(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024059125
(43)【公開日】2024-05-01
(54)【発明の名称】振動フィーダ
(51)【国際特許分類】
B65G 27/04 20060101AFI20240423BHJP
【FI】
B65G27/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022166586
(22)【出願日】2022-10-18
(71)【出願人】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100184859
【弁理士】
【氏名又は名称】磯村 哲朗
(74)【代理人】
【識別番号】100123386
【弁理士】
【氏名又は名称】熊坂 晃
(74)【代理人】
【識別番号】100196667
【弁理士】
【氏名又は名称】坂井 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100130834
【弁理士】
【氏名又は名称】森 和弘
(72)【発明者】
【氏名】石澤 允
(72)【発明者】
【氏名】塩月 健司
【テーマコード(参考)】
3F037
【Fターム(参考)】
3F037BA04
3F037BA11
3F037CA01
3F037CA11
(57)【要約】
【課題】トラフの下流側において、粉粒体の詰まりや粉粒体が堰板を超えてトラフの外に毀れることを抑制できる振動フィーダを提供する。
【解決手段】粉粒体が積載され、粉粒体の搬送方向が低くなるように傾斜して設けられるトラフと、トラフを加振する振動装置と、を有する振動フィーダであって、トラフの搬送方向の下流側の幅を上流側の幅より広くする。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉粒体が積載され、前記粉粒体の搬送方向が低くなるように傾斜して設けられるトラフと、前記トラフを加振する振動装置と、を有する振動フィーダであって、
該振動フィーダ1台あたりで、前記トラフの搬送方向の下流側の幅は、前記トラフの搬送方向の上流側の幅より広い、振動フィーダ。
【請求項2】
前記トラフは搬送方向に2以上の底板を有し、前記2以上の底板の搬送方向下流が、前記トラフの幅を拡げる方向に移動可能に設けられる、請求項1に記載の振動フィーダ。
【請求項3】
前記トラフは搬送方向に2以上の底板を有し、前記2以上の底板の搬送方向下流側が、搬送方向の上流側を支軸として、前記トラフの幅を拡げる方向に回動可能に設けられる、請求項1に記載の振動フィーダ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉粒体の詰まりや毀れを抑制できる振動フィーダに関する。
【背景技術】
【0002】
鉄鉱石や石炭などの粉粒体は、ホッパなどの粉粒体の供給装置からベルトコンベア等で混錬機や焼結機等の処理装置に搬送されて処理される。粉粒体の供給装置からベルトコンベア等に粉粒体を積載させるため、粉粒体に振動を与えて搬送する振動フィーダが用いられる。この振動フィーダは、搬送方向が低くなるように傾斜させたトラフを振動させることで、トラフ上に積載した粉粒体を搬送するものである。振動装置として、電磁振動式や電動機駆動式が用いられることが多い。
【0003】
また、振動フィーダは、トラフの振動を制御することにより、粉粒体の搬送量や搬送速度を制御できて、前記鉄鉱石や石炭の他にも、骨材や土砂など広い範囲の粉粒体を扱うことができる。
【0004】
振動フィーダに関する技術として、特許文献1には、トラフの底板に開口部を自由に調整できるスリットが設けられた振動フィーダが開示されている。特許文献1によれば、当該スリットを設けることで、ベルトコンベアに積載される搬送物の厚さを変えながら、搬送物をベルトコンベアに搬送できるとしている。
【0005】
また、特許文献2には、2台の振動フィーダを直列に並べて下流側の振動フィーダのトラフの幅が上流側の振動フィーダのトラフの幅より広い振動フィーダが開示されている。特許文献2によれば、扁平な部品を少量ずつ供給できるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実開昭64-024026号公報
【特許文献2】特開2019-035601号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1、2に開示された振動フィーダは、1台あたりのトラフの幅が一定又は下流側ほど狭いため、搬送フィーダにその搬送能力の最大に近い粉粒体を供給すると、粉粒体がトラフの下流側に押し込まれて凝集しやすい。この粉粒体の凝集により、粉粒体の搬送性が低下し、粉粒体の詰まりが生じたり、粉粒体が堰板を超えてトラフの外に毀れるたりするという課題があった。本発明は、このような課題を鑑みてなされたものであり、その目的は、トラフの下流側において、粉粒体の詰まりや粉粒体が堰板を超えてトラフの外に毀れることを抑制できる振動フィーダを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための手段は、以下の通りである。
[1]粉粒体が積載され、前記粉粒体の搬送方向が低くなるように傾斜して設けられるトラフと、前記トラフを加振する振動装置と、を有する振動フィーダであって、該振動フィーダ1台あたりで、前記トラフの搬送方向の下流側の幅は、前記トラフの搬送方向の上流側の幅より広い、振動フィーダ。
[2]前記トラフは搬送方向に2以上の底板を有し、前記2以上の底板の搬送方向下流が、前記トラフの幅を拡げる方向に移動可能に設けられる、[1]に記載の振動フィーダ。
[3]前記トラフは搬送方向に2以上の底板を有し、前記2以上の底板の搬送方向下流側が、搬送方向の上流側を支軸として、前記トラフの幅を拡げる方向に回動可能に設けられる、[1]に記載の振動フィーダ。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る振動フィーダのトラフは、該振動フィーダ1台あたり、上流側の幅よりも下流側の幅の方が広いので、粉粒体が下流側に押し込まれることが抑制され、粉粒体の凝集が抑制される。これにより、トラフの下流側において粉粒体の詰まりが生じたり、粉粒体が堰板を超えてトラフの外に毀れることを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、従来の振動フィーダを示す模式図である。
【
図2】
図2は、本実施形態に係る振動フィーダの一例を示す模式図である。
【
図3】
図3は、本実施形態に係る振動フィーダの別例を示す模式図である。
【
図4】
図4は、本実施形態に係る振動フィーダの別例を示すトラフ上面図である。
【
図5】
図5は、実施例で用いた振動フィーダのトラフの上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明について実施形態を通じて説明する。以下の実施形態は、本発明の好適な一例を示すものである。
【0012】
図1は、従来の振動フィーダ10を示す模式図である。
図1(a)は、振動フィーダ10の側面図であり、
図1(b)は、トラフ12の上面図である。
図1を用いて、まず、従来の振動フィーダ10の構成を説明する。
【0013】
振動フィーダ10は、トラフ12と振動装置14とを有する。
図1(b)に示すように、トラフ12は、底板20と、底板20の上流側及び幅方向の両側の3辺の位置に設けられる3つの堰板22とを有する。トラフ12は搬送方向下流側が低くなるように、水平方向に対して、例えば、10°傾斜して設けられる。
【0014】
振動装置14は、例えば、電磁振動式や電動駆動式である。振動装置14は、トラフ12を加振する。振動装置14の加振により、トラフ12の上に積載された粉粒体は、トラフ12の下流側に搬送される。振動装置14及びトラフ12は、吊り下げ具16によって、吊り下げられて設置するとよい。また、振動装置14及びトラフ12を架台に載せてもよい。
【0015】
従来の振動フィーダ10は、1台あたりのトラフ12の幅が一定又は下流側ほど狭かったので、振動フィーダ10にその搬送能力の最大に近い粉粒体を供給すると、粉粒体が下流側に押し込まれて凝集し、粉粒体の搬送性が低下する。この搬送性の低下により、トラフ12の下流側で粉粒体の詰まりが生じたり、粉粒体が堰板22を超えてトラフ12の外に毀れたりする。
【0016】
図2は、本発明に係る振動フィーダ30の一例を示す模式図である。
図2(a)は、振動フィーダ30の側面図であり、
図2(b)は、上トラフ34及び下トラフ42の上面図である。
【0017】
上トラフ34は、底板50と、底板50の上流側の1辺及び幅方向の両側の2辺の位置に設けられる3つの堰板52とを有する。上トラフ34は搬送方向の下流側が低くなるように、例えば、水平方向に対して、10°傾斜して設けられる。
【0018】
下トラフ42は、上トラフ34の底板50の幅より広い底板54と、底板54の上流側の1辺及び幅方向の両側の2辺の位置に設けられる3つの堰板56とを有する。下トラフ42も搬送方向下流側が低くなるように、例えば、水平方向に対して10°傾斜して設けられる。振動装置36は、上トラフ34及び下トラフ42を加振する。振動装置36の加振により、上トラフ34及び下トラフ42の上に積載された粉粒体は、下流側に搬送される。
【0019】
上トラフ34の下流端と下トラフ42の上流端とは上下方向に重なるように設けられる。また、振動装置36、上トラフ34及び下トラフ42は、吊り下げ具38によって吊り下げて設置するとよいし、架台に載せてもよい。
【0020】
振動フィーダによる粉粒体の最大搬送量は、トラフ面積が広くなれば増加し、トラフ面積が狭くなると減少する。本実施形態に係る振動フィーダ30において、振動フィーダ1台あたりのトラフは上トラフ34と下トラフ42とを含んで構成され、下流側の下トラフ42の幅を上流側の上トラフ34の幅よりも広くしているので、粉粒体の最大搬送量は、上流側の上トラフ34よりも下流側の下トラフ42の方が多くなる。これにより、上トラフ34に最大搬送量となる粉粒体を供給したとしても、粉粒体の最大搬送量は上トラフ34よりも下トラフ42の方が多いので、粉粒体が下トラフ42に押し込まれることが抑制され、粉粒体の凝集も抑制される。この結果、トラフの下流側において粉粒体の詰まりが発生したり、粉粒体が堰板56を超えて下トラフ42の外に毀れることが抑制される。
【0021】
なお、トラフは1つのトラフで構成されてもよく、この場合、搬送方向の下流にいくに従って徐々にトラフの幅を広くしてもよく、途中からトラフの幅を広くしてもよい。
【0022】
図3は、本実施形態に係る振動フィーダの他の例を示す模式図である。
図3(a)は、振動フィーダ60の側面図である。
図3(b)、(c)は、上トラフ34及び下トラフ72の上面図であって、
図3(b)は、下トラフ72の幅が上トラフ34と同じ状態を示す図であり、
図3(c)は、下トラフ72が拡幅された状態を示す図である。なお、
図3において、
図2と同じ構成には同じ参照番号を付し、その説明を省略する。
【0023】
振動フィーダ60の下トラフ72は、2枚の扇形の底板80a及び80bと、これらを回動可能に軸支する支軸76と、下トラフ72の両側の2辺の位置にそれぞれ設けられる堰板82a、82bと、底板80a、80bを支軸76回りに回動する駆動装置78とを有する。駆動装置78は、例えばモータである。
【0024】
下トラフ72は搬送方向下流側が低くなるように、例えば、水平方向に対して10°傾斜して設けられる。振動装置36は、上トラフ34と下トラフ72を加振する。振動装置36の加振によって、上トラフ34と下トラフ72の上に積載された粉粒体は、下トラフ72の下流側に搬送される。
【0025】
駆動装置78は、支軸76を中心として2枚の底板80a、80bを回動させる。駆動装置78は、底板80a及び底板80bを下トラフ72の幅が拡がる方向にそれぞれ、例えば、13°回動させる。この回動により、下トラフ72の幅は拡幅され、下トラフ72の幅が上トラフ34の幅と同じであった従来の
図3(b)の状態から、下トラフ72の幅が上トラフ34の幅より広い
図3(c)の状態になる。このように、下トラフ72の幅を拡幅する拡幅機構は、2枚の扇型の底板80a、80bと、駆動装置78とで構成される。なお、堰板82a及び堰板82bの一部を下方向に移動可能に設け、底板80a及び底板80bを回動させるにあたり、上トラフ34の堰板52と下トラフ72の堰板82a及び堰板82bとの衝突を回避させてもよい。
【0026】
下トラフ72の幅が拡幅されることで、下トラフ72の面積は広くなる。上述したように、トラフ面積が広くなると振動フィーダの最大搬送量が増えるので、下トラフ72の面積が広げられた状態において、下トラフ72の粉粒体の最大搬送量は、上トラフ34の最大搬送量よりも多くなる。これにより、上トラフ34に最大搬送量となる粉粒体を供給したとしても、粉粒体の最大搬送量は上トラフ34よりも下トラフ72の方が多いので、粉粒体が下トラフ72に押し込まれることが抑制され、粉粒体の凝集が抑制される。この結果、粉粒体の詰まりの発生や、粉粒体が堰板82a、82bを超えて下トラフ72の外に毀れ出ることが抑制される。
【0027】
また、振動フィーダの下流端の幅は、搬送先のベルトコンベアの幅に対応した幅にすることが求められる。例えば、搬送フィーダの下流端の幅がベルトコンベアの幅よりも著しく狭くなるとベルトコンベアの搬送量に対し、搬送フィーダからの供給量が少なくなってベルトコンベアの搬送効率が低下する。一方、搬送フィーダの下流端の幅がベルトコンベアの幅よりも広くなるとベルトコンベアから粉粒体が毀れてしまう。本実施形態に係る振動フィーダ60は下トラフ72の下流端の幅を変えることができるので、種々の幅のベルトコンベアに対応できる汎用性の高い振動フィーダとなる。
【0028】
なお、
図3に示した振動フィーダ60では、下トラフ72が2枚の底板80a、80bを有し、底板80a、80bを13°ずつ回動させる例を示したがこれに限らない。下トラフ72は、底板を2枚以上有していればよく、その内の少なくとも1つの底板を下トラフ72の幅が拡がる方向に回動できればよい。さらに、
図3に示した振動フィーダ60では、支軸76を中心にして底板80a、80bを回動させて下トラフ72の幅を拡幅する例を示したが、これに限らない。例えば、底板80a、80bが下トラフ72の幅方向に移動可能に設けられており、底板80a、80bを下トラフ72の幅が拡がる方向に移動させることで下トラフ72を拡幅してもよい。
【0029】
図4は、本実施形態に係る振動フィーダ60の別例を示すトラフ上面図である。
図4に示すように、上トラフ35及び下トラフ73を用いて、トラフ全長(上トラフ35に下トラフ73を加えたトラフ全長)に対し下流側が上流側より長くなる位置からトラフを拡幅できる構成にしてもよい。例えば、トラフ全長に対し下流側が4/5となるようにしてもよい。これにより、粘性があり、搬送性が低い粉粒体であっても、粉粒体の詰まりや毀れを抑制して搬送できる振動フィーダにすることができる。
【0030】
なお、搬送フィーダにおいて、粉粒体の詰まりや毀れが発生しやすいのはトラフの下流側であることから、トラフの幅を拡げるトラフの下流側の範囲はトラフ全長に対し下流側1/4以上であればよい。なお、トラフの幅を拡げるトラフの下流側の範囲はトラフ全長に対し下流側1/2以上であることが好ましく、3/4以上であることがさらに好ましい。また、上述の上トラフ及び下トラフは振動フィーダ1台あたりに設ける。これにより、振動装置1台で効率良く粉粒体を搬送できて、稼働コストも低減でき、振動フィーダの設置も容易となる。
【実施例0031】
次に、本実施形態に係る振動フィーダを用いて石炭の搬送を実施した実施例を説明する。
図5は、実施例で用いた振動フィーダのトラフの上面図である。
図5(a)は、比較例として用いた従来の振動フィーダ10(
図1(a)参照)のトラフの上面図であり、
図5(b)は、本発明に係る振動フィーダ60(
図3(a)参照)のトラフの上面図である。
【0032】
図5(a)に示した寸法のトラフを有する振動フィーダ10及び
図5(b)に示した寸法のトラフを有する振動フィーダ60を石炭ホッパの出口に設置し、これらの振動フィーダを用いて、幅寸法が600mmのベルトコンベアに石炭を搬送した。振動フィーダ10及び振動フィーダ60の石炭の最大搬送量は約26ton/hrである。
【0033】
従来の振動フィーダ10を用いて、最大搬送量又はこの量に近い24.7~26.3ton/hrの石炭を供給してベルトコンベアに搬送させた。この結果、搬送開始から8時間後に振動フィーダ10の下流側で詰まりが発生し、石炭が堰板22を超えて毀れたため、石炭の搬送を中止する結果となった。
【0034】
本発明例に係る振動フィーダ60は、2つの底板80a、80bを13°ずつ幅を拡げる方向に回動させて、下トラフ72を拡幅した状態で、最大搬送量又はこの量に近い24.7~26.3ton/hrの石炭を供給してベルトコンベアに搬送させた。この結果、石炭の詰まりや毀れが発生することなく、24時間連続でホッパの石炭をベルトコンベアに搬送できた。
【0035】
本発明例に係る振動フィーダ60では、2枚の底板をそれぞれ13°回動させて下トラフ72を拡幅したので、下トラフ72の面積は0.32m2から0.37m2に拡大した。これにより、下トラフ72の最大搬送量は約26ton/hrから約30ton/hrに増加し、この結果、振動フィーダ60の下流側での石炭の詰まりがなく、石炭が堰板52、82a、82bを超えて毀れだすことが抑制されたものと考えられる。