(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024059198
(43)【公開日】2024-05-01
(54)【発明の名称】シート
(51)【国際特許分類】
B60N 2/68 20060101AFI20240423BHJP
B60N 2/12 20060101ALI20240423BHJP
【FI】
B60N2/68
B60N2/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022166731
(22)【出願日】2022-10-18
(71)【出願人】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】光岡 尚樹
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 由希規
(72)【発明者】
【氏名】塚本 健一
(72)【発明者】
【氏名】大嶋 一輝
(72)【発明者】
【氏名】坂口 高志
【テーマコード(参考)】
3B087
【Fターム(参考)】
3B087BD15
3B087DB03
3B087DE03
(57)【要約】
【課題】各天板サイドと分割された天板メインの横揺れを適切に抑制することが可能なシートを提供すること。
【解決手段】着座者を弾性的に支持するクッション体20と、クッション体20をシート裏側から支持するクッションフレームと、を有するシートであって、クッション体20が、シート幅方向の中央部分を成す天板メイン21と、シート幅方向の両サイド部分を成す各天板サイド22と、に分割された3つの分割要素から成り、天板メイン21が、ポリウレタン発泡成形体から成るパッド本体A11と、パッド本体A11のシート裏側の両縁部であるパッド裏側両縁部に沿って設けられるパッド本体A11よりも硬質なビーズ発泡成形体から成るパッド補強部A12と、を含む天板メインパッド21Aを有する。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
着座者を弾性的に支持するクッション体と、該クッション体をシート裏側から支持するシートフレームと、を有するシートであって、
前記クッション体が、シート幅方向の中央部分を成す天板メインと、シート幅方向の両サイド部分を成す各天板サイドと、に分割された3つの分割要素から成り、
前記天板メインが、ポリウレタン発泡成形体から成るパッド本体と、該パッド本体のシート裏側の両縁部であるパッド裏側両縁部に沿って設けられる前記パッド本体よりも硬質なビーズ発泡成形体から成るパッド補強部と、を含む天板メインパッドを有するシート。
【請求項2】
請求項1に記載のシートであって、
前記天板メインパッドが、前記パッド本体のシート裏側の中央部分であるパッド裏側中央部に、前記パッド補強部が設けられない非補強部を有するシート。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のシートであって、
前記パッド補強部が、前記シートフレームの両サイドフレームの間に掛け渡される一対の補強フレームに跨ってシート表側から当接するように一対の前記補強フレームの間を連続的に延びるシート。
【請求項4】
請求項3に記載のシートであって、
前記パッド補強部が、前記パッド本体の前記パッド裏側両縁部に沿って延びる各側辺部と、各前記側辺部の間を繋ぐようにシート幅方向に延びる繋ぎ辺部と、を有し、
前記繋ぎ辺部が、一対の前記補強フレームのうちの一方に沿って該一方にシート表側から当接するように延びるシート。
【請求項5】
請求項1又は請求項2に記載のシートであって、
前記シートフレームが、シート前縁部の座面角度を調節可能なチルト機構を備えるシートクッションのフレームを成すクッションフレームとして構成され、
前記天板メインが、前記座面角度の調節により動かされる前記パッド本体のシート裏側の前部分であるパッド裏側前部に、前記天板メインパッドに被せられる天板メインカバーの端末の止着と前記チルト機構の可動部への固定とを担う、前記パッド補強部とは繋がらない支承部材を更に有するシート。
【請求項6】
請求項1又は請求項2に記載のシートであって、
前記パッド補強部を構成する前記ビーズ発泡成形体が、発泡ポリプロピレンを含むシート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートに関する。詳しくは、着座者を弾性的に支持するクッション体と、クッション体をシート裏側から支持するシートフレームと、を有するシートに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、車両用シートにおいて、シートパッドとシートカバーとから成るクッション体が、シート幅方向に3分割された構成が開示されている。具体的には、クッション体は、シート幅方向の中央部分を成す天板メインと、シート幅方向の両サイド部分を成す各天板サイドと、に3分割された構成とされる。天板メインと各天板サイドとは、それぞれ、個別にシートフレームに組み付けられて固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の構成では、天板メインが各天板サイドと切り離されているために、車両が横方向の加速度を受けた際に、天板メインが横揺れを生じやすいという問題がある。そこで、本発明は、各天板サイドと分割された天板メインの横揺れを適切に抑制することが可能なシートを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決する手段として、本発明のシートは、次の手段をとる。
【0006】
すなわち、本発明の第1の発明は、着座者を弾性的に支持するクッション体と、該クッション体をシート裏側から支持するシートフレームと、を有するシートであって、前記クッション体が、シート幅方向の中央部分を成す天板メインと、シート幅方向の両サイド部分を成す各天板サイドと、に分割された3つの分割要素から成り、前記天板メインが、ポリウレタン発泡成形体から成るパッド本体と、該パッド本体のシート裏側の両縁部であるパッド裏側両縁部に沿って設けられる前記パッド本体よりも硬質なビーズ発泡成形体から成るパッド補強部と、を含む天板メインパッドを有するシートである。
【0007】
第1の発明によれば、パッド補強部により、中央の分割された天板メインのパッド裏側両縁部の剛性が高められる。その結果、天板メインを横方向の加速度に対して横揺れさせにくくすることができる。
【0008】
本発明の第2の発明は、上記第1の発明において、前記天板メインパッドが、前記パッド本体のシート裏側の中央部であるパッド裏側中央部に、前記パッド補強部が設けられない非補強部を有するシートである。
【0009】
第2の発明によれば、非補強部により、天板メインのクッション性を損なうことなく、天板メインの横揺れを適切に抑制することが可能となる。
【0010】
本発明の第3の発明は、上記第1又は第2の発明において、前記パッド補強部が、前記シートフレームの両サイドフレームの間に掛け渡される一対の補強フレームに跨ってシート表側から当接するように一対の前記補強フレームの間を連続的に延びるシートである。
【0011】
第3の発明によれば、天板メインのパッド裏側両縁部の剛性をより一層適切に高めることができる。加えて、天板メインをシートフレームに対して横ズレさせにくくすることができる。その結果、天板メインの横揺れをより適切に抑制することができる。
【0012】
本発明の第4の発明は、上記第3の発明において、前記パッド補強部が、前記パッド本体の前記パッド裏側両縁部に沿って延びる各側辺部と、各前記側辺部の間を繋ぐようにシート幅方向に延びる繋ぎ辺部と、を有し、前記繋ぎ辺部が、一対の前記補強フレームのうちの一方に沿って該一方にシート表側から当接するように延びるシートである。
【0013】
第4の発明によれば、パッド補強部が、繋ぎ辺部により各側辺部の間が繋がれたひと続きの構成となる。その結果、天板メインのパッド裏側両縁部の剛性がより適切に高められ、天板メインの横揺れをより適切に抑制することが可能となる。
【0014】
本発明の第5の発明は、上記第1又は第2の発明において、前記シートフレームが、シート前縁部の座面角度を調節可能なチルト機構を備えるシートクッションのフレームを成すクッションフレームとして構成され、前記天板メインが、前記座面角度の調節により動かされる前記パッド本体のシート裏側の前部分であるパッド裏側前部に、前記天板メインパッドに被せられる天板メインカバーの端末の止着と前記チルト機構の可動部への固定とを担う、前記パッド補強部とは繋がらない支承部材を更に有するシートである。
【0015】
第5の発明によれば、シートクッションの天板メインに、チルト機構の動きを阻害しないようにパッド補強部を適切に設けることができる。また、パッド裏側前部に設けられる支承部材により、天板メインカバーの端末の止着と天板メインのチルト機構の可動部への固定とを適切に行うことができる。なお、支承部材のチルト機構の可動部への固定は、直接的な固定又は間接的な固定のいずれであっても良い。
【0016】
本発明の第6の発明は、上記第1又は第2の発明において、前記パッド補強部を構成する前記ビーズ発泡成形体が、発泡ポリプロピレンを含むシートである。
【0017】
第6の発明によれば、パッド補強部を発泡ポリプロピレンを含むビーズ発泡成形体で構成することで、天板メインを適切なクッション性及び横揺れ抑制効果を発揮できるように成形することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】第1の実施形態に係るシートの概略構成を表す斜視図である。
【
図4】クッションフレームからクッション体を外した分解斜視図である。
【
図11】一方の天板サイドをサイドフレームに組み付ける前の状態を表す斜視図である。
【
図12】一方の天板サイドをサイドフレームに組み付けた状態を表す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、本発明を実施するための形態について、図面を用いて説明する。
【0020】
《第1の実施形態》
(シート1の概略構成)
始めに、本発明の第1の実施形態に係るシート1の構成について、
図1~
図13を用いて説明する。なお、以下の説明において、前後上下左右等の各方向を示す場合には、各図中に示されたそれぞれの方向を指すものとする。また、「シート幅方向」等、各方向に「シート」を付して示す場合には、後述するシート1の向きを基準とした方向を指すものとする。また、以下の説明において、具体的な参照図を示さない場合、或いは参照図に該当する符号がない場合には、
図1~
図13のいずれかの図を適宜参照するものとする。
【0021】
図1に示すように、本実施形態に係るシート1は、自動車のフロア上に設置される1人掛け用の右側座席として構成される。シート1は、着座者の背凭れ部を成すシートバック2と、着座部を成すシートクッション3と、頭凭れ部を成すヘッドレスト4と、を備える。
【0022】
図2に示すように、シートクッション3は、そのシート前縁部の座面角度を調節可能なチルト機構Mを備える。
図3~
図4に示すように、シートクッション3は、その骨格を成す金属製のクッションフレーム10と、クッションフレーム10の上部に組み付けられて着座者の尻部や大腿部を弾性的に支持するクッション体20と、を有する。ここで、クッションフレーム10が、本発明の「シートフレーム」に相当する。
【0023】
クッション体20は、そのシート幅方向の中央部分を成す天板メイン21と、シート幅方向の両サイド部分を成す各天板サイド22と、に分割された3つの分割要素から成る。天板メイン21は、着座者の尻部や大腿部を下方から支持する部分とされる。天板メイン21は、そのシート表側の面となる上面が、やや前上がりとなるようにシート上方を向く略平坦な面形状とされる。
【0024】
各天板サイド22は、着座者の尻部や大腿部を下斜め外方から支持する部分とされる。各天板サイド22は、そのシート表側の面となる上面が、シート幅方向の外側に向けて斜めに立ち上がる面形状とされる。
【0025】
図4に示すように、天板メイン21と各天板サイド22とは、それぞれ、クッションフレーム10に対して、上方からのアクセスのみにより個別に組み付けられる構成とされる。それにより、天板メイン21と各天板サイド22とは、シート1をフロア上に設置した状態から取り外すことなく、クッションフレーム10に対して簡便に着脱することができる構成とされている。具体的には後に詳述する。
【0026】
(シートクッション3の構成)
以下、シートクッション3の各部の具体的な構成について説明する。
図4~
図5に示すように、クッションフレーム10は、シートクッション3の左右両側部に沿って前後方向に延びる左右一対のロアアーム11を有する。また、クッションフレーム10は、各ロアアーム11の前端部間に跨って面状に延びるチルトパネル12を有する。また、クッションフレーム10は、チルトパネル12の左右両側縁からシート後方に延びる左右一対のチルトアーム12Aを有する。
【0027】
各チルトアーム12Aは、それらの後端部が、対応する各ロアアーム11の中間部に、シート幅方向に延びるチルト回転軸12Bにより回転可能なように連結されている。各チルトアーム12Aは、クッションフレーム10に組み付けられた不図示の駆動ユニットにより、各チルト回転軸12Bを中心に上下移動可能に構成されている。
【0028】
各チルトアーム12Aの上下移動により、チルトパネル12が各ロアアーム11に対して角度を変えるように動かされる。それにより、シートクッション3のシート前縁部の座面角度が調節される。上記チルトパネル12を各ロアアーム11に対して角度調節可能とする機構により、上述したチルト機構Mが構成されている。ここで、チルトパネル12が、本発明の「可動部」に相当する。
【0029】
クッションフレーム10は、各ロアアーム11の前部間に架橋された丸パイプから成るフロントパイプ13と、各ロアアーム11の後部間に架橋された丸パイプから成るリヤパイプ14と、を更に有する。フロントパイプ13は、チルトパネル12より後ろ下側の位置で、各ロアアーム11の間に架橋されている。リヤパイプ14は、各ロアアーム11の後端部間に架橋されている。ここで、フロントパイプ13とリヤパイプ14とが、それぞれ、本発明の「補強フレーム」に相当し、リヤパイプ14が、本発明の「一方」に相当する。
【0030】
フロントパイプ13とリヤパイプ14との間には、クッション体20の天板メイン21を下方から弾性的に支持する支持バネ15が架橋されている。支持バネ15は、フロントパイプ13とリヤパイプ14との間に架橋されたシート幅方向に波打ち状に曲がる4本のワイヤバネにより構成されている。
【0031】
上述した各チルトアーム12Aは、対応する各ロアアーム11に対し、シート上方とシート幅方向の内側とからそれぞれ被さる横断面逆L字状のアーム形状とされている。各チルトアーム12Aの側板部分には、それらの下縁からシート幅方向の内側に向けて斜め下方に延び出す板状の締結ブラケットAbが溶接されている。
【0032】
各締結ブラケットAbは、フロントパイプ13より後ろ下側の位置に配置されている。詳しくは、各締結ブラケットAbは、支持バネ15よりも低い位置に配置されている。各締結ブラケットAbは、それらの内斜め上方を向く上面(重ね合わせ面)を、天板メイン21の設置スペースに向けて配設されている。これら締結ブラケットAbには、対応する各天板サイド22のシート裏側の天板サイド樹脂部材22Cから延びる締結部C24が、差込み式の締結構造Tを介して締結されるようになっている。
【0033】
各チルトアーム12Aの天板部分には、シート前後方向に延びるダルマ孔状の係合孔Ahが形成されている。これら係合孔Ahには、対応する各天板サイド22のシート裏側の天板サイド樹脂部材22Cに形成された係合爪C22が、シート後方へのスライドによる引掛けを伴って係合されるようになっている。
【0034】
(天板メイン21の構成)
次に、クッション体20を構成する天板メイン21と各天板サイド22の構成について説明する。先ず、天板メイン21の構成について説明する。
図4、
図6~
図8に示すように、天板メイン21は、クッション部となる天板メインパッド21Aと、天板メインパッド21Aを覆うファブリック製の天板メインカバー21Bと、天板メインパッド21Aのパッド裏側前部に設けられる天板メイン樹脂部材21Cと、を有する。ここで、天板メイン樹脂部材21Cが、本発明の「支承部材」に相当する。
【0035】
図6~
図8に示すように、天板メインパッド21Aは、ポリウレタン発泡成形体から成るパッド本体A11と、発泡ポリプロピレンのビーズ発泡成形体から成るパッド補強部A12と、が1つに組み合わされた構成から成る。具体的には、天板メインパッド21Aは、予め平面視U字状を成す形に成形されたパッド補強部A12が、パッド本体A11の発泡成形型にセットされて一体成形されることで、これらが一体に組み合わされた構成とされる。
【0036】
パッド補強部A12は、パッド本体A11のシート裏側の左右両縁部(パッド裏側両縁部)に沿ってシート前後方向に延びる側辺部Asと、各側辺部Asの後端部間を繋ぐようにシート幅方向に延びる繋ぎ辺部Acと、を有する、平面視U字状を成す形に形成されている。パッド補強部A12は、そのパッド本体A11よりも硬質とされた構成により、天板メイン21のクッション性を損なうことなく、天板メイン21の横揺れを適切に抑制する機能を果たすようになっている。
【0037】
具体的には、パッド補強部A12は、天板メイン21がクッションフレーム10(
図5参照)上にセットされることで、各側辺部Asがフロントパイプ13とリヤパイプ14とに跨ってシート上方から当接するようにセットされる。詳しくは、各側辺部Asは、フロントパイプ13とリヤパイプ14との間を連続的に延びるようにセットされる。
【0038】
そして、パッド補強部A12は、繋ぎ辺部Acがリヤパイプ14に沿ってリヤパイプ14にシート上方から当接するように延びるようにセットされる。それにより、パッド補強部A12は、天板メイン21に着座者の荷重が掛けられた際には、各側辺部Asがフロントパイプ13とリヤパイプ14とによりシート下方から両端支持される。また、パッド補強部A12は、繋ぎ部が、リヤパイプ14によってシート幅方向の広い範囲に亘ってシート下方から支持される。
【0039】
これらの支持により、パッド補強部A12は、車両が横方向の加速度を受けた際の天板メイン21の横方向の移動を適切に抑制できるようになっている。パッド補強部A12は、天板メインパッド21Aのチルトパネル12上に掛かる前部領域には設けられず、天板メインパッド21Aのシート前後方向の中間部から後部にかけて平面視U字状を成す形に設けられている。
【0040】
天板メインパッド21Aは、上記のようにパッド補強部A12が平面視U字状を成すことで、パッド本体A11のシート裏側の中央部(パッド裏側中央部)が、パッド補強部A12による補強のない非補強部NRとして形成されている。天板メインパッド21Aは、そのパッド裏側中央部に非補強部NRが形成され、かつ、パッド裏側両縁部及び後縁部にパッド補強部A12が設けられた構成により、クッション性を損なうことなく横揺れの抑制を適切に行える構成とされている。
【0041】
天板メインカバー21Bは、天板メインパッド21Aにシート上方から被せられて、その前後左右の各周縁部が、天板メインパッド21Aのシート裏側の面であるパッド裏面に引き込まれて止着されている。具体的には、天板メインカバー21Bは、その天板メインパッド21Aのパッド補強部A12が設けられるシート前後方向の中間部から後部にかけては、パッド裏面に引き込まれた左右の端末同士が互いに掛け合わされて止着されている。また、天板メインカバー21Bのパッド裏面に引き込まれた後縁の端末は、不図示の面ファスナにより天板メインパッド21Aのパッド裏面に結合されている。
【0042】
図6に示すように、天板メインカバー21Bは、その天板メインパッド21Aの前部においては、パッド裏面に引き込まれた左右及び前側の端末が、パッド裏面に設けられる平面視U字状の天板メイン樹脂部材21Cに引掛けられて止着されている。上記引掛けにより、天板メインカバー21Bが、天板メインパッド21Aの外表面全体に張設される。また、天板メイン樹脂部材21Cが、天板メインカバー21Bの各端末の引掛けを通じて、天板メインパッド21Aのパッド裏面に押し当てられた状態に固定される。
【0043】
天板メイン樹脂部材21Cは、平面視U字状を成す形に成形された射出成形品から成る。天板メイン樹脂部材21Cは、天板メインパッド21Aのパッド補強部A12が設けられた領域よりも前側となるパッド裏側前部に設けられている。具体的には、天板メイン樹脂部材21Cは、天板メインパッド21Aのパッド裏側前部の左右両縁部及び前縁部に沿って延びる平面視U字状の形に設けられている。
【0044】
天板メイン樹脂部材21Cの平面視U字状に延びる各辺部には、天板メインカバー21Bのパッド裏面に引き込まれた先の各端末を止着するためのカバー掛爪C11が形成されている。また、天板メイン樹脂部材21Cの平面視U字の前辺部には、その左右の両縁部に、シート下方に突出する弾性爪から成る嵌合爪部C12が装着されている。
【0045】
図8~
図9に示すように、各嵌合爪部C12は、天板メイン21がクッションフレーム10上にシート上方からセットされることで、チルトパネル12に一体に組み付く各天板サイド22の天板サイド樹脂部材22Cの前端内側部に形成された被嵌合部C25にシート上方から押し込まれるようにスナップフィット嵌合される。このスナップフィット嵌合により、天板メイン21が、各天板サイド22を介して、クッションフレーム10に対して前縁部がシート上方に外れないように嵌合される。
【0046】
嵌合爪部C12は、上記スナップフィット嵌合された状態から、作業者が天板メイン21の前端をシート下方から引き上げるように力を掛けることで、各天板サイド22の被嵌合部C25との嵌合状態から簡便に外される構成となっている。
【0047】
図8に示すように、天板メイン21は、クッションフレーム10に対して次のようにシート上方から組み付けられる。先ず、天板メイン21の後部をシートバック2の下側に潜り込ませるようにシート前方から差し込んでリヤパイプ14上にセットする。次に、この潜り込ませた後部を支点に、天板メイン21の前部をチルトパネル12上に落とし込む。
【0048】
それにより、天板メイン樹脂部材21Cの前板部の両縁部に形成された各嵌合爪部C12が、各天板サイド22の前端内側部の被嵌合部C25にスナップフィット嵌合される(
図9参照)。このように、天板メイン21は、クッションフレーム10に対して、シート上方からの当接と前端の各嵌合爪部C12の嵌合との2つの状態のみにより着脱可能に組み付けられている。
【0049】
(各天板サイド22の構成)
次に、
図4、
図6及び
図10を参照して、各天板サイド22の構成について説明する。各天板サイド22は、それぞれ、クッション部となる天板サイドパッド22Aと、天板サイドパッド22Aを覆うファブリック製の天板サイドカバー22Bと、天板サイドパッド22Aのパッド裏面に設けられる天板サイド樹脂部材22Cと、を有する。各天板サイド22は、互いに同一の基本構造を備える左右対称な構成とされる。
【0050】
図10に示すように、天板サイドパッド22Aは、ポリウレタン発泡成形体から成る。天板サイドパッド22Aは、そのシート表側の面であるパッド表面が、シート幅方向の内側から外側に向かってシート上方に斜めに膨らむように立ち上がる土手状の張出しを備えた形に形成されている。天板サイドパッド22Aは、そのパッド裏面が、上記土手状の張出しに沿って凹むように刳り貫かれた凹湾曲面形状に形成されている。
【0051】
天板サイドカバー22Bは、天板サイドパッド22Aにシート上方から被せられて、その前後左右の各周縁部が、天板サイドパッド22Aのパッド裏面に引き込まれて止着されている。具体的には、天板サイドカバー22Bは、そのパッド裏面に引き込まれた左右及び前後の端末が、パッド裏面に沿って設けられる曲板状の天板サイド樹脂部材22Cに引掛けられて止着されている。
【0052】
上記引掛けにより、天板サイドカバー22Bが、天板サイドパッド22Aの外表面全体に張設される。また、天板サイド樹脂部材22Cが、天板サイドカバー22Bの各端末の引掛けを通じて、天板サイドパッド22Aのパッド裏面に押し当てられた状態に固定される。
【0053】
図6及び
図10に示すように、天板サイド樹脂部材22Cは、天板サイドパッド22Aのパッド裏面の凹湾曲面に合致する形に成形された射出成形品から成る。天板サイド樹脂部材22Cは、その天板サイドパッド22Aの土手状の張り出し部分をパッド裏側から張り出しに沿って斜めに支える領域がサイドサポート部C26として形成されている。このサイドサポート部C26により、天板サイドパッド22Aの土手状の張出しがパッド裏側から面状に支えられて、天板サイドパッド22Aによる着座者の身体のサイドサポートを適切に行えるようになっている。
【0054】
天板サイド樹脂部材22Cの周縁部には、天板サイドカバー22Bのパッド裏面に引き込まれた先の各端末を止着するためのカバー掛爪C21が形成されている。また、
図6に示すように、天板サイド樹脂部材22Cの凹湾曲の上側面には、フック状に突出する係合爪C22が形成されている。係合爪C22は、天板サイド22をクッションフレーム10(
図5参照)上にシート上方から組み付ける際に、チルトアーム12Aの対応する天板部分に形成されたダルマ孔状の係合孔Ahにシート上方から差し込まれる。
【0055】
そして、係合爪C22は、上記差し込み後に天板サイド22がクッションフレーム10に対してシート後方にスライドされることで、係合孔Ahにシート前方から引掛けられる。この引掛けにより、天板サイド22が、チルトアーム12Aに対して、シート上方に抜けないように固定される。
【0056】
また、
図6に示すように、天板サイド樹脂部材22Cの凹湾曲の上側面には、断面L字状に突出するガイド部C23が形成されている。ガイド部C23は、天板サイド22をクッションフレーム10(
図5参照)上にシート上方から組み付けることで、チルトアーム12Aの天板部分の上面と外側縁とに当接する。それにより、ガイド部C23は、天板サイド22のクッションフレーム10に対するシート幅方向の組み付け位置をチルトアーム12Aとの当接により規制する。
【0057】
また、
図6に示すように、天板サイド樹脂部材22Cのシート前後方向の中間部には、そのシート幅方向の内側の縁部からシート幅方向の内側に向けて斜め下方に延び出す板状の締結部C24が形成されている。
図11~
図13に示すように、締結部C24は、天板サイド22をクッションフレーム10に組み付けることで、各チルトアーム12Aから内斜め下方に延び出す締結ブラケットAbの上面(斜め上方を向く重ね合わせ面)に重ね合わされるようにセットされる。
【0058】
そして、
図13に示すように、上記セットした後、差込み式の締結構造TであるボルトT1を締結工具D(インパクト)を用いて締結部C24と締結ブラケットAbとに差し込んで締結する。それにより、締結部C24が、締結ブラケットAbの上面に重ね合わせ状に締結される。
【0059】
具体的には、差込み式の締結構造Tは、上記ボルトT1と、締結ブラケットAbの下面(上面の裏側の面)に溶着されたウェルドナットT2と、で構成される。上記ボルトT1は、その頭部T1hが締結工具Dにセットされる工具係合部として、締結工具Dにより締結部C24とこれに重なる締結ブラケットAbとに差し込まれてウェルドナットT2に締結される。
【0060】
その際、締結工具Dを用いたボルトT1の締結作業は、締結ブラケットAb及びこれに重なる締結部C24が、天板メイン21の設置スペースである開口部SPに上面を向けていることから、この開口部SPをワークスペースとして、締結箇所へのアクセスを容易に行えるようになっている。より詳しくは、締結ブラケットAb及びこれに重なる締結部C24が、開口部SPに向かって上面を斜めに向けていることから、締結工具D全体を開口部SP内に落とし込むことなく、先端のみを締結箇所に斜めに差し込んで締結作業を行うことができる。
【0061】
したがって、クッションフレーム10に上記締結箇所の横に並んで支持バネ15が組み付けられた構成であっても、締結工具Dを支持バネ15に干渉させることなく、上記の締結作業を行うことができる。上記締結により、ボルトT1は、その頭部T1h(工具係合部)が、天板メイン21の設置スペースである開口部SPに上面を向けて設けられる。したがって、ボルトT1を締結状態から外す際にも、締結工具Dを同じように上記開口部SPから斜めに差し込んで、ボルトT1の弛緩作業を容易に行うことができる。
【0062】
(シートクッション3の組み立て方法)
続いて、クッション体20をクッションフレーム10に組み付ける方法について説明する。
図11~
図13に示すように、クッション体20は、先ず、天板メイン21の前に、各天板サイド22のクッションフレーム10への組み付けが先に行われる(天板サイド組付工程)。各天板サイド22のクッションフレーム10への組み付け方は、前述した通りである。
【0063】
各天板サイド22の組み付けの後、次に、天板メイン21をクッションフレーム10に組み付ける(天板メイン組付工程)。上記手順により、3つの分割要素から成るクッション体20をクッションフレーム10に対して簡便かつ適切に組み付けることができる。なお、クッション体20をクッションフレーム10から取り外す手順は、上記とは逆の手順となっている。
【0064】
以上をまとめると、本実施形態に係るシート1は、次のような構成とされている。なお、以下において括弧書きで付す符号は、上記実施形態で示した各構成に対応する符号である。
【0065】
すなわち、シート(1)は、着座者を弾性的に支持するクッション体(20)と、クッション体(20)をシート裏側から支持するシートフレーム(10)と、を有する。クッション体(20)が、シート幅方向の中央部分を成す天板メイン(21)と、シート幅方向の両サイド部分を成す各天板サイド(22)と、に分割された3つの分割要素から成る。
【0066】
天板メイン(21)が、ポリウレタン発泡成形体から成るパッド本体(A11)と、パッド本体(A11)のシート裏側の両縁部であるパッド裏側両縁部に沿って設けられるパッド本体(A11)よりも硬質なビーズ発泡成形体から成るパッド補強部(A12)と、を含む天板メインパッド(21A)を有する。
【0067】
上記構成によれば、パッド補強部(A12)により、中央の分割された天板メイン(21)のパッド裏側両縁部の剛性が高められる。その結果、天板メイン(21)を横方向の加速度に対して横揺れさせにくくすることができる。
【0068】
また、天板メインパッド(21A)が、パッド本体(A11)のシート裏側の中央部であるパッド裏側中央部に、パッド補強部(A12)が設けられない非補強部(NR)を有する。上記構成によれば、非補強部(NR)により、天板メイン(21)のクッション性を損なうことなく、天板メイン(21)の横揺れを適切に抑制することが可能となる。
【0069】
また、パッド補強部(A12)が、シートフレーム(10)の両サイドフレーム(11)の間に掛け渡される一対の補強フレーム(13,14)に跨ってシート表側から当接するように一対の補強フレーム(13,14)の間を連続的に延びる。上記構成によれば、天板メイン(21)のパッド裏側両縁部の剛性をより一層適切に高めることができる。加えて、天板メイン(21)をシートフレーム(10)に対して横ズレさせにくくすることができる。その結果、天板メイン(21)の横揺れをより適切に抑制することができる。
【0070】
また、パッド補強部(A12)が、パッド本体(A11)のパッド裏側両縁部に沿って延びる各側辺部(As)と、各側辺部(As)の間を繋ぐようにシート幅方向に延びる繋ぎ辺部(Ac)と、を有する。繋ぎ辺部(Ac)が、一対の補強フレーム(13,14)のうちの一方(14)に沿ってこの一方(14)にシート表側から当接するように延びる。上記構成によれば、パッド補強部(A12)が、繋ぎ辺部(Ac)により各側辺部(As)の間が繋がれたひと続きの構成となる。その結果、天板メイン(21)のパッド裏側両縁部の剛性がより適切に高められ、天板メイン(21)の横揺れをより適切に抑制することが可能となる。
【0071】
また、シートフレーム(10)が、シート前縁部の座面角度を調節可能なチルト機構(M)を備えるシートクッション(3)のフレームを成すクッションフレーム(10)として構成される。天板メイン(21)が、座面角度の調節により動かされるパッド本体(A11)のシート裏側の前部分であるパッド裏側前部に、天板メインパッド(21A)に被せられる天板メインカバー(21B)の端末の止着とチルト機構(M)の可動部(12)への間接的な固定とを担う、パッド補強部(A12)とは繋がらない樹脂部材(21C)を更に有する。
【0072】
上記構成によれば、シートクッション(3)の天板メイン(21)に、チルト機構(M)の動きを阻害しないようにパッド補強部(A12)を適切に設けることができる。また、パッド裏側前部に設けられる樹脂部材(21C)により、天板メインカバー(21B)の端末の止着と天板メイン(21)のチルト機構(M)の可動部(12)への固定とを適切に行うことができる。
【0073】
また、パッド補強部(A12)を構成するビーズ発泡成形体が、発泡ポリプロピレンを含む。上記構成によれば、パッド補強部(A12)を発泡ポリプロピレンを含むビーズ発泡成形体で構成することで、天板メイン(21)を適切なクッション性及び横揺れ抑制効果を発揮できるように成形することができる。
【0074】
《その他の実施形態について》
以上、本発明の実施形態を1つの実施形態を用いて説明したが、本発明は上記実施形態の他、各種の形態で実施することができるものである。
【0075】
1.本発明のシートは、鉄道等の自動車以外の車両の他、航空機や船舶等の車両以外の乗物に搭載されるシートとして構成されても良い。また、上記実施形態では、本発明の構成がシートクッションに適用されたものを例示したが、シートバックに適用されても良い。
【0076】
2.パッド補強部は、発泡ポリプロピレンでなく、発泡スチロールを含むビーズ発泡成形体から成るものであっても良い。また、パッド補強部は、発泡ポリプロピレンと発泡スチロールとを組み合わせたビーズ発泡成形体から成るものであっても良い。パッド補強部は、パッド本体のシート裏側の両縁部であるパッド裏側両縁部にのみ個別に設けられて、これらが繋がらない構成(繋ぎ辺部のない構成)とされたものであっても良い。
【0077】
パッド補強部は、必ずしもシートフレームの両サイドフレームの間に掛け渡される一対の補強フレームに跨って設けられるものでなくても良い。パッド補強部が、パッド本体のパッド裏側両縁部に沿って延びる各側辺部と、各側辺部の間を繋ぐようにシート幅方向に延びる繋ぎ辺部と、を有する場合、繋ぎ辺部はフロントパイプ(一対の補強フレームのうちの一方)に沿ってシート表側から当接するように延びる構成であっても良い。一対の補強フレームのそれぞれは、パイプでなくパネル状のフレームから成るものであっても良い。
【0078】
パッド補強部は、パッド本体と一体成形されるものの他、パッド本体とは一体化されず、シートフレームに固定されるもの、又は天板メインパッドに被せられる天板メインカバーの端末が支承部材に止着されることを介してパッド本体と一体を成す形に設けられる構成であっても良い。
【0079】
3.天板メインに設けられる支承部材は、樹脂の他、金属から成るものであっても良い。また、支承部材は、チルト機構の可動部に間接的に固定されるものの他、直接的に固定されるものであっても良い。天板メインカバー及び天板サイドカバーは、それぞれ、ファブリックの他、皮革材から成るものであっても良い。
【符号の説明】
【0080】
1 シート
2 シートバック
3 シートクッション
4 ヘッドレスト
10 クッションフレーム(シートフレーム)
11 ロアアーム(サイドフレーム)
12 チルトパネル(可動部)
12A チルトアーム
Ab 締結ブラケット
Ah 係合孔
12B チルト回転軸
13 フロントパイプ(補強フレーム)
14 リヤパイプ(補強フレーム、一方)
15 支持バネ
M チルト機構
20 クッション体
21 天板メイン
21A 天板メインパッド
A11 パッド本体
A12 パッド補強部
As 側辺部
Ac 繋ぎ辺部
21B 天板メインカバー
21C 天板メイン樹脂部材(支承部材)
C11 カバー掛爪
C12 嵌合爪部
22 天板サイド
22A 天板サイドパッド
22B 天板サイドカバー
22C 天板サイド樹脂部材
C21 カバー掛爪
C22 係合爪
C23 ガイド部
C24 締結部
C25 被嵌合部
C26 サイドサポート部
T 差込み式の締結構造
T1 ボルト
T1h 頭部
T2 ウェルドナット
SP 開口部
NR 非補強部
D 締結工具