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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024059128
(43)【公開日】2024-05-01
(54)【発明の名称】シクロプロピルアセチレンの精製方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 7/148 20060101AFI20240423BHJP
   C07C 13/04 20060101ALI20240423BHJP
   C07C 7/04 20060101ALI20240423BHJP
【FI】
C07C7/148
C07C13/04
C07C7/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022166591
(22)【出願日】2022-10-18
(71)【出願人】
【識別番号】522500321
【氏名又は名称】シンクレスト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】徐 鵬宇
(72)【発明者】
【氏名】米山 心
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 崇
【テーマコード(参考)】
4H006
【Fターム(参考)】
4H006AA02
4H006AD11
4H006AD30
(57)【要約】      (修正有)
【課題】シクロプロピルアセチレンの精製方法を提供する。
【解決手段】シクロプロピルアセチレンを含む組成物を、硝酸銀(I);又は、過酸化水素、メタクロロ過安息香酸、及びtert-ブチルヒドロペルオキシドから成る群から選択される少なくとも一種の過酸化物;に接触させる工程を含む、シクロプロピルアセチレンの精製方法とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シクロプロピルアセチレンの精製方法であって、
シクロプロピルアセチレンを含む組成物を、
硝酸銀(I);又は、
過酸化水素、メタクロロ過安息香酸、及びtert-ブチルヒドロペルオキシドから成る群から選択される少なくとも一種の過酸化物;
に接触させる工程を含む、精製方法。
【請求項2】
前記工程は、シクロプロピルアセチレン以外の不純物を、
硝酸銀(I);又は、
過酸化水素、メタクロロ過安息香酸、及びtert-ブチルヒドロペルオキシドから成る群から選択される少なくとも一種の過酸化物;
と反応させて、
シクロプロピルアセチレンを、蒸留する事に依り、回収する、請求項1に記載の精製方法。
【請求項3】
前記不純物は、(E)-ペント-3-エン-1-イン、(Z)-ペント-3-エン-1-イン、及びペント-1-エン-4-インから成る群から選択される少なくとも一種の成分である、請求項2に記載の精製方法。
【請求項4】
前記工程は、精製後の組成物において、シクロプロピルアセチレンの純度を99.8質量%以上とする、請求項1~3の何れかに記載の精製方法。
【請求項5】
シクロプロピルアセチレンを含む組成物の製造方法であって、
シクロプロピルアセチレンを含む組成物を、
硝酸銀(I);又は、
過酸化水素、メタクロロ過安息香酸、及びtert-ブチルヒドロペルオキシドから成る群から選択される少なくとも一種の過酸化物;
に接触させる工程を含む、製造方法。
【請求項6】
前記工程は、シクロプロピルアセチレン以外の不純物を、
硝酸銀(I);又は、
過酸化水素、メタクロロ過安息香酸、及びtert-ブチルヒドロペルオキシドから成る群から選択される少なくとも一種の過酸化物;
と反応させて、
シクロプロピルアセチレンを、蒸留する事に依り、回収する、請求項5に記載の製造方法。
【請求項7】
前記不純物は、(E)-ペント-3-エン-1-イン、(Z)-ペント-3-エン-1-イン、及びペント-1-エン-4-インから成る群から選択される少なくとも一種の成分である、請求項6に記載の製造方法。
【請求項8】
前記工程は、製造後の組成物において、シクロプロピルアセチレンの純度を99.8質量%以上とする、請求項5~7の何れかに記載の製造方法。
【請求項9】
シクロプロピルアセチレンを純度99.8質量%以上で含む組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シクロプロピルアセチレンの精製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
非特許文献1は、シリカゲルカラムに銀を添加し、多重結合、幾何異性体の選択的な精製方法を開示している。
【0003】
非特許文献2は、銀を固定化したHPLC用カラムを用いて、多重結合、幾何異性体の選択的な精製方法を開示している。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】H. J. Dutton, C. R. Scholfield, E. P. Jones, Chem. Ind. (London), 1874-1876 (1961).
【非特許文献2】Christie, W.W., J. High Res. Chromatogr. Chromatogr. Commun., 10, 148-150(1987).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、新たに、シクロプロピルアセチレンの精製方法を提供する事を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題を解決すべく、鋭意研究を重ねた結果、シクロプロピルアセチレンを含む組成物を、硝酸銀(I)、或は過酸化水素等の過酸化物に接触させる事に依り、良好に、シクロプロピルアセチレンを精製する事が出来た。
【0007】
本発明者は、係る知見に基づき、更に研究を重ね、本発明を完成するに至った。
【0008】
即ち、本発明は、以下のシクロプロピルアセチレンの精製方法、シクロプロピルアセチレンを含む組成物の製造方法、及びシクロプロピルアセチレンを含む組成物を包含する。
【0009】
項1.
シクロプロピルアセチレンの精製方法であって、
シクロプロピルアセチレンを含む組成物を、
硝酸銀(I);又は、
過酸化水素、メタクロロ過安息香酸、及びtert-ブチルヒドロペルオキシドから成る群から選択される少なくとも一種の過酸化物;
に接触させる工程を含む、精製方法。
【0010】
項2.
前記工程は、シクロプロピルアセチレン以外の不純物を、
硝酸銀(I);又は、
過酸化水素、メタクロロ過安息香酸、及びtert-ブチルヒドロペルオキシドから成る群から選択される少なくとも一種の過酸化物;
と反応させて、
シクロプロピルアセチレンを、蒸留する事に依り、回収する、前記項1に記載の精製方法。
【0011】
項3.
前記不純物は、(E)-ペント-3-エン-1-イン、(Z)-ペント-3-エン-1-イン、及びペント-1-エン-4-インから成る群から選択される少なくとも一種の成分である、前記項2に記載の精製方法。
【0012】
項4.
前記工程は、精製後の組成物において、シクロプロピルアセチレンの純度を99.8質量%以上とする、前記項1~3の何れかに記載の精製方法。
【0013】
項5.
シクロプロピルアセチレンを含む組成物の製造方法であって、
シクロプロピルアセチレンを含む組成物を、
硝酸銀(I);又は、
過酸化水素、メタクロロ過安息香酸、及びtert-ブチルヒドロペルオキシドから成る群から選択される少なくとも一種の過酸化物;
に接触させる工程を含む、製造方法。
【0014】
項6.
前記工程は、シクロプロピルアセチレン以外の不純物を、
硝酸銀(I);又は、
過酸化水素、メタクロロ過安息香酸、及びtert-ブチルヒドロペルオキシドから成る群から選択される少なくとも一種の過酸化物;
と反応させて、
シクロプロピルアセチレンを、蒸留する事に依り、回収する、前記項5に記載の製造方法。
【0015】
項7.
前記不純物は、(E)-ペント-3-エン-1-イン、(Z)-ペント-3-エン-1-イン、及びペント-1-エン-4-インから成る群から選択される少なくとも一種の成分である、前記項6に記載の製造方法。
【0016】
項8.
前記工程は、製造後の組成物において、シクロプロピルアセチレンの純度を99.8質量%以上とする、前記項5~7の何れかに記載の製造方法。
【0017】
項9.
シクロプロピルアセチレンを純度99.8質量%以上で含む組成物。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、新たに、シクロプロピルアセチレンの精製方法を提供する事が出来る。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に本発明を詳細に説明する。
【0020】
本明細書において、「含む」及び「含有」は、「含む(comprise)」、「実質的にのみから成る(consist essentially of)」、及び「のみから成る(consist of)」のいずれも包含する概念である。
【0021】
本明細書において、数値範囲を「A~B」で示す場合、A以上B以下を意味する。
【0022】
[1]シクロプロピルアセチレンの精製方法
現在、市販されているシクロプロピルアセチレンの三重結合及び三員環を含む化合物は、一般に、開環した不純物を含有しており、従来技術では、不純物の低減化を進める事は困難である。シクロプロピルアセチレンと含まれる不純物とは、沸点が近く、シクロプロピルアセチレンの製造において、製造段階の最終工程まで残留し、シクロプロピルアセチレンの純度の低下の一因と成っている。そして、シクロプロピルアセチレンに含まれる不純物は、シクロプロピルアセチレンと同様にアルキン化合物であるから、シクロプロピルアセチレンを用いた反応において、同様に反応し得、最終生成物或は最終化合物にまで、残り得る化合物である。
【0023】
本発明のシクロプロピルアセチレンの精製方法に依り、良好に、シクロプロピルアセチレンの三重結合及び三員環を含む化合物の純度を向上させる事が出来、類似の不純物の低減化を可能とする。
【0024】
本発明のシクロプロピルアセチレン(「CPA」とも記す)の精製方法は、シクロプロピルアセチレンを含む組成物を、硝酸銀(I)(「AgNO3」とも記す);又は、過酸化水素(「H2O2」とも記す)、メタクロロ過安息香酸(「mCPBA」とも記す)、及びtert-ブチルヒドロペルオキシド(「TBHP」とも記す)から成る群から選択される少なくとも一種の過酸化物;に接触させる工程を含む。
【0025】
シクロプロピルアセチレンは、下記化合物である。
【0026】
【化1】
【0027】
本発明のシクロプロピルアセチレンの精製方法では、シクロプロピルアセチレンを含む組成物から、シクロプロピルアセチレンを含む組成物に含まれるシクロプロピルアセチレン以外の不純物を、AgNO3;又は、H2O2、mCPBA、及びTBHPから成る群から選択される少なくとも一種の過酸化物;と反応させて、シクロプロピルアセチレンを、蒸留する事に依り、回収する。
【0028】
シクロプロピルアセチレンを含む組成物において、シクロプロピルアセチレン以外の不純物を、AgNO3と反応させる事に依り、不純物の不溶物を生成し、これを沈殿させて、不純物を分離し、除去する。この様に、不純物は、不溶物として除去し、一方、シクロプロピルアセチレンは、シクロプロピルアセチレンを含む組成物を蒸留する事に依り、回収する。
【0029】
シクロプロピルアセチレン以外の不純物を、H2O2、mCPBA、及びTBHPから成る群から選択される少なくとも一種の過酸化物と反応させる事に依り、不純物の沸点を変化させる。この様に、不純物の沸点を変化させ、シクロプロピルアセチレンを含む組成物を蒸留(精留)する事に依り、高純度又は選択的に、シクロプロピルアセチレンを回収する。
【0030】
本発明のシクロプロピルアセチレンの精製方法で除かれる不純物は、例えば、(E)-ペント-3-エン-1-イン、(Z)-ペント-3-エン-1-イン、及びペント-1-エン-4-インから成る群から選択される少なくとも一種の成分である。
【0031】
不純物の(E)-ペント-3-エン-1-イン((E)-3-ペンテン-1-イン)は、下記化合物である。
【0032】
【化2】
【0033】
本発明のシクロプロピルアセチレンの精製方法では、好ましくは、精製後の組成物において、(E)-ペント-3-エン-1-インの含有量(最大値)を0.1質量%以下とし、より好ましくは、0.05質量%以下とする。
【0034】
不純物の(Z)-ペント-3-エン-1-イン((Z)-3-ペンテン-1-イン)は、下記化合物である。
【0035】
【化3】
【0036】
本発明のシクロプロピルアセチレンの精製方法では、好ましくは、精製後の組成物において、(Z)-ペント-3-エン-1-インの含有量(最大値)を0.1質量%以下とし、より好ましくは、0.05質量%以下とする。
【0037】
不純物のペント-1-エン-4-イン(1-ペンテン-4-イン)は、下記化合物である。
【0038】
【化4】
【0039】
本発明のシクロプロピルアセチレンの精製方法では、好ましくは、精製後の組成物において、ペント-1-エン-4-インの含有量(最大値)を0.1質量%以下とし、より好ましくは、0.05質量%以下とする。
【0040】
本発明のシクロプロピルアセチレンの精製方法では、好ましくは、精製後の組成物において、シクロプロピルアセチレンの純度を99.8質量%以上とし、より好ましくは、純度を99.9質量%以上とする。
【0041】
本発明では、AgNO3、H2O2、mCPBA、TBHP等が、シクロプロピルアセチレンを含む組成物に含まれるアルケンを有する不純物の物性を選択的に変化させる。
【0042】
その結果、シクロプロピルアセチレンを含む組成物を蒸留する事に依り、良好に、シクロプロピルアセチレンを含む組成物からシクロプロピルアセチレンを分離し、精製する事を可能とする。
【0043】
本発明では、組成物から、その不純物の選択的な低減を可能とする。
【0044】
(1-1)シクロプロピルアセチレンを含む組成物
シクロプロピルアセチレンを含む組成物は、シクロプロピルアセチレンに加えて、シクロプロピルアセチレンの製造時に生成し得る不純物が含まれ得る。
【0045】
不純物として、(E)-ペント-3-エン-1-イン、(Z)-ペント-3-エン-1-イン、ペント-1-エン-4-イン等が含まれ得る。
【0046】
シクロプロピルアセチレンを含む組成物は、(E)-ペント-3-エン-1-イン、(Z)-ペント-3-エン-1-イン、及びペント-1-エン-4-インから成る群から選択される少なくとも一種の成分を含み得る。
【0047】
(1-2)シクロプロピルアセチレンを含む組成物を、AgNO 3 、H 2 O 2 等に接触させる工程
本発明のシクロプロピルアセチレンの精製方法は、シクロプロピルアセチレンを含む組成物を、AgNO3;又は、H2O2、mCPBA、及びTBHPから成る群から選択される少なくとも一種の過酸化物;(「AgNO3、H2O2、mCPBA、TBHP等」とも記す)に接触させる工程を含む。
【0048】
本発明のシクロプロピルアセチレンの精製方法では、シクロプロピルアセチレンを含む組成物を、AgNO3、H2O2、mCPBA、TBHP等に接触させる事とは、例えば、フラスコ等の容器で、シクロプロピルアセチレンを含む組成物と、AgNO3、H2O2、mCPBA、TBHP等とを入れて、例えば、室温(1℃~30℃)で撹拌する事を意味する。
【0049】
本発明のシクロプロピルアセチレンの精製方法の接触させる工程では、好ましくは、シクロプロピルアセチレン以外の不純物を、AgNO3、H2O2、mCPBA、TBHP等の過酸化物と反応させて、シクロプロピルアセチレンを、蒸留する事に依り、回収する。
【0050】
シクロプロピルアセチレンを含む組成物において、シクロプロピルアセチレン以外の不純物を、AgNO3と反応させる事に依り、不純物の不溶物を生成し、これを沈殿させて、不純物を分離し、除去する。この様に、不純物は、不溶物として除去し、一方、シクロプロピルアセチレンは、シクロプロピルアセチレンを含む組成物を蒸留する事に依り、回収する。
【0051】
シクロプロピルアセチレン以外の不純物を、H2O2、mCPBA、及びTBHPから成る群から選択される少なくとも一種の過酸化物と反応させる事に依り、不純物の沸点を変化させる。この様に、不純物の沸点を変化させ、シクロプロピルアセチレンを含む組成物を蒸留(精留)する事に依り、高純度又は選択的に、シクロプロピルアセチレンを回収する。
【0052】
本発明のシクロプロピルアセチレンの精製方法では、効率的に不純物を除去するには、AgNO3、H2O2、mCPBA、TBHP等の使用量は、シクロプロピルアセチレンを含む組成物とAgNO3、H2O2、mCPBA、TBHP等とを、質量比(シクロプロピルアセチレンを含む組成物:AgNO3、H2O2、mCPBA、TBHP等)で、好ましくは、1,000g~4,000g:10g~60g程度であり、より好ましくは、1,500g~3,000g:15g~45g程度であり、更に好ましくは、1,800g~2,500g:20g~30g程度で接触させる。
【0053】
本発明のシクロプロピルアセチレンの精製方法では、効率的に不純物を除去するには、AgNO3、H2O2、mCPBA、TBHP等の使用量は、シクロプロピルアセチレンを含む組成物とAgNO3、H2O2、mCPBA、TBHP等とを、モル比(シクロプロピルアセチレンを含む組成物:AgNO3、H2O2、mCPBA、TBHP等)で、好ましくは、10mol~50mol:0.01mol~1mol程度であり、より好ましくは、15mol~45mol:0.05mol~0.5mol程度であり、更に好ましくは、20mol~40mol:0.1mol~0.2mol程度で接触させる。
【0054】
本発明のシクロプロピルアセチレンの精製方法では、効率的に不純物を除去するには、シクロプロピルアセチレンを含む組成物(組成物にシクロプロピルアセチレンが略100mol存在すると仮定する)に対して、AgNO3、H2O2、mCPBA、TBHP等の使用量は、好ましくは、0.05mol%~5mol%程度であり、より好ましくは、0.1mol%~2mol%程度であり、更に好ましくは、0.2mol%~1mol%程度で接触させる。
【0055】
本発明では、シクロプロピルアセチレンを含む組成物から、高純度で、シクロプロピルアセチレンを回収する理由から、例えば、AgNO3の添加量を適宜決めれば良い。シクロプロピルアセチレンを含む組成物に対して、例えば、AgNO3の添加量を多くする事に依り、高純度で、シクロプロピルアセチレンを回収する事が可能である。
【0056】
本発明のシクロプロピルアセチレンの精製方法では、効率的に不純物を除去するには、シクロプロピルアセチレンを含む組成物とAgNO3、H2O2、mCPBA、TBHP等との接触温度は、好ましくは、室温(1℃~30℃)で接触させる事である。
【0057】
本発明のシクロプロピルアセチレンの精製方法では、効率的に不純物を除去するには、シクロプロピルアセチレンを含む組成物とAgNO3、H2O2、mCPBA、TBHP等との接触時間は、好ましくは、1時間~50時間程度であり、より好ましくは、5時間~40時間程度であり、更に好ましくは、10時間~30時間程度で接触させる事である。
【0058】
反応容器は、好ましくは、縦型反応器、横型反応器、多管型反応器等である。反応器の材質は、好ましくは、ガラス、ステンレス、鉄、ニッケル、鉄ニッケル合金等が挙げられる。
【0059】
シクロプロピルアセチレンを分離精製は、例えば、蒸留方法を適用すればよい。シクロプロピルアセチレンは沸点52℃であり、常圧蒸留とするのが好ましい。また、連続式反応装置(蒸留塔)を用いて、反応及び分離を、連続的に、或は同時に、実施する事が可能である。連続式反応装置は、設備も経済的である。
【0060】
精製前のシクロプロピルアセチレンを含む組成物とAgNO3、H2O2、mCPBA、TBHP等とを、蒸留塔スチル(still)部に投入し、シクロプロピルアセチレンを含む組成物に含まれる不純物の物性を変化させ、一方、シクロプロピルアセチレンを、蒸留(精留)に依って、効率良く、連続的に、回収する事が出来る。
【0061】
一例として、フラスコ等に、精製前の2,000g(30mol)程度のシクロプロピルアセチレンを含む組成物と、25g(0.15mol)(0.5mol%)程度の硝酸銀とを入れて、室温(1℃~30℃)で、20時間程度、撹拌し、反応を進める。次いで、この反応液を、常圧で、蒸留(蒸留に依り、シクロプロピルアセチレンを精製する精留)し、本留、後留1、後留2を行い、精製後のシクロプロピルアセチレンを含む組成物を回収する。
【0062】
(1-3)シクロプロピルアセチレンの純度を99.8質量%以上とする事
シクロプロピルアセチレン、不純物の(E)-ペント-3-エン-1-イン、(Z)-ペント-3-エン-1-イン、ペント-1-エン-4-イン等を含む組成物中のシクロプロピルアセチレンの純度(質量%)、不純物の含有量(質量%)は、ガスクロマトグラフィー(GC)を用いて、測定する事が出来る。
【0063】
本発明のシクロプロピルアセチレンの精製方法では、好ましくは、精製後の組成物において、シクロプロピルアセチレンの純度を99.8質量%以上とし、より好ましくは、純度を99.9質量%以上とする。
【0064】
本発明のシクロプロピルアセチレンの精製方法では、不純物は、例えば、(E)-ペント-3-エン-1-イン、(Z)-ペント-3-エン-1-イン、及びペント-1-エン-4-インから成る群から選択される少なくとも一種の成分である。
【0065】
本発明のシクロプロピルアセチレンの精製方法では、好ましくは、精製後の組成物において、(E)-ペント-3-エン-1-インの含有量(最大値)を0.1質量%以下とし、より好ましくは、0.05質量%以下とする。
【0066】
本発明のシクロプロピルアセチレンの精製方法では、好ましくは、精製後の組成物において、(Z)-ペント-3-エン-1-インの含有量(最大値)を0.1質量%以下とし、より好ましくは、0.05質量%以下とする。
【0067】
本発明のシクロプロピルアセチレンの精製方法では、好ましくは、精製後の組成物において、ペント-1-エン-4-インの含有量(最大値)を0.1質量%以下とし、より好ましくは、0.05質量%以下とする。
【0068】
[2]シクロプロピルアセチレンを含む組成物の製造方法
本発明のシクロプロピルアセチレンを含む組成物の製造方法は、シクロプロピルアセチレンを含む組成物を、硝酸銀(I)(「AgNO3」とも記す);又は、過酸化水素(「H2O2」とも記す)、メタクロロ過安息香酸(「mCPBA」とも記す)、及びtert-ブチルヒドロペルオキシド(「tBuOOH」とも記す)から成る群から選択される少なくとも一種の過酸化物;(「AgNO3、H2O2、mCPBA、TBHP等」とも記す)に接触させる工程を含む。
【0069】
本発明のシクロプロピルアセチレンを含む組成物の製造方法では、好ましくは、シクロプロピルアセチレンを含む組成物から、シクロプロピルアセチレンを含む組成物に含まれるシクロプロピルアセチレン以外の不純物を、AgNO3、H2O2、mCPBA、TBHP(tBuOOH)等と反応させ、その不純物を除去する。
【0070】
本発明のシクロプロピルアセチレンを含む組成物の製造方法では、不純物は、例えば、(E)-ペント-3-エン-1-イン、(Z)-ペント-3-エン-1-イン、及びペント-1-エン-4-インから成る群から選択される少なくとも一種の成分である。
【0071】
本発明のシクロプロピルアセチレンを含む組成物の製造方法では、好ましくは、製造後のシクロプロピルアセチレンを含む組成物において、シクロプロピルアセチレンの純度を99.8質量%以上とし、より好ましくは、純度を99.9質量%以上とする。
【0072】
シクロプロピルアセチレンを含む組成物、シクロプロピルアセチレンを含む組成物を、AgNO3、H2O2、mCPBA、TBHP(tBuOOH)等に接触させる工程、シクロプロピルアセチレンの純度を99.8質量%以上とする事は、前記シクロプロピルアセチレンの精製方法を採用する。
【0073】
本発明では、シクロプロピルアセチレンを含む組成物に対して、シクロプロピルアセチレンを含む組成物に含まれる不純物と相互作用を持つAgNO3、H2O2、mCPBA、TBHP等を添加し、蒸留(精留)を行う事に依り、良好に、その不純物の物性を変化させ、一方、シクロプロピルアセチレンを、蒸留(精留)に依って、効率良く、連続的に、回収する事に依り、その不純物の選択的な低減を可能とする。
【0074】
[3]シクロプロピルアセチレンを含む組成物
本発明のシクロプロピルアセチレンを含む組成物は、シクロプロピルアセチレンを純度99.8質量%以上で含み、好ましくは、純度を99.9質量%以上で含む。
【0075】
シクロプロピルアセチレンを含む組成物は、好ましくは、(E)-ペント-3-エン-1-インの含有量(最大値)を0.1質量%以下とし、より好ましくは、0.05質量%以下とする。
【0076】
シクロプロピルアセチレンを含む組成物は、好ましくは、(Z)-ペント-3-エン-1-インの含有量(最大値)を0.1質量%以下とし、より好ましくは、0.05質量%以下とする。
【0077】
シクロプロピルアセチレンを含む組成物は、好ましくは、ペント-1-エン-4-インの含有量(最大値)を0.1質量%以下とし、より好ましくは、0.05質量%以下とする。
【0078】
シクロプロピルアセチレンを含む組成物は、(E)-ペント-3-エン-1-イン、(Z)-ペント-3-エン-1-イン、及びペント-1-エン-4-インから成る群から選択される少なくとも一種の成分を含み得る。
【0079】
本発明のシクロプロピルアセチレンを含む組成物では、シクロプロピルアセチレンの製造段階の最終工程まで残留し得るシクロプロピルアセチレン由来の不純物(シクロプロピルアセチレンが開環した不純物、シクロプロピルアセチレンと同様のアルキン化合物)の含有量が低減されている。
【0080】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこうした例に何ら限定されるものではない。本発明は、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の形態で実施し得ることは勿論である。
【実施例0081】
以下、実施例に基づき、本発明の実施形態をより具体的に説明する。
【0082】
本発明がこれらに限定されるものではない。
【0083】
実施例
3Lナス型フラスコに、精製前のシクロプロピルアセチレンを含む組成物(2,011g、30.42mol)、硝酸銀(I)(25.84g、0.152mol、0.5mol%(組成物にシクロプロピルアセチレンが略100mol存在すると仮定した場合、0.5mol))を入れて、室温で20時間撹拌し、反応を進めた。
【0084】
この反応液を、常圧で、蒸留(シクロプロピルアセチレンを精留)し、本留(1,902g)、後留1(24g)、後留2(16g)を経て、精製後のシクロプロピルアセチレンを合計1,942g(97質量%)を回収した。
【0085】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0086】
本発明のシクロプロピルアセチレンの精製方法に依り、良好に、シクロプロピルアセチレン等の三重結合及び三員環を含む化合物の純度を向上させる事が出来、類似の不純物の低減化を可能とする。
【0087】
本発明のシクロプロピルアセチレンを含む組成物は、シクロプロピルアセチレンの製造段階の最終工程まで残留し得るシクロプロピルアセチレン由来の不純物(シクロプロピルアセチレンが開環した不純物、シクロプロピルアセチレンと同様のアルキン化合物)が低減されている。