(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024059160
(43)【公開日】2024-05-01
(54)【発明の名称】電子レンジ用解凍容器
(51)【国際特許分類】
F24C 7/02 20060101AFI20240423BHJP
【FI】
F24C7/02 551G
F24C7/02 551B
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022166666
(22)【出願日】2022-10-18
(71)【出願人】
【識別番号】501300436
【氏名又は名称】株式会社 クリスタル電器
(74)【代理人】
【識別番号】100099966
【弁理士】
【氏名又は名称】西 博幸
(74)【代理人】
【識別番号】100134751
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 隆一
(72)【発明者】
【氏名】徳山 良輔
【テーマコード(参考)】
3L086
【Fターム(参考)】
3L086AA01
3L086BF06
3L086CC06
3L086DA24
(57)【要約】
【課題】従来の電子レンジ10では冷凍物Fの均一解凍が難しいという問題を解消する。
【解決手段】本発明に係る電子レンジ用解凍容器1は、冷凍物Fを収容する加熱室12にマイクロ波が供給される電子レンジ10で使用可能な材質からなるものである。内部に液体Wを収容し、上部側に冷凍物Fを載置する載置部4を有している。載置部4と液体Wとの間には、液面Sから載置部4を離隔させる空気層Aを介在させている。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロ波で加熱する電子レンジで使用可能な材質からなる容器であって、冷凍物を解凍するためのものであり、内部に液体を収容しており、上部側に前記冷凍物を載置する載置部を有しており、前記載置部と前記液体との間には、液面から前記載置部を離隔させる空気層を介在させている、
電子レンジ用解凍容器。
【請求項2】
上向きに開口した有底筒状の容器本体と、前記容器本体の上向き開口を塞ぐ内壁体とを備えており、
前記容器本体と前記内壁体とで中空構造としており、前記容器本体と前記内壁体との間に液体を収容しており、
前記内壁体に前記載置部を下向き凸状に形成し、前記内壁体は、前記容器本体に対して着脱可能に取り付けている、
請求項1に記載した電子レンジ用解凍容器。
【請求項3】
前記容器本体の側面部には、前記容器本体と前記内壁体との間に収容される前記液体の許容最大量を示す目印部を、前記載置部の底面よりも下方に位置するように形成している、
請求項2に記載した電子レンジ用解凍容器。
【請求項4】
前記載置部の内底面には、上向き凸状の複数の突起部を形成しており、前記載置部内において前記冷凍物は、前記突起部群の一部又は全部に当接して載置されており、隣り合う前記突起部の間はドリップを溜める凹所となっている、
請求項2に記載した電子レンジ用解凍容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子レンジに専ら用いられる解凍容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、冷凍食品といった冷凍物の解凍を容易に実現する装置として、電子レンジは広く知られている(特許文献1等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の電子レンジでは冷凍物の均一解凍がむずかしいという課題があった。すなわち、冷凍物の内部よりも表面のほうがマイクロ波加熱されやすく、水と氷との誘電損失の違いに起因して解凍された表面ばかりが加熱される傾向にある。このため、冷凍物を内外にわたって均一に解凍できないのであった。例えば冷凍物の内部が凍ったままにも拘らず、表面は過熱されて乾燥変色し食感が悪くなることもあった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記のような現状を検討して改善を施した電子レンジ用解凍容器を提供することを技術的課題としている。
【0006】
本発明の電子レンジ用解凍容器は、マイクロ波で加熱する電子レンジで使用可能な材質からなる容器であって、冷凍物を解凍するためのものであり、内部に液体を収容しており、上部側に前記冷凍物を載置する載置部を有しており、前記載置部と前記液体との間には、液面から前記載置部を離隔させる空気層を介在させているというものである。
【0007】
本発明の電子レンジ用解凍容器において、上向きに開口した有底筒状の容器本体と、前記容器本体の上向き開口を塞ぐ内壁体とを備えており、前記容器本体と前記内壁体とで中空構造としており、前記容器本体と前記内壁体との間に液体を収容しており、前記内壁体に前記載置部を下向き凸状に形成し、前記内壁体は、前記容器本体に対して着脱可能に取り付けるようにしてもよい。
【0008】
また、本発明の電子レンジ用解凍容器において、前記容器本体の側面部には、前記容器本体と前記内壁体との間に収容される前記液体の許容最大量を示す目印部を、前記載置部の底面よりも下方に位置するように形成してもよい。
【0009】
さらに、本発明の電子レンジ用解凍容器において、前記載置部の内底面には、上向き凸状の複数の突起部を形成しており、前記載置部内において前記冷凍物は、前記突起部群の一部又は全部に当接して載置されており、隣り合う前記突起部の間はドリップを溜める凹所となっていてもよい。
【0010】
なお、本発明の電子レンジ用解凍容器において、前記液体は、水もしくはゲル状液体であってもよい。前記液体がゲル状液体である場合、前記容器本体と前記内壁体との組合せを着脱不能な密閉構造にすることも可能である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によると、マイクロ波は、一部が解凍容器内の液体を加熱し、一部が載置部上の冷凍物を加熱する。載置部上の冷凍物は解凍容器内の液体で囲われているため、液体周辺のマイクロ波は液体を加熱して著しく減衰し、冷凍物をマイクロ波加熱することが抑制される。そして、載置部と液体との間には、液面から載置部を離隔させる空気層を介在させているから、加熱された液体が熱伝導によって冷凍物を直接加熱して、加熱し過ぎるようなおそれがない。従って、液体からの伝導熱によって冷凍物を加熱し過ぎることなく、液体を利用して抑制されたマイクロ波加熱によって、冷凍物を内外にわたって加熱ムラなくできるだけ均一に解凍できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図2】電子レンジの内部構造を示す概略側面図である。
【
図12】(a)(b)(c)は解凍容器の別例を示す正面図である。
【
図13】(a)(b)(c)(d)は内壁体の別例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、本発明を具体化した実施形態を図面(
図1~
図13)に基づき説明する。
【0014】
はじめに、電子レンジ10の基本構造を説明する。
図1及び
図2に示すように、電子レンジ10は、矩形箱状のレンジ本体11を備えている。レンジ本体11の内部には、被加熱物(例えば冷凍物)を収容して加熱調理する加熱室12が形成されている。レンジ本体11において加熱室12に連通する前面開口は、開閉扉13によって開閉可能に塞がれている。
【0015】
開閉扉13の上部には、開閉操作用のハンドル14が設けられている。開閉扉13の下部には、設定操作部としての操作パネル15が設けられている。操作パネル15では、例えば調理メニューの内容や進行状況を表示したり被加熱物に対する加熱条件(出力、時間、解凍、調理メニュー等)を設定したりできる。開閉扉13を開いて被加熱物を加熱室12内に載置し、開閉扉13を閉めたあと操作パネル15を操作することによって、電子レンジ10での加熱調理が行われる。
【0016】
レンジ本体11内における加熱室12の下方には、マイクロ波を発生させる発生源(加熱源)としてのマグネトロン16と、マグネトロン16からのマイクロ波を加熱室12内に導く導波管17と、導波管17から加熱室12に向かうマイクロ波を拡散させるアンテナ18と、アンテナ18を回転駆動させる駆動源としてのアンテナモータ19とが配置されている。
図2から明らかなように、マイクロ波は、加熱室12の底側から加熱室12内に供給される。また、加熱室12の下方には、電子レンジ10の制御全般を司る制御部20が配置されている。
【0017】
次に、
図3~
図11を参照しながら、実施形態の解凍容器1について説明する。解凍容器1は、電子レンジ10で使用可能な材質(例えばポリプロピレン等のようにマイクロ波を容易に透過する材質)からなるものである。解凍容器1の内部には、液体の一例である水Wが収容されている。解凍容器1内の上部には、被加熱物としての冷凍物Fを載置する載置部4を有している。実施形態の解凍容器1は、平面視矩形状に形成されているが、これに限らず、平面視で円形、楕円形又は小判形等の形態を採用しても差し支えない。
【0018】
実施形態の解凍容器1は、上向きに開口した有底筒状の容器本体2と、容器本体2の上向き開口を塞ぐ内壁体3とを備えている。容器本体2に内壁体3を取り付ける(嵌め込む)ことによって、解凍容器1は中空構造になっている。実施形態では、内壁体3に載置部4が下向き凸状(上向き開口トレー状)に形成されている。内壁体3の上端側には、外向きに張り出したフランジ3aが形成されている。容器本体2に内壁体3を取り付けた(嵌め込んだ)状態では、内壁体3のフランジ3aが容器本体2の上縁部に当接して支持されている。
【0019】
内壁体3は、容器本体2に対して着脱可能に取り付けられている。実施形態では、嵌め込み式が採用されている。容器本体2に対する内壁体3の取り付け構造は、例えばねじ式でも強制嵌合式でもよく、着脱可能な態様であれば種々採用してよい。
【0020】
実施形態の解凍容器1は、内壁体3の上向き開口を着脱可能に塞ぐ蓋体6をさらに備えている。内壁体3に蓋体6を被せた状態では、内壁体3の内周上部に形成された段部3bに、蓋体6の周縁部が嵌まり込んで支持されている。内壁体3に対する蓋体6の取り付け構造についても、着脱可能な態様であれば種々採用できる(例えばねじ式でもよいし、強制嵌合式でもよい)。
【0021】
実施形態では、液体としての水Wが容器本体2と内壁体3との間に収容される。載置部4と水Wとの間には、液面Sから載置部4を離隔させる空気層Aが介在している。解凍容器1(容器本体2)内の水Wは、内壁体3における載置部4の底面5aに接することのない量に設定される。これによって、載置部4と水Wとの間に、空気層Aからなる隙間が形成される。
【0022】
図3及び
図8~
図11に示すように、容器本体2の側面部には、容器本体2と内壁体3との間に収容される水Wの許容量を示す目印部7が、載置部4の底面5aよりも下方に位置するように形成されている。実施形態の目印部7は、容器本体2の側面全周にわたる下窄まり状の段部として形成されている。従って、ユーザーは、容器本体2における下窄まり状の段部である目印部7を目安にして、目印部7が露出する(目印部にかからない)程度に容器本体2内に水Wを入れるようにすれば、解凍容器1内に収容される水Wの許容量を超えることがなく、解凍容器1内の水Wが載置部4の底面5aに接することもない。このため、載置部4と水Wとの間に、空気層Aからなる隙間を適切に形成できる。
【0023】
図4、
図6及び
図8~
図11に示すように、載置部4の内底面5bには、上向き凸状の複数の突起部8が形成されている。実施形態の各突起部8は、縦横に並ぶ断面山形の突条と平面視矩形の突面部とを組み合わせて、載置部4内底面5bに一体形成されている。言うまでもないが、突起部8群の突出高さは、すべて一様に設定されている(突起部8群の突端は同一平面上に位置している)。
図8及び
図9から明らかなように、載置部4内において冷凍物Fは、突起部8群の一部又は全部に当接して載置される。
【0024】
隣り合う突起部8の間は、ドリップを溜める凹所9になっている。このため、解凍時において、マイクロ波加熱によって冷凍物Fから生じたドリップは、各突起部8の周囲にある凹所9に流れ落ちて溜め込まれる。すなわち、載置部4内底面5bにある凹所9の存在が冷凍物F(解凍物)からドリップを分離させ、冷凍物F(解凍物)とドリップとを非接触状態に維持し易いのである。隣り合う突起部8間の凹所9は、相互に連通しているのが好ましい。隣り合う突起部8間の凹所9が相互に連通していると、ドリップを載置部4内底面5b全域に分散させて、溜まったドリップを冷凍物F(解凍物)に接触し難くできるからである。
【0025】
上記の構成によると、電子レンジ10のマイクロ波は、一部が解凍容器1内の水を加熱し、一部が載置部4上の冷凍物Fを加熱する。載置部4上の冷凍物Fは解凍容器1内の水Wで囲われているため、水W周辺のマイクロ波は水Wを加熱して著しく減衰し、冷凍物Fをマイクロ波加熱することは抑制される。そして、載置部4と水Wとの間には、液面Sから載置部4を離隔させる空気層Aを介在させているから、加熱された水Wが熱伝導によって冷凍物Fを直接加熱して、加熱し過ぎるようなおそれがない。従って、水Wからの伝導熱によって冷凍物Fを加熱し過ぎることなく、水Wを利用して抑制されたマイクロ波加熱によって、冷凍物Fを内外にわたって加熱ムラなくできるだけ均一に解凍できる。
【0026】
また、内壁体3は容器本体2に対して着脱可能であるから、容器本体2から内壁体3を取り外して、容器本体2及び内壁体3の双方を洗浄することが簡単に行える。なお、液体としては、水Wに代えてゲル状液体を採用してもよい。この場合、容器本体2と内壁体3との組合せを、着脱不能な密閉構造にすることも可能である。
【0027】
本発明における各部の構成は図示の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。実施形態の目印部7は、容器本体2の側面全周にわたる下窄まり状の段部として形成されているが、これに限定されるものではない。
【0028】
例えば
図12(a)~(c)には、目印部7の別例を示している。
図12(a)の別例は、目印部7としての許容線を容器本体2の側面全周にわたって形成したものであり、
図12(b)の別例は、目印部7としての許容線を容器本体2の側面全周にわたって飛び飛びの間隔で形成したものである。
図12(c)の別例は、目印部7としての許容線を容器本体2の側面の一部に形成したものである。これら実施形態及び別例のように、目印部7の形状や個数は、多様に構成して差し支えない。要は、載置部4の底面5aよりも下方に目印部7を形成しておけばよい。
【0029】
また、
図13(a)~(d)には、突起部8の別例を示している。
図13(a)(b)の別例のように、突起部8としての突条を縦並びに形成してもよいし、横並びに形成してもよい。もちろん実施形態のように、縦横組み合わせて並べるのも構わない。また、
図13(c)の別例のように、突起部8としての突条を交差させて形成してもよい。
図13(d)の別例に示すように、円柱状の突起部8を複数個並べて形成してもよいし、それ以外に、角柱状や楕円形状の突起部8を複数個並べて形成することも可能である。これら実施形態及び別例のように、突起部8の形状や個数も、多様に構成して差し支えない。
【符号の説明】
【0030】
A 空気層
F 冷凍物
W 液体としての水
1 解凍容器
2 容器本体
3 内壁体
3a フランジ
3b 段部
4 載置部
5a 底面
5b 内底面
6 蓋体
7 目印部
8 突起部
10 電子レンジ
11 レンジ本体
12 加熱室