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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024059114
(43)【公開日】2024-05-01
(54)【発明の名称】駆動機構及び露光装置
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/20 20060101AFI20240423BHJP
【FI】
G03F7/20 521
G03F7/20 501
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022166565
(22)【出願日】2022-10-18
(71)【出願人】
【識別番号】000102212
【氏名又は名称】ウシオ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003339
【氏名又は名称】弁理士法人南青山国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】曽原 直也
【テーマコード(参考)】
2H197
【Fターム(参考)】
2H197CD12
2H197CD17
2H197CD41
2H197HA03
2H197HA05
(57)【要約】
【課題】高精度な長距離移動を実現することが可能な駆動機構及び露光装置を提供すること。
【解決手段】本発明の一形態に係る駆動機構は、中間体と、原動体と、従動体とを具備する。前記中間体は、本体と、前記本体を回転可能に支持する主軸部と、前記本体の互いに異なる位置に設けられた第1の受部及び第2の受部とを有する。前記原動体は、アクチュエータに接続され第1の方向に沿って前記第1の受部を押す。前記従動体は、前記第2の受部に押されて第2の方向に沿って移動して対象物を動かす。前記中間体は、前記主軸部の回転軸と直交する回転面において、前記主軸部の中心から前記第1の受部の中心及び前記第2の受部の中心に向かう2直線のなす配置角度φが、前記本体の回転角度をαとして|α|<90°である場合に、下記条件式を満たすように構成される。
【数1】
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体と、前記本体を回転可能に支持する主軸部と、前記本体の互いに異なる位置に設けられた第1の受部及び第2の受部とを有する中間体と、
アクチュエータに接続され第1の方向に沿って前記第1の受部を押す原動体と、
前記第2の受部に押されて第2の方向に沿って移動して対象物を動かす従動体と
を具備し、
前記中間体は、前記主軸部の回転軸と直交する回転面において、前記主軸部の中心から前記第1の受部の中心及び前記第2の受部の中心に向かう2直線のなす配置角度φが、前記本体の回転角度をαとして|α|<90°である場合に、下記条件式を満たすように構成される
駆動機構。
【数1】
【請求項2】
請求項1に記載の駆動機構であって、
前記中間体は、前記配置角度φが、90°の整数倍になるように構成される
駆動機構。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の駆動機構であって、
前記第1の受部及び前記第2の受部の少なくとも一方は、前記回転面における平面形状が円形状となるように構成される
駆動機構。
【請求項4】
請求項3に記載の駆動機構であって、
前記第1の受部及び前記第2の受部の少なくとも一方は、ベアリングである
駆動機構。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の駆動機構であって、
前記原動体は、前記第1の受部に接する第1の接触面を有し、
前記従動体は、前記第2の受部に接する第2の接触面を有し、
前記第1の接触面及び前記第2の接触面の少なくとも一方は、前記回転面に直交する平面である
駆動機構。
【請求項6】
請求項5に記載の駆動機構であって、
前記第1の接触面は、前記第1の方向に直交する平面である、及び/又は、前記第2の接触面は、前記第2の方向に直交する平面である
駆動機構。
【請求項7】
請求項1又は2に記載の駆動機構であって、
前記第1の方向及び前記第2の方向は、前記回転面に平行な方向である
駆動機構。
【請求項8】
請求項7に記載の駆動機構であって、
前記第1の方向及び前記第2の方向は、前記回転面において互いに直交する方向である
駆動機構。
【請求項9】
請求項1又は2に記載の駆動機構であって、
前記回転面における前記主軸部の中心と前記第1の受部の中心との距離は、前記回転面における前記主軸部の中心と前記第2の受部の中心との距離よりも大きい
駆動機構。
【請求項10】
請求項1又は2に記載の駆動機構であって、
前記従動体は、前記第2の受部に押し付けられる
駆動機構。
【請求項11】
請求項1又は2に記載の駆動機構であって、
前記駆動機構は、露光装置に搭載され、
前記対象物は、前記露光装置において、露光光の光路上に配置されマスクのパターンをワークに転写する転写部、及び前記パターンが転写される前記ワークを保持するワークステージの少なくとも一方である
駆動機構。
【請求項12】
請求項1又は2に記載の駆動機構であって、さらに、
前記中間体の前記主軸部が接続されるベース部を具備する
駆動機構
【請求項13】
露光光を出射する光出射部と、
前記露光光の光路上に配置されマスクのパターンをワークに転写する転写部と
前記パターンが転写される前記ワークを保持するワークステージと、
アクチュエータと前記アクチュエータにより駆動される駆動機構とを有し、前記転写部及び前記ワークステージの少なくとも一方を対象物として、前記駆動機構により前記対象物を移動させる少なくとも1つの移動ユニットと
を具備し、
前記駆動機構は、
本体と、前記本体を回転可能に支持する主軸部と、前記本体の互いに異なる位置に設けられた第1の受部及び第2の受部とを有する中間体と、
前記アクチュエータに接続され第1の方向に沿って前記第1の受部を押す原動体と、
前記第2の受部に押されて第2の方向に沿って移動して前記対象物を動かす従動体と
を有し、
前記中間体は、前記主軸部の回転軸と直交する回転面において、前記主軸部の中心から前記第1の受部の中心及び前記第2の受部の中心に向かう2直線のなす配置角度φが、前記本体の回転角度をαとして|α|<90°である場合に、下記条件式を満たすように構成される
露光装置。
【数2】
【請求項14】
請求項13に記載の露光装置であって、
前記中間体は、前記配置角度φが、90°の整数倍になるように構成される
露光装置。
【請求項15】
請求項13又は14に記載の露光装置であって、
前記少なくとも1つの移動ユニットは、前記対象物を同一の方向に沿って動かす複数の移動ユニットを含む
露光装置。
【請求項16】
請求項13又は14に記載の露光装置であって、
前記転写部は、前記マスクを前記露光光の光路上で保持するマスクステージ、及び前記マスクを通過した前記露光光を前記ワークに投影する投影光学系を有し、
前記対象物は、前記マスクステージ及び前記投影光学系の少なくとも一方である
露光装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステージ等の移動に用いる駆動機構及びそれを搭載した露光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プリント基板、半導体基板、液晶基板等を製造する工程では、微細なパターンを作成するために加工対象や装置の各部を移動させて位置合わせが行われる。例えば露光装置には、露光光を投影する光学系、マスクを保持するマスクステージ、及びワークを保持するワークステージ等が設けられる。露光処理を行う際には、これらの光学系、マスクステージ、及びワークステージを移動して、精密に位置決めすることが求められる。
【0003】
例えば特許文献1には、フレクシャ機構を用いて、アクチュエータの動作方向を変向して、光学系を構成するレンズ等の光学素子を高精度に移動させる技術が開示されている。このフレクシャ機構は、弾性変形(たわみ)を利用した機構であるため、摩擦がなく、高精度の移動が可能であるが、移動対象である光学素子を移動可能な距離は比較的小さい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001-343575号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、配線の微細化や実装密度の高密度化に伴い、十分な位置決め精度を確保することが重要となっている。一方で、位置決め精度が高くても移動可能な距離が小さい場合には、移動対象を適正な位置まで移動することが出来なくなることもあり得る。このため、高精度な長距離移動を実現可能な技術が求められている。
【0006】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、高精度な長距離移動を実現することが可能な駆動機構及び露光装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係る駆動機構は、中間体と、原動体と、従動体とを具備する。
前記中間体は、本体と、前記本体を回転可能に支持する主軸部と、前記本体の互いに異なる位置に設けられた第1の受部及び第2の受部とを有する。
前記原動体は、アクチュエータに接続され第1の方向に沿って前記第1の受部を押す。
前記従動体は、前記第2の受部に押されて第2の方向に沿って移動して対象物を動かす。
前記中間体は、前記主軸部の回転軸と直交する回転面において、前記主軸部の中心から前記第1の受部の中心及び前記第2の受部の中心に向かう2直線のなす配置角度φが、前記本体の回転角度をαとして|α|<90°である場合に、下記条件式を満たすように構成される。
【数1】
【0008】
この駆動機構では、中間体の本体に第1及び第2の受部が設けられる。また本体は、主軸部により回転可能に支持される。第1の受部はアクチュエータに接続した原動体により第1の方向に沿って押され、第2の受部により押された従動体は第2の方向に移動して対象物を動かす。この時、主軸部の中心から第1及び第2の受部の各中心に向かう2直線のなす配置角度φが上記条件式を満たすように設定される。これにより、高精度な長距離移動を実現することが可能となる。
【0009】
前記中間体は、前記配置角度φが、90°の整数倍になるように構成されてもよい。
【0010】
前記第1の受部及び前記第2の受部の少なくとも一方は、前記回転面における平面形状が円形状となるように構成されてもよい。
【0011】
前記第1の受部及び前記第2の受部の少なくとも一方は、ベアリングであってもよい。
【0012】
前記原動体は、前記第1の受部に接する第1の接触面を有してもよい。この場合、前記従動体は、前記第2の受部に接する第2の接触面を有してもよい。また前記第1の接触面及び前記第2の接触面の少なくとも一方は、前記回転面に直交する平面であってもよい。
【0013】
前記第1の接触面は、前記第1の方向に直交する平面であってもよく、及び/又は、前記第2の接触面は、前記第2の方向に直交する平面であってもよい。
【0014】
前記第1の方向及び前記第2の方向は、前記回転面に平行な方向であってもよい。
【0015】
前記第1の方向及び前記第2の方向は、前記回転面において互いに直交する方向であってもよい。
【0016】
前記回転面における前記主軸部の中心と前記第1の受部の中心との距離は、前記回転面における前記主軸部の中心と前記第2の受部の中心との距離よりも大きくてもよい。
【0017】
前記従動体は、前記第2の受部に押し付けられてもよい。
【0018】
前記駆動機構は、露光装置に搭載されてもよい。この場合、前記対象物は、前記露光装置において、露光光の光路上に配置されマスクのパターンをワークに転写する転写部、及び前記パターンが転写される前記ワークを保持するワークステージの少なくとも一方であってもよい。
【0019】
前記駆動機構は、さらに、前記中間体の前記主軸部が接続されるベース部を具備してもよい。
【0020】
本発明の一形態に係る露光装置は、光出射部と、転写部と、ワークステージと、少なくとも1つの移動ユニットとを具備する。
前記光出射部は、露光光を出射する。
前記転写部は、前記露光光の光路上に配置されマスクのパターンをワークに転写する。
前記ワークステージは、前記パターンが転写される前記ワークを保持する。
前記少なくとも1つの移動ユニットは、アクチュエータと前記アクチュエータにより駆動される駆動機構とを有し、前記転写部及び前記ワークステージの少なくとも一方を対象物として、前記駆動機構により前記対象物を移動させる。
また前記駆動機構は、中間体と、原動体と、従動体とを有する。
前記中間体は、本体と、前記本体を回転可能に支持する主軸部と、前記本体の互いに異なる位置に設けられた第1の受部及び第2の受部とを有する。
前記原動体は、前記アクチュエータに接続され第1の方向に沿って前記第1の受部を押す。
前記従動体は、前記第2の受部に押されて第2の方向に沿って移動して前記対象物を動かす。
前記中間体は、前記主軸部の回転軸と直交する回転面において、前記主軸部の中心から前記第1の受部の中心及び前記第2の受部の中心に向かう2直線のなす配置角度φが、前記本体の回転角度をαとして|α|<90°である場合に、下記条件式を満たすように構成される。
【数2】
【0021】
前記中間体は、前記配置角度φが、90°の整数倍になるように構成されてもよい。
【0022】
前記少なくとも1つの移動ユニットは、前記対象物を同一の方向に沿って動かす複数の移動ユニットを含んでもおよい。
【0023】
前記転写部は、前記マスクを前記露光光の光路上で保持するマスクステージ、及び前記マスクを通過した前記露光光を前記ワークに投影する投影光学系を有してもよい。この場合、前記対象物は、前記マスクステージ及び前記投影光学系の少なくとも一方であってもよい。
【発明の効果】
【0024】
以上のように、本発明によれば、高精度な長距離移動を実現することが可能となる。なお、ここに記載された効果は必ずしも限定されるものではなく、本開示中に記載されたいずれかの効果であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の一実施形態に係る露光装置の構成例を示す模式図である。
図2】駆動機構を含む移動ユニットの構成例を示す模式図である。
図3】駆動機構を含む移動ユニットの動作例を示す模式図である。
図4】移動ユニットの配置例を示す模式図である。
図5】移動ユニットの他の配置例を示す模式図である。
図6】駆動機構のモデルを示す模式図である。
図7】駆動機構の動作に伴う座標位置の変化について説明する模式図である。
図8】駆動機構の他の構成例を示す模式図である。
図9】駆動機構の他の構成例を示す模式図である。
図10】駆動機構の他の構成例を示す模式図である。
図11】駆動機構の他の構成例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明に係る実施形態を、図面を参照しながら説明する。
【0027】
[露光装置の構成]
図1は、本発明の一実施形態に係る露光装置の構成例を示す模式図である。露光装置100は、ワークWを露光する露光装置である。ここで、ワークWは、例えば半導体基板、プリント基板、液晶基板等とすることができる。
露光装置100は、光照射部10と、マスクMと、マスクステージ11と、投影レンズ12と、ワークステージ20と、配管Lと、移動ユニット30とを有する。
【0028】
光照射部10は、露光光を出射する。光照射部10は、ランプ15と、ミラー16と、ランプハウス17とを有する。ランプ15は、紫外線を含む露光光を放射する露光用光源である。ミラー16は、ランプ15から放射された露光光を所定の出射方向にむけて反射する。ランプハウス17は、ランプ15及びミラー16を収容するケースである。
なお、ここでは光照射部10の光源がランプ15である場合について説明するが、光源としてLED(Light Emitting Diode)やレーザ光源等が用いられてもよい。また露光光の波長や帯域も限定されない。
本実施形態では、光照射部10は、露光光を出射する光出射部に相当する。
【0029】
マスクMには、ワークWに露光(転写)される回路パターンなどのパターンが形成されている。
マスクステージ11は、パターンが形成されたマスクを露光光の光路上で保持する。
投影レンズ12は、マスクを通過した露光光をワークWに投影する。例えば投影レンズ12は、マスクMのパターンを投影してワークWの表面に結像させる投影光学系として構成される。本実施形態では、投影レンズ12は、投影光学系に相当する。また、マスクステージ11及び投影レンズ12により、露光光の光路上に配置されマスクのパターンをワークに転写する転写部が構成される。
なお、図1では露光装置100が投影レンズ12を備える場合について説明するが、投影レンズ12を備えない露光装置にも本発明を適用可能である。
【0030】
ワークステージ20は、マスクMのパターンが転写されるワークWを保持する。具体的には、ワークステージ20は、ワークWを真空吸着して保持する保持機構である。
ワークステージ20は、中央部に凹部24が形成された基台21を備える。基台21は、例えばアルミニウムにより構成することができる。凹部24内には吸着板23を載せる複数の凸部25が形成される。また基台21内部には、真空エアー導入路26が形成されており、後述する配管Lに供給された真空またはエアーが真空エアー導入路26を通って凹部24に供給される。
【0031】
吸着板23は、基台21の表面にならうよう、ある程度の柔軟性を有する材質で構成され、凹部24を完全に覆う大きさを有し、凹部24と対応する位置には、全面に渡って真空吸着孔27となる貫通孔が一定間隔で設けられている。吸着板23に設けられる真空吸着孔27の位置は、基台21の凸部25と重ならないように設けられている。また吸着板23の外縁にはワークを吸着する際のリークを抑制するためにシール部28が設けられる。
吸着板23にワークWを載置し真空を供給すると、ワークWには吸着板23の表面に押さえつけられる力が働き、ワークWをワークステージ20に保持することができる。ワークステージ20への真空の供給は、露光処理中、ワークWが移動しないように続けられる。
【0032】
配管Lは、一端がワークステージ20に接続され、他端には二股に分かれた分岐路が設けられた真空引き用の配管である。分岐路の一方は、バルブB1を介して図示しない真空ポンプに接続される。また分岐路の他方は、バルブB2を介して図示しないエアー導入部に接続される。バルブB1及びバルブB2としては、流路を遮断する電磁弁等が用いられる。
【0033】
移動ユニット30は、アクチュエータ31と、アクチュエータ31により駆動される駆動機構40とを有する。移動ユニット30は、ワークW、マスクM、及び光学系の位置合わせに用いられる。図1に示す例では、ワークステージ20(対象物5)を移動するように配置された移動ユニット30が模式的に図示されている。移動ユニット30については、後に詳しく説明する。
【0034】
[露光装置の基本的な動作]
ここで、露光装置100の基本的な露光動作の流れを説明する。
露光装置100では、図示しない搬送手段によりプリント基板等のワークWが搬送される。ワークWはその表面(パターンを形成する側)を上側にしてワークステージ20に置かれる。この時、ワークWの表面には、露光光によって感光するレジストが塗布されている。
【0035】
ワークWが置かれると、配管LのバルブB2が閉じられバルブB1が開かれる。この結果、配管Lに接続された貫通孔(真空吸着孔27)に真空が供給され、ワークWは吸着板23に吸着される。このとき、ワークWの真空吸着に伴いシール部28は押しつぶされるように弾性変形する。これによりワークWの裏面とワークステージ20との間で真空がリークするといった事態が回避され、ワークWは確実に吸着保持される。
【0036】
ワークWが吸着されると、移動ユニット30によりワークステージ20が移動される。ワークステージ20を移動することで、ワークWの位置決めが行われる。移動ユニット30の制御は、例えば図示しないコントローラ等により自動で行われる。また露光装置の操作者等により手動での位置決めが行われてもよい。ワークWの位置決めが完了すると、露光が開始される。
【0037】
光照射部10から出射された露光光が、マスクMと投影レンズ12とを介して、ワークステージ20が保持するワークWに照射される。そしてマスクMに形成されたパターンが、ワークW上に投影されて所望のパターンが露光される。なお、ワークステージ20への真空の供給は、露光処理中、ワークWが移動しないように継続される。
【0038】
露光処理が終了すると、バルブB1が閉じられ、真空吸着孔27への真空の供給が停止される。これにより、ワークWの真空吸着が解除される。次にバルブB2が開かれ、真空吸着孔27にエアーが供給される。この結果、真空吸着孔27からはエアーが吹き出し、ワークステージ20からワークWが取り外される。その後、不図示の搬送手段によりワークWが回収され、露光装置100の外部に搬送される。
【0039】
[移動ユニットの構成]
図2は、駆動機構を含む移動ユニットの構成例を示す模式図である。
移動ユニット30は、アクチュエータ31により駆動された駆動機構40を介して対象物5を移動させるユニットである。移動ユニット30は、単体で用いることも可能であるし、複数の移動ユニット30を組み合わせて用いることも可能である。対象物5は、例えばワークステージ20等であるが、本発明は移動対象となる任意の対象物5に適用可能である。
【0040】
アクチュエータ31は、駆動機構40を動かす動力源である。アクチュエータ31は、後述する駆動機構40の原動体43を一定の方向に沿って動かす線形駆動素子として構成される。アクチュエータ31としては、例えばステッピングモータやサーボモータを用いた素子が用いられる。アクチュエータ31の動作は、図示しないコントローラによりモータドライバ等を介して制御される。
またアクチュエータ31には、移動量を検出するエンコーダが搭載され、検出された移動量は適宜コントローラに送信される。これにより、アクチュエータ31の移動量を用いたフィードバック制御等が可能となる。
【0041】
駆動機構40は、アクチュエータ31により駆動されて対象物5を動かす機構である。すなわち、駆動機構40は、アクチュエータ31の動力を対象物5に伝達する機構であるとも言える。駆動機構40は、中間体42と、原動体43と、従動体44とを有する。中間体42、原動体43、及び従動体44を構成する材料としては、例えばアルミやステンレス等の金属が用いられる。この他各部の材質は限定されず、駆動機構40の用途や要求される精度等に応じて任意の構造材料が用いられてよい。
【0042】
中間体42は、原動体43の動きを従動体44に伝える部材である。中間体42は、本体45と、主軸部50と、第1の軸受部51と、第2の軸受部52とを有する。
本体45は、中間体42の本体を構成する構造部材である。本体45には、主軸部50、第1の軸受部51、及び第2の軸受部52が設けられる。図1に示す例では、板状の構造部材が中間体42の本体45として用いられる。なお本体45の形状は限定されない。
【0043】
主軸部50は、本体45を回転可能に支持する。具体的には、主軸部50は、所定の支持体41に接続され、本体45が支持体41に対して回転可能なように、本体45を支持する。支持体41は、駆動機構40の動作中に動かない部分であり、主軸部50を介して中間体42(本体45)を支持する。
例えば駆動機構40が設けられる装置(ここでは露光装置100)そのものが、支持体41として用いられる。このように、装置そのものに主軸部50を接続することで駆動機構40をコンパクトに構成することが可能となる。
【0044】
また駆動機構40は、中間体42の主軸部50が接続されるベース部を備えてもよい。ベース部は、駆動機構40が設けられる装置(ここでは露光装置100)の所定の位置にネジ止め等により固定される独立した部材である。この場合、ベース部が中間体42を支持する支持体41として機能する。ベース部を設けることで、例えば主軸部50の取り外し等を行う必要がなくなり、メンテナンスや取付作業が容易になる。
【0045】
主軸部50は、典型的には、ベアリングを用いて構成される。例えば主軸部50の外輪は本体45に設けられた開口部分に嵌め込まれ、主軸部50の内輪は支持体41に設けられた固定軸に嵌め込まれる。これにより、中間体42の本体45は主軸部50の回転軸Oを中心として支持体41に対して回転可能となる。
【0046】
図2に示す模式図は、回転軸Oと平行な方向から移動ユニット30を見た場合の平面図である。以下では、主軸部50の回転軸O(本体45の回転軸O)と直交する平面を、回転面と記載する。また回転面内で互いに直交する方向をX方向及びY方向と記載する。図2では、図中の左右方向をX方向とし、図中の上下方向をY方向とする。また回転面(XY平面)に直交する方向(回転軸Oと平行な方向)をZ方向と記載する。
また以下では、回転面において、主軸部50の中心と第1の軸受部51の中心とを結ぶ直線がY方向に平行な状態を中間体42の初期位置とする。図2には、中間体42が初期位置にある場合の構成例が模式的に図示されている。
【0047】
第1の軸受部51及び第2の軸受部52は、本体45の互いに異なる位置に設けられる。第1の軸受部51は、原動体43に当接して原動体43を受ける部分である。また第2の軸受部52は、従動体44に当接して従動体44を受ける部分である。本実施形態では、第1の軸受部51は、第1の受部に相当し、第2の軸受部52は、第2の受部に相当する。
図2に示す例では、第1の軸受部51は、主軸部50の図中下側に配置され、第2の軸受部52は、主軸部50の図中右側に配置される。
【0048】
第1の軸受部51及び第2の軸受部52は、回転面における平面形状が円形状となるように構成される。ここでは、第1の軸受部51及び第2の軸受部52として、円柱型の部材が用いられる。これらの部材は、中心軸が回転面に直交するように本体45に取り付けられる。
これにより、本体45が回転して本体45の姿勢が変化しても、原動体43や従動体44が接する部分の形状が変化しない。このため、対象物5の移動精度を確保することが可能となる(図6等参照)。
【0049】
第1の軸受部51及び第2の軸受部52には、典型的には、ベアリングが用いられる。例えば、第1の軸受部51(第2の軸受部52)となるベアリングの内輪が、本体45の所定の位置に設けられた固定軸に嵌め込まれる。従って、第1の軸受部51(第2の軸受部52)では、ベアリングの外輪に原動体(従動体)が当接する。このようにベアリングを用いることで、原動体や従動体との間で生じる摩擦等が十分に低減し、対象物5を滑らかに移動させることが可能となる。
以下では、回転面における第1の軸受部51の中心をPと記載し、第2の軸受部52の中心をQと記載する。回転面における主軸部50の中心を、回転軸Oと同じ符号を用いて中心Oと記載する。
【0050】
上記した主軸部50、第1の軸受部51、及び第2の軸受部52に用いられるベアリングとしては、玉軸受(ボールベアリング)やころ軸受(ローラベアリング)等が用いられる。また、油等の作動流体を用いたすべり軸受(スリーブベアリング)等が用いられてもよい。またベアリングに代えて、他の回転機構等が用いられてもよい。
【0051】
中間体42において、主軸部50、第1の軸受部51、及び第2の軸受部52は、例えば同一平面上に配置される。この場合、例えば主軸部50、第1の軸受部51、及び第2の軸受部52のZ方向の中心位置が同一面上に揃えられる。これにより、例えば主軸部50に不均一に荷重(モーメント)がかかるといった事態を回避することが可能となる。
なお、主軸部50、第1の軸受部51、及び第2の軸受部52は、必ずしも同一平面に配置する必要は無い。つまり、各部のZ方向の位置が、互いにずれていてもよい。
【0052】
また図2に示す例では、主軸部50、第1の軸受部51、及び第2の軸受部52の回転面における配置角度φが90°に設定される。ここで配置角度φは、主軸部50の回転軸Oと直交する回転面において、主軸部50の中心から第1の軸受部51の中心及び第2の軸受部52の中心に向かう2直線のなす角度である。つまり配置角度φは、第1の軸受部51、主軸部50、第2の軸受部52の回転面における各中心がなす角度である。
【0053】
この配置角度φを所定の条件式を満たすように設定することで、高精度な長距離移動が可能となる。特に、φ=90°とした場合には、原動体43及び従動体44の移動量を線形に対応付けることが可能となる。この点については、図6及び7等を参照して後に詳しく説明する。
【0054】
原動体43は、アクチュエータ31に接続され第1の方向に沿って第1の軸受部51を押す部材である。ここで、第1の方向は、原動体43が実際に移動する方向である。本実施形態では、第1の方向は、中間体42の回転面(XY平面)に平行な方向である。これにより、不要なモーメント等を加えることなく中間体42を適切に回転させることが可能となる。
なお原動体43が移動する第1の方向は、例えばアクチュエータ31の移動方向であるが、これに限定されない。例えばクランク機構等を用いてアクチュエータ31の移動方向とは異なる方向に第1の方向が設定されてもよい。
【0055】
原動体43は、第1の軸受部51に接する第1の接触面43sを有する。例えば原動体43は、一端に第1の接触面43sが形成された棒状の部材である。原動体43の第1の接触面43sとは反対側はアクチュエータ31の移動軸に固定される。原動体43が固定されたアクチュエータ31は、原動体43の第1の接触面43sが第1の軸受部51に当接するように配置される。
【0056】
原動体43の第1の接触面43sは、回転面に直交する平面であってもよい。これにより、第1の軸受部51の側面に余分なモーメント等を与えることなく接触することが可能となる。具体的には、第1の接触面43sは、第1の方向に直交する平面である。これにより、第1の方向に押した分の移動量をそのまま中間体42(第1の軸受部51)に伝えることが可能となり、移動制御が容易になる。
図2に示す例では、第1の方向は、X方向と平行に設定される。また第1の接触面43sとして、原動体43にはYZ平面と平行な面が形成される。これにより、図2では、主軸部50の下側に配置された第1の軸受部51が、原動体43により図中左側から右側に押されることになる。
【0057】
従動体44は、第2の軸受部52に押されて第2の方向に沿って移動して対象物5を動かす部材である。ここで、第2の方向は、従動体44が実際に移動する方向である。従動体44は、第2の方向に沿って線形に動くように構成される。本実施形態では、第2の方向は、中間体42の回転面(XY平面)に平行な方向である。これにより、中間体42側に不要なモーメント等を発生させることなく従動体44を押すことが可能となる。
【0058】
第2の方向は、基本的に第1の方向とは異なる方向に設定される。このため、駆動機構40では、第1の方向に沿った原動体43の動きが、それとは異なる第2の方向に沿った従動体44の動きに変換される。従って駆動機構40は、第1の方向に沿った移動量を、第2の方向に沿った移動量に変換する変向機構であるとも言える。
【0059】
従動体44は、第2の軸受部52に接する第2の接触面44sを有する。例えば従動体44は、原動体43と同様に、一端に第2の接触面44sが形成された棒状の部材である。従動体44は、第2の接触面44sが第2の軸受部52に当接し、第2の接触面44sとは反対側が対象物5に当接するように配置される。
また従動体44は、第2の軸受部52に押し付けられる。従動体44を押し付けるための機構として、図示しないバネ等の弾性部材が用いられる。また、従動体44や対象物5の重量を利用して、従動体44が第2の軸受部52押し付けられてもよい。これにより、従動体44は、常に第2の軸受部52に当接することになり、精密な往復動作が可能となる。
【0060】
また従動体44の第2の接触面44sは、回転面に直交する平面であってもよい。これにより、第2の軸受部52の側面に余分なモーメント等を与えることなく接触することが可能となる。具体的には、第2の接触面44sは、第2の方向に直交する平面である。これにより、第2の軸受部52が第2の方向に移動した分の移動量をそのまま従動体44及び対象物5に伝えることが可能となり、移動制御が容易になる。
図2に示す例では、第2の方向は、Y方向と平行に設定される。また第2の接触面44sとして、従動体44にはXZ平面と平行な面が形成される。これにより、図2では、主軸部50の右側に配置された第2の軸受部52により、従動体44が図中下側から上側に押されることになる。
【0061】
このように、駆動機構40では、アクチュエータ31及び中間体42が第1の軸受部51に当接する原動体43により接続され、中間体42及び対象物5が第2の軸受部52に当接する従動体44により接続される。そして、第1の軸受部51と主軸部50と第2の軸受部52との各中心のなす配置角度φは90°に配置される。
【0062】
また、第1の方向及び第2の方向は、回転面において互いに直交する方向に設定される。このように、原動体43の運動方向と従動体44の運動方向とを90°ずらすことが可能である。これにより、例えば細長いアクチュエータ31を用いる場合でも、アクチュエータ31の配置方向と直交する方向に対象物5を動かすことが可能となり、装置の小型化を図ることが可能となる。
【0063】
[移動ユニットの基本動作]
図3は、駆動機構を含む移動ユニットの動作例を示す模式図である。図3には、図2に示す初期位置から中間体42が回転された様子が模式的に図示されている。ここでは、図3を参照して、移動ユニット30の基本動作について説明する。
【0064】
移動ユニット30は、アクチュエータ31の動力を駆動機構40を介して対象物5に伝えて対象物5を移動する。アクチュエータ31からの動力は、まず原動体43に伝えられる。原動体43に伝えられた動力は、原動体43の一端(第1の接触面43s)と当接する中間体42の第1の軸受部51に伝えられる。図3では、アクチュエータ31により、原動体43が図中右側に動かされ、その動力が第1の軸受部51に伝えられる。
【0065】
第1の方向に直線運動する原動体43の第1の接触面43sにより、第1の軸受部51が押される。この結果、ベアリングとして構成された第1の軸受部51は、回転しながらアクチュエータ31からの入力変位量と等しい距離だけ第1の方向に移動する。このとき、第1の軸受部51が回転することで、原動体43と第1の軸受部51との間の摩擦は十分に低減される。
【0066】
第1の軸受部51が第1の方向に押されることで、中間体42(本体45)は主軸部50を中心に回転する。この過程で、原動体43の動作方向(第1の方向)が変向される。具体的には、第2の軸受部52が主軸部50を中心に回転移動することで、第1の方向は、従動体44の動作方向(第2の方向)に変換される。
【0067】
中間体42の第2の軸受部52は、回転しながら当接する従動体44を押し、従動体44は動力を対象物5に伝える。この結果、対象物5はアクチュエータ31からの入力変位量に応じた距離を移動する。このとき、第2の軸受部52が回転することで、第2の軸受部52と従動体44との間の摩擦は十分に低減される。
【0068】
このように、駆動機構40は、中間体42の回転軸Oを支点とする梃子の原理を利用した機構である。この機構は、例えば部材のたわみ等を利用した移動機構等と比べて、十分に長い移動距離を実現することが可能である。例えば、アクチュエータ31と同程度の移動レンジ(例えば数mm~数十mm)を容易に実現可能である。
【0069】
また、図2及び図3に示す例では、配置角度が90°に設定される。このため第2の方向に沿った対象物5(従動体)の移動量は、第1の方向に沿ったアクチュエータ31(従動体)の移動量(入力変位量)と比例することになる(図6及び図7参照)。これにより、入力変位量に応じた補正等を行うことなく、対象物5を精度よく容易に長距離移動させることが可能となる。
【0070】
[移動ユニットの配置例]
本実施形態では、対象物5を同一の方向に沿って動かす複数の移動ユニット30が配置される。これにより、例えば対象物5の傾き等を補正することが可能となる。以下では図4及び図5を参照して、複数の移動ユニット30の配置例について説明する。
【0071】
図4は、移動ユニット30の配置例を示す模式図である。図4には、対象物5としてワークステージ20を動かす場合の移動ユニット30の配置例が模式的に図示されている。
ここではワークステージ20の下方に、2つの移動ユニット30が配置される。各移動ユニット30の従動体44の動作方向(第2の方向)は、露光光の光軸と平行な方向(図中の上下方向)に設定される。これにより、各移動ユニット30により、ワークWを上下に移動することが可能となる。
【0072】
なお、ここでは説明を簡略化するために、2つの移動ユニット30を設ける場合について説明したが、対象物5を安定して移動させるという観点では、3つの移動ユニット30を設けることが好ましい。もちろん、2つの移動ユニット30や、3つ以上の移動ユニット30を設けるような構成も可能である。
また図4では、ワークステージ20の下方に移動ユニット30を配置したが、例えばワークステージの側面に従動体44を接続するように構成されてもよい。
【0073】
このような構成とすることで、ステージ上のワークWの上下位置を精密に位置決めすることが可能となる。また複数の移動ユニット30を独立に制御することで、例えばワークWの傾斜等を補正するといった高度なアライメントが可能となる。
【0074】
上記では、移動ユニット30がワークステージ20を対象物5として移動する構成について説明したが、ワークステージ20以外の対象物5に本発明が適用されてもよい。例えば、転写部であるマスクステージ11や投影レンズ12を対象物5として、移動ユニット30(駆動機構40)が設けられてもよい。
【0075】
図5は、移動ユニットの他の配置例を示す模式図である。図5には、対象物5としてマスクステージ11を動かす場合の移動ユニット30の配置例が模式的に図示されている。
マスクステージ11は、台座部35と、マスクMを保持する吸着板36と、台座部35と吸着板36とを接続する複数のガイド部37とを有する。
【0076】
吸着板36は、円板形状の部材であり、その中央部分にはマスクMが配置される開口部が設けられる。吸着板36の外縁には、120°の角度間隔で3つのガイド部37が設けられる。また吸着板36の外縁を囲むように台座部35が設けられ、吸着板36は3つのガイド部37を介して台座部35に支持される。
【0077】
ガイド部37としては、例えば板バネが用いられる。板バネを用いることで吸着板36の傾斜が抑制される。この結果、吸着板36は、露光光の光軸方向(図5の紙面に直交する方向)にだけ変位可能なように支持される。
【0078】
図5に示す例では、3つのガイド部37にそれぞれ対応して、吸着板36を光軸方向に移動させる3つの移動ユニット30が配置される。ここでは、マスクステージ11の下方に配置された移動ユニット30が点線を用いて模式的に図示されている。各移動ユニット30の従動体44は、吸着板36とガイド部37との接続箇所に当接するように配置され、その動作方向(第2の方向)は、露光光の光軸と平行な方向に設定される。
【0079】
これにより、各移動ユニット30により、マスクM(吸着板36)を上下に移動することが可能となる。また、吸着板36の移動方向は、ガイド部37により制限されている。これにより、吸着板36に当接する従動体44の移動方向(第2の方向)も、吸着板36の移動方向と同じく露光光の光軸と平行な方向に限定される。このように、従動体44そのものをガイドしなくても、従動体44の移動可能な方向を制限することが可能である。
このような構成とすることで、ステージ上のマスクの上下位置を精密に位置決めすることが可能となる。
【0080】
この他、移動ユニット30を用いて投影レンズ12が移動されてもよい。例えば投影レンズ12は、レンズ素子、アパーチャー、インテグレータ等の各種の光学素子を組み合わせて構成される。このような場合、各光学素子を保持する光学素子保持機構が、移動ユニット30を用いて移動される。あるいは、投影レンズ12を構成する光学素子の一部を移動可能なように構成してもよい。
このような構成とすることで、マスクパターンをワーク上に精密に投影露光することが可能となる。
【0081】
[駆動機構の動作特性]
図6は、駆動機構のモデルを示す模式図である。図7は、駆動機構の動作に伴う座標位置の変化について説明する模式図である。以下では、図6及び図7を参照して、駆動機構の動作特性について説明する。
【0082】
図6では、回転面における中間体42の各部の配置をモデル化して図示している。ここでは、初期状態における第1の軸受部51の中心位置をP1と記載し、第2の軸受部52の中心位置をQ1と記載する。また、回転面における主軸部50の中心位置を回転軸Oと同じ符号を用いて中心位置Oと記載する。
【0083】
また、回転面における主軸部50と第1の軸受部51との中心間距離(OからP1までの距離)をR1とし、主軸部50と第2の軸受部52との中心間距離(OからQ1までの距離)をR2とする。R1及びR2は、中間体42が回転しても変化しない。
なお図6では、中間体42は回転しておらず回転角度α=0°であるものとし、この状態を初期状態とする。
【0084】
初期状態におけるP1のXY座標は、初期角度をθとすると以下のように表される。なお初期角度θは、基準となる角度位置に対する初期状態での中間体42の角度である。
【0085】
【数3】
・・・(1)
【0086】
また、初期状態におけるP2のXY座標は、以下のように表される。
【0087】
【数4】
・・・(2)
【0088】
次に、初期状態から中間体42が回転角度αで回転した状態を考える。図7には、回転角度αで回転した中間体42が点線を用いて模式的に図示されている。以下では、回転角度αで回転した回転状態における第1の軸受部51の中心位置をP2と記載し、第2の軸受部52の中心位置をQ2と記載する。
【0089】
回転角度αの回転状態におけるP1のXY座標は、以下のように表される。
【0090】
【数5】
・・・(3)
【0091】
また回転角度αの回転状態におけるP2のXY座標は、以下のように表される。
【0092】
【数6】
・・・(4)
【0093】
ここで、回転角度αの回転による第1の軸受部51の中心及び第2の軸受部52の中心の移動量を考える。
例えば第1の軸受部51は、原動体43の移動量(アクチュエータ31の入力変位量)の分だけ第1の方向に沿って移動する。従って、P2のX座標からP1のX座標を引いた値が、第1の方向(X方向)に沿った第1の軸受部51の中心の移動量l'となり、以下のように表される。
【0094】
【数7】
・・・(5)
【0095】
同様に、第2の軸受部52は、回転角度αの分だけ第2の方向(Y方向)に沿って移動する。従って、Q2のY座標からQ1のY座標を引いた値が、第2の方向(Y方向)に沿った第2の軸受部52の中心の移動量lとなり、以下のように表される。
【0096】
【数8】
・・・(6)
【0097】
また(5)式から、回転角度αをアクチュエータ31による入力変位量l'を用いて以下のように表すことが可能である。
【0098】
【数9】
・・・(7)
【0099】
(7)式を(6)式に代入すると、従動体44によるの第2の方向に対する出力変位量lは、入力変位量l'を用いて以下のように表される。
【0100】
【数10】
・・・(8)
【0101】
(8)式は、入力変位量l'と出力変位量lとの一般的な関係を表す式である。この式では、配置角度φと、初期角度θは定数である。従って(8)式は、入力変位量l'をパラメータとして出力変位量lを算出する式となる。つまり(8)式を用いることで、φ及びθに応じた駆動機構40の入力と出力の関係を数値的に計算可能となる。
【0102】
ここで、初期角度θ=0°とする。この場合、(7)式及び(8)式は、以下に示す(9)式及び(10)式のように書き換えられる。
【0103】
【数11】
・・・(9)
【0104】
【数12】
・・・(10)
(10)式のlrealとは、配置角度φに応じた実際の出力変位量lを意味する。
【0105】
さらに、初期角度θ=0°かつ配置角度φ=90°とする。これは、図2図3図6図7等に示す駆動機構40の構成である。この場合、(5)式及び(6)式では、回転角度αを含む項だけが残る。この結果、入力変位量l'と出力変位量lとの関係は、以下のように表される。
【0106】
【数13】
・・・(11)
(11)式のlidealとは、配置角度φ=90°での出力変位量lを意味する。
【0107】
(11)式からもわかるように、配置角度φ=90°の場合、駆動機構40における入力変位量l'と出力変位量lとの関係は、R1及びR2の比率(R2/R1)を比例係数とする線形な関係となる。すなわち、配置角度φ=90°である場合には、入力変位量l'に係数をかけるだけで出力変位量lを算出可能となる。
これは、回転角度α、すなわち入力変位量l'に依存しない関係であり、l'の大小にかかわらず出力変位量lは、l'に比例することになる。
【0108】
駆動機構40では、このように配置角度φ=90°であり、入力変位量l'と出力変位量lとが線形な関係となる状態を理想状態として、理想状態からのずれが所定の範囲に収まるように配置角度φが設定される。
上記した駆動機構40は、一方向に押して駆動されるため、その回転角度αの最大値は、大きくても90°を超えない。このため、ここでは回転角度αの絶対値が90°未満(つまり|α|<90°)である場合を想定する。
【0109】
本開示では、|α|<90°の範囲において、対象物5の実際の移動量lrealと理想状態での移動量lidealとのずれが、理想状態での移動量lidealの±10%以内に収まるように、配置角度φが設定される。この条件を書き下すと、以下のようになる。
【0110】
【数14】
・・・(12)
【0111】
(12)式を、(10)式及び(11)式を用いて書き換えると以下の条件式が得られる。
【0112】
【数15】
・・・(13)
【0113】
このように、中間体42は、配置角度φが、|α|<90°である場合に、上記(13)式を満たすように構成される。
(13)式を満たすことで、線形な状態からのずれ量(誤差)が小さくなる。具体的には、アクチュエータ31のフルストロークに対して、対象物5の移動量が±10%以内の誤差とすることができる。これにより、精度のよい移動制御が可能となり、高精度な長距離移動を実現することが可能となる。
【0114】
例えば、図6及び図7に示す構成では、回転角度α=90°となる場合に、出力変位量lが最大となる。この時φ=90°を中心として(13)式を満たす配置角度φの範囲は、83.94°≦φ≦95.48°であった。例えば配置角度φをこのような角度範囲に設定することで、対象物5の移動量の誤差を±10%以内にすることが可能である。
【0115】
また配置角度φの範囲は、好ましくは、対象物5の移動量の誤差が±5%以内、より好ましくは、対象物5の移動量の誤差が±3%以内となる範囲に設定される。移動量の誤差が±5%となる配置角度φの範囲は、(13)式の右辺の上限値を0.1から0.05に変更した不等式により規定される。同様に、移動量の誤差が±3%となる範囲は、(13)式の上限値を0.03に変更した不等式により規定される。これにより、非常に精度のよい移動制御が可能となる。
【0116】
また実際には、回転角度αが90°近くになるまで中間体42を回転させることは少なく、αが比較的小さい範囲で変化する状況が考えられる。このような状況では、(13)式を満たす範囲であれば配置角度φが90°からずれていても、入力変位量l'と出力変位量lとの関係はほとんど線形な関係と見做すことが可能となる。これにより十分に高精度な移動制御を実現することが可能となり、ワークステージ20やマスクステージ11を精密に移動させることが可能となる。
【0117】
[配置角度φが90°の場合の特性]
特に、図2等に示すように、中間体42の配置角度φが90°である場合には、上記したように、入力変位量l'と出力変位量lとが線形な関係となる。この場合、lrealとlidealとのずれは無くなり、(13)式の左辺は回転角度αによらずゼロとなる。
【0118】
出力変位量lが入力変位量l'に比例することがわかっている状態では、アクチュエータ31から読み出した入力変位量l'の値に比例係数をかけるだけで出力変位量lが得られる。逆に、要求される出力変位量lから、必要な入力変位量l'を容易に算出することが可能である。
【0119】
このように、φ=90°に設定した駆動機構40では、出力変位量lをモニタリングする必要がない。すなわち、従動体44(対象物5)の移動量や位置を検出するエンコーダ等のセンサが無くても、入力変位量l'を参照することで高精度な位置決めが可能となる。これにより、製造コストを抑えつつ高精度な長距離移動を実現することが可能となる。また、エンコーダ等を設ける必要がないため、装置サイズの小型化を図ることや、装置を組み立てやすくすることが可能となる。
【0120】
なお、配置角度φが90°である場合においても、対象物5の位置を検出するエンコーダ等を設けてもよい。これにより、対象物5の実際の位置をモニタリングしながら、より高精度な移動制御を行うことが可能となる。
【0121】
また、入力変位量l'と出力変位量lとの比例関係は、回転角度αの値によらず成立する。すなわち、アクチュエータ31が移動を始める開始位置に関係なく、その移動量に対して線形な出力が得られる。これにより、移動の開始位置等を気にすることなく、所望の出力変位量lを精度よく実現することが可能となる。
【0122】
この特性により、複数の移動ユニット30を容易に連動して動作させることが可能となる。例えば図4図5等を参照して説明したように、複数の移動ユニット30を用いて1つの対象物5を同一方向に移動させる構成を考える。この場合、各移動ユニット30の入力変位量l'は、共通の出力変位量lと比例係数とを用いて設定される。
このとき、移動ユニット30ごとに開始位置に応じた変位量の補正等を行う必要は無く、シンプルな演算処理で移動ユニット30を容易に連動させることが可能である。また、各移動ユニット30の出力変位量lがずれにくいため、対象物5が意図せず傾斜するといった事態を十分に回避することが可能となる。
【0123】
また、図2図6に示すように、本実施形態では、回転面における主軸部50の中心Oと第1の軸受部51の中心P1との距離R1は、回転面における主軸部50の中心Oと第2の軸受部52の中心Q1との距離R2よりも大きく設定される。
ここで、出力変位量lと入力変位量l'との比例係数をSとして、l=S×l'とする。(11)式より、S=R2/R1である。従って、R1>R2よりも大きい場合、Sは1未満の正数(0<S<1)となる。つまり、出力変位量lは、入力変位量l'よりも小さくなる。すなわち、入力変位量l'は一定の割合Sで縮小される。
【0124】
例えば、アクチュエータ31の移動量が線形に縮小されて出力される。このとき、アクチュエータ31の位置精度も縮小される。このため、出力変位量lの位置精度はアクチュエータ31の位置精度よりも高くなる。例えばアクチュエータ31の位置精度が±1μmである場合に、S=1/2の駆動機構40を用いることで、出力変位量lの位置精度をおよそ±0.5μmに向上することが可能である。
【0125】
このように、R1>R2とすることで、アクチュエータ31の位置精度を向上することが可能となる。これにより、例えばアクチュエータ31をそのまま使用する場合と比べて、対象物5を精度よく移動させることが可能となる。また例えば、位置精度の粗いアクチュエータ31であっても、移動ユニット30として用いることが可能となる。
なおR1>R2であることで、l'>lとなり移動量が縮小される関係は、φが90°以外の値に設定された場合にもなりたつ。
【0126】
本発明者は、配置角度φ=90°に設定した駆動機構40を露光装置100に用いる構成について検証した。この結果、駆動機構40をワークステージ20やマスクステージ11のZ方向の移動に用いることで、ステージ側にエンコーダ等を搭載することなく、5μmL/S以下の解像力を担保することが可能であることが分かった。なおL/Sは、ラインアンドスペースのことである。
このように、本駆動機構40を用いることで、エンコーダが不要で、安価であり、高精度にステージ等を長距離移動させることが可能となる。
【0127】
[駆動機構の他の構成例]
図8図11は、駆動機構の他の構成例を示す模式図である。以下では、駆動機構40の他の構成例について説明する。
【0128】
図8に示す駆動機構60では、配置角度φが90°からずれた値に設定される。また原動体43及び従動体44の動作方向はX方向及びY方向に設定され、第1の軸受部51及び第2の軸受部52は円形ベアリングとして構成される。これは、図6等に示す駆動機構40の配置角度φを変化させた構成であると言える。
【0129】
駆動機構60の配置角度φは、(13)式に示す条件を満たす範囲で設定される。このように、配置角度φが90°から多少ずれた場合であっても、上記したように、(13)式を満たすことで、線形な状態からの誤差が±10%以内に収まり、精度のよい移動制御が可能となる。
【0130】
例えば、駆動機構60に要求される精度によっては、配置角度φが90°からずれている場合でも、入出力の関係が略線形となるものとして、φ=90°の場合と同様にエンコーダ等を設けることなく駆動機構60を制御することも可能である。
また、対象物5にエンコーダを設けて対象物5の変位量を検出してもよい。あるいは、対象物5を移動させた際の位置情報を座標化(数値化)し、その数値データから現在の対象物5の位置情報を逆算するマッピング処理等が行われてもよい。このように、エンコーダやマッピング処理を用いることで、長距離移動を精度よく実現することが可能となる。
【0131】
図9に示す駆動機構70では、第1の軸受部51及び第2の軸受部52として、回転面における平面形状が長円形となる部材が用いられる。また配置角度φは90°に設定され、原動体43及び従動体44の動作方向はX方向及びY方向に設定される。これは、図6等に示す駆動機構40の第1の軸受部51及び第2の軸受部52の形状を変化させた構成であると言える。
【0132】
第1の軸受部51及び第2の軸受部52は、長円形の長軸方向及び短軸方向が主軸部50の中心Oを向くようにそれぞれ配置される。なお第1の軸受部51及び第2の軸受部52は、各中心P及びQに固定され回転しないものとする。
この場合、図9に示す初期位置では、原動体43は、比較的曲率が小さい曲面側から第1の軸受部51に当接し、従動体44は、比較的曲率が大きい曲面側から第2の軸受部52に当接する。従って、駆動機構70では、原動体43及び従動体44が各軸受部と当接する面の形状が異なる。
【0133】
なお、第1の軸受部51の中心PのX方向の移動量と、第2の軸受部52の中心QのY方向の移動量との関係は、配置角度φが90°であるため線形となる。このため、原動体43の移動量(入力変位量l')と、従動体44の移動量(出力変位量l)との関係を算出する際には、基本的には第1の軸受部51及び第2の軸受部52の形状に応じた補正のみを行えばよい。
このように、各軸受部の平面形状が円形でない場合でも、適正に長距離移動を行うことが可能である。
【0134】
図10に示す駆動機構80では、配置角度φが180°に設定される。また第1の軸受部51及び第2の軸受部52は円形ベアリングとして構成される。これは、図6等に示す駆動機構40の配置角度φを180°に設定した構成であると言える。
【0135】
なお、駆動機構80において、原動体43及び従動体44の動作方向は、X方向にそった互いに反対の方向に設定される。例えば、原動体43が図中の右方向に移動すると、中間体42の回転に伴い従動体44は図中の左方向に押される。
【0136】
図11に示す駆動機構90では、配置角度φが270°に設定される。ここで、配置角度φは、アクチュエータ31(原動体43)から押されて中間体42が回転する方向に線分OPを回転させて、線分OQと重なるまでの角度とする。また第1の軸受部51及び第2の軸受部52は円形ベアリングとして構成される。これは、図6等に示す駆動機構40の配置角度φを270°に設定した構成であると言える。
【0137】
なお、駆動機構90において、原動体43の動作方向は、X方向に設定され、従動体44の動作方向は、Y方向に設定される。例えば、原動体43が図中の右方向に移動すると、中間体42の回転に伴い第2の軸受部52は図中の下方向に移動する。このため、図中上側から第2の軸受部52に当接する従動体は、図中下側に移動する。これは、φ=90°の場合と反対の移動方向となる。
【0138】
このように、中間体は、配置角度φが、90°の整数倍になるように構成されてもよい。この場合、図10図11ではφ=90°の場合と同様に、出力変位量lと入力変位量l'とが比例係数S=R2/R1で、互いに比例した関係となる。これにより、例えば図10のようにアクチュエータ31の動作と平行な方向に対象物5を駆動することや、図11のようにφ=90°の場合と反対方向に対象物5を移動するといった構成が可能となる。
これにより、ステージの動作や、移動ユニット30の配置等の自由度を向上することが可能となる。また、これらの構成では入出力の比例関係が維持されるため、例えばエンコーダ等を用いなくても、高精度な長距離移動が可能な様々なステージを安価に実現することが可能である。
【0139】
以上、本実施形態に係る駆動機構40(駆動機構60、70、80、90)では、中間体42の本体45に第1の軸受部51及び第2の軸受部52が設けられる。また本体45は、主軸部50により回転可能に支持される。第1の軸受部51はアクチュエータ31に接続した原動体43により第1の方向に沿って押され、第2の軸受部52により押された従動体44は第2の方向に移動して対象物5を動かす。この時、主軸部50の中心Oから第1の軸受部51及び第2の軸受部52の各中心P及びQに向かう2直線のなす配置角度φが上記の(13)式を満たすように設定される。これにより、高精度な長距離移動を実現することが可能となる。
【0140】
本実施形態では、露光装置100に設けられた、ワークステージ20、マスクステージ11、及び投影レンズ12等が対象物5として移動される。本発明の駆動機構40によれば、このようなステージ等の対象物5を高精度で長距離を移動させることが可能となる。
また、このような駆動機構40を使用したステージ等では、基板等のワークWを精密に位置決めすることが可能となる。さらに、このようなステージを使用した露光装置100では、重ね合わせ精度が確保され、例えば露光処理の歩留まりの悪化を抑制することが可能となる。
【0141】
<その他の実施形態>
本発明は、以上説明した実施形態に限定されず、他の種々の実施形態を実現することができる。
【0142】
上記の実施形態では、第1の軸受部及び第2の軸受部の各構成がほぼ同様であった。これに限定されず、第1の軸受部及び第2の軸受部は、互いに異なるように構成されてもよい。例えば、各軸受部を構成するベアリングの直径や幅等のサイズ、ベアリングの種類等が互いに異なっていてもよい。また一方の軸受部をベアリングにして、もう一方の軸受部に他の形状の部材を用いるといったことも可能である。
【0143】
また第1の軸受部及び第2の軸受部に当接する原動体及び従動体の構成も限定されない。例えば原動体の第1の接触面及び従動体の第2の接触面の少なくとも一方の面が、移動方向に直交する状態から傾いた平面として構成されてもよい。或いは第1の接触面及び第2の接触面として、ベアリング等が用いられてもよい。この場合、第1の軸受部及び第2の軸受部は平面であってもよい。
この他、入力側(原動体及び第1の軸受部)の構成や、出力側(第2の軸受部及び従動体)の構成は限定されず、中間体を回転可能な任意の構成が用いられてよい。
【0144】
上記の実施形態では、主に露光装置において露光光の光軸方向(Z方向)に対象物を移動する構成について説明した。これに限定されず、本発明に係る駆動機構は、光軸方向と直交する平面方向(X方向及びY方向)に対象物(ワークステージ、マスクステージ、投影レンズ等)を移動する機構として用いられてもよい。これにより、長距離の平面移動を高精度に実現することが可能となる。
なお、ここで記載したX方向、Y方向、及びZ方向は、図2を参照して説明した各方向とは無関係である。
【0145】
本開示において、説明の理解を容易とするために、「略」「ほぼ」「おおよそ」等の文言が適宜使用されている。一方で、これら「略」「ほぼ」「おおよそ」等の文言を使用する場合と使用しない場合とで、明確な差異が規定されるわけではない。
すなわち、本開示において、「中心」「中央」「均一」「等しい」「同じ」「直交」「平行」「対称」「延在」「軸方向」「円柱形状」「円筒形状」「リング形状」「円環形状」等の、形状、サイズ、位置関係、状態等を規定する概念は、「実質的に中心」「実質的に中央」「実質的に均一」「実質的に等しい」「実質的に同じ」「実質的に直交」「実質的に平行」「実質的に対称」「実質的に延在」「実質的に軸方向」「実質的に円柱形状」「実質的に円筒形状」「実質的にリング形状」「実質的に円環形状」等を含む概念とする。
例えば「完全に中心」「完全に中央」「完全に均一」「完全に等しい」「完全に同じ」「完全に直交」「完全に平行」「完全に対称」「完全に延在」「完全に軸方向」「完全に円柱形状」「完全に円筒形状」「完全にリング形状」「完全に円環形状」等を基準とした所定の範囲(例えば±10%の範囲)に含まれる状態も含まれる。
従って、「略」「ほぼ」「おおよそ」等の文言が付加されていない場合でも、いわゆる「略」「ほぼ」「おおよそ」等を付加して表現され得る概念が含まれ得る。反対に、「略」「ほぼ」「おおよそ」等を付加して表現された状態について、完全な状態が必ず排除されるというわけではない。
【0146】
本開示において、「Aより大きい」「Aより小さい」といった「より」を使った表現は、Aと同等である場合を含む概念と、Aと同等である場合を含なまい概念の両方を包括的に含む表現である。例えば「Aより大きい」は、Aと同等は含まない場合に限定されず、「A以上」も含む。また「Aより小さい」は、「A未満」に限定されず、「A以下」も含む。
本技術を実施する際には、上記で説明した効果が発揮されるように、「Aより大きい」及び「Aより小さい」に含まれる概念から、具体的な設定等を適宜採用すればよい。
【0147】
以上説明した本技術に係る特徴部分のうち、少なくとも2つの特徴部分を組み合わせることも可能である。すなわち各実施形態で説明した種々の特徴部分は、各実施形態の区別なく、任意に組み合わされてもよい。また上記で記載した種々の効果は、あくまで例示であって限定されるものではなく、また他の効果が発揮されてもよい。
【符号の説明】
【0148】
11…マスクステージ
12…投影レンズ
20…ワークステージ
30…移動ユニット
31…アクチュエータ
40、60、70、80、90…駆動機構
41…支持体
42…中間体
43…原動体
44…従動体
45…本体
50…主軸部
51…第1の軸受部
52…第2の軸受部
100…露光装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図8
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図11