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特開2024-5915工具把持部材、工具マガジン、工作機械
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024005915
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】工具把持部材、工具マガジン、工作機械
(51)【国際特許分類】
   B23Q 3/157 20060101AFI20240110BHJP
【FI】
B23Q3/157 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022106382
(22)【出願日】2022-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104178
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 尚
(72)【発明者】
【氏名】天野 真仁
【テーマコード(参考)】
3C002
【Fターム(参考)】
3C002AA03
3C002AA06
3C002BB02
3C002DD14
3C002KK04
(57)【要約】
【課題】工具マガジンが損傷する可能性を低減できる工具把持部材、工具マガジン、工作機械を提供する。
【解決手段】
工具把持部材35は、工具マガジンに設けられ、工具を支持する工具ホルダを把持する。基台351は、工具マガジンのマガジンベースに固定され、工具ホルダが係合する係合部354を備える。一対の爪部材352A、352Bは、基台351に設けた支点部C1、C2を中心に回動し、係合部354に工具ホルダが係合した状態で、工具ホルダを挟み込んで把持する。基台351の係合部354は、一対の爪部材352A、352Bが互いに対向する左右方向と、支点部C1、C2の軸方向とに直交する方向に延びる溝部356、360を備える。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
工具マガジンに設けられ、工具を支持する工具ホルダを把持する工具把持部材において、
前記工具マガジンのマガジンベースに固定され、前記工具ホルダが係合する係合部を備えた基台と、
支点部を中心に回動し、前記係合部に前記工具ホルダが係合した状態で、前記工具ホルダを挟み込んで把持する一対の爪部材と
を備え、
前記基台の前記係合部は、前記一対の爪部材が互いに対向する対向方向と、前記支点部の軸方向とに直交する方向に延びる溝部を備えた
ことを特徴とする工具把持部材。
【請求項2】
前記溝部は、前記対向方向に所定の溝幅を有し、
前記溝部は、前記軸方向の一方から見た場合、前記対向方向における前記係合部の中心に重ねて配置される
ことを特徴とする請求項1に記載の工具把持部材。
【請求項3】
前記工具ホルダは、所定の位置に溝部を備え、
前記係合部は、前記溝部に嵌合する嵌合部を備えた
ことを特徴とする請求項1に記載の工具把持部材。
【請求項4】
前記基台の材質は、アルミである
ことを特徴とする請求項1に記載の工具把持部材。
【請求項5】
前記基台の材質は、アルミダイカストである
ことを特徴とする請求項1に記載の工具把持部材。
【請求項6】
前記工具把持部材は、主軸の軸方向が水平方向に延びる工作機械に設けられる
ことを特徴とする請求項1に記載の工具把持部材。
【請求項7】
請求項1~6の何れかに記載の工具把持部材
を備えたことを特徴とする工具マガジン。
【請求項8】
請求項7に記載の工具マガジン
を備えたことを特徴とする工作機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工具把持部材、工具マガジン、工作機械に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1の工作機械は、主軸に装着した工具と、工具マガジンの工具把持部材に把持された次工具とを工具交換する。工具交換時、工作機械は、主軸を上方に移動させる。工具マガジンに固定した工具把持部材は、主軸に装着された工具ホルダを把持する。工作機械は、工具マガジンを前方へ移動して、工具把持部材が把持した工具ホルダと主軸とのクランプを解除する。工作機械は、工具マガジン駆動部を駆動して、次工具の工具ホルダを交換位置に旋回する。工作機械は、工具マガジンを後方へ移動して、交換位置にある次工具の工具ホルダを主軸に対してクランプする。この状態で、工作機械は、主軸を下方に移動して、次工具が取り付けられた工具ホルダを工具把持部材から取り外す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6-740号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記工具把持部材は、上下方向への荷重に対して強度が高い場合がある。このため、工具交換時に上方に移動した主軸が工具把持部材の予期せぬ位置に衝突した場合、工具把持部材が損傷する代わりに、工具マガジンに負荷がかかり損傷する可能性がある。
【0005】
本発明の目的は、工具マガジンが損傷する可能性を低減できる工具把持部材、工具マガジン、工作機械を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の工具把持部材は、工具マガジンに設けられ、工具を支持する工具ホルダを把持する工具把持部材において、前記工具マガジンのマガジンベースに固定され、前記工具ホルダが係合する係合部を備えた基台と、支点部を中心に回動し、前記係合部に前記工具ホルダが係合した状態で、前記工具ホルダを挟み込んで把持する一対の爪部材とを備え、前記基台の前記係合部は、前記一対の爪部材が互いに対向する対向方向と、前記支点部の軸方向とに直交する方向に延びる溝部を備えたことを特徴とする。工具交換時、予期せぬ位置に主軸が移動して工具マガジンに過大な負荷が発生する場合がある。この場合、溝部が係合部の他の部分に比べて薄いので、工具把持部材の溝部に負荷が集中する。このため、工具マガジンが損傷する代わりに、工具把持部材の基台が損傷する。故に、工具マガジンが損傷する可能性を低減できる。
【0007】
請求項2の工具把持部材では、前記溝部は、前記対向方向に所定の溝幅を有し、前記溝部は、前記軸方向の一方から見た場合、前記対向方向における前記係合部の中心に重ねて配置されてもよい。この場合、主軸がグリップアームの何れの位置に衝突しても、工具把持部材の溝部に負荷が集中しやすい。このため、工具マガジンが損傷する代わりに、工具把持部材の基台が損傷する。故に、工具マガジンが損傷する可能性を低減できる。
【0008】
請求項3の工具把持部材では、前記工具ホルダは、所定の位置に溝部を備え、前記係合部は、前記溝部に嵌合する嵌合部を備えてもよい。予期せぬ位置に主軸が移動した場合、嵌合部を備えた溝部が損傷することで、工具ホルダが損傷する可能性を抑制できる。
【0009】
請求項4の工具把持部材では、前記基台の材質は、アルミであってもよい。工具把持部材の材質がアルミの場合も、工具マガジンの代わりに基台が損傷する。故に、工具マガジンが損傷する可能性を低減できる。
【0010】
請求項5の工具把持部材では、前記基台の材質は、アルミダイカストであってもよい。工具把持部材の材質がアルミダイカストの場合も、工具マガジンの代わりに基台が損傷する。故に、工具マガジンが損傷する可能性を低減できる。
【0011】
請求項6の工具把持部材では、前記工具把持部材は、主軸の軸方向が水平方向に延びる工作機械に設けられてもよい。工具把持部材は、主軸の軸方向が水平方向に延びる工作機械においても、工具マガジンが損傷する可能性を低減できる。
【0012】
請求項7の工具マガジンは、請求項1~6の何れかに記載の工具把持部材を備えたことを特徴とする。工具マガジンは、工具把持部材が損傷することで、工具マガジンが損傷する可能性を低減できる。
【0013】
請求項8の工作機械は、請求項7に記載の工具マガジンを備えたことを特徴とする。工作機械は、工具把持部材が損傷することで、工具マガジンが損傷する可能性を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】工作機械1の斜視図。
図2】工作機械1(シャッタ103:閉)の斜視図。
図3】工作機械1(シャッタ103:開)の斜視図。
図4】工作機械1(マガジンカバー10省略)の斜視図。
図5】工作機械1(マガジンカバー10省略)の右側面図。
図6】主軸ヘッド6周囲の一部を断面で示した右側面図。
図7図6の状態からアンクランプアーム50が支点軸45を中心に前方に揺動した状態を示す図。
図8】グリップアーム35の斜視図。
図9】(A)はグリップアーム35の背面図であり、(B)はグリップアーム35を下から見た図。
図10】主軸7が加工位置の状態を示す図。
図11図10の状態から主軸7が後方に移動した状態を示す図。
図12図11の状態から主軸7がY軸ATC原点まで上昇した状態を示す図。
図13図12の状態から主軸7がY軸ATC原点からATC位置に後進した状態を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の一実施形態を説明する。以下説明は図中に矢印で示す左右、上下、前後を使用する。工作機械1の左右方向、上下方向、前後方向は夫々工作機械1のX軸方向、Y軸方向、Z軸方向である。図1に示す工作機械1は後述の主軸7(図2図6参照)が前後方向(Z軸方向)に延びる横形であり、後述の立柱5がX軸方向とZ軸方向に移動する。
【0016】
図1図7を参照し、工作機械1の構造を説明する。図1図2に示すように、工作機械1は、ベース2、立柱5、主軸ヘッド6、主軸7(図2図6参照)、制御箱8、回転テーブル9、X軸移動機構11、Z軸移動機構12、Y軸移動機構13(図6参照)、ATC装置30(図4参照)、マガジンカバー10等を備える。ベース2はZ軸方向に長い平面視矩形状の鉄製土台である。X軸移動機構11はベース2上面後部に設け、移動体15をX軸方向に移動可能に支持する。Z軸移動機構12は移動体15上面に設け、立柱5をZ軸方向に移動可能に支持する。
【0017】
立柱5は上下方向に延びる立柱である。立柱5は貫通口5A(図4参照)を備える。貫通口5Aは正面視縦長矩形状であり、立柱5の前面と後面を前後方向に貫通する。枠カバー20は立柱5前面に取り付ける。枠カバー20は正面視縦長矩形状の枠体であり、立柱5と後述の主軸ヘッド6の間の隙間を外方から覆う。Y軸移動機構13は立柱5前面に設け、主軸ヘッド6を立柱5前面に沿ってY軸方向に移動可能に支持する(図6参照)。X軸移動機構11、Z軸移動機構12、Y軸移動機構13は例えばガイド、ボールネジ、モータを備え、モータの動力で対象部品(移動体15、立柱5、主軸ヘッド6)をガイドに沿って移動する。
【0018】
主軸ヘッド6はZ軸方向に延びる。主軸ヘッド6の前端側は略円柱状、後端側は略直方体状である。工作機械1は加工領域とATC領域を備える(図5参照)。Y軸方向において、主軸ヘッド6は加工領域とATC領域の間を移動可能である。加工領域はY軸原点よりもベース2側(下側)の空間に設ける。Y軸原点とはY軸の機械座標が0の位置である。ATC領域は、Y軸原点に対して加工領域とは反対側(上側)の空間に設ける。加工領域は回転テーブル9上面に固定されたワークの加工を行う領域である。ATC領域はATC装置30により工具交換を行う領域である。ATC領域は加工領域の上側で且つZ軸方向にて加工領域と重なる位置に設ける。
【0019】
主軸ヘッド6は上部カバー28と鎧カバー85を備える。上部カバー28は正面視略矩形状の金属板である。上部カバー28の下端部は主軸ヘッド6上面後端部に固定する。上部カバー28は、主軸ヘッド6上面後端部から上方に延出する。上部カバー28は主軸ヘッド6と一体して上下動することで、立柱5前面の主軸ヘッド6よりも上側の領域を前方から常時覆う。鎧カバー85は主軸ヘッド6下面後端部に吊り下げた状態で固定する。鎧カバー85は複数の金属板を上下方向に並べて備える。鎧カバー85は主軸ヘッド6の高さに応じて上下方向にテレスコピックに伸縮することで、立柱5前面の主軸ヘッド6よりも下側の領域を前方から常時覆う。
【0020】
図6に示すように、主軸7は主軸ヘッド6内の前端側に設け、主軸ヘッド6と同軸且つZ軸方向に延びる。主軸ヘッド6は主軸7を回転可能に支持する。主軸ヘッド6は、主軸モータ26を保持する。主軸モータ26の出力軸26Aは前方に延び、カップリング25を介して主軸7後端部と同軸上に連結する。主軸ヘッド6内には、アンクランプアーム50を設ける。アンクランプアーム50は主軸7に装着する工具ホルダ90のクランプの固定と解除を行う。
【0021】
主軸7は工具装着穴40、ホルダ挟持部材41、ドローバ42を備える。工具装着穴40は主軸7前端部に設ける(図1図6参照)。工具装着穴40は主軸7前端部に向けて拡径する略円錐状のテーパ穴である。ホルダ挟持部材41は工具装着穴40の奥側(後端側)に設ける。ドローバ42は主軸7の軸穴に同軸上に挿入し且つ前後方向に移動自在に設ける。主軸7は後端側の外周面にガイド穴44を設ける。ガイド穴44は主軸7の軸方向に平行に延びる長穴である。ドローバ42は後端部にピン43を備える。ピン43はドローバ42の軸方向に直交する方向に延び、主軸7のガイド穴44を介して主軸7の外側に突出する。ガイド穴44はピン43を軸方向に平行にガイドする。
【0022】
工具ホルダ90は工具装着穴40に着脱自在に装着する。工具ホルダ90は一端側に工具91を保持し、他端側にテーパ部92とプルスタッド93を備える。テーパ部92は工具装着穴40に対応する略円錐状であり、工具91側とは反対側に離間する方向に縮径する。プルスタッド93はテーパ部92頂上部からテーパ部92から離れる方向に突出する。テーパ部92は主軸7の工具装着穴40に密着して装着する。工具装着穴40にテーパ部92が装着すると、ホルダ挟持部材41はプルスタッド93を挟持する。その状態で、ホルダ挟持部材41が図示外のバネで後方に引っ張られることにより、プルスタッド93の挟持がロックされる。主軸7内にてドローバ42がホルダ挟持部材41を前方に押圧すると、ホルダ挟持部材41はバネ力に抗して前方に移動し、プルスタッド93の挟持が解除される。
【0023】
図4に示すように、ベース2は後部に一対の支持部材17、18を備える。支持部材17、18は左右方向に互いに離間し且つ上方に延び、制御箱8を下方から支持する。制御箱8は内部に制御盤(図示略)を収納する。制御盤は工作機械1の動作を制御する。図1図4図5に示すように、ベース2は上面前側に固定台16を設ける。回転テーブル9は固定台16上に回転可能に支持される。回転テーブル9は主軸ヘッド6前方に位置する。回転テーブル9は上面にワーク(図示略)を治具(図示略)で固定し、Y軸方向に平行な回転軸を中心に360°回転可能である。
【0024】
図4に示すように、ベース2は上面の前側で且つ左右両側に一対の支持柱21、22を備える。支持柱21はベース2上面右側から上方に延び且つ上部が左方に略90°屈曲する。支持柱22はベース2上面左側から上方に延び且つ上部が右方に略90°屈曲する。連結板23は正面視略矩形状であり、支持柱21、22の互いに対向する夫々の上部の間に固定する。
【0025】
ATC装置30は連結板23前面に固定する。ATC装置30は支持柱21、22により、主軸ヘッド6上方に支持する。図4図5に示すように、ATC装置30は工具マガジン31、減速機32、マガジンモータ33等を備える。工具マガジン31はマガジンベース37と複数のグリップアーム35を備える。マガジンベース37は略円盤状であり、Z軸方向に平行な一軸線を中心に連結板23前面にて回転可能に支持する。減速機32とマガジンモータ33は工具マガジン31に取り付ける。マガジンモータ33の出力軸(図示略)は減速機32を介してマガジンベース37の回転軸(図示略)と接続する。故にマガジンモータ33の動力は減速機32を介してマガジンベース37の回転軸に伝達する。
【0026】
図4図5に示すように、複数のグリップアーム35はマガジンベース37外周部に沿って並んで設け、径方向外側に向けて放射状に延びる。グリップアーム35は、工具ホルダ90を水平に寝かせた姿勢で、左右方向から工具ホルダ90を把持する(図示略)。主軸7と工具交換を行うグリップアーム35は工具マガジン31の工具交換位置に移動する。工具交換位置は工具マガジン31の最下部の位置である。グリップアーム35の構造は後述する。
【0027】
図1図3に示すように、マガジンカバー10は、支持柱21、22の夫々の上部の前面に固定する。マガジンカバー10は箱状であり工具マガジン31の周囲を覆う。マガジンカバー10は切粉と切削液の飛沫が工具マガジン31に付着するのを防止する。マガジンカバー10の底壁101には開口102を設ける。開口102は底面視矩形状であり、工具マガジン31の工具交換位置の直下に位置する。開口102にはシャッタ103を設ける。シャッタ103は制御盤の制御により開口102を開閉する。
【0028】
図8図9を参照してグリップアーム35の構造を説明する。グリップアーム35は、左右対称の構造である。グリップアーム35は、基台351、一対の爪部材352A、352B、バネ部材353等を備える。基台351は、上下方向に延びる。基台351の上端部は、複数のネジ穴363を備える。基台351は、工具マガジン31のマガジンベース37に複数のネジ穴363を介してネジ等で固定する。基台351の下方側には、支点部C1、C2が設けられる。支点部C1、C2は、左右に並ぶ。支点部C1、C2は、円柱状であり、基台351から前方に向けて突出する。支点部C1、C2の軸方向は前後方向である。
【0029】
基台351の下端部は、係合部354を備える。係合部354は、基台351のうち工具ホルダ90と係合する部分である。係合部354は、下方に向けて二股に延びる。係合部354の二股に延びる部分の内側部分には保持部359が設けられる。保持部359は、工具ホルダ90の外周面に設けた溝に係合して工具ホルダ90を保持する。係合部354の前後方向の所定の厚みL1(図9(B)参照)は、例えば23mmである。
【0030】
図9(A)(B)に示すように、係合部354は、溝部356、360を備える。溝部356は係合部354の後側に設け、溝部360は係合部354の前側に設ける。溝部356、360は、前方から見た場合、左右方向における基台351の中心Mに重ねて配置される。より詳細には、溝部356、360の左右方向の中心は、基台351の中心Mと重なる。溝部356は、係合部354の後面から前方へ向けて凹む。溝部360は、係合部354の前面から後方へ向けて凹む。溝部360の左右方向の中央部は、更に後方へ向けて凹む。これにより、係合部354の左右方向の中央部には、前後方向に最も薄い最薄部362が形成される。
【0031】
溝部356、360の左右方向における所定の溝幅L2と、基台351の最薄部362の前後方向の所定の厚みL3は、基台351の材質によって決定する。基台351の材質は、例えばアルミ、アルミダイカスト等である。材質がアルミの場合、溝部356の溝幅L2は26mmであり、基台351の最薄部362の厚みL3は6mmである。材質がアルミダイカストの場合、溝部356の溝幅L2は26mmであり、基台351の最薄部362の厚みL3は2mmである。何れの材質の場合も、基台351の厚みL1と最薄部362の厚みL3との関係で、例えば5000Nの力がグリップアーム35に加わると、最薄部362を基点としてグリップアーム35は破損する。
【0032】
キー357は溝部356に固定する。キー357は上下方向に延びる矩形状である。工具ホルダ90のキー溝にキー357が嵌合した状態で、グリップアーム35は工具ホルダ90を保持する。故にグリップアーム35に対する工具ホルダ90の向きが一定となる。
【0033】
基台351には、一対の爪部材352A、352Bが設けられる。一対の爪部材352A、352Bは上下方向に延びる。一対の爪部材352A、352Bは左右方向に相互に対向して配置する。一対の爪部材352A、352Bには、孔H1、H2が形成される。孔H1、H2には、基台351の支点部C1、C2が挿入される。この状態で、一対の爪部材352A、352Bは、回動可能に支持される。爪部材352Aは、基台351の支点部C1を中心に回動する。爪部材352Bは、基台351の支点部C2を中心に回動する。一対の爪部材352A、352Bの下端部は、ローラ358A、358Bを夫々回動可能に軸支する。ローラ358A、358Bは、基台351の係合部354の二股に延びる部分の下方に配置する。ローラ358A、358Bは、前後方向に延びる軸361A、361Bを中心に回転する。
【0034】
バネ部材353は、一対の爪部材352A、352Bの夫々の上端部の間に固定する。バネ部材353は、一対の爪部材352A、352Bの夫々の上端部を互いに離れる方向に常時付勢する。これにより、一対の爪部材352A、352Bの下端部は、支点部C1、C2を中心に互いに接近する方向に回動する。係合部354の保持部359が工具ホルダ90を保持し、且つキー357が工具ホルダ90のキー溝に嵌合した状態で、一対の爪部材352A、352Bは、工具ホルダ90を挟み込んで把持する。
【0035】
工作機械1のATC動作を説明する。図10図13は、工具ホルダ90の図示を省略する。以下ではATC動作における主軸7の位置を説明するため、主軸ヘッド6の移動を主軸7の移動として説明する。図10に示すように、ワーク加工中、主軸7は加工領域内に位置する。マガジンカバー10のシャッタ103は閉じた状態である(図2参照)。主軸7の工具装着穴40には、工具ホルダ90のテーパ部92が装着する。ホルダ挟持部材41は工具ホルダ90のプルスタッド93を把持しバネ力でロックされる(図6参照)。
【0036】
制御盤のCPUはNCプログラムの工具交換指令を読込む。図11に示すように、主軸7はZ軸において回転テーブル9上のワークと治具(図示略)に工具91が接触しない位置まで後退する。マガジンカバー10のシャッタ103が開く(図3参照)。工具交換位置のグリップアーム35が開口102を介して下方に露出する。工具交換位置のグリップアーム35は工具ホルダ90を把持しない空の状態である。
【0037】
主軸7は上昇を開始し、Y軸ATC原点に向けて移動する。Y軸ATC原点とは、Y軸方向においてATC原点と同一座標の位置であって、ATC原点の前方である。ATC原点とは、ATC領域内に設ける工具交換時の基準点であり、工具マガジン31が回転可能な位置である。
【0038】
図12に示すように、主軸7がY軸ATC原点に到達すると、主軸7に装着した工具ホルダ90は、マガジンカバー10の開口102を介して、工具交換位置のグリップアーム35に下方から押し込まれる。一対の爪部材352A、352Bのローラ358A、358Bに工具ホルダ90が下方から接触して上昇すると、ローラ358A、358Bは、工具ホルダ90により、バネ部材353の付勢力に抗って互いに離れる方向に回動する。工具ホルダ90が係合部354の奥まで押し込まれると、係合部354の保持部359が工具ホルダ90の溝を保持し、係合部354のキー357が工具ホルダ90のキー溝に嵌合する。この場合、一対の爪部材352A、352Bのローラ358A、358Bがバネ部材353の付勢力により互いに接近する方向に移動する。これにより、グリップアーム35は工具ホルダ90を把持する。
【0039】
一方、主軸7の上昇に伴い、カムフォロア54はカム部材80のカム面801の下部に接触し、上側に向けて摺動する(図7参照)。引っ張りバネはアンクランプアーム50を、支点軸45を中心に右側面視時計回りに常時付勢する。故にカムフォロア54はカム面801に密着する。カムフォロア54はカム面801を上方に摺動するにつれて前方に移動する。故に、アンクランプアーム50は支点軸45を中心に、引っ張りバネのバネ力に抗して右側面視反時計回りに揺動する。押圧部57、58はドローバ42のピン43の両端に後方から接触し、ドローバ42を前方に押し込む。ドローバ42はホルダ挟持部材41を前方に付勢する。ホルダ挟持部材41はプルスタッド93のロックを解除する。工具ホルダ90は主軸7の工具装着穴40から取り外し可能となる。
【0040】
グリップアーム35が主軸7に装着した工具ホルダ90を挟持した状態で、主軸7はY軸ATC原点からATC位置に後退する(図13参照)。プルスタッド93のロックが解除しているので、工具ホルダ90のテーパ部92は主軸7の工具装着穴40から抜ける。工具マガジン31は回転し、次工具を保持する工具ホルダ90を把持するグリップアーム35を工具交換位置に割り出して位置決めする。次工具とは、工具交換指令が指定する次に主軸7に装着する工具を意味する。次工具の工具ホルダ90のテーパ部92は、主軸7の工具装着穴40の前方に位置する。
【0041】
主軸7はATC位置からY軸ATC原点に向けて前進する(図12参照)。工具ホルダ90のテーパ部92は工具装着穴40に挿入し、ホルダ挟持部材41はプルスタッド93を挟持する。カムフォロア54はカム面801を上方から下方に摺動する。カムフォロア54は後方に移動するので、アンクランプアーム50は支点軸45を中心に右側面視時計回りに揺動する。押圧部57、58はピン43の両端から後方に離れ、ドローバ42の前方への押圧を解除する。ドローバ42はホルダ挟持部材41の前方への付勢を解除するので、ホルダ挟持部材41はプルスタッド93の挟持をロックする。ATC動作が完了したので、主軸7は加工領域まで下降し、次のワーク加工に進む。
【0042】
上記ATC動作において、主軸7が予期せぬ位置に移動する場合がある。例えば機械パラメータの設定ミス等があった場合に、主軸7はY軸ATC原点からずれた位置に上昇する。この場合、主軸7に装着した工具ホルダ90は、グリップアーム35の係合部354に対して正しく装着できない。この時、工具交換の為に上昇する工具91、工具ホルダ90又は主軸7がグリップアーム35に下方から衝突する。グリップアーム35には過大な負荷が発生する。衝突の負荷はグリップアーム35の最薄部362に集中する。これにより、グリップアーム35は、最薄部362を基点として損傷する。グリップアーム35の損傷とは、割れる又は潰れる等の全体形状が変形することをいう。グリップアーム35が損傷することで、工具マガジン31のマガジンベース37、減速機32等には負荷が掛からない。従って、グリップアーム35は、工具マガジン31のマガジンベース37、減速機32等の損傷を抑制する。この場合、ユーザはグリップアーム35を新しいものに交換するだけで、工作機械1を復旧できる。
【0043】
以上説明したように、基台351の係合部354は、一対の爪部材352A、352Bが互いに対向する左右方向と、支点部C1、C2の軸方向とに直交する上下方向に延びる溝部356、360を備える。
【0044】
工具交換時、予期せぬ位置に主軸7が移動して工具マガジン31に過大な負荷が発生する場合がある。この場合、溝部356、360が係合部354の他の部分に比べて薄いので、グリップアーム35の溝部356、360に負荷が集中する。このため、工具マガジン31が損傷する代わりに、グリップアーム35の基台351が損傷する。故に、工具マガジン31が損傷する可能性を低減できる。この場合、ユーザは、グリップアーム35のみを交換すればよい。故に、グリップアーム35は、工具マガジン31が損傷した場合に比して、ユーザの機会損失の発生を抑制できる。
【0045】
溝部356、360は、左右方向に所定の溝幅L2を有する。溝部356、360は、前方から見た場合、左右方向における係合部354の中心Mに重ねて配置される。この場合、主軸7がグリップアーム35の何れの位置に衝突しても、グリップアーム35の溝部356、360に負荷が集中しやすい。このため、工具マガジン31が損傷する代わりに、グリップアーム35の基台351が損傷する。故に、工具マガジン31が損傷する可能性を低減できる。
【0046】
工具ホルダ90は、所定の位置にキー溝を備える。係合部354は、キー溝に嵌合するキー357を備える。予期せぬ位置に主軸7が移動した場合、キー357を備えた溝部356が損傷することで、工具ホルダ90が損傷する可能性を抑制できる。
【0047】
基台351の材質は、アルミである。グリップアーム35の材質がアルミの場合も、工具マガジン31の代わりに基台351が損傷する。故に、工具マガジン31が損傷する可能性を低減できる。
【0048】
基台351の材質は、アルミダイカストである。グリップアーム35の材質がアルミダイカストの場合も、工具マガジン31の代わりに基台351が損傷する。故に、工具マガジン31が損傷する可能性を低減できる。
【0049】
グリップアーム35は、主軸7の軸方向が前後方向に延びる工作機械1に設けられる。グリップアーム35は、主軸7の軸方向が前後方向に延びる工作機械1においても、工具マガジン31が損傷する可能性を低減できる。
【0050】
工具マガジン31は、グリップアーム35を備える。工具マガジン31は、グリップアーム35が損傷することで、工具マガジン31が損傷する可能性を低減できる。
【0051】
工作機械1は、工具マガジン31を備える。工作機械1は、グリップアーム35が損傷することで、工具マガジン31が損傷する可能性を低減できる。
【0052】
本発明は上記実施形態に限らず各種変形が可能である。上記実施形態の工作機械1は横形であるが、主軸7の軸方向が上下方向である立形でもよい。工作機械1はX軸移動機構11の上にZ軸移動機構12を備えるが、X軸移動機構11とZ軸移動機構12の上下の位置を逆にしてもよい。工作機械1は立柱5がX軸方向とZ軸方向に移動するが、ベース2に対して立柱5の位置を固定し、ワークを支持するテーブルをX軸方向とZ軸方向に移動させてもよい。
【0053】
上記実施形態では、グリップアーム35は、図8図9に示す形状であったがこれに限らない。基台351、及び一対の爪部材352A、352Bの形状は適宜変更してよい。一対の爪部材352A、352Bは、2つの支点部C1、C2を中心として夫々回転したが、一つの支点を中心として回動する構成でもよい。支点部C1、C2は、基台351に設けられたがこれに限らない。支点部C1、C2は、一対の爪部材352A、352Bに設けられてもよい。この場合、支点部C1、C2が挿通可能な孔H1、H2が基台351に設けられるとよい。この場合でも、一対の爪部材352A、352Bは、支点部C1、C2を中心に回動可能である。
【0054】
上記実施形態では、基台351の材質は、アルミ又はアルミダイカストであったがこれに限らない。例えば、基台351は、例えば、鉄、銅等の他の材質であってもよい。この場合、その材質に応じて、基台351の厚みL1と、基台351の最薄部362の厚みL3を設定すればよい。この場合、5000Nの力が加わった際に基台351が損傷するように、厚みL1、厚みL3を設定するとよい。
【0055】
上記実施形態では、5000Nの力が加わった場合にグリップアーム35が損傷するように基台351の厚みL1、最薄部362の厚みL3が定められたがこれに限らない。例えば、5000Nの力ではなく、他の大きさの力が加わった場合にグリップアーム35が損傷するように厚みL1、厚みL3を設定してもよい。この場合、溝部356、360の溝幅L2についても、適宜設定するとよい。5000Nよりも小さい力で損傷するものでもよい。この場合、溝部356、360の溝幅L2についても、適宜設定するとよい。
【0056】
上記実施形態では、溝部356、360の左右方向の中心は、係合部354の左右方向の中心Mに重ねて配置したがこれに限らない。例えば、溝部356、360の一部が中心Mと重ねて配置していればよい。また、溝部356、360は、係合部354の左右方向の中心Mと重ねて配置しなくてもよい。例えば、溝部356、360は、係合部354の中心Mより左側に配置してもよいし、右側に配置してもよい。溝部356、360の形状は適宜変更してよい。例えば、溝部356、360の形状は、細長い直線状であってもよいし、丸型、楕円であってもよい。
【0057】
上記実施形態では、溝部356、360により最薄部362の厚みL3を規定したがこれに限らない。例えば、溝部360の最薄部362は無くてもよい。この場合、最薄部362のない状態で、溝部356、360との厚みL3を規定すればよい。溝部356、360の何れかは無くてもよい。この場合、溝部356又は溝部360の何れかで基台351の厚みL3を規定してよい。
【0058】
上記説明において、グリップアーム35は「工具把持部材」の一例である。キー357は「嵌合部」の一例である。図8図9の左右方向は「対向方向」の一例である。前後方向は「軸方向」の一例である。前方又は後方は「一方」の一例である。前後方向は「水平方向」の一例である。
【符号の説明】
【0059】
1 工作機械
31 工具マガジン
35 グリップアーム
37 マガジンベース
90 工具ホルダ
91 工具
351 基台
354 係合部
352A、352B 一対の爪部材
356、360 溝部
357 キー
C1、C2 支点部
L2 溝幅
M 中心
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13