(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024059164
(43)【公開日】2024-05-01
(54)【発明の名称】バイオガスの貯蔵装置およびバイオガスの導出方法
(51)【国際特許分類】
F17C 11/00 20060101AFI20240423BHJP
F23G 5/02 20060101ALI20240423BHJP
F23G 7/00 20060101ALI20240423BHJP
【FI】
F17C11/00 A
F23G5/02 Z
F23G7/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022166672
(22)【出願日】2022-10-18
(71)【出願人】
【識別番号】000126115
【氏名又は名称】エア・ウォーター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤井 沙紀
(72)【発明者】
【氏名】岸 利華子
【テーマコード(参考)】
3E172
3K065
3K161
【Fターム(参考)】
3E172AA02
3E172AA09
3E172AB04
3E172AB13
3E172BA04
3E172BB05
3E172BB12
3E172DA90
3E172EA10
3E172EB02
3E172EB08
3E172FA09
3K065AC17
3K065CA20
3K161JA40
(57)【要約】
【課題】バイオガスを効率的に導出させることができるバイオガスの貯蔵装置およびバイオガスの導出方法を提供すること。
【解決手段】バイオガスを吸着する吸着材を含む、前記バイオガスを貯蔵するためのタンクと、前記タンクに接続される配管であって、前記タンクに前記バイオガスを導入および前記タンクから前記バイオガスを導出するためのバイオガス導入出配管と、前記タンクと前記バイオガス導入出配管とを接続する配管であって、前記タンクから導出された前記バイオガスの少なくとも一部を前記タンクに戻すためのバイオガス戻し配管と、を備える、バイオガスの貯蔵装置。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイオガスを吸着する吸着材を含む、前記バイオガスを貯蔵するためのタンクと、
前記タンクに接続される配管であって、前記タンクに前記バイオガスを導入および前記タンクから前記バイオガスを導出するためのバイオガス導入出配管と、
前記タンクと前記バイオガス導入出配管とを接続する配管であって、前記タンクから導出された前記バイオガスの少なくとも一部を前記タンクに戻すためのバイオガス戻し配管と、を備える、バイオガスの貯蔵装置。
【請求項2】
前記バイオガス導入出配管は、第1バイオガス導入出配管および第2バイオガス導入出配管を含み、
前記第1バイオガス導入出配管は、前記タンクの第1側面に接続されており、
前記第2バイオガス導入出配管は、前記タンクの第2側面に接続されており、
前記第2側面は、前記第1側面に対向する側面である、請求項1に記載のバイオガスの貯蔵装置。
【請求項3】
前記タンクは、長手方向および短手方向を有し、
前記第1側面および前記第2側面は、前記長手方向と交差する側面である、請求項2に記載のバイオガスの貯蔵装置。
【請求項4】
前記長手方向が水平方向となるように設置して使用される、請求項3に記載のバイオガスの貯蔵装置。
【請求項5】
前記タンクから導出された前記バイオガスの少なくとも一部を圧縮する圧縮機を備える、請求項1に記載のバイオガスの貯蔵装置。
【請求項6】
前記バイオガス導入出配管を開閉する第1バルブと、
前記バイオガス戻し配管を開閉する第2バルブと、を備え、
前記第1バルブおよび前記第2バルブは、前記第1側面側に設けられている、請求項2に記載のバイオガスの貯蔵装置。
【請求項7】
可搬式である、請求項1に記載のバイオガスの貯蔵装置。
【請求項8】
前記バイオガスは、家畜の糞尿および食品の残渣からなる群より選択される少なくとも1種を由来とするガスであり、
前記バイオガスは、少なくともメタンおよび炭酸ガスを含む、請求項1に記載のバイオガスの貯蔵装置。
【請求項9】
請求項1から請求項8のいずれか1項に記載のバイオガスの貯蔵装置からバイオガスを導出する方法であって、
前記タンクから前記バイオガスを導出する導出工程と、
前記導出工程で導出された前記バイオガスの少なくとも一部を前記タンクに戻す戻し工程と、を備え、
前記導出工程を行いながら、前記戻し工程を行う、バイオガスの導出方法。
【請求項10】
前記タンクは、第1側面および第2側面を有し、
前記第2側面は、前記第1側面に対向する側面であり、
前記導出工程で導出される前記バイオガスは、前記第1側面および前記第2側面から導出される、請求項9に記載のバイオガスの導出方法。
【請求項11】
前記戻し工程において、前記タンクから導出された前記バイオガスの少なくとも一部を圧縮して前記タンクに戻す、請求項9に記載のバイオガスの導出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、バイオガスの貯蔵装置およびバイオガスの導出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化や化石燃料の枯渇等の問題から、乳牛や肉牛等の家畜の糞尿を由来とするバイオガスが注目されている。バイオガスは、主に大規模牧場等で発電機により発電され、売電されていた。しかしながら、発電機を有しない中小規模牧場等では、バイオガスを十分に利用できていなかった。また、送電網も不足しているため、発電が可能であっても、売電が困難であった。
【0003】
そこで、捕集したバイオガスを、吸着材を充填した貯蔵装置に各牧場で貯蔵し、集積地に運搬して分離精製する方法が検討されている。このようなバイオガスの取り扱いは、従来の天然ガスの分離精製に類似した特性を有すると考えられる。
【0004】
特許文献1(特開2002-267097号公報)は、圧力装置に充填した吸着材により天然ガスを吸着する貯蔵装置を開示しており、吸着材から天然ガスを脱着させる際に、加熱することで脱着が促進される旨も開示している。
【0005】
特許文献2(特開2008-240836号公報)は、吸着材を充填した耐圧容器に天然ガス等のガスを吸着させて回収および再利用する方法を開示しており、該耐圧容器を車両に搭載すること、吸脱着熱を温度調節ユニットで調節していることも開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002-267097号公報
【特許文献2】特開2008-240836号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載の装置は、定置式で使用することおよび長期間天然ガスを貯蔵することを前提とした構成となっている。そのため、可搬式にしたり、短期間での天然ガスの吸脱着を行うことは想定されていない。また、脱着を促進するためにヒーターが圧力装置の側面に設けられているが、このような構成も、熱源の確保が可能な定置式で使用することを前提としている。
【0008】
特許文献2は、耐圧容器に熱媒体配管や温度調節ユニットが設けられているが、具体的にどのような機構としているのかが開示されていない。
【0009】
本開示の目的は、バイオガスを効率的に導出させることができるバイオガスの貯蔵装置およびバイオガスの導出方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
〔1〕バイオガスを吸着する吸着材を含む、前記バイオガスを貯蔵するためのタンクと、
前記タンクに接続される配管であって、前記タンクに前記バイオガスを導入および前記タンクから前記バイオガスを導出するためのバイオガス導入出配管と、
前記タンクと前記バイオガス導入出配管とを接続する配管であって、前記タンクから導出された前記バイオガスの少なくとも一部を前記タンクに戻すためのバイオガス戻し配管と、を備える、バイオガスの貯蔵装置。
【0011】
〔2〕前記バイオガス導入出配管は、第1バイオガス導入出配管および第2バイオガス導入出配管を含み、
前記第1バイオガス導入出配管は、前記タンクの第1側面に接続されており、
前記第2バイオガス導入出配管は、前記タンクの第2側面に接続されており、
前記第2側面は、前記第1側面に対向する側面である、〔1〕に記載のバイオガスの貯蔵装置。
【0012】
〔3〕前記タンクは、長手方向および短手方向を有し、
前記第1側面および前記第2側面は、前記長手方向と交差する側面である、〔2〕に記載のバイオガスの貯蔵装置。
【0013】
〔4〕前記長手方向が水平方向となるように設置して使用される、〔3〕に記載のバイオガスの貯蔵装置。
【0014】
〔5〕前記タンクから導出された前記バイオガスの少なくとも一部を圧縮する圧縮機を備える、〔1〕から〔4〕のいずれかに記載のバイオガスの貯蔵装置。
【0015】
〔6〕前記バイオガス導入出配管を開閉する第1バルブと、
前記バイオガス戻し配管を開閉する第2バルブと、を備え、
前記第1バルブおよび前記第2バルブは、前記第1側面側に設けられている、〔2〕から〔5〕のいずれかに記載のバイオガスの貯蔵装置。
【0016】
〔7〕可搬式である、〔1〕から〔6〕のいずれかに記載のバイオガスの貯蔵装置。
【0017】
〔8〕前記バイオガスは、家畜の糞尿および食品の残渣からなる群より選択される少なくとも1種を由来とするガスであり、
前記バイオガスは、少なくともメタンおよび炭酸ガスを含む、〔1〕から〔7〕のいずれかに記載のバイオガスの貯蔵装置。
【0018】
〔9〕〔1〕から〔8〕のいずれかに記載のバイオガスの貯蔵装置からバイオガスを導出する方法であって、
前記タンクから前記バイオガスを導出する導出工程と、
前記導出工程で導出された前記バイオガスの少なくとも一部を前記タンクに戻す戻し工程と、を備え、
前記導出工程を行いながら、前記戻し工程を行う、バイオガスの導出方法。
【0019】
〔10〕前記タンクは、第1側面および第2側面を有し、
前記第2側面は、前記第1側面に対向する側面であり、
前記導出工程で導出される前記バイオガスは、前記第1側面および前記第2側面から導出される、〔9〕に記載のバイオガスの導出方法。
【0020】
〔11〕前記戻し工程において、前記タンクから導出された前記バイオガスの少なくとも一部を圧縮して前記タンクに戻す、〔9〕または〔10〕に記載のバイオガスの導出方法。
【発明の効果】
【0021】
本開示によれば、バイオガスを効率的に導出させることができるバイオガスの貯蔵装置およびバイオガスの導出方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】
図1は、本実施形態におけるバイオガスの貯蔵装置の構成の一例を示す概略図である。
【
図2】
図2は、本実施形態におけるバイオガスの貯蔵装置に備わるタンクの平面図である。
【
図3】
図3は、本実施形態におけるバイオガスの貯蔵装置に備わるタンクの側面図である。
【
図4】
図4は、本実施形態におけるバイオガスの貯蔵装置を搭載した車両を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本開示の実施形態が説明される。ただし以下の説明は特許請求の範囲を限定するものではない。
【0024】
<バイオガスの貯蔵装置>
図1を参照して、本実施形態におけるバイオガスの貯蔵装置20は、バイオガスを貯蔵するためのタンク1と、タンク1に接続される配管であって、タンク1にバイオガスを導入およびタンク1からバイオガスを導出するためのバイオガス導入出配管2と、タンク1とバイオガス導入出配管2とを接続する配管であって、タンク1から導出されたバイオガスの少なくとも一部をタンク1に戻すバイオガス戻し配管3と、を備える。タンク1には、バイオガスを吸着する吸着材が充填されている。
以下、本実施形態におけるバイオガスの貯蔵装置20について説明する。
【0025】
《バイオガス》
本実施形態において、「バイオガス」とは、家畜の糞尿および食品の残渣からなる群より選択される少なくとも1種を由来とするガスであって、少なくともメタンおよび炭酸ガス(CO2)を含むガスを示す。バイオガス中のメタンの濃度は、例えば、50体積%以上65体積%以下であり、バイオガス中のCO2の濃度は、例えば、25体積%以上40体積%以下である。バイオガスは、例えば、窒素、酸素等のその他のガスを含んでいてもよい。バイオガス中の窒素の濃度は、例えば、5体積%以上15体積%以下であってもよく、バイオガス中の酸素の濃度は、例えば、0.1体積%以上5体積%以下であってもよい。バイオガスは、予め硫化水素および水分が除去されていることが好ましい。
【0026】
《タンク》
図2は、タンク1の平面図であり、
図3は、タンク1の側面図である。タンク1は、バイオガスを貯蔵する。タンク1は、耐圧構造を有する。タンク1は、第1側面6および第2側面7を有する。この場合、第2側面7は、第1側面6に対向する側面である。
【0027】
タンク1は、長手方向および短手方向を有することが好ましい。この場合、第1側面6および第2側面7は、長手方向と交差する側面である。すなわち、第1側面6および第2側面7は、短手方向と平行する側面である。
図2および
図3を参照して、長手方向は、
図2の左右方向であり、短手方向は、
図3の左右方向である。また、
図2に記載されるように、長手方向が水平方向となるように設置して使用されることがより好ましい。
【0028】
タンク1には、吸着材が充填されている。吸着材としては、メタンおよびCO2を吸着可能な吸着材が用いられる。このような吸着材としては、例えば、活性炭が挙げられる。活性炭は、例えば、ヤシガラ、石炭、木炭、フェノール樹脂等を原料とする。活性炭は、例えば、粉末活性炭、破砕炭、造粒炭等であってもよい。活性炭の粒度は、例えば、0.3mm以上0.8mm以下であってもよい。本実施形態では、破砕炭が好適に用いられる。
【0029】
タンク1は、吸着材充填部8を有していてもよい。吸着材充填部8は、タンク1の上部に設置されていることが好ましい。吸着材充填部8をタンク1の上部に設置することで、効率的に吸着材をタンク1に充填することができる。また、吸着材充填部8を複数有することで、より効率的に吸着材を充填することができる。なお、
図2中、吸着材充填部8を3個設けているのは一例であり、個数は限定されない。
【0030】
《バイオガス導入出配管》
バイオガス導入出配管2は、タンク1に接続される配管である。バイオガスは、バイオガス導入出配管2を介して、タンク1に導入またはタンク1から導出される。すなわち、バイオガス導入出配管2は、バイオガスをタンク1に導入する場合は、バイオガス導入配管として、バイオガスをタンク1から導出する場合は、バイオガス導出配管として、それぞれ機能する。
【0031】
本実施形態におけるバイオガスの貯蔵装置20は、少なくとも1つのバイオガス導入出配管2を備えていればよいが、2つのバイオガス導入出配管2(第1バイオガス導入出配管2aおよび第2バイオガス導入出配管2b)を備えていることが好ましい。この場合、第1バイオガス導入出配管2aはタンク1の第1側面6に、第2バイオガス導入出配管2bはタンク1の第2側面7に、それぞれ接続されている。
【0032】
タンク1にバイオガスを導入する場合、バイオガスの吸着による吸着熱が発生し、タンク1の温度が上昇する。したがって、一方のバイオガス導入出配管2からバイオガスを導入し、もう一方のバイオガス導入出配管2から吸着熱を放出することにより、タンク1の温度の上昇を抑制することができる。
【0033】
1つのバイオガス導入出配管2を介してタンク1からバイオガスを導出する場合、導出されるバイオガスの組成が偏るおそれがある。したがって、双方のバイオガス導入出配管2からバイオガスを導出することにより、導出されるバイオガスの組成を均一にすることができる。
【0034】
本実施形態におけるバイオガスの貯蔵装置20は、第1バルブ4を備えていてもよい。タンク1へのバイオガスの導入およびタンク1からのバイオガスの導出は、第1バルブ4により調節される。
【0035】
《バイオガス戻し配管》
バイオガス戻し配管3は、タンク1とバイオガス導入出配管2とを接続する配管である。タンク1から導出されたバイオガスの少なくとも一部は、バイオガス戻し配管3を介してタンク1に戻る。このようにすることで、導出されるバイオガスの組成を均一にすることができる。
【0036】
バイオガス戻し配管3は、第1側面6以外および第2側面7以外の面であり、バイオガス導入出配管2に近い側に接続されていることが好ましい。このようにすることで、導出されるバイオガスの組成をより均一にすることができる。
図1を参照して、バイオガス戻し配管3は、例えば、タンク1の上部であり、第1バイオガス導入出配管2aに近い側に接続されていてもよい。この場合、第1バイオガス導入出配管2aは、タンク1にバイオガスを導入する際のバイオガス導入配管として機能する。
【0037】
本実施形態におけるバイオガスの貯蔵装置20は、第2バルブ5を備えていてもよい。バイオガス戻し配管3を介したタンク1へのバイオガスの戻しは、第2バルブ5により調節される。
【0038】
《圧縮手段》
本実施形態におけるバイオガスの貯蔵装置20は、圧縮機13を備えていてもよい。圧縮機13は、タンク1から導出されたバイオガスの少なくとも一部を圧縮する。タンク1から導出されたバイオガスは、圧力が低くなっている。また、タンク1からバイオガスを導出する場合、バイオガスの脱着による脱着熱がタンク1の温度を低下させる。タンク1の温度が低下することにより、バイオガスの導出が抑制されるものと考えられる。したがって、タンク1から導出されたバイオガスの少なくとも一部を圧縮機13により圧縮してバイオガス戻し配管3によりタンク1に戻すことで、タンク1の温度の低下を抑制し、バイオガスの導出を促進させることができる。
【0039】
《その他》
本実施形態におけるバイオガスの貯蔵装置20は、加熱手段11、バッファータンク12および冷却手段14を備えていてもよい。これらは、バイオガスを導出する場合に機能する。
【0040】
加熱手段11は、導出されたバイオガスを加熱する。加熱手段11は、導出されたバイオガスの温度が低い場合に使用されてもよい。バッファータンク12は、導出されたバイオガスを一時的に貯留する。冷却手段14は、圧縮されたバイオガスを冷却する。冷却手段14は、圧縮されたバイオガスの温度が高い場合に使用されてもよい。
【0041】
第1バルブ4および第2バルブ5は、ハンドリングの観点から、第1側面6側に設けられていることが好ましい。
【0042】
本実施形態におけるバイオガスの貯蔵装置20は、例えば、牧場で飼育されている家畜の糞尿を由来とするバイオガスの捕集に好適に使用される。このような観点から、バイオガスの貯蔵装置20を可搬式にすることが好ましい。可搬式としては、例えば、
図4に示すように、バイオガスの貯蔵装置20を搭載した車両15(ローリー)等が挙げられる。
【0043】
<バイオガスの導出方法>
本実施形態におけるバイオガスの導出方法は、タンクからバイオガスを導出する導出工程と、導出工程で導出されたバイオガスの少なくとも一部を圧縮してタンクに戻す戻し工程と、を備える。導出工程を行いながら、戻し工程は行われる。
以下、
図1~3を参照して、本実施形態におけるバイオガスの導出方法について説明する。
【0044】
(導出工程)
導出工程とは、タンク1からバイオガスを導出する工程である。
【0045】
本実施形態におけるバイオガスの貯蔵装置20において、タンク1からのバイオガスの導出は、バイオガス導入出配管2を介して実施される。タンク1およびバイオガス導入出配管2の詳細は、上述の通りである。
【0046】
タンク1からのバイオガスの導出は、第1側面6および第2側面7から実施されることが好ましい。第2側面7は、第1側面6に対向する側面である。このようにすることで、導出されるバイオガスの組成を均一にすることができる。
【0047】
(戻し工程)
戻し工程とは、導出工程で導出されたバイオガスの少なくとも一部をタンク1に戻す工程である。
【0048】
本実施形態におけるバイオガスの貯蔵装置20において、タンク1へのバイオガスの戻しは、バイオガス戻し配管3を介して実施される。バイオガス戻し配管3の詳細は、上述の通りである。
【0049】
導出工程を行いながら、戻し工程は行われる。導出工程を行いながら戻し工程を行うことで、導出されるバイオガスの組成を均一にすることができる。
【0050】
戻し工程において、タンク1から導出されたバイオガスの少なくとも一部を圧縮してタンク1に戻すことが好ましい。タンク1から導出されたバイオガスは、圧力が低くなっている。また、タンク1からバイオガスを導出する場合、バイオガスの脱着による脱着熱がタンク1の温度を低下させる。タンク1の温度が低下することにより、バイオガスの導出が抑制されるものと考えられる。したがって、タンク1から導出されたバイオガスの少なくとも一部を圧縮機13により圧縮してバイオガス戻し配管3によりタンク1に戻すことで、タンク1の温度の低下を抑制し、バイオガスの導出を促進させることができる。
【実施例0051】
以下、実施例が説明される。ただし以下の例は、特許請求の範囲を限定するものではない。
【0052】
<実施例1>
図1に記載の構成を有する装置が準備された。家畜の糞尿由来のバイオガスが準備された。該バイオガスは、メタンを約54体積%、CO
2を約40体積%、窒素を約5体積%、酸素を約1体積%含むものであった。バイオガスの成分の分析は、ガスクロマトグラフィーにより行われた。吸着材として活性炭がタンク1に充填された。該バイオガスが、バイオガス導入出配管2aを介してタンク1に充填された。充填後のタンク1の温度は40℃であった。
【0053】
次に、タンク1からバイオガス導入出配管2aおよびバイオガス導入出配管2bを介してバイオガスの導出を行った。バイオガスの導出量は100Nm3/hとした。導出されたバイオガスは、加熱手段11により加熱され、バッファータンク12に貯留された。導出されたバイオガスの温度は、加熱手段11により20℃になるように調節された。貯留されたバイオガスは、圧縮機13により0.85MPaGまで圧縮された。圧縮後のバイオガスは、冷却手段14により40℃まで冷却された。その後、バイオガスの一部が、バイオガス戻し配管3によりタンク1に戻された。バイオガスの戻し量は60Nm3/hとした。バイオガスの導出は、12時間行われた。
【0054】
<比較例1>
導出されたバイオガスの一部がバイオガス戻し配管3によりタンク1に戻されなかった点を除いては、実施例1と同じ方法および条件でバイオガスの導出を行った。
【0055】
<評価>
実施例1および比較例1において、導出開始直後および導出終了時の
図1中のポイント1におけるバイオガスの組成と、導出終了時のタンク1の温度とを測定した。
【0056】
<結果>
実施例1において、導出開始直後の
図1中のポイント1におけるバイオガスは、メタンを約51体積%、CO
2を約33体積%、窒素を約14体積%、酸素を約2体積%含むものであった。導出終了時の
図1中のポイント1におけるバイオガスは、メタンを約49体積%、CO
2を約40体積%、窒素を約10体積%、酸素を約1体積%含むものであった。また、導出終了時のタンク1の温度は、18℃であった。
【0057】
一方、比較例1において、導出開始直後の
図1中のポイント1におけるバイオガスは、メタンを約60体積%、CO
2を約26体積%、窒素を約13体積%、酸素を約1体積%含むものであった。導出終了時の
図1中のポイント1におけるバイオガスは、メタンを約55体積%、CO
2を約39.5体積%、窒素を約5体積%、酸素を約0.5体積%含むものであった。また、導出終了時のタンク1の温度は、5℃であった。
【0058】
実施例1では、導出開始直後および導出終了時のバイオガスの組成、ならびに、導出開始前および導出終了時のタンク1の温度は、変動が小さかった。一方、比較例1では、導出開始直後および導出終了時のバイオガスの組成、ならびに、導出開始前および導出終了時のタンク1の温度は、実施例1よりも変動が大きかった。したがって、タンク1から導出されたバイオガスの少なくとも一部を圧縮してタンク1に戻すことにより、導出されるバイオガスの組成およびタンク1の温度は安定するものと考えられる。
【0059】
このように、本開示に記載のバイオガスの貯蔵装置およびバイオガスの導出方法を用いることによって、バイオガスを効率的に導出させることができる。また、本開示においては、廃棄されていた家畜の糞尿を有効活用していることから、持続可能な開発目標(SDGs)の一部活動に貢献することができる。
【0060】
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
1 タンク、2,2a,2b バイオガス導入出配管、3 バイオガス戻し配管、4 第1バルブ、5 第2バルブ、6 第1側面、7 第2側面、8 吸着材充填部、11 加熱手段、12 バッファータンク、13 圧縮機、14 冷却手段、15 車両、20 バイオガスの貯蔵装置。