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特開2024-59157ICモジュール用シート、電磁結合式ICモジュール、およびデュアルICカード
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024059157
(43)【公開日】2024-05-01
(54)【発明の名称】ICモジュール用シート、電磁結合式ICモジュール、およびデュアルICカード
(51)【国際特許分類】
   G06K 19/077 20060101AFI20240423BHJP
【FI】
G06K19/077 216
G06K19/077 296
G06K19/077 196
G06K19/077 244
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022166662
(22)【出願日】2022-10-18
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100139686
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 史朗
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(72)【発明者】
【氏名】金子 真士
(72)【発明者】
【氏名】武田 茂憲
(72)【発明者】
【氏名】塚田 哲也
(57)【要約】
【課題】電磁結合に対応できないICモジュールを容易に電磁結合可能にすることができるICモジュール用シートを提供する。
【解決手段】ICモジュール用シート1は、穴10aを有する絶縁性のフィルム10と、フィルムの第一面上に導体で形成されたコイル20とを備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
穴を有する絶縁性のフィルムと、
前記フィルムの第一面上に導体で形成されたコイルと、
を備える、
ICモジュール用シート。
【請求項2】
前記フィルムにおいて、前記第一面と反対側の第二面上に設けられ、前記コイルと電気的に接続された端子パッドをさらに備える、
請求項1に記載のICモジュール用シート。
【請求項3】
請求項1に記載のICモジュール用シートと、
接触通信用端子と、前記接触通信用端子に接続されたICチップと、前記ICチップに接続された接続パッドとを有する物理接合式ICモジュールと、
を備え、
前記コイルと前記接続パッドとが電気的に接続されている、
電磁結合式ICモジュール。
【請求項4】
請求項3に記載の電磁結合式ICモジュールを備える、
デュアルICカード。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ICモジュールに取り付けるためのICモジュール用シートに関する。このICモジュール用シートを用いた電磁結合式ICモジュールおよびデュアルICカードについても言及する。
【背景技術】
【0002】
接触通信と非接触通信との両方を行えるデュアルICカードが知られている。
デュアルICカードの一般的な構造が特許文献1に開示されている。特許文献1に記載のデュアルICカードは、接触通信用の端子を含むICモジュールと、コイル状のブースタアンテナとを備えている。ICモジュールは、ブースタアンテナと電気的に接続するためのコイルを備えた電磁結合式ICモジュールであり、コイルを介してICモジュールとブースタアンテナとが電磁結合されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6357919号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
接触通信用の端子を含むICモジュールには、上述した電磁結合式のほかに、物理接続用の金属パッドのみを備えて電磁結合に対応できないものも存在する。両者は接触通信用端子およびICチップを備える点で共通しているが、製造工程が異なるため、製品としては全く別のものである。
このため、各々の生産状況によっては、電磁結合可能なICモジュールが十分に調達できない可能性があるが、このような場合に、仮に電磁結合に対応できないICモジュールが容易に調達できたとしても、これをデュアルICカードの製造に用いることは現状困難である。
【0005】
上記事情に鑑み、本発明は、電磁結合に対応できないICモジュールを容易に電磁結合可能にすることができるICモジュール用シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第一の態様は、穴を有する絶縁性のフィルムと、フィルムの第一面上に形成されたコイルとを備えるICモジュール用シートである。
【0007】
本発明の第二の態様は、第一の態様に係るICモジュール用シートと、接触通信用端子と、接触通信用端子に接続されたICチップと、ICチップに接続された接続パッドとを有する物理接合式ICモジュールとを備え、コイルと接続パッドとが電気的に接続されている電磁結合式ICモジュールである。
本発明の第三の態様は、第二の態様に係る電磁結合式ICモジュールを備えたデュアルICカードである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、電磁結合に対応できないICモジュールを容易に電磁結合可能にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】一般的な物理接合式ICモジュールの底面図である。
図2】本発明の第一実施形態に係るICモジュール用シートの平面図である。
図3】同ICモジュール用シートを物理接合式ICモジュールに取り付ける動作の一過程を示す図である。
図4】同ICモジュール用シートを取り付けた物理接合式ICモジュールの断面図である。
図5】カード本体を構成するインレイの一例を示す図である。
図6】第一実施形態に係るデュアルICカードの平面図である。
図7】本発明の第二実施形態に係るICモジュール用シートの平面図である。
図8】同ICモジュール用シートを取り付けた物理接合式ICモジュールの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態について、図1から図6を参照しながら説明する。
図1に、一般的な物理接合式ICモジュール100の底面図を示す。ICモジュール100は、所定の通信周波数領域において通信可能なICチップ102を基板101の下面上に備える。ICチップ102は、封止樹脂103に覆われて保護されている。
基板101において反対側の上面には、ICチップ102と接続された接触通信用端子104が形成されている。接触通信用端子104は、ICモジュール100の底面視においては視認できないため、図1では破線で示している。
【0011】
基板101の下面には、さらに導体で形成された接続パッド105が配置されている。接続パッド105は、ICチップ102と接続されており、半田等を用いてICモジュール100をカード本体側の機構と接続する際に用いられる。
ICモジュール100は、電磁結合用のコイルを備えていないため、カード本体側の機構と電磁結合により接続することはできない。
【0012】
図2に、本実施形態に係るICモジュール用シート(以下、単に「シート」と称する。)1の平面図を示す。シート1は、絶縁性のフィルム10と、フィルム10上に形成されたコイル20および端子パッド30とを備えている。
【0013】
本実施形態に係るフィルム10は、平面視略四角形であり、中央部に穴10aを有する。フィルム10の材質としては各種の合成樹脂を使用でき、後述するICモジュールへの取り付け工程を考慮すると、熱耐性の高いポリイミドやフッ素樹脂が好適な例として挙げられる。
フィルムの厚さには特に制限はなく、例えば10μm~100μm程度とできるが、薄いほうが、シートの取り付けによるICモジュールの寸法変化が少なくなるため、有利である。
【0014】
コイル20は、フィルム10の上面にあたる第一面上に導体で形成されており、穴10aの周囲を複数周回している。コイル20は、導体製のワイヤを用いても形成できるが、アルミや銅等の金属層をエッチングして形成する方法が簡便である。本実施形態のコイルは、アルミ層のエッチングにより形成されており、両端部は幅が拡大して略正方形の接続部20aとなっている。
【0015】
端子パッド30は、フィルム10の下面にあたる第二面上に形成されており、導電性を有する。端子パッドは、コイル20と同様に、金属層をエッチングすることにより簡便に形成できる。端子パッド30は、シート1の平面視においては視認できないため、図2では破線で示している。
図2に示されるように、コイル20の接続部20aと端子パッド30とは、シート1の平面視において重なる位置関係にある。接続部20aと端子パッド30とは、カシメにより間に位置するフィルム10の一部が押しのけられて接触している。これにより、接続部20aと端子パッド30とは導通している。
【0016】
上述の構成を有する本実施形態のシート1は、物理接合式のICモジュール100に取り付けることにより、ICモジュール100を電磁結合可能にすることができる。
以下に、取り付け手順の一例を説明する。この例では、平面視において、ICモジュール100とシート1とは概ね同形同大であり、ICモジュール100とシート1とを平面視形状を概ね一致させて重ねた際に、接続パッド105と端子パッド30とが概ね重なる位置関係にある。
【0017】
まず、ICチップ102を上側にしてICモジュール100を置き、図3に示すように、その上に第一面を上側にしてシート1を重ねる。シート1は穴10aを有するため、シート1をICモジュール100に近づけていくと、封止樹脂103の上部が穴10aを通過し、さらにシート1がICモジュール100に接近する。
【0018】
シート1とICモジュール100とが十分接近すると、シート1の第二面側に位置する端子パッド30とICモジュール100の接続パッド105とが、ほとんど間隔なく対向する。このような位置関係となった端子パッド30と接続パッド105とを電気的に接続すると、ICモジュール100へのシート1の取り付けが完了する。電気的接続の手段には特に制限はなく、半田や異方性導電膜(ACF)、導電性接着剤等を例示できる。
【0019】
図4に、シート1が取り付けられたICモジュール100の断面図を示す。この断面図は、図3に示すI-I線に沿っている。シート1の第二面10cに設けられた端子パッド30とICモジュール100の接続パッド105とが電気的に接続されることにより、シート1の第一面10bに設けられたコイル20とICチップ102とが電気的に接続される。これにより、ICモジュール100は、コイル20を用いた電磁結合が可能な、本実施形態に係る電磁結合式ICモジュール2となる。
【0020】
以上説明したように、本実施形態に係るシート1は、電磁結合機能を持たない物理接合式ICモジュールに取り付けることにより、簡便に電磁結合機能を付与できる。したがって、電磁結合式ICモジュールの調達が困難であっても、物理接合式ICモジュールを調達できれば、これに電磁結合機能を付与してデュアルICカードの製造に使用することができる。これは、ICチップの需要に対して供給が必ずしも十分とは言えない昨今の世界状況に鑑みると、大きな利点であると言える。
【0021】
シート1のフィルム10には穴10aが設けられているため、物理接合式ICモジュールに取り付ける際に、封止樹脂103が穴10aを通過することで、シート1と物理接合式ICモジュールとの干渉を軽減あるいは生じさせなくすることができる。その結果、干渉によるシートの撓みが軽減または防止され、端子パッド30と接続パッド105との電気的接続を、簡便かつ確実に行うことができる。
【0022】
通常の電磁結合式ICモジュールでは、電磁結合用のコイルは基板の下面にしか形成できず、かつ封止樹脂を避けて形成する必要がある。このため、通常の電磁結合式ICモジュールではコイルの形成態様に大きな制約が生じるが、シート1においては、穴10aの寸法を調節する等により、平面視において封止樹脂と重なる領域にもコイル20を形成できる。さらに、詳細は後述するが、第一面および第二面の両方にコイルを配置することも可能である。このように、シート1においては、電磁結合用コイルの態様についての自由度が従来の電磁結合式ICモジュールに比べて著しく高くなっているため、カード本体側の機構との電磁結合を最適にするための調整が容易である点でも優れている。
【0023】
電磁結合式ICモジュール2と電磁結合されるカード本体側の機構の一例として、図5にインレイ200の平面図を示す。インレイ200は、電磁結合用コイル201と、ブースタアンテナ202と、インピーダンス調節用のキャパシタンス203とが合成樹脂製のシート204上に設けられた公知の構成を有する。インレイ200を外層となる板状の合成樹脂で挟んで熱および圧力をかけたラミネートで一体化すると、カード本体が完成する。
外層の電磁結合用コイルに対応する位置に電磁結合式ICモジュール2と同等の大きさの段付き穴を形成し、接触通信用端子104を外側に向けて電磁結合式ICモジュール2を穴にはめ込み固定すると、ICモジュール用シートのコイル20と電磁結合用コイル201とが非接触状態で対向し、電磁結合可能な位置関係となる。これにより、図6に示す、本実施形態に係るデュアルICカード3が完成する。デュアルICカード3は、接触通信用端子104による接触通信と、ブースタアンテナ202による非接触通信との両方が可能である。
上述した製造過程において、外層に形成する穴は、ラミネートの前後いずれに形成されてもよい。
【0024】
本発明の第二実施形態について、図7を参照して説明する。以降の説明において、既に説明したものと共通する構成については、同一の符号を付して重複する説明の一部を省略することがある。
【0025】
図7は、本実施形態に係るシート1Aの平面図である。シート1Aは、第一実施形態と同様に、フィルム10の第一面10b上にコイル20を有するが、第二面には端子パッドは設けられていない。コイルのうち、ICモジュールと重ね合わせた際に接続パッド105と重なる範囲は、接続部20aを除き絶縁被覆40に覆われている。絶縁被覆の材質としては、各種のソルダーレジスト等を例示できる。
シート1Aにおいて、フィルム10に形成されている穴10aは、第一実施形態よりも小さく、封止樹脂103の平面視における直径よりも小さい。穴10aの周縁には、複数のスリット41が形成されている。
【0026】
本実施形態に係るシート1Aは、第一実施形態とは異なり、フィルム10の第一面10bを物理接合式ICモジュールに向けて取り付けられる。図8は、本実施形態に係るシート1AがICモジュール100に取り付けられた、本実施形態に係る電磁結合式ICモジュール2Aの断面図である。
【0027】
ICモジュールの接続パッド105は、コイル20の接続部20aと接続されている。その一方、接続部20a以外で接続パッド105と対向するコイル20は絶縁被覆40で覆われているため、接続パッド105との電気的短絡が防止されている。
穴10aが封止樹脂103の直径よりも小さいため、フィルム10の一部が封止樹脂103に沿うように変形してシート1AがICモジュール100に取り付けられている。穴10aの周囲に設けられたスリット41はこのような変形を容易にし、穴が小さくても取り付ける際の封止樹脂との干渉を好適に軽減する利点があるが、スリット41を設けることは必須ではなく、必要がなければ省略できる。
【0028】
本実施形態に係るシート1Aも、第一実施形態と同様に、物理接合式ICモジュールに取り付けることにより、簡便に電磁結合機能を付与できる。
また、端子パッドを介さずにICモジュールと接続されるため、コイルと端子パッドとのカシメ等による接続が不要となり、電気的接続の信頼性を向上できる。
さらに、封止樹脂103に乗り上げたフィルムにもコイルを配置することができるため、コイルのレイアウトの自由度がさらに高まり、電磁結合の最適化がさらに容易になる。
【0029】
本実施形態においては、接続パッド105と対向する領域よりも広い範囲に絶縁被覆40が設けられてもよい。例えば、接続部20a以外のすべてのコイル20が絶縁被覆40で覆われてもよい。
【0030】
以上、本発明の各実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の構成の変更、組み合わせなども含まれる。
【0031】
例えば、フィルムに形成される穴の形状は、封止樹脂の平面視形状と異なっていてもよい。両者の平面視形状が完全に同一でなくても、寸法等を適切に設定することで、取り付け時の干渉を低減する効果を十分発揮させることが可能である。ただし、穴の平面視形状および寸法が、封止樹脂全体がその内側に位置できる程度であると、取り付け時の干渉発生を完全に防ぐことができ、好ましい。
【符号の説明】
【0032】
1、1A ICモジュール用シート
2、2A 電磁結合式ICモジュール
3 デュアルICカード
10 フィルム
10a 穴
10b 第一面
10c 第二面
20 コイル
30 端子パッド
100 物理接合式ICモジュール
102 ICチップ
104 接触通信用端子
105 接続パッド
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8