(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024059123
(43)【公開日】2024-05-01
(54)【発明の名称】歌唱補助マスク
(51)【国際特許分類】
G10K 11/22 20060101AFI20240423BHJP
G09B 15/00 20060101ALI20240423BHJP
G10K 11/16 20060101ALI20240423BHJP
【FI】
G10K11/22 100
G09B15/00 D
G10K11/16 150
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022166583
(22)【出願日】2022-10-18
(71)【出願人】
【識別番号】522407123
【氏名又は名称】奥山 一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100121773
【弁理士】
【氏名又は名称】相原 正
(72)【発明者】
【氏名】奥山 一郎
【テーマコード(参考)】
5D061
【Fターム(参考)】
5D061CC11
(57)【要約】
【課題】装着者の口から発せられた、空気伝導音として耳へと伝達される声の大きさを調整することのできる歌唱補助マスクを提供する。
【解決手段】装着者の口から発せられた声を空気伝導音として耳へと伝達する歌唱補助マスク1、口元を覆う正面マスク本体10と、正面マスク本体10の左右において耳近傍へ向かって前後方向に延在して設置され、声を装着者の耳へと空気伝導音として案内する音路21である凹部が内側に形成された頬接触部20と、を備え、頬接触部20は、耳へと伝達される空気伝導音の音量を機械的に調整するための音量調整部材30を備える。また、歌唱補助マスク1は、頬接触部20の後端に耳近傍切欠穴23が形成されており、音量調整部材30は、耳近傍切欠穴23の開度を調整する部材である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
装着者の口から発せられた声を空気伝導音として耳へと伝達する歌唱補助マスクにおいて、
口元を覆う正面マスク本体と、
前記正面マスク本体の左右において耳近傍へ向かって前後方向に延在して設置され、前記声を装着者の耳へと空気伝導音として案内する音路である凹部が内側に形成された頬接触部と、を備え、
前記頬接触部は、耳へと伝達される空気伝導音の音量を機械的に調整するための音量調整部材を備えることを特徴とする歌唱補助マスク。
【請求項2】
前記頬接触部の後端に耳近傍切欠穴が形成されており、
前記音量調整部材は、前記耳近傍切欠穴の開度を調整する部材であることを特徴とする請求項1記載の歌唱補助マスク。
【請求項3】
前記音量調整部材は、前記耳近傍切欠穴を塞ぐようにスライド可能に設置されたスライド部材を備え、前記スライド部材により塞ぐ前記耳近傍切欠穴の面積を変えることで音量を調整することを特徴とする請求項2記載の歌唱補助マスク。
【請求項4】
前記音量調整部材は、前記耳近傍切欠穴の所定の領域を塞ぐように前記頬接触部に対して着脱自在な着脱テープを備え、前記着脱テープにより塞ぐ前記耳近傍切欠穴の面積を変えることで音量を調整することを特徴とする請求項2記載の歌唱補助マスク。
【請求項5】
前記音量調整部材は、前記頬接触部の内面に垂直な回転軸周りに回動自在に前記音路内に設置された回動部材を備え、前記回動部材により前記音路の開度を調整することで音量を調整することを特徴とする請求項1記載の歌唱補助マスク。
【請求項6】
前記音量調整部材は、前記頬接触部の後端の耳近傍部を後側に延ばすために、前記頬接触部に対して前後方向にスライド自在に設置された、音路として機能する内側凹部が形成された伸縮スライド部材を備え、前記耳近傍部を伸縮することで音量を調整することを特徴とする請求項1記載の歌唱補助マスク。
【請求項7】
前記正面マスク本体は、左右真ん中から左右両側にずれた位置に装着者の呼吸用に通気孔が形成されていることを特徴とする請求項1乃至6何れか1項記載の歌唱補助マスク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歌を上手に歌えるように補助するための歌唱補助マスクに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、自分の声を骨伝導音ではなく、空気伝導音として装着者に客観的に聞かせるためのマスク等の音響器具が提供されており、例えば、下記特許文献に開示されている。
【0003】
このような音響器具の装着者は、他人が聞くのと同じように客観的に自分の声をリアルタイムで確認しながら歌を歌うことができるため、歌唱力を向上させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003-107988号公報
【特許文献2】実開昭60-156599号公報
【特許文献3】特開平9-258748号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、人の声の大きさや聴覚レベルは様々であるが、上述した音響器具は、装着者の耳へと伝達する空気伝導音の大きさを調整出来ないため、聴覚に障害のある人は自分の声が聞こえなかったり、声の大きい人は自分の声の空気伝導音が大きすぎて他の音が聞こえなくなったり、といった問題が生じる。
【0006】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、装着者の口から発せられた、空気伝導音として耳へと伝達される声の大きさを調整することのできる歌唱補助マスクを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための本発明に係る歌唱補助マスクは、装着者の口から発せられた声を空気伝導音として耳へと伝達する歌唱補助マスクにおいて、口元を覆う正面マスク本体と、前記正面マスク本体の左右において耳近傍へ向かって前後方向に延在して設置され、前記声を装着者の耳へと空気伝導音として案内する音路である凹部が内側に形成された頬接触部と、を備え、前記頬接触部は、耳へと伝達される空気伝導音の音量を機械的に調整するための音量調整部材を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る歌唱補助マスクによれば、音量調整部材により空気伝導音として耳へと伝達される声の大きさを機械的に調整することができ、装着者は効果的に歌唱力を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本発明の第一実施形態に係る歌唱補助マスクの外側から見た斜視図である。
【
図2】
図2は、本発明の第一実施形態に係る歌唱補助マスクの内側から見た斜視図である。
【
図3】
図3は、本発明の第一実施形態に係る歌唱補助マスクの使用態様を説明するための図である。
【
図4】
図4は、本発明の第一実施形態に係る歌唱補助マスクの装着状態を示す図である。
【
図5】
図5は、本発明の第一実施形態の変形例1に係る歌唱補助マスクの外側から見た斜視図である。
【
図6】
図6は、本発明の第二実施形態に係る歌唱補助マスクの外側から見た斜視図である。
【
図7】
図7は、本発明の第二実施形態に係る歌唱補助マスクの内側から見た斜視図である。
【
図8】
図8は、本発明の第二実施形態に係る歌唱補助マスクの使用態様を説明するための図である。
【
図9】
図9は、本発明の第二実施形態に係る歌唱補助マスクの装着状態を示す図である。
【
図10】
図10は、本発明の第二実施形態の変形例2に係る歌唱補助マスクの拡大斜視図である。
【
図11】
図11は、本発明の第二実施形態の変形例3に係る歌唱補助マスクの内側から見た斜視図である。
【
図12】
図12は、本発明の第二実施形態の変形例4に係る歌唱補助マスクの拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(第一実施形態)
以下、本発明の第一実施形態について、
図1~
図5を参照しながら説明する。第一実施形態に係る歌唱補助マスク1は、軽度の難聴者用のマスクであり、装着者の口から発せられる声を比較的に大きな音で耳へと伝達する。
【0011】
歌唱補助マスク1は、人間の顔面に装着して使用するマスクであり、顔の前面に位置して口元を覆う正面マスク本体10と、正面マスク本体10の左右両側において耳近傍まで延在する頬接触部20と、装着紐39とを備えている。正面マスク本体10と頬接触部20とは、樹脂成形により一体に構成されている。
【0012】
正面マスク本体10は、装着者の口と鼻の周りを覆うように、全体として顔の表面に沿って前側に凸に湾曲した形状であり、上部の左右中央に形成された鼻用凸部11と、下部の左右中央に形成された顎用凹部12と、左右真ん中から左右両側にずれた位置に形成された複数の通気孔13とを備える。
【0013】
鼻用凸部11は、装着者の鼻を収容する部分であり、正面マスク本体10の上端の中央近傍が前側に膨らんで形成されている。顎用凹部12は、装着者の顎を開放する部分であり、正面マスク本体10の下端部の中央近傍が上方に凹んで形成されている。装着者の口から前側に発せられた声は、その多くが歌唱補助マスク1の内面で反射し、後述する音路21を取って装着者の耳へと案内され、また、その一部は顎用凹部12から歌唱補助マスク1の外へと放出される。
【0014】
このように、顎用凹部12から声の一部が放出されることで、歌唱補助マスク1の装着者の周囲に居る人は、装着者が発した声をそのまま直接聞くことが可能である。すなわち、歌唱補助マスク1の装着者は、自分の声を周囲の者に聞かせながら、同時に、自分の声の空気伝導音を自分の耳で聞いて確認することもできる。
【0015】
なお、顎用凹部12が装着者の口に対向する正面中央部まで延びて形成されていると、口から耳へと伝達される音声の多くがこの顎用凹部12から外側に漏れてしまうため、顎用凹部12は装着者の口元まで届かない位置に形成されている。
【0016】
また、装着者の声の一部を歌唱補助マスク1の正面外側へ放出するためには、顎用凹部12のような構成だけでなく、正面マスク本体10の下端部の中央近傍に、音声が通過する程度の大きさの音通用開口を形成するようにしても良い。
【0017】
この場合、音通用開口が装着者の口に対向する正面中央部や口から耳への音路21上に形成されると、耳へと伝達される音声の多くがこの開口から外側に漏れてしまうため、音通用開口は、装着者の口に対向する部分や口から耳への音路21上には形成しないのが望ましい。
【0018】
通気孔13は、装着者が呼吸をする際に空気が通過する穴であり、正面マスク本体10に形成された複数の横長の小孔から構成される。歌唱補助マスク1を装着した際、装着者の声を耳へと案内するために、歌唱補助マスク1の内側部分が装着者の顔面に接触しており、装着者の顔面と歌唱補助マスク1との間の隙間の空間はある程度密閉されている。
【0019】
したがって、装着者が呼吸をする際、内側空間と外部空間との間で空気が流出入する開口がなければ、装着者の呼吸が苦しくなったり、空気が狭い隙間を通過することによる不要な摩擦音等が発生したりしてしまうが、通気孔13を設けることで、このような不具合の発生を防止できる。
【0020】
通気孔13は、正面マスク本体10の装着者の口に対向する正面中央部や口から耳への音路21上を避けて、左右中心から左右両側に寄ったところにそれぞれ複数形成されている。正面中央部等に通気孔13が位置すると、口から発せられた声のうち通気孔13から外に漏れてしまうものが生じ、耳へと伝達される声の音量が少なくなってしまう。
【0021】
よって、通気孔13は、装着者の口に対向する正面中央部及び口から耳への音路21上から外れた位置に設置するのが望ましい。また、通気孔13のサイズが大きくなると多くの声が通気孔13を通って外に漏れてしまうため、装着者が無理なく呼吸できる範囲内で、なるべく小さな穴の通気孔13をなるべく総面積が大きくならない個数で設置するのが望ましい。
【0022】
頬接触部20は、正面マスク本体10の左右両側において一体に連続して前側から後側の耳近傍へと延在する板状部材であり、装着者の声を空気伝導音として耳へ伝達すると共に、装着者の頬等の頭側面に両側から接触することで、歌唱補助マスク1を顔に保持させるように機能する。
【0023】
頬接触部20は、略全長に渡って高さ方向中央付近が外側に突出する湾曲形状であり、この湾曲内側が空気伝導音を案内する音路21として機能し、装着者の声はこの音路21内を前側から後側の耳に向かって通過する。
【0024】
頬接触部20は、平均的なサイズの大人が装着した際に、その後端部分の耳近傍部(耳カバー部)22が耳をカバーする位置に届くような長さであり、耳カバー部22の後端には、前側に向けて切り欠かれた耳近傍切欠穴23が形成されている。なお、耳近傍切欠穴23は、耳カバー部22の後端の縁から切り込まれて形成された穴だけでなく、縁につながることなく、長円や長方形状に切り取られた穴も含む。
【0025】
頬接触部20の内側の音路21を伝達されてきた音は、後端の耳カバー部22内側において耳の中に進入するが、音の一部はこの耳近傍切欠穴23を通って外に放出される。なお、装着時には、耳カバー部22により耳が覆われるため、装着者は、外の音を聞き難くなるが、耳近傍切欠穴23が大きく開いていれば、耳近傍切欠穴23を介して外の音を容易に聞くことができる。
【0026】
頬接触部20は、耳近傍切欠穴23の開度を調整することで、音路21を通って装着者の耳へと到達する音の大きさを調整する音量調整部材30をさらに備えている。音量調整部材30は、スライド部材31と、スライドレール32と、目盛33とを備えている。
【0027】
スライドレール32は、頬接触部20の内側において前後方向に延在して設置されており、板状のスライド部材31を、音路21に対して前後方向にスライド自在に保持する。スライド部材31は、耳近傍切欠穴23を塞ぐようにスライド自在に設置されており、スライド部材31により塞ぐ耳近傍切欠穴23の面積を変える、すなわち、耳近傍切欠穴23の開度を調整することが可能である。
【0028】
スライド部材31は、耳近傍切欠穴23を全て塞いだ閉状態(
図3(a)参照)と、全て開いた開状態(
図3(b)参照)との間でスライド自在に設置されている。目盛33は、頬接触部20の外側表面に記されており、耳近傍切欠穴23の開度、すなわち、音路21から装着者の耳に到達する声の音量を表している。
【0029】
スライド部材31の外側表面には、頬接触部20に形成された穴から外側に突出した取っ手31aが形成されており、装着者は指でこの取っ手31aをスライドさせることで、歌唱補助マスク1を顔に装着したままで、容易にスライド部材31を前後方向にスライドさせることができる。すなわち、装着者は、歌唱補助マスク1を装着した状態で歌いながら、適宜音量調整を行うことができる。
【0030】
図3(a)に示すように、音量調整部材30のスライド部材31により、耳近傍切欠穴23を全て閉じると、装着者の耳に伝達される空気伝導音は最も大きくなり(音量最大)、
図3(b)に示すように、耳近傍切欠穴23を全て開くと、装着者の耳に伝達される空気伝導音は最も小さくなる(音量最小)。
【0031】
以上、歌唱補助マスク1の構成について説明したが、続いて、歌唱補助マスク1の使用態様について説明する。歌唱補助マスク1は、軽度の難聴者用のマスクであり、軽度の難聴者が、例えば、カラオケ店で歌う際に顔面に装着して使用する(
図3,4参照)。
【0032】
歌唱補助マスク1の装着は、左右の頬接触部20を両側から頬に接触させて顔を挟み込むことにより行うことができるが、より装着を安定させるためには、
図4に示すように、さらに、装着紐39により後頭部から吊り下げながら装着するのが望ましい。
【0033】
具体的には、左右の頬接触部20の上部に形成された装着紐穴20aに装着紐39の両端を連結して、装着紐39を後頭部に周回させることで、歌唱補助マスク1を後頭部に対して吊り下げることができる。
【0034】
歌唱補助マスク1を装着すると、装着者は、前側の口元から左右の耳近傍までが歌唱補助マスク1により広く覆われる。この状態で、装着者がマイクを手に持つなどして歌うと、装着者の口から発せられる声の一部は、正面マスク本体10の内面に衝突して反射し、頬接触部20の内側の音路21を通って装着者の耳へと案内される。
【0035】
したがって、装着者は、歌唱補助マスク1を装着して歌唱することで、自分の声の空気伝導音を直接耳から聞くことができ、他者が聞くのと同じように客観的に自分の声を聴いて確認することができる。すなわち、歌唱補助マスク1の装着者は、自分の声を客観的に聴きながら歌い方を修正することができる。
【0036】
自分の声の空気伝導音は、同じ空間に居る他人が直接聞いている自分の声と同じであるため、装着者は、常にリアルタイムで自分の声を客観的に確認しながら発声をコントロールすることができるため、歌唱力を向上させることができる。
【0037】
さらに、本実施形態では、音量調整部材30が設置されているため、装着者は、自分の声の空気伝導音が丁度良い大きさで耳から聞こえるように、歌唱補助マスク1を装着したまま、音量を調整することができる。
【0038】
音量が小さい場合には、耳近傍切欠穴23を閉める方向、すなわち後側にスライド部材31をスライドすることで、音量を大きくすることができ、音量が大きい場合には、耳近傍切欠穴23を開く方向、すなわち前側にスライド部材31をスライドすることで、音量を小さくすることができる。
【0039】
また、装着者の口から発せられる声の一部は、正面マスク本体10の顎用凹部12から外側に放出されるため、歌唱補助マスク1を装着していても、装着していないときと同様に、装着者の声を直接マイクで拾ったり、同じ空間に居る周囲の者に聞かせたりすることもできる。
【0040】
以上、本発明の第一実施形態について説明したが、本実施形態によれば、歌唱補助マスク1を装着した装着者は、軽度の難聴者であっても歌唱補助マスク1を介して自分の声を客観的に聞くことができ、自分の声を確認しながら歌い方を修正することで、歌唱力を向上させることができる。
【0041】
特に、本実施形態では、音質が劣化する電気信号に変換してから音声の音量を調整するのではなく、生の音(空気伝導音)のまま、スライド部材31をスライドさせることで機械的に音量を調整しており、装着者は、音質を劣化させることなく自分の生の声を適切な音量で確認することができ、適切に歌唱力を向上させることができる。
【0042】
続いて、第一実施形態の変形例1について、
図5を参照しながら説明する。本変形例1に係る歌唱補助マスク1’は、音量調整部材30’の構造が上記第一実施形態と異なると共に、頬接触部20’の内側の音路21’内に前後方向に略並行に延在して2本の密着防止凸条25’が形成されている点で上記第一実施形態と異なる。
【0043】
変形例1に係る歌唱補助マスク1’は、第一実施形態に係るスライド部材31、スライドレール32及び目盛33の代わりに、耳近傍切欠穴23’の所定の領域を塞ぐように頬接触部20’に対して着脱自在な着脱テープ35’を左右それぞれに備えている(
図5参照)。
【0044】
着脱テープ35’により塞がれる耳近傍切欠穴23’の面積を変えることで、上記第一実施形態と同様に、装着者の耳に伝達される空気伝導音の音量を調整することができる。
【0045】
また、頬接触部20’の内側に設置されるスライド部材31やスライドレール32が無くなると、頬接触部20’の内側が装着者の頬に密着し、音路21’が塞がれてしまうおそれがある。音路21’が塞がれてしまうと、装着者の声は耳へと伝達されなくなってしまう。
【0046】
本変形例1では、頬接触部20’の内側に2本の密着防止凸条25’を設置することで、頬接触部20’の内側が装着者の頬に密着し、音路21’が塞がれてしまうこと防止している。なお、密着防止凸条25’の設置態様は適宜変更可能であり、音路21’上を口から耳へと伝達される音をなるべく遮らないような態様であれば、位置や形状を適宜変えることができる。
【0047】
本変形例1によれば、上記第一実施形態と同様の作用効果を奏すると共に、着脱テープ35’により音量調整部材30’を構成することで、シンプルな構成で音量調整を実現することができ、歌唱補助マスク1’の製造コストを大きく低減することができる。
【0048】
(第二実施形態)
続いて、本発明の第二実施形態について、
図6~
図12を参照しながら説明する。第二実施形態に係る歌唱補助マスク2は、聴覚健常者用のマスクであり、装着者の口から発せられる声を耳へと伝達する。
【0049】
歌唱補助マスク2は、正面マスク本体60と、頬接触部70とを備えており、正面マスク本体60と頬接触部70とは、樹脂成形により一体に構成されている。歌唱補助マスク2は、上記第一実施形態に係る歌唱補助マスク1と共通する構成も多いため、同様の部材については、同じ名称を付して説明を省略し、異なる構成を中心に説明する。
【0050】
正面マスク本体60は、第一実施形態と同様に前側に凸に湾曲した形状であり、上部の左右中央に形成された鼻用凸部61と、下部の左右中央に形成された顎用凹部62と、左右中心から左右両側にずれた位置に形成された複数の通気孔63とを備える。
【0051】
頬接触部70は、正面マスク本体60の左右両側において一体に連続して前側から後側耳近傍へと延在する板状部材であり、装着者の声を空気伝導音として耳へ伝達すると共に、装着者の頬等の両側の頭側面に接触することで、歌唱補助マスク2を顔に保持させるように機能する。
【0052】
頬接触部70は、その内側に空気伝導音を案内する音路71が形成されている。頬接触部70は、平均的なサイズの大人が装着した際に、その後端部分である耳近傍部72が耳にちょうど届かないような長さであり、音路71を案内されてきた空気伝導音は、耳近傍部72の後端開口から耳へ向けて放出される。
【0053】
頬接触部70は、音路71の開度を調整することで、装着への耳へと到達する音の大きさを調整するための音量調整部材80をさらに備えている。音量調整部材80は、回動部材81と、回動軸82と、目盛83とを備えている。
【0054】
頬接触部70の内側の音路71の途中に設置された回動部材81は、頬接触部70の内面に垂直な回動軸82周りに回動自在に軸支されている。回動部材81は、前後方向に垂直な鉛直状態(閉状態。
図8(c)参照)と、前後方向に平行な水平状態(開状態。
図8(a)参照)との間で回動自在に設置されている。
【0055】
回動部材81は、設置されている場所の頬接触部70の内面に沿うような形状となっており、回動部材81が垂直状態となった場合に、回動部材81と頬接触部70の内面との間に大きな隙間ができないような形状に形成されている。
【0056】
回動部材81が垂直状態の場合には、回動部材81により音路71が閉じられ、音路71内を空気伝導音がほとんど通過できない閉状態となる。回動部材81が水平状態の場合には、音路71が開放され、音路71内を空気伝導音が広く通過できる開状態となる。
【0057】
すなわち、回動部材81が鉛直の閉状態となると音路71を通過する空気伝導音が最も小さくなり、装着者の耳に伝達される音も最も小さくなる(音量最小)。反対に、回動部材81が水平の開状態となると音路71を通過する空気伝導音が最も大きくなり、装着者の耳に伝達される音も最も大きくなる(音量最大)。
【0058】
回動軸82は、頬接触部70の外側に同軸一体につながって露出した円盤状のつまみ82aを備えており、このつまみ82aを回転させることで、回動軸82が回動し、回動部材81を回転させることができる。
【0059】
目盛83は、頬接触部70の外側において、回動軸82のつまみ82aの周囲に記されており、回動部材81により調整される音路71の開度、すなわち、音路71から装着者の耳に到達する声の音量を表している。
【0060】
以上、歌唱補助マスク2の構成について説明したが、歌唱補助マスク2も上記第一実施形態に係る歌唱補助マスク1と同様の態様で使用され、同様の作用効果を奏する。歌唱補助マスク2の耳近傍部72は、第一実施形態のように装着者の耳をカバーしておらず、耳の前側近傍に位置している耳近傍部72の後端開口から放出された空気伝導音が耳へと伝達されるため、耳へ伝達される声の音量は第一実施形態と比較して小さい。
【0061】
したがって、歌唱補助マスク2は、比較的に耳が良く聞こえる聴覚健常者用のマスクであり、聴覚健常者が、例えば、カラオケ店で歌う際に顔面に装着して使用する(
図9参照)。
【0062】
続いて、第二実施形態の変形例2について、
図10を参照しながら説明する。本変形例2に係る歌唱補助マスクは、音量調整部材80’の構造が上記第二実施形態と異なる。本変形例2に係る音量調整部材80’は、頬接触部70’の後端の耳近傍部72’を後側に延ばすことで、装着者の耳に伝達される音量を調整する。
【0063】
音量調整部材80’は、頬接触部70’に対して前後方向にスライド自在に設置された伸縮スライド部材86’と、伸縮スライド部材86’をスライド自在に保持するためのスライドレール87’とを備え、耳近傍部72’の外側表面には、音量の目盛83’が形成されている。
【0064】
伸縮スライド部材86’は、前後方向に垂直な平面において外側に凸のコの字形の断面形状であり、頬接触部70’の耳近傍部72’の本体より一回り大きな構造である。伸縮スライド部材86’の内側凹部は、音路として機能する。伸縮スライド部材86’は、
図10(a)に示す、最も前側の最前位置と、
図10(b)に示す、最も後側の最後位置との間でスライド自在で、伸縮スライド部材86’のスライドにより音路(耳近傍部72’)の長さを伸縮する。
【0065】
伸縮スライド部材86’が最前位置にあるときは、耳近傍部72’の後端が耳に届かない状態であり、音路の長さが最短状態となる。伸縮スライド部材86’が最後位置にあるときは、耳近傍部72’の後端が耳をカバーする位置まで伸びており、伸縮スライド部材86’の内側が音路の後端部を構成し、音路の長さが最長状態となる。
【0066】
音路が最短状態(
図10(a))のとき、装着者の耳に伝達される音量は最も小さくなり(音量最小)、音路が最長状態(
図10(b))のとき、装着者の耳に伝達される音量は最大となる(音量最大)。
【0067】
本変形例2によれば、上記第二実施形態と同様の作用効果を奏すると共に、耳近傍部72’が耳を覆う位置と覆わない位置との間で伸縮可能であり、音量を広い範囲で大きく調整することができるため、健常者から難聴者まで幅広い状況に対応可能な歌唱補助マスクを提供することができる。
【0068】
続いて、第二実施形形態の変形例3について、
図11を参照しながら説明する。本変形例3に係る歌唱補助マスク2”は、音量調整部材80”の構造が上記第二実施形態と異なる。
【0069】
変形例3に係る音量調整部材80”は、第二実施形態に係る回動部材81、回動軸82及び目盛83の代わりに、音路71”を構成する耳近傍部72”の後端開口部分に格子状の穴である格子穴73”が形成されると共に、格子穴73”の所定の領域を塞ぐように頬接触部70”に対して着脱自在な着脱テープ88”を左右それぞれに備えている。
【0070】
着脱テープ88”により塞がれる格子穴73”の面積を変えることで、上記第二実施形態と同様に、装着者の耳に伝達される空気伝導音の音量を調整することができる。本変形例3によれば、上記第二実施形態と同様の作用効果を奏すると共に、歌唱補助マスク2”の製造コストを大きく抑えることができる。
【0071】
続いて、第二実施形態の変形例4について、
図12を参照しながら説明する。本変形例4に係る歌唱補助マスクは、頬接触部70’’’の耳近傍部72’’’の構造が上記第二実施形態と異なる。
【0072】
耳近傍部72’’’は、音路71’’’の内側を覆う音路カバー75’’’がさらに設置されており、音路71’’’がトンネル構造となっている。本変形例4によれば、上記第二実施形態と同様の作用効果を奏すると共に、音路71’’’を安定して確保できるため、装着者の顔の形状等に関わらず、音路71’’’が頬との密着によって塞がれるのを防止し、安定して口から耳へと声を伝達することができる。
【0073】
以上、変形例も含めて本発明の実施形態について説明したが、本発明の実施の形態は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能である。例えば、歌唱補助マスクを構成する部材の形状、サイズ、素材等は適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0074】
1 歌唱補助マスク
10 正面マスク本体
11 鼻用凸部
12 顎用凹部
13 通気孔
20 頬接触部
20a 装着紐穴
21 音路
22 耳カバー部(耳近傍部)
23 耳近傍切欠穴
25 密着防止凸条
30 音量調整部材
31 スライド部材
31a 取っ手
32 スライドレール
33 目盛
39 装着紐
2 歌唱補助マスク
60 正面マスク本体
61 鼻用凸部
62 顎用凹部
63 通気孔
70 頬接触部
71 音路
72 耳近傍部
80 音量調整部材
81 回動部材
82 回動軸
82a つまみ
83 目盛