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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024059155
(43)【公開日】2024-05-01
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 27/06 20060101AFI20240423BHJP
   H01L 21/8249 20060101ALI20240423BHJP
   H01L 21/336 20060101ALI20240423BHJP
   H01L 29/06 20060101ALI20240423BHJP
【FI】
H01L27/06 311C
H01L27/06 321D
H01L27/06 321E
H01L29/78 301D
H01L29/78 301K
H01L29/06 301D
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022166658
(22)【出願日】2022-10-18
(71)【出願人】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(72)【発明者】
【氏名】上西 顕寛
【テーマコード(参考)】
5F048
5F140
【Fターム(参考)】
5F048AA03
5F048AB10
5F048AC01
5F048AC06
5F048AC10
5F048BA01
5F048BA12
5F048BA14
5F048BC03
5F048BC07
5F048BE02
5F048BE05
5F048BE06
5F048BG12
5F048CC09
5F048CC10
5F048CC15
5F140AA17
5F140AA31
5F140AA38
5F140AB06
5F140AC22
5F140BA01
5F140BA02
5F140BA04
5F140BA06
5F140BA16
5F140BF42
5F140BF54
5F140BH04
5F140BH30
5F140CB01
5F140CD08
(57)【要約】
【課題】外来ノイズに起因する寄生素子の動作を抑制することができ、破壊を防止することができる半導体装置を提供する。
【解決手段】第1導電型の半導体基体10と、半導体基体10に設けられた第2導電型の第1ウェル領域11と、第1ウェル領域11に設けられたハイサイド回路101の一部である少なくとも1つの第1導電型の第2ウェル領域12と、第1ウェル領域11の底部に設けられ、第1ウェル領域11よりも高不純物濃度で第2導電型の埋込層13と、第1ウェル領域11の周囲に設けられる第2導電型の耐圧領域14と、第1ウェル領域11に、第2ウェル領域12に対向し、ハイサイド回路101の周囲の少なくとも一部に、第2ウェル領域12よりも深く設けられた第1導電型の引抜領域31とを備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1導電型の半導体基体と、
前記半導体基体に設けられた第2導電型の第1ウェル領域と、
前記第1ウェル領域に設けられるハイサイド回路の一部である少なくとも1つの第1導電型の第2ウェル領域と、
前記第1ウェル領域の底部に設けられ、前記第1ウェル領域よりも高不純物濃度で第2導電型の埋込層と、
前記第1ウェル領域の周囲に設けられる第2導電型の耐圧領域と、
前記第1ウェル領域に、前記第2ウェル領域に対向し、前記ハイサイド回路の周囲の少なくとも一部に、前記第2ウェル領域よりも深く設けられた第1導電型の引抜領域と、
を備える半導体装置。
【請求項2】
前記引抜領域の底部が、前記埋込層に接する
請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記引抜領域は、前記ハイサイド回路の周囲を囲むように環状の平面パターンを有する
請求項1又は2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記耐圧領域の一部にレベルシフタが設けられている
請求項1又は2に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記引抜領域が、前記第1ウェル領域と電気的に接続されている
請求項1又は2に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記第1ウェル領域の深さが、前記耐圧領域の深さよりも深い
請求項1又は2に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記耐圧領域の周囲に設けられた第1導電型の分離領域を更に備える
請求項1又は2に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記引抜領域の深さが、前記分離領域の深さと同一である
請求項7に記載の半導体装置。
【請求項9】
前記耐圧領域の上部に設けられた第1導電型のベース領域を更に備える
請求項1又は2に記載の半導体装置。
【請求項10】
前記耐圧領域の上部に前記ベース領域から離間して設けられた第2導電型の担体受領領域と、
前記ベース領域の上部に設けられた第2導電型の担体供給領域と、
を更に備える請求項9に記載の半導体装置。
【請求項11】
前記引抜領域が、前記ハイサイド回路から前記耐圧領域に向かう方向において互いに離間して複数設けられている
請求項1又は2に記載の半導体装置。
【請求項12】
前記引抜領域の底部が、前記埋込層から離間する
請求項1又は2に記載の半導体装置。
【請求項13】
前記引抜領域が、前記ハイサイド回路の周囲のうち前記レベルシフタに対向する一部に選択的に設けられている
請求項4に記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高耐圧集積回路装置(HVIC)等の半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電力変換用ブリッジ回路を構成する絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ(IGBT)等の半導体パワースイッチング素子のゲート駆動には、電気的絶縁のためにトランスやフォトカプラが用いられてきた。しかし、近年では主に小容量の用途において、低コスト化のために電気的な絶縁を行わない高耐圧集積回路装置(以下、「HVIC」と称す)が用いられている。
【0003】
特許文献1は、従来のHVICを開示する。HVICは、半導体パワースイッチング素子のゲートを駆動するゲート駆動回路と、ゲート駆動回路を制御する制御回路と、ゲート駆動回路と制御回路の間で信号伝達を行うレベルシフタを備える。ゲート駆動回路は、高耐圧分離構造により制御回路側と分離された高電位領域に形成されている。
【0004】
高電位領域には、p型基板をコレクタ、p型基板に形成されたn型ウェル領域をベース、n型ウェル領域に形成されたp型ウェル領域をエミッタとする寄生pnpトランジスタが存在する。HVICの通常動作時には、n型ウェル領域に印加されるVB電位は、p型ウェル領域に印加されるVS電位よりも15V程度高く保たれる。このため、寄生pnpトランジスタのベース・エミッタ間は逆バイアス状態にあり、寄生pnpトランジスタに電流は流れない。しかし、雷等に起因する外来ノイズによりVB電位がVS電位を0.6V以上下回ると、寄生pnpトランジスタのベース・エミッタ間が順バイアス状態となる。このとき、寄生pnpトランジスタがターンオンし、寄生pnpトランジスタのコレクタ電流がp型基板に流れ、HVICの破壊に繋がる。
【0005】
外来ノイズに起因するHVICの破壊を防止するため、従来のHVICでは、n型ウェル領域の底部に高不純物濃度のn型埋込層を配置している。これにより、p型ウェル領域の直下の寄生pnpトランジスタについては増幅率hFEが抑制される。しかし、p型ウェル領域からn型埋込層の端部近傍にかけて斜め方向に形成される寄生pnpトランジスタについては、ベース層にn型埋込層が存在しないため、増幅率hFEが抑制されず、コレクタ電流がp型基板に流れるという課題がある。
【0006】
上記課題を解決するため、特許文献2は、n型埋込層に達する高不純物濃度の深いn型拡散層をn型埋込層の端部に配置し、p型ウェル領域からn型埋込層の端部近傍にかけて斜め方向に形成される寄生pnpトランジスタの増幅率hFEを抑制する構造を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第4620437号明細書
【特許文献2】特開2002-324848号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献2に記載のように、高不純物濃度の深いn型拡散層を配置する方法では、高不純物濃度の深いn型拡散層を形成するための工程を追加する必要があるため、プロセスコストが増大する。
【0009】
本発明は、外来ノイズに起因する寄生素子の動作を抑制することができ、破壊を防止することができる半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明の一態様は、(a)第1導電型の半導体基体と、(b)半導体基体に設けられた第2導電型の第1ウェル領域と、(c)第1ウェル領域に設けられるハイサイド回路の一部である少なくとも1つの第1導電型の第2ウェル領域と、(d)第1ウェル領域の底部に設けられ、第1ウェル領域よりも高不純物濃度で第2導電型の埋込層と、(e)第1ウェル領域の周囲に設けられる第2導電型の耐圧領域と、(f)第1ウェル領域に、第2ウェル領域に対向し、ハイサイド回路の周囲の少なくとも一部に、第2ウェル領域よりも深く設けられた第1導電型の引抜領域とを備える半導体装置であることを要旨とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、外来ノイズに起因する寄生素子の動作を抑制することができ、破壊を防止することができる半導体装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】第1実施形態に係る半導体装置の平面図である。
図2】第1実施形態に係る半導体装置の回路図である。
図3】第1実施形態に係る半導体装置の断面図である。
図4】比較例に係る半導体装置の断面図である。
図5】第1実施形態に係る半導体装置の他の断面図である。
図6】外来ノイズが入った際の電圧Vbsの時間変化を示すグラフである。
図7】外来ノイズが入った際の電流Isubの時間変化を示すグラフである。
図8】第2実施形態に係る半導体装置の断面図である。
図9】第3実施形態に係る半導体装置の断面図である。
図10】第4実施形態に係る半導体装置の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明の第1~第4実施形態を説明する。図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付し、重複する説明を省略する。但し、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各層の厚みの比率等は実際のものとは異なる場合がある。また、図面相互間においても寸法の関係や比率が異なる部分が含まれ得る。また、以下に示す第1~第4実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。
【0014】
本明細書において、「担体供給領域」とは、電界効果トランジスタ(FET)や静電誘導トランジスタ(SIT)のソース領域、絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ(IGBT)のエミッタ領域等の主電流を構成する多数キャリアを供給する半導体領域を意味する。また、静電誘導(SI)サイリスタやゲートターンオフ(GTO)サイリスタにおいてはアノード領域が担体供給領域となる。また、「担体受領領域」とは、FETやSITのドレイン領域、IGBTのコレクタ領域等の主電流を構成する多数キャリアを受領する半導体領域を意味する。SIサイリスタやGTOサイリスタにおいてはカソード領域が担体受領領域として機能する。また、「制御電極」とは、FET、SIT、IGBT、SIサイリスタやGTOサイリスタのゲート電極を意味し、上記担体供給領域と担体受領領域の間を流れる主電流の流れを制御する機能を有する。
【0015】
また、本明細書において、上下等の方向の定義は、単に説明の便宜上の定義であって、本発明の技術的思想を限定するものではない。例えば、対象を90°回転して観察すれば上下は左右に変換して読まれ、180°回転して観察すれば上下は反転して読まれることは勿論である。
【0016】
また、本明細書において、第1導電型がp型、第2導電型がn型の場合について例示的に説明する。しかし、導電型を逆の関係に選択して、第1導電型をn型、第2導電型をp型としても構わない。また「n」や「p」に付す「+」や「-」は、「+」及び「-」が付記されていない半導体領域に比して、それぞれ相対的に不純物濃度が高い又は低い半導体領域であることを意味する。ただし同じ「n」と「n」とが付された半導体領域であっても、それぞれの半導体領域の不純物濃度が厳密に同じであることを意味するものではない。更に、以下の説明で「第1導電型」及び「第2導電型」の限定を加えた部材や領域は、特に明示の限定がなくても半導体材料からなる部材や領域を意味する。
【0017】
(第1実施形態)
第1実施形態に係る半導体装置であるHVIC100は、図1に示すように、ハイサイド回路101と、ローサイド回路102と、レベルシフタ104a,104bを同一の半導体チップに備える。ハイサイド回路101は、高電位領域105に形成されている。高電位領域105は、高電位領域105の周囲を囲むように設けられた高耐圧接合終端領域(HVJT)である高耐圧分離構造103により、ローサイド回路102側と分離されている。レベルシフタ104a,104bは、高耐圧分離構造103の一部に、高耐圧分離構造103と一体的に設けられている。
【0018】
ハイサイド回路101は、電力変換用ブリッジ回路を構成するIGBT等の半導体パワースイッチング素子のゲートを駆動する回路を備える。ハイサイド回路101は、nチャネルMOSFETやpチャネルMOSFETを備えている。ハイサイド回路101は、VB端子111、HO端子112、VS端子113を備える。ハイサイド回路101は、VS端子113に接続される浮遊電位であるVS電位を基準電位とし、VB端子111に接続され、VS電位よりも高いVB電位を電源電位として動作する。
【0019】
VB電位はHVIC100に印加される最高電位であり、ノイズの影響を受けていない通常状態では、VS電位よりも15V程度高く保たれている。VS電位は、半導体パワースイッチング素子のスイッチング動作に応じて、0V程度から数百V程度までの間で変動する。
【0020】
ローサイド回路102はローサイド回路領域に対応する。ローサイド回路102は、ハイサイド回路101を制御する。ローサイド回路102は、VCC端子121、HIN端子122、GND端子123を備える。ローサイド回路102は、GND端子123に接続され、GND電位(接地電位)を基準電位とし、VCC端子121に接続され、GND電位よりも高いVCC電位を電源電位として動作する。
【0021】
レベルシフタ104a,104bは、例えば高耐圧のnチャネルMOSFETで構成されている。レベルシフタ104a,104bは、ゲートのオン/オフにより、ローサイド回路102からのGND電位基準の信号をVS電位基準の信号に変換して、ハイサイド回路101に伝達する。一方のレベルシフタ104aがセット用であり、他方のレベルシフタ104bがリセット用である。
【0022】
図2は、図1に示した第1実施形態に係る半導体装置の等価回路図である。セット用のレベルシフタ104aのゲートには、ローサイド回路102の出力端子124が接続されている。レベルシフタ104aのドレインにはレベルシフト抵抗R1及びハイサイド回路101の入力端子114が接続されている。レベルシフタ104aのソースにはローサイド回路102のGND端子123が接続されている。
【0023】
リセット用のレベルシフタ104bのゲートにはローサイド回路102の出力端子125が接続されている。レベルシフタ104bのドレインにはレベルシフト抵抗R2及びハイサイド回路101の入力端子115が接続されている。レベルシフタ104bのソースにはローサイド回路102のGND端子123が接続されている。ローサイド回路102のVCC端子121には、ローサイド回路102の電源電位であるVCC電位が印加される。
【0024】
レベルシフト抵抗R1,R2には、電源106の高電位(VB電位)側が接続されている。ハイサイド回路101のVB端子111には、電源106の高電位(VB電位)側が接続されている。ハイサイド回路101のVS端子113には、電源106の低電位(VS電位)側及び半導体パワースイッチング素子であるIGBTのソースが接続されている。ハイサイド回路101のHO端子112には、半導体パワースイッチング素子であるIGBTのゲートが接続されている。
【0025】
次に、図2を参照して、第1実施形態に係る半導体装置のスイッチング動作の一例を説明する。ローサイド回路102のHIN端子122に入力される入力信号HINがロー(L)レベルからハイ(H)レベルに変化した時、ローサイド回路102は、レベルシフタ104aを一定時間ターンオンし、GND電位を基準とするターンオン信号SETをレベルシフタ104aに伝達する。レベルシフタ104aは、ローサイド回路102からのGND電位を基準とするターンオン信号SETを、VS電位を基準とするターンオン信号SETに変換して、ハイサイド回路101に伝達する。ハイサイド回路101は、レベルシフタ104aからのVS電位を基準とするターンオン信号SETに応じて、ハイサイド回路101の出力HOをLレベルからHレベルに変化させ、半導体パワースイッチング素子であるIGBTのゲートを駆動する。
【0026】
一方、ローサイド回路102のHIN端子122に入力される入力信号HINがHレベルからLレベルに変化した時、ローサイド回路102は、レベルシフタ104bを一定時間ターンオンし、GND電位を基準とするターンオフ信号RESETをレベルシフタ104bに伝達する。レベルシフタ104bは、ローサイド回路102からのGND電位を基準とするターンオフ信号RESETを、VS電位を基準とするターンオフ信号RESETに変換して、ハイサイド回路101に伝達する。ハイサイド回路101は、レベルシフタ104bからのVS電位を基準とするターンオフ信号RESETに応じて、ハイサイド回路101の出力HOをHレベルからLレベルに変化させる。
【0027】
図3は、図1の高電位領域105及びレベルシフタ104a,104bを通るA-A´線で切断した断面図である。第1実施形態に係る半導体装置は、高電位領域105及びレベルシフタ104a,104bが形成されたp型の半導体基体10を備える。半導体基体10の上面には、第1絶縁膜41及び第2絶縁膜42が設けられている。
【0028】
半導体基体10は、例えばシリコン(Si)基板で構成されるが、Siの他にも、炭化ケイ素(SiC)、窒化ガリウム(GaN)、酸化ガリウム(Ga)、ダイヤモンド(C)又は窒化アルミニウム(AlN)等のSiよりも禁制帯幅が広い半導体(ワイドバンドギャップ半導体)基板で構成されていてもよい。半導体基体10は、p型の半導体基板と、半導体基板上にエピタキシャル成長させたp型のエピタキシャル成長層で構成されていてもよい。図3では、半導体基体10は、p型の半導体基板10aと、半導体基板10a上にエピタキシャル成長させたp型のエピタキシャル成長層10bで構成されている。半導体基体10の下面は、電位固定されていなくてもよく、GND電位に固定されていてもよい。
【0029】
半導体基体10の上部にはn型のウェル領域11が設けられている。ウェル領域11は、高電位領域105を構成する。ウェル領域11の深さは、例えば5μm以上、15μm以下程度である。ウェル領域11の不純物濃度は、例えば1016cm-3程度である。ウェル領域11には、ハイサイド回路101のpチャネルMOSFET(不図示)が形成されている。
【0030】
ウェル領域11の上部には、p型のウェル領域12が設けられている。ウェル領域12の深さは、例えば2μm以上、5μm以下程度である。ウェル領域12の不純物濃度は、例えば1017cm-3程度である。ウェル領域12は、複数個設けられてもよい。
【0031】
ウェル領域12はハイサイド回路101の一部であり、ハイサイド回路101のnチャネルMOSFETが形成されている。ウェル領域12の上部には、nチャネルMOSFETのn型のドレイン領域(担体受領領域)20が設けられている。ドレイン領域20の上部には、ドレイン領域20よりも高不純物濃度のn型のコンタクト領域21が設けられている。コンタクト領域21には、第1絶縁膜41及び第2絶縁膜42の開口部を介してドレイン電極52が接続されている。
【0032】
ウェル領域12の上部には、n型のドレイン領域20から離間して、nチャネルMOSFETのn型のソース領域(担体供給領域)22及びp型のコンタクト領域23が設けられている。ソース領域22及びコンタクト領域23は互いに接している。コンタクト領域23の不純物濃度は、ウェル領域12の不純物濃度よりも高い。ソース領域22及びコンタクト領域23には、第1絶縁膜41及び第2絶縁膜42の開口部を介してソース電極(VS電極)51が接続されている。VS電極51には、電源106の低電位(VS電位)側が接続されている。ウェル領域12は、コンタクト領域23を介してVS電極51と電気的に接続されている。
【0033】
ドレイン領域20とソース領域22の間のウェル領域12の上方には、第2絶縁膜42の一部であるゲート絶縁膜を介して、nチャネルMOSFETのゲート電極50が設けられている。
【0034】
ウェル領域11の底部には、ウェル領域11よりも高不純物濃度のn型の埋込層13が設けられている。埋込層13は、ウェル領域11の下面に接する平坦な上面を有し、ウェル領域11の下面に沿って一様に設けられている。埋込層13の不純物濃度は、例えば1018cm-3以上、1020cm-3以下程度である。埋込層13の厚さは、例えば5μm以上、20μm以下程度である。埋込層13は、例えば、半導体基板10aの表面にヒ素イオンなどのn型不純物のイオンをイオン注入し、エピタキシャル成長層10bを形成した後、アニール処理を行うことにより形成することができる。
【0035】
ウェル領域11には、ウェル領域12に対向して、ハイサイド回路101の周囲を囲むようにp型の引抜領域31が設けられている。図3の断面ではウェル領域12を挟んで一対の引抜領域31が現れているが、一対の引抜領域31は図3の手前側及び奥側で互いに接続されている。図1では、引抜領域31の平面パターンを破線で模式的に示している。引抜領域31は環状の平面パターンを有する。
【0036】
図3に示すように、引抜領域31の深さは、ウェル領域12の深さよりも深い。引抜領域31の深さは、ウェル領域11と略同一である。引抜領域31の底部(下端)は、埋込層13の上面に接している。なお、引抜領域31の底部は、埋込層13の上面から離間していてもよい。
【0037】
引抜領域31は、後述するp型の分離領域30と同一工程で同時に形成可能である。引抜領域31を分離領域30と同時に形成することにより、引抜領域31を形成するための工程を追加しなくてよいため、プロセスコストの増大を抑制することができる。引抜領域31の深さは、分離領域30の深さと略同一である。引抜領域31の不純物濃度は、分離領域30の不純物濃度と略同一である。
【0038】
引抜領域31を分離領域30と同時に形成する場合には、引抜領域31の不純物濃度は、例えば1016cm-3以上、1017cm-3以下程度であるが、特に限定されない。引抜領域31の不純物濃度は高いほど好ましい。引抜領域31の幅は、例えば10μm以上、100μm以下程度である。
【0039】
なお、引抜領域31は、分離領域30とは異なる工程で形成してもよい。その場合、引抜領域31の深さは、分離領域30の深さよりも浅くてもよく、或いは深くてもよい。また、引抜領域31の不純物濃度は、分離領域30の不純物濃度よりも高くてよく、或いは低くてもよい。
【0040】
ウェル領域11の上部には、n型のコンタクト領域24、p型のコンタクト領域25及びn型のコンタクト領域26が設けられている。図3の断面ではウェル領域12を挟んで一対のコンタクト領域24、コンタクト領域25及びコンタクト領域26が現れているが、一対のコンタクト領域24、コンタクト領域25及びコンタクト領域26は、図3の手前側及び奥側でそれぞれ互いに接続されている。コンタクト領域24、コンタクト領域25及びコンタクト領域26は、環状の平面パターンをそれぞれ有し、引抜領域31の環状の平面パターンに沿って設けられている。
【0041】
コンタクト領域25は、引抜領域31の上端に接している。コンタクト領域24及びコンタクト領域26は、コンタクト領域25を挟み、コンタクト領域25にそれぞれ接している。コンタクト領域24は、引抜領域31の内周側のウェル領域11に接している。コンタクト領域26は、引抜領域31の外周側のウェル領域11に接している。コンタクト領域24、コンタクト領域25及びコンタクト領域26には、第1絶縁膜41及び第2絶縁膜42の開口部を介してVB電極53が接続されている。VB電極53には、電源106の高電位(VB電位)側が接続されている。
【0042】
引抜領域31は、コンタクト領域25を介してVB電極53と電気的に接続されている。引抜領域31の内周側のウェル領域11は、コンタクト領域24を介してVB電極53と電気的に接続されており、引抜領域31と同電位となる。引抜領域31の外周側のウェル領域11は、コンタクト領域26を介してVB電極53と電気的に接続されており、引抜領域31と同電位となる。
【0043】
引抜領域31の外周側のウェル領域11の周囲を囲むように、ウェル領域11よりも低不純物濃度のn型の耐圧領域14が設けられている。図3の断面ではウェル領域11を挟んで一対の耐圧領域14が現れているが、一対の耐圧領域14は、図3の手前側及び奥側で互いに接続されている。耐圧領域14は、ウェル領域11の外周を囲むように環状の平面パターンを有しており、図1に示した高耐圧分離構造103を構成する。耐圧領域14の一部には、レベルシフタ104a,104bが一体的に形成されている。耐圧領域14は、レベルシフタ104a,104bのドレイン・ドリフト領域として機能する。
【0044】
図3の左側には、レベルシフタ104aが設けられている。耐圧領域14のウェル領域11側には、ウェル領域11と接合分離するためのp型のスリット領域19aが設けられている。耐圧領域14の上部には、レベルシフタ104aのn型のドレイン領域18aが設けられている。ドレイン領域18aの上部には、ドレイン領域18aよりも高不純物濃度のn型のコンタクト領域27aが設けられている。コンタクト領域27aには、第1絶縁膜41及び第2絶縁膜42の開口部を介してドレイン電極56aが接続されている。
【0045】
耐圧領域14の上部には、レベルシフタ104aのp型のベース領域15aが設けられている。ベース領域15aの上部には、レベルシフタ104aのn型のソース領域16aが設けられている。ソース領域16aの上部には、ソース領域16aよりも高不純物濃度のn型のコンタクト領域28aが設けられている。ベース領域15aの上部には、ベース領域15aよりも高不純物濃度のp型のコンタクト領域29aが設けられている。コンタクト領域28a及びコンタクト領域29aには、第1絶縁膜41及び第2絶縁膜42の開口部を介してソース電極54aが接続されている。
【0046】
耐圧領域14とソース領域16aの間のベース領域15aの上方には、第2絶縁膜42の一部であるゲート絶縁膜を介して、レベルシフタ104aのゲート電極57aが設けられている。ゲート電極57aには、第2絶縁膜42の開口部を介してゲート配線55aが接続されている。ベース領域15aとドレイン領域18aに挟まれた耐圧領域14の上方の第2絶縁膜42の内部には、フィールドプレート58aが設けられている。
【0047】
図3の右側には、レベルシフタ104bが設けられている。耐圧領域14のウェル領域11側には、ウェル領域11と接合分離するためのp型のスリット領域19bが設けられている。耐圧領域14の上部には、レベルシフタ104bのn型のドレイン領域18bが設けられている。ドレイン領域18bの上部には、ドレイン領域18bよりも高不純物濃度のn型のコンタクト領域27bが設けられている。コンタクト領域27bには、第1絶縁膜41及び第2絶縁膜42の開口部を介してドレイン電極56bに接続されている。
【0048】
耐圧領域14の上部には、レベルシフタ104bのp型のベース領域15bが設けられている。ベース領域15bの上部には、レベルシフタ104bのn型のソース領域16bが設けられている。ソース領域16bの上部には、ソース領域16bよりも高不純物濃度のn型のコンタクト領域28bが設けられている。ベース領域15bの上部には、ベース領域15bよりも高不純物濃度のp型のコンタクト領域29bが設けられている。コンタクト領域28b及びコンタクト領域29bには、第1絶縁膜41及び第2絶縁膜42の開口部を介してソース電極54bが接続されている。
【0049】
耐圧領域14とソース領域16bの間のベース領域15bの上方には、第2絶縁膜42の一部であるゲート絶縁膜を介して、レベルシフタ104bのゲート電極57bが設けられている。ゲート電極57bには、第2絶縁膜42の開口部を介して、ゲート配線55bが接続されている。ベース領域15bとドレイン領域18bに挟まれた耐圧領域14の上方の第2絶縁膜42の内部には、フィールドプレート58bが設けられている。
【0050】
耐圧領域14の外周側には、耐圧領域14及びベース領域15a,15bに接して、前述のp型の分離領域30が設けられている。図3の断面では耐圧領域14の外側に一対の分離領域30が現れているが、一対の分離領域30は、図3の手前側及び奥側で互いに接続されている。分離領域30は、分離領域30の外周を囲むように環状の平面パターンを有する。分離領域30の深さは、耐圧領域14の深さよりも深い。ベース領域15aとベース領域15b、コンタクト領域29aとコンタクト領域29bおよびソース電極54aとソース電極54bもそれぞれ、図3の手前側及び奥側で互いに接続されてよい。ベース領域(15a,15b)、コンタクト領域(29a,29b)およびソース電極(54a,54b)はそれぞれ、環状の平面パターンを有してよい。n型の耐圧領域14とp型の分離領域30のpn接合により高耐圧ダイオードが形成されている。この高耐圧ダイオードにより、図1に示した高耐圧分離構造103が構成されている。
【0051】
図3では、寄生pnpトランジスタ70~74及び寄生npnトランジスタ75,76を回路記号で模式的に示している。寄生pnpトランジスタ70は、p型のウェル領域12をエミッタ、n型のウェル領域11及びn型の埋込層13をベース、p型の半導体基体10をコレクタとする。寄生pnpトランジスタ71,72は、p型のウェル領域12をエミッタ、引抜領域31の内周側のn型のウェル領域11をベース、p型の引抜領域31をコレクタとする。寄生pnpトランジスタ73,74は、p型の引抜領域31をエミッタ、引抜領域31の外周側のn型のウェル領域11をベース、p型の半導体基体10をコレクタとする。
【0052】
図3の左側のレベルシフタ104aに形成される寄生npnトランジスタ75は、n型のソース領域16aをエミッタ、p型のベース領域15aをベース、n型の耐圧領域14をコレクタとする。図3の右側のレベルシフタ104bに形成される寄生npnトランジスタ76は、n型のソース領域16bをエミッタ、p型のベース領域15bをベース、n型の耐圧領域14をコレクタとする。寄生pnpトランジスタ70,73,74及び寄生npnトランジスタ75,76により、寄生サイリスタが形成されている。
【0053】
ここで、比較例に係る半導体装置を説明する。比較例に係る半導体装置は、図4に示すように、n型のウェル領域11にp型の引抜領域31と、引抜領域31の上端と接するn型のコンタクト領域24が設けられていない点が、図3に示した第1実施形態に係る半導体装置と異なる。
【0054】
図4では、寄生pnpトランジスタ70,79,80及び寄生npnトランジスタ75,76を回路記号で模式的に示している。寄生pnpトランジスタ70及び寄生npnトランジスタ75,76は、図3に示した第1実施形態に係る半導体装置と同様である。寄生pnpトランジスタ79,80は、p型のウェル領域12をエミッタ、n型のウェル領域11をベース、p型の半導体基体10をコレクタとする。寄生pnpトランジスタ70,79,80及び寄生npnトランジスタ75,76により、寄生サイリスタが形成されている。
【0055】
HVIC100の通常動作時には、電源106の高電位(VB電位)側に接続されたVB電極53には、電源106の低電位(VS電位)側に接続されたVS電極51のVS電位を基準として+15V程度のVB電位が印加される。このため、寄生pnpトランジスタ70,79,80のベース・エミッタ間は逆バイアス状態にあり、寄生pnpトランジスタ70,79,80に電流は流れない。しかし、雷等に起因する外来ノイズによりVB電極53のVB電位がVS電極51のVS電位を0.6V以上下回ると、寄生pnpトランジスタ70,79,80のベース・エミッタ間が順バイアス状態となり、寄生pnpトランジスタ70,79,80がターンオンする。図4では、外来ノイズが入った場合の寄生pnpトランジスタ70,79,80に流れる電流経路I10,I11,I12を破線の矢印で模式的に示す。
【0056】
寄生pnpトランジスタ70,79,80のコレクタ電流I10,I11,I12はVS電極51からp型の半導体基体10に流れ、半導体基体10の電位を部分的に上昇させる。この電位上昇により寄生npnトランジスタ75,76のベースであるベース領域15a,15bの電位が0.6Vを超えると、寄生npnトランジスタ75,76がターンオンし、寄生サイリスタ動作が始まる。これにより、数百Vの電位差があるVS電極51から半導体基体10の間に1A以上の電流が流れ、激しく発熱し破壊に至る。
【0057】
上記のメカニズムによる破壊を防止するため、n型のウェル領域11の底部に高不純物濃度のn型の埋込層13を配置している。これにより、p型のウェル領域12の直下の寄生pnpトランジスタ70については増幅率hFEが抑制される。しかし、p型のウェル領域12から埋込層13の端部近傍にかけて斜め方向に形成される寄生pnpトランジスタ79,80については、ベース層に埋込層13が存在しないため、増幅率hFEが抑制されない。このため、寄生pnpトランジスタ79,80と寄生npnトランジスタ75,76による寄生サイリスタ動作は防止することができず、HVICの破壊が発生する。
【0058】
これに対して、第1実施形態に係る半導体装置では、図3に示すように、n型のウェル領域11にp型の引抜領域31が設けられている。これにより、図3に示した比較例に係る半導体装置の寄生pnpトランジスタ79,80が分割されて、寄生pnpトランジスタ71~74が形成されている。
【0059】
図5は、第1実施形態に係る半導体装置において、外来ノイズが入った場合の寄生pnpトランジスタ70,71,72(図3参照)に流れる電流経路I10,I11,I12を破線の矢印で模式的に示す。寄生pnpトランジスタ71,72のエミッタ・コレクタ間電流I11,I12は、引抜領域31に引き抜かれて、引抜領域31を介してVB電極53に流れる。エミッタ・コレクタ間電流I11,I12による引抜領域31の電位上昇が0.6V以下である場合、寄生pnpトランジスタ73,74は外来ノイズ下でもターンオフ状態を維持するため、寄生pnpトランジスタ73,74による電流はほとんど流れない。この場合、寄生サイリスタ動作の原因となる半導体基体10への電流は、寄生pnpトランジスタ70のエミッタ・コレクタ間電流I10のみとなる。
【0060】
前述の寄生pnpトランジスタ71,72のエミッタ・コレクタ間電流I11,I12による引抜領域31の電位上昇ΔVは、引抜領域31の底部からVB電極53までの抵抗Rと、引抜領域31を介してVB電極53に流れる電流Iの積、すなわちIRにより決定される。また、抵抗Rは、引抜領域31の不純物濃度Nと幅Wに反比例する。従って、比例係数をAとすると、抵抗Rは、下記式(1)で表される。
【0061】
R=A/(N×W)…(1)
【0062】
以上から、引抜領域31の電位上昇ΔVは、下記式(2)で表される。
【0063】
ΔV=AI/(N×W)…(2)
【0064】
よって、引抜領域31の電位上昇ΔVが0.6V以下となるように、引抜領域31の濃度Nと幅Wを設計することにより、引抜領域31の電位上昇ΔVを0.6V以下に抑えることができる。
【0065】
図6は、VB電極53とVS電極51の間の電圧Vbsの時間変化を示すグラフである。通常動作時は、電圧Vbsが15Vとなっているが、外来ノイズ印加期間Tにおいて、電圧Vbsが例えば-1Vとなる。図7は、VB電極53とVS電極51の間に外来ノイズが入った際のVS電極51から半導体基体10への電流Isubの時間変化を示すグラフである。図7の「本発明」が第1実施形態に係る半導体装置に対応し、「比較例」が図4に示した比較例に係る半導体装置に対応する。「比較例」では寄生サイリスタ動作による大電流が流れるのに対して、「本発明」では寄生サイリスタ動作が発生しない。
【0066】
以上説明したように、第1実施形態に係る半導体装置によれば、n型のウェル領域11にp型の引抜領域31を設けることにより、寄生pnpトランジスタ71,72のエミッタ・コレクタ間電流I11,I12が半導体基体10へ流れることを抑制することができる。よって、寄生pnpトランジスタ70~74と、レベルシフタ104a,104bに形成された寄生npnトランジスタ75,76との寄生サイリスタ動作を抑制することができ、HVIC100の破壊を防止することができる。
【0067】
また、引抜領域31を埋込層13に接するように深く設けることにより、寄生pnpトランジスタ71,72のエミッタ・コレクタ間電流I11,I12が半導体基体10へ流れることを抑制する効果を高めることができる。
【0068】
(第2実施形態)
第2実施形態に係る半導体装置は、図8に示すように、n型のウェル領域11に複数のp型の引抜領域31,32が設けられている点が、図3に示した第1実施形態に係る半導体装置と異なる。引抜領域31,32はウェル領域11を挟んでハイサイド回路101から耐圧領域14に向かう方向において互いに離間している。図7の断面ではウェル領域12を挟んで一対の引抜領域31,32が現れているが、一対の引抜領域31,32は図8の手前側及び奥側で互いに接続されている。引抜領域31,32は、p型のウェル領域12の周囲を囲む環状の平面パターンを有し、p型のウェル領域12の中央を中心として同心状に設けられている。
【0069】
引抜領域31,32のそれぞれの幅は、例えば10μm以上、50μm以下程度である。引抜領域31,32のそれぞれの幅は、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。引抜領域31に挟まれたウェル領域11の幅は、例えば10μm以上、50μm以下程度である。なお、図8では、n型のウェル領域11にp型の引抜領域31,32を二重に設けた場合を例示するが、n型のウェル領域11にp型の引抜領域を三重以上に設けてもよい。
【0070】
引抜領域31の内周側のウェル領域11は、n型のコンタクト領域24に接している。引抜領域31の上端は、p型のコンタクト領域25に接している。引抜領域31,32に挟まれたウェル領域11は、n型のコンタクト領域26に接している。引抜領域32の上端は、p型のコンタクト領域81に接している。引抜領域32の外周側のウェル領域11は、n型のコンタクト領域82に接している。コンタクト領域24~26,81,82には、VB電極53が接続されている。
【0071】
図8では、寄生pnpトランジスタ70~74,77,78及び寄生npnトランジスタ75,76を回路記号で模式的に示している。寄生pnpトランジスタ70~72及び寄生npnトランジスタ75,76は、第1実施形態に係る寄生pnpトランジスタ70~72及び寄生npnトランジスタ75,76と同様である。
【0072】
寄生pnpトランジスタ73,74は、p型の引抜領域31をエミッタ、引抜領域31,32に挟まれたn型のウェル領域11をベース、p型の引抜領域32をコレクタとする。寄生pnpトランジスタ77,78は、p型の引抜領域32をエミッタ、引抜領域32の外周側のn型のウェル領域11をベース、p型の半導体基体10をコレクタとする。図8の左側の寄生pnpトランジスタ73,77は、寄生pnpトランジスタ73のコレクタが寄生pnpトランジスタ77のエミッタに接続されるように直列接続されている。図8の右側の寄生pnpトランジスタ74,78は、寄生pnpトランジスタ74のコレクタが寄生pnpトランジスタ78のエミッタに接続されるように直列接続されている。第2実施形態に係る半導体装置の他の構成は、第1実施形態に係る半導体装置と実質的に同様であるので、重複した説明を省略する。
【0073】
第2実施形態に係る半導体装置によれば、寄生pnpトランジスタ73,77及び寄生pnpトランジスタ74,78がそれぞれ直列接続されることで、寄生pnpトランジスタ73,77及び寄生pnpトランジスタ74,78のインピーダンスが高くなる。このため、第1実施形態に係る半導体装置と比較して、寄生pnpトランジスタ71,72のエミッタ・コレクタ間電流がVS電極51から半導体基体10に流れることをより抑制することができ、寄生サイリスタ動作をより防止することができる。
【0074】
(第3実施形態)
第3実施形態に係る半導体装置は、図9に示すように、p型の引抜領域31が浅く設けられ、引抜領域31の底部(下端)がn型の埋込層13から離間する点が、図3に示した第1実施形態に係る半導体装置と異なる。引抜領域31の深さは、p型のウェル領域12の深さよりも深い。引抜領域31の深さは、n型のウェル領域11の深さの半分よりも深いことが好ましい。
【0075】
第3実施形態に係る半導体装置において、引抜領域31の内周側のウェル領域11が、引抜領域31の外周側のウェル領域11と繋がるため、n型のコンタクト領域24及びn型のコンタクト領域26のいずれかが設けられていなくてもよい。第3実施形態に係る半導体装置の他の構成は、第1実施形態に係る半導体装置と実質的に同様であるので、重複した説明を省略する。
【0076】
第3実施形態に係る半導体装置によれば、引抜領域31の底部(下端)がn型の埋込層13から離間していてもよい。引抜領域31の底部(下端)がn型の埋込層13から離間している場合でも、寄生pnpトランジスタ71,72のエミッタ・コレクタ間電流がVS電極51から半導体基体10に流れることを抑制することができ、寄生サイリスタ動作を防止できる。
【0077】
(第4実施形態)
図10は、第4実施形態に係る半導体装置の平面図であり、引抜領域31a,31bの平面パターンを破線で模式的に示している。図10に示すように、第4実施形態に係る半導体装置は、引抜領域31a,31bが環状ではなく、分割された平面パターンを有する点が、図1に示した第1実施形態に係る半導体装置と異なる。引抜領域31a,31bは、レベルシフタ104a,104bに対向する位置に選択的に設けられている。
【0078】
図10のA-A´線で切断した断面は、図3と同様である。引抜領域31a,31bは、ウェル領域12の周囲の一部を囲むように設けられている。第4実施形態に係る半導体装置の他の構成は、第1実施形態に係る半導体装置と実質的に同様であるので、重複した説明を省略する。
【0079】
第4実施形態に係る半導体装置によれば、引抜領域31a,31bは、ウェル領域12の周囲の少なくとも一部を囲むように設けられていればよい。そして、引抜領域31a,31bが、レベルシフタ104a,104bに対向する位置に選択的に設けられているので、寄生pnpトランジスタ73,74及びレベルシフタ104a,104bに形成された寄生npnトランジスタ75,76による寄生サイリスタ動作を抑制することができる。
【0080】
(その他の実施形態)
上記のように第1~第4実施形態を記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面は本発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
【0081】
例えば、第1~第4実施形態に係る半導体装置では、レベルシフタ104a,104bが高耐圧分離構造103の一部に一体化された構造を例示したが、レベルシフタが高耐圧分離構造103とは個別に設けられた構造であってもよい。その場合、半導体基体10の下面がGND電位に固定されている場合に特に有効である。
【0082】
また、第1~第4実施形態に係る半導体装置がHVICである場合を例示したが、HVIC以外の例えば数十V以上の高電圧が印加される半導体装置にも適用可能である。また、レベルシフタが無い半導体装置にも適用可能であり、その場合でも、寄生pnpトランジスタのエミッタ・コレクタ電流が半導体基体10へ流れることを抑制することができ、寄生pnpトランジスタのエミッタ・コレクタ電流に起因する半導体装置の破壊を防止することができる。
【0083】
また、第1~第4実施形態が開示する構成を、矛盾の生じない範囲で適宜組み合わせることができる。このように、本発明はここでは記載していない様々な実施の形態等を含むことは勿論である。したがって、本発明の技術的範囲は上記の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
【符号の説明】
【0084】
10…半導体基体
10a…半導体基板
10b…エピタキシャル成長層
11,12…ウェル領域
13…埋込層
14…耐圧領域
15a,15b…ベース領域
16a,16b,22…ソース領域
18a,18b,20…ドレイン領域
19a,19b…スリット領域
21,23,24~26,27a,27b,28a,28b,29a,29b…コンタクト領域
30…分離領域
31,31a,31b,32…引抜領域
50…ゲート電極
51…ソース電極(VS電極)
52…ドレイン電極
53…VB電極
54a,54b…ソース電極
55a,55b…ゲート配線
56a,56b…ドレイン電極
57a,57b…ゲート電極
70~74,77,78,79,80…寄生pnpトランジスタ
75,76…寄生npnトランジスタ
81,82…コンタクト領域
101…ハイサイド回路
102…ローサイド回路
103…高耐圧分離構造
104a,104b…レベルシフタ
105…高電位領域
106…電源
111…VB端子
112…HO端子
113…VS端子
114,115…入力端子
121…VCC端子
122…HIN端子
123…GND端子
124,125…出力端子
R1,R2…レベルシフト抵抗
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【手続補正書】
【提出日】2023-07-13
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0050
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0050】
耐圧領域14の外周側には、耐圧領域14及びベース領域15a,15bに接して、前述のp型の分離領域30が設けられている。図3の断面では耐圧領域14の外側に一対の分離領域30が現れているが、一対の分離領域30は、図3の手前側及び奥側で互いに接続されている。分離領域30は、耐圧領域14の外周を囲むように環状の平面パターンを有する。分離領域30の深さは、耐圧領域14の深さよりも深い。ベース領域15aとベース領域15b、コンタクト領域29aとコンタクト領域29bおよびソース電極54aとソース電極54bもそれぞれ、図3の手前側及び奥側で互いに接続されてよい。ベース領域(15a,15b)、コンタクト領域(29a,29b)およびソース電極(54a,54b)はそれぞれ、環状の平面パターンを有してよい。n型の耐圧領域14とp型の分離領域30のpn接合により高耐圧ダイオードが形成されている。この高耐圧ダイオードにより、図1に示した高耐圧分離構造103が構成されている。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0058
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0058】
これに対して、第1実施形態に係る半導体装置では、図3に示すように、n型のウェル領域11にp型の引抜領域31が設けられている。これにより、図に示した比較例に係る半導体装置の寄生pnpトランジスタ79,80が分割されて、寄生pnpトランジスタ71~74が形成されている。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0068
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0068】
(第2実施形態)
第2実施形態に係る半導体装置は、図8に示すように、n型のウェル領域11に複数のp型の引抜領域31,32が設けられている点が、図3に示した第1実施形態に係る半導体装置と異なる。引抜領域31,32はウェル領域11を挟んでハイサイド回路101から耐圧領域14に向かう方向において互いに離間している。図の断面ではウェル領域12を挟んで一対の引抜領域31,32が現れているが、一対の引抜領域31,32は図8の手前側及び奥側で互いに接続されている。引抜領域31,32は、p型のウェル領域12の周囲を囲む環状の平面パターンを有し、p型のウェル領域12の中央を中心として同心状に設けられている。