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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024059206
(43)【公開日】2024-05-01
(54)【発明の名称】シャワーシステム
(51)【国際特許分類】
   A47K 3/28 20060101AFI20240423BHJP
   B01F 21/00 20220101ALI20240423BHJP
   B01F 23/2373 20220101ALI20240423BHJP
   B01F 25/10 20220101ALI20240423BHJP
   B01F 25/452 20220101ALI20240423BHJP
【FI】
A47K3/28
B01F21/00
B01F23/2373
B01F25/10
B01F25/452
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022166742
(22)【出願日】2022-10-18
(71)【出願人】
【識別番号】000227467
【氏名又は名称】日東精工株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504150450
【氏名又は名称】国立大学法人神戸大学
(72)【発明者】
【氏名】辻野 義雄
(72)【発明者】
【氏名】堀田 弘樹
(72)【発明者】
【氏名】谷村 竜一
(72)【発明者】
【氏名】倉内 亮平
【テーマコード(参考)】
2D132
4G035
【Fターム(参考)】
2D132FA17
2D132FH00
2D132FH13
2D132FJ15
2D132FJ22
2D132FJ32
2D132FJ33
4G035AB04
4G035AC26
4G035AC44
(57)【要約】
【課題】 ヘアケアに最適なシャワーシステムを提供する。
【解決手段】 混合栓103に接続される気体溶解タンク104と、この気体溶解タンクに接続し、当該溶解タンク内で加圧溶解された気液混合体を噴射するシャワーヘッド1とを備えるシャワーシステム100であって、前記シャワーヘッドから噴射される気液混合体は、1ミリリットルあたりに含まれる微細気泡の総表面積が168平方ミリメートル以上になるように設定されているシャワーシステムによる。 このようなシャワーシステムは、頭髪の洗浄効果、過膨潤の抑制および高い浸透性による潤い効果を発揮するので、ヘアケアに最適なものとなる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
混合栓に接続される気体溶解タンクと、この気体溶解タンクに接続し、当該溶解タンク内で加圧溶解された気液混合体を噴射するシャワーヘッドとを備えるシャワーシステムであって、
前記シャワーヘッドから噴射される気液混合体は、1ミリリットルあたりに含まれる微細気泡の総表面積が168平方ミリメートル以上になるように設定されていることを特徴とするシャワーシステム。
【請求項2】
前記シャワーヘッドから噴射される気液混合体は、1ミリリットルあたりに含まれる微細気泡のうち、3%以上が1マイクロメートル~100マイクロメートルの気泡であるマイクロバブルであることを特徴とする請求項1に記載のシャワーシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロバブルを利用した頭髪用のシャワーシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、マイクロバブル、ウルトラファインバブル等の微細気泡を発生させるシャワーヘッドとしては、特許文献1に示すものが知られている。このシャワーヘッドは、気液剪断方式によって微細気泡を含む液体を噴射可能に構成されおり、マイクロバブルを6060個/ミリリットル、ウルトラファインバブルを140万個/ミリリットル、発生することができる。なお、国際標準化機構(ISO)の国際規格「ISO20480-1」には、1マイクロメートル以上~100マイクロメートル(μm)の気泡を「マイクロバブル」、1マイクロメートル未満の気泡を「ウルトラファインバブル」と定めており、本明細書においてもこの定義に準ずる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-10962号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記シャワーヘッドは、ウルトラファインバブルの発生に特化しており、ウルトラファインバブルの作用効果としてスキンケア(頭皮の毛穴汚れや皮脂を洗い流すこと)に優れるため、一般家庭用に広く普及している。しかしながら、ヘアケアにおいては特段に優れた効果を発揮するものではないため、ヘアサロンへの普及は限定的であった。
【0005】
本発明は、上記問題に鑑みて創成されたものであり、ヘアケアに最適なシャワーシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題は、混合栓に接続される気体溶解タンクと、この気体溶解タンクに接続し、当該溶解タンク内で加圧溶解された気液混合体を噴射するシャワーヘッドとを備えるシャワーシステムであって、前記シャワーヘッドから噴射される気液混合体は、1ミリリットルあたりに含まれる微細気泡の総表面積が168平方ミリメートル以上になるように設定されているシャワーシステムによって解決できる。
【0007】
なお、前記シャワーヘッドから噴射される気液混合体は、1ミリリットルあたりに含まれる微細気泡の3%以上が1マイクロメートル~100マイクロメートルの気泡であるマイクロバブルであることが好ましい。
【発明の効果】
【0008】
本発明のシャワーシステムにおいては、前記シャワーヘッドから噴射される気液混合体は、多量のマイクロバブルを含み、1ミリリットルあたりに含まれる気泡の総表面積が168平方ミリメートル以上になるように設定されている。このような気液混合体は、頭髪の膨潤を抑え、ヘアカラー剤あるいはパーマ剤の使用後に過膨潤毛(ビビリ毛)になることを防止できる。また、1ミリリットルあたりに含まれる気泡の総表面積が168平方ミリメートル以上になる気液混合体は、その表面張力が低下しているので浸透性が高く、頭髪に相応の高い潤いを与えることができる。さらに、ヘアカラー後の洗髪においては、未反応のヘアカラー剤の洗浄能力に優れるため、ヘアカラー後の髪色の変化を防止することができる。このような作用効果により、特にヘアサロン向けにヘアケアに優れたシャワーシステムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明のシャワーシステムの一実施形態を示す概略構成図である。
図2】シャワーヘッドの外観図である。
図3】シャワーヘッドの縦断面図である。
図4】シャワーヘッドの一部拡大縦断面図である。
図5】シャワーヘッドの微細気泡生成部を上流側から見た斜視図である。
図6】シャワーヘッドの微細気泡生成部を下流側から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明を実施するための形態を説明する。図1は本発明のシャワーシステムの一実施形態を示す概略構成図である。
【0011】
本実施形態に係るシャワーシステム100は、給水管102を介して混合栓103に接続される気体溶解タンク104を有している。この気体溶解タンク104は、上部から混合栓103の水道水が流入し、内部で気体を加圧溶解するように構成されている。
【0012】
前記気体溶解タンク104の下部には、シャワーホース105を介してシャワーヘッド1が接続されており、気体溶解タンク104の内部で気体が加圧溶解された水道水をシャワーヘッド1から吐出するように構成されている。
【0013】
また、前記気体溶解タンク104には、給気管107を介してバッファタンク108が接続されている。さらに、このバッファタンク108には、給気管110を介してコンプレッサー109が接続されており、バッファタンク108は、コンプレッサー109によって供給された圧縮空気を一時貯留するように構成されている。
【0014】
前記気体溶解タンク104とバッファタンク108とを接続する給気管7には電磁弁111が設けられており、給気管107内の気体の流れを制御するように構成されている。
【0015】
また、気体溶解タンク104とバッファタンク108には、それぞれに内部圧力を計測可能な圧力センサ112,113が設けられている。このため、電磁弁111およびコンプレッサー109の作動を制御することにより、気体溶解タンク104の内部圧力を所定の値に維持するように構成されている。
【0016】
具体的な制御方法として、バッファタンク108内の圧力を所定の値に維持するために、圧力センサ113が所定の値を下回ると、コンプレッサー109を作動させる。これにより、バッファタンク108の内部圧力が高められる。
【0017】
続いて、圧力センサ113が所定の値を上回るとコンプレッサー109を停止させる。このように、圧力センサ113の値に応じてコンプレッサー109の作動・停止を切り替えることにより、バッファタンク108内の圧力は一定に保たれる。
【0018】
前記バッファタンク108は、気体溶解タンク104の内部圧力を所定の値に維持するためのものである。その制御方法としては、圧力センサ112が所定の値を下回ると、電磁弁111を開状態にすることで、バッファタンク108によって気体溶解タンク104の内部圧力が高められる。これにより、気体溶解タンク104は、バッファタンク8から供給される気体と、混合栓103から供給される水道水とを所定の圧力で加圧溶解するように構成されている。
【0019】
続いて、圧力センサ112が所定の値を上回ると、電磁弁111を閉状態にする。このように、圧力センサ112の値に応じて電磁弁111の開閉を制御することにより、気体溶解タンク104内の圧力は一定に保たれる。
【0020】
なお、電磁弁111は、圧力センサ112の検出値が所定の値を下回る間に常時、開状態にするのではなく開閉を繰り返すことが好ましい。具体的には、1秒間の開状態の後に5秒間の閉状態とし、圧力センサ112の検出値が所定の値を下回る間は、これを繰り返すように構成されている。このようにして、気体溶解タンク104の内部圧力を間欠的に高めることで、気体を効率的に加圧溶解することができる。
【0021】
また、コンプレッサー109の保護を目的として、給気管110には電磁弁114を設けることが好ましい。この電磁弁114は、前記コンプレッサー109が作動する前に、一時的に開状態となり給気管110の内部圧力を開放することで、コンプレッサー109にかかる負荷を軽減し破損を防止する。
【0022】
本発明のシャワーシステム100によれば、気体溶解タンク104で加圧溶解される酸素量あるいは内部圧力を変更することにより、詳細を後述するシャワーヘッド1から噴射される気液混合体に含まれるマイクロバブルの発生量をコントロールすることができる。
【0023】
以下、前記シャワーヘッド1について説明する。図2において、1はシャワーヘッドであり、気体溶解タンク104を介して混合栓103から供給される湯水を導入する把持部3と、把持部3の先端に設けられ、把持部3に導入された湯水を噴射するヘッド部4とからシャワーヘッド本体2が構成されている。把持部3は、端部にシャワーホース105が接続され、この端部には湯水の導入孔3aが設けてある。ヘッド部4は、前面に、複数の散水孔5bが穿設された散水板5aを備えており、散水孔5bから湯水を噴射するように構成されている。なお、図2乃至図6において、二点鎖線の矢印は、湯水の流れる方向を示すものである。
【0024】
図3に示すように、シャワーヘッド本体2には、湯水を撹拌して空気の溶解濃度を高めるように構成された気液溶解部10と、気液溶解部10によって撹拌された湯水を旋回流にして微細気泡を生成するように構成された微細気泡生成部20とが内蔵されている。
【0025】
気液溶解部10は、把持部3に内蔵されており、把持部3の内部に形成された溶解室11と、溶解室11内の中心部に配置され、長手方向に延びる撹拌部材12とから構成されている。
【0026】
気液溶解部10の撹拌部材12は、先端部12aに底部12bを有する有底筒状を成しており、内部には導入流路12cが形成されている。
【0027】
撹拌部材12は、先端部12aを導入孔3aに対して所定の間隔をおいて対向させるように配置するとともに、撹拌部材12の外周面と溶解室11の内周面とによって撹拌室13が形成される。このため、導入孔3aから供給された湯水は、先端部12aの外側に向かって流れ、撹拌室13へ流入する。撹拌室13へ流入した湯水は、二点鎖線で示す矢印のように撹拌され、空気の溶解濃度が高められた気液混合体となる。
【0028】
なお、撹拌部材12の先端部12aは、傘状に成形されていることが好ましい。これは、撹拌室13への入口を狭くするとともに、撹拌室13の容積を広く設定するためのものであり、このようにすることで、撹拌室13へ流入する湯水の流速を高め、撹拌効率を高める効果がある。
【0029】
また、撹拌部材12の外周面には、2箇所に貫通孔12dが穿設されており、撹拌室13と導入流路12cとを連通する。このため、撹拌室13によって撹拌された湯水は、貫通孔12dを通過して導入流路12cへ流入する。
【0030】
微細気泡生成部20は、シャワーヘッド本体2のヘッド部4に内蔵されており、ヘッド部4の内部に成形され、撹拌部材12の導入流路12cと連通する旋回室21と、この旋回室21の中心部に配置され、旋回流を発生させる旋回流生成部22とから構成されている。
【0031】
図4に示すように、旋回流生成部22は、略三角錐を成しており、その外形に沿うように旋回室21の内部形状も成形されている。旋回流生成部22は、外周面を上流側に向けて配置されており、その外周面には、複数の上流側旋回翼22aが一体成形されている。
【0032】
また、図5に示すように、旋回流生成部22は、底面に一体成形された複数の下流側旋回翼22bを有しており、これら旋回翼22a,22bによって、湯水は、旋回室21内で二点鎖線の矢印で示すような旋回流になる。
【0033】
図6に示すように、旋回室21の出口には、導出流路23が連通されており、この導出流路23からは、複数のスリット24が分岐している。これらスリット24は縮径されているため、スリット24を通過する際に湯水(気液混合体)の流速が増大し、せん断力によって湯水に微細気泡が生成される。また、スリット24の出口にはパンチングメタル25が包囲してあり、スリット24を通過した湯水に含まれる微細気泡をさらに細分化する。そして、図1に示すように、散水板5の散水孔5aから外部へ微細気泡を含む湯水が噴射される。
【0034】
なお、導出流路23には、循環パイプ26を内蔵させてもよい。この循環パイプ26は、上下に貫通穴26a,26bを備えており、下流側貫通穴26aから導出流路23内の湯水を内部へ取り込み、上流側貫通穴26bから放出するものである。このように、循環パイプ26は導出流路23内で湯水を循環させることにより、気体の溶解濃度を高めるように構成されている。
【0035】
上記シャワーヘッド1によれば、気液溶解部10が内蔵されているので、湯水に対する空気の溶解濃度が高められる。そして、空気の溶解濃度が高められた湯水で微細気泡を生成することにより、多くの微細気泡を生成することが可能となる。
【0036】
また、気液溶解部10は、撹拌部材12の周囲で湯水を撹拌するように構成されており、つまり把持部3の内部において外側で湯水を撹拌するように構成されているため、シャワーヘッド1を傾けた際に撹拌室13に湯水が満水でない状態でも、撹拌室13には湯水が貯水されるので、撹拌効率が低下することはない。さらに、撹拌部材12の貫通孔12dは、散水板5に対して側面となる位置に設けられている。このため、散水板5を下に向けるようにシャワーヘッド1を傾けた際に撹拌室13の内部に湯水が満水でない状態でも、撹拌室13から導入流路12cへ湯水を供給できるので、噴射が止むようなことはない。
【0037】
上記シャワーシステム100によって発生させたマイクロバブルおよびウルトラファインバブルの測定結果を表1に示す。
【0038】
【表1】
【0039】
表1に示すように、本発明のシャワーシステム100によって発生するマイクロバブルの量は、従来品A乃至Dと比較して圧倒的に多い一方、ウルトラファインバブルの量は、格段に少ない。このように、マイクロバブルを大量に含む気液混合体は、頭髪の膨潤を抑え、ヘアカラー剤あるいはパーマ剤の使用後に過膨潤毛(ビビリ毛)になるのを防止できる。
【0040】
また、表1に示すように、1ミリリットルあたりに含まれる気泡の総表面積が従来品よりも大きくなる。具体的には、1ミリリットルあたりに含まれる気泡の総表面積が168平方ミリメートル以上になるように設定されている。このような気液混合体は、頭髪の膨潤を抑え、ヘアカラー剤あるいはパーマ剤の使用後に過膨潤毛(ビビリ毛)になるのを防止できる。
【0041】
また、1ミリリットルあたりに含まれる気泡の総表面積が168平方ミリメートル以上になる気液混合体は、高い界面活性効果を発揮するので、その表面張力が低下するため広がりやすくなり、頭髪への浸透性が高くなる。このため、頭髪に相応の高い潤いを与えることができる。さらに、界面活性効果は、ヘアカラー後の洗髪においては、未反応のヘアカラー剤の洗浄能力に優れるため、ヘアカラー後の髪色の変化を防止できる。このような作用効果により、本発明のシャワーシステム100は、特にヘアサロン向けにヘアケアに優れたシャワーシステムを提供することができる。
【符号の説明】
【0042】
100 シャワーシステム
102 給水管
103 混合栓
104 気体溶解タンク
105 シャワーホース
107 給気管
108 バッファタンク
109 コンプレッサー
110 給気管
111 電磁弁
112,113 圧力センサ
114 電磁弁
1 シャワーヘッド
2 シャワーヘッド本体
3 把持部
3a 導入孔
4 ヘッド部
5 散水板
5a 散水孔
10 気液溶解部
11 溶解室
12 撹拌部材
12a 先端部
12b 底部
12c 導入流路
12d 貫通孔
13 撹拌室
20 微細気泡生成部
21 旋回室
22 旋回流生成部
22a 上流側旋回翼
22b 下流側旋回翼
23 導出流路
24 スリット
25 パンチングメタル
26 循環パイプ
26a 下流側貫通穴
26b 上流側貫通穴
図1
図2
図3
図4
図5
図6