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特開2024-59169太陽電池セル、太陽電池デバイス、および、太陽電池デバイスの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024059169
(43)【公開日】2024-05-01
(54)【発明の名称】太陽電池セル、太陽電池デバイス、および、太陽電池デバイスの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 31/0224 20060101AFI20240423BHJP
【FI】
H01L31/04 262
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022166680
(22)【出願日】2022-10-18
(71)【出願人】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】100131705
【弁理士】
【氏名又は名称】新山 雄一
(74)【代理人】
【識別番号】100145713
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 竜太
(72)【発明者】
【氏名】藤本 貴久
(72)【発明者】
【氏名】足立 大輔
【テーマコード(参考)】
5F151
5F251
【Fターム(参考)】
5F151AA05
5F151DA07
5F151EA05
5F151EA19
5F151FA04
5F151FA10
5F151GA04
5F251AA05
5F251DA07
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5F251EA19
5F251FA04
5F251FA10
5F251GA04
(57)【要約】
【課題】導電性接着部材の塗布の良否を容易に検査することができる太陽電池セルを提供する。
【解決手段】太陽電池セル2は、半導体基板11の一方主面側に形成された第1金属電極29と、半導体基板の他方主面側に形成された第2金属電極とを備える太陽電池セルであって、第1金属電極29は、X方向における一方端側においてY方向に延在する第1バスバー電極29bを含み、第2金属電極は、X方向における他方端側においてY方向に延在する第2バスバー電極を含み、第1バスバー電極29bまたは第2バスバー電極のY方向の端部の少なくとも一方側には、導電性接着部材の塗布の良否を検査するための検査領域であって、第1バスバー電極29bまたは第2バスバー電極が形成されていない検査領域R1またはR2が配置されている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板の一方主面側に形成された第1金属電極と、前記半導体基板の他方主面側に形成された第2金属電極とを備える太陽電池セルであって、
前記第1金属電極は、第1方向における一方端側において、前記第1方向に交差する第2方向に延在する第1バスバー電極を含み、
前記第2金属電極は、前記第1方向における他方端側において、前記第2方向に延在する第2バスバー電極を含み、
前記第1バスバー電極または前記第2バスバー電極の前記第2方向の端部の少なくとも一方側には、導電性接着部材の塗布の良否を検査するための検査領域であって、前記第1バスバー電極または前記第2バスバー電極が形成されていない前記検査領域が配置されている、
太陽電池セル。
【請求項2】
前記検査領域は、前記第1バスバー電極の両端部に配置されている、請求項1に記載の太陽電池セル。
【請求項3】
前記検査領域は、前記第1バスバー電極の端部の領域内に配置されている、請求項1に記載の太陽電池セル。
【請求項4】
前記第1バスバー電極または前記第2バスバー電極の領域では、前記半導体基板側から順に、透明電極層と前記第1金属電極とが積層されており、
前記検査領域では、透明電極層が積層されて露出している、
請求項1に記載の太陽電池セル。
【請求項5】
前記検査領域の面積は、0.5mm以下である、請求項1に記載の太陽電池セル。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の複数の太陽電池セルと、
導電性接着部材と、
を備え、
前記複数の太陽電池セルは、前記第1方向に配列されており、シングリング方式を用いて端部の一部が重なり合って接続されており、
前記複数の太陽電池セルにおける隣り合う太陽電池セルのうちの一方の太陽電池セルの第1バスバー電極と、前記隣り合う太陽電池セルのうちの他方の太陽電池セルの第2バスバー電極とは、前記導電性接着部材を介して接続されている、
太陽電池デバイス。
【請求項7】
半導体基板の一方主面側に第1金属電極を形成し、前記半導体基板の他方主面側に第2金属電極を形成する金属電極層形成工程を含み、複数の太陽電池セルを製造する太陽電池セル製造工程と、ここで、前記第1金属電極は、第1方向における一方端側において、前記第1方向に交差する第2方向に延在する第1バスバー電極を含み、前記第2金属電極は、前記第1方向における他方端側において、前記第2方向に延在する第2バスバー電極を含み、
前記複数の太陽電池セルの各々における前記第1バスバー電極または前記第2バスバー電極に導電性接着部材を塗布する導電性接着部材塗布工程と、
前記導電性接着部材の塗布の良否を検査する検査工程と、
前記検査工程による良品の複数の太陽電池セルを、シングリング方式を用いて接続する太陽電池セル接続工程を含み、太陽電池デバイスを製造する太陽電池デバイス製造工程と、
を含み、
金属電極形成工程では、前記第1バスバー電極または前記第2バスバー電極の前記第2方向の端部の少なくとも一方側に、前記導電性接着部材の形成の良否を検査するための検査領域であって、前記第1バスバー電極または前記第2バスバー電極が形成されていない前記検査領域を配置し、
前記検査工程では、前記検査領域における前記導電性接着部材の有無によって、前記導電性接着部材の塗布の良否を判断する、
太陽電池デバイスの製造方法。
【請求項8】
前記検査工程では、前記検査領域の色調によって、前記検査領域における前記導電性接着部材の有無を判断する、請求項7に記載の太陽電池デバイスの製造方法。
【請求項9】
前記検査工程では、前記導電性接着部材塗布工程の前後の前記検査領域の色調の変化によって、前記検査領域における前記導電性接着部材の有無を判断する、請求項7に記載の太陽電池デバイスの製造方法。
【請求項10】
前記第1金属電極および前記第2金属電極の材料は、銀ペーストであり、
前記導電性接着部材の材料は、銀ペーストである、
請求項7~9のいずれか1項に記載の太陽電池デバイスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池セル、太陽電池デバイス、および、太陽電池デバイスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の太陽電池セルを備える太陽電池デバイスとして、隣り合う太陽電池セルの端部同士を重ね合わせて接続するシングリング構造の太陽電池デバイスがある(例えば、特許文献1参照)。このようなシングリング構造の太陽電池デバイスでは、隣り合う太陽電池セルの端部の金属電極(例えば、バスバー電極)を、導電性接着部材を介して接続する。このようなシングリング構造の太陽電池デバイスの製造方法としては、隣り合う太陽電池セルの一方の金属電極に導電性接着部材(例えば、導電性ペーストCP)を塗布して、隣り合う太陽電池セルの金属電極を重ね合わせる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-517145号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
太陽電池セルの金属電極に導電性接着部材を塗布する際、導電性接着部材の塗布が不十分である場合がある。このように導電性接着部材の塗布が不十分であると、接着箇所の剥離等が生じることがあり、太陽電池デバイスの信頼性が低下してしまう。
【0005】
この点に関し、導電性接着部材の塗布状態を確認(検査)することが考えられるが、以下の2つの理由により、現実的には、導電性接着部材の塗布状態の確認は難しい。
(1)導電性接着部材塗布工程から太陽電池デバイス製造工程(すなわち、太陽電池セル接続工程)までは、1つの装置内で一連の流れで行われる。そのため、太陽電池デバイス製造後、すなわち太陽電池セル接続後では、太陽電池セル間の導電性接着部材の塗布状態を非破壊で確認(検査)することは難しい。
(2)金属電極としては例えば銀ペーストが知られており、導電性接着部材としても例えば銀ペーストが知られており、金属電極の色調と導電性接着部材の色調とは類似している。そのため、例え導電性接着部材塗布工程後であって、太陽電池デバイス製造工程(すなわち、太陽電池セル接続工程)前に、カメラ等の撮像装置で撮像して画像処理したとしても、金属電極層に対する導電性接着部材の塗布状態を確認(検査)することは難しい。
【0006】
本発明は、導電性接着部材の塗布の良否を容易に検査することができる太陽電池セル、太陽電池デバイス、および、太陽電池デバイスの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る太陽電池セルは、半導体基板の一方主面側に形成された第1金属電極と、前記半導体基板の他方主面側に形成された第2金属電極とを備える太陽電池セルであって、前記第1金属電極は、第1方向における一方端側において、前記第1方向に交差する第2方向に延在する第1バスバー電極を含み、前記第2金属電極は、前記第1方向における他方端側において、前記第2方向に延在する第2バスバー電極を含み、前記第1バスバー電極または前記第2バスバー電極の前記第2方向の端部の少なくとも一方側には、導電性接着部材の塗布の良否を検査するための検査領域であって、前記第1バスバー電極または前記第2バスバー電極が形成されていない前記検査領域が配置されている。
【0008】
本発明に係る太陽電池デバイスは、上記の複数の太陽電池セルと、導電性接着部材とを備え、前記複数の太陽電池セルは、前記第1方向に配列されており、シングリング方式を用いて端部の一部が重なり合って接続されており、前記複数の太陽電池セルにおける隣り合う太陽電池セルのうちの一方の太陽電池セルの第1バスバー電極と、前記隣り合う太陽電池セルのうちの他方の太陽電池セルの第2バスバー電極とは、前記導電性接着部材を介して接続されている。
【0009】
本発明に係る太陽電池デバイスの製造方法は、(i)半導体基板の一方主面側に第1金属電極を形成し、前記半導体基板の他方主面側に第2金属電極を形成する金属電極層形成工程を含み、複数の太陽電池セルを製造する太陽電池セル製造工程と、ここで、前記第1金属電極は、第1方向における一方端側において、前記第1方向に交差する第2方向に延在する第1バスバー電極を含み、前記第2金属電極は、前記第1方向における他方端側において、前記第2方向に延在する第2バスバー電極を含み、(ii)前記複数の太陽電池セルの各々における前記第1バスバー電極または前記第2バスバー電極に導電性接着部材を塗布する導電性接着部材塗布工程と、(iii)前記導電性接着部材の塗布の良否を検査する検査工程と、(iv)前記検査工程による良品の複数の太陽電池セルを、シングリング方式を用いて接続する太陽電池セル接続工程を含み、太陽電池デバイスを製造する太陽電池デバイス製造工程とを含む。金属電極形成工程では、前記第1バスバー電極または前記第2バスバー電極の前記第2方向の端部の少なくとも一方側に、前記導電性接着部材の形成の良否を検査するための検査領域であって、前記第1バスバー電極または前記第2バスバー電極が形成されていない前記検査領域を配置する。前記検査工程では、前記検査領域における前記導電性接着部材の有無によって、前記導電性接着部材の塗布の良否を判断する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、複数の太陽電池セルを接続する太陽電池デバイスの製造において、導電性接着部材の塗布の良否を容易に検査することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本実施形態に係る太陽電池デバイスを備える太陽電池モジュールを受光面側からみた図である。
図2図1に示す太陽電池モジュールおよび太陽電池デバイスのII-II線断面図である。
図3】本実施形態に係る太陽電池セルを受光面側からみた図である。
図4】本実施形態に係る太陽電池セルを裏面側からみた図である。
図5図3および図4に示す太陽電池セルのV-V線断面図である。
図6図3および図4に示す太陽電池セルのVI-VI線断面図である。
図7】本実施形態に係る太陽電池デバイスの製造方法における太陽電池セル製造工程に含まれる金属電極層形成工程を示す図である。
図8図7における部分VIIIの拡大図である。
図9】本実施形態に係る太陽電池デバイスの製造方法における導電性接着部材塗布工程を示す図である。
図10】本実施形態に係る太陽電池デバイスの製造方法における検査工程を示す図である。
図11図10に示す部分XIの拡大図である。
図12】本実施形態に係る太陽電池デバイスの製造方法における太陽電池デバイス形成工程に含まれる太陽電池セル接続工程を示す図である。
図13】本実施形態の変形例に係る太陽電池セルを受光面側からみた図である。
図14図10に示す部分XIVの拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付の図面を参照して本発明の実施形態の一例について説明する。なお、各図面において同一または相当の部分に対しては同一の符号を附すこととする。また、便宜上、ハッチングや部材符号等を省略する場合もあるが、かかる場合、他の図面を参照するものとする。
【0013】
(太陽電池モジュール)
図1は、本実施形態に係る太陽電池デバイスを備える太陽電池モジュールを受光面側からみた図であり、図2は、図1に示す太陽電池モジュールおよび太陽電池デバイスのII-II線断面図である。図1では、後述する受光側保護部材3、裏側保護部材4および封止材5が省略されている。また、図1および図2、並びに後述する図面には、XY直交座標系が示されている。XY平面は太陽電池モジュールの受光面および裏面に沿う面である。
【0014】
図1および図2に示すように、太陽電池モジュール100は、複数の太陽電池セル2をシングリング方式を用いて電気的に接続する太陽電池デバイス(太陽電池ストリングとも称される)1を含む。
【0015】
太陽電池デバイス1は、受光側保護部材3と裏側保護部材4とによって挟み込まれている。受光側保護部材3と裏側保護部材4との間には、液体状または固体状の封止材5が充填されており、これにより、太陽電池デバイス1は封止される。
【0016】
封止材5は、太陽電池デバイス1、すなわち太陽電池セル2を封止して保護するもので、太陽電池セル2の受光側の面と受光側保護部材3との間、および、太陽電池セル2の裏側の面と裏側保護部材4との間に介在する。封止材5の形状としては、特に限定されるものではなく、例えばシート状が挙げられる。シート状であれば、面状の太陽電池セル2の表面および裏面を被覆しやすいためである。
【0017】
封止材5の材料としては、特に限定されるものではないが、光を透過する特性(透光性)を有すると好ましい。また、封止材5の材料は、太陽電池セル2と受光側保護部材3と裏側保護部材4とを接着させる接着性を有すると好ましい。このような材料としては、例えば、エチレン/酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン/α-オレフィン共重合体、エチレン/酢酸ビニル/トリアリルイソシアヌレート(EVAT)、ポリビニルブチラート(PVB)、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、または、シリコーン樹脂等の透光性樹脂が挙げられる。
【0018】
受光側保護部材3は、封止材5を介して、太陽電池デバイス1、すなわち太陽電池セル2の表面(受光面)を覆って、その太陽電池セル2を保護する。受光側保護部材3の形状としては、特に限定されるものではないが、面状の受光面を間接的に覆う点から、板状またはシート状が好ましい。
【0019】
受光側保護部材3の材料としては、特に限定されるものではないが、封止材5同様に、透光性を有しつつも紫外光に耐性の有る材料が好ましく、例えば、ガラス、または、アクリル樹脂若しくはポリカーボネート樹脂等の透明樹脂が挙げられる。また、受光側保護部材3の表面は、凹凸状に加工されていても構わないし、反射防止コーティング層で被覆されていても構わない。これらのようになっていると、受光側保護部材3は、受けた光を反射させ難くして、より多くの光を太陽電池デバイス1に導けるためである。
【0020】
裏側保護部材4は、封止材5を介して、太陽電池デバイス1、すなわち太陽電池セル2の裏面を覆って、その太陽電池セル2を保護する。裏側保護部材4の形状としては、特に限定されるものではないが、受光側保護部材3同様に、面状の裏面を間接的に覆う点から、板状またはシート状が好ましい。
【0021】
裏側保護部材4の材料としては、特に限定されるものではないが、水等の浸入を防止する(遮水性の高い)材料が好ましい。例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン(PE)、オレフィン系樹脂、含フッ素樹脂、若しくは含シリコーン樹脂等の樹脂フィルム、またはガラス、ポリカーボネート、アクリル等の透光性を有する板状の樹脂部材と、アルミニウム箔等の金属箔との積層体が挙げられる。
【0022】
(太陽電池デバイス)
太陽電池デバイス1では、太陽電池セル2の端部の一部が重なり合うことにより、太陽電池セル2が直列に接続されている。具体的には、隣り合う太陽電池セル2,2のうちの一方の太陽電池セル2のX方向(第1方向)における一方端側(図2において左端側)の受光面側(一方主面側)の一部は、他方の太陽電池セル2のX方向における他方端側(図2において右端側)の裏面側(他方主面側)の一部の下に重なっている。太陽電池セル2の一方端側の受光面側の一部には、Y方向(第2方向)に延在する第1バスバー電極部(後述)が形成されており、太陽電池セル2の他方端側の裏面側の一部には、Y方向に延在する第2バスバー電極部(後述)が形成されている。一方の太陽電池セル2の一方端側の受光面側の第1バスバー電極部と、他方の太陽電池セル2の他方端側の裏面側の第2バスバー電極部とは、導電性接着部材6を介して電気的に接続されている。
【0023】
このように、瓦を屋根に葺いたように、複数の太陽電池セル2が一様にある方向にそろって傾く堆積構造となることから、このようにして太陽電池セル2を電気的に接続する方式を、シングリング方式と称する。また、ひも状につながった複数の太陽電池セル2を、太陽電池ストリング(太陽電池デバイス)と称する。以下では、隣り合う太陽電池セル2,2が重なり合う領域を、重ね合わせ領域Roという。
【0024】
隣り合う太陽電池セル2,2は、重ね合わせ領域Roにおいて、導電性接着部材6を介して接着される。導電性接着部材6の材料としては、金属粒子、低融点金属微粒子若しくは金属微粒子とバインダーとで形成された導電性ペースト(CP)が用いられる。低抵抗化の観点から、導電性ペーストとしては、金属粒子または金属微粒子として銀を含む銀ペーストが好ましい。
【0025】
(太陽電池セル)
図3は、本実施形態に係る太陽電池セルを受光面側からみた図であり、図4は、本実施形態に係る太陽電池セルを裏面側からみた図である。図5は、図3および図4に示す太陽電池セルのV-V線断面図であり、図6は、図3および図4に示す太陽電池セルのVI-VI線断面図である。図3図6に示す太陽電池セル2は、長方形状の両面電極型の太陽電池セルである。太陽電池セル2は、受光面側(一方主面側)とその反対の裏面側(他方主面側)との2つの主面を有する半導体基板11を備える。また、太陽電池セル2は、半導体基板11の受光面側(一方面側)に順に形成された第1導電型半導体層25、第1透明電極層28および第1金属電極層29を備える。また、太陽電池セル2は、半導体基板11の裏面側(他方面側)に形成された第2導電型半導体層35、第2透明電極層38および第2金属電極層39を備える。
【0026】
半導体基板11は、単結晶シリコンまたは多結晶シリコン等の結晶シリコン材料で形成される。半導体基板11は、例えば結晶シリコン材料にn型ドーパントがドープされたn型の半導体基板である。n型ドーパントとしては、例えばリン(P)が挙げられる。半導体基板11は、受光面側からの入射光を吸収して光キャリア(電子および正孔)を生成する光電変換基板として機能する。
【0027】
半導体基板11の材料として結晶シリコンが用いられることにより、暗電流が比較的に小さく、入射光の強度が低い場合であっても比較的高出力(照度によらず安定した出力)が得られる。
【0028】
第1導電型半導体層25は、半導体基板11の受光面側に形成されている。一方、第2導電型半導体層35は、半導体基板11の裏面側に形成されている。
【0029】
第1導電型半導体層25は、例えばアモルファスシリコン材料で形成される。第1導電型半導体層25は、例えばアモルファスシリコン材料にp型ドーパントがドープされたp型の半導体層である。p型ドーパントとしては、例えばホウ素(B)が挙げられる。
【0030】
第2導電型半導体層35は、例えばアモルファスシリコン材料で形成される。第2導電型半導体層35は、例えばアモルファスシリコン材料にn型ドーパント(例えば、上述したリン(P))がドープされたn型半導体層である。
【0031】
なお、第1導電型半導体層25がn型半導体層であり、第2導電型半導体層35がp型半導体層であってもよい。また、半導体基板11は、結晶シリコン材料にp型ドーパント(例えば、上述したホウ素(B))がドープされたp型半導体基板であってもよい。
【0032】
第1導電型半導体層25と半導体基板11の受光面との間にはパッシベーション層が形成されていてもよく、第2導電型半導体層35の裏面との間にはパッシベーション層が形成されていてもよい。パッシベーション層は、例えば真性(i型)アモルファスシリコン材料で形成される。パッシベーション層は、半導体基板11で生成されたキャリアの再結合を抑制し、キャリアの回収効率を高める。
【0033】
第1透明電極層28は、第1導電型半導体層25上に、すなわち半導体基板11の受光面側に形成されている。第2透明電極層38は、第2導電型半導体層35上に、すなわち半導体基板11の裏面側に形成されている。
第1透明電極層28および第2透明電極層38は、透明な導電性材料で形成される。透明導電性材料としては、ITO(Indium Tin Oxide:酸化インジウムおよび酸化スズの複合酸化物)、ZnO(Zinc Oxide:酸化亜鉛)等が挙げられる。
【0034】
第1金属電極層29は、第1透明電極層28上に、すなわち半導体基板11の受光面側に形成されている。第2金属電極層39は、第2透明電極層38上に、すなわち半導体基板11の裏面側に形成されている。
【0035】
第1金属電極層29は、いわゆる櫛型の形状をなし、櫛歯に相当する複数の第1フィンガー電極部29fと、櫛歯の支持部に相当し、複数の第1フィンガー電極部28fの一端が接続された第1バスバー電極部29bとを有する。第1バスバー電極部29bは、半導体基板11のX方向(第1方向)における一方端側(図3図6において左端側)の辺部に沿ってY方向(第2方向)に延在し、第1フィンガー電極部29fは、第1バスバー電極部29bからX方向に延在する。
【0036】
同様に、第2金属電極層39は、いわゆる櫛型の形状であり、櫛歯に相当する複数の第2フィンガー電極部39fと、櫛歯の支持部に相当し、複数の第2フィンガー電極部38fの一端が接続された第2バスバー電極部39bとを有する。第2バスバー電極部39bは、半導体基板11のX方向(第1方向)における一方端側の辺部に対向する他方端側(図3図6において右端側)の辺部に沿ってY方向(第2方向)に延在し、第2フィンガー電極部39fは、第2バスバー電極部39bからX方向に延在する。
【0037】
なお、重ね合わせ領域Roには、第1バスバー電極部29bまたは第2バスバー電極部39bが形成されている。
【0038】
第1金属電極層29および第2金属電極層39は、金属材料で形成される。金属材料としては、例えばAgが用いられる。第1金属電極層29および第2金属電極層39の材料は、金属粒子、低融点金属微粒子若しくは金属微粒子とバインダーとで形成された導電性ペーストが用いられる。低抵抗化の観点から、導電性ペーストとしては、金属粒子または金属微粒子として銀を含む銀ペーストが好ましい。
【0039】
図3に示すように、第1金属電極層29の第1バスバー電極部29bのY方向(第2方向)の両端部には、導電性接着部材6の塗布の良否を検査するための検査領域R1が配置されている。なお、検査領域R1は、第1バスバー電極部29bのY方向の2つの端部のうちの一方のみに配置されている形態であってもよい。
【0040】
導電性接着部材6の塗布方法として例えばスクリーン印刷が用いられる場合、印刷初めまたは印刷終わりにおいて塗布不良が生じることがある、すなわち、バスバー電極部の端部の少なくとも一方において塗布不良が生じることがある。また、導電性接着部材6の剥離は端部から発生する。そのため、検査領域は、バスバー電極部の端部に配置されることが好ましい。
【0041】
検査領域R1は、第1バスバー電極部29bの端部の領域内に配置されている。検査領域R1の形状は特に限定されず、例えば円形状、楕円形状、矩形状であってもよい。検査領域R1の大きさ(面積)は、バスバー電極部(線幅1.0mm程度)の電気抵抗、および、バスバー電極部と導電性接着部材との接着性の観点から、0.5mm以下であると好ましい。一方、検査領域R1の大きさ(面積)は、検査装置(例えば撮像装置)の精度の観点から、0.1mm以上であると好ましい。
【0042】
検査領域R1では、第1バスバー電極部29bが形成されていない。換言すれば、第1バスバー電極部29bの領域では、半導体基板11側から順に、第1導電型半導体層25、第1透明電極層28および第1金属電極層29が積層されているのに対して、検査領域R1では、半導体基板11側から順に、第1導電型半導体層25および第1透明電極層28が積層されており、第1透明電極層28が露出している。
これにより、第1バスバー電極部29bの領域は銀ペーストの色調(または明度)であるのに対して、検査領域R1は略黒色である。
【0043】
或いは、図4に示すように、第2金属電極層39の第2バスバー電極部39bのY方向(第2方向)の両端部には、導電性接着部材6の塗布の良否を検査するための検査領域R2が配置されていてもよい。なお、検査領域R2は、第2バスバー電極部39bのY方向の2つの端部のうちの一方のみに配置されている形態であってもよい。
【0044】
検査領域R2は、第2バスバー電極部39bの端部の領域内に配置されている。検査領域R2の形状は特に限定されず、例えば円形状、楕円形状、矩形状であってもよい。検査領域R2の大きさ(面積)は、バスバー電極部の電気抵抗、および、バスバー電極部と導電性接着部材との接着性の観点から、0.5mm以下であると好ましい。一方、検査領域R2の大きさ(面積)は、検査装置(例えば撮像装置)の精度の観点から、0.1mm以上であると好ましい。
【0045】
検査領域R2では、第2バスバー電極部39bが形成されていない。換言すれば、第2バスバー電極部39bの領域では、半導体基板11側から順に、第2導電型半導体層35、第2透明電極層38および第2金属電極層39が積層されているのに対して、検査領域R2では、半導体基板11側から順に、第2導電型半導体層35および第2透明電極層38が積層されており、第2透明電極層38が露出している。
これにより、第2バスバー電極部39bの領域は銀ペーストの色調(または明度)であるのに対して、検査領域R2は略黒色である。
【0046】
(太陽電池デバイスの製造方法)
次に、図7図12を参照して、本実施形態に係る太陽電池デバイスの製造方法について説明する。図7および図8は、本実施形態に係る太陽電池デバイスの製造方法における太陽電池セル製造工程に含まれる金属電極層形成工程を示す図であり、図8は、図7における部分VIIIの拡大図である。図9は、本実施形態に係る太陽電池デバイスの製造方法における導電性接着部材塗布工程を示す図である。図10および図11は、本実施形態に係る太陽電池デバイスの製造方法における検査工程を示す図であり、図11は、図10に示す部分XIの拡大図である。図12は、本実施形態に係る太陽電池デバイスの製造方法における太陽電池デバイス形成工程に含まれる太陽電池セル接続工程を示す図である。
【0047】
まず、太陽電池セル2の各々において、半導体基板11の受光面側に第1導電型半導体層25を形成し、半導体基板11の裏面側に第2導電型半導体層35を形成する。第1導電型半導体層25および第2導電型半導体層35の形成方法としては、例えばCVD法(化学気相堆積法)またはPVD法(物理気相成長法)が用いられる。
【0048】
次に、太陽電池セル2の各々において、半導体基板11の受光面側に第1透明電極層28を形成し、半導体基板11の裏面側に第2透明電極層38を形成する。第1透明電極層28および第2透明電極層38の形成方法としては、例えば、CVD法(化学気相堆積法)またはPVD法(物理気相成長法)が用いられる。
【0049】
次に、図7に示すように、太陽電池セル2の各々において、半導体基板11の受光面側に第1金属電極層29、すなわちフィンガー電極部29fおよびバスバー電極部29b、を形成し、半導体基板11の裏面側に第2金属電極層39、すなわちフィンガー電極部39fおよびバスバー電極部39b、を形成する(金属電極層形成工程)。第1金属電極層29および第2金属電極層39の形成方法としては、例えば銀ペーストを用いた印刷法、ディスペンサー法または塗布法が用いられる。
【0050】
このとき、図7および図8に示すように、第1バスバー電極部29bのY方向の端部の少なくとも一方に、第1バスバー電極部が形成されていない検査領域R1を配置する。或いは、第2バスバー電極部39bのY方向の端部の少なくとも一方に、第2バスバー電極部が形成されていない検査領域R2を配置する。
このようにして、複数の太陽電池セル2を製造する(太陽電池セル製造工程)。
【0051】
次に、図9に示すように、太陽電池セル2の各々において、第1金属電極層29の第1バスバー電極部29bに導電性接着部材6を塗布する。或いは、太陽電池セル2の各々において、第2金属電極層39の第2バスバー電極部39bに導電性接着部材6を塗布する(導電性接着部材塗布工程)。導電性接着部材6の塗布方法としては、例えば銀ペースト(CP)を用いたスクリーン印刷が用いられる。
【0052】
次に、図10に示すように、導電性接着部材6の塗布の良否を検査する(検査工程)。このとき、図10および図11に示すように、検査領域R1または検査領域R2における導電性接着部材6の有無によって、導電性接着部材6の塗布の良否を判断する。
【0053】
例えば、検査領域R1は、半導体基板11の受光面側に第1導電型半導体層25および第1透明電極層28が積層されていることによって、略黒色である。また、検査領域R2は、半導体基板11の裏面側に第2導電型半導体層35および第2透明電極層38が積層されていることによって、略黒色である。
【0054】
これにより、検査領域R1または検査領域R2の色調(または明度)によって、導電性接着部材6の銀ペーストの有無を判断してもよい。例えば、カメラ等の撮像装置40によって検査領域R1または検査領域R2を撮像して画像処理し、検査領域R1または検査領域R2の色調(または明度)が、予め記憶した導電性接着部材6の銀ペーストの色調(または明度)であれば、塗布良品と判断する。一方、検査領域R1または検査領域R2の色調(または明度)が導電性接着部材6の銀ペーストの色調(または明度)でない場合、塗布不良品と判断し、除外する。
【0055】
或いは、導電性接着部材塗布工程の前後における検査領域R1または検査領域R2の色調(または明度)の変化によって、導電性接着部材6の有無を判断してもよい。例えば、カメラ等の撮像装置40によって検査領域R1または検査領域R2を撮像して画像処理し、検査領域R1または検査領域R2の色調(または明度)が黒色から導電性接着部材6の銀ペーストの色調(または明度)に変化すれば、塗布良品と判断する。一方、検査領域R1または検査領域R2の色調(または明度)が黒色から導電性接着部材6の銀ペーストの色調(または明度)への変化がないまたは不十分である場合、塗布不良品と判断し、除外する。
【0056】
次に、図12に示すように、塗布良品の複数の太陽電池セル2を、シングリング方式を用いて接続する(太陽電池セル接続工程)。このようにして、太陽電池デバイス1を製造する(太陽電池デバイス製造工程)。
【0057】
次に、1または複数の太陽電池デバイス1を、受光側保護部材3、裏側保護部材4および封止材5によって封止することにより、図1および図2に示す太陽電池モジュール100が得られる。
【0058】
以上説明したように、本実施形態に係る太陽電池デバイスの製造方法によれば、導電性接着部材塗布工程後であって、太陽電池デバイス製造工程(すなわち、太陽電池セル接続工程)前に、導電性接着部材6の塗布の良否を検査する検査工程を含む。これにより、太陽電池デバイス製造工程の前に導電性接着部材の塗布不良品を除外することができ、信頼性の低い太陽電池デバイスおよび太陽電池モジュールの製造を抑制することができる。
【0059】
また、本実施形態に係る太陽電池セル2によれば、第1バスバー電極部29bのY方向の端部の少なくとも一方に、第1バスバー電極部29bが形成されていない検査領域R1が配置されている、或いは、第2バスバー電極部39bのY方向の端部の少なくとも一方に、第2バスバー電極部39bが形成されていない検査領域R2が配置されている。検査領域R1,R2は、略黒色である。これにより、本実施形態に係る太陽電池セル2、太陽電池デバイス1および太陽電池デバイスの製造方法によれば、金属電極層29,39の色調と導電性接着部材6の色調とが類似していても、カメラ等の撮像装置40で撮像して画像処理を行うことにより、金属電極層29,39に対する導電性接着部材6の塗布の良否を容易に検査することができる。
【0060】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されることなく、種々の変更および変形が可能である。例えば、上述した実施形態では、図3に示すように、第1バスバー電極部29bの端部の領域内に検査領域R1を配置した、或いは、図4に示すように、第2バスバー電極部39bの端部の領域内に検査領域R2を配置した。しかし、本発明はこれに限定されず、例えば図13および図14に示すように、第1バスバー電極部29bの端部の領域外(周辺部)に検査領域R1を配置してもよいし、或いは、第2バスバー電極部39bの端部の領域外(周辺部)に検査領域R2を配置してもよい。
【0061】
また、上述した実施形態では、両面電極型の複数の太陽電池セル2をシングリング方式を用いて接続した太陽電池デバイス1を例示した。しかし、本発明はこれに限定されず、裏面電極型(バックコンタクト型)の複数の太陽電池セルをシングリング方式を用いて接続する太陽電池デバイスにも適用可能である。
【符号の説明】
【0062】
1 太陽電池デバイス(太陽電池ストリング)
2 太陽電池セル
3 受光側保護部材
4 裏側保護部材
5 封止材
6 導電性接着部材
11 半導体基板
25 第1導電型半導体層
28 第1透明電極層
29 第1金属電極層(第1金属電極)
29f 第1フィンガー電極部
29b 第1バスバー電極部(第1バスバー電極)
35 第2導電型半導体層
38 第2透明電極層
39 第2金属電極層(第2金属電極)
39f 第2フィンガー電極部
39b 第2バスバー電極部(第2バスバー電極)
40 撮像装置
100 太陽電池モジュール
Ro 重ね合わせ領域
R1,R2 検査領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
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図14