(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024059103
(43)【公開日】2024-04-30
(54)【発明の名称】ステントグラフトアセンブリ
(51)【国際特許分類】
A61F 2/07 20130101AFI20240422BHJP
【FI】
A61F2/07
【審査請求】有
【請求項の数】20
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023178663
(22)【出願日】2023-10-17
(31)【優先権主張番号】2215296.1
(32)【優先日】2022-10-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(31)【優先権主張番号】2215297.9
(32)【優先日】2022-10-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(31)【優先権主張番号】2215299.5
(32)【優先日】2022-10-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(31)【優先権主張番号】2215295.3
(32)【優先日】2022-10-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(71)【出願人】
【識別番号】511193846
【氏名又は名称】クック・メディカル・テクノロジーズ・リミテッド・ライアビリティ・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】COOK MEDICAL TECHNOLOGIES LLC
(74)【代理人】
【識別番号】100175983
【弁理士】
【氏名又は名称】海老 裕介
(72)【発明者】
【氏名】ラスムッセン, エリック イー.
(72)【発明者】
【氏名】オーレンシュレーガー, ベント
(72)【発明者】
【氏名】クラッツバーグ, ジャリン
(72)【発明者】
【氏名】ビンスキン, ロバート
(72)【発明者】
【氏名】キング, シャンテル
【テーマコード(参考)】
4C097
【Fターム(参考)】
4C097AA15
4C097BB01
4C097BB09
4C097CC01
4C097CC04
4C097DD09
4C097DD10
4C097DD12
4C097EE06
4C097EE08
4C097FF17
(57)【要約】
【課題】 ステントグラフトアセンブリを提供する。
【解決手段】 大動脈弓において展開するためのステントグラフトであって、少なくとも管状グラフト材料の近位端における近位ステントリング、管状グラフト材料の側壁に設けられた少なくとも1つの開窓、ステントグラフトの管腔内に配置され、且つ開窓から延びる内部分枝を含むステントグラフト。開窓支持ステントリングは、開窓支持リングの2つのストラットと尖部との間で開窓を支持する。近位ステントリングは、少なくとも1つのスカラップユニットと、少なくとも1つの支持ユニットと、少なくとも1つの本体ユニットとを含む複数のステントユニットを有する。各スカラップユニットの近位尖部は、第1の周囲領域内のスカラップの横方向に延びる縁部に位置し、及び各支持ユニットの近位尖部は、第2の周囲領域内に位置する。少なくとも1つのスカラップユニットのそれぞれの第1及び第2のストラットは、少なくとも1つの支持ユニットのそれぞれの第1及び第2のストラットよりも短い。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
大動脈弓において展開するためのステントグラフトであって、
近位端と遠位端とを有する管状グラフト材料の長さに沿って配置された複数の拡張可能なステントリングであって、少なくとも前記管状グラフト材料の前記近位端における近位ステントリング及び前記管状グラフト材料の前記遠位端又はその近くの遠位ステントリングと、前記近位ステントリングと前記遠位ステントリングとの間の少なくとも1つの中間ステントリングとを含む複数の拡張可能なステントリング;
前記管状グラフト材料の側壁に設けられた少なくとも1つの開窓;
管腔内に配置され、且つ前記開窓から前記ステントグラフトの端部の方に延びる内部分枝;
前記グラフト材料の前記近位端における第1及び第2の周囲領域;
前記第1の周囲領域内のスカラップであって、前記開窓と長手方向に整列されたスカラップ
を含み、
前記少なくとも1つの中間ステントリングは、開窓支持ステントリングであり、前記開窓支持ステントリングは、複数の近位尖部と複数の遠位尖部とを有するジグザグ形のステントであり、前記近位及び遠位尖部は、それらの間に延びる複数のステントストラットによって互いに接続され、前記遠位尖部の少なくとも1つは、開窓支持尖部であり;
少なくとも1つの開窓は、前記開窓支持ステントリングの2つのストラット間に設けられ、前記開窓支持ステントリングの2つのストラットと前記開窓支持尖部との組み合わせは、前記開窓の2つの側部及び遠位端を画定し;
前記開窓は、近位縁部を有し、前記近位縁部は、少なくとも前記ステントグラフトの長手方向軸に実質的に垂直な部分を含み;
前記近位ステントリングは、複数のステントユニットを含み、各ステントユニットは、近位尖部によって接続される第1及び第2のストラットを含み、前記ステントリングは、複数の遠位尖部を含み、各ステントユニットは、遠位尖部によって隣接ステントユニットに接続され;
前記複数のステントユニットは、少なくとも1つのスカラップユニットと、少なくとも1つの支持ユニットとを含み、各スカラップユニットの近位尖部は、前記第1の周囲領域内の前記スカラップの横方向に延びる縁部に位置し、及び各支持ユニットの近位尖部は、前記第2の周囲領域内に位置し;
前記少なくとも1つのスカラップユニットのそれぞれの前記第1及び第2のストラットは、前記少なくとも1つの支持ユニットのそれぞれの前記第1及び第2のストラットよりも短い、ステントグラフト。
【請求項2】
前記少なくとも1つのスカラップユニットのそれぞれの少なくとも大部分は、グラフト材料によって重ねられる、請求項1に記載のステントグラフト。
【請求項3】
前記少なくとも1つのスカラップユニットの前記近位尖部は、前記スカラップにおいて前記グラフト材料の近位側に延びない、請求項2に記載のステントグラフト。
【請求項4】
前記複数のステントユニットは、複数のスカラップユニットを含む、請求項3に記載のステントグラフト。
【請求項5】
前記複数のステントユニットは、少なくとも1つの本体ユニットを含み、各本体ユニットは、前記第2の周囲領域内に位置する近位尖部を有する、請求項1に記載のステントグラフト。
【請求項6】
シールステントは、前記開窓の前記近位縁部に隣接して設けられる、請求項4に記載のステントグラフト。
【請求項7】
前記シールステントリングは、近位及び遠位尖部を有するジグザグ形のステントであり、前記開窓の前記近位縁部は、前記シールステントリングの前記遠位尖部の近位側に延びない、請求項6に記載のステントグラフト。
【請求項8】
単一の開窓のみが前記管状グラフト材料の前記側壁に設けられる、請求項6に記載のステントグラフト。
【請求項9】
前記少なくとも1つの支持ユニットは、前記スカラップの第1の長手方向に延びる側部に沿って配置された第1の支持ユニットと、前記スカラップの第2の長手方向に延びる側部に沿って配置された第2の支持ユニットとを含む、請求項1に記載のステントグラフト。
【請求項10】
前記近位ステントリングの周囲の周りに配置された少なくとも1つの適合タイをさらに含む、請求項1に記載のステントグラフト。
【請求項11】
前記少なくとも1つの適合タイは、前記近位ステントリングの遠位端の周りに配置される、請求項10に記載のステントグラフト。
【請求項12】
前記少なくとも1つの適合タイは、前記近位ステントリングの遠位尖部の周りに配置される、請求項11に記載のステントグラフト。
【請求項13】
大動脈弓において展開するためのステントグラフトであって、
近位端と遠位端とを有する管状グラフト材料の長さに沿って配置された複数の拡張可能なステントリングであって、少なくとも前記管状グラフト材料の前記近位端における近位ステントリング及び前記管状グラフト材料の前記遠位端又はその近くの遠位ステントリングと、前記近位ステントリングと前記遠位ステントリングとの間の少なくとも1つの中間ステントリングとを含む複数の拡張可能なステントリング;
前記管状グラフト材料の側壁に設けられた少なくとも1つの開窓;
管腔内に配置され、且つ前記開窓から前記ステントグラフトの端部の方に延びる内部分枝;
前記グラフト材料の前記近位端における第1及び第2の周囲領域;
前記第1の周囲領域内のスカラップであって、前記開窓と長手方向に整列されたスカラップ
を含み、
前記少なくとも1つの中間ステントリングは、開窓支持ステントリングであり、前記開窓支持ステントリングは、複数の近位尖部と複数の遠位尖部とを有するジグザグ形のステントであり、前記近位及び遠位尖部は、それらの間に延びる複数のステントストラットによって互いに接続され、前記遠位尖部の少なくとも1つは、開窓支持尖部であり;
少なくとも1つの開窓は、前記開窓支持ステントリングの2つのストラット間に設けられ、前記開窓支持ステントリングの2つのストラットと前記開窓支持尖部との組み合わせは、前記開窓の2つの側部及び遠位端を画定し;
前記開窓は、近位縁部を有し、前記近位縁部は、少なくとも前記ステントグラフトの長手方向軸に実質的に垂直な部分を含み;
前記近位ステントリングは、複数のステントユニットを含み、各ステントユニットは、近位尖部によって接続される第1及び第2のストラットを含み、前記ステントリングは、複数の遠位尖部を含み、各ステントユニットは、遠位尖部によって隣接ステントユニットに接続され;
前記複数のステントユニットは、それぞれ近位尖部を有する複数のスカラップユニットと、それぞれ近位尖部を有する複数の支持ユニットと、それぞれ近位尖部を有する複数の本体ユニットとを含み、各スカラップユニットの前記近位尖部は、前記第1の周囲領域内の前記スカラップの横方向に延びる縁部に位置し、各支持ユニットの前記近位尖部は、前記第2の周囲領域内に位置し、及び各本体ユニットの前記近位尖部は、前記第2の周囲領域内に位置し;
各スカラップユニットの前記近位尖部は、前記スカラップの前記グラフト材料の近位側に延びず;
各スカラップユニットの前記第1及び第2のストラットは、各支持ユニットの前記第1及び第2のストラットよりも短い、ステントグラフト。
【請求項14】
前記近位ステントリングの周囲の周りに配置された少なくとも1つの適合タイをさらに含む、請求項13に記載のステントグラフト。
【請求項15】
前記少なくとも1つの適合タイは、前記近位ステントリングの遠位端の周りに配置される、請求項14に記載のステントグラフト。
【請求項16】
前記少なくとも1つの適合タイは、前記近位ステントリングの遠位尖部の周りに配置される、請求項15に記載のステントグラフト。
【請求項17】
前記少なくとも1つの適合タイは、前記近位ステントリングの遠位尖部のセットを通過し、且つ前記遠位尖部において前記グラフト材料を通して縫うようにして進む、請求項16に記載のステントグラフト。
【請求項18】
各本体ユニットの前記近位尖部は、前記スカラップの前記グラフト材料の近位側に延びない、請求項13に記載のステントグラフト。
【請求項19】
大動脈弓において展開するためのステントグラフトであって、
近位端と遠位端とを有する管状グラフト材料の長さに沿って配置された複数の拡張可能なステントリングであって、少なくとも前記管状グラフト材料の前記近位端における近位ステントリング及び前記管状グラフト材料の前記遠位端又はその近くの遠位ステントリングと、前記近位ステントリングと前記遠位ステントリングとの間の少なくとも1つの中間ステントリングとを含む複数の拡張可能なステントリング;
前記管状グラフト材料の側壁に設けられた少なくとも1つの開窓;
管腔内に配置され、且つ前記開窓から前記ステントグラフトの端部の方に延びる内部分枝;
前記グラフト材料の前記近位端における第1及び第2の周囲領域;
前記第1の周囲領域内のスカラップであって、前記開窓と長手方向に整列されたスカラップ;
前記近位ステントリングの遠位端の周りに少なくとも部分的に円周方向に配置され、且つ前記近位ステントリングの直径を締め付けるように構成された少なくとも1つの適合タイ
を含み、
前記少なくとも1つの中間ステントリングは、開窓支持ステントリングであり、前記開窓支持ステントリングは、複数の近位尖部と複数の遠位尖部とを有するジグザグ形のステントであり、前記近位及び遠位尖部は、それらの間に延びる複数のステントストラットによって互いに接続され、前記遠位尖部の少なくとも1つは、開窓支持尖部であり;
少なくとも1つの開窓は、前記開窓支持ステントリングの2つのストラット間に設けられ、前記開窓支持ステントリングの2つのストラットと前記開窓支持尖部との組み合わせは、前記開窓の2つの側部及び遠位端を画定し;
前記開窓は、近位縁部を有し、前記近位縁部は、少なくとも前記ステントグラフトの長手方向軸に実質的に垂直な部分を含み;
前記近位ステントリングは、複数のステントユニットを含み、各ステントユニットは、近位尖部によって接続される第1及び第2のストラットを含み、前記ステントリングは、複数の遠位尖部を含み、各ステントユニットは、遠位尖部によって隣接ステントユニットに接続され;
前記複数のステントユニットは、それぞれ近位尖部を有する複数のスカラップユニットと、それぞれ近位尖部を有する複数の支持ユニットと、それぞれ近位尖部を有する複数の本体ユニットとを含み、各スカラップユニットの前記近位尖部は、前記第1の周囲領域内の前記スカラップの横方向に延びる縁部に位置し、各支持ユニットの前記近位尖部は、前記第2の周囲領域内に位置し、及び各本体ユニットの前記近位尖部は、前記第2の周囲領域内に位置し;
各スカラップユニットの前記近位尖部は、前記スカラップの前記グラフト材料の近位側に延びず;
各スカラップユニットの前記第1及び第2のストラットは、各支持ユニットの前記第1及び第2のストラットよりも短い、ステントグラフト。
【請求項20】
前記少なくとも1つの適合タイは、前記近位ステントリングの遠位尖部のセットを通過し、且つ前記遠位尖部において前記グラフト材料を通して縫うようにして進む、請求項19に記載のステントグラフト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、英国特許出願2215296.1号明細書、同2215297.9号明細書、同2215299.5号明細書及び同2215295.3号明細書の利益を主張するものであり、これらの内容は、参照により全体として組み込まれる。
【0002】
本発明は、内腔植え込み型医療デバイス及びその使用方法に関する。この内腔植え込み型医療デバイスは、ヒトの血管系に挿入するためのものであり得る。
【背景技術】
【0003】
ステント及びステントグラフトなどの内腔プロテーゼは、ヒトの体内の損傷した又は病気の血管を治療するために使用され得る。例えば、ステントグラフトは、胸部大動脈又は腹部大動脈の動脈瘤を修復するために使用され得る。このようなステントグラフトは、血管内に配置され、元の健康な血管の機能の一部又は全部を提供する。
【0004】
内腔プロテーゼを設計し、使用する際の課題の1つは、血管壁に対するプロテーゼの十分なシール性を提供することである。プロテーゼが血管内で展開される場合、シールが不十分であると、プロテーゼと血管壁との間の血流の漏れ - 一般にエンドリークと呼ばれる - が生じ得、これは、動脈瘤が減圧されずに成長する可能性があるために患者の治療を損ない得る。
【0005】
プロテーゼの十分なシール性を達成することは、血管が高度に湾曲している場合により困難になる。プロテーゼの十分なシール性を達成することは、プロテーゼがシールできる健常組織のエリア - ランディングゾーンとも呼ばれる - が限られている場合にも困難となる。例えば、修復領域が血管の分枝に隣接しているか又は分枝間に位置する場合、ランディングゾーンは、著しく制限され得る。
【0006】
特に治療が困難な領域は、大動脈弓であることが判明している。実際に、大動脈弓の困難なトポロジーに対応できるプロテーゼを設計し、展開することは、困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第9,539,123号明細書
【特許文献2】米国特許第7,238,198号明細書
【特許文献3】米国特許第11,446,168号明細書
【特許文献4】米国特許第10,537,419号明細書
【特許文献5】米国特許第7,914,572号明細書
【特許文献6】米国特許出願公開第2019/0192275号明細書
【特許文献7】米国特許第9,198,787号明細書
【特許文献8】欧州特許出願公開第4026518号明細書
【特許文献9】米国特許出願公開第2022/0211482号明細書
【特許文献10】米国特許第9,855,128号明細書
【特許文献11】米国特許第7,232,459号明細書
【特許文献12】米国特許出願第63/581,548号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、改良された内腔植え込み型医療デバイス及び方法を提供しようとするものである。開示及び記載されるのは、大動脈弓において展開するためのステントグラフトであって、近位端と遠位端とを有する管状グラフト材料の長さに沿って配置された複数の拡張可能なステントリングであって、少なくとも管状グラフト材料の近位端における近位ステントリング及び管状グラフト材料の遠位端又はその近くの遠位ステントリングと、近位ステントリングと遠位ステントリングとの間の少なくとも1つの中間ステントリングとを含む複数の拡張可能なステントリング;管状グラフト材料の側壁に設けられた少なくとも1つの開窓;管腔内に配置され、且つ開窓からステントグラフトの端部の方に延びる内部分枝;グラフトの近位端における第1及び第2の周囲領域;第1の周囲領域内のスカラップであって、開窓と長手方向に整列されたスカラップを含み、少なくとも1つの中間ステントリングは、開窓支持ステントリングであり、開窓支持ステントリングは、複数の近位尖部と複数の遠位尖部とを有するジグザグ形のステントであり、近位及び遠位尖部は、それらの間に延びる複数のステントストラットによって互いに接続され、遠位尖部の少なくとも1つは、開窓支持尖部であり;少なくとも1つの開窓は、開窓支持ステントリングの2つのストラット間に設けられ、開窓支持ステントリングの2つのストラットと開窓支持尖部との組み合わせは、開窓の2つの側部及び遠位端を画定し;開窓は、近位縁部を有し、近位縁部は、少なくともステントグラフトの長手方向軸に実質的に垂直な部分を含み;近位ステントリングは、複数のステントユニットを含み、各ステントユニットは、近位尖部によって接続される第1及び第2のストラットを含み、ステントリングは、複数の遠位尖部を含み、各ステントユニットは、遠位尖部によって隣接ステントユニットに接続され;複数のステントユニットは、少なくとも1つのスカラップユニットと、少なくとも1つの支持ユニットとを含み、各スカラップユニットの近位尖部は、第1の周囲領域内のスカラップの横方向に延びる縁部に位置し、及び各支持ユニットの近位尖部は、第2の周囲領域内に位置し;少なくとも1つのスカラップユニットのそれぞれの第1及び第2のストラットは、少なくとも1つの支持ユニットのそれぞれの第1及び第2のストラットよりも短い、ステントグラフトである。
【0009】
大動脈弓において展開するためのステントグラフトであって、近位端と遠位端とを有する管状グラフト材料の長さに沿って配置された複数の拡張可能なステントリングであって、少なくとも管状グラフト材料の近位端における近位ステントリング及び管状グラフト材料の遠位端又はその近くの遠位ステントリングと、近位ステントリングと遠位ステントリングとの間の少なくとも1つの中間ステントリングとを含む複数の拡張可能なステントリング;管状グラフト材料の側壁に設けられた少なくとも1つの開窓;管腔内に配置され、且つ開窓からステントグラフトの端部の方に延びる内部分枝;グラフト材料の近位端における第1及び第2の周囲領域;第1の周囲領域内のスカラップであって、開窓と長手方向に整列されたスカラップを含み、少なくとも1つの中間ステントリングは、開窓支持ステントリングであり、開窓支持ステントリングは、複数の近位尖部と複数の遠位尖部とを有するジグザグ形のステントであり、近位及び遠位尖部は、それらの間に延びる複数のステントストラットによって互いに接続され、遠位尖部の少なくとも1つは、開窓支持尖部であり;少なくとも1つの開窓は、開窓支持ステントリングの2つのストラット間に設けられ、開窓支持ステントリングの2つのストラットと開窓支持尖部との組み合わせは、開窓の2つの側部及び遠位端を画定し;開窓は、近位縁部を有し、近位縁部は、少なくともステントグラフトの長手方向軸に実質的に垂直な部分を含み;近位ステントリングは、複数のステントユニットを含み、各ステントユニットは、近位尖部によって接続される第1及び第2のストラットを含み、ステントリングは、複数の遠位尖部を含み、各ステントユニットは、遠位尖部によって隣接ステントユニットに接続され;複数のステントユニットは、それぞれ近位尖部を有する複数のスカラップユニットと、それぞれ近位尖部を有する複数の支持ユニットと、それぞれ近位尖部を有する複数の本体ユニットとを含み、各スカラップユニットの近位尖部は、第1の周囲領域内のスカラップの横方向に延びる縁部に位置し、各支持ユニットの近位尖部は、第2の周囲領域内に位置し、及び各本体ユニットの近位尖部は、第2の周囲領域内に位置し;各スカラップユニットの近位尖部は、スカラップのグラフト材料の近位側に延びず;各スカラップユニットの第1及び第2のストラットは、各支持ユニットの第1及び第2のストラットよりも短い、ステントグラフト。
【0010】
大動脈弓において展開するためのステントグラフトであって、近位端と遠位端とを有する管状グラフト材料の長さに沿って配置された複数の拡張可能なステントリングであって、少なくとも管状グラフト材料の近位端における近位ステントリング及び管状グラフト材料の遠位端又はその近くの遠位ステントリングと、近位ステントリングと遠位ステントリングとの間の少なくとも1つの中間ステントリングとを含む複数の拡張可能なステントリング;管状グラフト材料の側壁に設けられた少なくとも1つの開窓;管腔内に配置され、且つ開窓からステントグラフトの端部の方に延びる内部分枝;グラフト材料の近位端における第1及び第2の周囲領域;第1の周囲領域内のスカラップであって、開窓と長手方向に整列されたスカラップ;近位ステントリングの遠位端の周りに少なくとも部分的に円周方向に配置され、且つ近位ステントリングの直径を締め付けるように構成された少なくとも1つの適合タイを含み、少なくとも1つの中間ステントリングは、開窓支持ステントリングであり、開窓支持ステントリングは、複数の近位尖部と複数の遠位尖部とを有するジグザグ形のステントであり、近位及び遠位尖部は、それらの間に延びる複数のステントストラットによって互いに接続され、遠位尖部の少なくとも1つは、開窓支持尖部であり;少なくとも1つの開窓は、開窓支持ステントリングの2つのストラット間に設けられ、開窓支持ステントリングの2つのストラットと開窓支持尖部との組み合わせは、開窓の2つの側部及び遠位端を画定し;開窓は、近位縁部を有し、近位縁部は、少なくともステントグラフトの長手方向軸に実質的に垂直な部分を含み;近位ステントリングは、複数のステントユニットを含み、各ステントユニットは、近位尖部によって接続される第1及び第2のストラットを含み、ステントリングは、複数の遠位尖部を含み、各ステントユニットは、遠位尖部によって隣接ステントユニットに接続され;複数のステントユニットは、それぞれ近位尖部を有する複数のスカラップユニットと、それぞれ近位尖部を有する複数の支持ユニットと、それぞれ近位尖部を有する複数の本体ユニットとを含み、各スカラップユニットの近位尖部は、第1の周囲領域内のスカラップの横方向に延びる縁部に位置し、各支持ユニットの近位尖部は、第2の周囲領域内に位置し、及び各本体ユニットの近位尖部は、第2の周囲領域内に位置し;各スカラップユニットの近位尖部は、スカラップのグラフト材料の近位側に延びず;各スカラップユニットの第1及び第2のストラットは、各支持ユニットの第1及び第2のストラットよりも短い、ステントグラフト。
【0011】
本発明は、以下の図面及び記載を参照することにより、よりよく理解することができる。構成要素は、特に特定されない限り、必ずしも一定の縮尺ではなく、代わりに本発明の原理を説明することに重点が置かれている。さらに、図において、同様の参照数字は、異なる図全体を通して対応する部分を示す。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】ステントグラフトなどのプロテーゼの近位端部の正面図である。
【
図2】
図1のプロテーゼの正面図を示す概略図である。
【
図3】
図1のプロテーゼの側面図を示す概略図である。
【
図4】
図1のプロテーゼの近位端部の拡大正面図である。
【
図5】ステントグラフトなどのプロテーゼの部分的拡大図である。
【
図6】患者の大動脈弓及び下行胸部大動脈内に配置された場合に予想されるような部分的に展開された状態の
図1のプロテーゼを示す。
【
図7】患者の大動脈弓内で展開された場合に予想されるような完全に展開された状態の
図6のプロテーゼの近位端部の部分図を示す。
【
図8】本発明のプロテーゼと共に使用するのに適したステントの概略図である。
【
図10】
図8及び9のステントを含むプロテーゼの近位部分の図である。
【
図11-12】
図10に示されるプロテーゼの正面図及び側面図を示す。
【
図13】本発明の別のプロテーゼの近位端部の正面図を示す。
【
図15】
図13~14のプロテーゼの近位端部からの図を示す。
【
図16】患者の大動脈弓及び下行胸部大動脈内に植え込まれた
図13~15のプロテーゼを示し、橋渡しステントグラフトが左鎖骨下動脈までの隔たりを埋めている。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本開示において、「近位」及び「遠位」という用語は、プロテーゼに関する反対方向を指す。「近位側に」とは、プロテーゼの遠位端から近位端に向かう方向を意味し、「遠位側に」とは、プロテーゼの近位端から遠位端に向かう方向を意味する。
【0014】
以下に記載する特定の実施形態は、近位端が使用時に患者の心臓に最も近くにあるように構成され、すなわち、これらの実施形態では、「近位」という用語は、使用時に患者の心臓に最も近い位置を指し、「遠位」という用語は、使用時に患者の心臓から最も遠い位置を指す。しかしながら、他の実施形態は、遠位端が患者の心臓に最も近い位置で使用されるように構成され得る。
【0015】
本発明は、改良された内腔植え込み型医療デバイス及び方法を提供しようとするものである。具体的には、本発明は、湾曲した大動脈内腔、特に大動脈弓の治療のための新規で改良されたステントグラフトを提供する。
【0016】
図1~7は、プロテーゼ10の形態の内腔植え込み型医療デバイスを示す。プロテーゼ10は、ステントグラフトとして示され、以下に記載するように、大動脈弓及び下行胸部大動脈などの湾曲した管腔に植え込むように構成される。プロテーゼ10は、湾曲しているか否かを問わない様々な形状の管腔に植え込むように構成することもできる。別に記載のある場合を除き、プロテーゼは、拡張した状態で記載され、これは、完全に拡張され、制限が解除された状態である。プロテーゼ10は、内部管腔16がその中を通る側壁14を含む管状グラフト本体12の形状のグラフトを含む。管状グラフト本体12は、近位端18及び遠位端20を有する(
図2及び3に示される)。この実施形態の管状グラフト本体12は、ポリエステル織布で作られているが、他の実施形態では、PTFE、ePTFE等を含むが、これらに限定されない任意の適切な可撓性且つ生体適合性材料で作ることができる。
【0017】
図1のプロテーゼ10の部分図及び
図2~3に示されているように、少なくとも部分的に管腔16内に配置されている第1の近位シールステント22は、管状グラフト本体12の内面に配置される。第1の近位シールステント22は、大動脈壁に対して管状グラフト本体12の近位端18がシールを形成するように構成される。この内側シールステント22は、大動脈壁に対してシールを形成する本質的に滑らかな外面を提示する。第1の近位シールステント22は、曲がり/尖部26を有するストラット24を含み得る。
【0018】
第1の近位シールステント22の尖部26は、近位尖部28及び遠位尖部30(
図2及び3に示される)を含む。
図1~3にさらに示されるように、管状グラフト本体12の近位端18において、以下でさらに詳述されるスカラップ状開窓32(「スカラップ」)が存在し得、これは、血流を提供するために大動脈例えば大動脈弓の動脈の1つからの動脈開口部を受け入れるように構成及び設計される。スカラップの適切な構造は、2017年1月10日に発行された、Hartleyらに対する(特許文献1)(「Fenestrated Stent Grafts」)に開示及び記載されており、その開示内容全体は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0019】
図1に示されているように、第1の近位シールステント22の近位尖部28は、以下でさらに詳述されるように、本体尖部34とスカラップ尖部36とを含む。スカラップ32は、横方向縁部38と、2つの長手方向に延びる側部40とを含む。
図2及び3に示されるように、第1の近位シールステント22の曲がり/尖部26は、好ましくは尖部のそれぞれにおいて、1つ又は複数の縫い目42によって管状グラフト本体12に取り付けられる。しかし、他の縫い付け方法も考えられる。尖部をステントグラフトに縫い付ける適切な方法及び縫い目構成は、2007年7月3日に発行された、Hartleyらに対する(特許文献2)(「Stent-Graft Fastening」)に開示及び記載されており、その開示内容は、参照により全体として本明細書に組み込まれる。
【0020】
図1~3にさらに示されるように、以下でさらに詳述される開窓44が側壁14に配置される。
図2及び3に示されるように、内部分枝46(
図2及び3)が管腔内に配置され、開窓からステントグラフトの端部に向かって延びる。
図2及び3において、分枝は、遠位側に延びるように示されている。しかしながら、近位側に延びる分枝も考えられる。開窓44及び内部分枝46は、大動脈弓からの動脈分枝(左鎖骨下動脈(LSA)など)を受け入れるように構成及び設計される。開窓44は、トラフと共に構築され得る。適切なトラフ構造及びそれらの作製方法は、2022年9月20日に発行された、Roederらに対する(特許文献3)(「Prosthesis With Side Branch and Method of Making」)及び2020年1月21日に発行された、Kratzbergらに対する(特許文献4)(「Prosthesis With Branched Portion」)に開示及び記載されており、それらの開示内容全体は、参照により全体として本明細書に組み込まれる。
【0021】
図2及び3は、
図1の完全な長さのプロテーゼ10の正面図及び側面図を示す。示されるように、第1の近位シールステント22に加えて、一連の追加ステントが第1の近位シールステントの遠位側に配置され、入れ子状にされたステント48と、開窓を支持するステント50と、補助ステント52と、本体ステント54と、遠位端シールステント23とを含み、これらは、以下でさらに詳述される。ステントは、グラフト本体12に沿って長手方向に分配される。ステントのそれぞれは、管状グラフト本体12の内側若しくは外側又はグラフト本体12自体内において、管状グラフト本体12の周囲にリングを形成するようにジグザグの配置で接続された複数のピーク及び谷を含み、隣接するピーク及び谷(尖部)は、ストラットで接続される。「ピーク」という用語は、一般に尖部(近位又は遠位)の一方のセットを指し、「谷」という用語は、尖部の他方のセットを指すことが理解されるであろう。記載される実施形態では、「ピーク」という用語は、近位尖部に使用され、「谷」という用語は、遠位尖部に使用されるが、他の実施形態では、これらの用語は、逆に使用され得ることが認識されるであろう。図示の実施形態では、各ステントは、自己拡張型ステントであり、そのいくつかは、ステンレス鋼で作られ、いくつかは、ニチノールで作られる。しかしながら、ステントの他の材料又は形状を使用することもできる。例えば、他の実施形態では、ステントのいずれかは、ステンレス鋼又はニチノールなどの形状記憶合金で作ることができる。いくつかの実施形態では、ステントは、バルーン状に拡張可能であり得る。プロテーゼ10の他の実施形態は、ステントのグループからのステントの任意の組み合わせを含むことができる。記載されるステントのいずれかは、ステントグラフトのグラフト材料の外側、内側又はその中に配置できることが認識されるであろう。
【0022】
ステントは、任意の既知の方法においてステッチ/縫い目で管状グラフト本体12に留められ、例えば、
図1に示されるように、ステントは、尖部で取り付けられる。代替的又は追加的に、ステントは、個々の縫い目、連続する縫い目等によってストラットの長さに沿って完全に又は部分的に管状グラフト本体に取り付けることができる。ステッチは、編組ポリエステル及びモノフィラメントから作ることができる。他の実施形態では、アタッチメント又はステッチ材料の任意の他の適切な形態をステントのいずれかに使用することができる。
【0023】
示されるように、スカラップ32は、
図1、2及び3に示されるように、管状グラフト本体12の近位端18に位置する。スカラップ32は、管状グラフト本体12の材料のカットアウト又は切欠きである。スカラップ32は、プロテーゼ10がヒトの血管内の標的領域に展開されると、スカラップ32が隣接する分枝血管の開口部を受け入れるようなサイズ及び形状にされる。すなわち、スカラップ32は、グラフト材料で分枝血管の開口部を閉塞することなく、その縁部が分枝血管の開口部の周囲にシールを形成するようなサイズ及び形状にされ、構成される。この実施形態では、プロテーゼ10が患者の大動脈弓内で完全に展開された状態になると、スカラップ32の横方向縁部38のグラフト材料は、例えば、左総頸動脈の開口部の周囲に隣接する。完全に展開された状態において、スカラップ32の最遠位部は、
図6及び7に示されるように、左鎖骨下動脈(LSA)及び左総頸動脈(LCC)の開口部間に位置決めされる。この実施形態のスカラップ32は、近位端の最大幅から遠位端の最小幅まで幅が先細になる。
【0024】
図1~3に示されるように、スカラップ32の遠位端の横断縁部又は横方向縁部38は、管状グラフト本体12の遠位端20のグラフト材料の縁部と実質的に平行である。他の実施形態では、それは、示されているものよりも形状が湾曲しているか又は角度が付いている場合がある。いくつかの実施形態では、スカラップ32は、単一の湾曲で形成することができる。いくつかの実施形態では、スカラップ32は、馬蹄形であり得る。スカラップの適切な形状は、2017年1月10日に発行された、Hartleyらに対する(特許文献1)(「Fenestrated Stent Grafts」)に開示及び記載されており、その開示内容は、参照により全体として本明細書に組み込まれる。
【0025】
スカラップ32の寸法は、標的の血管に従って調整することができる。
図2に示されるように、スカラップ32は、その近位端で30mmの最大幅を有し、その遠位端で25mmの最小幅を有する。この実施形態のスカラップ32は、遠位端から近位端までの14mmの深さを有し、スカラップ32の近位端は
図3に示されるように、管状グラフト本体12の近位端18にある。他の実施形態では、スカラップ32の幅及び深さは、標的の血管の開口部を受け入れる任意の適切なサイズであり得る。大動脈弓において展開されるように意図されたプロテーゼに関して、スカラップ32は、10~20mmの近位シールゾーンを許容するように構成されると好ましく、近位シールゾーンとは、スカラップ32と、以下で詳述される開窓44などの最も近い開窓との間のゾーンである。スカラップ32のレベルの第1の近位シールステント22は、何らかのシールを提供するが、近位シールゾーンは、シールの大部分を提供する。シールゾーンのサイズは、患者の血管間の距離に適切であるように変化することができる。シールゾーンは、好ましくは、少なくとも10mm、より好ましくは少なくとも15mmである。この実施形態では、シールゾーンは、16mmである。
【0026】
図1を再び参照すると、プロテーゼ10の近位端18において、グラフト材料は、近位縁部56を形成し、これは、管状グラフト本体12の周囲に延びる。スカラップ32は、近位端18に第1及び第2の周囲領域58、60を画定する。第1の周囲領域58は、スカラップ32と一致し、同じ範囲にあり、第2の周囲領域60は、周囲の残りを構成し、その結果、第1及び第2の周囲領域は、プロテーゼの完全な周囲を構成する。第1の周囲領域58は、第2の周囲領域60よりも小さく、すなわち、第2の周囲領域60は、近位端18においてグラフトの周囲の大部分を構成する。
【0027】
プロテーゼ10の第1の近位シールステント22は、管状グラフト本体12の近位端18に配置された最端ステントである。前述のように、第1の近位シールステント22の尖部26は、
図4に示されるように、近位尖部28のセットと、遠位尖部30のセットとを含む。近位尖部28のセットは、第1の周囲領域58に(換言するとスカラップ32に)位置するスカラップ尖部36と、第1の周囲領域60に(換言するとスカラップ32の外側に周方向に)位置する本体尖部34とを含む。
【0028】
第1の近位シールステント22は、したがって、複数のステントユニットを含むということができ、各ステントユニットは近位尖部26によって接続された第1及び第2のストラット24を含む。隣接するステントユニットは、遠位尖部30によって接続され、ステントリングを形成する。複数のステントユニットは、スカラップユニットと本体ユニットとを含み、各スカラップユニットは、スカラップに(第1の周囲領域58に)位置する近位尖部を有し、各本体ユニットは、第2の周囲領域60に位置する近位尖部を有する。各スカラップユニットは、スカラップ尖部36によって接続された一対のストラット24を含む。同様に、各本体ユニットは、本体尖部34によって接続された一対のストラット24を含む。スカラップを支持する、特にスカラップ32の側部を支持するスカラップに隣接する本体ユニットは、支持ユニット39と呼ばれる。支持ユニット39の、スカラップに隣接するストラットは、スカラップの縁部に沿って延びる(
図2参照)。支持ユニット39はスカラップ32の各側に配置される。
【0029】
図に示されるように、第1の近位シールステント22は、内部ステントであり、換言すると、それは、管状グラフト本体12の内面の周囲に配置される。しかしながら、それは、外部ステントであり得、すなわちグラフト材料の厚さ内に配置され得る。第1の近位シールステント22は、16~28個の尖部26を有し得、その8~14個は、近位尖部28であり、8~14個は、遠位尖部30であるが、実用では、これは、例えば、プロテーゼの直径に依存して変化し得る。したがって、任意の適切な数の尖部26が存在し得る。同じ数の近位尖部28及び遠位尖部30が存在することが好ましいが、必ずというわけではない。同様に、示される実施形態における14個の近位尖部28のうち、3つのスカラップ尖部36及び11個の本体尖部34が存在する。しかしながら、スカラップ尖部の数はスカラップのサイズに基づいて変化し得る。他の実施形態では、任意の数のスカラップ尖部36と任意の数の本体尖部34が存在し得るが、当然のことながら、スカラップ尖部は、第1の周囲領域、すなわちスカラップ32に位置し得ることを前提とする。しかしながら、スカラップ尖部36よりも多くの本体尖部34が存在することが好ましい。
【0030】
本体尖部34のすべては、
図1に最もよく示されるように、グラフト材料の近位縁部56に配置される。すべての本体尖部34は、管状グラフト本体12の近位端18を最も効率的にシールするためにグラフト材料の近位縁部56に配置される。しかしながら、他の実施形態では、本体尖部34は、示されるよりもさらに遠位側に又は近位側に様々に配置することができる。
【0031】
スカラップ尖部36は、スカラップ32に隣接する本体尖部34の遠位側に配置される。特に、スカラップ尖部36は、管状グラフト本体12の最近位端まで延びないことが有益であることが分かっている。この配置は、通常であれば分枝血管の位置で血管壁に衝突し得るスカラップ32内のステントストラット及び尖部を低減し、それにより血管への外傷又は損傷の可能性を低減する。この態様において、第1の近位シールステント22は、それ自体、管状グラフト本体12のスカラップ32の領域においてその近位端でスカラップを含むと言うことができる。
【0032】
遠位尖部30のセットは、すべて
図2、3及び4で見ることができるように、スカラップ32の遠位端20、特にその最遠位縁部の遠位側に配置される。遠位尖部30のすべて又はその少なくとも大部分は、スカラップ32の遠位端又はスカラップ32上の最遠位地点と少なくとも長手方向に一緒のレベルに又はその遠位側に配置されることが好ましく、これによりスカラップ32の完全な周縁をシールする第1の近位シールステント22の能力が改善される。
図2に示されるように、遠位尖部30は、すべて互いにも整列される。
図3に示されるように、遠位尖部30の長手方向の位置は、管状グラフト本体12の周囲に沿って変化し得る。特に、遠位尖部30は、プロテーゼ10の内側湾曲領域62(
図6に示される)で最も遠位にあり、内側湾曲領域62は、体腔の湾曲の内側に展開されるように構成された領域である。遠位尖部30は、内側湾曲領域62から離れる両方の円周方向において直線状により近位になり、その結果、それらは、内側湾曲領域62の直径方向に対向する側で最も近位にある。このようにして、遠位尖部は、プロテーゼの長手方向軸に非垂直な平面に横たわる楕円を描く。他の実施形態では、遠位尖部30は、すべて長手方向に同じ高さであり得る。さらに、他の実施形態では、遠位尖部は、非整列状であり得る。
【0033】
スカラップ尖部36は、スカラップ32の遠位端に位置する。
図1及び4を再び参照すると、本体尖部34は、すべてグラフト材料によって覆われる、すなわち重ねられる。しかしながら、スカラップ尖部36は、スカラップ32において管状グラフト本体12の近位縁部16の近位側に延び、換言するとスカラップの遠位端の近位側に延び、グラフト材料によって覆われない。結果として、第1の近位シールステント22のすべてではないが大部分は、グラフト材料によって覆われる。それにもかかわらず、グラフトは、第1の近位シールステント22のピーク間の間隙のそれぞれの少なくとも大部分を覆う。換言すると、第1の近位シールステント22の隣接する近位尖部28に接合するストラット24間の空間はそれぞれ、グラフト材料によって実質的に又は完全に重ねられる。
【0034】
しかしながら、
図13~16に示されるように、第1の近位シールステント22の近位尖部28は、グラフト材料を越えて延びない(すなわち、近位ステントは、グラフト材料によって完全に覆うことができる)。これは、例えば、近位ステントがニチノール製である事例であり得る。しかしながら、グラフト材料を越えて延びるスカラップ尖部36を一体化することは、
図1の実施形態などのいくつかの実施形態で有益であることが分かっており、その理由については、後に説明する。
【0035】
記載されるように、第1の近位シールステント22の尖部28は、ストラット24によって接続される。スカラップ尖部36のそれぞれは、第1及び第2のスカラップ尖部ストラット64により、隣接する遠位尖部30に接続される。同様に、本体尖部34はそれぞれ、第1及び第2の尖部ストラット66によって隣接する遠位尖部30に接続される。
【0036】
図4に最もよく示されるように、ストラット24は、第1の近位シールステント22の周囲に沿って長さが変化し得、ステントのより長いセグメントとより短いセグメントとを形成する。特に、スカラップ32におけるストラット64は、各側で、スカラップ32に隣接するストラット66よりも短い。換言すると、各スカラップユニットの第1及び第2のストラット64は、各支持ユニット39の第1及び第2のストラットよりも短い。より短いスカラップ尖部ストラット64は、スカラップ32におけるステント材料の体積を低減し、スカラップを実質的にクリアに保つ。同時に、支持ユニット39のより長いストラット66は、スカラップに隣接するプロテーゼを支持し、シールするのに役立つ。
【0037】
スカラップ尖部ストラット64は、好ましくは、スカラップ32を塞ぐのをできるだけ広い範囲にわたって回避するために短い。しかしながら、実用では、最小ストラット長さを使用してステントの改善された可撓性及び弾性を達成し、使用中、特に分枝血管の領域における望ましくない塑性変形を回避することが有益であることが分かっている。最小ストラット長さは標的血管の寸法及びストラットの材料に依存する。
図1の実施形態など、いくつかの実施形態における最小ストラット長さは、
図1に示されるように、グラフト材料を越えて延びるスカラップ尖部36をもたらす。これにもかかわらず、スカラップユニットのそれぞれの少なくとも大部分は、グラフト材料によって重ねられる。さらに、上に示したように、スカラップ尖部がグラフト材料を越えて延びることは、すべての実施形態において必須というわけではないことを認識されたい。いくつかの実施形態では、例えば近位ステントがニチノール製である場合、最小ストラット長さは、スカラップ尖部36が近位縁部16及びスカラップの遠位端の遠位側に位置決めされ、それによりグラフト材料によって覆われることができるような長さである。示される実施形態では、スカラップユニットのストラット長さは17mmである。
【0038】
図1~7に示される実施形態のスカラップ尖部ストラット64は、本体尖部ストラット66の大部分よりも短い。他の実施形態では、スカラップ尖部ストラット64は、すべて本体尖部ストラット66のいずれよりも短い。しかしながら、スカラップ尖部ストラット64が、スカラップ32に隣接する本体尖部ストラット66(換言すると上述のような支持ユニット39内のもの)よりも短いことが特に有益である。いくつかの実施形態では、スカラップ尖部ストラット64は、スカラップに隣接する本体尖部ストラット66の対よりも短い。換言すると、スカラップユニットの第1及び第2のストラットが支持ユニット39の第1及び第2のストラットよりも短いことが特に有益である。示される実施形態では、スカラップ尖部ストラット64は、すべて同じ長さであるが、他の実施形態では、それらは、異なる長さであり得る。
【0039】
尖部28は、第1の近位シールステント22の周囲に沿って均一でなくてもよい。ステントは、典型的には、それらの周囲に沿って一貫した曲率半径の尖部を有し、これによりステントの周りに均一の半径方向の力が生成される。しかしながら、第1の近位シールステント22は、その周囲に沿って異なる曲率半径の尖部28を有する。特に第1の近位シールステント22は、少なくとも1つの好ましくは実質的に直径方向に対向する側の本体ユニットの近位尖部よりも丸みを帯びた又は大きい曲率半径の近位尖部を有する少なくとも1つのスカラップユニットを含み得る。例えば、スカラップ尖部36は、すべて本体尖部34のそれぞれよりも大きい曲率半径を有する。スカラップ尖部36の増大した丸みは、それらの尖部においてステントによって及ぼされる半径方向力をよりよく分散させ、それらを鈍化し、血管の圧力/エリアを低減し、それにより血管壁の組織上のスカラップ尖部36の起こり得る外傷又は糜爛効果を低減する。これは、シールの形成も支援し得る。
【0040】
スカラップ尖部36は、第1の近位シールステント22の他のすべての尖部26よりも丸みを帯びている場合もある。より少ない丸みの本体尖部34及び遠位尖部30は、第1の近位シールステント22の体積を比較的低減し、弾性を増大する。この効果は特にスカラップ32の円周方向反対側のステント22の領域において有益であり、この領域は使用中に血管の湾曲の内側に位置する。この実施形態では、尖部の遠位セットは、すべて同じ曲率半径を有する。さらに、この実施形態では、第2の周囲領域に位置するステントのすべての尖部は、同じ曲率半径を有する。
【0041】
図1~7に示されるように、スカラップ尖部36のそれぞれは1mmの曲率半径を有し、本体尖部34のそれぞれは0.5mmの曲率半径を有し、遠位尖部30のそれぞれは、0.5mmの曲率半径を有する。スカラップ尖部36が本体尖部34の約2倍の曲率半径を有することが特に有利であることが分かっている。実施形態では、スカラップ尖部は、本体尖部34の1.5~2.5倍の曲率半径を有し得る。スカラップ尖部36が残りのすべての尖部28(すなわち本体尖部34及び遠位尖部30)の約2倍の曲率半径を有することがはるかにより有利であることが分かっている。他の例では、スカラップ尖部は、残りの尖部の1.5~2.5倍の曲率半径を有し得る。スカラップ尖部36がすべて、あらゆる実施形態において同じ曲率半径を有する必要はないことに留意されたい。同様に、本体尖部34がすべて、互いに同じ曲率半径を有する必要はない。同様に、遠位尖部30がすべて、あらゆる実施形態において同じ曲率半径を有する必要はない。
【0042】
第1の近位シールステント22は、
図3に示されるように、プロテーゼ10の周囲に沿って変化するステント20の近位端からステント20の遠位端までの近位-遠位長さを有し得る。特に、近位ステントの長さは、プロテーゼ10の内側湾曲領域18から両方の円周方向において増大し、第1の近位シールステント22にくさび形状を与える。
【0043】
さらに、
図3及び12に示されるように、第1の近位シールステント22の近位端はテーパ状であり、その結果、ステントの第1の端部の長手方向位置は、内側湾曲領域から両方の円周方向において近位-遠位方向において増大する。特に、ステントの第1の端部の長手方向位置は、内側湾曲領域から両方の円周方向においてより近位になる。テーパはスカラップ32から離れる方にテーパする。さらに、この実施形態では、グラフト本体の近位端(実質的にグラフト本体の端部の平面)は側壁14(及びグラフト本体の長手方向軸)に対して傾斜を付けられ、それによりグラフト本体の近位端において内側湾曲領域で側壁14に対して鈍角を形成する。この実施形態では、管状グラフト本体12の近位端は、管状グラフト本体12の近位端の周囲の少なくとも大部分に沿って、この実施形態ではスカラップ32を除く管状グラフト本体12の近位端の全体に沿って、第1の近位シールステント22の近位端と整列する。特に、管状グラフト本体12の近位端は、管状グラフト本体12の近位端の周囲の少なくとも大部分に沿って、この実施形態ではスカラップ32を除く管状グラフト本体12の近位端の全体に沿って、第1の近位シールステント22の近位端から実質的に等距離にある。管状グラフト本体12の近位端18の大部分は、本体尖部34が配置される平面に概ね平行な平面に横たわる。特に、上述したように、この実施形態では、本体尖部34のすべてはグラフト材料の近位縁部56にあり、特に縁部56から約1mmである。本体尖部はグラフト材料の近位縁部からわずかにさらに離間され得るが、好ましくはすべてグラフト材料の近位縁部の2mm以内である。
【0044】
より詳細には、ストラット24内において、本体尖部ストラット66は、
図3に示されるように、第1の近位シールステント22の周囲に沿って長さが変化する。この実施形態では、スカラップ32により近い本体尖部ストラット66の対は、スカラップ32からさらに遠いものよりも長い可能性があり、本体尖部ストラット66の対は、共通の近位尖部28で合流する2つの本体尖部ストラット66であり、ステントユニットとも呼ばれる。本体尖部ストラット66のそれぞれの対の長さは、本体尖部34が直線上に配置されるように直線的に変化する。スカラップ32に最も近い本体尖部34は、スカラップ32の円周方向反対側のものよりもさらに近位側に延び、オフセットAとして
図3に示されるように、テーパを形成する。
図3は、プロテーゼ10をプロファイルで見た場合のテーパプロファイルとくさび形状を示す。管状グラフト本体12の近位端18も同じプロファイル及びテーパに従って第1の周囲領域58においてテーパ状である。本体尖部ストラット66の長さは、スカラップ32の両側まで等しい増分で変化し、それにより、第1の近位シールステント22は、左右対称である。
【0045】
図3で見ることができるように、この実施形態では、第1の近位シールステント22の近位端18のテーパは、内側湾曲領域62からのそれぞれの円周方向において、近位-遠位方向に互いにオフセットされ、且つ増大する近位位置に配置される本体尖部34を含む。この実施形態では、本体尖部34のすべてはテーパに寄与するが、他の実施形態では、1つ又は複数の本体尖部34は線外にあり得る一方で依然全体的なテーパを保持する。テーパは、内側湾曲領域からのそれぞれの円周方向において、記載される態様において互いにオフセットされた、第1のステントの第1の端部の少なくとも3つの好ましくは隣接する尖部を含むことが好ましい。隣接本体尖部34間のオフセットは実質的に同じであり直線状のテーパを形成する。この実施形態では、テーパ、すなわちオフセットAは、15mmであり、これは、最適な性能を提供することが分かっている。好ましくは、テーパは、約5mm~約20mmであり、より好ましくは約10mm~約20mmであり、最も好ましくは約13mm~約17mmである。
【0046】
その周囲に沿って均一な長さのストラットを有するステントを有するステント-グラフトでは、隣接するステントは、血管の湾曲セクションにおいて互いに干渉し得る。そのようなステント-グラフトが蛇行した血管内で展開されると、ステント-グラフトが血管壁の周りに着座し、血管の湾曲から接線方向に延び、血管内で不完全なシール及び不十分な整列をもたらす可能性が高まる。
【0047】
対照的に、第1の近位シールステント22のくさび形状は、大動脈弓などの湾曲した血管内に位置決めされると、プロテーゼ10の湾曲に対応する。その展開された状態において、プロテーゼ10は、くさび形状の狭められた端部が血管の湾曲の内側に位置するように血管内で方向付けられる。くさび形状及びテーパは、プロテーゼ10が展開されると、本体尖部34、同様にグラフト本体の近位端、特に第1の周囲領域58内の管状グラフト本体12の近位縁部16によって形成された線が、
図7に示されるように、血管の湾曲に実質的に垂直に展開されるように構成される。このようにして、プロテーゼ10の第1の近位シールステント22は、最適な角度で血管壁に力を及ぼし、プロテーゼ10のグラフト材料が血管壁に密に付着した状態でシールすることを可能にする。
【0048】
示されるように、第1の近位シールステント22は、スカラップ32の周方向反対側のストラットの対(又はステントユニット)における19mmから、スカラップ32に最も近いストラットの対(又はステントユニット)における27mmまで長さが変化する本体尖部ストラット54を有し、本体尖部ストラット54の各対の長さは連続する本体尖部34ごとに2mmの増分で増大する。くさび形状を形成する本体尖部ストラット54の長さは、予想されるアタッチメントエリアの長さ及び血管形状に対する最適なテーパ角度に従って、調整することができる。
【0049】
図8、9及び10は、第1の近位シールステント22のさらなる実施形態を示す。ここでは、第1の近位シールステント22は、そのストラット26の長さを除いて、すべての側面において
図1~7の第1の近位シールステント22と同じである。
図8は、第1の近位シールステント22の周囲に沿ったストラット26の長さの変化を示す。この実施形態では、第1の近位シールステント22の本体尖部ストラット66は、スカラップ尖部36に最も近いストラットの対(又はステントユニット)における22mmから、スカラップ尖部36から最も遠いストラットの対(又はステントユニット)における17mmまで長さにおいてテーパし、本体尖部ストラット66の連続する対の長さは本体尖部34ごとに1mmの増分で変化する。本体尖部34は線68に沿って配置され、遠位尖部30は線70に沿って配置される。これにより、
図9に示されるようにステント22のくさび形状プロファイルが形成される。
図1~7の第1の近位シールステント22と比較して、この実施形態のステントの近位端は、ステント22のくさび形状においてより浅いテーパ又はオフセットAを提供することができる。
図10はプロテーゼ10の近位端に配置された第1の近位シールステント22のさらなる実施形態を示す。すべての他の側面において、
図10のプロテーゼ10は
図1~7のものと同じである。ステント22の他の実施形態は、標的血管に適した任意の長さの本体尖部ストラット66を有することができる。
【0050】
本体ストラット66間の長さの変化は、非直線状であり得る。さらに、本体尖部34の一部は、さらに近位側又は遠位側に様々に配置することができ、及び/又は本体尖部ストラット66の一部は、概ねくさび形状のステント及びテーパを依然として提供しながら、記載された配置よりも様々に短く又は長くすることができる。プロテーゼ10の近位側に最も端のステントがくさび形状を利用することが特に有利であることが分かっている。しかしながら、プロテーゼ10の他のステントのいずれかは、同様に又は代替的に、くさび形状を有することができる。
【0051】
第1の近位シールステント22の特徴によって提供されるいくつかの利点は、プロテーゼ10の他の構成要素のいずれか又はすべてから独立して、例えばスカラップ32及び開窓44なしで、達成できることを認識されたい。
【0052】
同様に、第1の近位シールステント22の尖部26の丸みの変化によって提供されるいくつかの利点は、第1の近位シールステント22のストラット24の長さの変化なしに実現できることを認識されたい。その一方で、ストラット24の長さの変化によって達成されるいくつかの利点は、尖部26の丸みの変化なしに実現することができる。同様に、スカラップ尖部ストラット64と本体尖部ストラット66との間の長さの差によって達成されるいくつかの利点は、本体尖部ストラット66間の長さの変化なしに実現することができる。同様に、第1の近位シールステント22のくさび形状によって達成されるいくつかの利点は、スカラップ尖部ストラット64又はスカラップ尖部36なしに実現することができる。
【0053】
図2、3及び4を参照すると、プロテーゼは、第1の近位シールステント22の遠位側にそれに隣接して配置された入れ子状(又はシール)ステント48も含む。
図4に示されるように、入れ子式ステント48は、ストラット76によって接続された近位尖部72のセットと遠位尖部74のセットを有する。ストラット76及び尖部72、74は、一連のピーク及び谷を形成する。第1の近位シールステント22とは対照的に、入れ子式ステント48は半径方向に対称である。特に、示される実施形態では、入れ子ステント48は、均一な長さのストラット74と、その周囲に沿って均一の曲率半径を有する尖部72、74とを有する。この実施形態では、プロテーゼ10の他のステントとは対照的に、入れ子式ステント48はニチノール製である。しかしながら、上記のように、他の実施形態では、入れ子式ステント48は、ステンレス鋼又は任意の他の適切なステント材料で作ることができる。さらに、この特定の実施形態の入れ子式ステント48は、ニチノール製であるため、第1の近位シールステント22のステンレス鋼よりも薄いワイヤゲージで作ることもできるが、これは、あらゆる実施形態において必須というわけではない。
【0054】
入れ子式ステント48の近位尖部72は、入れ子式ステント48の各ピークが第1の近位シールステント22の谷のそれぞれの対間(換言すると遠位尖部30の隣接する対間)に入れ子式に配置されるように位置決めされる。このようにして、入れ子式ステント48は、向上した可撓性及び半径方向力の向上した制御を提供し、例えばグラフト陥入を低減することによってプロテーゼ10の近位部分におけるシール性を改善することができる。これにより、患者にとってよりよい可能性があるより少ない尖部を有する第1の近位シールステント22を使用することが可能になり得る。入れ子式ステント48は、プロテーゼ10の展開のよりよい制御を可能にすることもでき、且つプロテーゼ10が送達のためにシース内で捲縮された後にその構造を維持することを促進し得る。
【0055】
他の実施形態では、入れ子式ステント48の近位尖部72の一部のみが第1の近位シールステント22の遠位尖部30間に入れ子式に配置されるが、好ましくは近位尖部の少なくとも大部分が第1の近位シールステント22の遠位尖部間に入れ子式に配置され、入れ子式の配置が
図1の実施形態のように半径方向に対称であることが好ましい。同様に、いくつかの実施形態では、入れ子式ステント48の2つ以上の近位尖部72を第1の近位シールステント22の遠位尖部30の同じ対間に入れ子式に配置することができる。しかしながら、近位尖部72のそれぞれが第1の近位シールステント22の遠位尖部30のそれぞれの対間に入れ子式に配置されるのが特に有利であることが分かっている。
【0056】
入れ子式ステント48のストラット76は、第1の近位シールステント22のストラット24より短い。この実施形態では、入れ子式ステント48のすべてのストラットは、第1の近位シールステント22のすべてのストラットより短い。他の実施形態では、入れ子式ステント48のすべてのストラットが第1の近位シールステント22のすべてのストラットより短い必要はないが、好ましくは入れ子式ステントのストラットの少なくとも大部分が第1の近位シールステント22の第1のストラット、好ましくは本体尖部ストラットより短い。
【0057】
上記のように、示される実施形態では、入れ子式ステント48はニチノール製で、第1の近位シールステント22はステンレス鋼製である。その結果、この特定の実施形態における入れ子式ステント48は、第1の近位シールステント22よりも概ね低い半径方向の力を発生する。しかしながら、他の実施形態では、入れ子式ステント48と第1の近位シールステント22のいずれか又は両方をステンレス鋼若しくはニチノール又は任意の他の適切なステント材料で作ることができる。
【0058】
プロテーゼ10の任意の他のステントが同様に又は代替的にこのようにステントを入れ子式に配置できることを認識されたい。特に、入れ子構成によってもたらされるいくつかの利点は、尖部26の丸みのばらつき又はストラット24の長さのばらつきなどの第1の近位シールステント22の特徴なしに達成することができる。例えば、グラフト内の任意の位置に配置された規則的なジグザグ形のステントも同様に、上述のような入れ子式ステントと入れ子式配置で構成され得る。この入れ子式の配置は、シール機能を有するステント(すなわちグラフト材料を血管壁に対してシールするように作用するステント)にとって特に有利である。
【0059】
図に示すように、管状グラフト本体12は開窓44も含む。
図1及び10に示すように、開窓44はスカラップ32と円周方向に整列し、スカラップ32の遠位にある。開窓44は、プロテーゼ10が完全に展開された状態にあるとき、開窓44が分枝血管の開口部を収容するようにサイズ決めされ、位置決めされる。示される実施形態では、プロテーゼ10は、大動脈弓において展開されるように設計され、その地点で開窓44が左鎖骨下動脈の開口部と整列する。
【0060】
特に大動脈弓において、ステント-グラフトに利用可能な着地ゾーンは挑戦的に小さい。特に、左鎖骨下動脈と左総頚動脈との間の距離、したがってスカラップ32と開窓44との間の利用可能な距離は、非常に短い。
図1~7に示される実施形態では、スカラップ32と開窓44との間の長さは、16mmである。他の実施形態では、スカラップ32と開窓44との間の長さは、標的血管内の隣接する分枝の開口部間の距離に対応するのに適切な任意の値であり得る。上述のように、大動脈弓内で展開されるように意図された実施形態に関して、スカラップ32は10~20mmの近位シールゾーンを可能にするように構成されることが好ましい。
【0061】
開窓44の形状は、三角形又は三角形体(換言すると実質的に三角形)である。この実施形態では、開窓44は、角が丸い三角形に類似しており、3つの丸みを帯びた角84、86、88によって接合された3つの実質的に直線状の縁部又は側78、80、82によって形成される。開窓44は、管状グラフト本体12(近位端18と遠位端20との間に延びる)の長手方向軸に対して横方向に整列された頂部近位側66を有するように方向付けられる。近位側80は、少なくとも管状グラフト本体12の長手方向軸に実質的に垂直な部分を含む。近位側80は、開窓44の遠位端63で遠位尖部に集束する2つの残りの側78、82の近位端を接続する。近位側80によって形成された開窓44の平坦な頂部は、開窓エリアのより大きい部分を例えば円形又は楕円形の開窓の事例よりもスカラップ32に近接して位置決めすることを可能にする。集束する側78、82によって形成されたU字形の形状は、横方向分枝のカニューレ挿入のためにイントロデューサアセンブリを開窓44内に位置決めすることを促進する漏斗又はガイドとしても機能する。適切な開窓構造及びその作製方法は、2022年9月20日に発行された、Roederらに対する(特許文献3)(「Prosthesis With Side Branch and Method of Making」)及び2020年1月21日に発行された、Kratzbergらに対する(特許文献4)(「Prosthesis With Branched Portion」)に開示及び記載されており、それらの開示内容は、参照により全体として本明細書に組み込まれる。近位側80は、閉塞されない経路を提示し得、これは、ステント配置及び/又は縫合によって少なくとも部分的に閉塞されない。
【0062】
いくつかの実施形態では、管状グラフト本体12は、開窓44を含むがスカラップ32を含まないことがある。他の実施形態では、管状グラフト本体12は、スカラップ32を含むが開窓44を含まないことがある。
【0063】
入れ子式ステント48は、開窓44の近位縁部80に隣接して提供される。実用では、それは、開窓44の近位に配置され、入れ子式ステント48の遠位尖部74が開窓44の近位縁部80に隣接して配置されるように位置決めされる。スカラップ尖部36と同様に、遠位尖部74が開窓44を越えて又は開窓44内に延びることなくグラフト材料の縁部に隣接して位置し、利用できる限定シールゾーンの使用を最大化し、またステント材料で分枝血管の開口部を閉塞することなくこのシールゾーンのシールを最大化することが好ましい。したがって、示される好ましい実施形態では、遠位尖部74は開窓44の近位縁部80においてグラフト材料を越えて延びない。その一方で、開窓44の近位縁部80は入れ子式ステント48の遠位尖部74の近位側に延びない。
【0064】
プロテーゼ10は、
図2及び3に微かに示され、
図11及び12(これらは
図10のプロテーゼ10の第2の実施形態を示し、そのグラフト10は
図1~7の第1の実施形態と比較して近位端18により浅いテーパを有するがそれ以外は同一である)に強調表示されているように、内部分枝グラフト46を含む。分枝グラフト46は、管状グラフト本体12の内側で開窓44から遠位側に延びている。換言すると、内部分枝グラフト46はステントグラフトの管腔16内を開窓から遠位側に延びている。分枝グラフト46は一般に管状であり、管状グラフト本体12の開窓44及び内部管腔16と連通する内部管腔を含む。この実施形態では、分枝グラフト46はポリエステルの織布で作られているが、他の実施形態では、任意の適切な可撓性及び生体適合性の材料で作ることができる。内部分枝グラフト46は、管状グラフト本体12の内部管腔16と、開窓44に隣接する分枝血管との間でカテーテルを案内するのを補助するために設けられる。使用時、開窓に隣接する分枝血管に拡張グラフトを展開するために、内部分枝グラフト46の近位端又は遠位端のいずれかを通してカニューレ及び/又は拡張グラフトを導入することができる。例えば、拡張グラフトを担持したカニューレを鎖骨下動脈から導入し、そこから開窓及び内部分枝グラフトの近位端を通して内部分枝グラフト46内に導入することができる。次に、拡張グラフトを内部分枝グラフト46から分枝血管にまたがるように展開することができる。別の実施形態では、拡張グラフトを担持したカニューレを内部分枝グラフトの遠位端から導入し、そこから内部分枝グラフトの近位端を通して分枝血管内に導入することができる。次に、拡張グラフトを内部分枝グラフト46から分枝血管にまたがるように展開することができる。
【0065】
内部分枝グラフトは、直線状、湾曲状又はらせん状であり得る。好適な内部分枝は、2022年9月20日に発行された、Roederらに対する(特許文献3)(「Prosthesis With Side Branch and Method of Making」)及び2020年1月21日に発行された、Kratzbergらに対する(特許文献4)(「Prosthesis With Branched Portion」)に開示及び記載されており、これらの開示内容は、参照により全体として本明細書に組み込まれる。
【0066】
この実施形態における内部分枝グラフト46は、2つの異なる部分、すなわち近位部分90及び遠位部分92を有する。近位部分90は近位長手方向軸を有し、遠位部分92は遠位長手方向軸を有する。近位部分90の近位長手方向軸はステントグラフトの長手方向軸と鋭角で交差し、遠位部分92の遠位長手方向軸はステントグラフトの長手方向軸と鋭角で交差する。遠位長手方向軸とステントグラフトの長手方向軸との間の鋭角は、近位長手方向軸とステントグラフトの長手方向軸との間の鋭角よりも小さい。これにより、
図12に最もよく見られるように、内部分枝グラフト46にドッグレッグ又はエルボーが形成される。
【0067】
より大きい鋭角及びより小さい鋭角をそれぞれ有する内部分枝グラフト46の近位部分90及び遠位部分92の提供により、左鎖骨下動脈の角度とステントグラフトの長手方向軸の角度との間に滑らかな移行部が提供される。内部分枝グラフト46をステントグラフトの管腔16内で遠位側に延ばすことにより、左鎖骨下動脈を通したカニューレ挿入がより簡単になる。しかしながら、内部分枝グラフト46の移行性近位部分を有することにより、左鎖骨下動脈の軸とステントグラフトの軸との間の急激な90度の角度が回避される。これは左鎖骨下動脈に導入されるステントなどのデバイスの捻転を回避するのに役立つ。
【0068】
この実施形態では、内部分枝グラフト46全体は、
図11で見ることができるように、それが内部管腔16内を遠位側に延びるにつれて開窓44から横方向にも延びるように斜めにも角度を付けられる。内部分枝グラフト46のこの角度又はひねりは、より簡単な経路の提供及び例えば動脈に導入される小型ステントの捻転の可能性の低減にさらに寄与する。ひねりの角度は、好ましくは、分枝グラフトの遠位部分92の長手方向軸から測定した場合、管状グラフト本体12の中心長手方向軸に対して5~45度である。この実施形態では、ひねりの角度は、16度である。
【0069】
内部分枝グラフト46の近位部分90及び遠位部分92は、それらのプロポーションも異なる。遠位部分92は、円筒形であり比較的細長くほっそりとしているが、近位部分90は全体的に円錐台であり、その近位端(ここで開窓44と合流する)のより大きい直径から、その遠位端のより小さい直径(遠位部分92の直径と一致する)までテーパ状である。近位部分90の形状はカニューレ及び/又は拡張グラフトで内部分枝グラフト46にアクセスする際に臨床医を補助し、遠位部分92の形状はカニューレ及び/又は拡張グラフトを標的動脈内により正確に案内するのに役立つ。この実施形態では、近位部分90及び遠位部分92は同じ長さ(近位端から遠位端までそれぞれの長手方向軸に沿って測定した場合)のものであるが、それらの長さは特に限定されず、近位部分90及び遠位部分92は同じ長さである必要はない。
【0070】
この実施形態では、内部分枝グラフト46の遠位部分92は、その形状及び開存性を維持することを促進する支持構造を含む。支持構造は、既知の方法で実装され、近位Dリング94、遠位Oリング96及び遠位部分92の長手方向軸に沿ってOリングとDリングを接続する対向ストラット98の対を含む、含み得る。この実施形態の支持構造は、ニチノール製である。他の実施形態は任意の適切な支持構造を有することができる。分枝に適切な支持構造は、2011年3月29日に発行された、Hartleyらに対する(特許文献5)(「Side branch stent graft construction」)に開示及び記載されており、その開示内容は、参照により全体として本明細書に組み込まれる。X線不透過性マーカを含む追加の適切な支持構造は、Kimらに対する(特許文献6)(「Radiopaque Markers on Medical Device」)に開示及び記載されており、その開示内容は、参照により全体として本明細書に組み込まれる。支持構造のない分枝も考えられる。
【0071】
図に示されているように、開窓44は管状グラフト本体12及び単一分枝グラフト46の単一開窓44であり得る。他の実施形態では、任意の数の開窓及び分枝グラフトが存在し得る。いくつかの実施形態では、開窓も分枝グラフトも存在しないことがある。いくつかの実施形態では、プロテーゼは開窓を含むが分枝グラフトを含まないことがある。
【0072】
プロテーゼ10は、開窓44と長手方向に整列された開窓支持ステント50も含む。開窓支持ステント50は、複数の近位尖部51と複数の遠位尖部53とを有し、近位尖部及び遠位尖部は、
図2、3、5、11及び12に示されるように、それらの間に延びる複数のステントストラット55によって互いに接続される。開窓44は開窓支持ステント50の2つのストラット55間に設けられ、2つのストラット55と開窓支持ステント50の遠位尖部53との組み合わせは、開窓の2つの側部78、82と遠位端84とを画定する。
【0073】
これにより、開窓支持ステント50は開窓44を部分的に取り囲んで支持する。特に、開窓支持ステント50の遠位尖部53と2つの隣接するストラット55が、2つの側部78、82と、三角形の開窓44の遠位端84の遠位尖部とを形成する。開窓支持ステント50の一対の近位尖部53は、開窓44の近位端の角86、88と一致する。この実施形態では、近位側80に追加の支持がないことに留意されたい。しかしながら、他の実施形態では、近位側80をさらに支持するために近位側80を横切って支持部材を設けることができることは排除されない。この実施形態の開窓支持ステント50はグラフト材料の内部に位置決めされているが、他の実施形態では外部に位置決めされることもできる。
【0074】
開窓支持ステント50の遠位尖部53は近位尖部51よりも大きい曲率半径を有する。特に、遠位尖部53は、すべて三角形開窓44の遠位角84の曲率に一致する曲率半径を有する。いくつかの実施形態では、遠位尖部53のすべてが近位尖部51よりも大きい曲率半径を有する必要はないが、少なくとも開窓支持ステントリングの開窓支持尖部は、開窓支持ステント50の近位尖部51よりも大きい曲率半径を有する遠位尖部53によって形成される。この実施形態では、遠位尖部53は3.75mmの曲率半径を有し、近位尖部76は0.75mmの曲率半径を有する。他の実施形態は、異なる曲率半径を有することができる。好ましい範囲は、遠位尖部については2mm~4.5mmであり、近位尖部については0.5mm~1.5mmである。
【0075】
開窓支持ステント50の遠位尖部53のより大きい曲率半径は、大きい開窓エリアを形成し、ステント50が、グラフトを収縮させたり妨害したりすることなく、その中に挿入された分枝拡張グラフトを収容する能力を向上させる。
【0076】
プロテーゼ10は、開窓支持ステント50の遠位側に位置する補助ステント52も含む。補助ステント52は、
図5に示すように、ストラット61によって接続された近位尖部57のセットと遠位尖部59のセットとを有する規則的なジグザグ形のステントである。
【0077】
プロテーゼ10は、補助ステント52と遠位端20との間において、管状グラフト本体12の遠位部分に沿って分散された一連の外部本体ステント54も含む。本体ステント54は規則的なジグザグ形のステントであり、各ステントは、
図5に示すように、ストラット67によって接続された近位尖部63のセットと遠位尖部65のセットとを有する。示されるプロテーゼ10の他のステントとは異なり、本体ステント54はこの実施形態では管状グラフト本体12の外側に配置されているが、他の実施形態では内部であり得るか、又はグラフト材料の厚さ内に配置され得る。本体ステント54は、互いに等間隔に離間し、円周方向に互いに整列され、すなわち同相である。
図2及び3並びに5に示す実施形態では、1つのステントの遠位尖部65が次のステントの近位尖部63から長手方向に7mmオフセットされるように位置決めされた4つの本体ステント54、23がある。他の実施形態では、任意の数の本体ステント54が存在し得、それらの間の間隔は、任意の適切な距離であり得る。本体ステント54の最も遠位のものは、その遠位尖部65がグラフト材料の遠位縁部まで延びるように、管状グラフト本体12の遠位端20に配置される。
【0078】
図3において、第1の近位シールステント22の尖部の近位セット及び遠位セット(スカラップ尖部を除く)と、入れ子式ステント48と、開窓支持ステント50とは、それぞれ、管状グラフト本体12の垂直断面から角度の付いた(換言すると遠位端20に対して角度の付いた)平面内に配置される。これにより、
図3に示されるように、プロファイルにおいて見た場合、管状グラフト本体12の各ステントの尖部のセットの傾斜した整列が形成される。
【0079】
第1の近位シールステント22の本体尖部34のセットは、特に、尖部34が管状グラフト本体12のテーパ端部と一致する傾斜で整列されるように、遠位端20に対してある角度で配置される。これによりさらに、プロテーゼ10が血管の湾曲に対応することが可能になり、それにより第1の近位シールステント22は湾曲内で所望の角度で血管壁に対して作用し、それにより改善されたシールを提供する。この実施形態の第1の近位シールステント22のくさび形状のために、遠位尖部30は本体尖部34の角度よりも相対的に浅い角度で配置される。
【0080】
入れ子式ステント48の尖部72、74の近位及び遠位セットは、第1の近位シールステント22の遠位尖部30の角度と一致する角度で配置される。開窓支持ステント50の尖部51、53の近位及び遠位セットは、入れ子式ステント48の尖部の角度よりも相対的に急な角度で配置される。これにより、スカラップの円周方向反対側で(換言すると内側湾曲領域62において)、開窓支持ステント50と入れ子式ステント48との間において、スカラップに最も近いところよりも大きい間隔が生じる。これは、内側湾曲領域においてステント間の干渉なしにプロテーゼの湾曲を可能にするのに有益である。
【0081】
このように角度を付けられたステントのストラットは管腔16の方に内側に角度を付けられない(すなわち管状グラフト本体12の側壁14に密に重なったままである)ことを認識されたい。最適なシールが達成される場合、プロテーゼ10の内部管腔16は血管と正確に整列する。プロテーゼ10の他の実施形態では、ステントの任意の組み合わせは、このように角度を付けられ得る。いくつかの実施形態は、このように傾斜した又は角度を付けられたステントがない。
図6及び7に部分的に示されるように、記載される実施形態のプロテーゼ10は、湾曲した管腔内にプロテーゼ10を展開するように構成されたイントロデューサ100と組み合わされ、それにより、プロテーゼは、圧縮した状態でイントロデューサに取り付けられ、その結果、内側湾曲領域62は管腔の湾曲部の内側に展開されるように配置される。これらの実施形態のイントロデューサ100は、予め湾曲したカニューレ(図示せず)を含み得るが、これは必須ではない。1つの適切な予め湾曲したカニューレは、2015年12月1日に発行された、Kratzbergらに対する(特許文献7)(「Conformable prosthesis delivery system and method for deployment thereof」)に開示及び記載されており、その開示内容は、参照により全体として本明細書に組み込まれる。くさび形状の第1の近位シールステント22は、くさび形状の狭められた端部が血管の湾曲の内側に展開されるように配置されるようにイントロデューサに取り付けられ、それにより血管内の正確な配向を実現する。
【0082】
図1、6、7及び10に戻ると、記載される実施形態のプロテーゼ10は、1つ又は複数の適合タイ43も含む。適合タイ43は、第1の近位シールステント22の周囲に円周方向に配置され、第1の近位シールステント22をイントロデューサに対して半径方向に収縮するように動作可能であり、それらはこの締め付けられた構成を解放可能に維持するためにリリースワイヤ(図示せず)によって保持される。
【0083】
適切な適合タイは、Schmidtらに対する(特許文献8)及び(特許文献9)(「Stent Graft」)に開示及び記載されており、その開示内容は、参照により全体として組み込まれ、以下に記載される。
【0084】
適合タイ43は、第1の近位シールステント22の遠位端の周りの直径を低減して、近位ステントの角度の付いた位置又は円錐形の構成をもたらすためのループ配置を含み得る。直径を低減するループ配置は、第1及び第2のループ要素を含む。
【0085】
第1のループ要素は、第1の端部及び第2の端部と、第1及び第2の端部間のストランドセクションとを含み得る。第1のループ要素は、第2の端部にループを含む。図示の実施形態では、第1のループ要素は、第1の端部から第2の端部まで延びる単一のストランドからなり、そこで、それは、第1の端部までそれ自体にループして戻り、それにより第2の端部にループを形成する。このように、第1のループ要素は、第1のループ要素の第1の端部から第2の端部までの第1のストランドセクションと、第2の端部から第1のループ要素の第1の端部までの第2のストランドセクションとを含む。しかしながら、他の実施形態では、第1のループ要素は、ストランドセクションが必ずしも第1の端部までループして戻る単一のストランドの一部ではない状態で、第2の端部にループを含むことができる。例えば、ストランドは、例えば、第2のストランドセクションが第2の端部から延び、第1のループ要素の第1及び第2の端部間で第1のストランドセクションに結び付けられることにより、第1及び第2の端部間の地点でそれ自体に結び付けられ得る。
【0086】
第1のループ要素の第1の端部は、第1の近位シールステント22の遠位端部、この実施形態では第1の近位シールステント22の遠位部分に取り付けられるが、他の実施形態では管状グラフト本体12に取り付けることもできる。図示の実施形態では、第1のループ要素の第1の端部は、第1の近位シールステント22の第1の遠位尖部30で結び目によって第1の近位シールステント22に結ばれている。さらに、図示の実施形態では、第1のループ要素のストランドが第1の端部までループして戻っていることに起因して、ストランドの両端は、第1の近位シールステント22の第1の遠位尖部30で第1の近位シールステント22に結ばれている。特に、第1のループ要素の第1の端部、したがって第1のループ要素のストランドの両端は、第1の遠位尖部30で第1の近位シールステント22のストラット40に結び付けられる。
【0087】
第2のループ要素は、第1の端部及び第2の端部と、第1及び第2の端部間のストランドセクションとを含む。第2のループ要素は既に記載した第1のループ要素と同様である。第2のループ要素は、第1の近位シールステント22の遠位端部、この実施形態では第1のループ要素について上述したのと同じ方法で近位ステントの遠位部分に取り付けられるが、第1のループ要素についてと同様に、他の実施形態では第2のループ要素の第1の端部は管状グラフト本体12に取り付けることができる。図示の実施形態では、第2のループ要素は、第1のループ要素の第1の端部が取り付けられているのと同じ尖部である第1の遠位尖部30に取り付けられる。他の実施形態では、第1及び第2のループ要素の第1の端部が異なる尖部に取り付けられることが可能であるが、この場合、直径制限の効果は弱まるであろう。
【0088】
第1及び第2のループ要素、特にその第1及び第2のストランドセクションは、第1及び第2のループ要素の第2の端部が締め付け構成で交わることができるように、それぞれの第1の端部から両方向に近位ステントの遠位端部の周りを円周方向に延びるか又は巻き付けられるように構成される。この締め付け構成は近位ステントの遠位端の直径を制限することができる。
【0089】
第2の端部は締め付け構成においてリリースワイヤ(図示せず)によって保持され、近位ステントの遠位端で締め付けられた直径を維持することができる。図示の実施形態では、第1及び第2のループ要素、特にそのストランドセクションは、それらの間において、締め付け構成において第1の近位シールステント22の遠位端で管状グラフト本体12の周囲全体に延びるように構成される。第1及び第2のループ要素のそれぞれは、締め付け構成において第1の近位シールステント22の遠位端で管状グラフト本体12の周囲の一部に沿って円周方向に延びるように構成される。示される実施形態では、リリースワイヤ及び第1及び第2のループは、スカラップ32及び開窓44と長手方向に整列された地点(すなわちそれらと円周方向に同じ位置)で交わる。
【0090】
図示の実施形態では、第1及び第2のループ要素、特にそれらのストランドセクションは、第1の近位シールステント22の遠位端部の周りを反対方向に円周方向に延び、それらが通過する各遠位尖部30と重なり、その結果、それらの間において、それらは、締め付け構成において近位ステントのすべての遠位尖部30と重なる。
【0091】
ループ要素のサイズは、締め付け構成における第1の近位シールステント22の遠位端部の直径低減のサイズ及び形成される円錐形状の角度を決定する。ループ要素の長さは、プロテーゼ10の(拡張される)直径に応じて変化し得る。
【0092】
図示の実施形態では、締め付け構成において、第1及び第2のループ要素は、第1の近位シールステント22の遠位端の周囲を円周方向に反対方向に延び、そのストランドセクションは、それらが通過する近位ステントのそれぞれの遠位尖部30の大部分において管状グラフト本体12及び/又は第1の近位シールステント22に取り付けられる。換言すると、第1の近位シールステント22の遠位尖部30の大部分において、近位ステント及び/又はグラフト本体は、第1及び第2のループ要素の一方又は他方に取り付けられる。ストランドセクションが取り付けられる遠位尖部の数は、ストランドセクションが滑り落ちることなくステントを収縮させるのに十分な数である。図示の実施形態では、ループ要素のストランドセクションはそれぞれの尖部でグラフト材料を貫通することによってグラフト本体に取り付けられる。
【0093】
第1及び第2のループ要素のストランドセクションの管状グラフト本体12及び/又は第1の近位シールステント22への近位ステントの遠位尖部30における取付けは、ループ要素が近位ステントの遠位端から滑り落ちるのを防止するようにループ要素を制御し、ループ要素が解放されるときに引っ掛からないようにする役割を果たすことができる。さらに、第1の近位シールステント22の遠位尖部30で管状グラフト本体12に取り付けられている結果、ループ要素はグラフトの周囲の方向にのみ摺動することができ、グラフトの長さに沿って摺動することはできない。
【0094】
図示の実施形態では、締め付け構成において、第1及び第2のループ要素のそれぞれは、第1の近位シールステント22の遠位尖部30のセットを通過し、ループ要素、特にそのストランドセクションにより、それぞれのセットの遠位尖部の大部分において管状グラフト本体12に取り付けられ、それらの遠位尖部のそれぞれにおいてグラフト材料を通して縫うようにして進む。図示の実施形態では、グラフト本体に取り付けられている遠位尖部のそれぞれにおいて、それぞれのループ要素の第1及び第2のストランドセクションは管状グラフト本体12を貫通して管状グラフト本体12の外側から管状グラフト本体12の内側に延び、遠位尖部において第1の近位シールステント22のストラット24の1つの周囲に延び、次いで管状グラフト本体12の内側から管状グラフト本体12の外側に延びる。換言すると、ループ要素のストランドセクションは、第1の近位シールステント22の遠位尖部30のそれぞれのセットの遠位尖部の大部分において2つのストラット24の1つの周囲を管状グラフト本体12の半径方向内側に延びるが、その他の方法で管状グラフト本体12の外側を管状グラフト本体12の円周方向に延びる。それにもかかわらず、他の実施形態では、ループ要素が異なる方法で近位ステント及び/又は管状グラフト本体12に取り付けられることが可能である。
【0095】
見ることができるように、図示の実施形態では、第1及び第2のループ要素のそれぞれは、近位ステントの遠位端においてのみグラフト本体及び/又は近位ステントに取り付けられる。
【0096】
当然のことながら、第2のストランドセクションがそれぞれのループ要素の第1の端部まで戻らない実施形態では、近位ステントの遠位端の周囲に円周方向に延び、グラフト本体及び/又は近位ステントに取り付けられるのは、第1のストランドセクションのみであり得る。
【0097】
いくつかの実施形態では、ループ要素をそれらの第1の端部においてグラフト材料又は近位ステントに実質的に取り付けないことが可能である。しかしながら、これは述べられる理由のために好ましくない。さらに、図示の実施形態では、各ループ要素の第1及び第2のストランドセクションは、それらが通過する近位ステントの遠位尖部の大部分においてグラフト材料及び/又は近位ステントに取り付けられるが、他の実施形態においてストランドセクションの一方又は他方のみをそのように取り付けることができる。さらに、第1及び/又は第2のループ要素の第1及び/又は第2のストランドセクションを近位ステントの遠位尖部以外のグラフト本体の周囲に沿った複数の位置で近位ステント及び/又はグラフト本体に取り付けることができることは排除されない。しかしながら、遠位尖部における取り付けは、近位ステントの遠位端の効果的な締め付けのために好ましい。
【0098】
締め付け構成において、第1及び第2のループ要素は、管状グラフト本体12及び第1の近位シールステント22の遠位端の周囲全体に沿って一緒に延び、第1のループ要素は、第2のループ要素の第2の端部においてループを通過し、リリースワイヤが第1のループ要素の第2の端部においてループを通過して第1及び第2のループ要素を締め付け構成に保持することを可能にする。近位ステントの遠位端の周囲の第1及び第2のループ要素の位置のせいで、直径低減ループ配置は、近位ステントの遠位尖部を締め付け、近位ステントに実質的に円錐又は円錐台の形状を採用させるように構成される。この円錐又は円錐台の形状は、近位シールステントがより角度のある位置に展開されることを可能にし、これにより大動脈湾曲に対するよりよい適合がもたらされる。
【0099】
図示の実施形態では、第1及び第2のループ要素は、未加工の編組されたPTFE含浸ポリエステル繊維縫合糸である糸から作られる。他の実施形態において他の材料を使用することができるが、第1及び第2のループ要素は、好ましくは、それぞれ縫合糸、最も好ましくはその単一ストランドによって提供される。
【0100】
図示の実施形態では、第1の近位シールステント22のみが適合タイ43で囲まれる。しかしながら、他の実施形態では、他のステントの1つ又は複数が直径低減タイを有し得る。最遠位ステントは従来の方法で解放されるように構成された従来型保持構成を任意選択的に有し得る。しかしながら、これは重要ではなく、したがって詳細は本明細書において記載しない。
【0101】
使用中、リリースワイヤ(図示せず)は、管状グラフト本体12の外部から、第1のループ要素の第2の端部のループに通される。その結果、両方のループ要素は、リリースワイヤに且つ互いに取り付けられる。それらは、リリースワイヤによって締め付け構成に保持され、この構成は近位ステントの遠位尖部を半径方向内側に引っ張り、シールステントを実質的に円錐又は円錐台の形状に、特に近位側に面する円錐又は円錐台の形状に保持する。直径低減ループ配置はリリースワイヤを引くことによって締め付け構成から解放されることができ、これにより第1及び第2のループ要素が互いに解放され、それらのそれぞれの第2の端部が分離することが可能になる。その結果、ループ要素は、第1の近位シールステント22の遠位端の直径をもはや締め付けず、その結果第1の近位シールステント22は自由に拡張する。
【0102】
リリースワイヤは、第1のループ要素の第2の端部のループを通過するが第2のループ要素の第2の端部のループを通過しないことにも留意されたい。他の実施形態では、リリースワイヤは、第1及び第2の両方のループ要素の第2の端部のループを通過することができる。適合タイは、Schmidtらに対する(特許文献8)及び(特許文献9)(「Stent Graft」)に記載された任意の特徴を有することができ、その開示内容は、参照により全体として組み込まれる。
【0103】
イントロデューサから解放された後、プロテーゼ10は、部分的に展開され、それにより、
図6に示すように、第1の近位シールステント22は、適合タイ43によって低減直径構成に保持される。部分的に展開された構成は、臨床医がプロテーゼ10を完全に展開する前に血管内でプロテーゼ10の向きを変えて整列させることを可能にする。
図6は、模擬大動脈弓におけるプロテーゼ10の例示的な整列を示す:管状グラフト本体12の近位端18は、腕頭動脈(BT)の遠位にあり、スカラップ32の概ね直線状の遠位部分は左総頸動脈(LCC)と左鎖骨下動脈(LSA)の開口部との間に整列され、開窓44は、左鎖骨下動脈(LSA)と整列される。臨床医がプロテーゼ10を所望のように位置決めしたら、適合タイ43を解除して(上述のようにリリースワイヤを使用して)プロテーゼ10の完全な展開を開始し、第1の近位シールステント22が拡張して血管壁に係合できるようにすることができる。この展開状態を
図7に見ることができる。図示の実施形態では、プロテーゼ10は、直径38mmの血管に展開するように設計され、プロテーゼ10は、完全に拡張した42mmの直径を有し、直径22Fr(7.33mm)のシースに収縮可能である。これらの寸法は、標的血管に合わせて調整することができる。他の実施形態では、任意の適切な直径を有することができる。
【0104】
上記で詳細に記載した特定の適合タイは、すべての実施形態において必要なものではないことに留意されたい。第1の近位シールステント22を締め付けるための他の配置がいくつかの実施形態で使用され得ることにも留意されたい。別の好適な適合システムは、2018年1月2日に発行された、Kolbelらに対する(特許文献10)(「Introducer for Deploying a Stent Graft in a Curved Lumen and Stent Graft Thererfor」)に開示及び記載されており、その開示内容は、参照により全体として本明細書に組み込まれる。
【0105】
プロテーゼ10を患者の管腔内に配置する方法は、プロテーゼ10を患者の管腔内に血管内挿入し(典型的には大腿アプローチから)、プロテーゼを展開することを含む。管腔は、湾曲し得、その場合、プロテーゼ10は、内側湾曲領域が管腔の湾曲部の内側になるように展開される。
【0106】
管腔は、典型的には、患者の血管系内にある。図示のようなプロテーゼの実施形態は、上行大動脈と下行大動脈との間の大動脈弓に植え込まれるように設計される。プロテーゼ10を大動脈弓に配置する方法は、上記のようなイントロデューサを用いてプロテーゼ10を患者の血管系に挿入すること;プロテーゼ10を大動脈弓の管腔内で、管腔の湾曲部の内側に内側湾曲領域があるように方向付けること;及びプロテーゼ10を以下のように展開すること、すなわち第1の近位シールステント22が管腔の湾曲部に対して実質的に垂直に展開され、スカラップ32の遠位端が鎖骨下動脈と頸動脈との間に整列され、開窓44が左鎖骨下動脈の接合部に整列されるように展開することを含む。
【0107】
利点は、以下を含む:プロテーゼが大動脈弓の湾曲に適合できる一方、ステントが湾曲部で血管を傷付けないことを確実にし、左鎖骨下動脈(LSA)を支持し、最小の10~15mmの近位シールゾーンを有することが含まれる。プロテーゼは、シールステント(第1の近位シールステント22)が左鎖骨下で血管に垂直に適切に整列される一方、鎖骨下と頸動脈との間で利用可能な血管の短い長さ内でプロテーゼをシールした状態で展開することもでき、血管への糜爛のリスクが低減される。特に、プロテーゼは、鎖骨下と頸動脈との間の小さいエリア内で着地することができ、くさび形状のステント及びテーパ状のステント及びグラフト端部がこのエリアにおいて大動脈の湾曲に適合し、入れ子式ステントがシールゾーンにおいてシールを最大化する。
【0108】
上述のように、好ましい実施形態の近位ステントは、くさび形状と尖部の変化する曲率半径とを有し、ステントが血管をむしばむことがないことを確実にし、また42mmのステント/ステントグラフトを22Fr(7.33mm)のシースに装入できることを可能にする。
【0109】
示される実施形態の内部分枝グラフト46は、2つの異なる部分を有するものとして記載されているが、いくつかの実施形態では、3つ以上の部分が設けられ得る。これらは、管状グラフト本体12の長手方向軸と漸次小さくなる鋭角で交差する長手方向軸を有し得、その結果、各部分は、隣接する近位部分よりも小さい鋭角で交差する長手方向軸を有する。
【0110】
図13~15は、プロテーゼ10の別の実施形態を示し、このプロテーゼ10は、大動脈弓において展開するためのステントグラフトである。別段の指示がない限り、プロテーゼのこの実施形態の特徴及び修正形態は、上述したものと同じである。しかしながら、それらは、必ずしもそうである必要はない。
【0111】
ステントグラフトは、近位端と遠位端とを有する管状グラフト材料の長さに沿って配置された複数の拡張可能なステントリングを含み、この複数のステントリングは、少なくとも管状グラフト材料の近位端にある近位ステントリング22と、管状グラフト材料の遠位端又はその近傍にある遠位ステントリング23と、近位ステントリングと遠位ステントリングとの間にある少なくとも1つの中間ステントリングとを含む。
【0112】
プロテーゼ10の上側部分を
図13に示す。プロテーゼ10はそれを貫通する内部管腔16を有する側壁14を含む管状グラフト本体12の形態のグラフトを含む。管状グラフト本体12は近位端18及び遠位端20(
図14及び15に示す)を有する。
【0113】
プロテーゼ10は管状グラフト本体12に沿って長手方向に分配された一連のステントを含む。ステントのそれぞれは、管状グラフト本体12の周囲、管状グラフト本体12の内側若しくは外側又は管状グラフト本体12自体の内側において、リングを形成するようにジグザグ配置で接続された複数のピーク及び谷を含み、隣接するピーク及び谷は、ストラットによって接続される。
【0114】
管状グラフト本体12の近位端18には、第1の周囲領域にスカラップ32が配置されている。スカラップ32の寸法は標的血管に合わせて調整することができる。スカラップ32が形成されているグラフト材料の領域にバーブ102が設けられている。これらは、展開中にプロテーゼ10を正しい位置に保持することを補助する。バーブ102は、ストラット24からグラフト材料を通して外側に遠位側に延びて、プロテーゼの移動を防止するために大動脈壁に係合し得る。好適なバーブは、2004年6月3日に発行された、Greenbergらに対する(特許文献11)(「Thoracic Aortic Aneurysm Stent Graft」)に開示及び記載されており、その内容は、参照により全体として本明細書に組み込まれる。
【0115】
本実施形態におけるスカラップ32は、約20mm~約40mm、好ましくは約30mmの近位シールゾーンを可能にするように構成される。スカラップ32は、その周囲に別個の補強ワイヤ104を有し得、この補強ワイヤは周囲でグラフト材料に縫い付けられている。
【0116】
図13に示されるように、近位シールゾーン106は、2つのシールステント108、110を含み、近位シールステント108及び遠位シールステント110は、遠位シールステント110が近位シールステント108の遠位尖部の遠位側に位置するように、互いに長手方向に離間される。したがって近位及び遠位シールステント108、110間にステントのないグラフト材料112の領域(この実施形態においてステントのないグラフト材料のリングを形成する)がある。この実施形態では、ステントのないグラフト材料112の領域の長手方向範囲は約3mm~約10mmである。ステントのないグラフト材料112の領域の長手方向範囲は、少なくとも約3mm、好ましくは約7mmであり得る。したがって、上述の実施形態とは対照的に、近位シールステント108と入れ子になったステントはない。近位シールステント108はプロテーゼ10の近位端18に配置される。これは上述の実施形態の第1の近位シールステント22と同様である。第1の近位シールステント108は内部ステントであり、換言すると管状グラフト本体12の内面の周囲に配置される。しかしながら、他の実施形態では、それは、外部ステントであり得るか、又はグラフト材料の厚さ内に配置することができる。
【0117】
近位ステントリング(シールステント108)は、複数のステントユニットを含み、各ステントユニットは、近位尖部によって接続された第1及び第2のストラットを含み、ステントリングは、複数の遠位尖部を含み、各ステントユニットは、遠位尖部30によって隣接ステントユニットに接続される。複数のステントユニットは、少なくとも1つのスカラップユニットと、少なくとも1つの支持ユニット39とを含み、各スカラップユニットの近位尖部は、スカラップ32に位置し、各支持ユニット39の近位尖部は、第1の周囲領域とは別個の第2の周囲領域に位置し、少なくとも1つのスカラップユニットのそれぞれの第1及び第2のストラットは、少なくとも1つの支持ユニット39のそれぞれの第1及び第2のストラットよりも短い。
【0118】
近位シールステント108は、約16~約28個の尖部26を含み得、その8~14個は、近位尖部28であり、8~14個は、遠位尖部30であるが、実用では、これは、例えば、プロテーゼの直径に依存して変化し得る。他の実施形態では、任意の適切な数の尖部26が存在し得る。例えば、ニチノールステントの場合、各端部は、約5~約10個の尖部を有し得る。同じ数の近位尖部28と遠位尖部30が好ましいが、これは、必須ではない。
【0119】
本体尖部34は、すべてグラフト材料の近位縁部56に配置される。管状グラフト本体12の近位端18を最も効果的にシールするために、すべての本体尖部34は、グラフト材料の近位縁部56に配置されることが好ましい。しかしながら、他の実施形態では、本体尖部34は、示されるよりもさらに遠位側又は近位側に様々に配置することができる。
【0120】
この実施形態では、3つのスカラップ尖部36がある。スカラップ尖部36はスカラップ32に隣接する本体尖部34の遠位側に配置される。特に、スカラップ尖部36は管状グラフト本体12の最近位端まで延びないことが有益であることが分かっている。この配置は、通常であれば分枝血管の位置で血管壁に衝突し得るスカラップ32内のステントストラット及び尖部を低減し、それにより血管への外傷又は損傷の可能性を低減する。このように、第1の近位シールステント108は、それ自体、管状グラフト本体12のスカラップ32の領域においてその近位端でスカラップを含むということができる。
【0121】
遠位尖部30のセットは、すべてスカラップ32の遠位端の遠位側、特にスカラップ32の最遠位縁部の遠位側に配置される。遠位尖部30のすべて又は少なくともその大部分は、スカラップ32の遠位端又は最遠位地点と少なくとも長手方向に同じレベルに又はその遠位側に配置されることが好ましく、これによりスカラップ32の全周囲をシールする近位シールステント108の能力が改善される。この実施形態では、遠位尖部30は、すべて互いにも整列される。
【0122】
示される実施形態では、遠位尖部30の長手方向位置は、管状グラフト本体12の周囲に沿って変化せず、すなわち、遠位尖部は、長手方向に同じレベルである。しかしながら、いくつかの他の実施形態では、遠位尖部30の長手方向位置は、上述の実施形態の方法で、グラフト本体の周囲に沿って変化し得る。さらに、他の実施形態では、遠位尖部は、整列されないこともある。
【0123】
スカラップ尖部36は、スカラップ32の遠位端に位置する。上述の実施形態と同様に、本体尖部34は、すべてグラフト材料によって覆われる、すなわち重ねられる。この実施形態では、近位シールステント108の尖部26は、グラフト材料を越えて延びない(すなわち、近位ステントは、グラフト材料によって完全に覆われる)。ストラット長さは、スカラップ尖部36が近位縁部16及びスカラップの遠位端の遠位側に位置決めされ、それによりグラフト材料によって覆われるようなものである。これは、近位シールステント108がニチノール製である場合に特に有益であり得る。スカラップ尖部36は、それらを定位置に保持するためにスカラップ32の遠位縁部でグラフト材料に縫合される。スカラップの周囲は、それに縫い付けられたワイヤによってさらに支持される。
【0124】
他の実施形態では、スカラップ尖部36は、スカラップ32において管状グラフト本体12の近位縁部16の近位側に延び、換言するとスカラップの遠位端の近位側に延び、グラフト材料によって覆われないことがある。その結果、第1の近位シールステント22の全部ではないが大部分がグラフト材料によって覆われる。それにもかかわらず、グラフトは近位シールステント108のピーク間の各間隙の少なくとも大部分を覆う。換言すると、近位シールステント108の隣接する近位尖部36に接合するストラット間の空間はそれぞれグラフト材料によって実質的に又は完全に重ねられる。
【0125】
この実施形態では、ストラット24は近位シールステント108の周囲に沿って長さが変化し、ステントの背の高いセグメントと短いセグメントが形成される。特に、スカラップのストラットは、両側でスカラップに隣接するストラットよりも短い。換言すると、各スカラップユニットの第1及び第2のストラットは、各支持ユニット39の第1及び第2のストラットよりも短い。
【0126】
上述した
図1~7の実施形態と同様に、この実施形態のスカラップ尖部ストラット64は、本体尖部ストラット66の大部分よりも短い。他の実施形態では、スカラップ尖部ストラット64は、すべて本体尖部ストラット66のいずれよりも短い。しかしながら、スカラップ尖部ストラット64は、スカラップに隣接する本体尖部ストラット66(換言すると上述の支持ユニット39内のもの)よりも短いことが特に有益である。いくつかの実施形態では、スカラップ尖部ストラット64は、スカラップに隣接する本体尖部ストラット66の対のみよりも短い。換言すると、スカラップユニットの第1及び第2のストラットが支持ユニット39の第1及び第2のストラットよりも短いことが特に有益である。示される実施形態では、スカラップ尖部ストラット64は、すべて同じ長さであるが、他の実施形態では異なる長さにすることができる。
【0127】
この実施形態では、尖部26は近位シールステント108の周囲に沿って均一であり、換言するとその周囲に沿って一貫した曲率半径が存在し、これによりステントの周りに均一な半径方向の力が生じる。しかしながら、他の実施形態では、近位シールステント108は、上記の実施形態について記載したように、その周囲に沿って異なる曲率半径を有する尖部26を有する場合もある。
【0128】
この実施形態では、近位シールステント108は、
図1~7の実施形態とは対照的に、ステント108の近位端から近位シールステント108の遠位端までの近位-遠位長さを有し、これはプロテーゼ10の周囲に沿って変化しない。しかしながら、いくつかの実施形態では、近位シールステント108は、ステント108の近位端から近位シールステント108の遠位端までの近位-遠位長さがプロテーゼ10の周囲に沿って変化し得る。
【0129】
さらに、
図1~7の実施形態の第1の近位シールステント22の近位端18とは対照的に、
図13~15の実施形態の近位シールステント108の近位端18はテーパを有しない。それにもかかわらず、この実施形態のいくつかの修正形態は、
図1~7の実施形態と同様のテーパを有し得る。
【0130】
図13~15に示された実施形態は、上述の実施形態とは対照的に、傾斜した近位端18も、くさび形状の近位ステントも有しない。それにもかかわらず、これを排除するものではなく、
図13~15のプロテーゼは、望ましい場合にはこれらの特徴を含むことができる。上記実施形態と同様に、プロテーゼ10の他のステントのいずれかは、同様に又は代替的に、くさび形状を有することができる。
【0131】
第2の又は遠位シールステント110は、近位シールステント108よりも少ない同じ数の尖部を有し得、例えば、約16~約28個の尖部26を有し得、その8~14個は、近位尖部28であり、8~14個は、遠位尖部30であるが、実用では、これは、例えば、プロテーゼの直径に依存して変化し得る。他の実施形態では、任意の適切な数の尖部26が存在し得る。例えば、ニチノールステントの場合、各端部は、約5~約10個の尖部、好ましくは5~9つの尖部を有し得る。同じ数の近位尖部28及び遠位尖部30があると好ましいが、これは必須ではない。
【0132】
上記実施形態と同様に、
図13~15のプロテーゼ10は、管状グラフト材料の側壁に設けられた少なくとも1つの開窓を含み、開窓は、左鎖骨下動脈の接合部と整列し、且つそれを通して側枝が展開されるように構成され、開窓は、ステントグラフトの管腔内に位置する内部分枝グラフトの管腔と整列され、内部分枝グラフトは、開窓からステントグラフトの管腔内に延びる。
【0133】
この実施形態では、グラフト材料の近位端は、第1及び第2の相互に排他的な周囲領域を含む。第1の周囲領域はスカラップ32を含み、開窓44と長手方向に整列される。三角形又は三角形体の開窓44は、スカラップ32と円周方向に整列され、スカラップ32の遠位にある。開窓44は、プロテーゼ10が完全に展開された状態にあるとき、開窓44が分枝血管の開口部を受け入れるようにサイズ決めされ位置決めされる。示される実施形態では、プロテーゼ10は大動脈弓内で展開されるように設計され、その地点で患者の解剖学的構造が許容する場合、開窓44は左鎖骨下動脈の開口部と整列される。この実施形態では、スカラップ32と開窓44との間の距離は、約30mmである。したがって、患者が左総頸動脈と左鎖骨下動脈との間に比較的広い着地ゾーンを有する場合、このデバイスは、スカラップ32と開窓44との間に近位及び遠位シールステント108、110を提供することを考慮すると、改善されたシールを提供する。
【0134】
開窓44は3つの丸みを帯びた角によって接合される上述のような3つの実質的に直線の縁部又は側によって形成され得るが、いくつかの変形において、ステントによって支持された開窓の側と、開窓の近位側との間の接合部に長手方向範囲が存在し得る。
図13~15に示されるように、開窓44は垂直な近位側、2つの角度のある側及び角度のある側と垂直な近位側との間の2つの長手方向に延びる側部によって形成することができる。
【0135】
遠位シールステント110は、開窓44の近位縁部66に隣接して設けられ、開窓44の近位側に配置され、その遠位尖部が開窓44の近位縁部56に隣接して配置されるように位置決めされる。示される実施形態では、遠位シールステント110の遠位尖部は、開窓44の近位縁部56のグラフト材料を越えて延びない。それと同時に、開窓44の近位縁部56は遠位シールステント110の遠位尖部の近位側には延びない。
【0136】
プロテーゼ10は、内部分枝グラフト(
図13~15に示されていない)を含む。これは、上述した実施形態と同様の形状及び構成を有し得る。他の形状及び構成も可能である。例えば、内部分枝グラフトは、プロテーゼ10の管腔16内を遠位側に延び得るか又は近位側に延び得る。いくつかの実施形態では、プロテーゼは、開窓を含むが、分枝グラフトを含まない場合がある。
【0137】
上述の実施形態と同様に、少なくとも1つの中間ステントリングは、開窓支持ステントリングであり、開窓支持ステントリングは、複数の近位尖部と複数の遠位尖部とを有するジグザグ形のステントであり、近位及び遠位尖部は、それらの間に延びる複数のステントストラット55によって互いに接続され、遠位尖部の少なくとも1つは、開窓支持尖部である。このようにして、開窓44は、開窓44と長手方向に整列した開窓支持ステント50によって支持される。開窓44は、開窓支持ステント50の2つのストラット55間に設けられ、2つのストラット55と開窓支持ステント50の遠位尖部との組み合わせは、開窓の2つの側部78、82と遠位端84とを画定する。この実施形態の開窓支持ステント50は、グラフト材料の外部に位置決めされるが、他の実施形態では内部に位置決めすることもできる。
【0138】
図13~15に示されたプロテーゼでは、開窓支持ステントの遠位尖部及び近位尖部は、すべて同じ曲率半径を有する。しかしながら、いくつかの実施形態では、遠位尖部は、上述の実施形態と同様の方法で近位尖部よりも大きい曲率半径を有することができる。それにもかかわらず、遠位尖部は、三角形開窓44の遠位端84(角)の曲率に一致する曲率半径を有する。
【0139】
図13~15の実施形態では、開窓支持ステント50は遠位シールステント110と同じ数の尖部を有する。その近位尖部は遠位シールステント110の遠位尖部と長手方向に整列し、その遠位尖部は遠位シールステント110の近位尖部と整列する。しかしながら、これは必須ではない。開窓支持ステント50の近位尖部は遠位シールステント110の近位尖部と整列されることもある。
【0140】
図13及び14に示されるように、開窓44は近位縁部56を有し、近位縁部は、少なくともステントグラフトの長手方向軸に実質的に垂直な部分を含む。開窓44の近位縁部56はステント配置によって閉塞されないが、いくつかの実施形態では、支持ワイヤがそれに沿って提供され得る。しかしながら、開窓の近位縁部56は縫合糸縫い付けによってのみ画定されることが好ましい。
【0141】
上記実施形態と同様に、プロテーゼ10は一連の本体ステント54を含む。上記実施形態と対照的に、近位及び遠位シールステント108、110及び開窓支持ステント50は、プロテーゼ10の遠位端に対して角度を付けられない。しかしながら、いくつかの実施形態では、角度を付けられることもある。
【0142】
図14に示されるように、最遠位ステント114がプロテーゼ10の遠位端に設けられる。最遠位ステントはプロテーゼ中最も柔軟なステントであり、プロテーゼ10の他のステントよりも弱い半径方向の力を提供する。これにより外傷のリスクが減少する。この実施形態では、最遠位ステント114は、16~28個の尖部26を有し得、その8~14個は、近位尖部28であり、8~14個は、遠位尖部30であるが、実用では、これは、例えば、プロテーゼの直径に依存して変化し得る。したがって、任意の適切な数の尖部26が存在し得る。同じ数の近位尖部28及び遠位尖部30があると好ましいが、これは、必須ではない。尖部はストラットによって接続され、ストラットは、プロテーゼ10の他のステントのストラットよりも長い。
【0143】
X線不透過性マーカ116が送達中にデバイスの位置決め及び整列を補助するために提供される。マーカは金、プラチナ、タンタル等を含む任意の適切なX線不透過性材料であり得る。
図14で最もよく見ることができるように、長手方向に配置された2つのマーカ116が、スカラップの各側でグラフト材料の近位端に提供される。さらなるマーカは、スカラップ32の遠位縁部の中間点に提供される。マーカ116は、開窓44の各角にも提供される。この実施形態では、4つのマーカ116が長手方向配置において開窓の遠位尖部に提供される。同じ長手方向軸に沿って横たわる3つのさらなるマーカ116がグラフト材料に沿って提供される。これらのマーカの長手方向の整列は、展開中にプロテーゼ10のねじれを検出することを補助する。他の適切なX線不透過性マーカを、示される金のマーカ116に加えて又はその代わりに組み込むことができる。一実施形態(図示せず)において、例えば金属(例えば、プラチナ)ワイヤ又はコイルがスカラップ32及び/又は開窓44の周辺を示すために使用され得る。例えば、X線不透過性コイルをスカラップワイヤ、開窓支持ステント又は他のステントの遠位ストラットの周囲に巻くことができる。別の実施形態では、そのようなマーカは、開窓44の遠位尖部63を示すためにV字形で配置され得る。
【0144】
図13~15に示される実施形態の利点は、より長いシールゾーンがスカラップ32と開窓44との間に提供されることである。グラフト材料112のステントのないエリアを間に有する近位シールステント108及び遠位シールステント110の配置は、可撓性も提供する。左総頸動脈と左鎖骨下動脈との間に比較的広い着地ゾーンを有する患者の場合、より大きい全体シールエリアが利用可能である。
【0145】
しかしながら、小さい着地ゾーンを有する患者の場合、本デバイスは最初にスカラップ32を左総頸動脈と整列させることによって植え込むことができる。開窓44は、この事例では、左鎖骨下動脈と整列できない。これらの事例では、橋渡しステントグラフト118(
図16に示される)を使用して、プロテーゼ10の管腔16と左鎖骨下動脈との間に流体連通を提供することができる。
【0146】
図16は、左総頸動脈と左鎖骨下動脈との間に短い(30mm未満)着地ゾーンのみがある患者の大動脈弓内に位置するプロテーゼ10を概略的に示す。この図に示された特徴は原寸に比例して描かれているわけではない。左総頸動脈と左鎖骨下動脈との間の接合部において近位シールステント108によって良好なシールが維持される一方、左総頸動脈と大動脈弓との間の流体連通がスカラップ32を介して維持されていることが分かる。
【0147】
この患者では、開窓は左鎖骨下動脈と大動脈弓の接合部に整列することができず、左鎖骨下動脈の開口部から約1~2cm遠位に着地している。この事例では、左鎖骨下動脈と下行大動脈との間の流体連通を維持するために、側枝である橋渡しステントグラフト118が使用される。橋渡しステントグラフト118は内部分枝グラフト46内に係合する近位端を有する。橋渡しステントグラフト118は開窓44から出て、左鎖骨下動脈内に入る前に、遠位シールステント110と血管壁との間でプロテーゼ10の管状グラフト本体12の外側に沿って延びる。
【0148】
橋渡しステントグラフト118のステントリング120の少なくとも1つはステントグラフトの遠位シールステント110よりも高い半径方向の力を有する。これにより、橋渡しステントグラフト118は遠位シールステント110の半径方向の力に打ち勝って、プロテーゼ10と並走する左鎖骨下動脈への開放管腔及びしたがって流体連通を維持することができる。
【0149】
この配置により、近位シールステント108によって良好なシールが維持される。良好なシールは、遠位シールステント110によってさらに維持され、このステントは、血管壁の周囲の大部分と係合するが、橋渡しステントグラフト118が隣接して走行する部分を除く。それにもかかわらず、遠位シールステントと橋渡しステント118との組み合わせは、大動脈内で良好なシールを提供する。
【0150】
グラフト材料112のステントのない領域は、遠位シールステント110が近位シールステント108を外すことなく橋渡しステントグラフト118によって血管壁から押しのけられることを可能にするある程度の可撓性を提供する。このようにして、近位シールステント108は、プロテーゼ10と、左総頸動脈と左鎖骨下動脈との間のシールに利用可能な小エリアとの間の良好なシールを維持することができる。
【0151】
図13~15のステントグラフトは、橋渡しステント118と共に使用されるか否かにかかわらず、本明細書に記載されているもの又はその全内容が参照により本明細書に組み込まれる同時係属中の(特許文献12)に記載されているものなど、任意の適切な展開システムを使用して送達することができる。
【0152】
したがって、
図13~15の実施形態は、患者の解剖学的構造のより広い範囲に使用することができる。患者が左総頸動脈と左鎖骨下動脈との間により長い着地ゾーンを有する場合、開窓は
図1~7の実施形態と同様の方法で左鎖骨下動脈と整列し得る。しかしながら、このデバイスは、開窓44が左鎖骨下動脈と整列する必要はないが橋渡しステント118によってそれに流体的に接続できるため、より短い着地ゾーンを有する患者にも使用することができる。したがって、このデバイスはより多数の患者にとって有益である。
【0153】
記載される実施形態及び従属項のすべての任意選択的な好ましい特徴及び修正形態は、本明細書において教示される本発明のすべての態様で使用可能である。さらに、従属項の個々の特徴並びに記載される実施形態のすべての任意選択的な好ましい特徴及び修正形態は、互いに組み合わせ可能であり且つ交換可能である。
【0154】
これに関連して上記のように、内腔植え込み型医療デバイスが開示され、このデバイスは、近位端及び遠位端を有するグラフトであって、近位端は、第1及び第2の周囲領域を含み、第1の周囲領域はスカラップを有するグラフトと;グラフトの近位端に配置されるステントであって、第1及び第2のステントユニットを含む複数のステントユニットを含み、各ステントユニットは近位尖部によって接続される第1及び第2のストラットを含むステントとを含み;第1のステントユニットの近位尖部は、第2のステントユニットの近位尖部よりも丸みを帯びており;複数のステントユニットは、少なくとも1つのスカラップユニットと少なくとも1つの本体ユニットとを含み、各スカラップユニットはスカラップに位置する近位尖部を有し、各本体ユニットは、第2の周囲領域に位置する近位尖部を有し;第1のステントユニットは、少なくとも1つのスカラップユニットのスカラップユニットであり、第2のステントユニットは、少なくとも1つの本体ユニットの本体ユニットである。複数のステントユニットが第2の周囲領域に位置する近位尖部を有する少なくとも1つの支持ユニットを含み、少なくとも1つのスカラップユニットのそれぞれの第1及び第2のストラットが少なくとも1つの支持ユニットのそれぞれの第1及び第2のストラットよりも短いことが好ましい。好ましくは、第2のステントユニットは、第1のステントユニットと直径方向に対向する。少なくとも1つのスカラップユニットのそれぞれの近位尖部はスカラップの遠位端の近位側に配置され、グラフト材料によって覆われない場合がある。
【0155】
本開示は、内腔植え込み型医療デバイスも提供し、このデバイスは、近位端及び遠位端を有するグラフトであって、近位端は、第1及び第2の周囲領域を含み、第1の周囲領域はスカラップを有するグラフトと;グラフトの近位端に配置されるステントであって、複数のステントユニットを含み、各ステントユニットは近位尖部によって接続される第1及び第2のストラットを含むステントとを含み;複数のステントユニットは、少なくとも1つのスカラップユニットと、少なくとも1つの支持ユニットとを含み、各スカラップユニットの近位尖部はスカラップに位置し、各支持ユニットの近位尖部は、第2の周囲領域に位置し、少なくとも1つのスカラップユニットのそれぞれの第1及び第2のストラットは、少なくとも1つの支持ユニットのそれぞれの第1及び第2のストラットよりも短く;少なくとも1つのスカラップユニットのそれぞれの近位尖部はスカラップの遠位端の近位側に配置され、グラフト材料によって覆われない。
【0156】
少なくとも1つのスカラップユニットが少なくとも1つの支持ユニットのそれぞれの近位尖部よりも丸みを帯びた近位尖部を有することが好ましい。複数のステントユニットは、第2の周囲領域に位置する近位尖部を有する少なくとも1つの支持ユニット含み得、少なくとも1つの支持ユニットのそれぞれはスカラップを支持する。同様に、好ましくは、複数のステントユニットは、第2の周囲領域に位置する近位尖部を有する少なくとも1つの支持ユニットを含み、少なくとも1つの支持ユニットのそれぞれはスカラップに隣接し、任意選択的に少なくとも1つの支持ユニットは、スカラップの両側に配置された支持ユニットを含む。
【0157】
複数のステントユニットは、第2の周囲領域に位置する近位尖部を有する少なくとも1つの支持ユニットを含み得、少なくとも1つのスカラップユニットのそれぞれの近位尖部は、少なくとも1つの支持ユニットのそれぞれの近位尖部の遠位側に配置される。好ましくは、各スカラップユニットの近位尖部は、直径方向に対向する本体ユニットの近位尖部よりも丸みを帯びている。好ましくは、各スカラップユニットの近位尖部は、各支持ユニットの近位尖部よりも丸みを帯びている。いくつかの実施形態では、各スカラップユニットの近位尖部は、各支持ユニットの近位尖部及び各本体ユニットの近位尖部よりも丸みを帯びている。
【0158】
複数のステントユニットは、第2の周囲領域に位置する近位尖部を有する少なくとも1つの支持ユニットを含み得、少なくとも1つの支持ユニットのそれぞれの近位尖部はグラフト材料によって重ねられる。さらに、少なくとも1つの支持ユニットのそれぞれの近位尖部は、好ましくは、グラフトの近位縁部に配置される。少なくとも1つのスカラップユニットのそれぞれの少なくとも大部分は、好ましくは、グラフト材料によって重ねられる。さらに、各スカラップユニットの近位尖部は、第1の周囲領域にある。実施形態では、各スカラップユニットの近位尖部はスカラップの遠位端にある。
【0159】
いずれかの先行する声明によるデバイスのステントは複数の遠位尖部をさらに含むことができ、ステントの各ステントユニットは遠位尖部によって隣接するステントユニットに接続される。複数の遠位尖部が第2の周囲領域に配置され、スカラップの遠位端と長手方向に同じレベルに又はその遠位側に配置されることが好ましい。さらに、ステントの遠位尖部の少なくとも大部分は、スカラップの遠位端と長手方向に同じレベルに又はその遠位側に配置されることが好ましい。いくつかの実施形態では、ステントの遠位尖部のすべてがスカラップの遠位端と長手方向に同じレベルに又はその遠位側に配置される。ステントの遠位尖部が実質的に互いに整列されていることも好ましい。
【0160】
少なくとも1つのスカラップユニットのそれぞれの近位尖部は、第1の周囲領域においてステントの各遠位尖部よりも丸みを帯びているのが好ましい。いくつかの実施形態では、各スカラップユニットの近位尖部は、ステントの遠位尖部のそれぞれよりも丸みを帯びている。任意選択的に、ステントの尖部の遠位セットは、すべて同じ曲率半径を有する。いくつかの実施形態では、第2の周囲領域に位置するステントの尖部は、すべて同じ曲率半径を有する。より丸みを帯びたステントの尖部は、より大きい曲率半径を有し得る。
【0161】
第1及び第2の周囲領域は、グラフトの全周囲を構成し得る。第1の周囲領域は、スカラップと同じ範囲であり得る。好ましくは、ステントの少なくとも大部分がグラフト材料によって重ねられる。好ましくは、少なくとも1つの支持ユニットのそれぞれは、グラフト材料によって完全に覆われる。少なくとも1つのスカラップユニットの1つ又は複数は、グラフト材料によって部分的に重ねられ得る。
【0162】
内腔植え込み型医療デバイスも提供され、このデバイスは、近位端及び遠位端を有するグラフトであって、近位端は、第1及び第2の周囲領域を含み、第1の周囲領域はスカラップを有するグラフトと;グラフトの近位端に配置されるステントであって、複数のステントユニットを含み、各ステントユニットは近位尖部によって接続される第1及び第2のストラットを含むステントとを含み;複数のステントユニットは複数のスカラップユニットと少なくとも1つの本体ユニットとを含み、各スカラップユニットはスカラップに位置する近位尖部を有し、各本体ユニットは、第2の周囲領域に位置する近位尖部を有する。内腔植え込み型医療デバイスは本明細書に開示される任意選択的な特徴のいずれかを組み込むことができる。いくつかの実施形態では、いずれかの先行する声明の内腔植え込み型医療デバイスは湾曲した管腔に植え込まれるように構成される。
【0163】
ステントは、第1のステントであり、第1の端部から第2の端部までの長さを有し、第1の端部は近位端であり、第2の端部は遠位端であり、第1のステントの長さはデバイスの内側湾曲領域から両方の円周方向において増大し、第1のステントにくさび形状を提供する。内側湾曲領域は管腔の湾曲部の内側に展開されるように構成される。
【0164】
グラフトは管状グラフトであり得、ステントはグラフトの周囲にある。いくつかの実施形態では、第1のステントの第1の端部はグラフトの第1の端部に隣接する。グラフトの近位端はグラフトの側壁に対して傾斜を付けられ、内側湾曲領域で側壁に対して鈍角を形成し得る。好ましくは、デバイスの内側湾曲領域は、スカラップと実質的に直径方向に対向する。デバイスは、第1のステントを有する。第1のステントはグラフトの近位端に配置された最端ステントであり得る。第1のステントの少なくとも大部分はグラフト材料によって覆われ得る。第1のステントは、いずれかの先行する声明のステントであり得る。デバイスは、第1のステントに隣接しその遠位にある第2のステントを含み得る。第1及び第2のステントのそれぞれは、複数の近位側のピークと遠位側の谷を含み得、隣接するピーク及び谷は、ストラットによって接続される。第1のステントのピークは上述のステントユニットによって提供され得る。換言すると、各ステント内で隣接するピーク及び谷は、ストラットによって接続される。グラフトは、第1のステントのピーク間の複数の間隙のそれぞれの少なくとも大部分を覆い得る。第2のステントのストラットは、第1のステントのストラットよりも短いことがある。第2のステントのピークは、第1のステントの谷間で入れ子状にされ得る。さらに、デバイスは、以下に開示及び記載される任意選択的な特徴のいずれかを含み得る。
【0165】
湾曲した管腔に植え込むように構成された植え込み型医療デバイスも提供され、このデバイスは、管状グラフトとグラフトの周囲の第1のステントとを含み;グラフトは、第1の端部、第2の端部及び側壁を有し;第1のステントは、第1の端部から第2の端部までの長さを有し、第1のステントの第1の端部はグラフトの第1の端部に隣接し、第1のステントの長さはデバイスの内側湾曲領域から両方の円周方向において増大し、第1のステントにくさび形状を提供し;グラフトの第1の端部は側壁に対して傾斜を付けられ、内側湾曲領域の側壁に対して鈍角を形成し;内側湾曲領域は管腔の湾曲部の内側に展開されるように構成される。グラフトの第1の端部はグラフトの第1の端部の周囲の少なくとも大部分に沿って第1のステントの第1の端部と整列されることが好ましい。
【0166】
好ましくは、グラフトの第1の端部は、グラフトの第1の端部の周囲の少なくとも大部分に沿って第1のステントの第1の端部から実質的に等距離にある。いくつかの実施形態では、デバイスは近位端及び遠位端を有し、ステントの第1の端部は、ステントの第1の端部の長手方向位置がデバイスの内側湾曲領域から両方の円周方向において近位-遠位方向に増加するようなテーパを有する。好ましくは、第1のステントはその第1の端部に複数の尖部を含み、テーパは内側湾曲領域からの各円周方向において、近位-遠位方向に互いにオフセットされた第1のステントの第1の端部の少なくとも3つの尖部を含む。好ましくは、少なくとも3つの尖部は、隣接する尖部である。テーパは、好ましくは、直線状である。テーパは約5mm~約20mm、より好ましくは約10mm~約20mm、さらに好ましくは約13mm~約17mm、最も好ましくは約15mmのオフセットを提供する。グラフトの第1の端部は、好ましくは、ステントの第1の端部と実質的に同じテーパを有する。いずれかの先行する声明によるデバイスの実施形態では、第1のステントの第1の端部が管腔の湾曲部に対して実質的に垂直に展開されるようにテーパが構成されることが特に有利である。
【0167】
グラフトの第1の端部は、管腔の湾曲部に対して実質的に垂直に展開されるように構成することができる。第1のステントはグラフトの内部の周囲の内部ステントであり得る。グラフトの第1の端部はグラフトの近位端であり、第1のステントの第1の端部は、第1のステントの近位端であり、グラフトの第2の端部はグラフトの遠位端であり、第1のステントの第2の端部は、第1のステントの遠位端である。第1のステントは、好ましくは管腔の湾曲部の外側に展開されるように構成されたスカラップをその第1の端部に含むことができる。いずれかの先行する声明によるデバイスは、第1のステントから間隔をおいて配置された少なくとも1つのさらなるステントを含むことができる。
【0168】
グラフトは、好ましくは管腔の湾曲部の外側に展開されるように構成されたスカラップを第1の端部に含み得る。第1のステントはグラフトの第1の端部に配置された最端ステントであり得る。グラフトの第1の端部が近位側であり、グラフトの第2の端部が遠位側であり得る。いくつかの実施形態では、デバイスは、第1のステントに隣接する第2のステントを含む。第2のステントは、第1のステントの遠位側であり得る。実施形態では、第1及び第2のステントのそれぞれは、複数の近位側のピーク及び遠位側の谷を含み、隣接するピーク及び谷は、ストラットによって接続される。
【0169】
グラフトは、第1のステントのピーク間の複数の間隙のそれぞれの少なくとも大部分を覆い得る。第2のステントのピークは、第1のステントの谷間に入れ子状に配置され得る。第2のステントのストラットは、第1のステントのストラットより短い場合がある。いくつかの実施形態では、グラフトの第1の端部は、第1及び第2の周囲領域を含み、第1の周囲領域は、スカラップを有する。スカラップは、デバイスの内側湾曲領域と実質的に直径方向に対向し得る。実施形態では、グラフトの第1の端部は、近位端であり、グラフトの第2の端部は、遠位端である。第1のステントは、グラフトの近位端に配置され得る。
【0170】
実施形態では、第1のステントは、第1及び第2のステントユニットを含む複数のステントユニットを含み、各ステントユニットは近位尖部によって接続された第1及び第2のストラットを含む。第1のステントユニットの近位尖部は、第2のステントユニットの近位尖部よりも丸みを帯びている場合がある。複数のステントユニットは、少なくとも1つのスカラップユニットと少なくとも1つの本体ユニットとを含み得、各スカラップユニットはスカラップに位置する近位尖部を有し、各本体ユニットは、第2の周囲領域に位置する近位尖部を有する。第1のステントユニットは、少なくとも1つのスカラップユニットのスカラップユニットであり得、第2のステントユニットは、少なくとも1つの本体ユニットの本体ユニットであり得る。複数のステントユニットは、好ましくは、少なくとも1つのスカラップユニットと、少なくとも1つの支持ユニットとを含み、各スカラップユニットの近位尖部は、スカラップに位置し、各支持ユニットの近位尖部は、第2の周囲領域に位置し、少なくとも1つのスカラップユニットのそれぞれの第1及び第2のストラットは、好ましくは、少なくとも1つの支持ユニットのそれぞれの第1及び第2のストラットよりも短い。
【0171】
少なくとも1つのスカラップユニットのそれぞれの近位尖部はスカラップの遠位端の近位側に配置され、グラフト材料によって覆われない場合がある。複数のステントユニットは複数のスカラップユニットと少なくとも1つの本体ユニットとを含み得、各スカラップユニットはスカラップに位置する近位尖部を有し、各本体ユニットは、第2の周囲領域に位置する近位尖部を有する。
【0172】
さらに、デバイスは、本明細書に開示される任意選択的な特徴のいずれかを含み得る。デバイスは、本明細書に開示される任意選択的な特徴のいずれかを含み得、ステントへの言及は、第1のステントへの言及と見なされる。
【0173】
内腔植え込み型医療デバイスも提供され、このデバイスは、近位端及び遠位端を有するグラフトと;グラフトの近位端に配置された最端ステントである第1のステントと;第1のステントに隣接する第2のステントとを含み;第1及び第2のステントのそれぞれは、複数の近位側のピーク及び遠位側の谷を含み、隣接するピーク及び谷は、ストラットによって接続され;グラフトは、第1のステントのピーク間の複数の間隙のそれぞれの少なくとも大部分を覆い;第2のステントのストラットは、第1のステントのストラットよりも短く;第2のステントのピークは、第1のステントの谷間に入れ子状に配置される。第1及び第2のステントは、長手方向に分離され得る。好ましくは、第2のステントの入れ子状に配置されたピークに接合する第1及び第2のストラットは、第1のステントの隣接する谷に接合する第1及び第2のストラットよりも短い。第2のステントは、第1のステントよりも低い半径方向の力を生成するように構成され得る。
【0174】
グラフトはその近位端にスカラップを含み得る。グラフトは開窓をさらに含み、開窓は、第2のステントよりもグラフトの遠位端に近い位置にあり、第2のステントに隣接して配置される。好ましくは、第2のステントのストラット及び尖部はリングを形成し、第2のステントのストラットの少なくとも大部分は、第1のステントの第1のストラットより短い。好ましくは、第1のステントのストラットと尖部はリングを形成し、第2のステントのすべてのストラットは、第1のステントのすべてのストラットより短い。好ましくは、第2のステントの複数のピークは、第1のステントの谷間に入れ子状に配置される。好ましくは、入れ子は、半径方向に対称である。好ましくは、第2のステントの複数の入れ子状に配置されたピークは、第1のステントのそれぞれのピークの下にそれぞれ入れ子状に配置された第2のステントの少なくとも第1及び第2の隣接するピークを含む。好ましくは、第2のステントのピークの少なくとも大部分は、第1のステントの谷間に入れ子状に配置される。より好ましくは、第2のステントの各ピークは、第1のステントの谷間に入れ子状に配置される。より好ましくは、第2のステントの各ピークは、第1のステントの谷の各対間に入れ子状に配置される。
【0175】
第2のステントの各入れ子式に配置されたピークに接合する第1及び第2のストラットは、第1のステントの隣接する谷に接合する第1及び第2のストラットより短いことがある。グラフトの近位端は、第1及び第2の周囲領域を含み得、第1の周囲領域はスカラップを有する。
【0176】
第1のステントは、第1及び第2のステントユニットを含む複数のステントユニットを含み得、各ステントユニットは近位尖部によって接続された第1及び第2のストラットを含む。第1のステントの各近位尖部は、第1のステントのピークであり得る。第1のステントの各谷は、第1のステントのステントユニットを接合することによって形成された遠位尖部であり得る。第1のステントユニットの近位尖部は、第2のステントユニットの近位尖部よりも丸みを帯びていることがある。
【0177】
複数のステントユニットは、少なくとも1つのスカラップユニットと少なくとも1つの本体ユニットとを含み得、各スカラップユニットは、スカラップに位置する近位尖部を有し、各本体ユニットは、第2の周囲領域に位置する近位尖部を有する。第1のステントユニットは、好ましくは、少なくとも1つのスカラップユニットのスカラップユニットであり、第2のステントユニットは、好ましくは、少なくとも1つの本体ユニットの本体ユニットである。
【0178】
複数のステントユニットは、好ましくは、少なくとも1つのスカラップユニットと、少なくとも1つの支持ユニットとを含み得、各スカラップユニットの近位尖部は、スカラップに位置し、各支持ユニットの近位尖部は、第2の周囲領域に位置する。少なくとも1つのスカラップユニットのそれぞれの第1及び第2のストラットは、少なくとも1つの支持ユニットのそれぞれの第1及び第2のストラットよりも短いことが好ましい。少なくとも1つのスカラップユニットのそれぞれの近位尖部は、スカラップの遠位端の近位側に配置され、グラフト材料によって覆われていないことがある。複数のステントユニットは、複数のスカラップユニットと少なくとも1つの本体ユニットとを含み得、各スカラップユニットは、スカラップに位置する近位尖部を有し、各本体ユニットは、第2の周囲領域に位置する近位尖部を有する。
【0179】
デバイスは、湾曲した管腔内に植え込まれるように構成され得る。実施形態では、グラフトは管状グラフトである。デバイスはグラフトの周囲に第1のステントを含み得る。第1のステントはいずれかの先行する声明による第1のステントであり得る。第1のステントは、第1の端部から第2の端部までの長さを有し得、第1のステントの長さはデバイスの内側湾曲領域から両方の円周方向において増加し、第1のステントにくさび形状を提供する。第1のステントの第1の端部はグラフトの近位端に隣接し得る。
【0180】
グラフトの近位端はグラフトの側壁に対して傾斜を付けられ得る。グラフトの近位端は内側湾曲領域で側壁に対して鈍角を形成し得る。デバイスの内側湾曲領域は管腔の湾曲部の内側に展開されるように構成され得る。
【0181】
いずれかの先行する態様のデバイスは、ステントグラフトと呼ばれ得る。グラフトは、管状グラフト本体の形態である。実施形態では、デバイスは、大動脈弓内で展開するためのステントグラフトである。いずれかの先行する態様のグラフトは、グラフトの側壁に設けられた開窓を含み得る。実施形態では、グラフトの第1の端部は、近位側であり、グラフトの第2の端部は、遠位側である。
【0182】
開窓は、開窓の2つの側部の近位端を接続する近位縁部を有し得る。近位縁部は、好ましくは、少なくともグラフトの長手方向軸に実質的に垂直な部分を含み得る。
【0183】
いずれかの先行する態様のデバイスは、グラフトの管状グラフト材料の長さに沿って配置された複数の拡張可能なステントリングを含み得る。複数の拡張可能なステントリングは、管状グラフト材料の近位端の又はその近くの少なくとも近位ステントリングと、管状グラフト材料の遠位端の又はその近くの遠位ステントリングと、近位ステントリングと遠位ステントリングとの間の少なくとも1つの中間ステントリングとを含み得る。
【0184】
近位ステントリングは、いずれかの先行する態様の第1のステントであり得る。少なくとも1つの中間ステントリングの1つは、いずれかの先行する態様の第2のステントであり得る。遠位ステントリングは、追加のステントであり得、デバイスの遠位側の最端ステントである。少なくとも1つの中間ステントリングは、開窓支持ステントリングを含み得る。開窓支持ステントリングは、複数の近位尖部及び複数の遠位尖部を有するジグザグ形のステントであり得、近位及び遠位尖部は、それらの間に延びる複数のステントストラットによって互いに接続される。実施形態では、開窓支持ステントリングの近位尖部は、ピークを形成し、開窓支持ステントリングの遠位尖部は、谷を形成する。
【0185】
開窓支持ステントリングの遠位尖部の少なくとも1つは、開窓支持尖部であり得る。開窓支持尖部は、好ましくは、開窓支持ステントリングの近位尖部よりも大きい曲率半径を有する。好ましい実施形態では、開窓は、開窓支持ステントリングの2つのストラット間に提供され、開窓支持ステントリングの2つのストラットと開窓支持尖部との組み合わせは、開窓の2つの側部及び遠位端を画定する。特定の実施形態では、開窓は、左鎖骨下動脈の接合部との整列及びそれを通る側枝の展開のために構成される。開窓は、ステントグラフトの管腔内に位置する内部分枝グラフトの管腔と整列され得る。内部分枝グラフトは、開窓からステントグラフトの管腔内に遠位方向に延び得る。
【0186】
さらに、デバイスは、本明細書に開示される他の特徴のいずれかを含み得る。
【0187】
大動脈弓において展開するためのステントグラフトも提供され、このステントグラフトは、管状グラフト材料の長さに沿って配置された複数の拡張可能なステントリングであって、少なくとも管状グラフト材料の近位端又はその近くの近位ステントリング及び管状グラフト材料の遠位端又はその近くの遠位ステントリングと、近位ステントリングと遠位ステントリングとの間の少なくとも1つの中間ステントリングとを含む複数の拡張可能なステントリングと;管状グラフト材料の側壁に設けられた少なくとも1つの開窓であって、開窓は左鎖骨下動脈の接合部と整列し、且つそれを通して側枝を展開するように構成される、少なくとも1つの開窓とを含み;少なくとも1つの中間ステントリングは、開窓支持ステントリングであり、開窓支持ステントリングは、複数の近位尖部及び複数の遠位尖部を有するジグザグ形のステントであり、近位尖部及び遠位尖部は、それらの間に延びる複数のステントストラットによって互いに接続され、遠位尖部の少なくとも1つは、近位尖部よりも大きい曲率半径を有する開窓支持尖部であり;少なくとも1つの開窓は、開窓支持ステントリングの2つのストラット間に設けられ、開窓支持ステントリングの2つのストラットと開窓支持尖部との組み合わせは、開窓の2つの側部及び遠位端を画定し;開窓は、開窓の2つの側部の近位端を接続する近位縁部を有し、近位縁部は、少なくともステントグラフトの長手方向軸に対して実質的に垂直な部分を含む。
【0188】
好ましくは、開窓の近位縁部に隣接してシールステントリングが設けられる。シールステントリングは近位尖部及び遠位尖部を有するジグザグ形のステントであり得、任意選択的に、開窓の近位縁部はシールステントリングの遠位尖部の近位側には延びない。
【0189】
いくつかの実施形態では、管状グラフト材料の側壁には、単一の開窓のみが設けられる。開窓は、好ましくは、ステントグラフトの近位端のスカラップと整列され、スカラップの遠位側にあり、それらの間にシールゾーンが設けられる。開窓支持ステントリングは、開窓支持尖部が開窓支持ステントリングの円周方向反対側の遠位尖部の近位側に位置するような角度で管状グラフト材料の周囲に配置することができる。
【0190】
好ましい実施形態では、管状グラフト材料はその近位端でテーパ状であり、開窓支持ステントリングは管状グラフト材料の近位端のテーパの角度と一致する角度で管状グラフト本体内において角度を付けられる。
【0191】
複数の遠位尖部は、近位尖部よりも大きい曲率半径を有し得る。すべての遠位尖部が近位尖部よりも大きい曲率半径を有することもある。好ましくは、少なくとも開窓支持尖部は、2mm~4.5mm、最も好ましくは約3.75mmの曲率半径を有する。開窓支持ステントリングの遠位尖部は、すべて2mm~4.5mm、より好ましくは約3.75mmの曲率半径を有し得る。好ましくは、開窓支持ステントリングの近位尖部の一部又は全部は、0.5mm~1.5mm、最も好ましくは約0.75mmの曲率半径を有する。
【0192】
ステントグラフトの好ましい実施形態は、開窓から遠位側に及び管状グラフト材料の内側に延びる分枝グラフトを含み得る。分枝グラフトは、分枝グラフトが遠位側に延びるにつれて開窓から横方向にも延びるようにステントグラフトの管状グラフト材料に対して角度を付けられ得る。分枝グラフトは、好ましくは、ステントグラフトの中心長手方向軸から測定した場合、5~45度の範囲の角度、最も好ましくは約16度の角度で角度を付けられる。好ましくは、分枝グラフトは、近位長手方向軸を有する近位部分と、遠位長手方向軸を有する遠位部分とを有し、近位部分の近位長手方向軸は、ステントグラフトの長手方向軸と鋭角で交差し、遠位部分の遠位長手方向軸は、ステントグラフトの長手方向軸と鋭角で交差し、遠位長手方向軸とステントグラフトの長手方向軸との間の鋭角は、近位長手方向軸とステントグラフトの長手方向軸との間の鋭角よりも小さい。
【0193】
好ましい実施形態では、分枝グラフトの最近位部分は、概ね円錐台状であり、分枝グラフトの最遠位部分は、円筒形である。分枝グラフトの最近位部分は、上記の近位部分であり得、分枝グラフトの最遠位部分は、上記の遠位部分であり得る。
【0194】
さらに提供されるのは、大動脈弓において展開するためのステントグラフトであり、このステントグラフトは、管状グラフト材料の長さに沿って配置された複数の拡張可能なステントリングであって、少なくとも管状グラフト材料の近位端又はその近くの近位ステントリング及び管状グラフト材料の遠位端又はその近くの遠位ステントリングと、近位ステントリングと遠位ステントリングとの間の少なくとも1つの中間ステントリングとを含む複数の拡張可能なステントリングと;管状グラフト材料の側壁に設けられた少なくとも1つの開窓であって、開窓は左鎖骨下動脈の接合部と整列し、且つそれを通して側枝を展開するように構成される、少なくとも1つの開窓とを含み;開窓はステントグラフトの管腔内に位置する内部分枝グラフトの管腔と整列され;内部分枝グラフトは開窓からステントグラフトの管腔内を遠位方向に延びる。
【0195】
内部分枝グラフトは、内部分枝グラフトが遠位側に延びるにつれて開窓から横方向にも延びるようにステントグラフトの管腔内で角度を付けられ得る。内部分枝グラフトは、好ましくは、ステントグラフトの中心長手方向軸から測定した場合、5~45度の範囲の角度で、最も好ましくは約16度の角度で角度を付けられる。
【0196】
好ましくは、内部分枝グラフトは近位長手方向軸を有する近位部分と、遠位長手方向軸を有する遠位部分とを有し、近位部分の近位長手方向軸はステントグラフトの長手方向軸と鋭角で交差し、遠位部分の遠位長手方向軸はステントグラフトの長手方向軸と鋭角で交差し、遠位長手方向軸とステントグラフトの長手方向軸との間の鋭角は近位長手方向軸とステントグラフトの長手方向軸との間の鋭角よりも小さい。
【0197】
好ましくは、内部分枝グラフトの最近位部分は、概ね円錐台状であり、内部分枝グラフトの最遠位部分は、円筒形である。内部分枝グラフトの最近位部分は、上記の近位部分であり得、内部分枝グラフトの最遠位部分は、上記の遠位部分であり得る。
【0198】
管状グラフト材料の長さは、近位端と遠位端とを有するグラフトを形成する。実施形態では、デバイスは、第1のステントを有する。第1のステントはグラフトの近位端に配置された最端ステントであり得る。第1のステントは近位ステントリングであり得る。デバイスは、第1のステントに隣接し第1のステントの遠位側の第2のステントを含み得る。第2のステントは、少なくとも1つの中間ステントリングの1つであり得る。第1及び第2のステントのそれぞれは、複数の近位側のピーク及び遠位側の谷を含み得る。実施形態では、第1及び第2のステントのそれぞれの隣接するピーク及び谷は、ストラットによって接続される。好ましくは、グラフトは、第1のステントのピーク間の複数の間隙のそれぞれの少なくとも大部分を覆う。第2のステントのピークは、第1のステントの谷間に入れ子状に配置され得る。第2のステントのストラットは、第1のステントのストラットよりも短い場合がある。
【0199】
さらに、デバイスは、本明細書に開示される任意選択的な特徴のいずれかを含み得る。
【0200】
ステントグラフトは湾曲した管腔内に植え込まれるように構成された植え込み型医療デバイスである。実施形態では、ステントグラフトは管状グラフトとグラフトの周囲の第1のステントとを含む植え込み型医療デバイスである。実施形態では、管状グラフトは、第1の端部、第2の端部及び側壁を有する。第1のステントは、近位ステントリング、少なくとも1つの中間ステントリングの1つ又は遠位ステントリングであり得る。第1のステントは、第1の端部から第2の端部までの長さを有する。第1のステントの長さは、デバイスの内側湾曲領域から両方の円周方向において増大し得、第1のステントにくさび形状を提供し得る。第1のステントの第1の端部はグラフトの第1の端部に隣接し得る。
【0201】
グラフトの第1の端部は側壁に対して傾斜を付けられ得る。グラフトの第1の端部は内側湾曲領域で側壁に対して鈍角を形成し得る。グラフトの第1の端部は近位端であり、グラフトの第2の端部は遠位端である。内側湾曲領域は管腔の湾曲部の内側に展開されるように構成される。管腔は大動脈弓であり得る。
【0202】
近位ステントリングは、第1及び第2のステントユニットを含む複数のステントユニットを含み得、各ステントユニットは近位尖部によって接続された第1及び第2のストラットを含む。第1のステントユニットの近位尖部は、第2のステントユニットの近位尖部よりも丸みを帯びていることがある。管状グラフト材料の近位端は、第1及び第2の周囲領域を含み得、第1の周囲領域はスカラップを有する。近位ステントリングは管状グラフト材料の近位端に配置され得る。
【0203】
複数のステントユニットは、少なくとも1つのスカラップユニットと少なくとも1つの本体ユニットとを含み得、各スカラップユニットはスカラップに位置する近位尖部を有し、各本体ユニットは、第2の周囲領域に位置する近位尖部を有する。第1のステントユニットは、少なくとも1つのスカラップユニットのスカラップユニットであり得、第2のステントユニットは、少なくとも1つの本体ユニットの本体ユニットであり得る。
【0204】
複数のステントユニットは、少なくとも1つのスカラップユニットと、少なくとも1つの支持ユニットとを含み得、各スカラップユニットの近位尖部はスカラップに位置し、各支持ユニットの近位尖部は、第2の周囲領域に位置し、好ましくは、少なくとも1つのスカラップユニットのそれぞれの第1及び第2のストラットは、少なくとも1つの支持ユニットのそれぞれの第1及び第2のストラットよりも短い。少なくとも1つのスカラップユニットのそれぞれの近位尖部は、スカラップの遠位端の近位側に配置され、グラフト材料によって覆われない場合がある。
【0205】
複数のステントユニットは、複数のスカラップユニットと少なくとも1つの本体ユニットとを含み得、各スカラップユニットは、スカラップに位置する近位尖部を有し、各本体ユニットは、第2の周囲領域に位置する近位尖部を有する。さらに、本デバイスは、第1及び第2の態様の任意選択的な特徴のいずれかを含み得、ステントへの言及は、近位ステントリングへの言及と見なされる。
【0206】
さらに、デバイスは、任意選択的な特徴のいずれかを含み得る。
【0207】
湾曲した管腔に植え込むように構成された植え込み型医療デバイスも提供され、このデバイスは、管状グラフトを含み;グラフトは、第1の端部、第2の端部及び側壁を有し;グラフトの第1の端部は側壁に対して傾斜を付けられ、デバイスの内側湾曲領域で側壁に対して鈍角を形成し;内側湾曲領域は管腔の湾曲部の内側に展開されるように構成される。さらにデバイスは本明細書に開示される任意選択的な特徴のいずれかを含み得る。
【0208】
大動脈弓において展開するためのステントグラフトも提供され、このステントグラフトは、近位端及び遠位端を有する管状グラフト材料の長さに沿って配置された複数の拡張可能なステントリングであって、少なくとも管状グラフト材料の近位端における近位ステントリング及び管状グラフト材料の遠位端又はその近くの遠位ステントリングと、近位ステントリングと遠位ステントリングとの間の少なくとも1つの中間ステントリングとを含む複数の拡張可能なステントリングと;管状グラフト材料の側壁に設けられた少なくとも1つの開窓であって、それを通して側枝を展開するように構成される、少なくとも1つの開窓とを含み;開窓は、ステントグラフトの管腔内に位置する内部分枝グラフトの管腔と整列され;内部分枝グラフトは、開窓からステントグラフトの管腔内に延び;少なくとも1つの中間ステントリングは、開窓支持ステントリングであり、開窓支持ステントリングは、複数の近位尖部及び複数の遠位尖部を有するジグザグ形のステントであり、近位及び遠位尖部は、それらの間に延びる複数のステントストラットによって互いに接続され、遠位尖部の少なくとも1つは、開窓支持尖部であり;少なくとも1つの開窓は、開窓支持ステントリングの2つのストラット間に設けられ、開窓支持ステントリングの2つのストラットと開窓支持尖部との組み合わせは、開窓の2つの側部及び遠位端を画定し;開窓は、近位縁部を有し、近位縁部は、少なくともステントグラフトの長手方向軸に対して実質的に垂直な部分を含み;グラフト材料の近位端は、第1及び第2の周囲領域を含み、第1の周囲領域は、開窓と長手方向に整列されたスカラップを有し;近位ステントリングは、複数のステントユニットを含み得、各ステントユニットは、近位尖部で接続された第1及び第2のストラットを含み、ステントリングは、複数の遠位尖部を含み、各ステントユニットは、遠位尖部によって隣接するステントユニットに接続され;複数のステントユニットは、少なくとも1つのスカラップユニットと、少なくとも1つの支持ユニットとを含み得、各スカラップユニットの近位尖部は、スカラップに位置し、及び各支持ユニットの近位尖部は、第2の周囲領域に位置し;少なくとも1つのスカラップユニットのそれぞれの第1及び第2のストラットは、少なくとも1つの支持ユニットのそれぞれの第1及び第2のストラットよりも短い。
【0209】
少なくとも1つのスカラップユニットのそれぞれの少なくとも大部分は、好ましくはグラフト材料によって重ねられる。一実施形態では、少なくとも1つのスカラップユニットの近位尖部はスカラップにおいてグラフト材料の近位側に延びない。複数のステントユニットは複数のスカラップユニットを含むことができる。複数のステントユニットは、少なくとも1つの本体ユニットを含み得、各本体ユニットは、第2の周囲領域に位置する近位尖部を有する。開窓の近位縁部は開窓の2つの側部の近位端を接続することができる。
【0210】
シールステントリングは、開窓の近位縁部に隣接して設けられ得る。シールステントリングは、近位ステントリングの遠位側に位置することができる。シールステントリングは、複数の近位尖部を有することができ、シールステントリングの近位尖部は、近位ステントリングの遠位尖部の遠位側に位置することができ、その結果、近位ステントリングとシールステントリングとの間にステントのないグラフト材料の領域が設けられる。近位ステントリングとシールステントリングとの間のステントのないグラフト材料の領域の長さは、約20mm~約40mm、好ましくは約30mmであり得る。したがって、開窓の近位側に2つのステントのみが設けられ;それは、ステントグラフトの近位端にある近位ステントリング及び開窓の近位縁部に隣接して設けられたシールステントリングである。
【0211】
シールステントリングは、近位尖部と遠位尖部とを有するジグザグ形のステントであり得、開窓の近位縁部は、シールステントリングの遠位尖部の近位側に延びないことがある。管状グラフト材料の側壁には、単一の開窓のみが設けられ得る。複数のステントユニットは、第2の周囲領域に位置する近位尖部を有する少なくとも1つの支持ユニットを含むことができ、少なくとも1つの支持ユニットのそれぞれがスカラップを支持する。複数のステントユニットは、第2の周囲領域に位置する近位尖部を有する少なくとも1つの支持ユニットを含むことができ、少なくとも1つの支持ユニットのそれぞれは、スカラップに隣接している。任意選択的に、少なくとも1つの支持ユニットは、スカラップの両側に配置された支持ユニットを含み得る。複数のステントユニットは、少なくとも1つのスカラップユニットのそれぞれの近位尖部が少なくとも1つの支持ユニットのそれぞれの近位尖部の遠位側に配置されている、第2の周囲領域に位置する近位尖部を有する少なくとも1つの支持ユニットを含むことができる。複数のステントユニットは、第2の周囲領域に位置する近位尖部を有する少なくとも1つの支持ユニットを含み得、少なくとも1つの支持ユニットのそれぞれの近位尖部はグラフト材料によって重ねられている。
【0212】
少なくとも1つの支持ユニットのそれぞれの近位尖部は、グラフトの近位縁部に配置することができる。近位ステントリングの複数の遠位尖部は、好ましくは、第2の周囲領域に位置し、スカラップの遠位端と長手方向に同じレベルに又はその遠位側に配置される。近位ステントリングの遠位尖部の少なくとも大部分は、スカラップの遠位端と長手方向に同じレベルに又はその遠位側に配置される。近位ステントリングの遠位尖部は、互いに実質的に整列されることができる。一般に、第1及び第2の周囲領域は、グラフトの完全な周囲を構成する。
【0213】
先行する開示の特徴も含まれ得る。
【0214】
上に記載したようなステントグラフトと、橋渡しステントグラフトとを含むキットも提供され、橋渡しステントグラフトは患者の左鎖骨下動脈に展開されるように構成され、且つ開窓及び第9の態様のステントグラフトの内部分枝グラフトの少なくとも近位端と係合するように構成され、橋渡しステントグラフトはその長さに沿って配置された複数のステントリングを有する管状グラフト材料を含み得、第9の態様のステントグラフトは開窓の近位縁部に隣接するシールステントリングを含み得、橋渡しステントグラフトのステントリングの少なくとも1つは、先に記載されたシールステントリングの1つ又は複数のステントグラフトのシールステントリングよりも高い半径方向の力を有する。
【0215】
橋渡しステントグラフトのステントリングの2つ以上は、ステントグラフトのシールステントリングよりも高い半径方向の力を有し得る。例えば、橋渡しステントグラフトのステントリングの少なくとも2つ、少なくとも3つ又は少なくとも4つは、ステントグラフトのシールステントリングよりも高い半径方向の力を有し得る。
【0216】
本明細書の開示のいずれかに従うデバイスをヒトの血管系に挿入することと;デバイスを大動脈弓において展開することとを含む方法も提供される。方法は、スカラップの遠位端が鎖骨下動脈と頸動脈との間に整列されるようにデバイスを大動脈弓において展開することをさらに含み得る。
【0217】
いずれかの先行する態様のデバイスを展開するように構成された展開システムも提供され、このシステムは、デバイスを湾曲した管腔に展開するように構成されたイントロデューサを含み、デバイスは、内側湾曲領域が管腔の湾曲部の内側に展開されるように配置されるようにイントロデューサに取り付けられる。イントロデューサは、好ましくは、予め湾曲を付けられたカニューレを含み得る。
【0218】
任意選択的に上記の展開システムを使用して、いずれかの先行する態様に従うデバイスを管腔の湾曲部に展開する方法も提供され、方法は、内側湾曲領域を有するデバイスを管腔の湾曲部の内側に展開することを含む。方法は、くさび形状のステントの第1の端部及び/又はグラフトの第1の端部が管腔の湾曲部に実質的に垂直に配置されるようにデバイスのくさび形状のステントを展開することを含み得る。管腔は大動脈弓、好ましくは上行大動脈と下行大動脈との間であり得る。
【0219】
いずれかの先行する態様に従うデバイスをヒトの血管系に挿入することと;デバイスを大動脈弓において展開することとを含む方法も提供される。方法は、1つ又は複数の入れ子状に配置されたピークを有するステントが鎖骨下動脈と頸動脈との間に位置決めされるようにデバイスを大動脈弓において展開することをさらに含み得る。
【符号の説明】
【0220】
10 プロテーゼ
12 管状グラフト本体
14 側壁
16 管腔
18 近位端
20 遠位端
22 近位シールステント
23 遠位端シールステント
24 ストラット
26 尖部
28 近位尖部
30 遠位尖部
32 スカラップ
34 本体尖部
36 スカラップ尖部
38 横方向縁部
39 支持ユニット
40 長手方向に延びる側部
42 縫い目
43 適合タイ
44 開窓
46 内部分枝グラフト
48 入れ子式ステント
50 開窓支持ステント
51 近位尖部
52 補助ステント
53 遠位尖部
54 本体ステント
55 ストラット
56 近位縁部
57 近位尖部
58 第1の周囲領域
59 遠位尖部
60 第2の周囲領域
61 ストラット
62 内側湾曲領域
63 遠位端
64 スカラップ尖部ストラット
65 遠位尖部
66 本体尖部ストラット
67 ストラット
68 線
70 線
72 近位尖部
74 遠位尖部
76 ストラット
78 集束する側
80 近位側
82 集束する側
84 丸みを帯びた角
86 丸みを帯びた角
88 丸みを帯びた角
90 近位部分
92 遠位部分
94 近位Dリング
96 遠位Oリング
98 対向ストラット
100 イントロデューサ
102 バーブ
104 補強ワイヤ
106 近位シールゾーン
108 近位シールステント
110 遠位シールステント
112 ステントのないグラフト材料
118 橋渡しステントグラフト
120 ステントリング
【外国語明細書】