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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024059104
(43)【公開日】2024-04-30
(54)【発明の名称】ポリアミック酸ワニス
(51)【国際特許分類】
   C08L 79/08 20060101AFI20240422BHJP
   C08K 3/08 20060101ALI20240422BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20240422BHJP
   C08K 3/22 20060101ALI20240422BHJP
   C08G 73/10 20060101ALI20240422BHJP
【FI】
C08L79/08 A
C08K3/08
C08K3/04
C08K3/22
C08G73/10
【審査請求】有
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023178744
(22)【出願日】2023-10-17
(31)【優先権主張番号】10-2022-0132846
(32)【優先日】2022-10-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2023-0119353
(32)【優先日】2023-09-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】520160738
【氏名又は名称】ピーアイ・アドバンスド・マテリアルズ・カンパニー・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ミン・ソク・ヤン
(72)【発明者】
【氏名】ホ・スン・イ
(72)【発明者】
【氏名】イク・サン・イ
【テーマコード(参考)】
4J002
4J043
【Fターム(参考)】
4J002CM041
4J002DA016
4J002DA026
4J002DA076
4J002DA086
4J002DA116
4J002DE096
4J002DE106
4J002FD116
4J002GM00
4J002GQ00
4J002GR00
4J043PA04
4J043PA19
4J043QB15
4J043QB26
4J043QB31
4J043RA07
4J043RA34
4J043RA35
4J043SA06
4J043SA47
4J043SB01
4J043TA22
4J043TA71
4J043UA122
4J043UA131
4J043UA132
4J043UB121
4J043UB402
4J043XA19
4J043ZA31
4J043ZA34
4J043ZA41
4J043ZA60
4J043ZB52
4J043ZB53
4J043ZB55
(57)【要約】
【課題】本出願は、ポリアミック酸ワニス、ポリイミド粉末、ポリイミド成形品、ポリアミック酸ワニスの製造方法、ポリイミド粉末の製造方法及びポリイミド成形品の製造方法に関する。
【解決手段】本出願は、粒子内の伝導性フィラーが均一に分散されたポリイミド粉末及び前記粉末から製造されて成形性及び加工性に優れているだけでなく、優れた伝導性、引張強度、伸び及び弾性率を有するポリイミド成形品を具現できるポリアミック酸ワニスを提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジアミンモノマー及び二無水物モノマーを重合単位として有するポリアミック酸と、
伝導性フィラーと、
有機溶媒を含む、ポリアミック酸ワニス。
【請求項2】
前記伝導性フィラーの含量は、全ポリアミック酸ワニスを基準にして0.1~50重量%の範囲内である、請求項1に記載のポリアミック酸ワニス。
【請求項3】
前記伝導性フィラーは、カーボンブラック、伝導性炭素、黒鉛、伝導性金属及び伝導性金属酸化物からなる群から選ばれる少なくとも1種を含む、請求項1に記載のポリアミック酸ワニス。
【請求項4】
前記二無水物モノマーは、下記化学式1で表される化合物を少なくとも1つ含む、請求項1に記載のポリアミック酸ワニス。
【化1】
前記化学式1において、
【化2】
は、4価の脂肪族環基、4価のヘテロ脂肪族環基、4価の芳香族環基、または4価のヘテロ芳香族環基であり、化学式1のカルボニル基の炭素原子が前記脂肪族環基、ヘテロ脂肪族環基、芳香族環基またはヘテロ芳香族環基の環構成原子と連結され、
前記脂肪族環基、前記ヘテロ脂肪族環基、前記芳香族環基または前記ヘテロ芳香族環基は、単環であるか、
縮合環であるか、または
単結合、置換または非置換のアルキレン基、置換または非置換のアルキリデン基、置換または非置換のアルケニレン基、置換または非置換のアルキニレン基、置換または非置換のアリーレン基、-O-、-S-、-C(=O)-、-S(=O)-及び-Si(R-からなる群から選ばれる2価の置換基を少なくとも1つ含む連結基によって連結されており、ここでRは、水素またはアルキル基である。
【請求項5】
前記Xは
【化3】
または脂肪族環基であり、
前記Mは、単結合、アルキレン基、アルキリデン基、O、S、C(=O)、及びS(=O)を含む群から少なくとも1つ以上である、請求項4に記載のポリアミック酸ワニス。
【請求項6】
前記ジアミンモノマーは、下記化学式2で表される化合物を少なくとも1つ以上含む、請求項1に記載のポリアミック酸ワニス。
【化4】
前記化学式2において、B~Bのいずれかはアミノ基(-NH)、-R-NH、または-O-R-NHであり、前記Rは置換または非置換のアルキレン基、置換または非置換のアルキリデン基、置換または非置換のアルケニレン基、置換または非置換のアルキニレン基、または置換または非置換のアリーレン基であり、残りは水素、ハロゲン、ヒドロキシ基、カルボキシル基、またはハロゲンに置換または非置換のアルキル基を表す。
【請求項7】
請求項1に記載のポリアミック酸ワニスの硬化物を含む粒子状のポリイミド粉末。
【請求項8】
粒子内に伝導性フィラーが分散されている、請求項7に記載のポリイミド粉末。
【請求項9】
請求項7に記載のポリイミド粉末を含むポリイミド成形品。
【請求項10】
ASTM D-257法によって測定した表面抵抗が1.0×10~1.0×1013Ωの範囲内である、請求項9に記載のポリイミド成形品。
【請求項11】
ASTM D-1708法によって測定した伸びが3%以上である、請求項9に記載のポリイミド成形品。
【請求項12】
ASTM D-1708法によって測定した引張強度が65Mpa以上である、請求項9に記載のポリイミド成形品。
【請求項13】
有機溶媒に伝導性フィラーを分散させる段階と、
伝導性フィラーが分散した有機溶媒下でジアミンモノマー及び二無水物モノマーを重合する段階と、を含む、ポリアミック酸ワニスの製造方法。
【請求項14】
前記分散は超音波処理(sonication)によって行われる、請求項13に記載のポリアミック酸ワニスの製造方法。
【請求項15】
有機溶媒に伝導性フィラーを分散させる段階と、
伝導性フィラーが分散した有機溶媒下でジアミンモノマー及び二無水物モノマーを重合する段階と、
重合段階で生成した重合体を熱硬化してポリイミド粉末を得る段階と、を含む、ポリイミド粉末の製造方法。
【請求項16】
前記熱硬化は、150~300℃の温度で1~10時間行われる、請求項15に記載のポリイミド粉末の製造方法。
【請求項17】
有機溶媒に伝導性フィラーを分散させる段階と、
伝導性フィラーが分散した有機溶媒下でジアミンモノマー及び二無水物モノマーを重合する段階と、
重合段階で得られた重合体を熱硬化してポリイミド粉末を得る段階と、
得られたポリイミド粉末を成形してポリイミド成形品を製造する段階と、を含む、ポリイミド成形品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、ポリアミック酸ワニス、ポリイミド粉末、ポリイミド成形品、ポリアミック酸ワニスの製造方法、ポリイミド粉末の製造方法及びポリイミド成形品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ポリイミド(polyimide,PI)は、二無水物とジアミンまたはジイソシアネートを溶液重合して形成されたイミドモノマーのポリマーで、イミド環の化学的安定性に基づいて優れた強度、耐化学性、耐候性、耐熱性などの機械的特性を持つ。さらに、ポリイミドは絶縁特性、低誘電率などの優れた電気的特性で、電子、通信、光学など広範囲な産業分野に適用可能な高機能性高分子材料として脚光を浴びている。
【0003】
近年、半導体分野において生産設備の静電気問題により、伝導性を有するポリイミドの需要が増加している。従来は、粉末状のポリイミドと伝導性フィラーを乾式混合して伝導性を有するポリイミド粉末を製造し、これを使用用途に応じて適切に成形及び加工して使用した。
【0004】
しかし、乾式混合はポリイミド粉末と伝導性フィラーとの均一な混合が難しく、成形時に頻繁な不良発生が発生し、加工性が低下して引張強度、伸び及び弾性率などの物性期待値が低くなるという問題点を有する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本出願は、粒子内の伝導性フィラーが均一に分散されたポリイミド粉末及び前記粉末から製造されて成形性及び加工性に優れているだけでなく、優れた伝導性、引張強度、伸び及び弾性率を有するポリイミド成形品を具現できるポリアミック酸ワニスを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書で言及する物性のうち、測定温度が当該物性に影響を及ぼす場合に特に規定しない限り、前記物性は常温で測定した物性である。
【0007】
本明細書で用語の常温とは、特に加温及び減温されていない状態での温度で、約10℃~30℃の範囲内のいずれかの温度、例えば、約15℃以上、18℃以上、20℃以上または約23℃以上でありながら、約27℃以下の温度を意味する。また、特に規定しない限り、本明細書で言及する温度の単位は、摂氏温度である。
【0008】
本明細書で言及する物性のうち、測定圧力が当該物性に影響を及ぼす場合に特に規定しない限り、前記物性は、常圧で測定した物性である。
【0009】
本明細書で用語の常圧とは、特に加圧及び減圧されていない状態での圧力で、通常、大気圧レベルである約1気圧程度の圧力を意味する。
【0010】
本明細書で言及する物性のうち、測定湿度が当該物性に影響を及ぼす場合に特に規定しない限り、前記物性は、前記常温及び常圧状態での自然そのままの湿度で測定した物性である。
【0011】
本出願は、ポリアミック酸ワニスに関する。本発明によるポリアミック酸ワニスは、熱硬化を通じてポリイミドにイミド化されるポリイミド前駆体が有機溶媒に溶解している溶液であってもよい。本出願によるポリアミック酸ワニスは、熱硬化時にポリアミック酸がイミド化されて粉末状に析出し、析出したポリイミド粉末は、粒子内の伝導性フィラーが均一に分散していてもよい。このようにして得られたポリイミド粉末は、成形時の成形性及び加工性に優れるだけでなく、優れた伝導性、引張強度、伸び及び弾性率を有するポリイミド成形品を具現しうる。
【0012】
例示的な本出願によるポリアミック酸ワニスは、ジアミンモノマー及び二無水物モノマーを重合単位として有するポリアミック酸、伝導性フィラー、及び有機溶媒を含む。前記ポリアミック酸ワニスは、伝導性フィラーが分散した有機溶媒でジアミンモノマー及び二無水物モノマーを重合反応させて形成されたものであってもよい。
【0013】
本出願によるポリアミック酸ワニスは、ポリアミック酸の重合段階で伝導性フィラーが投入されることにより、熱硬化時に粒子内の伝導性フィラーが分散したポリイミド粉末を提供しうる。前記ポリイミド粉末は、成形時の成形性及び加工性に優れているだけでなく、優れた伝導性、引張強度、伸び及び弾性率を有するポリイミド成形品を具現しうる。
【0014】
前記有機溶媒の種類は、伝導性フィラーと分散性を考慮して適切に選ばれてもよく、一例として、非プロトン性極性溶媒(aprotic polarsolvent)であってもよい。
【0015】
前記非プロトン性極性溶媒は、例えば、N,N’-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N’-ジエチルホルムアミド(DEF)、N,N’-ジメチルアセトアミド(DMAc)、またはジメチルプロパンアミド(DMPA)などのアミド系溶媒、p-クロロフェノール、o-クロロフェノールなどのフェノール系溶媒、N-メチル-ピロリドン(NMP)、γ-ブチロラクトン(GBL)またはジグリム(Diglyme)などが挙げられ、これらは単独で、または2種以上組み合わせて使用されてもよい。前記有機溶媒は、伝導性フィラーの分散性を考慮して、N,N’-ジメチルアセトアミド(DMAc)またはN-メチル-2-ピロリドン(NMP)を使用することが好ましい。
【0016】
前記有機溶媒内の伝導性フィラーを分散する方法は特に制限されないが、均一な分散性を考慮して超音波処理(sonication)を用いることが好ましい。例えば、前記超音波処理は、Sonics & Materials社のVCX750を用いて30分以上処理することで行われてもよいが、特に制限されるものではなく、溶媒及び伝導性フィラーの種類によって具体的な条件は変更可能である。
【0017】
また、本発明によるポリアミック酸ワニスは、反応効率を高めるための共溶媒をさらに含んでもよい。前記共溶媒は、m-クレゾール、ナフサ(NAPHTHA)、ヘキサン、ヘプタン、ノナン、デカン、ベンゼン、トルエン、キシレン、アニソール、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、N-メチルピロリドン、ヘキサメチルホスホルアミド、ジオキサン、テトラメチルウレア、トリエチルホスフェート、トリメチルホスフェート、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド及びジメチルアセトアミドからなる群から選ばれる少なくとも1種を含んでもよい。
【0018】
一例において、前記伝導性フィラーの含量は、全ポリアミック酸ワニスを基準として1~50重量%の範囲内であってもよい。例えば、前記伝導性フィラーの含量は、全ポリアミック酸ワニスを基準として1~45重量%、1~40重量%、1~35重量%、1~30重量%、1~25重量%、1~20重量%、1~15重量%、1~10重量%、3~50重量%、3~45重量%、3~40重量%、3~35重量%、3~30重量%、3~25重量%、3~20重量%、3~15重量%、3~10重量%、5~50重量%、5~45重量%、5~40重量%、5~35重量%、5~30重量%、5~25重量%、5~20重量%、5~15重量%または5~10重量%の範囲内であってもよい。
【0019】
前記伝導性フィラーは、カーボンブラック、伝導性炭素、黒鉛、伝導性金属及び伝導性金属酸化物からなる群から選ばれる少なくとも1種を含んでもよく、好ましくは、前記伝導性フィラーは、カーボンブラック、伝導性炭素及び黒鉛からなる群から選ばれる少なくとも1種を含んでもよい。
【0020】
前記伝導性炭素は、単層カーボンナノチューブ(single-walled carbon nanotube,SWCNT)、多層カーボンナノチューブ(multi-walled carbon nanotube:MWCNT)、グラフェン、グラフェン酸化物(GO)、還元グラフェン酸化物(rGO)またはそれらの混合物を含んでもよい。具体的には、SWCNT、MWCNT、GOまたはrGOを使用することが分散性及び経済性の面で好ましい。
【0021】
前記伝導性金属は、銀、銅、銀メッキ銅、モリブデン、亜鉛、タングステン、ニッケル、鉄、パラジウム、白金、錫、鉛、チタンまたはそれらの混合物を含む金属ナノ粒子、金属ワイヤまたは金属フレークであってもよい。
【0022】
前記伝導性金属酸化物は、ZnOまたはSnOなどを含んでもよい。
【0023】
一具体例において、二無水物モノマーは、芳香族テトラカルボン酸二無水物であってもよい。例えば、前記二無水物モノマーは、下記化学式1で表される化合物を少なくとも1つを含む。
【0024】
【化1】
【0025】
前記化学式1において、
【化2】
は、4価の脂肪族環基、4価のヘテロ脂肪族環基、4価の芳香族環基、または4価のヘテロ芳香族環基であり、化学式1のカルボニル基の炭素原子が前記脂肪族環基、ヘテロ脂肪族環基、芳香族環基またはヘテロ芳香族環基の環構成原子と連結され、
【0026】
前記脂肪族環基、前記ヘテロ脂肪族環基、前記芳香族環基または前記ヘテロ芳香族環基は、
【0027】
単環であるか、
【0028】
縮合環であるか、または
【0029】
単結合、置換または非置換のアルキレン基、置換または非置換のアルキリデン基、置換または非置換のアルケニレン基、置換または非置換のアルキニレン基、置換または非置換のアリーレン基、-O-、-S-、-C(=O)-、-S(=O)-及び-Si(R-からなる群から選ばれる2価の置換基を少なくとも1つ含む連結基によって連結されており、ここでRは、水素またはアルキル基である。
【0030】
好ましくは、前記Xは
【化3】
または脂肪族環基であり、
【0031】
前記Mは、単結合、アルキレン基、アルキリデン基、O、S、C(=O)、及びS(=O)を含む群から少なくとも1つ以上である。
【0032】
本明細書において用語の「脂肪族環基」は、特に規定しない限り、炭素数3~30、炭素数4~25、炭素数5~20、炭素数6~16の脂肪族環基を意味する。4価の脂肪族環基の具体例としては、例えば、シクロヘキサン環、シクロヘプタン環、シクロデカン環、シクロドデカン環、ノルボルナン環、イソボルナン環、アダマンタン環、シクロドデカン環、ジシクロペンタン環などの環から水素原子を4つ除去した基が挙げられる。
【0033】
本明細書において用語の「芳香族環基」とは、特に規定しない限り、炭素数4~30、炭素数5~25、炭素数6~20、炭素数6~16の芳香族環基を意味する。前記芳香族環としては、単環であってもよく、縮合環であってもよい。4価の芳香族炭化水素環基としては、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ペリレン環、テトラセン環、またはピレン環から水素原子を4つ除去した基が挙げられる。
【0034】
本明細書において用語の「アリーレン基」とは、前記芳香族環基から誘導された2価の有機基を意味する。
【0035】
本明細書において用語の「ヘテロ環基」は、ヘテロ脂肪族環基及びヘテロ芳香族環基を含む。
【0036】
本明細書において用語の「ヘテロ脂肪族環基」とは、前記脂肪族環基の炭素原子の少なくとも1つが窒素、酸素、硫黄及びリンからなる群から選ばれる1つ以上のヘテロ原子に置き換えられた環基を意味する。
【0037】
本明細書において用語の「ヘテロ芳香族環基」とは、特に規定しない限り、前記芳香族環の炭素原子のうち少なくとも1つが窒素、酸素、硫黄及びリンからなる群から選ばれる少なくとも1つのヘテロ原子に置き換えられた環基を意味する。前記ヘテロ芳香族環基としては、単環であってもよく、縮合環であってもよい。
【0038】
前記脂肪族環基、前記ヘテロ脂肪族環基、前記芳香族環基または前記ヘテロ芳香族環基は、それぞれ独立してハロゲン、ヒドロキシ基、カルボキシ基、ハロゲンに置換または非置換の炭素数1~4のアルキル基、及び炭素数1~4のアルコキシ基からなる群から選ばれる1つ以上の置換基に置き換えられてもよい。
【0039】
本明細書において用語の「縮合環」とは、2つ以上の環基が2つ以上の原子を共有して結合して形成された環基を意味するもので、2つ以上の芳香族環が互いに接合または連結して多環系を形成したことを意味する。例えば、縮合脂肪族環、縮合芳香族環、縮合ヘテロ脂肪族環、縮合ヘテロ芳香族環またはそれらの組み合わせ形態を意味する。
【0040】
本明細書において用語の「単結合」とは、いかなる原子もなく、両方の原子をつなぐ結合を意味する。例えば、化学式1においてXが
【化4】
であり、ここで、Mが単結合の場合、両方の芳香族環が互いに直接連結していてもよい。
【0041】
明細書において用語の「アルキル基」とは、特に規定しない限り、炭素数1~30、炭素数1~25、炭素数1~20、炭素数1~16、炭素数1~12、炭素数1~8または炭素数1~4のアルキル基を意味する。前記アルキル基は直鎖状、分岐鎖状または環状構造を有してもよく、任意に1つ以上の置換基によって置き換えられてもよい。前記置換基としては、例えば、ハロゲン、ヒドロキシ基、アルコキシ基、チオール基、またはチオエーテル基からなる1つ以上の置換基などの極性官能基などが挙げられる。
【0042】
本明細書において用語の「アルケニル基」とは、特に規定しない限り、炭素数2~30、炭素数2~25、炭素数2~20、炭素数2~16、炭素数2~12、炭素数2~8または炭素数2~4のアルケニル基を意味する。前記アルケニル基は直鎖状、分岐鎖状または環状構造を有してもよく、任意に1つ以上の置換基に置き換えられてもよい。前記置換基としては、例えば、ハロゲン、ヒドロキシ基、アルコキシ基、チオール基、またはチオエーテル基からなる1つ以上の置換基などの極性官能基などが挙げられる。
【0043】
本明細書において用語の「アルキニル基」とは、特に規定しない限り、炭素数2~30、炭素数2~25、炭素数2~20、炭素数2~16、炭素数2~12、炭素数2~8または炭素数2~4のアルキニル基を意味する。アルキニル基は直鎖状、分岐鎖状または環状構造を有してもよく、任意に1つ以上の置換基に置き換えられてもよい。置換基としては、例えば、ハロゲン、ヒドロキシ基、アルコキシ基、チオール基、またはチオエーテル基からなる1つ以上の置換基などの極性官能基などが挙げられる。
【0044】
本明細書において用語の「アルキレン基」とは、特に規定しない限り、炭素数2~30、炭素数2~25、炭素数2~20、炭素数2~16、炭素数2~12、炭素数2~10または炭素数2~8のアルキレン基を意味する。前記アルキレン基は、異なる炭素原子から2つの水素が除去された2価の有機基として直鎖状、分岐鎖状または環状構造を有してもよく、任意に1つ以上の置換基に置き換えられてもよい。前記置換基としては、例えば、ハロゲン、ヒドロキシ基、アルコキシ基、チオール基、またはチオエーテル基からなる1つ以上の置換基などの極性官能基などが挙げられる。
【0045】
明細書において用語の「アルキリデン基」とは、特に規定しない限り、炭素数1~30、炭素数1~25、炭素数1~20、炭素数1~16、炭素数1~12、炭素数1~10または炭素数1~8のアルキリデン基を意味する。前記アルキリデン基は、1つの炭素原子から2つの水素が除去された2価の有機基として直鎖状、分岐鎖状または環状構造を有してもよく、任意に1つ以上の置換基に置き換えられてもよい。前記置換基としては、例えば、ハロゲン、ヒドロキシ基、アルコキシ基、チオール基、またはチオエーテル基からなる1つ以上の置換基などの極性官能基などが挙げられる。
【0046】
本明細書において用語の「アルコキシ基」とは、特に規定しない限り、炭素数1~30、炭素数1~25、炭素数1~20、炭素数1~16、炭素数1~12、炭素数1~8または炭素数1~4のアルコキシ基を意味する。前記アルコキシ基は、直鎖状、分岐鎖状または環状構造のアルキル基を有してもよく、前記アルキル基は、任意に1つ以上の置換基によって置き換えられてもよい。前記置換基としては、例えば、ハロゲン、ヒドロキシ基、アルコキシ基、チオール基、またはチオエーテル基からなる1つ以上の置換基などが挙げられる。
【0047】
本明細書において用語の「アルキルアミン基」は、特に規定しない限り、モノアルキルアミン(-NHR)またはジアルキルアミン(-NR)を含み、ここで、Rはそれぞれ独立して炭素数1~30、炭素数1~25、炭素数1~20、炭素数1~16、炭素数1~12、炭素数1~8または炭素数1~4のアルキル基を意味する。ここで、前記アルキル基は、直鎖状、分岐鎖状または環状構造のアルキル基を有してもよく、任意に1つ以上の置換基によって置き換えられてもよい。前記置換基としては、例えば、ハロゲン、ヒドロキシ基、アルコキシ基、チオール基、またはチオエーテル基からなる1つ以上の置換基などが挙げられる。
【0048】
本明細書において用語の「アルキルアミド」とは、特に規定しない限り、モノアルキルアミド(-C(O)NHR)またはジアルキルアミド(-C(O)NR)を含み、ここで、Rはそれぞれ独立して炭素数1~30、炭素数1~25、炭素数1~20、炭素数1~16、炭素数1~12、炭素数1~8または炭素数1~4のアルキル基を意味する。ここで、前記アルキル基は、直鎖状、分岐鎖状または環状構造のアルキル基を有してもよく、任意に1つ以上の置換基によって置き換えられてもよい。前記置換基としては、例えば、ハロゲン、ヒドロキシ基、アルコキシ基、チオール基、またはチオエーテル基からなる1つ以上の置換基などが挙げられる。
【0049】
本明細書において用語の「チオエーテル基」または「スルフィド」は、特に規定しない限り、-SRを意味し、ここで、Rはそれぞれ独立して炭素数1~30、炭素数1~25、炭素数1~20、炭素数1~16、炭素数1~12、炭素数1~8または炭素数1~4のアルキル基を意味する。ここで、前記アルキル基は、直鎖状、分岐鎖状または環状構造のアルキル基を有してもよく、任意に1つ以上の置換基によって置き換えられてもよい。前記置換基としては、例えば、ハロゲン、ヒドロキシ基、アルコキシ基、チオール基、またはチオエーテル基からなる1つ以上の置換基などが挙げられる。
【0050】
本明細書において用語の「スルホキシド」とは、特に規定しない限り、-S(O)Rを意味し、ここで、Rはそれぞれ独立して炭素数1~30、炭素数1~25、炭素数1~20、炭素数1~16、炭素数1~12、炭素数1~8または炭素数1~4のアルキル基を意味する。ここで、前記アルキル基は、直鎖状、分岐鎖状または環状構造のアルキル基を有してもよく、任意に1つ以上の置換基によって置き換えられてもよい。前記置換基としては、例えば、ハロゲン、ヒドロキシ基、アルコキシ基、チオール基、またはチオエーテル基からなる1つ以上の置換基などが挙げられる。
【0051】
本明細書において用語の「カルボニル」とは、特に規定しない限り、-C(O)Rを含み、ここで、Rはそれぞれ独立して炭素数1~30、炭素数1~25、炭素数1~20、炭素数1~16、炭素数1~12、炭素数1~8または炭素数1~4のアルキル基を意味する。ここで、前記アルキル基は、直鎖状、分岐鎖状または環状構造のアルキル基を有してもよく、任意に1つ以上の置換基に置き換えられてもよい。前記置換基としては、例えば、ハロゲン、ヒドロキシ基、アルコキシ基、チオール基、またはチオエーテル基からなる1つ以上の置換基などが挙げられる。
【0052】
本明細書において用語の「エステル」とは、特に規定しない限り、-C(O)ORまたは-OC(O)Rを含み、ここで、Rはそれぞれ独立して炭素数1~30、炭素数1~25、炭素数1~20、炭素数1~16、炭素数1~12、炭素数1~8または炭素数1~4のアルキル基を意味する。ここで、前記アルキル基は、直鎖状、分岐鎖状または環状構造のアルキル基を有してもよく、任意に1つ以上の置換基に置き換えられてもよい。前記置換基としては、例えば、ハロゲン、ヒドロキシ基、アルコキシ基、チオール基、またはチオエーテル基からなる1つ以上の置換基などが挙げられる。
【0053】
前記化学式1を満たす脂肪族テトラカルボン酸二無水物は、1,2,4,5-シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物(またはHPMDA)、ビシクロ[2.2.2]オクタン-2,3,5,6-テトラカルボン酸2:3,5:6-二無水物(BODA)、1,2,3,4-シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物(CHMDA)、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2,3,5,6-テトラカルボン酸2:3,5:6-二無水物(BHDA)、ブタン-l,2,3,4-テトラカルボン酸二無水物(BTD)、ビシクロ-[2.2.2]オクト-7-エン-2-エキソ、3-エキソ、5-エキソ、6-エキソ-2,3:5,6-二無水物(BTA)、l,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物(CBDA)、ビシクロ[4.2.0]オクタン-3,4,7,8-テトラカルボン酸二無水物(OTD)、ノルボルナン-2-スピロ-α-シクロヘキサノン-α’-スピロ-2’’-ノルボルナン-5,5’’,6,6’’-テトラカルボン酸二無水物(ChODA)、シクロペンタノンビス-スピロノルボルナンテトラカルボン酸二無水物(CpODA)、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2,3,5-トリカルボキシル-5-酢酸二無水物(BSDA)、ジシクロヘキシル-3,3’,4,4’-テトラカルボン酸二無水物(DCDA),ジシクロヘキシル-2,3’3,4’-テトラカルボン酸二無水物(HBPDA),5,5’-オキシビス(ヘキサヒドロ-1,3-イソベンゾフランジオン)(HOPDA)、5,5’-メチレンビス(ヘキサヒドロ-1,3-イソベンゾフランジオン)(HMDPA)、3,3’-(1,4-ピペラジンジイル)ビス[ジヒドロ-2,5-フランジオン](PDSA)、5-(2,5-ジオキソテトラヒドロフルフリル)-3-メチル-3-シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸無水物(DOCDA)、3,4-ジカルボキシ-1,2,3,4-テトラヒドロ-1-ナフタレンコハク酸二無水物(TDA)、3,4-ジカルボキシ-1,2,3、4-テトラヒドロ-6-メチル-1-ナフタレンコハク酸二無水物(MTDA)、3,4-ジカルボキシ-1,2,3,4-テトラヒドロ-6-フルオロ-1-ナフタレンコハク酸二無水物(FTDA)、3,3,3’,3’-テトラメチル-1,1’-スピロビスインダン-5,5’,6,6’-テトラカルボン酸無水物(SBIDA)、4,4,4’,4’-テトラメチル-3,3’,4,4’-テトラヒドロ-2,2’-スピロビ[フロ[3,4-g]クロメン]-6,6’,8,8’-テトラオン(SBCDA)、または9,10-ジフルオロ-9,10-ビス(トリフルオロメチル)-9,10-ジヒドロアントラセン-2,3,6,7-テトラカルボン酸二無水物(6FDA)などが挙げられる。
【0054】
前記化学式1を満たす芳香族テトラカルボン酸二無水物は、ピロメリト酸二無水物(またはPMDA)、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(またはBPDA)、2,3,3’,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(またはa-BPDA)、オキシジフタル酸二無水物(またはOPDA)、ジフェニルスルホン-3,4,3’,4’-テトラカルボン酸二無水物(またはDSDA)、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)スルフィド二無水物、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)-1,1,1,3、3,3-ヘキサフルオロプロパン二無水物、2,3,3’,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(またはBTDA)、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、p-フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)、p-ビフェニレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)、m-テルフェニル-3,4,3’,4’-テトラカルボン酸二無水物、p-テルフェニル-3,4,3’,4’-テトラカルボン酸二無水物、1,3-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ベンゼン二無水物、1,4-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ベンゼン二無水物、1,4-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ビフェニル二無水物、2,2-ビス〔(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル〕プロパン二無水物(BPADA)、2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、または4,4’-(2,2-ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸二無水物(6-FDA)などが挙げられる。
【0055】
前記化学式1で表される化合物は、芳香族テトラカルボン酸二無水物が好ましく、特に、二無水物は、ピロメリト酸二無水物(またはPMDA)、オキシジフタル酸二無水物(またはOPDA)、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(またはBPDA)、または2,3,3’,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(またはa-BPDA)を含んでもよい。
【0056】
一例として、前記ジアミンモノマーは、下記化学式2で表される化合物を少なくとも1つ以上含んでもよい。
【0057】
【化5】
【0058】
前記化学式2において、B~Bのいずれかはアミノ基(-NH)、-R-NH、または-O-R-NHであり、前記Rは置換または非置換のアルキレン基、置換または非置換のアルキリデン基、置換または非置換のアルケニレン基、置換または非置換のアルキニレン基、または置換または非置換のアリーレン基であり、残りは水素、ハロゲン、ヒドロキシ基、カルボキシル基、またはハロゲンに置換または非置換のアルキル基を表す。
【0059】
また、ポリアミック酸溶液の製造に使用されてもよいジアミンモノマーは芳香族ジアミンで、以下のように分類して例を挙げることができる。
【0060】
1)1,4-ジアミノベンゼン(またはパラフェニレンジアミン,PPD)、1,3-ジアミノベンゼン、2,4-ジアミノトルエン、2,6-ジアミノトルエン、または3,5-ジアミノ安息香酸(またはDABA)などのように、構造上、ベンゼン核を1つ有するジアミンであって、相対的に剛直な構造のジアミン、
【0061】
2)4,4’-ジアミノジフェニルエーテル(またはオキシジアニリン,ODA)、3,4’-ジアミノジフェニルエーテルなどのジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノジフェニルメタン(メチレンジアミン)、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、2,2’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、2,2’-ビス(トリフルオロメチル))-4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,3’-ジカルボキシ-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,3’,5,5’-テトラメチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、ビス(4-アミノフェニル)スルフィド、4,4’-ジアミノベンズアニリド、3,3’-ジクロロベンジジン、3,3’-ジメチルベンジジン(またはo-トリジン)、2,2’-ジメチルベンジジン(またはm-トリジン)、3,3’-ジメトキシベンジジン、2,2’-ジメトキシベンジジン、3,3’-ジアミノジフェニルエーテル、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,3’-ジアミノジフェニルスルフィド、3,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、3,4’-ジアミノジフェニルスルホン、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、3,3’-ジアミノベンゾフェノン、4,4’-ジアミノベンゾフェノン、3,3’-ジアミノ-4,4’-ジクロロベンゾフェノン、3,3’-ジアミノ-4,4’-ジメトキシベンゾフェノン、3,3’-ジアミノジフェニルメタン、3,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、2,2-ビス(3-アミノフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-アミノフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-アミノフェニル)-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス(4-アミノフェニル)-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、3,3’-ジアミノジフェニルスルホキシド、3,4’-ジアミノジフェニルスルホキシド、または4,4’-ジアミノジフェニルスルホキシドなどのように、構造上、ベンゼン核を2つ有するジアミン、
【0062】
3)1,3-ビス(3-アミノフェニル)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェニル)ベンゼン、1,4-ビス(3-アミノフェニル)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノ)フェニル)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン(またはTPE-Q)、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン(またはTPE-Q)、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)-4-トリフルオロメチルベンゼン、3,3’-ジアミノ-4-(4-フェニル)フェノキシベンゾフェノン、3,3’-ジアミノ-4,4’-ジ(4-フェニルフェノキシ)ベンゾフェノン,1,3-ビス(3-アミノフェニルスルフィド)ベンゼン,1,3-ビス(4-アミノフェニルスルフィド)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノフェニルスルフィド)ベンゼン、1,3-ビス(3-アミノフェニルスルホン)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェニルスルホン)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノフェニルスルホン)ベンゼン、1,3-ビス〔2-(4-アミノフェニル)イソプロピル〕ベンゼン、1,4-ビス〔2-(3-アミノフェニル)イソプロピル〕ベンゼン、または1,4-ビス〔2-(4-アミノフェニル)イソプロピル〕ベンゼンなどのように、構造上ベンゼン核を3つ有するジアミン、
【0063】
4)3,3’-ビス(3-アミノフェノキシ)ビフェニル、3,3’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’-ビス(3-アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス〔3-(3-アミノフェノキシ)フェニル〕エーテル、ビス〔3-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕エーテル、ビス〔4-(3-アミノフェノキシ)フェニル〕エーテル、ビス〔4-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕エーテル、ビス〔3-(3-アミノフェノキシ)フェニル〕ケトン、ビス〔3-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕ケトン、ビス〔4-(3-アミノフェノキシ)フェニル〕ケトン、ビス〔4-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕ケトン、ビス〔3-(3-アミノフェノキシ)フェニル〕スルフィド、ビス〔3-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕スルフィド、ビス〔4-(3-アミノフェノキシ)フェニル〕スルフィド、ビス〔4-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕スルフィド、ビス〔3-(3-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス〔3-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、ビス〔4-(3-アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、ビス〔4-(4-アミノフェノキシ)フェニル)スルホン、ビス〔3-(3-アミノフェノキシ)フェニル〕メタン、ビス〔3-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕メタン、ビス〔4-(3-アミノフェノキシ)フェニル〕メタン、ビス〔4-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕メタン、2,2-ビス〔3-(3-アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、2,2-ビス〔3-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2-ビス〔4-(3-アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、2,2-ビス〔4-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン(BAPP)、2,2-ビス〔3-(3-アミノフェノキシ)フェニル〕-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス〔3-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス〔4-(3-アミノフェノキシ)フェニル〕-1,1,1,3、3,3-ヘキサフルオロプロパン、または2,2-ビス〔4-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパンなどのように、構造上、ベンゼン核を4つ有するジアミン。
【0064】
前記ジアミンモノマーは、必要に応じて、単独または2種以上を組み合わせて使用してもよく、例えば、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル(またはオキシジアニリン,ODA)、1,4-ジアミノベンゼン(PPD)、1,3-ジアミノベンゼン(MPD)、2,4-ジアミノトルエン、2,6-ジアミノトルエンまたは4,4’-メチレンジアミン(MDA)を含んでもよく、好ましくは、化学式2で表される化合物は、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル(またはオキシジアニリン,ODA)であってもよい。
【0065】
本出願は、ポリイミド粉末に関する。前記ポリイミド粉末は、前述したポリアミック酸ワニスの熱硬化時にポリアミック酸がイミド化され、粉末状に析出して得られるものであってもよい。
【0066】
したがって、前記ポリイミド粉末は、前述したポリアミック酸ワニスの硬化物(または熱硬化物)を含む粒子状である。
【0067】
例えば、前記ポリイミド粉末は、粒子内に伝導性フィラーが分散されてもよい。本発明によるポリイミド粉末は、ポリアミック酸の重合段階で伝導性フィラーが投入されることにより、粒子内の伝導性フィラーが分散されていてもよい。一方、従来のポリイミド粉末と伝導性フィラーの乾式混合は、混合過程で一部の領域に伝導性フィラーが偏向するか、または伝導性フィラーが固まるなど均一な分散が難しく、成形性や加工性が劣ることがある。
【0068】
本出願は、さらに前述したポリイミド粉末を含むポリイミド成形品に関する。前記成形品は、前述したポリイミド粉末を様々な成形方法を用いて製造されたものであってもよい。前記成形方法としては、圧縮成形、射出成形、スラッシュ成形、中空成形、押出成形または紡績方法などが挙げられ、前記成形品としては、板材、棒材、フィルム、シート、ペレット、ベルトまたはチューブなどが挙げられる。
【0069】
前記成形品は、粒子内の伝導性フィラーが均一に分散したポリイミド粉末から製造されることにより、以下のような数値範囲で様々な物性制御が可能である。
【0070】
本出願によるポリイミド成形品は、ASTM D257法によって測定した表面抵抗が1.0×10~1.0×1013Ωの範囲内であってもよく、例えば、1.0×10~1.0×1013Ω、1.0×10~1.0×1013Ω、1.0×10~1.0×1013Ω、1.0×10~1.0×1013Ω、1.0×10~1.0×1013Ω、1.0×10~1.0×1013Ω、1.0×10~1.0×1013Ω、1.0×1010~1.0×1013Ω、1.0×1011~1.0×1013Ω、1.5×10~1.0×1013Ω、1.5×10~1.0×1013Ω、1.5×10~1.0×1013Ω、1.5×10~1.0×1013Ω、1.5×10~1.0×1013Ω、1.5×10~1.0×1013Ω、1.5×10~1.0×1013Ω、1.5×1010~1.0×1013Ω、1.5×1011~1.0×1013Ω、1.0×10~2.0×1012Ω、1.0×10~2.0×1012Ω、1.0×10~2.0×1012Ω、1.0×10~2.0×1012Ω、1.0×10~2.0×1012Ω、1.0×10~2.0×1012Ω、1.0×10~2.0×1012Ω、1.0×1010~2.0×1012Ω、1.0×1011~2.0×1012Ω、1.5×10~2.0×1012Ω、1.5×10~2.0×1012Ω、1.5×10~2.0×1012Ω、1.5×10~2.0×1012Ω、1.5×10~2.0×1012Ω、1.5×10~2.0×1012Ω、1.5×10~2.0×1012Ω、1.5×1010~2.0×1012Ωまたは1.5×1011~2.0×1012Ωの範囲内であってもよい。前記表面抵抗は、ASTM D-257法によってAdvanced Energy/Trek152-1を用いて測定してもよく、具体的な測定条件としては、23±3℃及び10VのSource Voltageで測定しうる。本発明による成形品は、前記範囲内の表面抵抗を有することにより、伝導性、成形性及び加工性に優れている。
【0071】
一具体例において、前記ポリイミド成形品は、ASTM D-1708法によって測定した伸びが3%以上、4%以上、5%以上、6%以上、7%以上、8%以上、9%以上または10%以上であってもよい。上限は特に制限されないが、50%以下、40%以下、30%以下または20%以下であってもよい。
【0072】
また、前記ポリイミド成形品は、ASTM D-1708法によって測定した引張強度が65Mpa以上、68Mpa以上、70Mpa以上、72Mpa以上、74Mpa以上、76Mpa以上、78Mpa以上、80Mpa以上、85Mpa以上、90Mpa以上、90Mpa以上、100Mpa以上、150Mpa以上、200Mpa以上、250Mpa以上、300Mpa以上、350Mpa以上、400Mpa以上または450Mpa以上であってもよい。上限は、特に制限されるものではないが、1000Mpa以下、900Mpa以下、800Mpa以下、700Mpa以下、600Mpa以下または500Mpa以下であってもよい。
【0073】
前記伸び及び引張強度は、ポリイミド粉末をHCM成形した後、ドッグボーン状の長さ38mm、幅15mmに加工し、インストロン(Instron)社のInstron UTM装備を使用してASTM D-1708法によって測定しうる
【0074】
本出願は、さらにポリアミック酸ワニスの製造方法に関する。
【0075】
前記方法は、有機溶媒に伝導性フィラーを分散させる段階、及び伝導性フィラーが分散した有機溶媒下でジアミンモノマー及び二無水物モノマーを重合する段階を含む。前記製造方法で製造されたポリアミック酸ワニスは、重合段階で伝導性フィラーが投入されることにより、熱硬化時に粒子内の伝導性フィラーが分散したポリイミド粉末を提供しうる。
【0076】
前記重合する段階は、加熱によって二無水物モノマー及びジアミンモノマーを重合する段階である。前記重合する段階において加熱温度は、30~100℃であり、例えば、前記重合する段階において加熱温度は、40~100℃、50~90℃、または60~80℃であってもよい。
【0077】
前記重合する段階において反応時間は、1~10時間であってもよく、例えば、1~8時間、1~6時間、1~4時間または1~3時間であってもよい。
【0078】
一例において、前記分散は超音波処理(sonication)によって行われてもよい。前記超音波処理は、Sonics & Materials社のVCX750を用いて30分以上処理することにより行われてもよく、特に制限されるものではなく、溶媒及び伝導性フィラーの種類によって具体的な条件は、変更可能である。
【0079】
前記ポリアミック酸ワニスの組成に関する詳細な説明は、前述した内容と重複するので、以下では省略する。
【0080】
本出願は、さらにポリイミド粉末の製造方法に関する。
【0081】
前記製造方法は、有機溶媒に伝導性フィラーを分散させる段階、伝導性フィラーが分散された有機溶媒下でジアミンモノマー及び二無水物モノマーを重合する段階、及び重合段階で生成した重合物を熱硬化してポリイミド粉末を得る段階を含む。
【0082】
前記重合する段階は、二無水物モノマー及びジアミンモノマーを重合単位として有するポリアミック酸を生成する段階であり、重合段階で生成した重合物はポリアミック酸であってもよい。前記重合する段階において重合温度は、30~100℃、40~100℃、50~90℃または60~80℃の範囲内であってもよい。
【0083】
前記重合する段階において重合時間は1~10時間であってもよく、例えば、1~8時間、1~6時間、1~4時間または1~3時間であってもよい。
【0084】
前記熱硬化時、ポリアミック酸はポリイミドでイミド化されながら溶媒に対する溶解度が低くなり、粉末状に析出されてもよい。例えば、前記熱硬化の硬化温度は、150~300℃の温度範囲内で行われてもよく、160~280℃、170~250℃または180~200℃の範囲内であってもよい。
【0085】
前記熱硬化の硬化時間は、1~10時間であってもよく、例えば、1~8時間、1~6時間、1~4時間または1~3時間であってもよい。
【0086】
前述した内容と重複する説明は、以下では省略する。
【0087】
本出願は、ポリイミド成形品の製造方法に関する。
【0088】
前記成形品の製造方法は、有機溶媒に伝導性フィラーを分散させる段階、伝導性フィラーが分散した有機溶媒下でジアミンモノマー及び二無水物モノマーを重合する段階、重合段階で生成した重合物を熱硬化させてポリイミド粉末を得る段階、及び得られたポリイミド粉末を成形してポリイミド成形品を製造する段階を含む。
【0089】
前記重合する段階は、二無水物モノマー及びジアミンモノマーを重合単位として有するポリアミック酸を生成する段階であり、重合段階で生成した重合物はポリアミック酸であってもよい。前記重合する段階において重合温度は、30~100℃、40~100℃、50~90℃または60~80℃の範囲内であってもよい。
【0090】
前記重合する段階において重合時間は、1~10時間であってもよく、例えば、1~8時間、1~6時間、1~4時間または1~3時間であってもよい。
【0091】
前記熱硬化は、ポリアミック酸をポリイミドでイミド化し、粉末状に析出する過程である。例えば、熱硬化の硬化温度は、150~300℃の温度範囲内で行われてもよく、160~280℃、170~250℃または180~200℃の範囲内であってもよい。
【0092】
前記熱硬化の硬化時間は、1~10時間であってもよく、例えば、1~8時間、1~6時間、1~4時間または1~3時間であってもよい。
【0093】
前記成形は、圧縮成形、射出成形、スラッシュ成形、中空成形、押出成形または紡績方法などが挙げられ、前記成形品としては、板材、棒材、フィルム、シート、ペレット、ベルトまたはチューブなどが挙げられる。
【0094】
前述した内容と重複する説明は、以下では省略する。
【発明の効果】
【0095】
本出願は、粒子内の伝導性フィラーが均一に分散されたポリイミド粉末及び前記粉末から製造されて成形性及び加工性に優れているだけでなく、優れた伝導性、引張強度、伸び及び弾性率を有するポリイミド成形品を具現できるポリアミック酸ワニスを提供する。
【発明を実施するための形態】
【0096】
以下、本発明による実施例及び本発明によらない比較例を通じて本発明をより詳細に説明するが、本発明の範囲が下記の実施例によって制限されるものではない。
【0097】
実施例1
攪拌機及び窒素注入排出管を備えた1000mlの反応器にディーン・スターク・トラップを設置し、窒素を注入しながらN-メチル-2-ピロリドン(NMP)及びm-クレゾールを8:2の重量比で混合した溶媒に伝導性フィラーとしてカーボンブラックを全ポリアミック酸ワニスを基準として10重量%入れ、超音波処理して分散させた。伝導性フィラーが分散した溶媒を75℃に加熱した後、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル(ODA)を100モル部投入して完全に溶解した。その後、ピロメリト酸二無水物(PMDA)をODA100モル部に対して80モル部投入し、オキシジフタル酸二無水物(OPDA)をODA100モル部に対して20モル部投入し、75℃で2時間反応させて伝導性フィラーが均一に分散したポリアミック酸ワニスを製造した。その後、ポリアミック酸ワニスを撹拌しながら200℃に昇温し、さらに2時間加熱してポリイミド粉末を析出した。
【0098】
実施例2~6
下記表1のようにモノマーの成分、溶媒及び伝導性フィラーを調節したことを除いては、実施例1と同様の方法でポリイミド粉末を析出した。
【0099】
比較例1~4
下記表1のように伝導性フィラーを使用せず、モノマーの成分、溶媒及び触媒を調節したことを除いては、実施例1と同様の方法でポリイミド粉末を析出した。
【0100】
下記表1において、伝導性フィラーの混合方法について説明すると、実施例1~7の「分散混合」とは、実施例1のようにポリアミック酸重合段階で超音波処理を通じて溶媒に伝導性フィラーを混合する方法をいう。比較例1~4の「乾式混合」とは、伝導性フィラーを使用せずにポリアミック酸を重合し、イミド化してポリイミド粉末を析出した後、析出したポリイミド粉末と伝導性フィラーを機械的に混合する方法をいう。
【0101】
【表1】
【0102】
実験例1-加工性
実施例及び比較例のポリイミド粉末をHCM成形した成形品をドグボン状に加工してそれぞれのサンプルを製造し、サンプルの外観を目視で観察してクラック発生の有無及びクラックの個数を確認した。具体的には、10cm×10cmのサイズの領域でクラックが発生しなかった場合とクラックが発生した場合に区分し、クラックが発生した場合、下記のようにクラックの個数によって「クラックが少ない」と「クラックが多い」に区分した。
【0103】
O:クラックなし
△:クラックの個数が1~5個(クラックが少ない)
X:クラックの個数が5個超過(クラックが多い)
【0104】
実験例2-表面抵抗
実施例及び比較例のポリイミド粉末をHCM成形した成形品の表面抵抗をAdvanced Energy/Trek 152-1を使用してASTM D-257によって測定した。前記測定温度は23±3℃に設定し、Source Voltageは10Vに設定した。
【0105】
実験例3-伸び及び引張強度の測定
実施例及び比較例のポリイミド粉末をHCM成形した後、ドッグボーン状の長さ38mm、幅15mmに加工し、インストロン(Instron)社のInstron UTM装備を使用してASTM D-1708法によって伸び及び引張強度を測定した。
【0106】
【表2】