(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024059177
(43)【公開日】2024-05-01
(54)【発明の名称】レール支持構造
(51)【国際特許分類】
B66C 7/08 20060101AFI20240423BHJP
E01B 9/02 20060101ALI20240423BHJP
【FI】
B66C7/08
E01B9/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022166694
(22)【出願日】2022-10-18
(71)【出願人】
【識別番号】000198363
【氏名又は名称】IHI運搬機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000512
【氏名又は名称】弁理士法人山田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田畑 宏明
(72)【発明者】
【氏名】堀内 宗典
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 大樹
【テーマコード(参考)】
3F202
【Fターム(参考)】
3F202AA05
3F202CB03
3F202CE01
(57)【要約】
【課題】レールクリップの設置数の増加や該レールクリップを止めるボルトのサイズアップに依存せずに、レールが過大な水平力を受けてもレールクリップがモーメントによる引抜力に耐え得るようにする。
【解決手段】コンテナクレーン1(軌道走行式機械)の走行路に敷設されたレール4の長手方向複数箇所をレールクリップ9により基礎10に対し固定したレール支持構造に関し、前記レール4の長手方向に並ぶレールクリップ9の相互間に、前記レール4の上部両側を左右対称に斜め下方位置から支える斜材13を追加配置した。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軌道走行式機械の走行路に敷設されたレールの長手方向複数箇所をレールクリップにより基礎に対し固定したレール支持構造において、
前記レールの長手方向に並ぶレールクリップの相互間に、前記レールの上部両側を左右対称に斜め下方位置から支える斜材を追加配置したレール支持構造。
【請求項2】
前記レールがI形断面を成して上部フランジにて軌道走行式機械の走行車輪を受け且つその下部フランジの左右端部をレールクリップを介し基礎側に固定されており、
前記斜材がその先端部を前記レールの上部フランジ直下の窪みに宛がわれ且つその基端部を前記レールの下部フランジから左右両側に離間した位置にて基礎側に掛止されている請求項1に記載のレール支持構造。
【請求項3】
前記斜材の基端部が基礎側に形成された段差部に対し掛止されている請求項1又は2に記載のレール支持構造。
【請求項4】
前記段差部が基礎側に埋設された形鋼に対し溶接されたストッパ金物により形成されている請求項3に記載のレール支持構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レール支持構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図4は一般的な軌道走行式機械についてコンテナクレーンの場合で例示したもので、図中の符号1はコンテナクレーン、2はコンテナクレーン1が配備される港湾、3は港湾2における岸壁、4は岸壁3に前記コンテナクレーン1の走行路として
図4における図面と直交する方向に向け敷設されたレールであり、前記コンテナクレーン1におけるクレーン本体5の支持脚6には、前記レール4に沿って転動自在な走行車輪7を有する走行装置8が取り付けられている。
【0003】
図5~
図7に示す如く、前記コンテナクレーン1のレール4は、I形断面(
図5参照)を成して上部フランジ4aにて前記コンテナクレーン1の走行車輪7を受け、その下部フランジ4bを多数のレールクリップ9により所定間隔で基礎10に対しボルト11止めで固定されるようになっている。
【0004】
ここで、レール4の基礎10には、前記レール4に沿い形鋼12(
図5における図示では横置きのH形鋼の場合を例示)が埋設されており、この形鋼12を貫通して前記ボルト11が前記基礎10のコンクリートに埋め込まれ、このボルト11で止められた前記レールクリップ9により前記レール4の下部フランジ4bの左右端部が下方向きに挟み付けられて固定されるようになっている。
【0005】
斯かる従来構造において、レール4に水平力が作用した場合、レールクリップ9は前記水平力によるモーメントを負担しなければならないが、近年においては、地球温暖化の影響等により台風や竜巻の大型化の傾向が進んでおり、大規模な地震の発生も懸念されていることから、これまで想定してきた以上に過大な水平力がレール4に作用することを考慮する必要があり、そのような過大な水平力が作用した際に、レールクリップ9がモーメントによる引抜力(浮き上がり力)に耐えられるようレールクリップ9の設置数を増加したり、該レールクリップ9を止めるボルト11をこれまで以上にサイズアップしたりすることが検討されている。
【0006】
尚、本発明の従来技術に相当するような先行技術文献については特に何も発見されなかったが、軌道走行式機械に関する一般的技術水準を示す文献としては、例えば、下記の特許文献1等がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、スペース的な制約によりレールクリップ9の追加が物理的に難しい場所が存在するという事情に加え、レールクリップ9の設置数をいたずらに増やしても、その追加により相互間隔が狭まることで荷重が均等にかからなくなって、期待したほどの耐力の向上が望めないという事情もあり、そもそも基礎10側に十分な強度が無ければ、レールクリップ9の設置数の増加やボルト11のサイズアップを施しても基礎10の強度以上に耐力を上げることができないという事情もあった。
【0009】
本発明は、上述の実情に鑑みてなしたもので、レールクリップの設置数の増加や該レールクリップを止めるボルトのサイズアップに依存せずに、レールが過大な水平力を受けてもレールクリップがモーメントによる引抜力に耐え得るようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、軌道走行式機械の走行路に敷設されたレールの長手方向複数箇所をレールクリップにより基礎に対し固定したレール支持構造において、
前記レールの長手方向に並ぶレールクリップの相互間に、前記レールの上部両側を左右対称に斜め下方位置から支える斜材を追加配置したものである。
【0011】
また、前記レール支持構造においては、前記レールがI形断面を成して上部フランジにて軌道走行式機械の走行車輪を受け且つその下部フランジの左右端部をレールクリップを介し基礎側に固定されており、
前記斜材がその先端部を前記レールの上部フランジ直下の窪みに宛がわれ且つその基端部を前記レールの下部フランジから左右両側に離間した位置にて基礎側に掛止されていることが好ましい。
【0012】
更に、前記レール支持構造においては、前記斜材の基端部が基礎側に形成された段差部に対し掛止されていることが好ましく、この段差部は、基礎側に埋設された形鋼に対し溶接されたストッパ金物により形成されていても良い。
【発明の効果】
【0013】
上記した本発明のレール支持構造によれば、レールクリップの設置数の増加や該レールクリップを止めるボルトのサイズアップに依存せずに、レールが過大な水平力を受けてもレールクリップがモーメントによる引抜力に耐え得るようにすることができるという優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明のレール支持構造の一実施例を示す正面断面図である。
【
図4】軌道走行式機械としてのコンテナクレーンの一例を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。
【0016】
図1は本発明のレール支持構造の一実施例を示すもので、先に説明した
図5の場合と同様に、I形断面を成して上部フランジ4aにて前記コンテナクレーン1の走行車輪7を受け、その下部フランジ4bの左右端部を多数のレールクリップ9を介し所定間隔で基礎10側にボルト11止めで固定されるようにしてあるが、前記レール4の長手方向に並ぶレールクリップ9の相互間に、前記レール4の上部両側を左右対称に斜め下方位置から支える斜材13が追加配置されたところが特徴となっている。
【0017】
ここで、斯かるレール支持構造においては、前記斜材13がその先端部を前記レール4の上部フランジ4a直下の窪みに宛がわれ且つその基端部を前記レール4の下部フランジ4bから左右両側に離間した位置にて基礎10側に掛止されるようしてあり、前記レール4と前記基礎10と前記斜材13とにより三角形状のトラス構造が左右対称に形成されるようになっている。
【0018】
特に本実施例におけるレール支持構造にあっては、基礎10側に埋設された形鋼12(
図1における図示では横置きのH形鋼の場合を例示)の上面に溶接されたストッパ金物14により段差部が形成され、このストッパ金物14による段差部に対し前記斜材13の基端部が掛止されるようになっているが、前記形鋼12の上面と基礎10のコンクリートとにより既存の段差部が既に存在していた場合には、その段差部を流用して前記斜材13の基端部を掛止させるようにしても良い。
【0019】
尚、
図1における図示では、前記ストッパ金物14が、前記形鋼12の上面と基礎10のコンクリートとによる既存の段差部と斜材13の基端部との間の隙間を埋めるスペーサのようにも機能しており、前記ストッパ金物14にかかる荷重は前記形鋼12の上面と基礎10のコンクリートとによる既存の段差部にも分担されるようになっている。
【0020】
このようにレール支持構造を構成すれば、台風や竜巻、地震等によりレールに水平力が作用し、該水平力と対抗する側のレールクリップ9にモーメントによる引抜力(浮き上がり力)が発生した際に、引抜力を受けるレールクリップ9とレール4を挟んだ反対側の斜材13にも荷重が分担され、前記レールクリップ9にかかる引抜力が小さくなることで該レールクリップ9への負担が大幅に軽減されることになり、レール4が過大な水平力を受けてもレールクリップ9がモーメントによる引抜力に耐えられるようになる。
【0021】
従って、上記実施例によれば、レールクリップ9の設置数の増加や該レールクリップ9を止めるボルト11のサイズアップに依存せずに、レール4が過大な水平力を受けてもレールクリップ9がモーメントによる引抜力に耐え得るようにすることができる。
【0022】
尚、本発明のレール支持構造は、上述の実施例にのみ限定されるものではなく、様々な軌道走行式機のレールに適用することが可能であり、必ずしもコンテナクレーンのレールへの適用に限定されるものではないこと、その他、械本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0023】
1 コンテナクレーン(軌道走行式機械)
4 レール
4a 上部フランジ
4b 下部フランジ
9 レールクリップ
10 基礎
11 ボルト
13 斜材
14 ストッパ金物(段差部)