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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024059178
(43)【公開日】2024-05-01
(54)【発明の名称】光源装置及び原料供給ユニット
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/20 20060101AFI20240423BHJP
   H05G 2/00 20060101ALI20240423BHJP
   H05H 1/24 20060101ALI20240423BHJP
   G21K 5/08 20060101ALI20240423BHJP
   G03F 1/84 20120101ALN20240423BHJP
【FI】
G03F7/20 503
H05G2/00 K
H05H1/24
G21K5/08 X
G03F1/84
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022166695
(22)【出願日】2022-10-18
(71)【出願人】
【識別番号】000102212
【氏名又は名称】ウシオ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003339
【氏名又は名称】弁理士法人南青山国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】長野 晃尚
(72)【発明者】
【氏名】山谷 大樹
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 芙貴
(72)【発明者】
【氏名】信田 和彦
【テーマコード(参考)】
2G084
2H195
2H197
4C092
【Fターム(参考)】
2G084AA11
2G084BB26
2G084CC27
2G084CC35
2G084FF04
2H195BD04
2H195BD14
2H197CA10
2H197CA12
2H197DC02
2H197DC12
2H197GA01
2H197GA05
2H197GA06
2H197GA20
2H197GA21
2H197GA24
4C092AA06
4C092AA15
4C092AB10
4C092AB19
4C092AC09
(57)【要約】
【課題】デブリの影響を抑制することが可能な光源装置及び原料供給ユニットを提供すること。
【解決手段】本光源装置は、エネルギービームの照射を利用して液体原料をプラズマ化して放射線を取り出す光源装置であって、原料収容部と回転体とを具備する。前記原料収容部は前記液体原料を収容する。前記回転体は前記エネルギービームの光路上に配置され、前記原料収容部に収容された前記液体原料に一部が浸漬され、所定の回転軸を中心に回転することで前記エネルギービームの入射領域に前記液体原料を供給する。また前記回転体は、回転により前記液体原料に浸漬される浸漬部分の前記回転軸の軸方向において第1の側となる第1の浸漬面部、及び前記浸漬部分の前記第1の浸漬面部とは反対側となる第2の浸漬面部のうちの少なくとも一方が、前記回転軸に対して直交する方向の幅が前記回転軸の軸方向に沿って変化するように正面側に突出する突出面として構成される。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エネルギービームの照射を利用して液体原料をプラズマ化して放射線を取り出す光源装置であって、
前記液体原料を収容する原料収容部と、
前記エネルギービームの光路上に配置され、前記原料収容部に収容された前記液体原料に一部が浸漬され、所定の回転軸を中心に回転することで前記エネルギービームの入射領域に前記液体原料を供給する回転体と
を具備し、
前記回転体は、回転により前記液体原料に浸漬される浸漬部分の前記回転軸の軸方向において第1の側となる第1の浸漬面部、及び前記浸漬部分の前記第1の浸漬面部とは反対側となる第2の浸漬面部のうちの少なくとも一方が、前記回転軸に対して直交する方向の幅が前記回転軸の軸方向に沿って変化するように正面側に突出する突出面として構成される
光源装置。
【請求項2】
請求項1に記載の光源装置であって、
前記突出面は、前記回転軸の軸方向に沿って正面から見た場合に、周縁部から前記回転軸に向かって連続的に延在するように構成される
光源装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の光源装置であって、
前記回転体は、前記回転軸の軸方向において、前記第1の側の第1の面と、前記第1の面の反対側の第2の面とを有し、
前記第1の浸漬面部は、前記第1の面のうち前記回転体の回転により前記液体原料に浸漬される部分であり、
前記第2の浸漬面部は、前記第2の面のうち前記回転体の回転により前記液体原料に浸漬される部分である
光源装置。
【請求項4】
請求項3に記載の光源装置であって、
前記第1の面及び前記第2の面のうちの少なくとも一方は、前記回転軸を中心として正面側に突出する曲面形状を有する
光源装置。
【請求項5】
請求項4に記載の光源装置であって、
前記回転軸を中心として正面側に突出する曲面形状は、球冠形状、円錐面形状、放物面形状、又は楕円面形状である
光源装置。
【請求項6】
請求項3に記載の光源装置であって、
前記第1の面及び前記第2の面のうちの一方は、前記回転軸を中心として正面側に突出する曲面形状を有し、
前記第1の面及び前記第2の面のうちの他方は、前記回転軸に直交する平面形状、又は前記回転軸を中心として窪む曲面形状を有する
光源装置。
【請求項7】
請求項1に記載の光源装置であって、さらに、
前記回転体の周縁部を覆うように配置されるカバー部を具備する
光源装置。
【請求項8】
請求項7に記載の光源装置であって、
前記カバー部は、前記第1の浸漬面部と前記第2の浸漬面部との間のエッジ部分を覆うように配置される
光源装置。
【請求項9】
請求項7又は8に記載の光源装置であって、
前記第1の浸漬面部は、前記突出面として構成され、前記エネルギービームの入射領域が設定され、
前記回転軸の軸方向において前記回転体の前記第1の浸漬面部側を前方側、前記回転体の前記第2の浸漬面部側を後方側とすると、
前記カバー部の前方側の先端部は、前記第1の浸漬面部の前記エネルギービームの入射領域よりも後方側に配置される
光源装置。
【請求項10】
請求項7又は8に記載の光源装置であって、
前記第1の浸漬面部及び前記第2の浸漬面部のうちの一方は、前記突出面として構成され、
前記第1の浸漬面部及び前記第2の浸漬面部のうちの他方は、前記突出面ではない非突出面として構成され、
前記カバー部は、前記回転体の周縁部に対向する側面カバー部と、前記側面カバー部に接続され前記非突出面に対向する対向カバー部とを有する
光源装置。
【請求項11】
請求項10に記載の光源装置であって、
前記非突出面と前記対向カバー部との間隔は、1mm以下である
光源装置。
【請求項12】
請求項1に記載の光源装置であって、
前記第1の浸漬面部は、前記回転軸に対して直交する方向の幅が前記回転軸の軸方向に沿って変化するように窪む窪み面であり、
前記第1の浸漬面部のうち前記原料収容部に収容された前記液体原料側に向く部分に、前記エネルギービームの入射領域が設定される
光源装置。
【請求項13】
請求項1に記載の光源装置であって、
前記回転体は、前記第1の浸漬面部と前記第2の浸漬面部との間に構成され、前記回転軸の軸方向に延在する側面部を有し、
前記側面部に、前記エネルギービームの入射領域が設定される
光源装置。
【請求項14】
請求項1に記載の光源装置であって、
LPP(Laser Produced Plasma)方式の光源装置、又はLDP(Laser Assisted Discharge Produced Plasma)方式の光源装置として構成される
光源装置。
【請求項15】
液体原料を収容する原料収容部と、
エネルギービームの光路上に配置され、前記原料収容部に収容された前記液体原料に一部が浸漬され、所定の回転軸を中心に回転することで前記エネルギービームの入射領域に前記液体原料を供給する回転体と
を具備し、
前記回転体は、回転により前記液体原料に浸漬される浸漬部分の前記回転軸の軸方向において第1の側となる第1の浸漬面部、及び前記浸漬部分の前記第1の浸漬面部とは反対側となる第2の浸漬面部のうちの少なくとも一方が、前記回転軸に対して直交する方向の幅が前記回転軸の軸方向に沿って変化するように正面側に突出する突出面として構成される
原料供給ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、X線や極端紫外光等の出射に適用可能な光源装置、及び原料供給ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、X線は、医療用用途、工業用用途、研究用用途に用いられてきた。
医療用分野においては、X線は、胸部X線写真撮影、歯科X線写真撮影や、CT(Computer Tomogram)といった用途に用いられる。
工業用分野においては、X線は、構造物や溶接部などの物質内部を観察する非破壊検査、断層非破壊検査といった用途に用いられる。
研究用分野においては、X線は、物質の結晶構造を解析するためのX線回折、物質の構成元素を分析するためのX線分光(蛍光X線分析)といった用途に用いられる。
【0003】
X線は、X線管を用いて発生させることができる。X線管は、その内部に一対の電極(陽極、陰極)を有する。陰極フィラメントに電流を流して加熱しておき、陽極と陰極間に高電圧を印加すると、フィラメントから発生するマイナスの熱電子が陽極表面にあるターゲットに高速で衝突し、当該ターゲットからX線が発生する。
またX線管において、陽極側のターゲットを液体金属ジェットとし、このターゲットに電子ビームを照射することにより、高輝度のX線を取り出す技術も知られている。
【0004】
X線のうち比較的波長の長い軟X線領域にある波長13.5nmの極端紫外光(以下、「EUV(Extreme Ultra Violet)光」ともいう)は、近年露光光として使用されている。
ここで、微細パターンが構成されているEUVリソグラフィ用のマスクの基材は、積層構造として、低熱膨張性ガラスから成る基板の上に、EUV光を反射させるための多層膜(例えば、モリブデンとシリコン)が設けられてなる反射ミラーである。
そして、多層膜上に波長13.5nmの放射線を吸収する材料をパターニングすることで、EUVマスクが構成される。
【0005】
EUVマスクにおける許容できない欠陥の大きさは、従来のArFマスクの場合に比べると大幅に小さくなっており検出することが困難となっている。
そこで、EUVマスクの検査として、通常はアクティニック検査(Actinic inspection)と呼ばれる、リソグラフィの作業波長と一致する波長の放射線を用いた検査が行われる。例えば、波長13.5nmの放射線を用いて検査を行うと、l0nmよりも良好な分解能で欠陥を検出することが可能となる。
【0006】
一般にEUV光源装置としては、DPP(Discharge Produced Plasma)光源装置、LDP(Laser Assisted Discharge Produced Plasma)光源装置、及びLPP(Laser Produced Plasma)光源装置が挙げられる。
DPP方式のEUV光源装置は、EUV放射種(気相のプラズマ原料)を含む放電ガスが供給された電極間に高電圧を印加して、放電により高密度高温プラズマを生成し、そこから放射される極端紫外光を利用するものである。
【0007】
LDP光源装置は、DPP光源装置が改良されたものであり、例えば、放電を発生させる電極(放電電極)表面にEUV放射種を含む液体状の高温プラズマ原料(例えば、Sn(スズ)やLi(リチウム)等)を供給し、当該原料に対してレーザビーム等のエネルギービーム(例えば、電子ビームやレーザビーム等)を照射して当該原料を気化し、その後、放電によって高温プラズマを生成するものである。
【0008】
LPP光源装置は、EUV放射用ターゲット材料である微小な液滴状に噴出されたスズ(Sn)、または、リチウム(Li)等のドロップレットに対して、レーザ光を集光することにより当該ターゲット材料を励起してプラズマを発生させるものである。
【0009】
このように、軟X線領域にあるEUV光を発生させるEUV光源装置として、DPP方式(LDP方式)や、LPP方式の光源装置を使用することが可能である。
一方で、EUV光源装置において、DPP方式(LDP方式)のものは、最終的には電極間の放電によってプラズマを生成しているので、EUV原料に起因するデブリが発生しやすい。
LPP方式のものは、EUV原料である微細なスズのドロップレットをターゲットとし、それに励起用レーザ光を集光させるため、光源の構造が複雑である。また、スズのドロップレットを安定して落下・供給することが難しく、EUV光を安定して生成することが困難である。
【0010】
特許文献1には、放射線(X線、EUV)発生用のターゲット原料が供給された回転体において、当該回転体におけるターゲット原料供給領域にエネルギービーム(レーザビーム)を照射して放射線を得る方法が提案されている。この方法によれば、比較的簡易な構成で、高輝度の放射線を得ることが可能となる。
特許文献1に記載の方法をEUV光源装置に適用した場合、所謂LPP方式に相当するが、液体状のEUV原料をドロップレットとして供給する必要がない。そのため、EUV原料供給が容易で、かつ、確実に液体状のEUV原料にレーザビームを照射することが可能となり、比較的簡易な構成の装置でEUV放射を得ることが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2021-1924号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
特許文献1のようなLPP方式の光源装置では、エネルギービームにより液体原料を気化させ、その気化した原料に引き続きエネルギービームを照射することで原料を加熱励起して高温プラズマが生成される。生成された高温プラズマからは、EUV光やより波長の短いX線等の放射線を取り出すことが可能である。
【0013】
このようなX線やEUV光等を出射する光源装置において、デブリの影響を抑制することは重要である。
【0014】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、デブリの影響を抑制することが可能な光源装置及び原料供給ユニットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係る光源装置は、エネルギービームの照射を利用して液体原料をプラズマ化して放射線を取り出す光源装置であって、原料収容部と、回転体とを具備する。
前記原料収容部は、前記液体原料を収容する。
前記回転体は、前記エネルギービームの光路上に配置され、前記原料収容部に収容された前記液体原料に一部が浸漬され、所定の回転軸を中心に回転することで前記エネルギービームの入射領域に前記液体原料を供給する。
また、前記回転体は、回転により前記液体原料に浸漬される浸漬部分の前記回転軸の軸方向において第1の側となる第1の浸漬面部、及び前記浸漬部分の前記第1の浸漬面部とは反対側となる第2の浸漬面部のうちの少なくとも一方が、前記回転軸に対して直交する方向の幅が前記回転軸の軸方向に沿って変化するように正面側に突出する突出面として構成される。
【0016】
この光源装置では、原料収容部に収容された液体原料に一部が浸漬されるように配置された回転体が回転することで、エネルギービームの入射領域に液体原料が供給される。当該回転体の液体原料に浸漬される浸漬部分の第1の浸漬面部及び第2の浸漬面部のうちの少なくとも一方が、回転軸に対して直交する方向の幅が変化するように正面側に突出する突出面として構成される。これにより、光源装置の動作時に発生するデブリの影響を抑制することが可能となる。
【0017】
前記突出面は、前記回転軸の軸方向に沿って正面から見た場合に、周縁部から前記回転軸に向かって連続的に延在するように構成されてもよい。
【0018】
前記回転体は、前記回転軸の軸方向において、前記第1の側の第1の面と、前記第1の面の反対側の第2の面とを有してもよい。この場合、前記第1の浸漬面部は、前記第1の面のうち前記回転体の回転により前記液体原料に浸漬される部分であってもよい。また前記第2の浸漬面部は、前記第2の面のうち前記回転体の回転により前記液体原料に浸漬される部分であってもよい。
【0019】
前記第1の面及び前記第2の面のうちの少なくとも一方は、前記回転軸を中心として正面側に突出する曲面形状を有してもよい。
【0020】
前記回転軸を中心として正面側に突出する曲面形状は、球冠形状、円錐面形状、放物面形状、又は楕円面形状であってもよい。
【0021】
前記第1の面及び前記第2の面のうちの一方は、前記回転軸を中心として正面側に突出する曲面形状を有してもよい。この場合、前記第1の面及び前記第2の面のうちの他方は、前記回転軸に直交する平面形状、又は前記回転軸を中心として窪む曲面形状を有してもよい。
【0022】
前記光源装置は、さらに、前記回転体の周縁部を覆うように配置されるカバー部を具備してもよい。
【0023】
前記カバー部は、前記第1の浸漬面部と前記第2の浸漬面部との間のエッジ部分を覆うように配置されてもよい。
【0024】
前記第1の浸漬面部は、前記突出面として構成され、前記エネルギービームの入射領域が設定されてもよい。この場合、前記回転軸の軸方向において前記回転体の前記第1の浸漬面部側を前方側、前記回転体の前記第2の浸漬面部側を後方側とすると、前記カバー部の前方側の先端部は、前記第1の浸漬面部の前記エネルギービームの入射領域よりも後方側に配置されてもよい。
【0025】
前記第1の浸漬面部及び前記第2の浸漬面部のうちの一方は、前記突出面として構成されてもよい。この場合、前記第1の浸漬面部及び前記第2の浸漬面部のうちの他方は、前記突出面ではない非突出面として構成されてもよい。また前記カバー部は、前記回転体の周縁部に対向する側面カバー部と、前記側面カバー部に接続され前記非突出面に対向する対向カバー部とを有してもよい。
【0026】
前記非突出面と前記対向カバー部との間隔は、1mm以下であってもよい。
【0027】
前記第1の浸漬面部は、前記回転軸に対して直交する方向の幅が前記回転軸の軸方向に沿って変化するように窪む窪み面であってもよい。この場合、前記第1の浸漬面部のうち前記原料収容部に収容された前記液体原料側に向く部分に、前記エネルギービームの入射領域が設定されてもよい。
【0028】
前記回転体は、前記第1の浸漬面部と前記第2の浸漬面部との間に構成され、前記回転軸の軸方向に延在する側面部を有してもよい。この場合、前記側面部に、前記エネルギービームの入射領域が設定されてもよい。
【0029】
前記光源装置は、LPP(Laser Produced Plasma)方式の光源装置、又はLDP(Laser Assisted Discharge Produced Plasma)方式の光源装置として構成されてもよい。
【0030】
本発明の一形態に係る原料供給ユニットは、前記原料収容部と、前記回転体とを具備する。
【発明の効果】
【0031】
以上のように、本発明によれば、デブリの影響を抑制することが可能となる。なお、ここに記載された効果は必ずしも限定されるものではなく、本開示中に記載されたいずれかの効果であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】本発明の一実施形態に係る光源装置の構成例を示す図である(LPP方式)。
図2】原料供給機構の構成例を示す模式図である。
図3】原料供給ユニットの一構成例を示す模式図である。
図4】原料供給ユニットの一構成例を示す模式図である。
図5】比較例として挙げる原料供給ユニットを示す模式図である。
図6】原料供給ユニットの他の構成例を示す模式図である。
図7】原料供給ユニットの他の構成例を示す模式図である。
図8】原料供給ユニットの他の構成例を示す模式図である。
図9】原料供給ユニットの他の構成例を示す模式図である。
図10】原料供給ユニットの他の構成例を示す模式図である。
図11】原料供給ユニットの他の構成例を示す模式図である。
図12】原料供給ユニットの他の構成例を示す模式図である。
図13】原料供給ユニットの他の構成例を示す模式図である。
図14】原料供給ユニットの他の構成例を示す模式図である。
図15】本発明の一実施形態に係る光源装置の構成例を示す図である(LDP方式)。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明に係る実施形態を、図面を参照しながら説明する。
【0034】
[光源装置の構成]
図1は、本発明の一実施形態に係る光源装置の構成例を示す模式図である。
図1は、光源装置1を設置面から所定の高さの位置で水平方向に沿って切断した場合の模式的な断面を、上方から見た場合の図である。
図1では、光源装置1の構成及び動作を理解しやすいように、断面の構成等を説明する必要のない部分については、断面の図示を省略している。
【0035】
図1では、便宜的に、紙面の上下方向を前後方向とし、紙面の左右方向を左右方向として説明を行う。また、紙面に垂直となる方向を高さ方向として説明を行う。もちろん、本技術の適用について、光源装置1が使用される向き等が限定される訳ではない。
【0036】
光源装置1は、エネルギービームEBの照射を利用してプラズマ原料23をプラズマ化して放射線Rを取り出すLPP方式の光源装置である。
光源装置1は、例えば波長30nm以下の硬X線から軟X線(EUV光含む)までの放射線Rを放出することが可能である。
従って光源装置1を、X線発生装置、又はEUV光源装置(EUV放射発生装置)として使用することが可能である。もちろん、他の波長帯域の放射線を出射する光源装置に、本技術を適用することも可能である。
【0037】
光源装置1は、筐体2と、真空チャンバ3と、エネルギービーム入射チャンバ4と、放射線出射チャンバ5と、原料供給機構6と、制御部7とを含む。
筐体2は、おおよその外形が立方体形状となるように構成される。
筐体2は、前方面に形成される出射孔8と、右側面に形成される入射孔9と、後方面に形成される2つの貫通孔10及び11と、左側面に形成される貫通孔12とを有する。
筐体2の材料は限定されず、例えば金属製の筐体が用いられる。
【0038】
本実施形態では、前方面の出射孔8を通り、前後方向に延在するように、放射線Rの出射軸EAが設定される。X線やEUV光等の放射線Rは、出射軸EAに沿って取り出され、出射孔8から前方側に向かって放出される。
また本実施形態では、右側面の入射孔9から、後方側に向かって左斜めに延在するように、エネルギービームEBの入射軸IAが設定される。
図1に示すように、筐体2の外部に、エネルギービームEBを出射するビーム源13が設置される。ビーム源13は、入射軸IAに沿ってエネルギービームEBが筐体2の内部に入射するように設置される。
エネルギービームEBとしては、電子ビームやレーザビームを使用することが可能である。ビーム源13の構成としては、これらのエネルギービームEBを出射可能な任意の構成が採用されてよい。
【0039】
真空チャンバ3、エネルギービーム入射チャンバ(以下、単に入射チャンバと記載する)4、及び放射線出射チャンバ(以下、単に出射チャンバと記載する)5は、互いに空間的に接続される。すなわち、真空チャンバ3と入射チャンバ4とは互いに連結される。同様に、真空チャンバ3と出射チャンバ5とは互いに連結される。
本実施形態では、チャンバ本体14と、チャンバ本体14の前方面から前方側に突出する外側突出部15と、チャンバ本体14の内周面から内部側に突出する2つの内側突出部16及び17とにより、真空チャンバ3と、入射チャンバ4と、出射チャンバ5とが構成される。
チャンバ本体14、外側突出部15、及び2つの内側突出部16及び17の材料としては、例えば金属材料が用いられる。
【0040】
チャンバ本体14は、おおよその外形が直方体形状となるように構成され、前後左右の各面が、筐体2の前後左右の各面とそれぞれ対向するように配置される。
また、チャンバ本体14は、前方面と右側面との間の右前角部が、エネルギービームEBの入射軸IA上に位置するように配置される。
【0041】
図1に示すように、チャンバ本体14の前方面には、出射孔18が形成される。出射孔18は、放射線Rの出射軸EA上で、筐体2の前方面の出射孔8と並ぶ位置に形成される。
チャンバ本体14の出射孔18の周縁部から、前方側に突出するように外側突出部15が構成される。外側突出部15は、筐体2の出射孔8に内接するように、筐体2の出射孔8よりも前方側に大きく突出するように構成される。
また、チャンバ本体14の内部側において、出射孔18の周縁部から内部側に突出するように、内側突出部16が構成される。
外側突出部15及び内側突出部16に囲まれた空間が、出射チャンバ5として機能する。出射チャンバ5を構成する部材である外側突出部15及び内側突出部16自体を、出射チャンバと呼ぶことも可能である。
外側突出部15及び内側突出部16は、チャンバ本体14と一体的に形成されてもよいし、別個に形成されたのちにチャンバ本体14に接続されてもよい。
【0042】
出射チャンバ5は、放射線Rの出射軸EAを中心軸として、コーン形状となるように構成される。出射チャンバ5は、放射線Rの出射軸EAの方向において、中央部分の断面積が大きく、前後の端部に近づくにつれて断面積が小さくなるように構成される。すなわち、出射チャンバ5は、前後の端部に近づくにつれて絞られるような形状となる。
【0043】
チャンバ本体14の右前角部には、入射窓19が形成される。入射窓19は、エネルギービームEBの入射軸IA上で、筐体2の右側面の入射孔9と並ぶ位置に形成される。
また、チャンバ本体14の右前角部の内部側において、入射窓19を囲む位置からエネルギービームEBの入射軸IAの方向に沿って突出するように、内側突出部17が構成される。
チャンバ本体14の内部空間のうち、内側突出部17に囲まれた空間が、入射チャンバ4として機能する。入射チャンバ4を構成する内側突出部17及びチャンバ本体14の右前角部の部分自体を、入射チャンバと呼ぶことも可能である。
内側突出部17は、チャンバ本体14と一体的に形成されてもよいし、別個に形成されたのちにチャンバ本体14に接続されてもよい。
【0044】
入射チャンバ4は、エネルギービームEBの入射軸IAを中心軸として、コーン形状となるように構成される。入射チャンバ4は、エネルギービームEBの入射軸IAの方向において、チャンバ本体14の内部側の端部に近づくにつれて断面積が小さくなるように構成される。すなわち、入射チャンバ4は、内部側の端部に近づくにつれて絞られるような形状となる。
【0045】
チャンバ本体14の内部空間のうち、出射チャンバ5として機能する内側突出部16の内部空間、及び入射チャンバ4として機能する内側突出部17の内部空間を除く空間が、真空チャンバ3として機能する。真空チャンバ3を構成する部分自体を、真空チャンバと呼ぶことも可能である。
図1に示すように、チャンバ本体14は、筐体2の左側面の貫通孔12から筐体2の外部に突出する部分を有し、その先端が排気用ポンプ20に接続される。
排気用ポンプ20により真空チャンバ3内が排気され、真空チャンバ3が減圧される。これにより、真空チャンバ3内にて生成される放射線Rの減衰が抑制される。
真空チャンバ3内は、入射チャンバ4及び出射チャンバ5に対して減圧雰囲気であればよく、必ずしも真空雰囲気でなくてもよい。また、真空チャンバ3内に不活性ガスが供給されていてもよい。
排気用ポンプ20の具体的な構成は限定されず、真空ポンプ等の任意のポンプが用いられてよい。
【0046】
原料供給機構6は、真空チャンバ3内のプラズマ生成領域21にてプラズマPを生成し、放射線R(X線、EUV光)を放出するための機構である。
原料供給機構6は、真空チャンバ3の内部に配置される原料供給ユニット60を含む。原料供給ユニット60は、原料供給用の回転体22、及び液相のプラズマ原料(放射線原料)23を収容するコンテナ24を含む。
本実施形態において、プラズマ原料23は、本発明における液体原料の一実施形態に相当する。コンテナ24は、液体原料を収容する原料収容部の一実施形態に相当する。
【0047】
図1に示すように、回転体22は、エネルギービームEBが入射する側の第1の面22aと、第1の面22aとは反対側の第2の面22bとを有する。第1の面22aは、エネルギービームEBの入射面ともいえる。また第2の面22bを、回転体22の裏面(背面)と呼ぶことも可能である。
【0048】
回転体22の第1の面22aには、エネルギービームEBが入射する入射領域25が設定されている。回転体22は、入射領域25が入射軸IAと出射軸EAとの交点の位置に配置されるように、真空チャンバ3内に配置される。
回転体22の入射領域25にはプラズマ原料23が供給され、入射領域25にエネルギービームEBが入射することで、プラズマPが生成される。
真空チャンバ3内のプラズマPが生成される領域(空間)が、プラズマ生成領域21となる。従って、プラズマ生成領域21は、回転体22の入射領域25の位置に対応した領域となる。
【0049】
制御部7は、光源装置1が有する各構成要素の動作を制御する。
例えば、制御部7により、ビーム源13や排気用ポンプ20の動作が制御される。また制御部7により、後に説明する各種モータ、プラズマ原料循環装置、外部電圧源等の動作が制御される。
制御部7は、例えばCPUやメモリ(RAM、ROM)等のコンピュータに必要なハードウェア回路を有する。CPUがメモリに記憶されている制御プログラムをRAMにロードして実行することにより、種々の処理が実行される。
制御部7として、例えばFPGA(Field Programmable Gate Array)等のPLD(Programmable Logic Device)、その他ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等のデバイスが用いられてもよい。
【0050】
図1では、制御部7は機能ブロックとして模式的に図示されているが、制御部7が構成される位置等は任意に設計されてよい。
本実施形態では、制御部7のCPUが本実施形態に係るプログラムを実行することで、本実施形態に係るプラズマ生成方法及び放射線出射方法が実行される。
【0051】
以下、光源装置1を構成する各種チャンバ、及び原料供給機構6について、詳しく説明する。
【0052】
[入射チャンバ]
入射チャンバ4は、チャンバ本体14の右前角部において、内側突出部17により構成される。チャンバ本体14の右前角部には入射窓19が配置され、ビーム源13から出射されるエネルギービームEBは、入射窓19を通って、入射軸IAに沿って、入射チャンバ4の内部に入射する。
なお、エネルギービームEBの入射軸IAは、入射チャンバ4の内部に入射するエネルギービームEBの光軸(主軸)とも言える。
【0053】
入射窓19は、エネルギービームEBを透過可能な材料からなり、入射チャンバ4の内外の圧力差に耐え得る厚さで設計される。
エネルギービームEBが電子ビームの場合、例えば、チタンやアルミニウムといった金属の膜を用いることができる。
エネルギービームEBがレーザビームの場合、例えば、ガラス材料(石英ガラス)を用いることができる。
その他、エネルギービームEBを透過可能な任意の材料が用いられてよい。
【0054】
内側突出部17は、回転体22の第1の面22aの入射領域25に向かって突出し、突出側の先端に入射側アパーチャ26が形成される。入射側アパーチャ26は、エネルギービームEBの入射軸IA上にて、入射窓19と並ぶように配置される。
入射側アパーチャ26は、エネルギービームEBを入射チャンバ4から真空チャンバ3内に入射する。すなわち入射窓19から入射軸IAに沿って進行するエネルギービームEBは、入射側アパーチャ26を通って、真空チャンバ3内に配置された回転体22に入射する。
【0055】
入射チャンバ4の内部には、飛散したプラズマ原料23やデブリを捕捉するための捕捉機構が配置される。図1に示す例では、補足機構として、エネルギービームEBを透過し、プラズマ原料23やデブリを捕捉する板状の回転部材である回転式窓27が配置される。回転式窓27は、例えば、円盤状に構成される。
回転式窓27中心部には、図示を省略したモータの回転軸が取り付けられている。モータが回転軸を回転させることにより、回転式窓27は回転する。モータは、制御部7によって駆動制御される。
【0056】
モータは、筐体2の外部に形成され、筐体2及びチャンバ本体14に形成された図示しない貫通孔を通って回転軸が回転式窓27に接続される。チャンバ本体14に回転軸を導入する際にはメカニカルシールが用いられ、入射チャンバ4内の雰囲気(後述するガス雰囲気)を維持しつつ、回転式窓27の回転が許容される。
また、回転式窓27を回転させる回転軸は、エネルギービームEBの入射軸IAとはオフセットされた位置に配置される。これにより、エネルギービームEBは、回転式窓27の回転軸に干渉されず、回転式窓27のビーム透過領域を通って進行することが可能となる。
回転式窓27を回転させることで、回転式窓27のビーム透過領域の実質的な面積を増大させることが可能となり、回転式窓27の長寿命化を図ることが可能となり、回転式窓27の交換頻度を低減することが可能となる。
【0057】
図1に示すように、チャンバ本体14には、入射チャンバ4に連結するように、ガス注入路28が設置される。ガス注入路28を介して、図示を省略したガス供給装置から、入射チャンバ4内にガスが供給される。
供給されるガスは、エネルギービームEBに対して透過率の高いガスであり、例えばアルゴン(Ar)やヘリウム(He)といった希ガス等が採用される。
ガスは、入射チャンバ4の内部の圧力を増加させるために供給される。すなわちガス注入路28から入射チャンバ4内にガスが供給されることにより、入射チャンバ4の内部圧力を、真空チャンバ3の内部圧力よりも十分に高い圧力に維持することが可能となる。
【0058】
内側突出部17は、突出側(入射側アパーチャ26が形成されている側)に進むにつれて断面積が小さくなるコーン形状からなる。そして、その先端部には入射側アパーチャ26が設けられている。これにより、ガスを供給して入射チャンバ4の内部圧力を増加させることに有利な構成となっている。
また内側突出部17がコーン形状に構成されることで、チャンバ本体14内において内側突出部17が占める空間を小さくすることが可能となり、他の部材の配置設計等の自由度を向上させることが可能となる。この結果、装置の小型化を図ることが可能となる。
【0059】
[出射チャンバ]
出射チャンバ5は、出射軸Rを中心軸とするコーン形状からなり、前方側の端部(外側突出部15の前方側の端部)にマスク検査装置等の利用装置が接続される。図1に示す例では、利用装置の一部をなすチャンバとして、アプリケーションチャンバ30が接続される。
アプリケーションチャンバ30内の圧力は大気圧であってもよい。また、アプリケーションチャンバ30の内部は、必要に応じてガス注入路31よりガス(例えば、不活性ガス)を導入してパージしてもよい。またアプリケーションチャンバ30の内部のガスは図示を省略した排気手段により排気されていてもよい。
【0060】
図1に示すように、外側突出部15には、出射チャンバ5に連結するように、ガス注入路32が設置される。ガス注入路32を介して、図示を省略したガス供給装置から、出射チャンバ5内にガスが供給される。供給されるガスは、放射線Rに対して透過率の高いガスであり、例えばアルゴンやヘリウムといった希ガス等が採用される。
アルゴンやヘリウムは、エネルギービームEB及び放射線Rの両方に対して透過率の高いガスとして用いることが可能である。従って、入射チャンバ4及び出射チャンバ5の両方に同じガスが供給されてもよい。
【0061】
この場合、ガス供給装置を共通して用いることが可能となるので、装置の簡素化を図ることが可能である。もちろん入射チャンバ4に供給されるガスと、出射チャンバ5に供給されるガスとして、互いに異なるガスが用いられてもよい。
ガスは、出射チャンバ5の内部の圧力を増加させるために供給される。すなわち、ガス注入路32から出射チャンバ5内にガスが供給されることにより、出射チャンバ5の内部圧力を、真空チャンバ3の内部圧力よりも十分に高い圧力に維持することが可能となる。
【0062】
出射チャンバ5の内部には、出射チャンバ5の内に入射した放射線Rを利用装置内(アプリケーションチャンバ30内)に導光して集光するためのコレクタ(集光鏡)33が配置されている。図1では、出射チャンバ5に入射し集光される放射線Rの成分がハッチングにて図示されている。
コレクタ33の外表面は、冷却と位置合わせの目的で出射チャンバ5の内面(外側突出部15の内面)に接触している。
コレクタ33としては、例えば、単一シェルの斜入射反射鏡が用いられる。コレクタ33本体は、金属部材(例えばアルミニウム(Al)、ニッケル(Ni)、ステンレス)で構成される。
【0063】
コレクタ33の内側の反射面の反射コーティングは任意であるが、放射線Rを反射する反射コーティング材料としては、例えばルテニウム(Ru)が好適である。
なお、コレクタ33を、本体に高価なRuをコーティングした構造とする代わりに、本体をガラス(二酸化ケイ素:SiO2)とし、内側を研磨して放射線反射面を形成するように構成してもよい。
このガラス製コレクタは、反射面の反射率はRuコーティングが施された金属部材製コレクタと比較すると反射率は低いものの、当該Ruコーティングコレクタと比較すると材料コストが非常に低く、頻繁な交換が可能となる。
【0064】
出射チャンバ5を構成する内側突出部16は、回転体22の第1の面22aの入射領域25に向かって突出し、突出側の先端に出射側アパーチャ34が形成される。
出射側アパーチャ34は、放射線Rの出射軸EA上にて、チャンバ本体14の出射孔18、及び筐体2の出射孔8と並ぶように配置される。
出射側アパーチャ34は、放射線Rを真空チャンバ3から出射チャンバ5内に入射させる。すなわち、プラズマPから放出される放射線Rの一部が、出射側アパーチャ34を通ってコレクタ33に入射する。コレクタ33により放射線Rが導光され、アプリケーションチャンバ30内にて集光される。
出射側アパーチャ34の開口面積を適宜設計することで、コレクタ33に入射する放射線Rの開き角を制御することが可能となる。
なお、放射線Rの出射軸EAは、プラズマPから出射チャンバ5内に取り込まれる放射線Rの光軸(主軸)とも言える。
【0065】
内側突出部16は、突出側(出射側アパーチャ34が形成されている側)に進むにつれて断面積が小さくなるコーン形状からなる。従って、内側突出部16をコレクタコーンと呼ぶことも可能である。
コーン形状からなる内側突出部16の先端部には出射側アパーチャ34が設けられているので、ガスを供給して出射チャンバ5の内部圧力を増加させることに有利な構成となっている。
また内側突出部16がコーン形状に構成されることで、チャンバ本体14内において内側突出部16が占める空間を小さくすることが可能となり、他の部材の配置設計等の自由度を向上させることが可能となる。この結果、装置の小型化を図ることが可能となる。
【0066】
図1に示すように、出射チャンバ5とアプリケーションチャンバ30との間には、フィルタ膜35が設けられる。
フィルタ膜35は、真空チャンバ3内のプラズマ生成領域21と、アプリケーションチャンバ30とを物理的に分離する(物理的に空間を分離する)ためのものであり、飛散するプラズマ原料23やデブリのアプリケーションチャンバ30への進入を防止する。
フィルタ膜35は、プラズマ生成領域21で発生する放射線Rを透過する材料からなる。放射線RがX線の場合、フィルタ膜35は例えば、X線に対する透過率が非常に高いベリリウム薄膜により構成される。放射線RがEUV光の場合は、例えば、ジルコニウム(Zr)により構成される。
【0067】
なお、出射チャンバ5内はガスが供給されるものの真空チャンバ3と空間的に接続されるので減圧雰囲気である。一方、アプリケーションチャンバ30内は、上記したように大気圧であってもよい。
この場合、出射チャンバ5とアプリケーションチャンバ30との間には圧力差が生じる。よって、フィルタ膜35の厚みは、この圧力差に耐え得る厚みとなる。すなわち、フィルタ膜35は、真空チャンバ3と空間的に接続される出射チャンバ5内の減圧雰囲気を破壊しないように構成される。
【0068】
出射チャンバ5の内部には、遮蔽部材(中央掩蔽)36が配置される。
遮蔽部材36は、放射線Rの出射軸EA上にて、チャンバ本体14の出射孔18、筐体2の出射孔8、及びフィルタ膜35と並ぶように配置される。
プラズマPから放出され出射チャンバ5に入射する放射線Rの中には、コレクタ33により集光されずに、出射チャンバ5内を進行する放射線成分も存在し得る。この集光されない放射性成分の少なくとも一部は広がりながら進行する。このような放射線成分は、通常、利用装置では利用されず、不要な場合が多い。
本実施形態では、遮蔽部材36により、コレクタ33により集光されない放射線成分を遮光することが可能である。
【0069】
[原料供給機構]
図2は、原料供給機構6の構成例を示す模式図である。
原料供給機構6は、原料供給ユニット60と、プラズマ原料循環装置41とを含む。図1及び図2に示すように、原料供給ユニット60は、回転体22と、プラズマ原料23を収容するコンテナ24と、カバー部材37と、モータ38と、軸部39とを含む。
【0070】
回転体22は、エネルギービームEBの照射による回転体22自身の損耗を抑制するために、例えばタングステン(W)、モリブデン(Mo)、タンタル(Ta)等の高融点金属を用いて構成される。あるいは、比較的高融点であるステンレス等から構成される。
【0071】
回転体22は、下方側の一部が、コンテナ24に収容されたプラズマ原料23に浸漬されており、浸漬されている部分にはプラズマ原料23が付着する。
【0072】
放射線RとしてX線が出射される場合は、プラズマ原料23としてX線原料が用いられる。X線原料は常温で液体状である金属であり、例えば、ガリウム(Ga)や、インジウム(In)及びスズ(Sn)の共晶合金であるガリンスタン(登録商標)などのガリウム合金を用いることができる。
また、例えば水による吸収が少なく、水溶液中の生体試料の観察に適している波長2~4nm領域(water window)の放射線を放出するための原料として、ビスマス(Bi:融点271.5℃)を用いることができる。
【0073】
放射線RとしてEUV光が出射される場合は、プラズマ原料23としてEUV原料が用いられる。EUV光を放出するための原料としては、例えば、液体状のスズ(Sn)やリチウム(Li)が用いられる。
Sn、Liは常温では固体であるので、コンテナ24には図示を省略した温調手段が設けられる。例えば、EUV原料がSnの場合は、コンテナ24はSnの融点以上の温度に維持される。
【0074】
回転体22の第2の面22bの中心部には、モータ38の軸部39が接続される。制御部7によりモータ38の動作が制御され軸部39を介して回転体22が回転される。軸部39は、一方向に延在する柱状の部材であり、その中心軸が回転体22及びモータ38の回転軸Oとなる。
図1に示すように、軸部39は、筐体2の貫通孔10を通り、メカニカルシール42を介して、真空チャンバ3内に導入される。メカニカルシール42は、真空チャンバ3内の減圧雰囲気を維持しつつ、軸部39の回転を許容する。
【0075】
回転体22の下方側の一部がコンテナ24に貯留されたプラズマ原料23に浸漬した状態で、回転体22が軸部39(回転軸O)を中心に回転する。これにより、プラズマ原料23は、回転体22の第1の面22aとの濡れ性により、回転体22の第1の面22aになじむようにコンテナ24の原料貯留部分から引き上げられ、輸送される。
【0076】
回転体22上のプラズマ原料23は、回転体22の回転とともにエネルギービームEBが入射する入射領域25に輸送される。すなわち、回転体22の回転方向は、回転体22上のプラズマ原料23が入射領域25に輸送される方向である。そして、入射領域25において、回転体22上のプラズマ原料23にエネルギービームEBが照射され、プラズマPが発生される。
【0077】
コンテナ24に収容されるプラズマ原料23が所定量以上の状態である限り、回転体22を連続的に回転させることにより、常にエネルギービームEBの入射領域25にプラズマ原料23を供給することが可能となる。
すなわち、回転体22の回転数やエネルギービームEBの照射間隔を適切に設定することにより、エネルギービームEBの照射によりプラズマPが生成されてプラズマ原料23が消費されたあと、次のエネルギービームEBが照射される前にエネルギービームEBの入射領域25にプラズマ原料23を供給することが可能となる。
なお、エネルギービームEBの入射領域25を、エネルギービームEBの照射位置や入射位置と呼ぶことも可能である。
【0078】
プラズマ原料循環装置41は、放射線Rの発生動作によりプラズマ原料23が消費された場合に、適宜コンテナ24にプラズマ原料23を補充する。また、プラズマ原料循環装置41は、プラズマ原料23の温度調整機構(冷却機構)としても機能する。
【0079】
図2に示すように、プラズマ原料循環装置41は、原料流入管路44と、原料排出管路45と、原料貯留槽46と、原料駆動部(ポンプ)47と、温度調整機構48とを含む。
原料貯留槽46には、プラズマ原料23が貯留される。
原料流入管路44及び原料排出管路45は、原料貯留槽46とコンテナ24とを連通するように、原料貯留槽46とコンテナ24との間に設置される。
原料駆動部47は、原料流入管路44に設置される。原料駆動部47が駆動することにより、原料貯留槽46に貯留されたプラズマ原料23が原料流入管路44に流出し、原料貯留槽46、原料流入管路44、コンテナ24、及び原料排出管路45の循環系にて、プラズマ原料23を循環させることが可能となる。
原料駆動部47としては、例えば電磁力により液体金属(プラズマ原料23)を輸送することが可能な電磁ポンプが用いられる。もちろん、他の種類のポンプが用いられてもよい。
【0080】
本実施形態では、原料貯留槽46及び原料駆動部47は、真空チャンバ3の外部であって、さらに筐体2の外部に配置される。
プラズマ原料循環装置41からコンテナ24へと延びる原料流入管路44及び原料排出管路45は、筐体2の貫通孔11を通り、シール部材49を介して真空チャンバ3内に導入され、コンテナ24に接続される。
シール部材49は、真空チャンバ3内の減圧雰囲気を維持しつつ、原料流入管路44及び原料排出管路45を真空チャンバ3の外側から内側へ貫通するのを許容する。
【0081】
回転体22の第1の面22aに塗布されたプラズマ原料23のうち、エネルギービームEBが照射された部分は消費される。そのため、放射線R(X線又はEUV光)の発生動作を長期間安定して行うためには、大容量のプラズマ原料23をコンテナ24に貯留する必要がある。
一方で、光源装置1の真空チャンバ3の大きさとの兼ね合いから、真空チャンバ3の内部に収容可能なコンテナ24の大きさには制約があり、大容量のプラズマ原料23をコンテナ24に貯留することが困難な場合も多い。
【0082】
そこで、大容量のプラズマ原料23を貯留可能な原料貯留槽46を真空チャンバ3の外部に設置し、原料流入管路44を介してコンテナ24の原料貯留部分にプラズマ原料23を補充可能に構成する。
これにより、コンテナ24の原料貯留部分のプラズマ原料23の量は長期間一定に保たれ、結果として放射線Rの発生動作を長期間安定して行うことが可能となる。
すなわち、プラズマ原料循環装置41は、コンテナ24の原料貯留部分のプラズマ原料23の量が一定となるように、コンテナ24の原料貯留部分と原料貯留槽46との間でプラズマ原料23を循環する。
【0083】
また、回転体22の第1の面22aに塗布されたプラズマ原料23にエネルギービームEBが照射されると、当該プラズマ原料23(ターゲット)より放射線Rが発生すると同時に、回転体22自体が加熱される。この加熱された回転体22は、プラズマ原料23が貯留されているコンテナ24の原料貯留部分を通過する度に、コンテナ24内のプラズマ原料23との間で熱交換を行う。
そのため、そのままではコンテナ24内のプラズマ原料23の温度は徐々に変化してしまう。プラズマ原料23の温度変化により回転体22を含む原料供給ユニット60の各部に熱変形が発生すると、プラズマPの発光点の位置がずれてしまい、放射線Rの出力に影響を及ぼすおそれがある。
【0084】
本実施形態に係るプラズマ原料循環装置41は、比較的大型の原料貯留槽46を真空チャンバ3の外部(筐体2の外部)に備える。そのため、コンテナ24の原料貯留部分において温度変化したプラズマ原料23が原料排出管路45を介して原料貯留槽46に流入したとしても、原料貯留槽46内のプラズマ原料23の温度はさほど変化せず、ほぼ一定に保たれる。
そして、ほぼ一定に温度が保たれたプラズマ原料23が、原料流入管路44を介してコンテナ24に流入される。このように、プラズマ原料循環装置41によりプラズマ原料23を循環させることで、コンテナ24内のプラズマ原料23の温度はほぼ一定に保たれる。従って、温度変化による回転体22等の熱変形を抑制することが可能となり、プラズマPの発光点の位置を安定化することが可能となる。この結果、放射線Rの出力を安定させることが可能となる。
【0085】
さらに、原料貯留槽46内のプラズマ原料23の温度が、原料貯留槽46の内部に設けられた温度調整機構48によって調整されてもよい。原料貯留槽46は、真空チャンバ3の外部(筐体2の外部)に設置されているため、真空チャンバ3の大きさに左右されない大容量の温度調整機構48を用いることができる。これにより、プラズマ原料23の温度を短時間で確実に所定の温度に調整することが可能となる。
【0086】
このように、温度調整機構48を有するプラズマ原料循環装置41を用いることにより、プラズマ原料23の温度を一定に保ったまま、コンテナ24の原料貯留部分にプラズマ原料23を供給することが可能となる。
例えば、液体状態における温度が常温よりも低い液体金属が、プラズマ原料23として用いられるとする。この場合でも、常温よりも低い温度に保ったまま、液相のプラズマ原料23を、コンテナ24に供給することが可能である。
また、液体状態における温度が常温よりも高い液体金属が、プラズマ原料23として用いられるとする。この場合でも、常温より高い温度に保ったまま、液相のプラズマ原料23を、コンテナ24に供給することが可能である。
【0087】
なお、コンテナ24にプラズマ原料23を供給するための構成や方法は限定されず、任意の構成や方法が採用されてよい。例えば、液体のプラズマ原料23が、循環されることなく、コンテナ24に供給されてもよい。
その他、固体(固相)のプラズマ原料が用いられてもよい。例えば、図2に示すプラズマ原料循環装置41の温度調整機構48に固体のプラズマ原料が供給されてもよい。あるいは、コンテナ24に、固体のプラズマ原料が直接的に投入されてもよい。
【0088】
また図1に示すように、本実施形態では、チャンバ本体14の前面側にて、真空チャンバ3と空間的に接続される領域に、放射線診断部(監視装置)29が構成される。
放射線診断部29は、放射線Rの出射軸EAとは異なる方向に放射される放射線Rが入射する位置に構成される。
放射線診断部29は、放射線Rの物理的状態(例えば輝度、強度分布)を診断する部分であり、例えば、放射線Rの有無を検出する検出器や、放射線の出力を測定する測定器により構成される。
【0089】
[放射線Rの発生プロセス]
[原料供給]
回転体22の下方側の一部がコンテナ24に貯留されたプラズマ原料23に浸漬した状態で、当該回転体22が回転軸Oを中心に回転する。
プラズマ原料23は、回転体22の第1の面22aとの濡れ性により、回転体22の第1の面22aになじむようにコンテナ24の原料貯留部分から引き上げられ、エネルギービームEBが入射する入射領域25に供給される。
【0090】
[プラズマ生成]
ビーム源13から入射軸IAに沿って、入射領域25に向かってエネルギービームEBが出射される。エネルギービームEBは、入射孔9、入射窓19、回転式窓27、入射側アパーチャ26を通って、プラズマ原料23が供給された入射領域25に入射する。
入射領域25へエネルギービームEBが入射すると、入射領域25に存在するプラズマ原料23がエネルギービームEBにより気化される。さらに気化されたプラズマ原料23は、引き続きエネルギービームEBにより加熱励起され、高温プラズマPが生成される。プラズマ生成領域21に生成される高温プラズマPから、所定の波長の放射線Rが放出される。
【0091】
[放射線Rの取り出し]
高温プラズマPから放出される放射線Rは、様々な方向に向かって進行する。このうち、出射チャンバ5に入射した放射線Rは、出射チャンバ5を通過してマスク検査装置等の利用装置(アプリケーションチャンバ30)に導光される。すなわち、高温プラズマPから放出される放射線Rのうち、出射チャンバ5に入射した成分が、出射軸EAに沿って外部へと取り出される。
【0092】
[飛散するプラズマ原料23、及びデブリの対策]
プラズマ原料23の供給工程において、回転体22が回転すると遠心力により回転体22の第1の面22aに付着したプラズマ原料23が飛散する場合があり得る。
また、プラズマPの生成工程において、回転体22に塗布されているプラズマ原料23にエネルギービームEBが照射されるとプラズマ原料23の一部が気化する。その際に、プラズマ原料23の一部(プラズマ原料23の粒子)がデブリとして放出される。一般にプラズマ原料23がエネルギービームEBによって気化する際に放出されるプラズマ原料23からなるデブリは、エネルギービームEBが入射する部分の法線方向に一番多く放出される。
また、例えばデブリとして、イオン、中性粒子、電子等が、放射線Rととともに放出される。また、プラズマPの発生にともない回転体22がスパッタリングされ、回転体22の材料粒子が、デブリとして放出される場合もあり得る。
【0093】
本実施形態に係る光源装置1では、飛散するプラズマ原料23及びエネルギービームEBの放射により発生するデブリの影響を抑制可能な技術が採用されている。以下、その点について説明する。
【0094】
飛散したプラズマ原料23やデブリが、入射側アパーチャ26から入射チャンバ4内に進入した場合、入射窓19にプラズマ原料23やデブリが付着してしまうことがあり得る。この場合、エネルギービームEBが例えばレーザビームである場合等において、入射窓19に付着したプラズマ原料23やデブリにより、レーザビームの強度が減少してしまう。この結果、プラズマPから取り出される放射線Rの強度が減少してしまうおそれがある。
【0095】
本実施形態に係る光源装置1では、真空チャンバ3内が、入射チャンバ4よりも減圧された雰囲気に維持される。従って、ガス注入路28から入射チャンバ4内に供給されるガスは、入射側アパーチャ26から、真空チャンバ3に向かって流れる。これにより、飛散したプラズマ原料23やデブリが、入射側アパーチャ26から入射チャンバ4内に進入することを抑制することが可能である。
【0096】
また、入射チャンバ4を構成する内側突出部17がコーン形状であり、その先端部には入射側アパーチャ26が設けられている。従って、ガス注入路28から入射チャンバ4内にガスが供給されることにより、入射チャンバ4の内部圧力を、真空チャンバ3の内部圧力よりも十分に高い圧力に維持することが可能となる。これにより、入射側アパーチャ26から入射チャンバ4内へのプラズマ原料23やデブリの進入は、より困難となる。
さらに、入射側アパーチャ26を形成すること自体が、入射チャンバ4へのプラズマ原料23及びデブリの進入を抑制することに有利である。
【0097】
また入射チャンバ4内には、回転式窓27が配置される。これにより、プラズマ原料23やデブリが入射窓19に付着することを、十分に抑制することが可能である。なお、入射チャンバ4内へのプラズマ原料23及びデブリの進入が抑制されているので、回転式窓27の寿命を長くすることが可能となり、回転式窓27の交換頻度を低減させることが可能である。
【0098】
また真空チャンバ3内は、出射チャンバ5よりも減圧された雰囲気に維持される。従って、ガス注入路32から出射チャンバ5内に供給されるガスは、出射側アパーチャ34から、真空チャンバ3に向かって流れる。これにより、飛散したプラズマ原料23やデブリが、出射側アパーチャ34から出射チャンバ5内に進入することを抑制することが可能である。
【0099】
また、出射チャンバ5を構成する外側突出部15及び内側突出部16がコーン形状であり、その内部側の先端部には出射側アパーチャ34が設けられている。従って、ガス注入路32から出射チャンバ5内にガスが供給されることにより、出射チャンバ5の内部圧力を、真空チャンバ3の内部圧力よりも十分に高い圧力に維持することが可能となる。これにより、出射側アパーチャ34から出射チャンバ5内へのプラズマ原料23やデブリの進入は、より困難となる。
【0100】
さらに、出射側アパーチャ34を形成すること自体が、出射チャンバ5へのプラズマ原料23及びデブリの進入を抑制することに有利である。
また内側突出部16を形成することで、出射側アパーチャ34を、生成されるプラズマPに近い位置に配置することが可能となる。これにより、必要な放射線Rを取り込むための出射側アパーチャ34の開口面積を小さくすることが可能となる。この結果、出射チャンバ5へのプラズマ原料23及びデブリの進入を抑制することに有利となる。
【0101】
例えば、放射線RがEUV光であって、プラズマ原料がSnである場合、飛散するプラズマ原料23やデブリの大部分はSnとなる。このSnは融点が約232℃であるので、内側突出部16の外表面や内表面に到達すると固化して堆積する場合があり得る。堆積が進むと、出射側アパーチャ34が堆積したSnにより閉塞してしまう場合もある。
このような不具合を防止するために、図示を省略した加熱手段や温調手段によって内側突出部16を加熱してプラズマ原料23の融点以上に保持するようにしてもよい。これにより、出射側アパーチャ34の閉塞を防止することが可能となる。
【0102】
また図1に示すように、外部電圧源51を設置し、内側突出部16に対して正電圧又は負電圧を印加可能であってもよい。内側突出部16に電圧を印加することで、発生する電場によりイオン性のデブリを内側突出部16から反発させたり、デブリの進行方向を出射チャンバ5内へ進入する方向から逸らすことが可能となる。
この場合、内側突出部16は、セラミックス材料等からなる不図示の絶縁体によって、真空チャンバ3等の他の部品から電気的に絶縁されている。また、外部電圧源51の動作は、制御部7により制御される。
【0103】
出射チャンバ5の前方側の端部には、フィルタ膜35が設けられる。フィルタ膜35により、飛散するプラズマ原料23やデブリが、アプリケーションチャンバ30内に進入することをブロックすることが可能である。
なお、フィルタ膜35の表面(出射チャンバ5側の表面)に、プラズマ原料23やデブリが堆積すると、徐々に放射線Rの透過率が減少してしまう。
フィルタ膜35の構成として、例えば、フィルタ膜35にある程度デブリ等が堆積する場合、デブリ等が堆積していない領域が出射チャンバ5側に露出するように、回転等の移動が可能な構成が採用されてもよい。また交換可能な構成が採用されてもよい。このような構成を採用することで、飛散するプラズマ原料23やデブリの影響を抑制することが可能となる。
【0104】
また、出射チャンバ5内には、遮蔽部材36が配置される。遮蔽部材36により、出射軸EAやその近傍に沿って進行するデブリ等が、フィルタ膜35に到達することを防止することが可能である。
特にデブリの一部には比較的高速で移動するものもあり、直接フィルタ膜35に衝突すると、フィルタ膜35にダメージを与える可能性もある。本実施形態では、遮蔽部材36により、フィルタ膜35へのデブリ等の衝突を防止することが可能であり、フィルタ膜35の損傷を防止することが可能である。この結果、フィルタ膜35の長寿命化を図ることが可能となる。
【0105】
また図1に示すように、本実施形態では、入射チャンバ4の後方側に、左右方向に延在するようにガスノズル53が設置される。ガスノズル53は、チャンバ本体14の右側面に、シール部材等を介して設置される。
ガスノズル53は、図示を省略したガス供給装置接続され、チャンバ本体14内にガスを供給する。
図1に示す例では、ガスノズル53から、入射軸IAと出射軸EAとの間の軸間領域の右側から左右方向に沿って左側に向かってガスが吹き付けられる。これにより、入射領域25から放出されるデブリを、入射軸IA及び出射軸EAから遠ざかる方向に移動させることが可能となる。
この結果、入射チャンバ4及び出射チャンバ5へのデブリの進入をさらに抑制することが可能となる。なお、ガスの流速を増加させることで、入射チャンバ4及び出射チャンバ5へのデブリの進入を抑制する効果を高めることが可能となる。
【0106】
[原料供給ユニット60の具体的な構成例]
本発明者は、光源装置1の動作時に発生するデブリの影響、特にプラズマ原料23の供給工程において回転体22からデブリとして飛散するプラズマ原料23の飛沫の影響について検討を重ねた。その結果、原料供給ユニット60の具体的な構成に関して、新たな構成を考案した。
以下、発明者により新たに考案された原料供給ユニット60の具体的な構成について、複数のバリエーション例を説明する。もちろん、本発明の技術範囲が、以下に説明するバリエーション例に限定されるという意味ではない。
【0107】
図3及び図4は、原料供給ユニットの一構成例を示す模式図である。
以下、原料供給ユニットを説明する上で、互いに直交するXYZの各軸を規定する。具体的には、上下方向をZ方向とし、回転体の回転軸Oの軸方向をY方向とする。そして、Z方向及びY方向の各々に直交する方向をX方向とする。
XYZの各軸に関して、Z軸の正側を上方側とし、負側を下方側とする。また、Y方向を前後方向として、Y軸の正側を前方側、負側を後方側とする。X方向を左右方向として、X軸の正側を左側、負側を右側とする。
従って、図3図14にてX軸で規定する「左右方向」及びY軸にて規定する「前後方向」は、図1にて規定した「前後方向」及び「左右方向」と必ずしも一致しない点に注意されたい。
もちろん、本技術の適用について、原料供給ユニット60が配置される向き等が限定される訳ではない。
【0108】
図3及び図4に示す原料供給ユニット60Aは、回転体22と、コンテナ24と、軸部39と、カバー部材37とを有する。
図3は、原料供給ユニット60Aを、X方向に沿って右側(X軸の負側)から見た図であり、コンテナ24、及びカバー部材37のみが、回転軸Oの位置でYZ平面により切断された断面図で図示されている。
図4は、原料供給ユニット60Aを前方側(Y軸の正側)から見た図である。
【0109】
コンテナ24には、プラズマ原料23が収容される。コンテナ24に収容されるプラズマ原料23は、図2に示すプラズマ原料循環装置41が動作することで連続的に供給される。
【0110】
回転体22は、エネルギービームEBの光路上に配置される。また回転体22は、コンテナ24に収容されたプラズマ原料23に一部が浸漬されるように配置される。本実施形態では、回転体22の下方側の部分が、コンテナ24に収容されたプラズマ原料23に浸漬される。回転体22が回転することで、コンテナ24に収容されたプラズマ原料23が引き上げられ、エネルギービームEBの入射領域25に供給される。
【0111】
コンテナ24に収容されるプラズマ原料23が所定量以上の状態である限り、回転体22を連続的に回転させることにより、常にエネルギービームEBの入射領域25にプラズマ原料23を供給することが可能となる。すなわち、回転体22の回転数やエネルギービームEBの照射間隔を適切に設定することにより、エネルギービームEBの照射によりプラズマPが生成されてプラズマ原料23が消費されたあと、次のエネルギービームEBが照射される前にエネルギービームEBの入射領域25にプラズマ原料23を供給することが可能となる。
【0112】
回転体22は、回転軸Oを中心として、回転対称(円対称)となるように構成される。また回転体22は、エネルギービームEBが入射する側の第1の面22aと、第1の面22aとは反対側の第2の面22bとを有する。
【0113】
本実施形態では、回転体22の前方側からエネルギービームEBが入射される。従って、回転体22の前方側の面が、第1の面22aとなる。図4に示すように、第1の面22aを前後方向(Y方向)に沿って正面から見た場合には、第1の面22aの中心から上方側に向かって、第1の面22aの周縁部62の近傍となる位置に、エネルギービームEBの入射領域25が設定されている。なお、第1の面22aの周縁部62は、回転体22を前後方向に沿って正面から見た場合の、回転体22の周縁部62ともいえる。
入射領域25が設定される位置は限定されず、任意に設定可能である。
【0114】
図3及び4に示す例では、回転体22は、回転軸Oを中心とする球欠形状として構成されている。すなわち、回転軸Oの方向を直径方向とする所定の球形状を、回転軸Oの軸方向に直交する仮想平面で切断することで得られる形状を有する。
【0115】
図3に示すように、エネルギービームEBが入射する側の第1の面22aは、回転軸Oを中心として正面側に突出する曲面形状となる。具体的には、第1の面22aは、回転軸Oを中心として正面側に突出する球冠形状となる。第1の面22aから見て正面側とは、前方側(Y軸の正側)が該当する。
第2の面22bは、回転軸Oに直交する平面形状となる。第2の面22bの中心に、軸部39が接続される。
【0116】
ここで、回転体22の回転に応じて、プラズマ原料23に浸漬される浸漬部分63に着目する。図3及び4では、浸漬部分63がグレー色で図示されている。浸漬部分63に対して、回転軸Oの軸方向(Y方向)において、エネルギービームEBが入射する側の部分を、入射面部63aとする。また浸漬部分63の入射面部63aとは反対側となる部分を裏面部63bとする。
【0117】
図3及び図4に示す例では、正面側に突出する曲面形状を有する第1の面22aのうち回転体22の回転によりプラズマ原料23に浸漬される部分が、入射面部63aとなる。また、平面形状を有する第2の面22bのうち回転体22の回転によりプラズマ原料23に浸漬される部分が、裏面部63bとなる。
【0118】
図3及び図4に示すように、入射面部63aは、回転軸Oに対して直交する方向(XZ平面方向)の幅が回転軸Oの軸方向に沿って変化するように正面側に突出する突出面64として構成される。図4に示すように本実施形態では、突出面64は、回転軸Oの軸方向(Y方向)に沿って正面から見た場合に、周縁部62から回転軸Oに向かって連続的に延在するように構成される。また突出面64は、回転軸Oを中心に円対称となるように構成される。
なお、正面側に突出する突出面64として、回転軸Oを中心に円対称となる形状に限定される訳ではない。
【0119】
回転軸Oに対して直交する方向(XZ平面方向)の幅は、回転軸Oの軸方向に直交する仮想平面を配置した場合の、回転体の表面と仮想平面とが交わる部分までの幅により規定される。例えば、仮想平面にて回転体を切断した場合の断面の周縁部までの幅により規定することが可能である。
図3及び図4に示す例では、突出面64は、回転軸Oに対して直交する方向(XZ平面方向)の幅が回転軸Oの軸方向に沿って正面側に進むにつれて連続的に減少するように構成される。なお、回転軸Oに対して直交する方向(XZ平面方向)の幅の変化の態様は限定されない。
【0120】
裏面部63bは、回転軸Oに対して直交する平面形状となっている。従って、裏面部63bは、突出面ではない非突出面として構成される。図3に示すように、入射面部63aと裏面部63bとの間(接続部分)には、エッジ部分65が構成される。エッジ部分65は、第1の面22aと第2の面22bとの間の接続部分とも言える。また本実施形態では、エッジ部分65は、回転体22を前後方向(Y方向)に沿って正面から見た場合の周縁部62と一致する。
【0121】
本実施形態において、第1の面22aは、本発明に係る、回転体の回転軸の軸方向において第1の側となる第1の面の一実施形態となる。また第2の面22bは、第1の面の反対側の第2の面の一実施形態となる。すなわち、本実施形態では、エネルギービームEBが入射する側が「第1の側」の一実施形態として設定される。これに限定されず、回転軸Oの軸方向において、前方側及び後方側のいずれかの側を「第1の側」として任意に選択して、本技術を適用することも可能である。
【0122】
また、入射面部63aは、本技術に係る、回転により液体原料に浸漬される浸漬部分の回転軸の軸方向において第1の側となる第1の浸漬面部の一実施形態となる。また裏面部63bは、第1の浸漬面部とは反対側となる第2の浸漬面部の一実施形態となる。例えば、図3及び図4に示す入射面部63aを「第2の浸漬面部」とし、裏面部63bを「第1の浸漬面部」として、本技術を適用することも可能である。
【0123】
カバー部材37は、回転体22の回転動作に応じて、回転体22から飛散するプラズマ原料23(デブリ)が、真空チャンバ3内に拡散することを防止するために配置される。図4に示すように、カバー部材37の全体のおおよその形状は、U字形状を逆さまにしたような形状を有し、回転体22の周縁部62(エッジ部分65)を覆うように配置される。
【0124】
図3に示すように、回転体22が回転すると、浸漬部分63(入射面部63a及び裏面部63b)に塗布されるプラズマ原料23は、遠心力により周縁部62に向かって移動する。そして、入射面部63aと裏面部63bとの間のエッジ部分65からデブリ66として飛散する。従って、カバー部材37は、エッジ部分65を覆うように配置される。
【0125】
本実施形態では、カバー部材37は、回転体22の周縁部62に対向する側面カバー部67と、側面カバー部67に接続され裏面部63bに対向する対向カバー部68とを有する。
図4に示すように、側面カバー部67は、回転体22を前後方向に沿って正面から見た場合に、所定の幅を有する細長い形状の板部材を、回転体22の周縁部62の形状に沿って曲げたような形状を有する。側面カバー部67の内周面は、回転体22の周縁部62を包囲するように配置され、回転体包囲面と呼ぶことも可能である。なお側面カバー部67の前方側は、大きく開口している。
【0126】
対向カバー部68は、側面カバー部67の後方側に接続される。対向カバー部68は、所定の幅を有するU字形状の板部材からなり、側面カバー部67に接続されている。図3に示すように、側面カバー部67と対向カバー部68との接続部分により、回転体22のエッジ部分65から飛散するデブリ66(プラズマ原料23)を十分に捕捉することが可能である。
【0127】
すなわち、回転体22からデブリ66として飛散するプラズマ原料23のほとんどはカバー部材37の側面カバー部67及び対向カバー部68に付着し、原料供給ユニット60Aの外部にプラズマ原料23が飛散することを防止することが可能となる。またカバー部材37の温度を、例えば不図示の温調手段によりプラズマ原料23の融点以上に保持することにより、回転体22から離脱してカバー部材37で捕獲されるプラズマ原料23の飛沫をコンテナ24が収容するプラズマ原料23に戻すことが可能となる。
【0128】
側面カバー部67の幅は、回転体22のエッジ部分65から飛散するデブリ66を十分に捕捉することが可能な範囲で、任意に設定可能である。本実施形態では、遠心力により正面側に突出する曲面形状からなる第1の面22aに沿って周縁部62側に移動するデブリ66は、エッジ部分65から後方側の上方に向かって飛散する。
従って、図3に示すように、側面カバー部67の前方側の先端部67aを、入射面部63aのエネルギービームの入射領域25よりも後方側に配置することが可能である。なお、側面カバー部67の前方側の先端部67aは、カバー部材37の前方側の先端部に相当する。
【0129】
対向カバー部68の幅も、回転体22のエッジ部分65から飛散するデブリ66を十分に捕捉することが可能な範囲で、任意に設定可能である。例えば、裏面部63bに塗布されるプラズマ原料23の幅を基準として対向カバー部68の幅が設定されてもよい。本実施形態では、対向カバー部68の内部側(U字形状の内部側)の開口により、回転体22に接続される軸部39を配置するスペースが十分に確保されている。
【0130】
図3及び図4に示すように、カバー部材37の下方側の部分(逆U字の2本の脚の部分)は、プラズマ原料23に浸漬されており、回転体22の下端部よりも下方側に配置される。これにより、回転体22が回転する際に巻き上げられるプラズマ原料23も十分に捕捉することが可能となる。
【0131】
本実施形態において、カバー部材37は、カバー部の一実施形態に相当する。
カバー部材37は、例えばタングステン(W)、モリブデン(Mo)、タンタル(Ta)等の高融点金属を用いて構成される。あるいは、比較的高融点であるステンレス等から構成される。
【0132】
図5は、比較例として挙げる原料供給ユニット100を示す模式図である。
比較例として挙げる原料供給ユニット100では、円盤形状の回転体101が用いられる。回転体101は、互いに対向する円形状の第1の面101a及び第2の面101bと、側面101cとを有する。回転体101の前方側の第1の面101aと側面101cとの間に、前方側エッジ部分102aが構成される。回転体101の後方側の第2の面101bと側面101cとの間に、後方側エッジ部分102bが構成される。
【0133】
図5に示すように、原料供給ユニット100は、カバー部材104を有する。カバー部材104全体のおおよその形状は、図3及び図4に示す例とほぼ同様であり、U字形状を逆さまにしたような形状を有し、回転体101の側面101cに沿うように配置される。
カバー部材104は、側面101cに対向する側面カバー部105と、第2の面101bの周縁部分と対向する対向カバー部106とを有する。
【0134】
発明者は、回転体の形状と、回転動作時に発生する飛沫の態様について実験を行い検討した。具体的には、コンテナに水を収容し、図3及び図4に示す球欠形状の回転体22と、図5に示す円盤形状の回転体101とをそれぞれ回転させた。
回転体22及び101の直径(回転体を前後方向から見た場合の直径)は100mmとして、アルミニウムにより回転体22及び101を模擬的に作成した。そして、回転数600rpm~1200rpmの範囲で、回転体22及び101を回転させた。
その結果、回転動作に応じた水の飛沫量(デブリ66の量)に差が出ることを見出した。具体的には、球欠形状の回転体22の方が、円盤形状の回転体101と比べて、飛沫量が大きく低減することが分かった。
【0135】
図5に例示するような円盤形状の回転体101では、第1の面101a及び第2の面101bに塗布された水が遠心力により側面101cに向かって移動する。そして、多くの飛沫(デブリ66)が、側面101c、前方側エッジ部分102a、及び後方側エッジ部分102bから飛散した。すなわち、円盤形状の回転体101では、前方側から後方側にかけて多くの量のデブリ66が発生した。
【0136】
デブリ66が前方側に飛散するので、図5に示すように、側面カバー部105の前方側の先端部105aは、前方側エッジ部分102aよりも前方側に配置する必要がある。すなわち、側面カバー部105は、回転体101よりも、前方側に突出するように(庇形状となるように)構成される。この結果、側面カバー部105の前方側の先端部105aは、第1の面101aに入射するエネルギービームEBの入射領域25よりも前方側に突出することになる。
【0137】
従って、プラズマPから放出される放射線Rの一部は、前方に突出するカバー部材104の側面カバー部105により遮光される。すなわち、プラズマPから放射される放射線Rの利用装置(アプリケーションチャンバ30)への導光方向や放射線診断部29への導光方向(観測対象となる放射線の観測方向)はある程度制限される。
【0138】
また前方側に突出するカバー部材104の側面カバー部105により、エネルギービームEBの照射方向(入射方向)についても、設計の自由度が制限される。
【0139】
また、回転体101の側面101cや前後のエッジ部分102a及び102bから飛散したプラズマ原料23(デブリ66)の飛沫の一部は、回転体101のエネルギービームEが入射する第1の面101a側に飛散する場合があり、プラズマPの発光点の近傍を通過する可能性もある。すなわち、エネルギービームEBの光路上に、デブリ66が飛んでくる場合もあり得る。
その場合、エネルギービームEBの一部が回転体101に付着したプラズマ原料23に照射されずに飛沫(デブリ66)に照射されたり、プラズマPから放出される放射線Rの一部が当該飛沫(デブリ66)によって遮られるといった不具合が発生する。
【0140】
図3及び図4に示す球欠形状の回転体22では、飛沫量(デブリ66の量)を低減させることが可能であった。これは、回転によりプラズマ原料23に浸漬される浸漬部分63の入射面部63aが、回転軸Oに向かって正面側に突出する突出面64として構成されているからと考えられる。なお、回転数(rpm)を大きくすると飛沫量は多くなるが、円盤状の回転体101と比べると飛沫量は抑えられている。
【0141】
また、図3及び図4に示す球欠形状の回転体22では、デブリ66の発生方向(プラズマ原料23が飛散する方向)を制御することも可能である。図3及び図4に示す例では、浸漬部分63に塗布されたプラズマ原料23を、エッジ部分65から後方側の上方に向かって飛散させることが可能である。
この結果、図3に示すように、側面カバー部67の前方側の先端部67aを、入射面部63aのエネルギービームEBの入射領域25よりも後方側に配置することが可能となる。逆に言えば、エネルギービームEBが照射される領域である、プラズマ原料23が塗布されている領域を、カバー部材37よりも前方側に突出するように配置することが可能である。
【0142】
従って、エネルギービームEBの入射領域25(プラズマPの発光点)をカバー部材37よりも前方側に設定することが可能となる。これにより、回転体22へのエネルギービームEBの照射、及びプラズマPからの放射線Rの取り出しに関して、設計自由度を向上させることが可能となる。
【0143】
例えば、プラズマPから放出される放射線Rの捕集立体角(放射線Rを取り出すことが可能な立体角)を大きくとることが可能となる。また、プラズマPから放出される放射線Rの利用装置(アプリケーションチャンバ30)への導光方向や放射線診断部29への導光方向(観測対象となる放射線の観測方向)の自由度を向上させることが可能となる。
【0144】
また、エネルギービームEBの照射方向の自由度を向上させることが可能となる。上記したように、プラズマ原料23がエネルギービームEBによって気化する際に放出されるプラズマ原料23からなるデブリは、エネルギービームEBが入射する部分の法線方向(図中のN)に一番多く放出される。
この法線方向Nと、エネルギービームEBの照射方向とを相違させることにより、図1に示す入射チャンバ4へのデブリの進入を抑制することが可能となる。また法線方向Nと、放射線Rの取り出し方向とを相違させることで、図1に示す出射チャンバ5へのデブリの進入を抑制することが可能となる。
【0145】
また、入射面部63a上のエネルギービームEBの入射領域25と、回転体22からプラズマ原料23(デブリ66)が飛沫するエッジ部分65とを離すことが可能となるので、飛散するデブリ66がプラズマPの発光点の近傍に到達することを十分に抑制することが可能となる。すなわち、エネルギービームEBの光路上に、デブリ66が飛んでくることを十分に抑制することが可能となる。
この結果、エネルギービームEBの一部が回転体22に付着したプラズマ原料23に照射されずに飛沫(デブリ66)に照射されたり、プラズマPから放出される放射線Rの一部が当該飛沫(デブリ66)によって遮られるといったことを防止することが可能となる。
【0146】
図6は、原料供給ユニット60の他の構成例を示す模式図である。
本実施形態に係る原料供給ユニット60Bでは、回転体22の非突出面となる裏面部63bと、カバー部材37の対向カバー部68との間隔が十分に近づけられている。これにより、遠心力によりエッジ部分65から離脱するデブリ66(プラズマ原料23)が、完全にエッジ部分65から飛散する前に、対向カバー部68の内面に接触する。
この結果、デブリ66(プラズマ原料23)は飛沫となることなく、対向カバー部68の内面に沿ってコンテナ24に収容されるプラズマ原料23に帰還する。すなわち、エッジ部分65から離脱するデブリ66が下方側に飛び散ることなく、対向カバー部68の内面の沿って流れいく。
【0147】
本発明者は、裏面部63b(エッジ部分65)と対向カバー部68との距離を変えて、回転体22を回転させる実験を行った。裏面部63bと対向カバー部68との距離が大きい場合には、回転体22のエッジ部分65からデブリ66が飛散して、カバー部材37の内面に水滴として付着した。また、コンテナ24内に飛沫が飛び散り、水面(液面)が不安定な状態になった。
【0148】
裏面部63bと対向カバー部68との距離を小さくすることで、回転体22のエッジ部分65から離脱するデブリ66は、対向カバー部68の内面に沿った水流となり、水面(液面)に到達した。デブリ66が飛沫となって飛び散らないので、水面(液面)の状態は安定した。光源装置1の動作時に、コンテナ24内のプラズマ原料23の液面が安定していると、エネルギービームEBの入射領域25へのプラズマ原料23の供給も安定して均一に実行することが可能となる。
【0149】
典型的には、裏面部63b(エッジ部分65)と対向カバー部68との間隔を、1mm以下に設定することで、デブリ66の飛散を十分に防止することが可能であった。すなわち、非突出面と対向カバー部68の距離、言い換えれば、突出面64と非突出面との間のエッジ部分と、対向カバー部68との距離を、1mm以下に設定することで、デブリ66の飛散を十分に防止することが可能である。
【0150】
図7は、原料供給ユニット60の他の構成例を示す模式図である。
図7に示す原料供給ユニット60Cでは、回転体22が、回転軸Oを中心とする円錐形状として構成されている。そして、回転体22の第1の面22aが、回転軸Oを中心として正面側に突出する円錐面形状となる。この場合でも、回転体22が回転する場合にプラズマ原料23に浸漬される浸漬部分63の入射面部63aが、回転軸Oに向かって正面側に突出する突出面64として構成される。
【0151】
この結果、図3及び図4に示す球欠形状の回転体22と同様に、上記した効果を発揮することが可能である。また、裏面部63b(エッジ部分65)と対向カバー部68との間隔を、十分に近づけることで(典型的には1mm以下)、デブリ66の飛散を十分に防止することが可能であった。このことは、円錐形状となる回転体22をアルミニウムより模擬的に作成し、プラズマ原料23の代わりに水を用いた実験により、実証されている。
なお、円錐形状の回転体22は、加工が容易であるという利点を有する。
【0152】
図8は、原料供給ユニット60の他の構成例を示す模式図である。
図8では、回転体22は、回転軸Oの位置でYZ平面により切断された断面図で図示されている。
【0153】
図8に示す原料供給ユニット60Dでは、回転体22が、回転軸Oを中心とする中空の球欠形状として構成されている。すなわち、回転軸Oの方向を直径方向とする中空の球形状(球殻形状)を、回転軸Oの軸方向に直交する仮想平面で切断することで得られる形状を有する。図8に示す回転体22の形状を、ボウル形状(容器形状)と呼ぶことも可能である。
【0154】
図8に示すように、回転体22の第1の面22aは、回転軸Oを中心として正面側に突出する球冠形状となる。第2の面22bは、回転軸Oを中心として窪む曲面形状となる。具体的には、窪んでいる球面により、第2の面22bが構成される。窪んでいる曲面形状からなる第2の面22bの中心に軸部39が接続される。
【0155】
回転体22が回転する場合にプラズマ原料23に浸漬される浸漬部分63の入射面部63aは、回転軸Oに向かって正面側に突出する突出面64として構成される。浸漬部分63の裏面部63bは、非突出面として構成される。
【0156】
図8に示す回転体22でも、図3及び図4に示す球欠形状の回転体22や図7に示す円錐形状の回転体22と同様に、上記した効果を発揮することが可能である。また、裏面部63b(エッジ部分65)と対向カバー部68との間隔を、十分に近づけることで(典型的には1mm以下)、デブリ66の飛散を十分に防止することが可能であった。このことは、中空の球欠形状となる回転体22をアルミニウムより模擬的に作成し、プラズマ原料23の代わりに水を用いた実験により、実証されている。
なお、中空の球欠形状の回転体22は、軽量化、及び材料コストの低減に有利となる。
【0157】
図9は、原料供給ユニット60の他の構成例を示す模式図である。
図9に示す原料供給ユニット60Eは、図3及び図4に示す球欠形状の回転体22を前後方向において反対向きに配置した構成を有する。
すなわち、回転軸Oの軸方向において、エネルギービームEBが入射する側の第1の面22aが、回転軸Oに直交する平面形状となる。また第2の面22bが、回転軸Oを中心として正面側に突出する曲面形状となり、具体的には正面側に突出する球冠形状となる。
なお第2の面22bから見て正面側とは、後方側(Y軸の負側)が該当する。正面側に突出する球冠形状からなる第2の面22bの中心に、軸部39が接続される。
【0158】
回転体22が回転する場合にプラズマ原料23に浸漬される浸漬部分63の入射面部63aは、回転軸Oに直交する平面形状となり、非突出面となる。浸漬部分63の裏面部63bは、回転軸Oに向かって正面側に突出する突出面64として構成される。
【0159】
カバー部材37は、回転体22の周縁部(エッジ部分65)に対向する側面カバー部67と、側面カバー部67に接続され非突出面(すなわち入射面部63a)に対向する対向カバー部68とを有する。
【0160】
図9に示す構成では、カバー部材37が、エネルギービームEBの入射領域25(プラズマ発光点)よりも、前方側に突出している。従って、回転体22へのエネルギービームEBの照射、及びプラズマPからの放射線Rの取り出しに関して、設計自由度は相対的に低くなる。
【0161】
一方で、浸漬部分63の裏面部63bが突出面64として構成されているので、回転動作時のプラズマ原料23の飛沫量(デブリ66の量)を抑制することが可能となる。またカバー部材37により、エッジ部分65から前方側の上方に向かって離脱するデブリ66を十分に捕捉することである。
なお、図9に示す例では、非突出面である入射面部63a(エッジ部分65)と対向カバー部68との間隔を、十分に近づけることで(典型的には1mm以下)、デブリ66の飛散を十分に防止することが可能であり、エネルギービームEBの光路上に、デブリ66が飛んでくることを十分に抑制することが可能である。
このように、デブリ66の影響を抑制する点については、図5図8に原料供給ユニット60と同様の効果が発揮される。
【0162】
図10は、原料供給ユニット60の他の構成例を示す模式図である。
図10に示す原料供給ユニット60Fは、図7に示す円錐形状の回転体22を前後方向において反対向きに配置した構成を有する。
すなわち、回転体22の第1の面22aが、回転軸Oに直交する平面形状となる。また第2の面22bが、回転軸Oを中心として正面側に突出する曲面形状となり、具体的には正面側に突出する円錐面形状となる。正面側に突出する円錐面形状からなる第2の面22bの中心に、軸部39が接続される。
【0163】
回転体22が回転する場合にプラズマ原料23に浸漬される浸漬部分63の入射面部63aは、回転軸Oに直交する平面形状となり、非突出面となる。浸漬部分63の裏面部63bは、回転軸Oに向かって正面側に突出する突出面64として構成される。
【0164】
カバー部材37は、回転体22の周縁部(エッジ部分65)に対向する側面カバー部67と、側面カバー部67に接続され非突出面(すなわち入射面部63a)に対向する対向カバー部68とを有する。
【0165】
図10に示す構成においても、回転体22へのエネルギービームEBの照射、及びプラズマPからの放射線Rの取り出しに関して、設計自由度は相対的に低くなる。
【0166】
一方で、浸漬部分63の裏面部63bが突出面64として構成されているので、回転動作時のプラズマ原料23の飛沫量(デブリ66の量)を抑制することが可能となる。またカバー部材37により、エッジ部分65から前方側の上方に向かって離脱するデブリ66を十分に捕捉することである。
なお、図10に示す例では、非突出面である入射面部63a(エッジ部分65)と対向カバー部68との間隔を、十分に近づけることで(典型的には1mm以下)、デブリ66の飛散を十分に防止することが可能であり、エネルギービームEBの光路上に、デブリ66が飛んでくることを十分に抑制することが可能である。
【0167】
図11は、原料供給ユニット60の他の構成例を示す模式図である。
図11に示す原料供給ユニット60Gは、図8に示す中空の球欠形状の回転体22を前後方向において反対向きに配置した構成を有する。
すなわち、回転体22の第1の面22aが、回転軸Oを中心として窪む曲面形状となる。また第2の面22bが、回転軸Oを中心として正面側に突出する曲面形状となり、具体的には正面側に突出する球冠形状となる。正面側に突出する球冠形状からなる第2の面22bの中心に、軸部39が接続される。
【0168】
回転体22が回転する場合にプラズマ原料23に浸漬される浸漬部分63の入射面部63aは、回転軸Oに対して直交する方向(XZ平面方向)の幅が回転軸Oの軸方向に沿って変化するように窪む窪み面として構成され、非突出面となる。浸漬部分63の裏面部63bは、回転軸Oに向かって正面側に突出する突出面64として構成される。
【0169】
図11に示す例では、窪み面として構成される入射面部64は、回転軸Oに対して直交する方向(XZ平面方向)の幅が回転軸Oの軸方向に沿って後方側に進むにつれて連続的に減少するように構成される。なお、回転軸Oに対して直交する方向(XZ平面方向)の幅の変化の態様は限定されない。
【0170】
カバー部材37は、回転体22の周縁部(エッジ部分65)に対向する側面カバー部67と、側面カバー部67に接続され非突出面(すなわち入射面部63a)に対向する対向カバー部68とを有する。
【0171】
浸漬部分63の裏面部63bが突出面64として構成されているので、回転動作時のプラズマ原料23の飛沫量(デブリ66の量)を抑制することが可能となる。またカバー部材37により、エッジ部分65から前方側の上方に向かって離脱するデブリ66を十分に捕捉することである。
なお、図11に示す例では、非突出面である入射面部63a(エッジ部分65)と対向カバー部68との間隔を、十分に近づけることで(典型的には1mm以下)、デブリ66の飛散を十分に防止することが可能であり、エネルギービームEBの光路上に、デブリ66が飛んでくることを十分に抑制することが可能である。
【0172】
また、図11に示す構成では、エネルギービームEBの入射領域25の位置を適宜設定することで、エネルギービームEBが照射されることにより発生するプラズマ原料23からなるデブリの飛散方向にある程度指向性を持たせることが可能となる。すなわち、デブリ飛散方向を制限することが可能となる。
【0173】
例えば、入射面部63aのうちコンテナ24に収容されたプラズマ原料23側に向く部分に、エネルギービームEBの入射領域25を設定する。図11に示す例では、第1の面22aの中心から上方側に向かう位置に、エネルギービームEBの入射領域25が設定されている。その部分は、法線方向Nが下方に向かっており、プラズマ原料23側に向く部分となる。
【0174】
プラズマ原料23側に向く部分に設定された入射領域25にエネルギービームEBを照射すると、デブリとして放出されるプラズマ原料23の一部は、法線方向Nに向かって一番多く放出される。すなわち、コンテナ24に収容されたプラズマ原料23側に向かって一番多く放出される。
【0175】
このように図11に示す構成では、エネルギービームEBの照射により発生するデブリ(プラズマ原料23)の放出方向を制限することが可能となり、デブリの飛散方向と重ならないように、エネルギービームEBの照射方向、及び放射線Rの取り出し方向を設定する点において有利となる。また、エネルギービームEBの照射により発生するデブリ(プラズマ原料23)を、コンテナ24に効率的に戻すことが可能となる。
【0176】
図12は、原料供給ユニット60の他の構成例を示す模式図である。
図12に示す原料供給ユニット60Hでは、回転体22は、円盤形状の基体部70と、基体部70の前方側に接続された球欠形状の突出部71とにより構成される。基体部70及び突出部71は、個々に作成されて連結されてもよいし、一体的に作成されてもよい。
【0177】
突出部71の前方側の面が球冠形状となる第1の面22aとなり、第1の面22aのうち回転により浸漬される部分が入射面部63aとなる。また基体部70の後方側の面が、平面形状からなる第2の面22bとなり、第2の面22bのうち回転により浸漬される部分が裏面部63bとなる。また、基体部70の側面70aが、回転体22の周縁部となる(入射面部63aとの間のエッジ部分、及び裏面部63bとの間のエッジ部分を含む)。
【0178】
カバー部材37は、回転体22の周縁部(側面70a)を覆うように配置される。
図12に示す構成でも、入射面部63aが回転軸Oに向かって正面側に突出する突出面64として構成される。これにより、回転動作時のプラズマ原料23の飛沫量(デブリ66の量)を抑制することが可能となる。
【0179】
図13は、原料供給ユニット60の他の構成例を示す模式図である。
図13に示す原料供給ユニット60Iでは、回転体22は、図6に示す球欠形状の回転体22の浸漬部分63よりも前方側の部分がカットされた形状を有する。これにより、軽量化、及び材料コストの低減に有利となる。
【0180】
図13に例示するように、浸漬部分63以外の部分については、形状等を任意に設計することが可能となる。例えば、浸漬部分63については耐久性の高い材料で作成し、他の部分については安価な材料で作成するといったことも可能である。
【0181】
図14は、原料供給ユニット60の他の構成例を示す模式図である。
図14に示す原料供給ユニット60Jでは、回転体22は、図6に示す球欠形状の回転体22の平面部分を互いに接続した形状を有する。従って、回転体22のおおよその形状は、ラグビーボールのような回転楕円体となる。
【0182】
図14に示す構成では、回転体22の第1の面22a及び第2の面22bの両方が、回転軸Oを中心として正面側に突出する曲面形状となり、具体的には正面側に突出する球冠形状となる。また、回転体22が回転する場合にプラズマ原料23に浸漬される浸漬部分63の入射面部63a及び裏面部63bの両方が、回転軸Oに向かって正面側に突出する突出面64として構成される。
【0183】
カバー部材37は、回転体22の周縁部(エッジ部分65)を覆うように配置される。
このように、入射面部63a及び裏面部63bの両方が突出面64として構成されてもよい。この場合でも、上記の効果を発揮することが可能となる。
【0184】
以上、各バリエーション例を参照して説明したように、本実施形態に係る光源装置1では、コンテナ24に収容されたプラズマ原料23に一部が浸漬されるように配置された回転体22が回転することで、エネルギービームEBの入射領域25にプラズマ原料23が供給される。当該回転体22のプラズマ原料23に浸漬される浸漬部分63の入射面部63a及び裏面部63bの少なくとも一方が、回転軸Oに向かって正面側に突出する突出面64として構成される。これにより、光源装置1の動作時に発生するデブリの影響を抑制することが可能となる。
【0185】
上記で説明したバリエーション例では、第1の面22a又は第2の面22bの少なくとも一方が、回転軸Oを中心として正面側に突出する球冠形状、又は回転軸Oを中心として正面側に突出する円錐面形状となる場合を説明した。これに限定されず、第1の面22a又は第2の面22bの少なくとも一方が、回転軸を中心として正面側に突出する放物面形状や、回転軸Oを中心として正面側に突出する楕円面形状で構成されてもよい。
その他、入射面部63a及び裏面部63bの少なくとも一方が、回転軸Oに向かって正面側に突出する突出面64として構成することが可能な任意の構成が採用されてよい。
【0186】
上記で説明した各バリエーション例では、回転体22が回転する際に飛沫が発生するエッジ部分65を覆うようにカバー部材37が配置される。これにより、遠心力により回転体22から離脱するプラズマ原料23であるデブリ66が、外部に飛散することを抑制することが可能となる。
なお、ある程度の飛沫の飛散を許容するような設計において、カバー部材37が用いられない場合もあり得る。この場合でも、円盤形状の回転体101と比較して、飛沫量(デブリ66の量)を低減させることが可能であるので、有効である。
【0187】
<その他の実施形態>
本発明は、以上説明した実施形態に限定されず、他の種々の実施形態を実現することができる。
【0188】
図1に示す例では、ビーム源13が1つ準備され、回転体22に対して1本のレーザビームがエネルギービームEBとして出射された。これに限定されず、回転体22に対して、複数のビーム源13が、エネルギービームEBの照射方向が異なるように配置されてもよい。複数のビーム源13から入射領域25に対して交互にエネルギービームEBを照射することにより、プラズマPの発生周波数(放射線Rの放出周波数)を向上させることが可能となる。
例えば、ビーム源13として、パルスレーザが用いられる場合には、複数のビーム源13を用いることで、入射領域25へのパルスレーザの照射周期を向上させることが可能となり、放射線Rを効率的に取り出すことが可能となる。
【0189】
上記では、LPP方式の光源装置1に、本技術に係る原料供給ユニット60が適用される例を説明した。すなわち、本技術に係る光源装置として、LPP方式の光源装置1が構成される実施形態を説明した。
これに限定されず、LDP方式の光源装置に、本技術に係る原料供給ユニット60を適用することも可能である。すなわち、本技術に係る光源装置として、LDP方式の光源装置1を構成することも可能である。
LDP方式の光源装置は、エネルギービームEBの照射を利用してプラズマ原料23をプラズマ化して放射線Rを取り出すLPP方式の光源装置に含まれる。
【0190】
[LDP方式の光源装置]
図15は、LDP方式の光源装置111の構成例を示す模式図である。
図15は、光源装置111を設置面から所定の高さの位置で水平方向に沿って切断した場合の模式的な断面を、上方から見た場合の図である。
図15では、光源装置1の構成及び動作を理解しやすいように、断面の構成等を説明する必要のない部分については、断面の図示を省略している。
【0191】
光源装置111は、波長13.5nmのEUV光を放出する。
光源装置111は、放電を発生させる一対の放電電極EA,EBの表面にそれぞれ供給された液相のプラズマ原料SA,SBにレーザビームLB等のエネルギービームを照射して当該プラズマ原料SA,SBを気化させる。その後、放電電極EA,EB間の放電領域Dの放電によってプラズマPを発生させる。プラズマPからはEUV光が放出される。
【0192】
光源装置111は、例えば、半導体デバイス製造におけるリソグラフィ装置の光源装置、又はリソグラフィに使用されるマスクの検査装置の光源装置として使用可能である。
例えば、光源装置111がマスク検査装置用の光源装置と使用される場合、プラズマPから放出されるEUV光の一部が取り出され、マスク検査装置に導光される。
マスク検査装置は、光源装置111から放出されるEUV光を検査光として、マスクのブランクス検査またはパターン検査を行う。ここで、EUV光を用いることにより、5nm~7nmプロセスに対応することができる。なお、光源装置111から取り出されるEUV光は、図15の遮熱板72に設けられた開口(図示は省略)により規定される。
【0193】
図15に示すように、光源装置111は、光源部73と、デブリ捕捉部74とを有する。
光源部73は、LDP方式に基づいてEUV光を発生させる。
デブリ捕捉部74は、光源部73から放射されるEUV光とともに飛散するデブリを捕捉するデブリ低減装置である。光源部73で発生したデブリ、及びデブリ捕捉部74で捕捉されたデブリ等は、デブリ捕捉部74の下方側に配置されるデブリ収容部(図示は省略)に収容される。
【0194】
光源部73は、内部で生成されるプラズマPを外部と隔離するチャンバ75を備える。チャンバ75は、プラズマPを生成する光源部73を収容するプラズマ生成室を形成する。
チャンバ75は、剛体、例えば、金属製の真空筐体であり、その内部は、プラズマ原料SA,SBを加熱励起するための放電を良好に発生させ、EUV光の減衰を抑制するために、図示しない真空ポンプにより所定圧力以下の減圧雰囲気に維持される。
【0195】
光源部73は、一対の放電電極EA,EBを備える。
放電電極EA,EBは、同形同大の円板状部材であり、例えば、放電電極EAがカソードとして使用され、放電電極EBがアノードとして使用される。
放電電極EA,EBは、例えば、モリブデン(Mo)、タングステン(W)またはタンタル(Ta)などの高融点金属から形成される。
放電電極EA,EBは、互いに離隔した位置に配置され、放電電極EA,EBの周縁部が近接している。このとき、プラズマPが生成される放電領域Dは、放電電極EA,EBの周縁部が互いに最も接近した放電電極EA,EB間の間隙に位置する。
【0196】
チャンバ75の内部には、液相のプラズマ原料SAが貯留されるコンテナCAと、液相のプラズマ原料SBが貯留されるコンテナCBとが配置される。
各コンテナCA,CBには、加熱された液相のプラズマ原料SA,SBが供給される。液相のプラズマ原料SA,SBは、例えば、スズ(Sn)であるが、リチウム(Li)であってもよい。
【0197】
コンテナCAは、放電電極EAの下部が液相のプラズマ原料SAに浸されるようにプラズマ原料SAを収容する。コンテナCBは、放電電極EBの下部が液相のプラズマ原料SBに浸されるようにプラズマ原料SBを収容する。
従って、放電電極EA,EBの下部には、液相のプラズマ原料SA,SBが付着する。放電電極EA,EBの下部に付着した液相のプラズマ原料SA,SBは、放電電極EA,EBの回転に伴って、プラズマPが生成される放電領域Dに輸送される。
【0198】
放電電極EAは、モータMAの回転軸JAに連結され、放電電極EAの軸線周りに回転する。放電電極EBは、モータMBの回転軸JBに連結され、放電電極EBの軸線周りに回転する。
モータMA,MBは、チャンバ75の外部に配置され、各モータMA,MBの回転軸JA,JBは、チャンバ75の外部から内部に延びる。回転軸JAとチャンバ75の壁の間の隙間は、シール部材PAで封止され、回転軸JBとチャンバ75の壁の間の隙間は、シール部材PBで封止される。
シール部材PA,PBは、例えば、メカニカルシールである。各シール部材PA,PBは、チャンバ75内の減圧雰囲気を維持しつつ、回転軸JA,JBを回転自在に支持する。
【0199】
図15に示すように、光源装置111は、さらに、制御部76と、パルス電力供給部77と、ビーム源(エネルギービーム照射装置)78と、可動ミラー79をさらに備える。
制御部76、パルス電力供給部77、ビーム源78および可動ミラー79は、チャンバ75の外部に設置される。
制御部76は、光源装置111の各部の動作を制御する。例えば、制御部76は、モータMA,MBの回転駆動を制御し、放電電極EA,EBを所定の回転数で回転させる。また、制御部76は、パルス電力供給部77の動作、ビーム源78からのレーザビームLBの照射タイミングなどを制御する。
【0200】
パルス電力供給部77から延びる2つの給電線QA,QBは、フィードスルーFA,FBを通過して、チャンバ75の内部に配置されたコンテナCA,CBにそれぞれ接続される。
フィードスルーFA,FBは、チャンバ75の壁に埋設されてチャンバ75内の減圧雰囲気を維持するシール部材である。
コンテナCA,CBは、導電性材料から形成され、各コンテナCA,CBの内部に収容されるプラズマ原料SA,SBもスズなどの導電性材料である。
各コンテナCA,CBの内部に収容されているプラズマ原料SA,SBには、放電電極EA,EBの下部がそれぞれ浸されている。従って、パルス電力供給部77からパルス電力がコンテナCA,CBに供給されると、そのパルス電力は、プラズマ原料SA,SBをそれぞれ介して放電電極EA,EBに供給される。
【0201】
パルス電力供給部77は、放電電極EA,EBへパルス電力を供給することにより、放電領域Dで放電を発生させる。
そして、各放電電極EA,EBの回転に基づいて放電領域Dに輸送されたプラズマ原料SA,SBが放電時に放電電極EA,EB間に流れる電流により加熱励起されることで、EUV光を放出するプラズマPが生成される。
【0202】
ビーム源78は、放電領域Dに輸送された放電電極EAに付着したプラズマ原料SAにエネルギービームを照射して、当該プラズマ原料SAを気化させる。ビーム源78は、例えば、Nd:YVO(Neodymium-doped Yttrium Orthovanadate)レーザ装置である。
このとき、ビーム源78は、波長1064nmの赤外領域のレーザビームLBを発する。ただし、エネルギービーム照射装置は、プラズマ原料SAの気化が可能であれば、レーザビームLB以外のエネルギービームを発する装置であってもよい。
【0203】
ビーム源78から放出されたレーザビームLBは、例えば、集光レンズ80を含む集光手段を介して可動ミラー79に導かれる。集光手段は、放電電極EAのレーザビーム照射位置におけるレーザビームLBのスポット径を調整する。集光レンズ80および可動ミラー79は、チャンバ75の外部に配置される。
【0204】
集光レンズ80で集光されたレーザビームLBは、可動ミラー79により反射され、チャンバ75の側壁75aに設けられた透明窓81を通過して、放電領域D付近の放電電極EAの周縁部に照射される。可動ミラー79の姿勢を調整することにより、放電電極EAにおけるレーザビームLBの照射位置が調整される。
【0205】
放電領域D付近の放電電極EAの周縁部にレーザビームLBを照射するのを容易にするため、放電電極EA,EBの軸線は平行ではない。
回転軸JA,JBの間隔は、モータMA,MB側が狭く、放電電極EA,EB側が広くなっている。
これにより、放電電極EA,EBの対向面側を接近させつつ、放電電極EA,EBの対向面側とは反対側をレーザビームLBの照射経路から退避させることができ、放電領域D付近の放電電極EAの周縁部にレーザビームLBを照射するのを容易にすることができる。
【0206】
放電電極EBは、放電電極EAと可動ミラー79との間に配置される。
可動ミラー79で反射されたレーザビームLBは、放電電極EBの外周面付近を通過した後、放電電極EAの外周面に到達する。
このとき、レーザビームLBが放電電極EBで遮光されないように、放電電極EBは、放電電極EAよりも、モータMB側の方向(図15の左側)に退避される。
放電領域D付近の放電電極EAの外周面に付着された液相のプラズマ原料SAは、レーザビームLBの照射により気化され、気相のプラズマ原料SAとして放電領域Dに供給される。
【0207】
放電領域DでプラズマPを発生させるため(気相のプラズマ原料SAをプラズマ化するため)、パルス電力供給部77は、放電電極EA,EBに電力を供給する。
そして、レーザビームLBの照射により放電領域Dに気相のプラズマ原料SAが供給されると、放電領域Dにおける放電電極EA,EB間で放電が生じる。
放電電極EA、EB間で放電が発生すると、放電領域Dにおける気相のプラズマ材料SAが電流により加熱励起されて、プラズマPが発生する。生成されたプラズマPから放射されるEUV光は、チャンバ75の側壁75bに設けられた貫通孔である第1窓部82を通ってデブリ捕捉部74へ入射する。
【0208】
デブリ捕捉部74は、チャンバ75の側壁75bに配置された接続チャンバ83を有する。接続チャンバ83は、剛体、例えば、金属製の真空筐体であり、その内部は、チャンバ75と同様、EUV光の減衰を抑制するために所定圧力以下の減圧雰囲気に維持される。接続チャンバ83は、チャンバ75と利用装置120(例えばリソグラフィ装置やマスク検査装置)との間に接続される。
【0209】
接続チャンバ83の内部空間は、第1窓部82を介してチャンバ75と連通する。接続チャンバ83は、第1窓部82から入射したEUV光を利用装置120へ導入する光取出し部としての第2窓部84を有する。第2窓部84は、接続チャンバ83の側壁74aに形成された所定形状の貫通孔である。
放電領域DのプラズマPから放出されたEUV光は、第1窓部82及び第2窓部84を通じて利用装置120に導入される。
【0210】
一方、プラズマPからはEUV光とともにデブリが高速で様々な方向に放散される。
デブリは、プラズマ原料SA、SBであるスズ粒子及びプラズマPの発生に伴いスパッタリングされる放電電極EA、EBの材料粒子を含む。
これらのデブリは、プラズマPの収縮および膨張過程を経て、大きな運動エネルギーを得る。すなわち、プラズマPから発生するデブリは、高速で移動するイオン、中性粒子および電子を含む。
このようなデブリは、利用装置120に到達すると、利用装置120内の光学素子の反射膜を損傷または汚染させ、性能を低下させることがある。
【0211】
そのため、デブリが利用装置120に侵入しないようにするため、デブリを捕捉するデブリ捕捉部74が接続チャンバ83内に設けられる。
図15に示す例では、デブリ捕捉部74として、複数のホイルを有し、回転することで複数のホイルをデブリと能動的に衝突させる回転式ホイルトラップ85が配置される。回転式ホイルトラップ85は、接続チャンバ83の内部にて、接続チャンバ83から利用装置120へと進行するEUV光の光路上に配置される。
回転式ホイルトラップ85に代えて、複数のホイルの位置が固定された固定式ホイルトラップが配置されてもよい。あるいは、回転式ホイルトラップ85及び固定式ホイルトラップの双方が設けられてもよい。
【0212】
図15に示すLDP方式の光源装置111において、放電電極EA及びコンテナCAを実現するために、本技術に係る原料供給ユニットを採用することが可能である。同様に、放電電極EB及びコンテナCBを実現するために、本技術に係る原料供給ユニットを採用することが可能である。
図15に示す例では、放電電極EA(EB)として、球欠形状の回転体が用いられる。そして、モータMA(MB)の回転軸JA(JB)が接続される側(後方側とする)の面が、球冠形状で構成されている。従って、放電電極EA(EB)が回転することでプラズマ原料SA(SB)に浸漬する浸漬部分の後方側の面部が、回転軸に向かって正面側に突出する突出面として構成される。これにより、放電電極EA(EB)が回転する際に発生するプラズマ原料SA(SB)の飛沫量(デブリの量)を抑制することが可能となる。この結果、光源装置111の動作時に発生するデブリの影響を抑制することが可能となる。
【0213】
なお、図15に示すLDP方式の光源装置111等において、図12に示す回転体22が2つ準備され、基体部70の側面70aが互いに接近するように配置されてもよい。そして、基体部70の側面70aにエネルギービームEBの入射領域25が設定されてもよい。すなわち、基体部70の側面70aにエネルギービームEBが照射されてもよい。なお、基体部70の側面70は、本発明に係る、入射面部63aと裏面部63bとの間に構成され、回転軸Oの軸方向に延在する側面部の一実施形態となる。
このように、光軸Oの軸方向において、浸漬部分63の第1の側となる第1の浸漬面部、及び第1の浸漬面部とは反対側となる第2の浸漬面部以外の領域に、エネルギービームEBが照射されてもよい。この場合でも、回転体22の回転動作時のプラズマ原料23の飛沫量(デブリ66の量)を抑制することが可能となり、デブリの影響を抑制することが可能となる。
【0214】
各図面を参照して説明した光源装置、原料供給ユニット、回転体、コンテナ、カバー部材、各種チャンバ、原料供給機構等の各構成はあくまで一実施形態であり、本技術の趣旨を逸脱しない範囲で、任意に変形可能である。すなわち本技術を実施するための他の任意の構成が採用されてよい。
【0215】
本開示において、説明の理解を容易とするために、「略」「ほぼ」「おおよそ」等の文言が適宜使用されている。一方で、これら「略」「ほぼ」「おおよそ」等の文言を使用する場合と使用しない場合とで、明確な差異が規定されるわけではない。
すなわち、本開示において、「中心」「中央」「均一」「等しい」「同じ」「直交」「平行」「対称」「延在」「軸方向」「円柱形状」「円筒形状」「リング形状」「円環形状」等の、形状、サイズ、位置関係、状態等を規定する概念は、「実質的に中心」「実質的に中央」「実質的に均一」「実質的に等しい」「実質的に同じ」「実質的に直交」「実質的に平行」「実質的に対称」「実質的に延在」「実質的に軸方向」「実質的に円柱形状」「実質的に円筒形状」「実質的にリング形状」「実質的に円環形状」等を含む概念とする。
例えば「完全に中心」「完全に中央」「完全に均一」「完全に等しい」「完全に同じ」「完全に直交」「完全に平行」「完全に対称」「完全に延在」「完全に軸方向」「完全に円柱形状」「完全に円筒形状」「完全にリング形状」「完全に円環形状」等を基準とした所定の範囲(例えば±10%の範囲)に含まれる状態も含まれる。
従って、「略」「ほぼ」「おおよそ」等の文言が付加されていない場合でも、いわゆる「略」「ほぼ」「おおよそ」等を付加して表現され得る概念が含まれ得る。反対に、「略」「ほぼ」「おおよそ」等を付加して表現された状態について、完全な状態が必ず排除されるというわけではない。
【0216】
本開示において、「Aより大きい」「Aより小さい」といった「より」を使った表現は、Aと同等である場合を含む概念と、Aと同等である場合を含なまい概念の両方を包括的に含む表現である。例えば「Aより大きい」は、Aと同等は含まない場合に限定されず、「A以上」も含む。また「Aより小さい」は、「A未満」に限定されず、「A以下」も含む。
本技術を実施する際には、上記で説明した効果が発揮されるように、「Aより大きい」及び「Aより小さい」に含まれる概念から、具体的な設定等を適宜採用すればよい。
【0217】
以上説明した本技術に係る特徴部分のうち、少なくとも2つの特徴部分を組み合わせることも可能である。すなわち各実施形態で説明した種々の特徴部分は、各実施形態の区別なく、任意に組み合わされてもよい。また上記で記載した種々の効果は、あくまで例示であって限定されるものではなく、また他の効果が発揮されてもよい。
【符号の説明】
【0218】
EB…エネルギービーム
O…回転軸
P…プラズマ
R…放射線
1、111…光源装置
6…原料供給機構
22…回転体
22a…第1の面
22b…第2の面
23…プラズマ原料
24…コンテナ
25…入射領域
41…プラズマ原料循環装置
60(60A~60J)…原料供給ユニット
62…周縁部
63…浸漬部分
63a…入射面部
63b…裏面部
64…突出面
65…エッジ部分
66…デブリ
67…側面カバー部
67a…側面カバー部の先端部
68…対向カバー部
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