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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024059097
(43)【公開日】2024-04-30
(54)【発明の名称】浴室用履物
(51)【国際特許分類】
   A43B 13/14 20060101AFI20240422BHJP
   A43B 13/22 20060101ALI20240422BHJP
【FI】
A43B13/14 C
A43B13/22 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023177508
(22)【出願日】2023-10-13
(31)【優先権主張番号】P 2022166324
(32)【優先日】2022-10-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000101363
【氏名又は名称】アズマ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100119404
【弁理士】
【氏名又は名称】林 直生樹
(72)【発明者】
【氏名】山本 恭路
(72)【発明者】
【氏名】藤井 大五郎
【テーマコード(参考)】
4F050
【Fターム(参考)】
4F050AA28
4F050BA08
4F050BA57
4F050GA03
4F050JA26
(57)【要約】
【課題】浴室用履物において、不使用時に、乾燥も兼ねて壁面に簡単に収納することが可能なものを提供する。
【解決手段】靴底5は、長手方向の先端側に配されて足の爪先側を支持するための第1領域9と、長手方向の後端側に配されて足の踵側を支持するための第2領域10と、これら第1領域9及び第2領域10の間に配されて足の土踏まず部分を支持するための第3領域11とによって形成され、靴底5の長手方向に延びる一対の側縁12,12のうち、前記第1領域9及び第2領域10を区画する一対の側縁12a,12bは、外側に凸を成した曲線状に形成され、前記第3領域11を区画する一対の側縁12c,12cは、内側に凸を成した曲線状に形成され、前記靴底5には、磁石3が、その吸着面3aを靴底5の外面5b側に配して取り付けられる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
防水性を有する材料から成る浴室用履物であって、
前記浴室用履物の靴底は、長手方向の先端側に配されて足の爪先側を支持するための第1領域と、長手方向の後端側に配されて足の踵側を支持するための第2領域と、これら第1領域及び第2領域の間に配されて足の土踏まず部分を支持するための第3領域とによって形成されており、
前記靴底の長手方向に延びる一対の側縁のうち、前記第1領域及び第2領域を区画する一対の側縁は、外側に凸を成した曲線状に形成され、前記第3領域を区画する一対の側縁は、内側に凸を成した曲線状に形成され、
前記靴底には、磁石が、その吸着面を靴底の外面側に配して取り付けられている、
ことを特徴とする浴室用履物。
【請求項2】
前記磁石は、前記靴底の第3領域に取り付けられている、
ことを特徴とする請求項1に記載の浴室用履物。
【請求項3】
前記靴底の第3領域には、前記靴底の外面側に開口する凹部が設けられており、前記凹部に前記磁石が、その前記吸着面が合成樹脂製の防水キャップで被覆された状態で取り付けられている、
ことを特徴とする請求項2に記載の浴室用履物。
【請求項4】
前記磁石は円柱状に形成されて、円柱の一方の端面が前記吸着面を形成しており、
前記防水キャップは、前記磁石の吸着面を被覆する板状のキャップ本体と、該キャップ本体の内面から立設されて内部に前記磁石を収容する環状壁とを有しており、
前記凹部は、前記凹部の底壁を形成して前記磁石の他方の端面を当接させる円形の台座部と、前記台座部の外周に連接されて該台座部と同心円状に形成され、前記防水キャップの環状壁を嵌合させる環状溝とを有している、
ことを特徴とする請求項3に記載の浴室用履物。
【請求項5】
前記防水キャップは、前記環状壁を内側環状壁として、さらに、前記キャップ本体の内面から立設され、前記内側環状壁の外側に該内側環状壁と同心円状に形成された外側環状壁を有しており、
前記凹部は、前記環状溝を内側環状溝として、さらに、前記内側環状溝の外側に該内側環状溝と同心円状に形成され、前記防水キャップの外側環状壁を嵌合させる外側環状溝を有している、
ことを特徴とする請求項4に記載の浴室用履物。
【請求項6】
前記防水キャップ本体は、さらに、前記環状壁の外側に連接された鍔部を有しており、該鍔部の外周は、前記環状壁と同心円状を成して互いに背向する一対の外周円弧部と、それら外周円弧部の両端同士を、互いに平行を成して相互に連結する一対の外周直線部とによって形成され、
前記凹部は、さらに、前記環状溝の外周に連接されて、前記鍔部が嵌合により収容される鍔収容部を有している、
ことを特徴とする請求項4に記載の浴室用履物。
【請求項7】
前記靴底の外面は、基面と、該基面から立設された滑り止め用の凸部とを有しており、
前記凹部に取り付けられた磁石の吸着面が、前記基面よりも凸部の先端側に位置している、
ことを特徴とする請求項3に記載の浴室用履物。
【請求項8】
靴底が長手方向に延びる軸線に関して左右対称に形成されており、その軸線上に前記凹部の中心が配されている、
ことを特徴とする請求項3に記載の浴室用履物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浴室を清掃するときに使用する履物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、浴室を清掃するときに使用する履物は、例えば特許文献1及び特許文献2等に開示されているように、既に広く知られており、通常、合成樹脂やゴム等の水を通さない防水性の材料により形成されている。
【0003】
ところで、このような浴室用の履物は、使用時に水分で濡れることから、使用後に乾燥させるために干しておく必要性がある。従来、このような濡れた履物を乾燥させる際には、例えば特許文献2に記載されたように、履物の一部を浴室等の床面に接触させた状態で干すのが一般的であった。
【0004】
しかしながら、そのように床面を利用して干した場合、床面と履物が接した部分に水分が溜まって乾燥し難くなり、カビの発生の原因となる等、衛生面で問題を生じる虞がある。また、このような衛生面ばかりでなく、スペースの効率的な利用の観点からも、不使用時に前記履物は乾燥も兼ねて壁面に簡単に収納できることが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実願平1-149010号(実開平3-87305号)のマイクロフィルム
【特許文献2】特開2006-110023号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の技術的課題は、浴室用履物において、不使用時に、乾燥も兼ねて壁面に簡単に収納することが可能なものを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、本発明に係る浴室用履物は、防水性を有する材料から成る浴室用履物であって、前記浴室用履物の靴底は、長手方向の先端側に配されて足の爪先側を支持するための第1領域と、長手方向の後端側に配されて足の踵側を支持するための第2領域と、これら第1領域及び第2領域の間に配されて足の土踏まず部分を支持するための第3領域とによって形成されており、前記靴底の長手方向に延びる一対の側縁のうち、前記第1領域及び第2領域を区画する一対の側縁は、外側に凸を成した曲線状に形成され、前記第3領域を区画する一対の側縁は、内側に凸を成した曲線状に形成され、前記靴底には、磁石が、その吸着面を靴底の外面側に配して取り付けられていることを特徴とする。
【0008】
本発明において、前記磁石は、前記靴底の第3領域に取り付けられていることが好ましく、より好ましくは、前記靴底の第3領域には、前記靴底の外面側に開口する凹部が設けられており、前記凹部に前記磁石が、その前記吸着面が合成樹脂製の防水キャップで被覆された状態で取り付けられている。
【0009】
本発明において、さらに好ましくは、前記磁石は円柱状に形成されて、円柱の一方の端面が前記吸着面を形成しており、前記防水キャップは、前記磁石の吸着面を被覆する板状のキャップ本体と、該キャップ本体の内面から立設されて内部に前記磁石を収容する環状壁とを有しており、前記凹部は、前記凹部の底壁を形成して前記磁石の他方の端面を当接させる円形の台座部と、前記台座部の外周に連接されて該台座部と同心円状に形成され、前記防水キャップの環状壁を嵌合させる環状溝とを有している。
【0010】
このとき、前記防水キャップは、前記環状壁を内側環状壁として、さらに、前記キャップ本体の内面から立設され、前記内側環状壁の外側に該内側環状壁と同心円状に形成された外側環状壁を有しており、前記凹部は、前記環状溝を内側環状溝として、さらに、前記内側環状溝の外側に該内側環状溝と同心円状に形成され、前記防水キャップの外側環状壁を嵌合させる外側環状溝を有していても良し、または、前記防水キャップ本体は、さらに、前記環状壁の外側に連接された鍔部を有しており、該鍔部の外周は、前記環状壁と同心円状を成して互いに背向する一対の外周円弧部と、それら外周円弧部の両端同士を、互いに平行を成して相互に連結する一対の外周直線部とによって形成され、前記凹部は、さらに、前記環状溝の外周に連接されて、前記鍔部が嵌合により収容される鍔収容部を有していても良い。
【0011】
さらに、本発明においては、前記靴底の外面は、基面と、該基面から立設された滑り止め用の凸部とを有しており、前記凹部に取り付けられた磁石の吸着面が、前記基面よりも凸部の先端側に位置していても良いし、靴底が長手方向に延びる軸線に関して左右対称に形成されており、その軸線上に前記凹部の中心が配されていても良い。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る浴室用履物によれば、不使用時に、前記靴底に設けた磁石を、洗濯機の側面など、磁性体から成る壁面に吸着させることにより、乾燥も兼ねて壁面に簡単に収納することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の第1実施形態に係る浴室用履物を示す底面図である。
図2】前記浴室用履物を底面側から見上げた斜視図である。
図3】前記浴室用履物の平面図である。
図4】前記浴室用履物の側面図である。
図5】前記浴室用履物の縦断面図である。
図6図5の二点鎖線で囲まれた部分の拡大図である。
図7】履物本体を示す底面図である。
図8】前記履物本体を底面側から見た斜視図である。
図9】前記履物本体の縦断面図である。
図10図9の二点鎖線で囲まれた部分の拡大図を含む、図6の分解図である。
図11】前記防水キャップの斜視図である。
図12】前記防水キャップの平面図である。
図13】前記浴室用履物を壁面に収納した状態を示す断面図である。
図14】本発明の第2実施形態に係る浴室用履物を示す底面図である。
図15図14に示す浴室用履物の縦断面図である。
図16図15の二点鎖線で囲まれた部分の拡大図である。
図17図16の分解図である。
図18図14に示す浴室用履物を底面側から見上げた斜視図である。
図19図14に示す浴室用履物を壁面に収納した状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の第1実施形態に係る浴室用履物について図1図13を用いて説明する。前記浴室用履物1は、浴室の壁面、床、浴槽等を掃除する際に足を濡らすことなく作業するのに用いられる。前記浴室用履物1は、履物本体2と、履物本体2の靴底5に取り付けられた磁石3と、磁石3を覆うための防水キャップ4とを有している。以下、これらの構成について詳細に説明する。
【0015】
前記履物本体2は、ゴム等の防水性を有する素材で形成されているものであって、図2図4に示すように、靴底5と、該靴底5の上方において使用者の足を覆うアッパー6とを有している。前記アッパー6は、前後の長手方向(軸線L方向)の先端側に配されて使用者の足の爪先側及び甲側を覆う第1アッパー部6aと、長手方向の後端側に配されて足首側及び踵側を覆う第2アッパー部6bとを有している。前記第2アッパー部6bの上端部には、使用者の足を挿入するための足挿入口7が開口しており、浴室用履物を履いたときに足挿入口7の開口縁が踝付近に位置するように成っている。また、前記アッパー6は、前記長手方向に延びる軸線Lに関して左右対称に形成され、前記第1アッパー部6aにおける前記軸線L方向中央部が最も左右(幅方向外側)に張り出した形状を成している。なお、この浴室用履物1は、前記足挿入口7の開口縁が踝付近に位置するような形状を有しているが、踝の上方側まで覆うブーツ型(長靴型)に形成されていてもよい。
【0016】
前記第2アッパー部6bには、踵が当接する後端に貫通穴8が貫設されていて、脱ぎ履きの際に該貫通穴8に指を入れて操作したり、この貫通穴8にフック等の吊下具を引っ掛けることで、前記浴室用履物1を所定の場所に吊り下げたりすることができるように成っている。
【0017】
図1及び図7に示すように、前記靴底5は、その長手方向の先端側に配されて使用者の足の爪先側を支持する第1領域9と、長手方向の後端側に配されて使用者の踵側を支持する第2領域10と、これら第1領域9と第2領域10との間に配されて足の土踏まず部分を支持する第3領域11とによって形成されている。そして、軸線Lを挟んだ両側において前記靴底5の長手方向に延びる一対の側縁12,12のうち、前記第1領域9を区画する一対の側縁12a,12aと、第2領域10を区画する一対の側縁12b,12bとは、幅方向外側に凸を成す曲線状に形成され、一方、前記第3領域11を区画する一対の側縁12c,12cは、幅方向内側に凸を成す曲線状に形成されている。
【0018】
また、図5及び図9に示すように、前記靴底5は、前記足挿入口7に挿入された足の裏を支持する内面5aと、該内面5aに背向する面であって床面に当接される外面5bとを有している。前記靴底5の内面5aは、前記第1領域9部分においては、前記軸線Lと平行を成す平らな面に形成され、第3領域11から第2領域10部分にかけては、後方に向かうに従い、上方に向けて緩やかな上り勾配状に傾斜した形状を有している。なお、前記内面5aには、必要に応じて中敷き等のクッション材が敷設されていてもよい。
【0019】
前記靴底5の外面5bは、基面13と、該基面13から下方に立設された滑り止め用の凸部14とを有し、該基面13が、前記第1領域9部分の内面5aと平行に延びる平らな面に形成されている。一方、前記凸部14は、前記側縁12近傍を除いた部分に配置されているものであり、第3領域11における幅方向中央部に設けられた後述の凹部17を中心として同心円状に複数配置されている。具体的に、前記凸部14は、前記第3領域11に設けられた環状の環状凸部14Aと、この環状凸部14Aの外側に設けられた弧状の弧状凸部14Bとから成っている。前記環状凸部14Aは、前記凹部17の回りを囲繞するように配置されていて、その円の中心が前記軸線L上に配置されている。
【0020】
前記弧状凸部14Bは、第1領域9においては、長手方向の先端側(爪先側)に向けて凸を成して湾曲し、第2領域10においては、長手方向の後端側(踵側)に向けて凸を成して湾曲した形状を成している。一方、第3領域11においては、前記環状凸部14Aの前方側では爪先側に向けて凸を成して湾曲し、環状凸部14Aの後方側では踵側に向けて凸を成して湾曲し、環状凸部14Aの幅方向外側では該幅方向外側に向けて凸を成して湾曲した形状を成している。これら弧状凸部14Bは、その壁幅が前記環状凸部14Aの壁幅よりも長く成っている。また、前記環状凸部14A及び弧状凸部14Bにおける基面13からの高さは互いに等しく形成されていて、これら環状凸部14Aの高さ方向(突出方向)の先端面14a、及び、弧状凸部14Bの高さ方向の先端面14bが何れも同一平面上にあり平らな面に形成されている。
【0021】
また、前記靴底5の外面5bには、前記長手方向の先端側から後端側にかけて延びる第1排水溝15及び第2排水溝16が形成されている。前記第1及び第2排水溝15,16は、靴底5の外面5bの水はけを良くする為の排水用の溝であり、第2排水溝16が第1排水溝15よりも幅方向外側に配されている。これら第1及び第2排水溝15,16は、それぞれ軸線Lを挟んで左右両側に1条ずつ配置され、且つ、該軸線Lに関して左右対称形を成している。また、第1及び第2排水溝15,16は、爪先側の第1領域9から土踏まず部分の第3領域11における前半部15a,16aと、土踏まず部分の第3領域11から踵側の第2領域10における後半部15b,16bとを有し、前半部15a,16aにおいては、幅方向外側に緩やかな凸を成して湾曲しており、後半部15b,16bにおいては、前記前半部15a,16aの曲率よりも大きな曲率で幅方向外側に凸を成して湾曲している。第1及び第2排水溝15,16によって、前記弧状凸部14Bが幅方向に断片状に分割されている。
【0022】
さらに、図7図10に示すように、前記靴底5の第3領域11には、該靴底5の外面5b側に開口された前記凹部17が設けられている。前記凹部17は、前記磁石3が取り付けられる凹状の円形収容部25と、該円形収容部25よりも外側に離間した位置に同心円状に形成された外側環状溝20とを有している。前記円形収容部25は、該円形収容部25の中央に配された円形の台座部18と、前記台座部18の外側に連接されて同心円状に形成され、該台座部18を区画する内側環状溝19(本発明における「環状溝」)とを有している。前記凹部17は、その中心から径方向外側に向かって、前記台座部18、内側環状溝19、外側環状溝20が順に配された構成と成っている。前記靴底5は、全体として前記軸線Lに関して左右対称に形成されており、この軸線L上に凹部17の中心が配置されている。
【0023】
前記台座部18は、内側環状溝19の溝底面19aから下方に向けて突出し、その頂面18aが基面13よりも上方(靴底5の内面5a側)に位置している。また、前記台座部18の頂面18aは、前記凹部17の底壁を成すものであり、平らな面に形成され、該頂面18a上に前記磁石3が配されるように成っている。
【0024】
前記内側環状溝19と外側環状溝20とは、互いに同じ溝幅を有し、これら内側環状溝19の溝底面19a、及び、外側環状溝20の溝底面20aが互いに同一平面上にあると共に、深さ方向において基面13よりも深い位置(靴底5の内面5a側)にある。なお、前記内側環状溝19と外側環状溝20との間には、これら内側環状溝19と外側環状溝20とを隔てる環状の隔壁部21が設けられている。この隔壁部21は、前記内側環状溝19及び外側環状溝20の溝底面19a,20aから下方に向けて突出しているもので、その先端面21aが、台座部18の頂面18a及び基面13よりも下方に位置している。
【0025】
図10に示すように、前記磁石3は、扁平な円柱形に形成されていて、円柱の一方の端面が磁気吸引力を作用させる吸着面3aに成り、反対側の他方の端面が前記台座部18の頂面18aに当接される当接面3bに成っている。前記磁石3は、前記台座部18の直径と同じ直径を有している。また、前記磁石3の厚さは、前記台座部18の頂面18aから前記隔壁部21の先端面21aまでの長さと等しい厚さに形成されていて、該磁石3を台座部18に配置された状態で、前記吸着面3aと隔壁部21の先端面21aとが同一平面上に位置するように成っている。なお、前記磁石3としては、ネオジム磁石等の任意の永久磁石が採用される。また、磁石3の当接面3bと台座部18の頂面18aとは接着剤によって固定されていてもよい。
【0026】
前記防水キャップ4は、前記凹部17に係合させて、該凹部17内に配された磁石3を被覆するためのものである。前記防水キャップ4は、前記履物本体2と同じような防水性を有する合成樹脂で形成されており、該合成樹脂として例えばサーモプラスチックラバー(TPR)が採用される。この防水キャップ4は、前記磁石3の吸着面3aを被覆する板状のキャップ本体22と、該キャップ本体22の板厚方向の一方側の面である内面22aから立設され、内部に前記磁石3を収容する内側環状壁23(本発明における「環状壁」)と、同じくキャップ本体22の内面22aから立設され、前記内側環状壁23の外側に同心円状に形成された外側環状壁24とを有している。
【0027】
前記キャップ本体22は、厚さが均一で表裏面が平らな薄い円板状に形成され、その板厚方向の一方側の面である前記内面22aと、他方側の面である平坦な外面22bとを有し、前記内面22a側が靴底5の内面5a側(上側)を向くように配され、該キャップ本体22の外面22b側が靴底5の外面5b側(下側)を向くように配される。前記キャップ本体22の板厚は、隔壁部21の先端面21aから凸部14の先端面14a(14b)までの長さと等しい厚さに形成されている。また、このキャップ本体22は、前記凹部17の外側環状溝20の外周壁と同じ直径を有しており、防水キャップ4を凹部17に装着させたときに、該キャップ本体22が、靴底5の外面5b側から該凹部17全体を覆うように成っている。なお、前記防水キャップ4は、前記凹部17内において、接着剤により靴底5に対して固定されていても良い。
【0028】
前記内側環状壁23は、前記凹部17の内側環状溝19に嵌合するものであり、該内側環状壁23の内周壁で囲まれた円の直径が、前記台座部18の直径、及び、該台座部18に当接される磁石3の直径と略同じ大きさに形成され、該内周壁内に台座部18及び磁石3が収容されるように成っている。
【0029】
前記外側環状壁24は、凹部17の外側環状溝20に嵌合するものであり、前記キャップ本体22の外周縁部に設けられている。この外側環状壁24は、その壁幅が内側環状壁23の壁幅と同じ長さに形成されると共に、前記凹部17における内側環状溝19及び外側環状溝20の溝幅とも同じ長さに形成されている。また、前記外側環状壁24の高さ方向の先端面24aは、内側環状壁23の先端面23aと同一平面上に位置している。
【0030】
前記凹部17に防水キャップ4が装着されると、前記外側環状溝20の溝底面20aに外側環状壁24の先端面24aが当接された状態で、該外側環状溝20と外側環状壁24とが弾性的に嵌合され、内側環状溝19の溝底面19aに内側環状壁23の先端面23aが当接された状態で、該内側環状溝19と内側環状壁23とが弾性的に嵌合される。この嵌合状態においては、前記凹部17における隔壁部21の先端面21aと、外側環状壁24と内側環状壁23との間に位置するキャップ本体22の内面22aとが当接される。
【0031】
前記磁石3に関しては、その当接面3bが台座部18の頂面18aに当接され、反対側の吸着面3aが、内側環状壁23で区画されたキャップ本体22における内面22aに当接され、台座部18と一緒に内側環状壁23内に収容される。そして、前記磁石3の吸着面3aは、基面13よりもやや凸部14の先端面14a(14b)側にあって、前記隔壁部21の先端面21aと同一平面上に位置している。
【0032】
また、前記防水キャップ4は、前述したように、キャップ本体22の板厚が、該キャップ本体22の内面22aが当接された隔壁部21の先端面21aから、凸部14の先端面14a(14b)までの長さと等しくなっている。そのため、キャップ本体22の外面22bは、凸部14の先端面14a(14b)と同一平面上に位置するように成っており、該外面22bが凸部14よりも下方に突き出すことがなく、歩行時の歩きやすさを阻害しないように構成されている。ただし、歩きやすさを阻害しない範囲であれば、例えば磁石3の吸着面3aを、凸部14の先端面14a(14b)と同一平面上に位置させて、防水キャップ4の外面22bを、該凸部14よりも下方に突出させることも可能である。
【0033】
前記装着時においては、前記外側環状溝20と外側環状壁24との嵌合部分が外側の第1のシール部となり、前記内側環状溝19と内側環状壁23との嵌合部分が内側の第2のシール部となる。したがって、前記防水キャップ4は、凹部17に対して液密に取り付けられることとなり、浴室の床面が水で濡れていても、磁石3まで水が到達しないように成っている。また、前記防水キャップ4は、前記外側環状溝20と外側環状壁24との嵌合部分、及び、前記内側環状溝19と内側環状壁23との嵌合部分に生ずる弾性摩擦力により、不意に凹部17から脱落してしまうことが防止される。特に、前記防水キャップ4が接着剤で靴底5に固定されいると、凹部17内へ水の浸入や、該凹部17からの防水キャップ4の脱落をより確実に防止することが可能となる。さらに、磁石3は、歩行の際に力が掛かりにくい土踏まず部分を支持する第3領域11に取り付けられているため、使用者に、磁石3が取り付けられていることによる違和感を感じさせにくくなっている。
【0034】
前記構成を有する浴室用履物1は、靴底5の外面5b側に磁石3が取り付けられているため、浴室の清掃終了後、例えば図13に示すように、該外面5b側と、洗濯機の側面等の磁性体から成る壁面Wとを対峙させた姿勢とし、前記磁石3を壁面Wに吸着させることで、乾燥も兼ねて該壁面Wに簡単に収納することができる。このとき、前記貫通穴8が貫設された後端側を下にして収納すると、例えば洗浄後のように履物の内外が濡れた状態であっても、水切れがより良好となる。
【0035】
図14図19は、本発明の第2実施形態に係る浴室用履物1Aを示している。なお、このでは重複記載を避けるため、前記第1実施形態と同様の構成及び作用効果については、詳細な説明は省略することとする。
【0036】
この第2実施形態に係る浴室用履物1Aと、前記第1実施形態に係る浴室用履物1とは、主として、アッパー6の後端部(第2アッパー部6bの後端部)における踵を覆う部分の形態、及び、靴底5の先端部の形態、並びに、前記靴底5に開口して前記円柱状磁石3が装着された凹部17Aの形態、及び、その凹部17Aにおいて、装着された磁石3を水密に覆う防水キャップ4Aの形態、すなわち、浴室用履物1Aにおける磁石3の保持構造、において相違している。
【0037】
具体的に説明すると、本実施形態において、前記第2アッパー部6bの後端は、図15の断面に示すように、内側に向けて凸を成して反った形状に形成されていて、その内側に反った部分に前記貫通穴8が貫設されている。そして、前記第2アッパー部6bの後端部は、その後端部の両側に接続された一対の側部よりも上方へと突出している。また、前記靴底5における足の爪先を支持する先端部は、後端側から先端側に向けて、下方向に凸を成して反った形状を有しており、それにより、歩行時に履物1Aの後端側を踵の動きに対してより追従させることが可能となり、踵が前記足挿入口7から抜け出すのを防止することができる。
【0038】
次に、本実施形態における磁石3の保持構造について具体的に説明する。
図14図18に示すように、前記靴底5の第3領域11に形成された前記凹部17Aは、前記磁石3が取り付けられる凹状の円形収容部25と、この円形収容部25の外周に連接されて、後述する防水キャップ4Aの鍔部22cが収容される鍔収容部26とを有している。前記円形収容部25は、前記第1実施形態と同様に、中央に配された円形の台座部18と、前記台座部18の外側に連接されて、該台座部18と同心円状に形成された環状溝19とを有しており、該台座部18の直径は前記磁石3の直径と実質的に同じに形成されている。
【0039】
ただし、本実施形態における環状溝19は前記第1実施形態における内側環状溝19に相当するものである。そして、前記凹部17Aは、その中心から径方向外側に向かって、前記台座部18、環状溝19、及び、鍔収容部26が順に配された構成と成っている。なお、前記軸線Lついて左右対称に形成された靴底5において、前記凹部17Aの中心は、前記第1実施形態の凹部17の中心と同じ位置に配置されている。
【0040】
本実施形態において、防水キャップ4Aは、前記磁石3の吸着面3aを被覆する板状のキャップ本体22と、該キャップ本体22の板厚方向の一方側の面である内面22aから立設され、内径が前記磁石3の直径と実質的に同じに形成された環状壁23とを有しており、該環状壁23によって取り囲まれた凹状空間23bに前記磁石3が収容されるようになっている。そして、前記キャップ本体22は、前記内面22aと背向する外面22bが平坦に形成されていると共に、前記環状壁23の外周から径方向外側に向けて連接された均一な厚さの鍔部22cを有している。また、前記キャップ本体22において、前記鍔部22cの厚さは、前記環状壁23によって取り囲まれた凹状空間23bの底壁を形成する部分、すなわち、前記磁石3の吸着面3aを直接当接させて被覆する部分の厚さよりも若干厚く形成されている。具体的には、前記キャップ本体22における外面22bから内面22aまでの長さが、前記凹状空間23bの底壁よりも、前記鍔部22cの方が若干大きくなっている。
【0041】
前記防水キャップ4Aの鍔部22cの外周は、前記環状壁23と同心円状を成して互いに背向する一対の外周円弧部22d,22dと、それら外周円弧部の両端同士を、互いに平行を成して相互に連結する一対の外周直線部22e,22eとによって形成されている。その一方で、前記凹部17Aの鍔収容部26における前記鍔部22cの外周が嵌合される内周は、前記防水キャップ4Aにおける前記鍔部22cの一対の外周円弧部22d,22dと対向させる内周円弧部26a,26aと、前記一対の外周直線部22e,22eと対向させる一対の内周直線部26b,26bとによって形成されている。
【0042】
このとき、前記内周円弧部26aは、前記円形収容部25と同心円状を成していて、前記外周円弧部22dと実質的に同じ径と周長さを有しており、前記内周直線部26bは前記外周直線部22eと実質的に同じ長さを有している。また、前記靴底5において、前記凹部17Aの一対の内周直線部26b,26bは、軸線Lと直交する幅方向に延設されており、前記一対の内周円弧部26a,26aは、それぞれ前記軸線Lを挟んで幅方向の両側に配されて互いに背向している。なお、前記凹部17Aに対して防水キャップ4Aを嵌合させる向きを特定したい場合には、図18に示すように、凹部17Aに第1目印S1を設けると共に、防水キャップ4Aの内面22aに第2目印S2を設け、凹部17Aに防水キャップ4Aを装着する際に、これら目印S1,S2を対峙させて合わせることにより両者を位置決めすることが出来るようにしても良い。
【0043】
また、前記防水キャップ4Aにおける凹状空間23bの深さ、すなわち、前記環状壁23の先端面23aから前記凹状空間23bの底壁を形成する内面22aまでの寸法は、前記環状溝19の溝底面19aから前記台座部18の頂面18aまでの寸法(すなわち、台座部18の高さ)と前記磁石3の厚さ(吸着面3aと当接面3bとの間の長さ)との和に実質的に等しくなっている。さらに、前記凹部において、前記鍔収容部26は、前記環状凸部14Aの先端面14aから均一の深さを有しており、かつ、その深さは前記鍔部22cの厚さと同じに形成されている。すなわち、前記環状凸部14Aの先端面14aから前記鍔収容部26の底面26cまでの長さと、前記キャップ本体22の外面22bからその内面22aのうち鍔部22cの内面22fまでの長さとが互いに等しくなっている。そして、前記凹部17Aの深さ(すなわち、溝底面19aから環状凸部14Aの先端面14aまでの長さ)と、前記防水キャップ4Aの厚さ(すなわち、前記環状壁23の先端面23aからキャップ本体22の外面22bまでの長さ)が実質的に等しくなっている。
【0044】
前記凹部17Aに磁石3及び防水キャップ4Aを装着するにあたっては、前記鍔部22cの外周円弧部22dが前記凹部17Aの内周円弧部26aに対応し、且つ、該鍔部22cの外周直線部22eが該凹部17Aの内周直線部に対応するように、前記防水キャップ4Aを前記凹部に対して位置決めする。そして、前記磁石3の当接面3bを台座部18の頂面18aに当接又は接着した状態で、前記環状溝19の溝底面19aに前記環状壁23の先端面23aが当接すると同時に、前記鍔収容部26の底面26cに前記鍔部22cの内面22fが当接するまで、前記凹部17A内に前記防水キャップ4Aを嵌合させる。
【0045】
そうすると、磁石3が収容された前記凹状空間23bは、環状壁23の環状溝19に対する嵌合により水密にシールされた状態となる。さらに、この嵌合状態において、鍔部22cの内面22fを鍔収容部26の底面26cに対して接着剤等に接着又は固定すると、防水キャップ4Aが凹部17Aから離脱するのを防止することができると共に、前記凹状空間23bの水密性を向上させることができてより好ましい。また、本実施形態においても、前記磁石3が、前記凹状空間23b内に嵌合されると共に、該凹状空間23bの底壁(キャップ本体22)と前記台座部18との間に挟持された状態となるため、磁石3を凹部17Aに対して安定的に装着することが可能となる。そして、前記キャップ本体22の外面22bが、前記環状凸部14Aの先端面14aと同一平面上に位置していて、しかも、前記磁石3が、土踏まず部分を支持する第3領域11に取り付けられているため、靴底5に対する該磁石3の装着が歩行の妨げになるのを防止することができる。
【0046】
なお、本実施形態においても、前記第1実施形態と同様に、前記環状凸部14A及び弧状凸部14Bにおける基面13からの高さは互いに等しく形成されている。また、靴底5の各領域9,10,11における環状凸部14A及び弧状凸部14B並びに第1排水溝15及び第2排水溝16の配置も、両実施形態において実質的に同様となっている。
【0047】
本実施形態に係る浴室用履物1Aも、前記第1実施形態に係る浴室用履物1と同様に、浴室の清掃終了後、例えば図19に示すように、前記磁石3を壁面Wに吸着させることで、該壁面Wに簡単に収納することができる。その際、前記キャップ本体22のうち、前記磁石3が収容された凹状空間23bの底壁を形成する部分の厚さが、他の部分と比べてより薄く形成されているため、より強い吸着力で履物を壁面Wに対して取り付けることが可能となる。また、靴底5の軸線L方向の先端部が反っていて壁面Wから浮上がるため、壁面Wからの取外しも容易となる。
【0048】
以上、本発明に係る浴室用履物の各実施形態について説明してきたが、本発明は前記の実施形態に限定されることなく、特許請求の範囲の趣旨を逸脱しない範囲で様々な設計変更が可能である。本実施形態では、前記凹部17が、靴底5の第3領域11における軸線L上に配されているが、それに限定されることなく、靴底5における他の領域や軸線L上ではない他の部分に配設されていても良い。また、前記円形収容部25が、台座部18と内側環状溝19とを有することで段状の底壁面に形成されているが、円形収容部25内に磁石3と内側環状壁23とが収容されるのであれば平らな面に形成することもできる。
【符号の説明】
【0049】
1,1A 浴室用履物
2 履物本体
3 磁石
3a 吸着面
4,4A 防水キャップ
5 靴底
5a 靴底の内面
5b 靴底の外面
6 アッパー
6a 第1アッパー部
6b 第2アッパー部
7 足挿入口
8 貫通穴
9 第1領域
10 第2領域
11 第3領域
12 側縁
12a 第1領域の側縁
12b 第2領域の側縁
12c 第3領域の側縁
13 基面
14 凸部
14A 環状凸部
14B 弧状凸部
14a 環状凸部の先端面
14b 弧状凸部の先端面
15 第1排水溝
15a 第1排水溝の前半部
15b 第1排水溝の後半部
16 第2排水溝
16a 第2排水溝の前半部
16b 第2排水溝の後半部
17,17A 凹部
18 台座部
18a 台座部の頂面
19 内側環状溝(環状溝)
19a 溝底面
20 外側環状溝
22 キャップ本体
22a キャップ本体の内面
22b キャップ本体の外面
22c 鍔部
22d 外周円弧部
22e 外周直線部
22f 鍔部の内面
23 内側環状壁(環状壁)
23a 環状壁の先端面
23b 凹状空間
24 外側環状壁
25 円形収容部
26 鍔収容部
26a 内周円弧部
26b 内周直線部
26c 鍔収容部の底面
L 軸線
図1
図2
図3
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図5
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