(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024059087
(43)【公開日】2024-04-30
(54)【発明の名称】多重化変換器の伝送劣化を評価する方法及び装置
(51)【国際特許分類】
H04B 10/073 20130101AFI20240422BHJP
【FI】
H04B10/073
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023173206
(22)【出願日】2023-10-04
(31)【優先権主張番号】202211267247.0
(32)【優先日】2022-10-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】000005223
【氏名又は名称】富士通株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】スゥ・シアオフェイ
(72)【発明者】
【氏名】イエ・トォン
(72)【発明者】
【氏名】タオ・ジェヌニン
【テーマコード(参考)】
5K102
【Fターム(参考)】
5K102AA01
5K102KA06
5K102KA28
5K102RD26
5K102RD28
(57)【要約】
【課題】本発明は、多重化変換器の伝送劣化を評価する方法及び装置を提供する。
【解決手段】該方法は、多重化変換器の劣化を等価乗算性雑音及び等価加算性雑音に等価することによって、多重化変換器の伝送劣化を推定し、通信システムの性能を推定する。該多重化変換器は、多重化アナログ/デジタル変換器又は多重化デジタル/アナログ変換器である。本発明によれば、多重化変換器の伝送劣化を正確に推定することができ、入力信号の振幅、変調フォーマット及び伝送速度に影響されることなく、多重化変換器を使用する通信システムの性能を推定することができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多重化変換器の伝送劣化を評価する装置であって、
多重化変換器の等価乗算性雑音及び等価加算性雑音を測定し、前記等価乗算性雑音及び前記等価加算性雑音を前記多重化変換器の伝送劣化とする評価部であって、前記多重化変換器は、多重化アナログ/デジタル変換器又は多重化デジタル/アナログ変換器である、評価部、を含む、装置。
【請求項2】
前記評価部は、
受信側において、送信側により送信された複数の振幅及び少なくとも1つの周波数を有するシングルトーン励振信号の電力、及び全高調波歪みプラス雑音の電力を測定する第1の測定部と、
前記シングルトーン励振信号の電力及び前記全高調波歪みプラス雑音の電力に対して線形フィッティングを行い、フィッティング式を取得し、前記フィッティング式の切片を、前記等価加算性雑音を測定するための加算性雑音の電力とし、フィッティング式の傾きを、前記等価乗算性雑音を測定するための乗算性雑音の分散とするフィッティング部と、を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記評価部は、
受信側において、送信側により送信された単一の振幅及び少なくとも1つの周波数を有するシングルトーン励振信号の電力、及び全高調波歪みプラス雑音の電力を測定し、送信側により送信された全ゼロ励振信号の電力を、前記等価加算性雑音を測定するための加算性雑音の電力とし、前記全高調波歪みプラス雑音の電力から前記全ゼロ励振信号の電力を減算して前記シングルトーン励振信号の電力で除算して得られた電力を、前記等価乗算性雑音を測定するための乗算性雑音の分散とする第2の測定部、を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記シングルトーン励振信号の電力及び前記全高調波歪みプラス雑音の電力は、それぞれ1つの周波数での電力又は複数の周波数での平均電力であり、
前記平均電力は、前記複数の周波数での電力に対して均等加重平均化又は非均等加重平均化を行って得られる、請求項2に記載の装置。
【請求項5】
通信システム性能の評価装置であって、
通信システムの等価乗算性雑音及び等価加算性雑音を測定する測定部であって、前記通信システムは、多重化アナログ/デジタル変換器及び多重化デジタル/アナログ変換器を含む、測定部と、
前記通信システムの入力信号に前記等価乗算性雑音を乗算して前記等価加算性雑音を加算して得られたものを、前記通信システムの出力信号とする計算部と、
前記出力信号に基づいて前記通信システムの性能を推定する推定部と、を含む、装置。
【請求項6】
前記通信システムの入力信号は、線形フィルタを通過した信号である、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記等価加算性雑音は、ロックされた電力を有する加算性白色ガウス雑音であり、
前記等価乗算性雑音は、ロックされた分散を有するランダムガウス分布雑音である、請求項5に記載の装置。
【請求項8】
前記測定部は、
受信側において、送信側により送信された複数の振幅及び少なくとも1つの周波数を有するシングルトーン励振信号の電力、及び全高調波歪みプラス雑音の電力を測定する第1の測定部と、
前記シングルトーン励振信号の電力及び前記全高調波歪みプラス雑音の電力に対して線形フィッティングを行い、フィッティング式を取得し、前記フィッティング式の切片を、前記等価加算性雑音を測定するための加算性雑音の電力とし、フィッティング式の傾きを、前記等価乗算性雑音を測定するための乗算性雑音の分散とするフィッティング部と、を含む、請求項5に記載の装置。
【請求項9】
前記測定部は、
受信側において、送信側により送信された単一の振幅及び少なくとも1つの周波数を有するシングルトーン励振信号の電力、及び全高調波歪みプラス雑音の電力を測定し、送信側により送信された全ゼロ励振信号の電力を、前記等価加算性雑音を測定するための加算性雑音の電力とし、前記全高調波歪みプラス雑音の電力から前記全ゼロ励振信号の電力を減算して前記シングルトーン励振信号の電力で除算して得られた電力を、前記等価乗算性雑音を測定するための乗算性雑音の分散とする第2の測定部、を含む、請求項5に記載の装置。
【請求項10】
前記シングルトーン励振信号の電力及び前記全高調波歪みプラス雑音の電力は、それぞれ1つの周波数での電力又は複数の周波数での平均電力であり、
前記平均電力は、前記複数の周波数での電力に対して均等加重平均化又は非均等加重平均化を行って得られる、請求項8に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信技術の分野に関し、特に多重化変換器の伝送劣化を評価する方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在の大容量、超高速の光ファイバ通信システムにおいて、高速のデジタル/アナログ変換器(DAC)及びアナログ/デジタル変換器(ADC)は不可欠なデバイスである。アナログ信号とデジタル信号との高速変換を実現するために、高速DAC及び高速ADCは、通常、時間インターリーブ(time interleaving)多重化又は周波数インターリーブ(frequency interleaving)多重化などの多重化構造を採用する。このような高速多重化のDAC及びADCの歪みメカニズムは非常に複雑である。DAC及びADCの性能は通信システムの根本的な制限であるため、通信システムにおける高速多重化のDAC及びADCに対する劣化評価は非常に重要である。
【0003】
なお、上述した背景技術の説明は、本発明の技術案を明確、完全に理解させるための説明であり、当業者を理解させるために記述されているものである。これらの技術案は、単なる本発明の背景技術部分として説明されたものであり、当業者により周知されたものではない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の発明者の発見によると、信号対雑音歪比(SINAD)及び有効ビット数(ENOB)がDAC及びADCの劣化を記述するために最も広く使用される指標である。DAC又はADCに固定周波数を有するシングルトーン(single tone)信号を入力し、出力されたシングルトーン信号の電力及び全高調波歪みプラス雑音の電力を計算する。SINADはシングルトーン信号の電力と高調波電力及び雑音電力の和との比であり、SINADはENOBに直接変換することができる(ENOB=(SINAD-1.76)/6.02)。ENOB及びSINADは、入力信号がシングルトーン信号である場合のDAC及びADCの雑音特性を記述する。しかし、実際の通信における入力信号は広帯域のランダム信号である。DAC及びADCの劣化及び通信システムの性能は、SINAD又はENOBの値に基づいて直接推定することができない。
【0005】
上記の問題又は他の同様な問題を鑑み、本発明の実施例は、多重化変換器の伝送劣化を評価する方法及び装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施例の第1の態様では、多重化変換器の伝送劣化を評価する装置であって、多重化変換器の等価乗算性雑音及び等価加算性雑音を測定し、前記等価乗算性雑音及び前記等価加算性雑音を前記多重化変換器の伝送劣化とする評価部であって、前記多重化変換器は、多重化アナログ/デジタル変換器又は多重化デジタル/アナログ変換器である、評価部、を含む、装置を提供する。
【0007】
本発明の実施例の第2の態様では、通信システム性能の評価装置であって、通信システムの等価乗算性雑音及び等価加算性雑音を測定する測定部であって、前記通信システムは、多重化アナログ/デジタル変換器及び多重化デジタル/アナログ変換器を含む、測定部と、前記通信システムの入力信号に前記等価乗算性雑音を乗算して前記等価加算性雑音を加算して得られたものを、前記通信システムの出力信号とする計算部と、前記出力信号に基づいて前記通信システムの性能を推定する推定部と、を含む、装置を提供する。
【0008】
本発明の実施例の有利な効果は以下の通りである。本発明の実施例によれば、多重化変換器の伝送劣化を正確に推定することができ、入力信号の振幅、変調フォーマット及び伝送速度に影響されることなく、多重化変換器を使用する通信システムの性能を推定することができる。
【0009】
下記の説明及び図面に示すように、本発明の特定の実施形態が詳細に開示され、本発明の原理を採用できる方式が示される。なお、本発明の実施形態の範囲はこれらに限定されない。本発明の実施形態は、添付される特許請求の範囲の要旨及び項目の範囲内において、変更されたもの、修正されたもの及び均等的なものを含む。
【0010】
1つの実施形態に記載された特徴及び/又は示された特徴は、同一又は類似の方式で1つ又はさらに多くの他の実施形態で用いられてもよいし、他の実施形態における特徴と組み合わせてもよいし、他の実施形態における特徴に代わってもよい。
【0011】
なお、本文では、用語「含む/有する」は、特徴、部材、ステップ又は構成要件が存在することを意味し、一つ又は複数の他の特徴、部材、ステップ又は構成要件の存在又は付加を排除しない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
本発明の実施例の1つの図面及び1つの実施形態に記載された要素及び特徴は、1つ又はさらに多くの図面又は実施形態に示された要素及び特徴と組み合わせてもよい。また、図面において、類似の符号は複数の図面における対応する素子を示し、1つ以上の実施形態に用いられる対応素子を示してもよい。
【0013】
含まれる図面は、本発明の実施例をさらに理解するために用いられ、明細書の一部を構成し、本発明の実施形態を例示するために用いられ、文言の記載と共に本発明の原理を説明する。なお、以下に説明される図面は、単なる本発明の一部の実施例であり、当業者にとっては、これらの図面に基づいて他の図面を容易に想到できる。
【
図1】本発明の実施例に係る方法の一例の概略図である。
【
図2】インターリーブ多重化DACの一例のアーキテクチャの概略図である。
【
図3】時間インターリーブ多重化DACの一例のアーキテクチャの概略図である。
【
図4】時間インターリーブ多重化DACの他の例のアーキテクチャの概略図である。
【
図5】周波数インターリーブ多重化DACの一例のアーキテクチャの概略図である。
【
図6】本実施例に係る多重化変換器の等価乗算性雑音及び等価加算性雑音の測定の一例の概略図である。
【
図7】複数の振幅及び異なる周波数を有するシングルトーン励振信号の電力及び全高調波歪みプラス雑音の電力の線形フィッティングの一例の概略図である。
【
図8】本実施例に係る多重化変換器の等価乗算性雑音及び等価加算性雑音の測定の一例の概略図である。
【
図9】本発明の実施例に係る通信システム性能の評価方法の一例の概略図である。
【
図10】本発明の実施例に係る方法の等価システムの一例の概略図である。
【
図11】振幅の比率が[0,0.5,0.6,0.7,0.8,0.9,1]を含む複数のシングルトーン信号の測定結果及び線形フィッティング結果の一例の概略図である。
【
図12】実験結果のQ値と、従来方式を利用してモデル化されたQ値と、加算性雑音及び乗算性雑音をそれぞれ利用してモデル化されたQ値との対比の概略図である。
【
図13】本発明の実施例に係る多重化変換器の伝送劣化の評価装置の一例の概略図である。
【
図14】本発明の実施例に係る通信システム性能の評価装置の一例の概略図である。
【
図15】本発明の実施例に係るコンピュータシステムの一例の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の上記及びその他の特徴は、図面及び下記の説明により理解できるものである。明細書及び図面では、本発明の特定の実施形態、即ち本発明の原則に従う一部の実施形態を表すものを公開している。なお、本発明は説明される実施形態に限定されず、本発明は、特許請求の範囲内の全ての修正、変更されたもの、及び均等なものを含む。
【0015】
本発明の実施例では、用語「第1」、「第2」は異なる要素を名称で区分するためのものであり、これらの要素の空間的配列又は時間的順序などを意味するものではなく、これらの要素はこれらの用語に限定されない。用語「及び/又は」は列挙された用語の1つ又は複数のうち何れか及びその組み合わせを含む。用語「包括」、「含む」、「有する」は説明された特徴、要素、素子又は部材の存在を意味するが、他の1つ又は複数の特徴、要素、素子又は部材の存在又は追加を排除するものではない。
【0016】
本発明の実施例では、単数形の「一」、「該」等は複数形を含み、「一種」又は「一類」を意味し、「1つ」に限定するものではない。また、用語「前記」は、文脈上明確に指示されない限り、単数形及び複数形両方を含む。また、文脈上明確に指示されない限り、用語「応じて」は「少なくとも部分的に応じて」を意味し、用語「に基づいて」は「少なくとも部分的に基づいて」を意味する。
【0017】
以下は、図面を参照しながら本発明の実施例の様々な態様を説明する。
【0018】
<実施例1>
本発明の実施例は、多重化変換器の伝送劣化の評価方法を提供する。
図1は、本発明の実施例に係る方法の一例の概略図である。
図1に示すように、該方法は、以下のステップを含む。
【0019】
ステップ101:多重化変換器の等価乗算性雑音及び等価加算性雑音を測定し、該多重化変換器は多重化アナログ/デジタル変換器又は多重化デジタル/アナログ変換器である。
【0020】
ステップ102:該等価乗算性雑音及び該等価加算性雑音を該多重化変換器の伝送劣化とする。
【0021】
なお、以上の
図1は、単なる本発明の実施例を概略的に説明するものであり、本発明はこれに限定されない。例えば、他のステップを追加し、或いはその一部のステップを削除してもよい。当業者は、上記の内容に従って適切な変形を行ってもよく、上記の
図1の説明に限定されない。
【0022】
本発明の発明者の発見によると、多重化変換器は、サブ変換器自体の雑音(非線形雑音、DCオフセット(DC offset)、利得誤差(gain error)、時間誤差(timing error)など)、サブ変換器間のアンバランス(DCオフセットミスマッチ(DC offset mismatch)、利得ミスマッチ(gain mismatch)、時間ミスマッチ(timing mismatch)など)、及び量子化雑音、熱雑音などを含む複雑なシステムであり、解析及び処理が困難である。本発明は、複雑な多重化変換器の伝送劣化を乗算性雑音及び加算性雑音に等価することによって、複雑な雑音解析を回避し、直接にシステムの性能を推定することができる。このような等価によれば、異なる振幅、異なる変調フォーマットの信号の異なるボーレートにおけるシステム性能をより容易に推定することができる。また、加算性雑音及び乗算性雑音の測定は入力信号に依存しないため、雑音測定結果は入力信号の振幅、変調フォーマット及び伝送速度に影響されない。
【0023】
本発明の実施例では、システム性能は、EVM(error vector magnitude:誤差ベクトル振幅)、BER(bit error rate:ビット誤り率)、Q値などのパラメータにより評価されてもよい。
【0024】
本発明の実施例では、上記の多重化変換器は、多重化アナログ/デジタル変換器(ADC)であってもよいし、多重化デジタル/アナログ変換器(DAC)であってもよく、例えば高速ADC又は高速DACである。本発明の実施例では、多重化変換器の構成は限定されず、時間インターリーブ多重化であってもよいし、周波数インターリーブ多重化であってもよい。
【0025】
図2は、インターリーブ多重化DACの一例のアーキテクチャの概略図である。
図2に示すように、該インターリーブ多重化DACは、1つのデジタル分離モジュール21、3つのDAC及び1つのアナログ合成モジュール22を含み、入力信号がx(k)であり、出力信号がy(t)である。
図2の例では、3つのサブDACを一例としているが、本発明はこれに限定されず、サブDACの数は2つ又は4つ以上であってもよい。
【0026】
図3は、時間インターリーブ多重化DACの一例のアーキテクチャの概略図であり、
図4は、時間インターリーブ多重化DACの他の例のアーキテクチャの概略図であり、
図5は、周波数インターリーブ多重化DACの一例のアーキテクチャの概略図である。
図3~
図5の例では、それぞれ2つのサブDACを含み、これに加えて他のモジュールをさらに含むが、このアーキテクチャの動作原理は、関連技術を参照してもよく、ここでその説明を省略する。
【0027】
本発明の実施例では、加算性雑音は信号の大きさに関係しないため、加算性雑音の電力を用いて加算性雑音の大きさを測定する。また、乗算性雑音は信号の大きさに関係するため、乗算性雑音の分散を用いて乗算性雑音の大きさを測定する。
【0028】
幾つかの態様では、複数の振幅を有するシングルトーン励振信号に基づいて多重化変換器の等価乗算性雑音及び等価加算性雑音を測定する。
【0029】
図6は、本実施例に係る多重化変換器の等価乗算性雑音及び等価加算性雑音の測定の一例の概略図である。
図6に示すように、該方法は、以下のステップを含む。
【0030】
ステップ601:送信側において複数の振幅及び少なくとも1つの周波数を有するシングルトーン励振信号を送信する。
【0031】
ステップ602:受信側において該シングルトーン励振信号の電力及び全高調波歪みプラス雑音の電力を測定する。
【0032】
ステップ603:該シングルトーン励振信号の電力及び該全高調波歪みプラス雑音の電力に対して線形フィッティングを行い、フィッティング式を取得する。
【0033】
ステップ604:該フィッティング式の切片を、該等価加算性雑音を測定するための加算性雑音の電力とし、フィッティング式の傾きを、該等価乗算性雑音を測定するための乗算性雑音の分散とする。
【0034】
なお、以上の
図6は、単なる本発明の実施例を概略的に説明するものであり、本発明はこれに限定されない。例えば、他のステップを追加し、或いはその一部のステップを削除してもよい。当業者は、上記の内容に従って適切な変形を行ってもよく、上記の
図6の説明に限定されない。
【0035】
該態様では、まず従来のSINADの測定方法に従って、異なる振幅及び少なくとも1つの周波数のシングルトーン励振で、該多重化変換器のシングルトーン励振信号の電力(Sと称する)及び全高調波歪みプラス雑音の電力(THD+Nと称する)を測定して、その後、該全高調波歪みプラス雑音の電力(THD+N)及び該シングルトーン励振信号の電力(S)に対して線形フィッティングを行い、切片b及び傾きaを取得する。
図7に示すように、該切片bは、等価加算性雑音の電力として、等価加算性雑音を測定するために使用されてもよい。該傾きaは、等価乗算性雑音の分散として、等価乗算性雑音を測定するために使用されてもよい。
【0036】
上述の態様では、シングルトーン励振信号の電力及び全高調波歪みプラス雑音の電力は、1つの周波数での電力であってもよいし、複数の周波数での平均電力であってもよい。
【0037】
例えば、各振幅のシングルトーン励振信号について、ある周波数で送信し、送信された該振幅のシングルトーン励振信号について電力測定を行ってもよく、測定された電力は該周波数での電力である。これによって、該シングルトーン励振信号の電力S及び全高調波歪みプラス雑音の電力THD+Nは、該周波数でのシングルトーン励振信号の電力S及び全高調波歪みプラス雑音の電力THD+Nである。
【0038】
また、例えば、各振幅のシングルトーン励振信号について、異なる周波数で複数回送信し、送信毎に該振幅のシングルトーン励振信号について電力測定を行ってもよい。送信毎に用いる周波数が異なるため、測定毎に得られた電力も異なり、複数回測定された電力の平均値を該振幅のシングルトーン励振信号の電力とする。これによって、該シングルトーン励振信号の電力S及び全高調波歪みプラス雑音の電力THD+Nは、複数の周波数でのシングルトーン励振信号の電力Sの平均電力、及び複数の周波数での全高調波歪みプラス雑音の電力THD+Nの平均電力である。
【0039】
上記の態様では、平均電力は、上記の複数回の測定で得られた電力に対して均等加重平均化を行って得られたものであってもよいし、上記の複数回の測定で得られた電力に対して非均等加重平均化を行って得られたものであってもよいが、本発明はこれに限定されない。
【0040】
図7は、複数の振幅及び異なる周波数を有するシングルトーン励振信号の電力及び全高調波歪みプラス雑音の電力の線形フィッティングの一例の概略図である。
図7に示すように、X軸は、シングルトーン励振信号の電力であり、Y軸は、全高調波歪みプラス雑音の電力である。5つの振幅のシングルトーン励振信号の電力及び全高調波歪みプラス雑音の電力に対して線形フィッティングを行うことによって、フィッティング式Y=a*X+bが得られる。ここで、傾きaは、等価乗算性雑音の分散として、等価乗算性雑音を測定するために使用され、切片bは、等価加算性雑音の電力として、等価加算性雑音を測定するために使用される。
図7の例では、各振幅の電力(シングルトーン励振信号の電力及び全高調波歪みプラス雑音の電力)は、信号の帯域幅範囲をカバーする16個の等間隔周波数の測定電力の平均電力であってもよいし、単一周波数の測定電力であってもよい。
【0041】
他の態様では、全ゼロ励振信号及び単一振幅のシングルトーン励振信号に基づいて多重化変換器の等価乗算性雑音及び等価加算性雑音を測定する。
【0042】
図8は、本実施例に係る多重化変換器の等価乗算性雑音及び等価加算性雑音の測定の一例の概略図である。
図8に示すように、該方法は、以下のステップを含む。
【0043】
ステップ801:送信側において全ゼロ励振信号、及び単一の振幅及び少なくとも1つの周波数を有するシングルトーン励振信号を送信する。
【0044】
ステップ802:受信側において該シングルトーン励振信号の電力及び全高調波歪みプラス雑音の電力を測定する。
【0045】
ステップ803:該全ゼロ励振信号の電力を、該等価加算性雑音を測定するための加算性雑音の電力とする。
【0046】
ステップ804:該全高調波歪みプラス雑音の電力から該全ゼロ励振信号の電力を減算して該シングルトーン励振信号の電力で除算して得られた電力を、該等価乗算性雑音を測定するための乗算性雑音の分散とする。
【0047】
なお、以上の
図8は、単なる本発明の実施例を概略的に説明するものであり、本発明はこれに限定されない。例えば、他のステップを追加し、或いはその一部のステップを削除してもよい。当業者は、上記の内容に従って適切な変形を行ってもよく、上記の
図8の説明に限定されない。
【0048】
上記の態様では、
図6の例とは異なり、等価加算性雑音を測定するための加算性雑音の電力は、全ゼロ信号励振を使用することによって得られ、等価乗算性雑音を測定するための加算性雑音の分散は、ある振幅のシングルトーン励振での全高調波歪みプラス雑音の電力(THD+N)から全ゼロ信号励振での電力を減算して、シングルトーン励振信号の電力(S)で除算することによって得られる。
【0049】
上記の態様によれば、多重化変換器(ADC又はDAC)の劣化を等価乗算性雑音及び等価加算性雑音に等価し、シングルトーン励振信号の測定結果から等価加算性雑音及び等価乗算性雑音を取得し、実際の通信システムの性能を推定する。加算性雑音及び乗算性雑音の測定は入力信号に依存しないため、雑音測定結果は入力信号の振幅、変調フォーマット及び伝送速度に影響されない。
【0050】
本発明の実施例は、通信システム性能の評価方法をさらに提供する。
図9は、本発明の実施例に係る通信システム性能の評価方法の一例の概略図である。
図9に示すように、該方法は、以下のステップを含む。
【0051】
ステップ901:通信システムの等価乗算性雑音及び等価加算性雑音を測定し、該通信システムは多重化アナログ/デジタル変換器及び多重化デジタル/アナログ変換器を含む。
【0052】
ステップ902:該通信システムの入力信号に該等価乗算性雑音を乗算して該等価加算性雑音を加算して得られたものを、該通信システムの出力信号とする。
【0053】
ステップ903:該出力信号に基づいて該通信システムの性能を推定する。
【0054】
なお、以上の
図9は、単なる本発明の実施例を概略的に説明するものであり、本発明はこれに限定されない。例えば、他のステップを追加し、或いはその一部のステップを削除してもよい。当業者は、上記の内容に従って適切な変形を行ってもよく、上記の
図9の説明に限定されない。
【0055】
本発明の発明者の発見によると、等価加算性雑音が通信システムにおいて一般的に使用される等価方法であり、例えば、光ファイバ非線形システムの性能を推定するために、等価加算性雑音を用いて光ファイバ非線形雑音をモデル化する。本発明は、等価モデルに等価乗算性雑音モジュールを含む。即ち、等価乗算性雑音及び等価加算性雑音を使用して通信システムをモデル化することによって、信号に関連する乗算性雑音を等価モデルに含めることができる。
【0056】
例えば、時間インターリーブDACにおけるサブDAC間の利得ミスマッチ(gain mismatch)、時間ミスマッチ(timing mismatch)は、信号に関連する周期的な乗算性雑音であり、該乗算性雑音は、従来の加算性雑音モデルにより正確に記述することができず、乗算性雑音モデルにより正確に記述することができる。等価モデルに等価加算性雑音モジュール及び等価乗算性雑音モジュールを含めることによって、複雑な通信システムの性能推定の包含性がより高くなる。
【0057】
図10は、本発明の実施例に係る方法の等価システムの一例の概略図である。
図10に示すように、該等価システムの出力はy(t)=[1+alfa(t)]x(t)+n(t)である。ここで、x(t)は等価システムの入力を表し、n(t)は等価加算性雑音を表し、1+alfa(t)は等価乗算性雑音を表す。
図10の例では、該等価システムの入力x(t)には等価線形フィルタが既に含まれ、即ち、該等価システムの入力x(t)は線形フィルタを通過した信号である。
【0058】
上記の態様では、加算性雑音及び乗算性雑音の帯域幅は、測定時に用いる帯域幅と等しい。
【0059】
上記の態様では、等価加算性雑音n(t)は、ロックされた電力を有する加算性白色ガウス雑音(AWGN)としてモデル化され、等価乗算性雑音1+alfa(t)におけるalfa(t)は、ロックされた分散を有するランダムガウス分布雑音としてモデル化される。
【0060】
幾つかの態様では、等価加算性雑音n(t)及び等価乗算性雑音1+alfa(t)は、
図6の方法により取得されてもよい。即ち、送信側において複数の振幅及び少なくとも1つの周波数を有するシングルトーン励振信号を送信し、受信側において該シングルトーン励振信号の電力及び全高調波歪みプラス雑音の電力を測定し、該シングルトーン励振信号の電力及び該全高調波歪みプラス雑音の電力に対して線形フィッティングを行い、フィッティング式を取得し、該フィッティング式の切片を、該等価加算性雑音を測定するための加算性雑音の電力とし、フィッティング式の傾きを、該等価乗算性雑音を測定するための乗算性雑音の分散とする。
【0061】
例えば、送信機側は、異なる振幅及び少なくとも1つの周波数を有するシングルトーン信号(sine)を送信する(シングルトーン信号の振幅が0である場合、全ゼロ信号を送信することに等しい)。受信機端は、上記のシングルトーン信号に対応する周波数での電力、全高調波歪みプラス雑音の電力を測定する。ある振幅のシングルトーン信号に対応する周波数での電力をX(i)とし、全高調波歪みプラス雑音の電力をY(i)とし、iはシングルトーン信号の振幅を変更する測定回数に対応する。上記の電力X(i)及びY(i)は、ある周波数での電力であってもよいし、複数の周波数での平均電力であってもよい。平均化方法は、均等加重平均化であってもよいし、非均等加重平均化であってよい。その後、Y(i)をX(i)に線形フィッティングし、X(i)及びY(i)は何れも線形単位であり、フィッティング式Y(i)=a*X(i)+bを取得し、切片bは加算性雑音の電力であり、傾きaは乗算性雑音の分散である。ここで、加算性雑音モデル(即ち、等価加算性雑音)はロックされた電力がbの加算性白色ガウス雑音(AWGN)を用い、乗算性雑音モデル(即ち、等価乗算性雑音)は1+alfa(t)を用い、alfa(t)はロックされた分散がaのランダムガウスシーケンスである。
【0062】
上記の態様では、複数の振幅のシングルトーン信号の振幅は、等間隔で値を取るようにしてもよいし、等間隔でない間隔で値を取るようにしてもよい。線形フィッティングプロセスに関与する測定点は、全ゼロ入力の測定結果を含んでもよいし、全ゼロ入力の測定結果を含まなくてもよい。線形フィッティングは、強制ゼロクロッシングフィッティングであってもよいし、非ゼロクロッシングフィッティングであってもよい。
【0063】
図11は、振幅の比率が[0,0.5,0.6,0.7,0.8,0.9,1]を含む複数のシングルトーン信号の測定結果及び線形フィッティング結果の一例の概略図である。
図11に示すように、本発明の実施例の方法に従って実測が12GSample/s PAM8信号をモデル化し、等価乗算性雑音は1+alfa(t)であり、alfa(t)は、ロックされた分散が0.0137であるランダムガウスシーケンスを使用し、等価加算性雑音は、ロックされた電力が29.092である加算白色ガウス雑音を使用する。
【0064】
図12は、実験結果のQ値と、従来方式を利用してモデル化されたQ値と、加算性雑音及び乗算性雑音をそれぞれ利用してモデル化されたQ値との対比の概略図である。
図12から分かるように、本発明の実施例に係る方法(即ち、加算性雑音及び乗算性雑音を使用したモデル化)で得られたQ値は、実験結果により近いため、本発明の実施例に係る方法によれば、システム性能をより正確に推定することができる。
【0065】
他の態様では、等価加算性雑音n(t)及び等価乗算性雑音1+alfa(t)は、
図8の方法により取得されてもよい。即ち、送信側において全ゼロ励振信号、及び単一の振幅及び少なくとも1つの周波数を有するシングルトーン励振信号を送信し、受信側において該シングルトーン励振信号の電力及び全高調波歪みプラス雑音の電力を測定し、該全ゼロ励振信号の電力を、該等価加算性雑音を測定するための加算性雑音の電力とし、該全高調波歪みプラス雑音の電力から該全ゼロ励振信号の電力を減算して該シングルトーン励振信号の電力で除算して得られた電力を、該等価乗算性雑音を測定するための乗算性雑音の分散とする。具体的には
図8の説明を参照してもよく、ここでその説明省略する。
【0066】
本発明の実施例では、該通信システムは、例えば多重化ADC及び多重化DACなどの多重化変換器を含み、多重化ADC及び多重化DACについて既に説明したため、ここでその説明を省略する。また、該通信システムは、他のデバイスをさらに含んでもよい。
【0067】
上記の各態様では、等価加算性雑音n(t)をロックされた電力を有する加算性白色ガウス雑音(AWGN)としてモデル化し、等価乗算性雑音1+alfa(t)におけるalfa(t)をロックされた分散を有するランダムガウス分布雑音としてモデル化することを一例としているが、本発明はこれに限定されず、該等価加算性雑音n(t)及び等価乗算性雑音1+alfa(t)におけるalfa(t)は、均一分布、カイ二乗分布などの他の分布の雑音又はシーケンスとしてモデル化されてもよい。
【0068】
上記の各態様では、通信システムの入力が線形フィルタを通過した入力信号であることを一例としているが、本発明はこれに限定されず、入力信号は、線形フィルタを通過するだけでなく、該通信システムの他のデバイス又はデジタル信号処理、例えばクロック再生、フレーム同期などを通過してもよい。
【0069】
上記の態様では、通信システムの入力に等価乗算性雑音を乗算して等価加算性雑音を加算したものを通信システムの出力信号とすることを一例としているが、本発明はこれに限らず、通信システムの入力に等価加算性雑音を加算して等価乗算性雑音を乗算したものを通信システムの出力としてもよい。また、
図10の等価モデルでは、該等価モデルに等価乗算性雑音及び等価加算雑音が含まれる限り、他の形式の雑音モデルを追加してもよく、これらの態様は何れも本発明の範囲内に含まれる。
【0070】
上記の実施例は、本発明の実施例を例示するだけであり、本発明はこれに限定されず、上記の各実施例に基づいて適切な変形を行ってもよい。例えば、上記の各実施例のそれぞれを単独で使用してもよいし、上記の各実施例の1つ又は複数を組み合わせて使用してもよい。
【0071】
本発明の実施例に係る方法によれば、多重化変換器の伝送劣化を正確に推定することができ、入力信号の振幅、変調フォーマット及び伝送速度に影響されることなく、多重化変換器を使用する通信システムの性能を推定することができる。
【0072】
<実施例2>
本発明の実施例は、多重化変換器の伝送劣化の評価装置を提供する。該装置の問題を解決する原理は実施例1の多重化変換器の伝送劣化の評価方法と同様であるため、実施例1と同様な内容についてその説明を省略する。
【0073】
図13は、本発明の実施例に係る多重化変換器の伝送劣化の評価装置の一例の概略図である。
図13に示すように、多重化変換器の伝送劣化の評価装置1300は、以下の各部を含む。
【0074】
評価部1301は、多重化変換器の等価乗算性雑音及び等価加算性雑音を測定し、該等価乗算性雑音及び該等価加算性雑音を該多重化変換器の伝送劣化とする。該多重化変換器は、多重化アナログ/デジタル変換器又は多重化デジタル/アナログ変換器である。
【0075】
幾つかの態様では、
図13に示すように、評価部1301は、以下の各部を含む。
【0076】
第1の測定部13011は、受信側において、送信側により送信された複数の振幅及び少なくとも1つの周波数を有するシングルトーン励振信号の電力、及び全高調波歪みプラス雑音の電力を測定する。
【0077】
フィッティング部13012は、該シングルトーン励振信号の電力及び該全高調波歪みプラス雑音の電力に対して線形フィッティングを行い、フィッティング式を取得し、該フィッティング式の切片を、該等価加算性雑音を測定するための加算性雑音の電力とし、フィッティング式の傾きを、該等価乗算性雑音を測定するための乗算性雑音の分散とする。
【0078】
上記の態様では、該シングルトーン励振信号の電力及び該全高調波歪みプラス雑音の電力は、それぞれ、1つの周波数での電力であってもよいし、複数の周波数での平均電力であってもよい。
【0079】
上記の態様では、該平均電力は、該複数の周波数での電力に対して均等加重平均化又は非均等加重平均化を行って得られてもよい。
【0080】
他の態様では、
図13に示すように、評価部1301は、以下の各部を含む。
【0081】
第2の測定部13013は、受信側において、送信側により送信された単一の振幅及び少なくとも1つの周波数を有するシングルトーン励振信号の電力、及び全高調波歪みプラス雑音の電力を測定し、送信側により送信された全ゼロ励振信号の電力を、該等価加算性雑音を測定するための加算性雑音の電力とし、該全高調波歪みプラス雑音の電力から該全ゼロ励振信号の電力を減算して該シングルトーン励振信号の電力で除算して得られた電力を、該等価乗算性雑音を測定するための乗算性雑音の分散とする。
【0082】
本発明の実施例は、通信システム性能の評価装置を提供する。該装置の問題を解決する原理は実施例1の通信システム性能の評価方法と同様であるため、実施例1と同様な内容についてその説明を省略する。
【0083】
図14は、本発明の実施例に係る通信システム性能の評価装置の一例の概略図である。
図14に示すように、通信システム性能の評価装置1400は、以下の各部を含む。
【0084】
測定部1401は、通信システムの等価乗算性雑音及び等価加算性雑音を測定する。該通信システムは、多重化アナログ/デジタル変換器及び多重化デジタル/アナログ変換器を含む。
【0085】
計算部1402は、該通信システムの入力信号に該等価乗算性雑音を乗算して該等価加算性雑音を加算して得られたものを、該通信システムの出力信号とする。
【0086】
推定部1403は、該出力信号に基づいて該通信システムの性能を推定する。
【0087】
幾つかの態様では、該通信システムの入力信号は、線形フィルタを通過した信号である。
【0088】
幾つかの態様では、該等価加算性雑音は、ロックされた電力を有する加算性白色ガウス雑音であり、該等価乗算性雑音は、ロックされた分散を有するランダムガウス分布雑音である。
【0089】
幾つかの態様では、
図14に示すように、測定部1401は、以下の各部を含む。
【0090】
第1の測定部14011は、受信側において、送信側により送信された複数の振幅及び少なくとも1つの周波数を有するシングルトーン励振信号の電力、及び全高調波歪みプラス雑音の電力を測定する。
【0091】
フィッティング部14012は、該シングルトーン励振信号の電力及び該全高調波歪みプラス雑音の電力に対して線形フィッティングを行い、フィッティング式を取得し、該フィッティング式の切片を、該等価加算性雑音を測定するための加算性雑音の電力とし、フィッティング式の傾きを、該等価乗算性雑音を測定するための乗算性雑音の分散とする。
【0092】
上記の態様では、該シングルトーン励振信号の電力及び全高調波歪みプラス雑音の電力は、それぞれ、1つの周波数での電力であってもよいし、複数の周波数での平均電力であってもよい。
【0093】
上記の態様では、該平均電力は、該複数の周波数での電力に対して均等加重平均化又は非均等加重平均化を行って得られてもよい。
【0094】
他の態様では、
図14に示すように、測定部1401は、以下の各部を含む。
【0095】
第2の測定部14013は、受信側において、送信側により送信された単一の振幅及び少なくとも1つの周波数を有するシングルトーン励振信号の電力、及び全高調波歪みプラス雑音の電力を測定し、送信側により送信された全ゼロ励振信号の電力を、該等価加算性雑音を測定するための加算性雑音の電力とし、該全高調波歪みプラス雑音の電力から該全ゼロ励振信号の電力を減算して該シングルトーン励振信号の電力で除算して得られた電力を、該等価乗算性雑音を測定するための乗算性雑音の分散とする。
【0096】
上記の態様では、通信システムは多重化変換器を含み、該多重化変換器は多重化ADC及び多重化DACを含む。
【0097】
本発明の実施例に係る装置によれば、多重化変換器の伝送劣化を正確に推定することができ、入力信号の振幅、変調フォーマット及び伝送速度に影響されることなく、多重化変換器を使用する通信システムの性能を推定することができる。
【0098】
<実施例3>
本発明の実施例は、コンピュータシステムを提供する。該コンピュータシステムは、通信システムの受信側、クラウド側、又は他の任意の実装可能な位置に構成されてもよい。
【0099】
図15は、本発明の実施例に係るコンピュータシステムの一例の概略図である。
図15に示すように、コンピュータシステム1500は、プロセッサ1501及びメモリ1502を含んでもよく、メモリ1502はプロセッサ1501に接続される。メモリ1502は、様々なデータを記憶してもよく、また、情報処理のためのプログラムをさらに記憶し、プロセッサ1501の制御下で該プログラムを実行する。
【0100】
幾つかの態様では、実施例2に係る多重化変換器の伝送劣化の評価装置1300又は通信システム性能の評価装置1400の機能はプロセッサ1501に統合されてもよい。ここで、プロセッサ1501は、プログラムを実行して実施例1に係る方法を実現するように構成されてもよく、その内容はここで援用され、ここでその説明を省略する。
【0101】
他の幾つかの態様では、実施例2に係る多重化変換器の伝送劣化の評価装置1300又は通信システム性能の評価装置1400はプロセッサ1501とそれぞれ構成されてもよい。例えば、実施例2に係る多重化変換器の伝送劣化の評価装置1300又は通信システム性能の評価装置1400はプロセッサ1501に接続されたチップであり、プロセッサ1501の制御により実施例2に係る多重化変換器の伝送劣化の評価装置1300又は通信システム性能の評価装置1400の機能を実現してもよい。
【0102】
図15に示すように、コンピュータシステム1500は、通信モジュール1503、入力部1504、ディスプレイ1505、及び電源1506をさらに含んでもよい。ここで、上記部材の機能は従来技術と同様であるため、ここでその説明を省略する。なお、コンピュータシステム1500は、
図15に示される全ての構成要素を含む必要がなく、上記の構成要素は必須ではない。また、コンピュータシステム1500は、
図15に示されていない構成要素をさらに含んでもよく、関連技術を参照してもよい。
【0103】
本発明の実施例は、多重化変換器の伝送劣化を評価する装置においてプログラムを実行する際に、該多重化変換器の伝送劣化を評価する装置に実施例1に記載の多重化変換器の伝送劣化を評価する方法を実行させる、コンピュータ読み取り可能なプログラムをさらに提供する。
【0104】
本発明の実施例は、コンピュータに、多重化変換器の伝送劣化を評価する装置に実施例1に記載の多重化変換器の伝送劣化を評価する方法を実行させるためのコンピュータ読み取り可能なプログラムを記憶する、記憶媒体をさらに提供する。
【0105】
本発明の実施例は、通信システム性能の評価装置においてプログラムを実行する際に、コンピュータに、該通信システム性能の評価装置に実施例1に記載の通信システム性能の評価方法を実行させる、コンピュータ読み取り可能なプログラムをさらに提供する。
【0106】
本発明の実施例は、コンピュータに、通信システム性能の評価装置に実施例1に記載の通信システム性能の評価方法を実行させるためのコンピュータ読み取り可能なプログラムを記憶する、記憶媒体をさらに提供する。
【0107】
本発明の上記の装置及び方法は、ハードウェアにより実現されてもよく、ハードウェアとソフトウェアを結合して実現されてもよい。本発明はコンピュータが読み取り可能なプログラムに関し、該プログラムはロジック部により実行される際に、該ロジック部に上述した装置又は構成要件を実現させる、或いは該ロジック部に上述した各種の方法又はステップを実現させることができる。本発明は上記のプログラムを記憶するための記憶媒体、例えばハードディスク、磁気ディスク、光ディスク、DVD、フラッシュメモリ等に関する。
【0108】
本発明の実施例を参照しながら説明した方法/装置は、ハードウェア、プロセッサにより実行されるソフトウェアモジュール、又は両者の組み合わせで実施されてもよい。例えば、図面に示す機能的ブロック図における1つ若しくは複数、又は機能的ブロック図の1つ若しくは複数の組み合わせは、コンピュータプログラムフローの各ソフトウェアモジュールに対応してもよいし、各ハードウェアモジュールに対応してもよい。これらのソフトウェアモジュールは、図面に示す各ステップにそれぞれ対応してもよい。これらのハードウェアモジュールは、例えばフィールド・プログラマブル・ゲートアレイ(FPGA)を用いてこれらのソフトウェアモジュールをハードウェア化して実現されてもよい。
【0109】
ソフトウェアモジュールは、RAMメモリ、フラッシュメモリ、ROMメモリ、EPROMメモリ、EEPROMメモリ、レジスタ、ハードディスク、モバイルハードディスク、CD-ROM又は当業者にとって既知の任意の他の形の記憶媒体に位置してもよい。プロセッサが記憶媒体から情報を読み取り、或いは記憶媒体に情報を書き込むように該記憶媒体をプロセッサに接続してもよいし、記憶媒体がプロセッサの構成部であってもよい。プロセッサ及び記憶媒体はASICに位置する。該ソフトウェアモジュールは移動端末のメモリに記憶されてもよいし、移動端末に挿入されたメモリカードに記憶されてもよい。例えば、機器(例えば移動端末)が比較的に大きい容量のMEGA-SIMカード又は大容量のフラッシュメモリ装置を用いる場合、該ソフトウェアモジュールは該MEGA-SIMカード又は大容量のフラッシュメモリ装置に記憶されてもよい。
【0110】
図面に記載されている一つ以上の機能ブロック及び/又は機能ブロックの一つ以上の組合せは、本願に記載されている機能を実行するための汎用プロセッサ、デジタル信号プロセッサ(DSP)、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールド・プログラマブル・ゲートアレイ(FPGA)又は他のプログラマブル論理デバイス、ディスクリートゲート又はトランジスタ論理装置、ディスクリートハードウェアコンポーネント、又はそれらの任意の適切な組み合わせで実現されてもよい。図面に記載されている一つ以上の機能ブロック及び/又は機能ブロックの一つ以上の組合せは、例えば、コンピューティング機器の組み合わせ、例えばDSPとマイクロプロセッサの組み合わせ、複数のマイクロプロセッサの組み合わせ、DSP通信と組み合わせた1つ又は複数のマイクロプロセッサ又は他の任意の構成で実現されてもよい。
【0111】
以上は具体的な実施形態を参照しながら本発明を説明しているが、上記の説明は、例示的なものに過ぎず、本発明の保護の範囲を限定するものではない。本発明の趣旨及び原理を離脱しない限り、本発明に対して各種の変形及び変更を行ってもよく、これらの変形及び変更も本発明の範囲に属する。
【0112】
また、上述の実施例を含む実施形態に関し、更に以下の付記を開示する。
(付記1)
多重化変換器の伝送劣化を評価する方法であって、
多重化変換器の等価乗算性雑音及び等価加算性雑音を測定するステップと、
前記等価乗算性雑音及び前記等価加算性雑音を前記多重化変換器の伝送劣化とするステップと、を含む、方法。
(付記2)
前記多重化変換器の等価乗算性雑音及び等価加算性雑音を測定するステップは、
送信側において複数の振幅及び少なくとも1つの周波数を有するシングルトーン励振信号を送信するステップと、
受信側において前記シングルトーン励振信号の電力及び全高調波歪みプラス雑音の電力を測定するステップと、
前記シングルトーン励振信号の電力及び前記全高調波歪みプラス雑音の電力に対して線形フィッティングを行い、フィッティング式を取得するステップと、
前記フィッティング式の切片を、前記等価加算性雑音を測定するための加算性雑音の電力とし、フィッティング式の傾きを、前記等価乗算性雑音を測定するための乗算性雑音の分散とするステップと、を含む、付記1に記載の方法。
(付記3)
前記多重化変換器の等価乗算性雑音及び等価加算性雑音を測定するステップは、
送信側において全ゼロ励振信号、及び単一の振幅及び少なくとも1つの周波数を有するシングルトーン励振信号を送信するステップと、
受信側において前記シングルトーン励振信号の電力及び全高調波歪みプラス雑音の電力を測定するステップと、
前記全ゼロ励振信号の電力を、前記等価加算性雑音を測定するための加算性雑音の電力とするステップと、
前記全高調波歪みプラス雑音の電力から前記全ゼロ励振信号の電力を減算して前記シングルトーン励振信号の電力で除算して得られた電力を、前記等価乗算性雑音を測定するための乗算性雑音の分散とするステップと、を含む、付記1に記載の方法。
(付記4)
前記シングルトーン励振信号の電力及び前記全高調波歪みプラス雑音の電力は、それぞれ1つの周波数での電力又は複数の周波数での平均電力である、付記2に記載の方法。
(付記5)
前記平均電力は、前記複数の周波数での電力に対して均等加重平均化又は非均等加重平均化を行って得られる、付記4に記載の方法。
(付記6)
前記多重化変換器は、多重化アナログ/デジタル変換器又は多重化デジタル/アナログ変換器である、付記1乃至5の何れかに記載の方法。
(付記7)
通信システム性能の評価方法であって、
通信システムの等価乗算性雑音及び等価加算性雑音を測定するステップと、
前記通信システムの入力信号に前記等価乗算性雑音を乗算して前記等価加算性雑音を加算して得られたものを、前記通信システムの出力信号とするステップと、
前記出力信号に基づいて前記通信システムの性能を推定するステップと、を含む、方法。
(付記8)
前記通信システムの入力信号は、線形フィルタを通過した信号である、付記7に記載の方法。
(付記9)
前記等価加算性雑音は、ロックされた電力を有する加算性白色ガウス雑音である、付記7に記載の方法。
(付記10)
前記等価乗算性雑音は、ロックされた分散を有するランダムガウス分布雑音である、付記7に記載の方法。
(付記11)
前記通信システムの等価乗算性雑音及び等価加算性雑音を測定するステップは、
送信側において複数の振幅及び少なくとも1つの周波数を有するシングルトーン励振信号を送信するステップと、
受信側において前記シングルトーン励振信号の電力及び全高調波歪みプラス雑音の電力を測定するステップと、
前記シングルトーン励振信号の電力及び前記全高調波歪みプラス雑音の電力に対して線形フィッティングを行い、フィッティング式を取得するステップと、
前記フィッティング式の切片を、前記等価加算性雑音を測定するための加算性雑音の電力とし、フィッティング式の傾きを、前記等価乗算性雑音を測定するための乗算性雑音の分散とするステップと、を含む、付記7に記載の方法。
(付記12)
前記通信システムの等価乗算性雑音及び等価加算性雑音を測定するステップは、
送信側において全ゼロ励振信号、及び単一の振幅及び少なくとも1つの周波数を有するシングルトーン励振信号を送信するステップと、
受信側において前記シングルトーン励振信号の電力及び全高調波歪みプラス雑音の電力を測定するステップと、
前記全ゼロ励振信号の電力を、前記等価加算性雑音を測定するための加算性雑音の電力とし、前記全高調波歪みプラス雑音の電力から前記全ゼロ励振信号の電力を減算して前記シングルトーン励振信号の電力で除算して得られた電力を、前記等価乗算性雑音を測定するための乗算性雑音の分散とするステップと、を含む、付記7に記載の方法。
(付記13)
前記シングルトーン励振信号の電力及び前記全高調波歪みプラス雑音の電力は、それぞれ1つの周波数での電力又は複数の周波数での平均電力である、付記11に記載の方法。
(付記14)
前記平均電力は、前記複数の周波数での電力に対して均等加重平均化又は非均等加重平均化を行って得られる、付記13に記載の方法。
(付記15)
前記通信システムは、多重化アナログ/デジタル変換器及び多重化デジタル/アナログ変換器を含む、付記7乃至14の何れかに記載の方法。
(付記16)
コンピュータプログラムが記憶されたメモリと、プロセッサと、を含み、前記プロセッサは、前記コンピュータプログラムを実行して付記1乃至15の何れかに記載の方法を実現するように構成される、コンピュータシステム。