(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024059118
(43)【公開日】2024-05-01
(54)【発明の名称】音響診断センサユニット
(51)【国際特許分類】
G01H 3/00 20060101AFI20240423BHJP
【FI】
G01H3/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022166571
(22)【出願日】2022-10-18
(71)【出願人】
【識別番号】591032703
【氏名又は名称】群馬県
(71)【出願人】
【識別番号】596041227
【氏名又は名称】石坂産業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 豊
(72)【発明者】
【氏名】坂田 知昭
(72)【発明者】
【氏名】小松 秀和
(72)【発明者】
【氏名】岩沢 知幸
(72)【発明者】
【氏名】狩野 幹大
(72)【発明者】
【氏名】田島 創
【テーマコード(参考)】
2G064
【Fターム(参考)】
2G064AA12
2G064AB01
2G064AB02
2G064AB15
2G064AB22
2G064BA07
2G064BA08
2G064BA21
2G064CC41
(57)【要約】
【課題】従来の機器の音響診断に用いられる音響診断センサユニットの課題である周囲の雑音除去を解決し、ノイズキャンセリング機能が高く、且つ構造が簡便な音響診断センサユニットを提供する。
【解決方法】ケーシング10と、該ケーシング10の底面穿孔部11cに配置された弾性を有する集音体40と、集音体40の両端面を貫通する孔部40cの空間に音響センサ受信部52aが露出するように配置された音響センサ基板ユニット50と、ケーシング10の底面穿孔部11c近傍に集音体40と並列に配置された永久磁石の保持体60とで構成され、保持体60の外郭側の端面60aに対して集音体40の外側の端面40aが外側にオフセット配置された構造とする。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
底面と、該底面から立設し壁面で囲うように形成した側壁を備え、前記底面を貫通するように設けられた穿孔部を有するケーシングと、
該ケーシングの前記側壁の開口部を密封するように覆うケーシング蓋と、
前記ケーシングの前記穿孔部に圧嵌され、一方の端面から他方の端面まで貫通するように設けられた孔部を備えた弾性を有する柱状の集音体と、
基板に音響センサ、ケーブル接続部を設けた音響センサ基板ユニットと、
前記ケーシングの前記底面に前記集音体と隣接して配置された永久磁石の保持体と、
を具備し、前記音響センサの音響受信部が前記集音体を貫通する前記孔部の空間に露出するように配置されるとともに、前記集音体の外側端面が前記保持体の外側端面に対して外側にオフセット配置されていることを特徴とする音響診断センサユニット。
【請求項2】
前記集音体が独立気泡の発泡体であることを特徴とする請求項1に記載の音響診断センサユニット。
【請求項3】
前記集音体が独立気泡の熱可塑性樹脂発泡体であることを特徴とする請求項2に記載の音響診断センサユニット。
【請求項4】
前記集音体が測定対象面に対向する側の端面の少なくとも一部が弾性を有する円錐状の円盤部を有し、前記集音体の他方の端面まで貫通するように設けられた前記孔部に繋がるように円錐状のベル面を形成したことを特徴とする請求項1に記載の音響診断センサユニット。
【請求項5】
前記保持体が前記集音体を囲うように設けられた環状の保持体であることを特徴とする請求項1に記載の音響診断センサユニット。
【請求項6】
前記集音体の外周に、さらに該集音体を囲うように連続気泡の発泡体からなる吸音体を備えたことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載の音響診断センサユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機器の音響診断センサユニットの構造に関するものであり、特に回転機械などの動力を使う機器の音響診断を行う場合に使用する音響診断センサユニットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
解体した建物から出るコンクリート片や瓦片を細かく砕く破砕プラントや、発電プラント、化学プラント等では、回転機械の長寿命化や信頼性確保のため、音響や振動を計測し異常を検知する異常診断装置が設置されている。
【0003】
特許文献1は回転機器の音響・振動診断装置の第1例であって、回転機器である冷凍圧縮機周囲の音圧もしくは振動、電流値の状態量を検出する脈動状態量検出手段を備え、圧縮機の異常を判断する機器診断装置が示されている。
【0004】
特許文献2は回転機械の音響・振動診断装置の第2例であって、音響センサにより音響信号を受けて分析し音響データを処理し、一方で振動センサにより振動信号を受けて分析し振動データを処理し、これらに基づいて確認診断を行う回転機械の診断装置が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4265982号公報
【特許文献2】特許第3393908号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
先行技術において、音響を計測するために用いられる音響センサは回転機器に対して非接触に設置されているが、診断対象とする回転機器の周囲からの雑音が生じない環境であれば、診断対象とする回転機器の音響のみを計測可能なため実用上支障はなかった。
【0007】
しかしながら、破砕プラントでは一連の作業工程の中で複数の回転機器を連続的に稼働して操業している状態が想定される。また、発電プラント、化学プラントにおいても複数の回転機器を同フロアに設置、稼働して操業することが想定される。したがって、音響診断を精度良く実施するためには対象外の回転機器から発する音は雑音としてノイズキャンセリングが必要になる。
【0008】
ノイズキャンセリングの方法については、例えば雑音と逆相の音を加えて雑音をキャンセルするアクティブノイズキャンセリング、物理的な遮音で雑音を除去するパッシブノイズキャンセリングが考えられる。特許文献1および特許文献2いずれにおいても、非接触の音響センサを設置・使用している。そのため、アクティブノイズキャンセリングによる雑音除去が必要になる。しかしながら、破砕プラントのようなランダムで複雑な音を発する回転機器の場合、アクティブノイズキャンセリングは困難であり、雑音除去により精度良い音響診断ができないという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、前述の技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、構造が簡便であり、且つ高いノイズキャンセリング性能を備える、音響診断センサユニットを提供することを目的とする。
【0010】
本発明に係る第1の解決手段は、底面と、該底面から立設し壁面で囲うように形成した側壁を備え、底面を貫通するように設けられた穿孔部を有するケーシングと、該ケーシングの側壁の開口部を密封するように覆うケーシング蓋と、ケーシングの穿孔部に圧嵌され、一方の端面から他方の端面まで貫通するように設けられた孔部を備えた弾性を有する略柱状の集音体と、音響センサを設けた音響センサ基板ユニットと、ケーシングの底面に集音体と隣接して配置された永久磁石の保持体とを具備し、
音響センサの音響受信部が集音体を貫通する孔部の空間に露出するように配置されるとともに、集音体の外側端面が保持体の外側端面に対して外側にオフセット配置されていることを特徴としている音響診断センサユニットである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、音響センサ基板ユニットと音響測定対象物の測定対象面が弾性を有する集音体を挟んで集音体を圧縮しながら密着することで外部の雑音を確実に除去するとともに、音響測定対象物の音響が集音体の孔部から音響センサまでの集音経路を通して伝達されるため音響測定対象物の音響だけを測定することが可能である。つまり、構造が簡便であり、且つ高いノイズキャンセリング性能を備える音響診断センサユニットを提供することができる。
【0012】
(課題を解決するためのその他の手段)
本発明に係る第1の手段の変形手段としては、集音体は音響測定対象物の測定対象面に対向する側の面が弾性を有する円錐状の円盤部を有し、集音体を貫通する孔に繋がるように円錐状のベル面を形成したことである。
【0013】
第1の手段の変形手段によれば、集音体の円錐状の円盤部が大きく変形することが可能であり、測定対象面に対向する保持体の面と集音体の円錐状の面との段差距離の設定は更に大きくすることができ、製造上の寸法管理がしやすくなる効果があるだけでなく、聴診器構造のベル面を設けて集音することで比較的低周波の音も拾うことが可能となる効果がある。
【0014】
本発明に係る第1の手段の他の変形手段としては、保持体が集音体を囲うように設けられた環状の保持体であることである。第1の手段の他の変形手段によれば、他の機器から発する騒音等外部からの雑音は先ず環状の保持体にて反射され、一部が保持体の端面と測定対象面の隙間から侵入したとしても、集音体が弾性により押し付けられて遮音されているため、第1の手段に比べてより一層遮音性が向上する。
【0015】
本発明に係る第2の解決手段は、集音体の外周に該集音体を囲うようにさらに連続気泡の発泡体からなる吸音体を備えたことである。第2の解決手段によれば、他の機器から発する騒音等外部からの雑音は、先ず環状の吸音体にて連続気泡セル内で反射を繰り返し減衰され吸音される。さらに、吸音体を通過した一部の雑音が独立気泡の集音体で反射され遮音されるため、第1の手段に比べてより一層遮音性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の音響診断センサユニットの第1の実施形態の全体を表す斜視図である。
【
図5】第1の実施形態の音響診断センサユニットを音響測定対象物である機器の測定対象面に固定した状態を示す図である。
【
図7】本発明の音響診断センサユニットの分解斜視図である。
【
図8】
図7とは異なる方向から斜視した分解斜視図である。
【
図9】本発明の第1の実施形態において集音体の他の変形例1であり、要部概略断面図である。
【
図10】本発明の第1の実施形態において集音体の変形例2を示す音響診断センサユニット全体を表す斜視図である。
【
図12】
図10に示す音響診断センサユニットを測定対象面に固定した状態の断面を示す図である。
【
図13】本発明の第1の実施形態において集音体の他の変形例3であり、集音体の構成を示す分解斜視図である。
【
図14】本発明の第1の実施形態において保持体の他の変形例であり、音響診断センサユニットの全体を表す斜視図である。
【
図15】
図14の音響診断センサユニットを測定対象面に固定した状態の断面を示す図である。
【
図16】本発明の音響診断センサユニットの第2の実施形態の全体を表す斜視図である。
【
図18】本発明の第2の実施形態における音響診断センサユニットを測定対象面に固定した状態の断面を示す図である。
【
図19】本発明の第1の実施形態の音響診断センサユニットの実施例を示す写真である。
【
図20】音響測定対象の回転機器の音響を模してホワイトノイズ発生源を内部に設置した板金筐体に、本発明の第1の実施形態の音響診断センサユニットを吸着固定した状態を示す写真である。
【
図21】本発明の実施例の音響診断センサユニットを使用した音響測定試験について、板金筐体に密着させた状態と密着させない状態において、板金筐体の外部から雑音に相当するホワイトノイズを発生させたときの、音響測定結果を示すグラフである。
【
図22】本発明の実施例の音響診断センサユニットを使用した音響測定試験について、板金筐体に密着させた状態と密着させない状態において、板金筐体の内部から音響測定対象の回転機器の音響を模したホワイトノイズを発生させたときの、音響測定結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。まず、本発明の実施形態の音響診断センサユニットの構成について
図1~
図4の斜視図、断面図、断面詳細図、および
図7~
図8の分解斜視図を参照して説明する。
【0018】
図1~
図4、
図7~
図8に示すように、音響診断センサユニット100は、底面11と、側壁面12a、12b、12c、12dで囲うように構成された側壁12とで形成されるケーシング10を有す。ケーシング10の底面11の略中央部には底面外面11aから底面内面11bに貫通する孔11cが設けられている。また、孔11cには孔11cよりもわずかに直径の大きな、例えば発泡スチロール(発泡ポリスチレン樹脂)等の熱可塑性樹脂発泡体である円筒状(円柱)の集音体40が、端面40bとケーシング10の底面内面11bが面一となるよう圧入配置されている。さらに、集音体40の略中央部には端面40a、40bに貫通する孔部40cが設けられている。
【0019】
ここで、集音体40の材質は熱可塑性樹脂発泡体で説明したが、弾性を有する材料ならばニトリルゴムやシリコーンゴムのような熱硬化性エラストマー(合成ゴム)、熱可塑性エラストマー、独立気泡のウレタンゴム発泡体(ウレタンフォーム)等であってもよい。なお、連続気泡のウレタンゴム発泡体等は連続セルによる吸音特性は優れているが遮音特性(音の反射特性)に劣り、外部の雑音を拾い易く好ましくない。また、集音体40は円筒状(円柱)で説明するが柱状ならば多角形柱や楕円柱でも構わない。
【0020】
底面内面11bの略中央には基板51上に音響センサ52および通信ケーブル接続部(コネクタなど)53等を備え、音響を測定しその情報を図示しない通信ケーブルを経由してマイクロコンピュータ(マイコン)に転送する音響センサ基板ユニット50が配置されている。音響センサ基板ユニット50の基板51の平面部51aは集音体40の端面40bに密着しており、さらに、平面部51a、平面部51bを貫通する孔51cが形成され、平面部51b側に、音響受信部52aが孔51cに臨むように音響センサ52が配置されている。その音響センサ基板ユニット50は支持体20を介し、ケーシング蓋30とケーシング10を図示しないねじで固定することで、ケーシング10内に保持される。
【0021】
底面の外面11aの円形の窪みの凹部11d、11eには、それぞれ硬磁性材料であるネオジム磁石、サマリウムコバルト磁石、フェライト磁石等の永久磁石である保持体60が接着固定されている。保持体60の端面60aに対して、集音体40の端面40aはケーシング10の反対側、所謂外側に面一から0.5mm程度突出(オフセット)している。(
図4において段差距離Gで表記)
【0022】
次に、本発明の音響診断センサユニット100を音響測定対象物である機器の測定対象面に固定した状態について
図5~
図6を用いて説明する。
【0023】
図5は図示しない例えば回転機器の測定対象面71に音響診断センサユニット100を固定した状態である。回転機器の測定対象面71は鉄製であるため、音響診断センサユニット100を永久磁石である保持体60の磁力で吸着固定する。固定により、
図6に示すように弾性体の熱可塑性樹脂発泡体である集音体40はオフセット寸法(オフセット量)の段差距離G分だけ圧縮され、その反発力により測定対象面71と集音体40の端面40a、および音響センサ基板ユニット50の平面部51aと集音体40の端面40bはしっかり密着する。尚オフセット量は集音体40が圧縮され、測定対象面71と集音体40の端面40a、音響センサ基板ユニット50の平面部51aと集音体40の端面40bが密着すればよいため、前述のオフセット量0.5mmに限定されるものではない。
【0024】
音響診断対象の音響は、図示しない回転機器の内部で発生し測定対象面71に伝播してくるが、測定対象面71と集音体40、音響センサ基板ユニット50が連続してしっかり密着しているため、集音体40の孔部40cを経由し、基板51の孔51cを通して音響センサ52の音響受信部52aに伝搬され確実に測定することが可能であり、また外部の雑音を拾ってしまうことはない。
【0025】
ここで、集音体40の材質は前述したように熱可塑性樹脂発泡体や熱硬化性エラストマー、熱可塑性エラストマー、独立気泡のウレタンゴム発泡体等であって遮音性に優れているため、例えば他の機器から発する騒音等外部からの雑音を反射させて遮音し音響受信部52aに伝搬されないようにしている。
【0026】
図9に本発明の第1の実施形態における集音体の変形例1を示す。音響センサ基板ユニット50の基板51に実装される音響センサ52の実装面が第1の実施形態と異なっている例であり、平面51a側に音響センサ52が実装されており、音響受信部52aが基板の外側に向くように実装されている。また、音響センサ52に対向し基板51の平面部51aと当接する集音体45の端面45bには凹部45dが設けられ、該凹部45dに音響センサ52が収納される形になっている。このようにすることで、基板51の孔51cも不要となり、大きさと形状の自由度が増し多種類の音響センサが実装でき汎用性が広がる利点がある。
【0027】
図10~
図12に本発明の第1の実施形態における集音体の他の変形例2を示す。音響診断用センサユニット200の集音体80はニトリルゴムやシリコーンゴムなどの合成ゴムで作製されており、一方の端面80aがケーシング10の底面11から外に向かってラッパ形状に広がった弾性を有する円盤部80dを有している。なお、他方の端面80bは集音体40の端面40bと同形状である。
【0028】
ラッパ形状の円盤部80dの内面は円錐状のベル面80eに繋がっており、集音体80の略中央部に設けられた孔部80cに連結している。また、円盤部80dとベル面80eとで形成する空隙部80fは聴診器に用いられる所謂ベル面の形状となっている。また、集音体80の端面80aは保持体60の端面60aに対して
図11で示すオフセット量の段差距離Hだけ離れて形成されている。なお、円盤部80dは高い弾性を有しており、
図4の段差距離Gに対して段差距離Hは更に大きくすることができる。
【0029】
次に、本発明の音響診断用センサユニット200を音響測定対象物である機器の測定対象面71に固定した状態について
図12を使用して説明する。音響診断用センサユニット200は保持体60の吸引力で測定対象面71に押し付けられるが、高い弾性を有する円盤部80dが撓んで吸着する。この結果、測定対象面71に伝播してくる図示しない機器の内部で発生する音は、空隙部80f、ベル面80eで集められ略中央部に設けられた孔部80cに導かれ音響センサ52の音響受信部52aに伝わる。
【0030】
本発明の第1の実施形態における集音体の変形例2によれば、前述したように段差距離Hは更に大きくすることができ、製造上の寸法管理がしやすくなる効果があるだけでなく、聴診器構造のベル面を設けて集音することで比較的低周波の音も拾うことが可能となる効果がある。
【0031】
図13に本発明の第1の実施形態における集音体の他の変形例3を示す。集音体85は略中央に孔部86cを有する円筒状(円柱)の集音体胴部86と略同芯で集音体胴部86の両端面に設けられた弾性を有する第1の弾性体部87、第2の弾性体部88の3層の構造となっており、それぞれ孔部86cと貫通するように孔部87c、孔部88cが設けられている。集音体胴部86はステンレスなどの金属で比較的重量のある材料で作製されており、外部からの遮音性が高い材料となっている、また、第1の弾性体部87、第2の弾性体部88の材料はそれぞれ測定対象面71及び基板51の平面部51aに押圧されてその弾性で縮むため、シリコーンゴムやニトリルゴムなどの合成ゴムや熱可塑性エラストマーが適している。
【0032】
図14~
図15に本発明の第1の実施形態における保持体の変形例を示す。第1の実施形態では保持体60が集音体40を挟むように両側に2個設けた例で説明したが、本変形例ではケーシング15の底面の外面16aには集音体40と略同芯で該集音体40を囲うように内部に中空部65cを有する円環状の保持体65が設けられており、底面の外面16aの円環状の凹部16d内に嵌合して接着固定されている。なお、ここでは保持体65の形状は円環状で説明するが環状であれば円の必要はなく多角形や楕円であってもよい。
【0033】
すなわち、円環状の保持体65の中空部65c内に集音体40が位置する関係となっている。なお、
図4と同様に集音体40の端面40aは保持体65の端面65aから段差距離Gだけ突出した関係となっている。
【0034】
図15は音響診断センサユニット105を機器の測定対象面71に吸着固定した場合の図であり、保持体65の吸引力で弾性を有する集音体40を軸方向に押し付け段差距離Gが押し潰されて端面40a、端面65aが測定対象面71に密着する。
【0035】
この状態では、集音体40は円環状の保持体65の中空部65c内に密封された状態となり、例えば他の機器から発する騒音等外部からの雑音は、先ず円環状の保持体65にて反射され、一部が端面65aと測定対象面71の隙間から侵入したとしても、集音体40の弾性により押し付けられた端面40aと測定対象面71の隙間から侵入することは無い。すなわち、第1の実施形態のように集音体40だけで遮音する場合に比べて、さらに一層遮音効果が向上する。
【0036】
本発明の第2の実施形態について
図16~
図18を用いて説明する。本発明の音響診断センサユニット300は第1の実施形態の音響診断センサユニット100に対して、さらに集音体40の外周を取り囲むように中空孔部95cを有する環状の吸音体95を設けたことである。この吸音体95の材料は例えば連続気泡のウレタンゴム発泡体(ウレタンフォーム)であり、連続気泡発泡体の特性であるしなやかに圧縮、復元することや吸音に優れる特性を備えている。
【0037】
吸音体95が連続気泡の発泡体でしなやかに圧縮、復元することから、
図17に示すように保持体60の端面60aに対して集音体40の端面40aよりさらに突出して吸音体95の端面95aはオフセット寸法(オフセット量)の段差距離Jだけ突出している。なお、吸音体95はケーシング90の底面の外面91aに設けられた窪みの凹部95fに収まっている。
【0038】
本発明の音響診断センサユニット300を音響測定対象物である回転機器の測定対象面71に固定した状態について
図18に示す。音響診断センサユニット300は2個の保持体60の吸引力により測定対象面71に吸引され、集音体40はその弾性により段差距離Gが押し潰され、さらに同時に吸音体95も段差距離Jが押し潰されて端面40a、端面95a、端面60aが測定対象面71に密着する。
【0039】
この状態では、集音体40は環状の吸音体95の中空部95c内に密封された状態となり、例えば他の機器から発する騒音等外部からの雑音は、先ず環状の吸音体95にて連続気泡セル内で反射を繰り返し減衰され吸音される。さらに、吸音体95を通過した一部の雑音が独立気泡の集音体40の表面で反射され遮音されるため、第1の実施形態に比べてより一層遮音性が向上する。
【0040】
なお、環状の吸音体95は第1の実施形態の保持体の変形例で示す円環状の保持体65の中空部65c内で集音体40と保持体の40の間に設けると、外部の雑音は保持体65、吸音体95、集音体40の3重構造で遮音できるため一層効果が増す。
【実施例0041】
以下、本発明の第1の実施形態の音響診断センサユニット100を使用して、音響測定試験を実施した。その測定状態と測定結果をより具体的に実施例1として
図19~
図22を用いて説明する。
【0042】
<実施例1>
図19は実施例1に使用した音響診断センサユニット100の実際の写真であり、ケーシング10とケーシング蓋30は光造形にて樹脂で作製している。また、集音体40は60倍にビーズ発泡された発泡スチロール(発泡ポリスチレン樹脂)であり、略中央部に孔部40cが設けられ、音響センサ基板ユニット50に繋がっている。なお、保持体60は円盤状のネオジム磁石であり、集音体40を挟んで1対配置されている。
【0043】
図20は、音響測定対象の回転機器を模してホワイトノイズ発生源を内部に設置した板金筐体70の測定対象面71に、本実施例1の音響診断センサユニット100を吸着固定し密着した状態を示す。
【0044】
まず、本実施例1において測定条件は、以下のとおりである。
音響センサ52は無指向性マイクロホンAnalog Devices社のADMP401を使用して測定した。
また、データはサンプリング周期が10000Hzでサンプリング数512とし、結果をFFT(Fast Fourier Transform)処理し10回の平均を算出した。
さらに、2秒間隔で上記測定を10回繰り返し、合計100回の平均を求めた。
【0045】
音響診断センサユニット100を
図20に示す板金筐体70に密着した状態(
図20の状態)と、板金筐体70の測定対象面71に密着しないで集音体40の端面40aを約30cm離し測定対象面71に対向させた状態で、外部から雑音に相当するホワイトノイズを発生させたときの音響測定結果を
図21のグラフに示す。
【0046】
密着しない状態では破線で示すように各周波数帯において高い出力が発生し、外部からの雑音を測定しているが、密着した状態では実線で示すように各周波数帯において略フラットで低い出力状態となり外部からの雑音を測定していない。つまり本発明の音響診断センサユニット100は外部からの雑音を十分除去できることがわかる。
【0047】
音響診断センサユニット100を
図20に示す板金筐体70の測定対象面71に密着した状態(
図20の状態)と、板金筐体70の測定対象面71に密着しないで集音体40の端面40aを約30cm離し測定対象面71に対向させた状態で、板金筐体70内部から回転機器の稼働音を模したホワイトノイズを発生させたときの音響測定結果を
図22のグラフに示す。
【0048】
密着しない状態では破線で示すように各周波数帯において略フラットの信号となり、板金筐体70の内部からのホワイトノイズを十分に測定できていないが、密着した状態では実線で示すように各周波数帯において高い出力が発生し、集音体40でホワイトノイズを測定できていることがわかる。つまり本発明品は回転機器の音響を精度良く測定できることがわかる。
【0049】
以上詳細に説明したように、本発明の音響診断センサユニットを使用すれば、破砕プラントのようなランダムで複雑な音を発する機器が複数台稼働している環境下においても、音響測定対象とする機器から発する音響のみを測定し、対象外の機器から発する雑音を確実に除去できるため、より精度の良い異常を検知する異常音響診断が可能となる。
【0050】
なお、本発明は上述の実施形態及び実施例に記載した内容により限定されるものではなく、構成要件には実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。更に、上記に記載した実施形態及び実施例で開示した構成要素は適宜組み合わせてもよいし、適宜選択して用いてもよい。