に示すように、流路切替装置2は、ハウジング211と、スライドバルブ212と、駆動部213とを有する。
【0143】
ハウジング211は、流体が流入または流出する流路口220を備えている。ここでは、流路切替装置2は、一例として六方弁であり、ハウジング211は、6つの流路口220を備えている。なお、ハウジング211は、例えば樹脂により形成されており、本開示の「固定部材」の一例である。また、流路口220は、本開示の「ポート」の一例である。
【0144】
スライドバルブ212は、ハウジング211の内部に設けられている。なお、スライドバルブ212は、例えば樹脂により形成されており。本開示の「駆動部材」の一例である。
【0145】
スライドバルブ212は、長方形の板状(すなわち、略直方体の形状)に形成されており、スライドバルブ連通路260を少なくとも1つ備えている。ここでは、スライドバルブ212は、一例として4つのスライドバルブ連通路260を備えている。なお、スライドバルブ連通路260は、本開示の「連通路」の一例である。
【0146】
駆動部213は、スライドバルブ212を駆動させる動力を与えるためのアクチュエータ(不図示)を備えている。
【0147】
また、図21に示すように、ハウジング211とスライドバルブ212との間には、シール部材281が設けられている。さらに、スライドバルブ212には、スプリング282の付勢力による応力が作用している。
【0148】
なお、シール部材281は、例えばフッ素樹脂(例えば、テフロン(登録商標))により形成されている。また、シール部材281は、フッ素樹脂を貼付したゴムにより形成されていてもよい。さらに、シール部材281は、フッ素樹脂やゴム以外の材料により形成されていてもよい。
【0149】
このような構成の流路切替装置2は、ハウジング211の流路口220とスライドバルブ連通路260とを組み合わせることで、流路を形成する。そして、流路切替装置2は、図20図23に示すように、駆動部213の駆動軸213aによりスライドバルブ212を駆動軸213aの軸方向にスライドするように駆動させて、流路口220とスライドバルブ連通路260とを連通させる組み合わせを変えることにより、流路パターンを、図20図21に示す第1の流路パターンと、図22図23に示す第2の流路パターンに切り替えることができる。
【0150】
そして、このような流路切替装置2において、スライドバルブ212は、ハウジング211よりも高剛性にしている。
【0151】
また、ハウジング211の流路口220におけるスライドバルブ212側の開口部の縁には、流路切替装置1と同様に、Rまたはテーパが形成されていてもよい。
【0152】
また、スライドバルブ212をスライドさせて流路パターンを切り替えるときに、シール部材281がハウジング211の流路口220を横切る間は、スライドバルブ212の駆動速度(スライド速度)を通常の速度よりも遅い低速度にしてもよい。
【0153】
さらに、スライドバルブ212をスライドさせて流路パターンを切り替えるときに、シール部材281がハウジング211の流路口220を横切る状態から横切らない状態に移行する時に、スライドバルブ212の駆動速度を低速よりも遅い超低速にしてもよい。
【0154】
〔第2実施形態〕
次に、第2実施形態について説明するが、第1実施形態と異なる点を説明し、第1実施形態と共通する点の説明は省略する。なお、ここでは、流路切替装置1に関して説明する。
【0155】
回転ディスク40が回転して、図34に示すように、第1シール部材81Aが、回転ディスク40の回転方向(図中の右方向)とは反対側(図中の左側)の第1端部20bと第2端部20cとの間を、第1端部20bから第2端部20cへ向かって移動するとき、を考える。
【0156】
このとき、図35に示すように、第1シール部材81Aにおいて、流入流路20内に一旦解放される部分、すなわち、流入流路20内に解放されてハウジング11に接触しない非接触部(以下、適宜、単に「ハウジング11との非接触部」という。)の長さが徐々に拡大するので、引張り応力が発生する。そして、このとき、第1シール部材81Aにおけるハウジング11との非接触部の流入流路20内への飛び出し量Lcは、図35のようになる。また、図34に示すように、第2端部20cの位置で、引張り応力は最大(max)になる。
【0157】
その後、回転ディスク40が回転して、図36に示すように、第1シール部材81Aが、第2端部20cと回転ディスク40の回転方向側(図中の右側)の第1端部20bとの間を、第2端部20cから第1端部20bへ向かって移動するとき、を考える。
【0158】
このとき、図37に示すように、第1シール部材81Aにおいて、ハウジング11との非接触部の長さが徐々に縮小されるので、圧縮応力が発生する。また、第1シール部材81Aにおけるハウジング11との非接触部の流入流路20内への飛び出し量Ldは図37のようになる。なお、飛び出し量Ldは、飛び出し量Lc(図35参照)よりも多くなる。そして、図36に示すように、回転ディスク40の回転方向側の第1端部20bの位置で、圧縮応力は最大(max)になる。
【0159】
その後、回転ディスク40が回転して、図38に示すように、第1シール部材81Aにおけるハウジング11との非接触部が開口部の縁20aにより押し上げられながら、開口部の縁20aの第1端部20bに乗り上げる。そして、その後、第1シール部材81Aは、開口部の縁20aからハウジング11における回転ディスク40側の面11aへ摺動する。
【0160】
本実施形態では、ハウジング11の流入流路20における回転ディスク40側の開口部の縁20aには、R(曲線形状)が形成されている。そして、Rの大きさ(すなわち、Rの半径)は、開口部の縁20aの第1端部20bの位置にて、開口部の縁20aの第2端部20cの位置よりも大きくなっている。なお、Rの代わりに、テーパが形成されていてもよく、このとき、テーパの大きさとはテーパの傾斜角である。
【0161】
そして、本実施形態では、図27に示すように、周状に形成される開口部の縁20aの内周LAと外周LBが、ともに、円形状に形成されている。詳しくは、内周LAは直径D1の円形状に形成され、外周LBは直径D2の円形状に形成されている。なお、直径D2は、直径D1よりも大きい。なお、図27などにおいては、説明の便宜上、回転ディスク40の移動方向を図面の左右方向として示している。
【0162】
そして、このようにして、本実施形態では、図27図28に示すように、開口部の縁20aの第1端部20bおよび第2端部20cにおいて、開口部の縁20aの内周LAの半径r1、および、開口部の縁20aの外周LBの半径r2が、それぞれ、等しい、または、略等しい。
【0163】
なお、開口部の縁20aの内周LAの半径r1とは、開口部の開口半径である。また、開口部の縁20aの外周LBの半径r2とは、開口部の縁20aにおけるRとハウジング11の面11aとの境界線の半径である。
【0164】
そして、本実施形態では、図28(B)に示すように、第1端部20bのRの中心点の位置を、図28(A)に示す第2端部20cのRの中心点の位置よりも図面下側(すなわち、流入流路20の開口部とは反対側)に移動(すなわち、オフセット)させることにより、開口部の縁20aの外周LBの半径r2を大きくすることなく、第1端部20bのRの大きさを大きくしている。
【0165】
このようにして、本実施形態では、Rの大きさを第1端部20bにて第2端部20cよりも大きくしながら、第1端部20bにおける開口部の縁20aの内周LAの半径r1と、第2端部20cにおける開口部の縁20aの内周LAの半径r1とを等しく、または、略等しくしている。また、第1端部20bにおける開口部の縁20aの外周LBの半径r2と、第2端部20cにおける開口部の縁20aの外周LBの半径r2とを等しく、または、略等しくしている。
【0166】
これにより、本実施形態では、図29に示すように、開口部の縁20aの内周LAの位置が、第1実施形態のとき(図40参照)よりも、図面の上側(すなわち、第1シール部材81Aを押し上げる側)の位置になる。
【0167】
そして、これにより、流路パターンを切替えるため、回転ディスク40がハウジング11に対して相対的に回転することにより、第1シール部材81Aが流入流路20を通過するときにおいて、図29に示すように、第1シール部材81Aにおけるハウジング11との非接触部が開口部の縁20aの第1端部20bに乗り上がるときに、開口部の縁20aの第1端部20bの近傍の部分(図中、G-Gにて点線で示す部分。図27中のG-Gの位置の部分に対応。)に押し上げられるので、第1シール部材81Aにおけるハウジング11との非接触部を効果的に押し上げることができる。そのため、第1シール部材81Aにおけるハウジング11との非接触部を、滑らかに開口部の縁20aの第1端部20bに乗り上げることができる。したがって、第1シール部材81Aが滑らかに流入流路20を通過することができる。
【0168】
また、第1端部20bのRの大きさが第2端部20cのRの大きさと等しい図39に示す比較例では、第1シール部材81Aにおけるハウジング11との非接触部が開口部の縁20aの第1端部20bに乗り上がる直前において、第1シール部材81Aにおけるハウジング11との非接触部にて滑らかに乗り上げることができず、圧縮応力による応力集中が発生しやすい。
【0169】
しかしながら、本実施形態によれば、Rの大きさを第1端部20bにて第2端部20cよりも大きくしているので、第1シール部材81Aにおけるハウジング11との非接触部が開口部の縁20aの第1端部20bに乗り上がる直前において、第1シール部材81Aにおけるハウジング11との非接触部にて圧縮応力による応力集中が抑制される。そのため、本実施形態によれば、第1シール部材81Aにおけるハウジング11との非接触部を、図39に示す比較例よりも、滑らかに開口部の縁20aの第1端部20bへ乗り上げることができる。
【0170】
また、本実施形態によれば、図40に示す第1実施形態と比べて、第1シール部材81Aにおけるハウジング11との非接触部が開口部の縁20aの第1端部20bに乗り上がるときに、第1シール部材81Aにおけるハウジング11との非接触部を効果的に押し上げることができる。そのため、本実施形態によれば、第1シール部材81Aにおけるハウジング11との非接触部を、図40に示す第1実施形態よりも、滑らかに開口部の縁20aへ乗り上げることができる。
【0171】
また、本実施形態によれば、図29に示すように、第1端部20bにおけるRの大きさは、(r2-r1)よりも大きい。なお、(r2-r1)は、開口部の縁20aの外周LBの半径r2から開口部の縁20aの内周LAの半径r1を減算した値である。このようにして、本実施形態では、開口部の縁20aの第1端部20bにて、Rの大きさを確実に大きくする。そのため、第1シール部材81Aにおけるハウジング11との非接触部が開口部の縁20aの第1端部20bに乗り上がるときに、より確実に、第1シール部材81Aを効果的に押し上げることができる。また、第1シール部材81Aが摩耗することを抑制できる。
【0172】
また、図27に示すように、本実施形態の2つの第1端部20bの距離(図中に示すD2に相当)は、図41に示す第1実施形態の2つの第1端部20bの距離(図中に示すD3)よりも小さくすることができる。
【0173】
これにより、本実施形態の第1シール部材81Aの長さL2(すなわち、回転ディスク40の回転方向の長さ)を、第1実施形態の第1シール部材81Aの長さL1よりも短くすることができる。そのため、第1シール部材81Aとハウジング11の摺動抵抗を抑制して、回転ディスク40の回転トルクの増加を抑制できる。
【0174】
また、第1変形例として、図30に示すように、回転ディスク40側から見たときの開口部の縁20aの形状を、偏平円形状としてもよい。具体的には、開口部の縁20aの形状について、第1端部20bでの曲率である第1開口曲率CU1を、第2端部20cでの曲率である第2開口曲率CU2よりも小さくしてもよい。すなわち、図30に示すように、第2端部20cでの曲率半径を小径として小さくする一方で、第1端部20bでの曲率半径を大径として大きくしてもよい。
【0175】
なお、第2端部20cから第1端部20bに向かうに連れて、開口部の縁20aの形状の曲率は、徐々に小さくなるように(すなわち、開口部の縁20aの形状の曲率半径は、徐々に大きくなるように)、徐々に変化(徐変)させる。
【0176】
このようにして、第1変形例では、開口部の縁20aの形状について、第1端部20bでの曲率(すなわち、第1開口曲率CU1)を小さくしている。
【0177】
これにより、回転ディスク40がハウジング11に対して相対的に回転することにより第1シール部材81Aが流入流路20を通過するときにおいて、第1シール部材81Aにおけるハウジング11との非接触部が開口部の縁20aの第1端部20bに乗り上がる直前にて、第1シール部材81Aに作用する圧縮応力が抑制される。そのため、第1シール部材81Aにおけるハウジング11との非接触部の流入流路20内への飛び出し量が低減される。したがって、第1シール部材81Aを、滑らかに開口部の縁20aの第1端部20bに乗り上げることができる。
【0178】
また、第2変形例として、図31に示すように、回転ディスク40側から見たときの開口部の縁20aの形状について、第1端部20bに、回転ディスク40の回転方向(図31の左右方向)に直交するようにして直線状に形成されるストレート部101が形成されていてもよい。なお、ストレート部101は、本開示の「縁ストレート部」の一例である。
【0179】
なお、この変形例では、図31に示すように、開口部の縁20aの形状について、第2端部20cにも、回転ディスク40の回転方向(図31の左右方向)に直線状に形成されるストレート部101が形成されており、2つのストレート部101の間に半径LRの円形状部102が形成されている。
【0180】
これにより、第1変形例と同様に、第1シール部材81Aが流入流路20を通過するときにおいて、第1シール部材81Aにおけるハウジング11との非接触部が開口部の縁20aの第1端部20bに乗り上がる直前にて、第1シール部材81Aに作用する圧縮応力が抑制される。
【0181】
なお、図32に示すように、回転ディスク40側から見たときの開口部の縁20aの形状について、第1端部20bにストレート部101が形成されていている一方で、第2端部20cにはストレート部101が形成されていていないとしてもよい。
【0182】
また、第3変形例として、図33に示すように、第1シール部材81Aの形状について、回転ディスク40の回転方向(図33の左右方向)の端部に、ストレート部111を有していてもよい。このストレート部111は、回転ディスク40の回転方向に直交するように直線状に形成されている。なお、ストレート部111は、本開示の「シール部材ストレート部」の一例である。また、ストレート部111の代わりに、略直線状に形成される略ストレート部111a(または、小さな曲率で湾曲している小曲率部とも言う)が形成されていてもよい。なお、この略ストレート部111aは、本開示の「シール部材略ストレート部」の一例である。
【0183】
この変形例では、図33に示すように、第1シール部材81Aの形状について、第1端部20bを通過する部分に、ストレート部111、または、略ストレート部111aが形成され、ストレート部111、または、略ストレート部111aの両側に円形状部112が形成されている。円形状部112は、半径RAの円周である。
【0184】
このようにして、第1シール部材81Aの形状について、その回転ディスク40の回転方向の端部、すなわち、回転ディスク40がハウジング11に対して相対的に回転することにより第1シール部材81Aが流入流路20を通過するときにおいて流入流路20内に一旦解放されて開口部の縁20aの第1端部20bに乗り上げる部分(すなわち、ハウジング11との非接触部)を回転ディスク40の回転方向に直交するように直線状に形成している。
【0185】
これにより、第1シール部材81Aにおけるハウジング11との非接触部が開口部の縁20aの第1端部20bに乗り上げる直前にて、第1シール部材81Aに作用する圧縮応力が抑制される。そのため、第1シール部材81Aの流入流路20内への飛び出し量が低減される。したがって、第1シール部材81Aを滑らかに開口部の縁20aの第1端部20bに乗り上げることができる。
【0186】
なお、上記した実施の形態は単なる例示にすぎず、本開示を何ら限定するものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変形が可能であることはもちろんである。
【0187】
例えば、回転ディスク40が回転するときに第2シール部材81Bが固定ディスク50の固定ディスク連通路70を通過する場合には、第2実施形態及び各変形例の内容は、固定ディスク連通路70及び第2シール部材81Bにも適用されるものとする。
【符号の説明】
【0188】
1,2 流路切替装置
11 ハウジング
12 弁体部
14 制御部
20 流入流路
20a 縁
20b 第1端部
20c 第2端部
21 第1流入流路
22 第2流入流路
23 第3流入流路
30 流出流路
31 第1流出流路
32 第2流出流路
33 第3流出流路
40 回転ディスク
41 円板部
50 固定ディスク
51 円板部
60 回転ディスク連通路
61 第1回転ディスク連通路
62 第2回転ディスク連通路
63 第3回転ディスク連通路
70 固定ディスク連通路
71 第1固定ディスク連通路
72 第2固定ディスク連通路
73 第3固定ディスク連通路
81A 第1シール部材
81B 第2シール部材
101 ストレート部
111 ストレート部
111a 略ストレート部
211 ハウジング
212 スライドバルブ
220 流路口
260 スライドバルブ連通路
281 シール部材
L 中心軸
LA (開口部の縁の)内周
LB (開口部の縁の)外周
r1 半径
r2 半径
CU1 第1開口曲率
CU2 第2開口曲率
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32
図33
図34
図35
図36
図37
図38
図39
図40
図41