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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024059116
(43)【公開日】2024-05-01
(54)【発明の名称】X線CT装置及びその制御方法
(51)【国際特許分類】
   H01J 35/06 20060101AFI20240423BHJP
   A61B 6/40 20240101ALI20240423BHJP
   G01N 23/046 20180101ALI20240423BHJP
   A61B 6/03 20060101ALI20240423BHJP
   H01J 35/10 20060101ALN20240423BHJP
   H01J 35/24 20060101ALN20240423BHJP
【FI】
H01J35/06 B
H01J35/06 H
A61B6/03 320B
A61B6/03 320J
G01N23/046
A61B6/03 330Z
H01J35/10 A
H01J35/24
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022166568
(22)【出願日】2022-10-18
(71)【出願人】
【識別番号】320011683
【氏名又は名称】富士フイルムヘルスケア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】高橋 勲
(72)【発明者】
【氏名】石川 卓
【テーマコード(参考)】
2G001
4C093
【Fターム(参考)】
2G001AA01
2G001BA11
2G001CA01
2G001DA09
2G001HA14
2G001JA02
2G001SA02
4C093AA22
4C093CA08
4C093EA03
4C093EA13
4C093FA16
4C093FA55
(57)【要約】
【課題】X線焦点を移動させる場合であっても焦点ぼけを低減できるX線CT装置とその制御方法を提供する。
【解決手段】電子線を生成する陰極と前記電子線が衝突することでX線を放射する陽極とを備えるX線管と、前記X線を検出するX線検出器と、前記X線管と前記X線検出器とを被検体の周囲で回転させる回転板と、前記回転板の回転中に前記X線検出器によって取得される投影データに基づいて前記被検体の断層画像を生成する画像処理部を備えるX線CT装置であって、前記陰極は、前記陽極と対向する面内に配列され前記電子線を放出する複数の電子源を有し、前記陽極におけるX線焦点の目標位置に基づいて、電子線が放出される電子源の位置を選択的に制御されることを特徴とする。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子線を生成する陰極と前記電子線が衝突することでX線を放射する陽極とを備えるX線管と、前記X線を検出するX線検出器と、前記X線管と前記X線検出器とを被検体の周囲で回転させる回転板と、前記回転板の回転中に前記X線検出器によって取得される投影データに基づいて前記被検体の断層画像を生成する画像処理部を備えるX線CT装置であって、
前記陰極は、前記陽極と対向する面内に配列され前記電子線を放出する複数の電子源を有し、前記陽極におけるX線焦点の目標位置に基づいて、電子線が放出される電子源の位置を選択的に制御されることを特徴とするX線CT装置。
【請求項2】
請求項1に記載のX線CT装置であって、
前記陰極は、前記X線の投影角度に応じて設定される目標位置に基づいて、電子線が放出される電子源の位置を選択的に制御されることを特徴とするX線CT装置。
【請求項3】
請求項2に記載のX線CT装置であって、
前記X線焦点の移動にともなって移動させられるコリメータをさらに備えることを特徴とするX線CT装置。
【請求項4】
請求項2に記載のX線CT装置であって、
前記X線焦点の移動にともなって、前記X線管を移動させるX線管移動部をさらに備えることを特徴とするX線CT装置。
【請求項5】
請求項1に記載のX線CT装置であって、
前記陰極は、前記陽極の熱膨張に応じて設定される目標位置に基づいて、電子線が放出される電子源の位置を選択的に制御されることを特徴とするX線CT装置。
【請求項6】
請求項1に記載のX線CT装置であって、
前記陰極は、前記回転板の回転方向において交互に設定される目標位置に基づいて、電子線が放出される電子源の位置を選択的に制御されることを特徴とするX線CT装置。
【請求項7】
請求項1に記載のX線CT装置であって、
前記陰極は、電界集中によって電子を電界放出する冷陰極を備えることを特徴とするX線CT装置。
【請求項8】
請求項1に記載のX線CT装置であって、
電子線が放出される電子源の位置を選択的に制御する制御部をさらに備えることを特徴とするX線CT装置。
【請求項9】
電子線を生成する陰極と前記電子線が衝突することでX線を放射する陽極とを備えるX線管と、前記X線を検出するX線検出器と、前記X線管と前記X線検出器とを被検体の周囲で回転させる回転板と、前記回転板の回転中に前記X線検出器によって取得される投影データに基づいて前記被検体の断層画像を生成する画像処理部を備えるX線CT装置の制御方法であって、
前記陰極は、前記陽極と対向する面内に配列され前記電子線を放出する複数の電子源を有し、
前記陽極におけるX線焦点の目標位置に基づいて、電子線が放出される電子源の位置を選択的に制御することを特徴とする制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、X線CT(Computed Tomography)装置に係り、特にX線管の制御に関する。
【背景技術】
【0002】
X線CT装置は、被検体にX線を照射するX線管と被検体を透過したX線を検出するX線検出器とを被検体の周囲で回転させることで多方向から得られる投影データを用いて、被検体の断層画像を生成する。生成された断層画像は、被検体の中の臓器形状を描写し、画像診断に使用される。
【0003】
X線管は、真空中に保持される陰極と陽極を備え、陰極から放出される電子線を陽極に衝突させることにより、電子線の衝突点であるX線焦点からX線を放射する。陽極に衝突する電子線のほとんどのエネルギーは熱になるので、陽極の過熱溶融を防止するため、回転可能な陽極や、X線焦点を移動させる構成を有するX線管がある。なおX線焦点を移動させる場合、X線焦点の見かけ上のサイズが大きくなり、断層画像の解像度が劣化する。
【0004】
特許文献1には、X線焦点を連続的かつ周期的に移動させるX線管において、陽極を溶融させない移動速度と、所定の解像度を満たす移動速度とから、撮影目的に応じてのX線焦点の移動速度を決定することが開示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2020-115975号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら特許文献1では、陰極から放出される電子の軌道を電界や磁界によって変化させるため、X線焦点の位置によってX線焦点のサイズが異なり、焦点ぼけが生じることがある。焦点ぼけは断層画像の画質を劣化させる。
【0007】
そこで本発明は、X線焦点を移動させる場合であっても焦点ぼけを低減できるX線CT装置とその制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために本発明は、電子線を生成する陰極と前記電子線が衝突することでX線を放射する陽極とを備えるX線管と、前記X線を検出するX線検出器と、前記X線管と前記X線検出器とを被検体の周囲で回転させる回転板と、前記回転板の回転中に前記X線検出器によって取得される投影データに基づいて前記被検体の断層画像を生成する画像処理部を備えるX線CT装置であって、前記陰極は、前記陽極と対向する面内に配列され前記電子線を放出する複数の電子源を有し、前記陽極におけるX線焦点の目標位置に基づいて、電子線が放出される電子源の位置を選択的に制御されることを特徴とする。
【0009】
また本発明は、電子線を生成する陰極と前記電子線が衝突することでX線を放射する陽極とを備えるX線管と、前記X線を検出するX線検出器と、前記X線管と前記X線検出器とを被検体の周囲で回転させる回転板と、前記回転板の回転中に前記X線検出器によって取得される投影データに基づいて前記被検体の断層画像を生成する画像処理部を備えるX線CT装置の制御方法であって、前記陰極は、前記陽極と対向する面内に配列され前記電子線を放出する複数の電子源を有し、前記陽極におけるX線焦点の目標位置に基づいて、電子線が放出される電子源の位置を選択的に制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、X線焦点を移動させる場合であっても焦点ぼけを低減できるX線CT装置とその制御方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】X線CT装置の全体構成を示す図である。
図2】X線管の全体構成の一例を示す図である。
図3】陰極の構成例を示す図である。
図4】実施例1の処理の流れの一例を示す図である。
図5】投影角度に対する電子線放出位置の選択的制御について説明する図である。
図6】X線焦点の位置に対するコリメータの位置制御について説明する図である。
図7】X線焦点の位置に対するX線管の位置制御について説明する図である。
図8】陽極の熱膨張による焦点移動に対する電子線放出位置の選択的制御について説明する図である。
図9】フライングフォーカルスポットにおける電子線放出位置の選択的制御について説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面に従って本発明に係るX線CT装置の好ましい実施形態について説明する。なお、以下の説明及び添付図面において、同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略することにする。
【0013】
図1を用いてX線CT装置1の全体構成の一例について説明する。X線CT装置1は、スキャンガントリ部100と操作ユニット120を備える。
スキャンガントリ部100は、X線管101、回転板102、コリメータ103、X線検出器106、データ収集装置107、寝台装置105、ガントリ制御部108、寝台制御部109、X線制御部110を備える。X線管101は寝台装置105に載置された被検体10にX線を照射する装置である。コリメータ103はX線の照射範囲を制限する装置である。回転板102は、寝台装置105に載置された被検体10が入る開口部104を有するとともに、X線管101とX線検出器106を搭載し、X線管101とX線検出器106を被検体10の周囲で回転させる。
【0014】
X線検出器106は、X線管101と対向配置され、被検体10を透過したX線を検出することにより透過X線の空間的な分布を計測する装置である。X線検出器106の検出素子は、回転板102の回転方向と回転軸方向との2次元に配列される。データ収集装置107は、X線検出器106で検出されたX線量をデジタルデータとして収集する装置である。
【0015】
ガントリ制御部108は回転板102の回転及び傾斜を制御する装置である。寝台制御部109は、寝台装置105の上下前後左右動を制御する装置である。X線制御部110は、X線管101に入力される電力を制御する装置である。ガントリ制御部108、寝台制御部109、X線制御部110は、例えばMPU(Micro Processing Unit)である。
【0016】
操作ユニット120は、入力部121、画像処理部122、表示部125、記憶部123、システム制御部124を備える。入力部121は、被検体10の氏名、検査日時、撮影条件等を入力するための装置であり、具体的にはキーボードやポインティングデバイス、タッチパネル等である。画像処理部122は、データ収集装置107から送出される計測データを演算処理して断層画像を再構成したり、断層画像に様々な画像処理をしたりする装置であり、例えばGPU(Graphics Processing Unit)やMPUである。表示部125は、画像処理部122で生成された断層画像等を表示する装置であり、具体的には液晶ディスプレイやタッチパネル等である。記憶部123は、データ収集装置107で収集されたデータや画像処理部122で生成された断層画像等を記憶する装置であり、具体的にはHDD(Hard Disk Drive)等である。システム制御部124は、各部を制御する装置であり、例えばCPU(Central Processing Unit)である。
【0017】
入力部121から入力された撮影条件、特にX線管電圧やX線管電流などに基づきX線制御部110がX線管101に入力される電力を制御することにより、X線管101は撮影条件に応じたX線を被検体10に照射する。X線検出器106は、X線管101から照射され被検体10を透過したX線を、二次元配列された検出素子で検出し、透過X線の分布を計測する。回転板102はガントリ制御部108により制御され、入力部121から入力された撮影条件、特に回転速度等に基づいて回転する。寝台装置105は寝台制御部109によって制御され、入力部121から入力された撮影条件、特にらせんピッチ等に基づいて動作する。
【0018】
X線管101からのX線照射とX線検出器106によるX線計測が回転板102の回転とともに繰り返されることにより、多方向からの投影データが取得され、取得された投影データは画像処理部122に送信される。画像処理部122は送信された多方向からの投影データを逆投影処理することにより断層画像を再構成する。再構成された断層画像は表示部125に表示される。
【0019】
図2を用いて、X線管101の全体構成の一例について説明する。X線管101は、陰極201と陽極202と外囲器203と放射窓208を有する。陰極201は電子線204を生成するものであり、例えば電界集中によって電子が電界放出される冷陰極を備える。陰極201の詳細な構成は図3を用いて後述される。
【0020】
陽極202は陰極201に対し正の電位が印加されるものであり、例えば円板形状であって、ターゲットと陽極母材とを備える。ターゲットはタングステンなどの高融点で原子番号の大きい材質で構成される。ターゲットに陰極201からの電子線204が衝突することにより、電子線204の衝突点であるX線焦点からX線が放射される。陽極母材は、銅などの熱伝導率の高い材質からなり、ターゲットを保持する。ターゲットと陽極母材とは同電位である。
【0021】
陽極202に衝突する電子線204のほとんどのエネルギーは熱となるので、陽極202の過熱溶融を防止するため、陽極202は回転可能であっても良い。例えば、陽極202は回転支持部205によって回転可能に支持され、回転軸206の周りを回転する。すなわち、陽極202が回転することにより、電子線204の衝突点であるX線焦点が常に移動するので、X線焦点の温度をターゲットの融点より低く保つことができ、陽極202の過熱溶融を防止できる。
【0022】
外囲器203は陰極201と陽極202の間を電気的に絶縁するために、陰極201と陽極202を真空雰囲気中に保持するものである。放射窓208は、X線焦点から放射されるX線の一部であるX線207を被検体10に向けて照射するために外囲器203に設けられるものであり、例えばベリリウムなどの原子番号の小さい材質で構成される。
【0023】
図3を用いて、陰極201の構成例について説明する。陰極201は、複数の電子源211とゲート電極212を有する。電子源211は電界集中によって電子が電界放出されるように、ニッケルやモリブデンなどの金属やCNT(Carbon Nano-Tube)を鋭利に尖らせたものであり、陽極202と対向する面内に配列される。
【0024】
ゲート電極212は、電子源211の尖端部付近に配置されるとともに、スイッチ214を介してゲート電源213に接続される。スイッチ214がオンになると、ゲート電極212にゲート電源213から電圧が印加され、電圧が印加されたゲート電極212の付近にある電子源211に電界が集中し、電界集中した電子源211から電子が電界放出されることによって電子線204が生成される。すなわち、複数のスイッチ214のオン・オフ制御により、電子線204が放出される電子源211の位置を選択的に制御することができる。なおスイッチ214のオン・オフ制御は、X線制御部110やシステム制御部124によって実施される。
【0025】
図3には、7つの電子源211の中から選択された上側4つの電子源211から放出される電子線204が例示される。上側4つの電子源211から放出された電子線204は、陽極202上の第一の焦点301に衝突し、X線207を発生させる。なおスイッチ214が切り替えられ、下側4つの電子源211から電子線204が放出される場合は、第二の焦点302からX線207が発生する。すなわち、電子線204が放出される電子源211の位置を選択的に制御することにより、電子線204の軌道を曲げることなくX線焦点を移動させることができる。また電子線204の軌道を曲げずにX線焦点を移動させるので、移動後のX線焦点のサイズは移動前のサイズと変わらず、焦点ぼけを防止できる。
【0026】
図4を用いて、実施例1で実行される処理の流れの一例についてステップ毎に説明する。
【0027】
(S401)
システム制御部124は、ユーザが入力部121を介して入力した撮影指示を受信する。なおユーザは、撮影指示とともに撮影条件を入力部121へ入力する。
【0028】
(S402)
システム制御部124は、S401にて入力された撮影条件に含まれるX線焦点の目標位置を取得する。例えば、X線の投影角度に応じて設定されたX線焦点の目標位置が取得される。
【0029】
(S403)
システム制御部124またはX線制御部110は、S402にて取得されたX線焦点の目標位置に基づいて、電子線204が放出される電子源211の位置を選択的に制御する。
【0030】
図5を用いて、投影角度に対する電子線放出位置の選択的制御について説明する。X線の投影角度に応じてX線焦点の目標位置が設定された場合、各目標位置に対応する電子源211から電子線204が放出されるように、システム制御部124またはX線制御部110はスイッチ214を制御する。例えば、0時位置にあるX線管101に対して第一の目標位置501が設定された場合、第一の目標位置501に到達する電子線204を放出する電子源211から電子線204が放出されるように、スイッチ214が制御される。また6時位置にあるX線管101に対して第二の目標位置502が設定された場合、第二の目標位置502に対応する電子源211から電子線204が放出される。さらに、3時位置と9時位置にあるX線管101に対して、第一の目標位置501と第二の目標位置502の間の第三の目標位置503が設定された場合、第三の目標位置503に対応する電子源211から電子線204が放出される。各投影角度に対して設定された目標位置に向けて電子線204が放出されることにより、各目標位置から被検体10にX線が照射される。
【0031】
図4の説明に戻る。
【0032】
(S404)
X線検出器106は、S403にて照射されたX線を検出する。検出されたデータは投影データとして画像処理部122へ送信される。なお、X線焦点の移動にともなって、コリメータ103やX線管101の位置を制御しても良い。
【0033】
図6を用いて、X線焦点の位置に対するコリメータ103の位置制御について説明する。システム制御部124は、X線焦点の移動に同期してコリメータ103の位置を制御し、X線207の照射領域を常にX線検出器106に対応させる。図6には、第一の焦点301から照射されるX線207の照射領域を制限するコリメータ103が実線で示され、第二の焦点302からのX線207の照射領域を制限するコリメータ103が点線で示される。X線207の照射領域を常にX線検出器106に対応させることにより、照射領域を広げずに済むため、被検体10の無効被ばくを低減できる。
【0034】
図7を用いて、X線焦点の位置に対するX線管101の位置制御について説明する。X線管101にはX線管101の位置をZ方向に移動させるX線管移動部700が設けられる。システム制御部124は、X線焦点の移動に同期してX線管移動部700を制御し、X線検出器106から見えるX線焦点の位置を一定に保たせる。X線検出器106から見えるX線焦点の位置を一定に保つことにより、X線焦点を移動させる場合であっても断層画像を生成する処理を容易にすることができる。
【0035】
図4の説明に戻る。
【0036】
(S405)
システム制御部124は、全投影データを取得したか否かを判定する。全投影データが取得されていればS406に処理が進められ、そうでなければS402に処理が戻される。
【0037】
(S406)
画像処理部122は、S404にて取得された投影データを用いて断層画像を生成する。なお、X線焦点の移動に応じて断層画像が生成されても良い。生成された断層画像は、表示部125に表示されたり、記憶部123に保管されたりする。
【0038】
図4を用いて説明した処理の流れによれば、例えばX線の投影角度に応じてX線焦点を移動させる場合であっても、X線焦点の移動前後でX線焦点のサイズが一定に保たれ、焦点ぼけが抑制されるので、断層画像の画質を維持することができる。なお電子線204の放出位置の選択的制御はX線の投影角度に対応させることに限定されない。
【0039】
図8を用いて、陽極202の熱膨張による焦点移動に対する電子線204の放出位置の選択的制御について説明する。電子線204の衝突によって加熱される陽極202が熱膨張すると、X線焦点の位置が移動することがある。図8には、陽極202が熱膨張することによって、初期焦点801の位置から移動した熱膨張後の焦点802が例示される。焦点の移動は断層画像の画質を劣化させるので、熱膨張後の焦点802の位置は補正されることが望ましい。
【0040】
そこで陽極202の熱膨張による焦点の移動量を計測し、計測された移動量に基づいて電子線204の放出位置を選択的に制御することにより、焦点の位置が補正される。例えば、7つの電子源211の中の上側4つから電子線204が放出されたときの熱膨張後の焦点802の位置は、スイッチ214を切り替え、下側4つの電子源211から電子線204を放出させることによって、補正後の焦点803の位置に補正される。この場合、補正後の焦点803の位置が目標位置として設定される。熱膨張後の焦点802から補正後の焦点803への位置の補正は、電子線204の軌道を曲げずに済む、電子線204の放出位置の選択的制御によってなされるので、X線焦点のサイズが一定に保たれ、焦点ぼけが抑制される。
【0041】
なお、電子線204の放出位置の選択的制御は、短時間で計測された焦点の移動量に基づいて実施されてもよいし、回転板102が半周あるいは一周する間に計測された焦点の移動量に基づいて実施されても良い。また計測された移動量がわずかであり、予め定められた閾値以下である場合は、電子線204の放出位置の選択的制御を実施しなくても良い。さらに、X線照射の履歴から予測される焦点位置に基づいて、電子線204の放出位置の初期値を予め設定しても良い。
【0042】
図9を用いて、フライングフォーカルスポット(FFS:Flying Focal Spot)における電子線204の放出位置を選択的に制御することについて説明する。FFSでは、断層画像の解像度を向上させるために、スキャン中にX線焦点が回転板102の回転方向において周期的に移動させられる。すなわち図9に示される第一の焦点301と第二の焦点302との位置が目標位置として交互に切り替えられる。なおX線は図9の紙面と直交する方向に照射され、複数の電子源211は回転板102の回転方向に配列される。
【0043】
FFSにおいても、目標位置に対応する電子源211から電子線204を放出させることによってX線焦点の位置を移動させるので、移動前後でX線焦点のサイズが一定に保たれ、焦点ぼけが抑制される。
【0044】
以上、本発明の実施形態について説明した。なお本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素を適宜組み合わせても良い。さらに、上記実施形態に示される全構成要素からいくつかの構成要素を削除しても良い。
【符号の説明】
【0045】
1:X線CT装置、10:被検体、100:スキャンガントリ部、101:X線管、102:回転板、103:コリメータ、104:開口部、105:寝台装置、106:X線検出器、107:データ収集装置、108:ガントリ制御部、109:寝台制御部、110:X線制御部、120:操作ユニット、121:入力部、122:画像処理部、123:記憶部、124:システム制御部、125:表示部、201:陰極、202:陽極、203:外囲器、204:電子線、205:回転支持部、206:回転軸、207:X線、208:放射窓、211:電子源、212:ゲート電極、213:ゲート電源、214:スイッチ、301:第一の焦点、302:第二の焦点、501:第一の目標位置、502:第二の目標位置、503:第三の目標位置、700:X線管移動部、801:初期焦点、802:熱膨張後の焦点、803:補正後の焦点
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9