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特開2024-5918緊急通報システム、状態通知方法及び状態通知プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024005918
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】緊急通報システム、状態通知方法及び状態通知プログラム
(51)【国際特許分類】
   G08B 25/04 20060101AFI20240110BHJP
   H01H 13/02 20060101ALI20240110BHJP
   H04M 11/04 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
G08B25/04 E
H01H13/02 B
H04M11/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022106386
(22)【出願日】2022-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】304020498
【氏名又は名称】サクサ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091546
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 正美
(74)【代理人】
【識別番号】100206379
【弁理士】
【氏名又は名称】丸山 正
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 慎太郎
(72)【発明者】
【氏名】望月 規之
【テーマコード(参考)】
5C087
5G206
5K201
【Fターム(参考)】
5C087BB74
5C087DD05
5C087DD23
5C087EE14
5C087FF01
5C087FF02
5C087GG08
5C087GG83
5G206AS45H
5G206QS09
5K201BA03
5K201ED09
5K201EE15
5K201EE17
(57)【要約】
【課題】 極めて薄型で、押下操作が可能で、周囲の環境に左右されずに安定して機能し、操作状態を認識可能な通報ボタンを備えた緊急通報システムを提供する。
【解決手段】 通報ボタンユニット100は、押圧部101と、第1触感提供部102と、第2触感提供部103とを備える。押圧部101が押圧されたことが検出回路202で検出されると、通報処理部203を通じて緊急通報受理機関3に通報が行われる。押圧部101が押下操作されたことが検出回路202で検出されると、第1駆動回路204が第1触感提供部102を駆動させ、この後、押圧部101への押下操作が完了したことが検出回路202で検出されると、あるいは、通報処理が適切に行われたことが制御部201で認識されると、第2駆動回路05が第2触感提供部103を駆動させる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
緊急通報装置と通報ボタンユニットとを備えて構成される緊急通報システムであって、
前記通報ボタンユニットは、
シート状に形成され、圧力が加えられた場合に出力信号を出力する押圧部と、
シート状に形成され、使用者に対して所定の触感を与える第1触感提供部と、
シート状に形成され、前記第1触感提供部とは異なる態様で、使用者に対して所定の触感を与える第2触感提供部と、
を備え、
前記緊急通報装置は、
前記通報ボタンユニットの前記押圧部からの前記出力信号に基づいて、前記押圧部が押下操作されたか否かを検出する検出手段と、
前記検出手段により、前記押圧部が押下操作されたことが検出された場合に、所定の通報先に対して通報を行う通報処理手段と、
前記検出手段により、前記押圧部が押下操作されたことが検出された場合に、前記通報ボタンユニットの前記第1触感提供部を駆動させ、所定の触感を提供可能にする第1駆動手段と、
前記検出手段により、前記押圧部が押下操作されたことが検出された後、前記検出手段により前記押圧部への押下操作の完了が検出された場合、あるいは、前記通報処理手段を通じて通信回線が接続されて通報処理が行われた場合に、前記通報ボタンユニットの前記第2触感提供部を駆動させ、所定の触感を提供可能にする第2駆動手段と
を備えることを特徴とする緊急通報システム。
【請求項2】
請求項1に記載の緊急通報システムであって、
前記通報ボタンユニットの前記第1触感提供部は、発熱素子あるいは冷却素子あるいは電気刺激付与素子であり、
前記通報ボタンユニットの前記第2触感提供部は、発熱素子あるいは冷却素子あるいは電気刺激付与素子である
ことを特徴とする緊急通報システム。
【請求項3】
請求項1に記載の緊急通報システムであって、
前記検出手段は、前記押圧部から供給される出力信号が人の脈波に応じた成分を含む場合に、押下操作されたことを検出する
ことを特徴とする緊急通報装置。
【請求項4】
緊急通報装置と通報ボタンユニットとを備えて構成される緊急通報システムの操作状態通知方法であって、
前記通報ボタンユニットは、シート状に形成され、圧力が加えられた場合に出力信号を出力する押圧部と、シート状に形成され、使用者に対して所定の触感を与える第1触感提供部と、シート状に形成され、前記第1触感提供部とは異なる態様で、使用者に対して所定の触感を与える第2触感提供部とを備えるものであり、
検出手段が、前記通報ボタンユニットの前記押圧部からの前記出力信号に基づいて、前記押圧部が押下操作されたか否かを検出する検出工程と、
前記検出工程において、前記押圧部が押下操作されたことを検出した場合に、通報処理手段が、所定の通報先に対して通報を行う通報処理工程と、
前記検出工程において、前記押圧部が押下操作されたことを検出した場合に、第1駆動手段が、前記通報ボタンユニットの前記第1触感提供部を駆動させ、所定の触感を提供可能にする第1駆動工程と、
前記検出工程において、前記押圧部が押下操作されたことを検出した後、前記検出手段が前記押圧部への押下操作の完了を検出した場合、あるいは、前記通報処理手段を通じて通信回線が接続されて通報処理が行われた場合に、第2駆動手段が、前記通報ボタンユニットの前記第2触感提供部を駆動させ、所定の触感を提供可能にする第2駆動工程と
を有することを特徴とする操作状態通知方法。
【請求項5】
緊急通報装置と通報ボタンユニットとを備えて構成される緊急通報システムの前記緊急通報装置に搭載されたコンピュータによって実行される操作状態通知プログラムであって、
前記通報ボタンユニットは、シート状に形成され、圧力が加えられた場合に出力信号を出力する押圧部と、シート状に形成され、使用者に対して所定の触感を与える第1触感提供部と、シート状に形成され、前記第1触感提供部とは異なる態様で、使用者に対して所定の触感を与える第2触感提供部とを備えるものであり、
前記通報ボタンユニットの前記押圧部からの前記出力信号に基づいて、前記押圧部が押下操作されたか否かを検出する検出ステップと、
前記検出ステップにおいて、前記押圧部が押下操作されたことを検出した場合に、所定の通報先に対して通報を行う通報処理ステップと、
前記検出ステップにおいて、前記押圧部が押下操作されたことを検出した場合に、前記通報ボタンユニットの前記第1触感提供部を駆動させ、所定の触感を提供可能にする第1駆動ステップと、
前記検出ステップにおいて、前記押圧部が押下操作されたことを検出した後、前記押圧部への押下操作の完了を検出した場合、あるいは、前記通報処理手段を通じて通信回線が接続されて通報処理が行われた場合に、前記通報ボタンユニットの前記第2触感提供部を駆動させ、所定の触感を提供可能にする第2駆動ステップと
を実行することを特徴とする操作状態通知プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、警備対象施設に設けられ、緊急時において警備会社等の緊急通報受理機関に対して通報を行うためのシステム、方法、プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
銀行や店舗などは、不特定多数の人が出入り可能であるため、従来から防犯対策として緊急通報システムが構築されている。また、近年においては、一般家庭においても、ホームセキュリティシステムなどと呼ばれる緊急通報システムが構築されるようになってきている。緊急通報システムは、緊急通報装置に1以上の通報ボタン(非常ボタン)が接続されて構成され、不審者遭遇時に通報ボタンを押下操作すると、緊急通報装置が所定の通報先に緊急通報を行うものである。これにより、警備員や警察官が駆け付けるなどといった対応を迅速に取ることが可能になる。
【0003】
従来の緊急通報システムの通報ボタン(非常ボタン)は、シーソー型スイッチや押し釦型スイッチが用いられており、ある程度の高さがあるため目立つ場合があり、不審者に気付かれない場所に設置するなどの工夫が必要であった。また、操作した場合には「カッチ」と比較的に大きな音を発生させるものもあり、不審者に気付かれないように押下操作することが難しいものもあった。このため、後に記す特許文献1には、非常時の操作において音がすることなく、薄型の非常ボタンに関する発明が開示されている。特許文献1に開示された非常ボタンは、内部に受光素子を備え、スライド窓を解放することにより、外部からの入射光を当該受光素子が受光した場合に非常信号を出力するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009-212043号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示された非常ボタンは、シーソー型スイッチや押し釦型スイッチが用いられたものよりも薄型ではあるものの、受光素子やスライド窓を備える構成であるため、ある程度の厚みを有するものである。また、特許文献1に開示された非常ボタンは、押下操作ではなくスライド操作が必要なものであり、押下操作に比べ操作し難い場合があると考えられる。また、特許文献1に開示された非常ボタンは、外部からの入射光が必要であるために、暗い場所での使用には適さない。このように、特許文献1に開示された非常ボタンは、従来のものに比べて薄型で、操作時に操作音を発生させない点で優れているものの、いくつかの問題点を有している。
【0006】
このため、極めて薄型であるために机の上などの目立つ場所に設置しても目立つことが無く、押下操作が可能で、周囲の明るさにも動作が左右されることなく、安定して機能する通報ボタン(非常ボタン)の実現が望まれている。また、極めて薄型の通報ボタン(非常ボタン)であっても、不審者に気付かれることなく、押下操作が受け付けられか否かを使用者(操作者)に対して確実に通知できるようにすることも望まれる。すなわち、光や音以外の方法により、操作状態の通知をできるようにすることが望まれる。このように、光や音以外の方法で操作動作の状態を通知できれば、視覚や聴覚に障害がある使用者に対しても、適切に操作状態を通知できる。
【0007】
以上のことに鑑み、この発明は、上記問題点を一掃し、極めて薄型の通報ボタン(非常ボタン)を備えた緊急通報システムを実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の発明の緊急通報システムは、
緊急通報装置と通報ボタンユニットとを備えて構成される緊急通報システムであって、
前記通報ボタンユニットは、
シート状に形成され、圧力が加えられた場合に出力信号を出力する押圧部と、
シート状に形成され、使用者に対して所定の触感を与える第1触感提供部と、
シート状に形成され、前記第1触感提供部とは異なる態様で、使用者に対して所定の触感を与える第2触感提供部と、
を備え、
前記緊急通報装置は、
前記通報ボタンユニットの前記押圧部からの前記出力信号に基づいて、前記押圧部が押下操作されたか否かを検出する検出手段と、
前記検出手段により、前記押圧部が押下操作されたことが検出された場合に、所定の通報先に対して通報を行う通報処理手段と、
前記検出手段により、前記押圧部が押下操作されたことが検出された場合に、前記通報ボタンユニットの前記第1触感提供部を駆動させ、所定の触感を提供可能にする第1駆動手段と、
前記検出手段により、前記押圧部が押下操作されたことが検出された後、前記検出手段により前記押圧部への押下操作の完了が検出された場合、あるいは、前記通報処理手段を通じて通信回線が接続されて通報処理が行われた場合に、前記通報ボタンユニットの前記第2触感提供部を駆動させ、所定の触感を提供可能にする第2駆動手段と
を備えることを特徴とする。
【0009】
請求項1に記載の発明の緊急通報システムによれば、通報ボタンユニットは、押圧部と、第1触感提供部と、第2触感提供部とを備えて構成されている。押圧部が押圧されたことが検出手段で検出されると、通報処理手段を通じて所定の通報先に通報が行われる。また、押圧部が押下操作されたことが検出手段で検出されると、第1駆動手段が第1触感提供部を駆動させ、この後、押圧部への押下操作が完了したことが検出手段で検出されると、あるいは、通報処理手段を通じて通信回線が接続されて通報処理が行われると、第2駆動手段が第2触感提供部を駆動させる。これにより、押圧部が押下操作されたこと、及び、押圧部への押下操作が完了したこと、あるいは、通報処理が適切に行われたことが使用者(操作者)に対して通知される。
【発明の効果】
【0010】
この発明によれば、極めて薄型で、押下操作が可能で、操作状態や動作状態を周囲に知られることなく使用者(操作者)だけが認識可能な通報ボタン(非常ボタン)を備えた緊急通報システムが実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施の形態の緊急通報システムの構成例を説明するためのブロック図である。
図2】実施の形態の緊急通報システムの通報ボタンユニットの設置例と押圧部と触感提供部の構成例とを説明するための図である。
図3】実施の形態の緊急通報システムの通報ボタンユニットの押圧部と第1触感提供部と第2触感提供部の配置例を説明するための図である。
図4】実施の形態の緊急通報システムの通報ボタンユニットの第1触感提供部、第2触感提供部の構成例を説明するための図である。
図5】実施の形態の緊急通報システムで行われる処理(第1の例)を説明するためのフローチャートである。
図6】実施の形態の第1触感提供部と第2触感提供部とによる発熱パターンの例を説明するための図である。
図7】実施の形態の緊急通報システムで行われる処理(第2の例)を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図を参照しながら、この発明による、装置、方法、プログラムの一実施の形態について説明する。以下に説明する実施の形態においては、例えば、銀行や店舗といった不特定多数の者が出入りする警備対象施設に対して、この発明による緊急通報システムが構築された場合を例にして説明する。
【0013】
[緊急通報システムの構成例]
図1は、実施の形態の緊急通報システム1の構成例を説明するためのブロック図である。図1に示すように、この実施の形態の緊急通報システム1は、通報ボタンユニット100と、緊急通報装置200とからなる。緊急通報システム1は、不審者の侵入などの通報事象が発生した場合に、通報ボタンユニット100に対して押下操作を行うことにより、緊急通報装置200が、ネットワーク2を介して、緊急通報受理機関3に対して、緊急通報を行う。
【0014】
ネットワーク2は、例えば、アナログ電話網(PSTN(Public Switched Telephone Network))やIP(Internet Protocol)網などの広域通信網である。ネットワーク2がIP網の場合には、ネットワーク2と緊急通報装置200との間に、いわゆるゲートウェイ装置が設けられる。ゲートウェイ装置は、プロトコルが異なるネットワークを接続する機能を有するものである。緊急通報受理機関3は、例えば、警備会社や警察機関といった緊急通報を受け付けて、これに対応することができる機関である。
【0015】
<通報ボタンユニット100の構成例>
図2は、実施の形態の緊急通報システムの通報ボタンユニット100の設置例と、押圧部101と第1触感提供部102と第2触感提供部103の構成例とを説明するための図である。図1に示したように、通報ボタンユニット100は、押圧部101と第1触感提供部102と第2触感提供部103を備えたものであり、この実施の形態においては、厚さが1mm以下の極めて薄型に構成されるシート型入出力デバイスである。
【0016】
このため、図2(A)に示すように、例えば、銀行や店舗といった警備対象施設に置かれ、顧客と対面する従業員が使用するデスク(机)4の天板の上面に、シート型入出力デバイスである通報ボタンユニット100を貼付するようにして設けることができる。また、通報ボタンユニット100の上面(押圧面)に対しては、例えばデスク4の天板と同様の彩色を施すなどの対応を取ることによって、いわゆるカモフラージュすることができる。換言すれば、通報ボタンユニット100は、これが設けられた部分に擬態することができるものであり、人目につきやすく、かつ、操作しやすい場所に、目立たないように配置することができるものである。つまり、通報ボタンユニット100は、シート型であるため、種々の模様を施すなどして、ステッカーやシールのような態様で、種々の位置に設けることができる。
【0017】
この実施の形態において、押圧部101は、PVDF(ポリフッ化ビニリデン(PolyVinylidene DiFluoride))を圧電体として用いた圧電(ピエゾ)素子で構成される。押圧部101は、図2(B)に示すように、下側電極101Dと上側電極101Uとで圧電体101Pを挟んで構成したものであり、その厚みは例えば0.1mm程度である。上側電極101Uは配線(+)を通じて、また、下側電極101Dは配線(-)を通じて、それぞれが緊急通報装置200の検出回路202に接続される。
【0018】
押圧部101に押圧力(圧力)が加わった場合に、圧電体101Pに電圧が発生し、図2(B)に示すように、配線(+)及び配線(-)を通じて、緊急通報装置200の検出回路202に印加される。このように、押圧部101は、押下(押圧)操作されると、電圧を出力信号として発生させて、検出回路202に供給(印加)できるものである。これにより、検出回路202では、押圧部101から電圧が印加されれば、押圧部101に対して押下操作が行われたことを検出できる。また、検出回路202では、押圧部101から電圧が印加されていなければ、押圧部101に対して押下操作されていないことが検出できる。なお、検出回路の詳細については後述するが、人によって押圧部101が押下操作された場合を的確に検出することができるものである。
【0019】
第1触感提供部102及び第2触感提供部103のそれぞれは、これらに触れた場合に何等かの感触を与えることができるものである。この実施の形態において第1触感提供部102と第2触感提供部103とは、いずれも導電ペーストにより形成された発熱素子であり、触感(触った場合の感触)として温度変化を与えるものである。第1触感提供部102と第2触感提供部103は、共に図2(C)に示すように、その厚みは例えば0.1mm程度のものである。第1触感提供部102は、その両端が配線(+)及び配線(-)を通じて、緊急通報装置200の第1駆動回路204に接続されている。また、第2触感提供部103は、その両端が配線(+)及び配線(-)を通じて、緊急通報装置200の第2駆動回路205に接続されている。
【0020】
第1触感提供部102は、第1駆動回路204から電力が供給されている場合には、発熱状態となり、第1触感提供部102部分に触れている使用者の指を通じて他の部分よりも明らかに高い温度(温かさ、熱さ)を感じさせる。同様に、第2触感提供部103は、第2駆動回路205から電力が供給されている場合には、発熱状態となり、第2触感提供部103部分に触れている使用者の指を通じて他の部分よりも明らかに高い温度(温かさ、熱さ)を感じさせる。
【0021】
これらの場合に、第1触感提供部102と第2触感提供部103とが提供する「高い温度」は、例えば43℃以上で、室温より温かいと感じ取れる程度の温度である。なお、第1触感提供部102と第2触感提供部103とが提供する「高い温度」を、温かさ、熱さとしているのは、人によって感じ方が違うからであり、明らかに高い温度になっていることを感じ取れる状態を意味している。
【0022】
また、第1触感提供部102は、第1駆動回路204から電力が供給されていない場合には、非発熱状態となり、第1触感提供部102部分に触れている使用者の指を通じて発熱状態のときと比べて明らかに低い温度を感じさせる。同様に、第2触感提供部103は、第2駆動回路205から電力が供給されていない場合には、非発熱状態となり、第2触感提供部103部分に触れている使用者の指を通じて発熱状態のときと比べて明らかに低い温度を感じさせる。これらの場合の低い温度は、発熱状態である43℃よりも明らかに低いと分かる例えば35℃以下、大まかには室温程度である。
【0023】
押圧部101と第1触感提供部102と第2触感提供部103とは、同一シート上に配置されていれば、どのような態様で配置されていてもよい。しかし、使用者の指によりこれらを同時に触れられるようにしておくと便利である。図3は、実施の形態の緊急通報システム1の通報ボタンユニット100の押圧部101と第1触感提供部102と第2触感提供部103の配置例を説明するための図である。図3(A)の完成イメージに示すように、例えば、1辺が、1.5cm~2cmの正方形のシート上に、押圧部101と、第1触感提供部102と、第2触感提供部103とを設けて、通報ボタンユニット100を構成する。
【0024】
図3(A)において、大きな実線の円で示した部分が押圧部101であり、四隅のそれぞれに小さな四角形で示した部分が、第1触感提供部102であり、小さな点線の円で示した部分が、第2触感提供部103である。すなわち、この実施の形態において、第2触感提供部103は、押圧部101の下側に位置する構成となっている。この実施の形態の通報ボタンユニット100は、上層が図2(B)に示すセンサ部で押圧部101からなり、下層が図2(C)に示す発熱部で、第1触感提供部102と第2触感提供部103とが設けられた部分である。
【0025】
従って、図2(C)に示すように、正方形の基板シート上の四隅のそれぞれに第1触感提供部102を設け、中央部分に円形の第2触感提供部103を設けて、発熱部を構成する。その発熱部の第2触感提供部103を覆うように、図2(B)に示した押圧部101(センサ部)を配置することによって、図3(A)に示した構成の通報ボタンユニット100が構成される。
【0026】
図4は、実施の形態の緊急通報システム1の通報ボタンユニット100の第1触感提供部102、第2触感提供部103のより具体的な構成例を説明するための図である。FHE(Flexible Hybrid Electronics)基板技術においては、「導電ペーストには焼成時間及び焼成温度に比例して抵抗値が下がる。」という特徴があり、これを利用して第1触感提供部102と第2触感提供部103とを構成する。
【0027】
図4に示すように、実際に発熱する部分となる発熱部102a、103aは、導電ペーストを蛇行状に形成した上で、パターン部102b、103bを含む全体について、低温で、あるいは、短時間、あるいは、低温かつ短時間で、1回目の焼成を行う。これにより、発熱部102a、103a及びパターン部102b、103bからなる全体を高抵抗にすることができる。その後、図4に示したように、蛇行状に形成した発熱部102a、103a部分を遮熱し、高温で、あるいは、長時間、あるいは、高温かつ長時間で、遮熱した発熱部102a、103a及びパターン部102b、103bからなる全体について2回目の焼成を行う。
【0028】
これにより、パターン部102b、103bは低抵抗化した上で、発熱部102a、103aは遮熱しているので高抵抗のままとすることができる。すなわち、高抵抗化されて効率よく発熱する発熱部102a、103aと、低抵抗化されて発熱が抑制されたパターン部(配線部分)102b、103bとからなる発熱素子を構成することができる。このようにして構成された第1触感提供部102の発熱部102aが、図3(C)に示した四隅に位置する4つの四角形の部分であり、第2触感提供部103の発熱部103aが、図3(C)に示した中央の円形部分である。
【0029】
なお、第1触感提供部102は、4つの発熱部102aが直列に接続されて構成されたものでもよいし、1つの発熱部102aを備えた1つの第1触感提供部102を4つ並列に接続して構成されたものでもよい。また、第2触感提供部103は、発熱部103aが、円形状に形成されたものである。
【0030】
<緊急通報装置200の構成例>
緊急通報装置200は、図1に示したように、制御部201と、検出回路202と、通報処理部203と、第1駆動回路204と、第2駆動回路205と、駆動制御部206と備える。制御部201は、図示しないが、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、不揮発性メモリなどを備えて構成されたマイクロプロセッサであり、緊急通報装置200の各部を制御する機能を実現する。
【0031】
検出回路202は、上述もしたように、通報ボタンユニット100の押圧部101からの配線(+)と配線(-)とが接続され、押圧部101から印加される電圧の変化に応じて、押圧部101が押下(押圧)された場合にこれを検出し、制御部201に通知する。この実施の形態の検出回路202は、単に押下されたか否かを検出するものではなく、まず、押圧部101に衝撃が加わったことを検知した場合に、押圧部101から供給される出力信号を一定時間監視し、人の脈波に応じた成分を含むか否かを判別する。
【0032】
検出回路202は、人の脈波に応じた成分を含むと判別できた場合に、使用者(操作者)によって押下操作が行われたと判別し、制御部201に通知する。このように、人の脈波に応じた成分を含むか否かを判別するのは、確実に人によって押下操作された場合に通報を行うようにしている。従って、人による押下操作ではなく、物が押圧部101上に落下するといった単に押圧部が衝撃を受けた場合に通報を行ってしまう誤動作を防止できる。制御部201は、検出回路202を通じて押圧部101が、使用者(人)によって押下操作されたことが検出された場合には、通報処理部203を制御して通報処理を行うようにする。
【0033】
通報処理部203は、検出回路202を通じて通報ボタンユニット100の押圧部101が、人によって押下操作されたことが検出された場合に、制御部201の制御の下、緊急通報受理機関3に対して、通報事象が発生したことを通報する通報処理を行う。通報処理部203は、制御部201の不揮発性メモリに記憶保持されている緊急通報受理機関3の電話番号を用いて、緊急通報受理機関3に電話を掛け、緊急通報受理機関3が応答したら通報を行う。この場合の通報は、例えば、当該警備対象施設の名称等の識別情報を含む通報メッセージを送信するものである。
【0034】
第1駆動回路204には、通報ボタンユニット100の第1触感提供部102からの配線(+)と配線(-)とが接続され、第1触感提供部102に対して駆動電源を供給する機能を実現する。一方、第2駆動回路205には、通報ボタンユニット100の第2触感提供部103からの配線(+)と配線(-)とが接続され、第2触感提供部103に対して駆動電源を供給する機能を実現する。駆動制御部206は、制御部201の制御の下、第1駆動回路204と第2駆動回路205とを制御し、第1触感提供部102と第2触感提供部103とのそれぞれごとに、駆動電源を供給する場合と、供給しない場合とを切り替える。
【0035】
この実施の形態の緊急通報装置200では、人による押下操作が検知された場合には、制御部201の制御の下、駆動制御部206は、第1駆動回路204を制御し、通報ボタンユニット100の第1触感提供部102に駆動電源を供給する。これにより、第1触感提供部102は、発熱状態となり、押圧部101に対する押下操作が緊急通報装置200において認識されたことを使用者(操作者)に通知できる。また、使用者による押圧部101に対する押下操作が終了すると、押圧部101からの電圧は、検出回路202に印加されなくなるので、検出回路202は制御部201に対して押下操作されていることを示す通知を終了させる。これにより、検出回路202から制御部201に対して押下操作が終了したことが通知される。
【0036】
この場合、制御部201の制御の下、駆動制御部206は、第2駆動回路205を制御し、通報ボタンユニット100の第2触感提供部103に駆動電源を供給する。これにより、第2触感提供部103は、発熱状態となり、押圧部101への押下操作の終了が緊急通報装置200において認識されたことを使用者(操作者)に通知できる。このようにして、この実施の形態の緊急通報システムでは、通報ボタンユニット100の押圧部101に対する使用者(操作者)による押下操作の開始と押下操作の終了とを、第1触感提供部102、第2触感提供部103の発熱によって知らせることができる。
【0037】
[緊急通報システムで行われる処理のまとめ(第1の例)]
図5は、実施の形態の緊急通報システム1で行われる処理の第1の例を説明するためのフローチャートである。図5のフローチャートに示す処理は、緊急通報装置200の制御部201の制御の下に実行される処理である。緊急通報装置200に電源が投入されると、必要な各部に電源が供給され、緊急通報システム1は、押圧部101に対する押下操作を待つ状態(押下待機状態)になる(ステップS101)。制御部201は、検出回路202からの検出出力を監視し、通報ボタンユニット100の押圧部101に衝撃が加わったことを検知したか否か判別する(ステップS102)。押圧部101に衝撃が加わったことを検知していないと判別した場合には、ステップS101からの処理を繰り返す。
【0038】
ステップS102の判別処理において、制御部201が、押圧部101に衝撃が加わったことを検知したと判別したとする。この場合、制御部201は、更に検出回路202を通じて、押圧部101から供給される電圧に脈波成分が含まれているか否か、すなわち脈波を検知したか否かを判別する(ステップS103)。ステップS103の判別処理において、脈波を検知していないと判別したときには、人による押下操作ではないので、ステップS101からの処理を繰り返すようにする。ステップS103の判別処理において、脈波を検知したと判別したときには、制御部201は、人による押下操作が行われたと認識する(ステップS104)。この場合、制御部201は、通報処理部203を制御して、緊急通報受理機関3に対する通報処理を実行する(ステップS105)。
【0039】
この後、制御部201は、駆動制御部206を制御して、通報ボタンユニット100の第1触感提供部102と第2触感提供部103とを通じて、操作状態を通知する処理を行う。図6は、実施の形態の第1触感提供部102と第2触感提供部103とによる発熱パターンの例を説明するための図である。ステップS105の処理の後、まず、制御部201は、駆動制御部206を制御し、第1駆動回路204を通じて、通報ボタンユニット100の第1触感提供部102に駆動電力を提供し、第1触感提供部102を発熱状態にする(ステップS106)。
【0040】
第1触感提供部102は、図3を用いて説明したように、通報ボタンユニット100の四隅に設けられたものである。図6(A)に示すように、通報ボタンユニット100の四隅の第1触感提供部102が発熱した状態(発熱パターンA)になる。これにより、使用者(操作者)は自分の指先を通じて、通報ボタンユニット100の四隅の温度が高くなったことを感じることができ、緊急通報装置200が押圧部101に対する押下操作を認識し、押下完了待機状態になったことを使用者(操作者)に通知できる。
【0041】
この後、制御部201は、検出回路202から検出出力に基づいて、通報ボタンユニット100の押圧部101への押下操作が終了したか否かを判別する(ステップS107)。ステップS107の判別処理において、押下操作は終了していないと判別したときには、ステップS106からの処理を繰り返し、第1触感提供部102の発熱を継続させる。ステップS107の判別処理において、押下操作が終了したと判別したとする。この場合、制御部201は、駆動制御部206を制御し、第2駆動回路205を通じて、通報ボタンユニット100の第2触感提供部103に駆動電力を提供し、第2触感提供部103を発熱状態にする(ステップS108)。この場合、押圧部101への強い押下操作は終了しているが、通報ボタンユニット100への使用者の指の接触は継続しているものとする。
【0042】
第2触感提供部103は、図3を用いて説明したように、通報ボタンユニット100の中央部分に設けられた円形状のものである。従って、図6(B)に示すように、通報ボタンユニット100の四隅に加えて、中央部分の円形状の第2触感提供部103が発熱した状態(発熱パターンB)になる。使用者(操作者)は、自分の指先を通じて、通報ボタンユニット100の中央部分の温度が高くなったことを感じることができる。これにより、緊急通報装置200が、押圧部101に対する押下操作が完了したことを認識し、押下完了状態になったことを使用者(操作者)に通知できる。
【0043】
この後、制御部201は、駆動制御部206を制御し、第1触感提供部102、第2触感提供部103への駆動電力の供給を停止させるなどの一連の終了処理を行って(ステップS109)、この図5に示す処理を終了する。このように、この実施の形態の緊急通報システム1では、通報ボタンユニット100の押圧部101への押下操作の状態を、第1触感提供部102及び第2触感提供部103の発熱状態により、使用者(操作者)に対して通知できる。この実施の形態では、発熱素子による温度変化により、使用者に対して操作の状況を知らせることができるので、周囲の者に気付かれることもない。
【0044】
[緊急通報システムで行われる処理のまとめ(第2の例)]
図7は、実施の形態の緊急通報システム1で行われる処理の第2の例を説明するためのフローチャートである。図7のフローチャートに示す処理もまた、緊急通報装置200の制御部201の制御の下に実行される処理である。図7のフローチャートの処理において、ステップS101~ステップS103までの処理は、図5に示したステップS101~ステップS103までの処理と同様の処理である。
【0045】
従って、緊急通報装置200に電源が投入されると、緊急通報システム1は、押下待機状態となる(ステップS101)。この後、制御部201は、検出回路202からの検出出力を監視し、押圧部101に衝撃が加わったことを検知したか否か判別し(ステップS102)、検知していないと判別した場合には、ステップS101からの処理を繰り返す。ステップS102の判別処理において、押圧部101に衝撃が加わったことを検知したと判別した場合には、制御部201は、更に検出回路202を通じて、押圧部101から供給される電圧に脈波成分が含まれているか否かを判別する(ステップS103)。ステップS103の判別処理において、脈波を検知していないと判別したときには、ステップS101からの処理を繰り返すようにする。
【0046】
ステップS103の判別処理において、脈波を検知したと判別したときには、制御部201は、人による押下操作であることが判別できるので、第1触感提供部102を発熱させ、押下操作を受け付けたことを通知する(ステップS201)。すなわち、ステップS201では、制御部201は、駆動制御部206を制御し、第1駆動回路204を通じて、通報ボタンユニット100の第1触感提供部102に駆動電力を提供し、第1触感提供部102を発熱状態にする。この状態は、図6(A)に示した発熱パターンAである。
【0047】
この後、制御部201は、通報処理部203を制御して、緊急通報受理機関3に対する通報処理を実行する(ステップS202)。なお、制御部201は、通報処理を行った場合には、図示しない時計回路を用いて、通報処理の開始からの時間を計測する。後述するタイムアウトの判断に用いるためである。この後、通信回線が接続されて適切に通報処理が行われたか否かを判別する(ステップS203)。
【0048】
ステップS203の判別処理において、通信回線が接続されて適切に通報処理が行われたと判別したときには、制御部201は、第2触感提供部102を発熱させ、適切に通報処理が行われたことを通知する(ステップS204)。すなわち、ステップS204では、制御部201は、駆動制御部206を制御し、第2駆動回路205を通じて、通報ボタンユニット100の第2触感提供部103に駆動電力を提供し、第2触感提供部102を発熱状態にする。この状態は、図6(B)に示した発熱パターンBである。
【0049】
ステップS204の処理の後、所定定時間、第1触感提供部102と第2触感提供部103の発熱状態を維持するようにする(ステップS205)。確実に状態を通知できるようにするためである。当該所定時間経過後においては、制御部201は、駆動制御部206を制御し、第1触感提供部102、第2触感提供部103への駆動電力の供給を停止させるなどの一連の終了処理を行って(ステップS109)、この図5に示す処理を終了する。
【0050】
また、ステップS203の判別処理において、通信回線が接続されて適切に通報処理が行われていないと判別したときには、制御部201は、通報処理の開始からの時間が一定時間以上経過し、タイムアウトになったか否かを判別する(ステップS209)。ステップS209の判別処理において、タイムアウトになっていないと判別したときには、ステップS203からの処理を繰り返すようにし、通報処理を継続(続行)させる。ステップS209の判別処理において、タイムアウトになったと判別したときには、通報処理の開始からの時間の計測をクリアするなどの復旧処理を行って、ステップS202からの処理を繰り返し、通報処理を確実に行うようにする。
【0051】
この図7に示したフローチャートの処理の場合には、押圧部101への押下操作が適切に受け付けられたこと、また、通報処理が適切に行われたことを、第1触感提供部102及び第2触感提供部103の発熱状態により、使用者(操作者)に対して通知できる。この場合にも、発熱素子による温度変化により、使用者に対して押下操作の受付状態及び通報処理の実行状態を知らせることができるので、周囲の者に気付かれることもない。
【0052】
[実施の形態の効果]
この実施の形態の緊急通報システムは、PVDFを圧電体として用いた圧電(ピエゾ)素子により押圧部101を構成し、導電ペースを用いて発熱素子である第1触感提供部102、第2触感提供部103を構成している。このため、極めて薄型(シート型)の通報ボタンユニット100が実現できる。また、基本的に、いわゆる印刷技術のみによって、素子(センサ、抵抗、コンデンサ)及び配線などの回路形成が可能であるため、低コストで製造が可能である。また、通報ボタンユニット100は、シート型であるため、種々の場所に貼付するようにして設けることができる。特に、曲面部分への貼付も可能であるなど、設置場所を選ばない。
【0053】
また、発熱素子である第1触感提供部102、第2触感提供部103により、押圧部101への押下操作が認識されたこと、また、押圧部101への押下操作の終了が認識されたことを周囲に知られることなく使用者(操作者)が認識できる。また、発熱素子である第1触感提供部102、第2触感提供部103により、押圧部101への押下操作が認識されたこと、また、緊急通報受理機関3に対して適切に通報が行われたことを、周囲に知られることなく使用者(操作者)が認識できる。
【0054】
従って、使用者(操作者)が、視覚や聴覚に障害のある者であっても、押圧部101への押下操作の状態や緊急通報システムの動作の状態を認識できる。これにより、極めて薄型で、押下操作が可能で、押圧部への押下操作の状態や緊急通報システムの動作の状態を周囲に知られることなく使用者が認識可能な通報ボタン(非常ボタン)を備えた緊急通報システムが実現できる。
【0055】
[変形例]
上述した実施の形態では、押圧部101が押下操作されたら第1触感提供部102を動作させ、当該押圧操作が終了したら第1触感提供部102に加えて、第2触感提供部103を動作させるようにした。しかし、これに限るものではない。例えば、押圧部101が押下操作されたら第2触感提供部103を動作させ、当該押圧操作が終了したら第2触感提供部103に加えて、第1触感提供部102を動作させるようにしてもよい。
【0056】
また、押圧部101が押下操作されたら第1触感提供部102を動作させ、当該押圧操作が終了したら第1触感提供部102への駆動電力を停止し、第2触感提供部103のみを動作させるようにしてもよい。逆に、押圧部101が押下操作されたら第2触感提供部103を動作させ、当該押圧操作が終了したら第2触感提供部103への駆動電力を停止し、第1触感提供部102のみを動作させるようにしてもよい。
【0057】
<第1触感提供部102、第2触感提供部103の他の例>
上述した実施の形態において、第1触感提供部102と第2触感提供部103とは、例えば導電ペーストにより構成された発熱素子であり、温かさ、あるいは、熱さを感じるか否かによって、押圧部101への押下操作の状態を通知するようにした。しかし、これに限るものではない。第1触感提供部102、第2触感提供部103は、電気刺激を与えるものや、発熱状態と冷却状態とを与えるものなど、使用者に対して使用者の指先などを通じて認識できる所定の触感(触れた場合に得られる感触)を与えることができるものであればよい。
【0058】
<電気刺激を与えるもの>
第1触感提供部102、第2触感提供部103を、電気刺激を与えるもの(電気刺激付与素子)として実現するには、例えば、所定の間隔を空けて両極の電極(+電極と-電極)を設けることが考えられる。具体的には、例えば、通報ボタンユニット100の四隅のそれぞれに、間隔を空けて+電極と-電極を露呈するように設け、これらを第1触感提供部102とし、これらの電極に第1駆動回路204から電圧を印加できるようにしておく。同様に、押圧部101上に、間隔を空けて+電極と-電極を露呈するように設け、これらを第2触感提供部103とし、これらの電極に第2駆動回路205から電圧を印加できるようにしておく。これにより、+電極と-電極とに、第1駆動回路204あるいは第2駆動回路205から所定の電圧が印加されている場合に、両電極を使用者の指先などが同時に触れると、ピリピリとした電気刺激を与えることができる。
【0059】
従って、押圧部101が押下操作されたら第1触感提供部102に電圧を印加して電気刺激を与えるようにし、当該押圧操作が終了したら第1触感提供部102に加え、第2触感提供部103に電圧を印加して電気刺激を与えるようにする。これによって、押下操作が受け付けられた場合と、当該押下操作が終了した場合とを、使用者(操作者)に通知できる。この電気刺激を与える場合であっても、押圧部101が押下操作されたら第2触感提供部103を機能させ、当該押下操作が終了したら第2触感提供部103に加えて第1触感提供部102を機能させるようにしてもよい。また、押圧部101が押下操作された場合と、当該押下操作が終了した場合とで、第1触感提供部102と第2触感提供部103の内、異なる触感提供部のみを機能させるようにしてもよい。
【0060】
なお、この例の場合、両極の電極を設けるだけなので、通報ボタンユニット100の構成が複雑になったり、厚みが増したりすることもない。しかし、過大な電気刺激を与えることが無く、適度な電気刺激となるように、両電極に印加する電圧は低レベルのものとなる。また、電気刺激の場合、第1触感提供部102と第2触感提供部103とで与える刺激のパターンを変えることも可能である。
【0061】
<発熱状態と冷却状態とを与えるもの>
第1触感提供部102、第2触感提供部103を、ペルティエ素子(ペルチェ素子)を用いることにより、発熱状態と冷却状態とを与えるものとすることができる。ペルティエ素子は、ペルティエ効果を用いた板状の半導体熱電素子の一種であり、CPUの冷却装置としても用いられるものである。ペルティエ素子は、所定方向に直流電流を流すと、素子の上面で吸熱(冷却)し、下面で発熱(加熱)する。また、直流電流の向きを変えると冷却面と加熱面が入れ替わる。このような特性を生かし、上述した実施の形態の第1触感提供部102、第2触感提供部103として用いることができる。なお、ペルティエ素子も、例えば、0.1mm程度に薄型化できる。
【0062】
このペルティエ素子を用いる場合には、押圧部101が押下操作されたら第1触感提供部102に所定方向の直流電流を供給することにより冷却して第1触感提供部102を通じて冷たさを与える。当該押圧操作が終了したら第1触感提供部102に加え、第2触感提供部103に所定方向の直流電流を供給して冷却し、第2触感提供部を通じても冷たさを与えるようにする。これによって、押下操作が受け付けられた場合と、当該押下操作が終了した場合とを、使用者(操作者)に通知できる。
【0063】
このように、第1触感提供部102と第2触感提供部103とをペルティエ素子で構成し、冷感を与えるものとする。この場合であっても、押圧部101が押下操作されたら第2触感提供部103を機能させ、当該押下操作が終了したら第2触感提供部103に加えて第1触感提供部102を機能させるようにしてもよい。また、押圧部101が押下操作された場合と、当該押下操作が終了した場合とで、第1触感提供部102と第2触感提供部103の内、異なる触感提供部のみを機能させるようにしてもよい。
【0064】
更に、第1触感提供部102と第2触感提供部103とをペルティエ素子で構成する場合には、温感と冷感とを組み合わせて用いることもできる。例えば、押圧部101が押下操作されたら第1触感提供部102に所定方向の直流電流を供給することにより冷却して第1触感提供部102を通じて冷たさを与える。当該押圧操作が終了したら第2触感提供部103に所定方向(第1の方向)とは逆方向(第2の方向)の直流電流を供給して発熱させ、第2触感提供部103を通じては温かさを与えるようにする。これによって、押下操作が受け付けられた場合と、当該押下操作が終了した場合とを、使用者(操作者)に通知できる。
【0065】
もちろん、これとは逆に、押圧部101が押下操作されたら第1触感提供部102に所定方向(第1の方向)とは逆方向(第2の方向)の直流電流を供給することにより発熱させ、第1触感提供部102を通じて温かさを与える。当該押圧操作が終了したら第2触感提供部103に所定方向(第1の方向)の直流電流を供給して冷却させ、第2触感提供部103を通じては冷たさを与えるようにする。これによって、押下操作が受け付けられた場合と、当該押下操作が終了した場合とを、使用者(操作者)に通知できる。このように、第1触感提供部102と第2触感提供部103とで、発熱と冷却とを使い分けて、操作状態を使用者に通知するようにしてもよい。
【0066】
<温度触感と電気刺激の併用>
また、温感と冷感とを使い分けたように、温感と電気刺激、冷感と電気刺激とを使い分けるようにしてもよい。例えば、第1触感提供部102をペルティエ素子で構成し、第2触感提供部103を+電極と-電極で構成する。これにより、押圧部101が押下操作されたら第1触感提供部102に所定方向の直流電流を供給することにより冷却して第1触感提供部102を通じて冷たさを与える。当該押圧操作が終了したら第2触感提供部103に電圧を印加し、電気刺激を与えるようにする。これによって、押下操作が受け付けられた場合と、当該押下操作が終了した場合とを、使用者(操作者)に通知できる。
【0067】
これとは逆に、第1触感提供部102を+電極と-電極で構成し、第2触感提供部103をペルティエ素子で構成する。この場合、押圧部101が押下操作されたら第1触感提供部102に電圧を印加して電気刺激を与えるようにする。当該押圧操作が終了したら第2触感提供部103に所定方向(第1の方向)の直流電流を供給して冷却させ、第2触感提供部103を通じては冷たさを与えるようにする。これによって、押下操作が受け付けられた場合と、当該押下操作が終了した場合とを、使用者(操作者)に通知できる。
【0068】
なお、ペルティエ素子に供給する直流電流の方向を逆にすれば、冷感を温感に変更することができる。このように、温感、冷感、電気刺激のいずれかを用いて、あるいは、これら3つの内から適宜の2つを用いて提供可能にすることによって、押圧部101に対する押下操作が受け付けられた場合と、当該押下操作が終了したことが認識された場合を通知できる。
【0069】
<その他の変形例>
なお、上述した実施の形態の緊急通報システム1では、図1に示したように、1つの通報ボタンユニット100が、緊急通報装置200に接続されているものとして説明したが、これに限るものではない。緊急通報装置200に対しては、複数の通報ボタンユニット100を接続し、必要な場所に配置することができる。すなわち、通報ボタンユニット100は、デスク上だけでなく、デスクの引き出しの前面部分、デスクの引き出しの中、壁面など、種々の場所に貼付するようにして設けることができる。通報ボタンユニット100は、シート型であるため、曲面部分への貼付も可能である。
【0070】
また、通報ボタンユニット100の形状、大きさについても種々の形状、大きさとすることができる。従って、押圧部101、第1触感提供部102、第2触感提供部103の形状、大きさ、配置位置は、種々の態様とすることができる。要は、押圧部101を適切に押下操作でき、第1触感提供部102と第2触感提供部103とのそれぞれが提供する触感を区別して感じることができるようにすればよい。
【0071】
また、上述した実施の形態では、発熱素子として、導電ペーストを用いるようにしたが、これに限るものではない。発熱素子として、上述したペルティエ素子を用いてもよい。要は、駆動電力の供給によって、適度な温かさや熱さを感じさせることができ、駆動電力の供給停止によって迅速に加熱状態を終息させて、温度を低下させることができる種々のものを用いることができる。
【0072】
また、電気刺激を与えるもの(電気刺激付与素子)も、上述したものに限らず、過度の電気刺激を与えることなく、適度な電気刺激を与えることが可能な方式のものを用いることができる。また、ペルティエ素子以外にも、冷却状態を形成することができ、薄型に構成することができる素子があれば、これを用いてもよい。また、また、それぞれが別々の冷却素子と発熱素子とを用いるようにすることも可能である。この場合には、冷却素子と発熱素子とを別々に制御することになる。
【0073】
[その他]
上述した実施の形態の説明からも分かるように、請求項の通報ボタンユニットの押圧部、第1触感提供部、第2触感提供部の機能は、実施の形態の通報ボタンユニット100の押圧部101、第1触感提供部102、第2触感提供部103が実現している。また、請求項の緊急通報装置の検出手段の機能は、実施の形態の緊急通報装置200の主に検出回路202が実現し、請求項の緊急通報装置の通報処理手段の機能は、実施の形態の緊急通報装置200の主に通報処理部203が実現している。また、請求項の緊急通報装置の第1駆動手段と、第2駆動手段の機能は、実施の形態の緊急通報装置200の主に第1駆動回路204、第2駆動回路205のそれぞれが、駆動制御部206と協働して実現している。
【0074】
また、図5のフローチャートに示した処理を実行する方法が、この発明による操作状態通知方法の一実施の形態が適用されたものである。また、図1に示した緊急通報装置の検出回路202、通報処理部203、第1駆動回路204、第2駆動回路205、駆動制御部206の各機能は、制御部201で実行されるプログラムにより、制御部201の機能として実現することができる。すなわち、図5のフローチャートに示した処理を実行するプログラムが、この発明による操作状態通知プログラムの一実施の形態が適用されたものである。
【0075】
また、第1触感提供部102と第2触感提供部103とを発熱素子で構成した場合には、第1触感提供部102上と第2触感提供部103上とに熱で色が変わる塗料を塗布しておくことにより、色の変換によって操作状態を通知することも可能である。この場合、目立たない場所に設けられた通報ボタンユニット100に対して適用する場合に好適である。
【符号の説明】
【0076】
1…緊急通報システム、100…通報ボタンユニット、101…押圧部、101D…下側電極、101P…圧電体、101U…上側電極、102…第1触感提供部、103…第2触感提供部、200…緊急通報装置、201…制御部、202…検出回路、203…通報処理部、204…第1駆動回路、205…第2駆動回路、206…駆動制御部、2…ネットワーク、3…緊急通報受理機関、4…デスク(机)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7