(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024059223
(43)【公開日】2024-05-01
(54)【発明の名称】地盤面算出システム
(51)【国際特許分類】
G06T 17/05 20110101AFI20240423BHJP
G06Q 50/08 20120101ALI20240423BHJP
G01C 5/00 20060101ALI20240423BHJP
【FI】
G06T17/05
G06Q50/08
G01C5/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022166767
(22)【出願日】2022-10-18
(71)【出願人】
【識別番号】302060926
【氏名又は名称】株式会社フジタ
(71)【出願人】
【識別番号】518424279
【氏名又は名称】株式会社ダイスネクスト
(74)【代理人】
【識別番号】100120592
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 崇裕
(74)【代理人】
【識別番号】100184712
【弁理士】
【氏名又は名称】扇原 梢伸
(74)【代理人】
【識別番号】100192223
【弁理士】
【氏名又は名称】加久田 典子
(72)【発明者】
【氏名】神田 信孝
(72)【発明者】
【氏名】加藤 久人
(72)【発明者】
【氏名】河村 賢一
(72)【発明者】
【氏名】秋山 文秀
(72)【発明者】
【氏名】北條 秀夫
【テーマコード(参考)】
5B050
5L049
5L050
【Fターム(参考)】
5B050BA09
5B050BA13
5B050BA17
5B050CA07
5B050DA10
5B050EA07
5B050EA18
5B050EA28
5B050FA02
5B050FA09
5B050GA08
5L049CC07
5L050CC07
(57)【要約】
【課題】平均地盤面の高さを効率よく算出する技術の提供。
【解決手段】地盤面算出システム1では、測量点の位置及び高さの入力を受け付けて3次元座標データとして登録し(S1)、測量点に対応する点群から対象土地のサーフェスモデルを作成し(S2)、平面図から特定される対象土地における建物の建設可能範囲を示すアウトライン上に所定のスパン毎に地盤面高さ推定用ポイントを設定した上で(S3,S4)、対象土地のサーフェスモデルに地盤面高さ推定用ポイントが設定された建物アウトラインを重ね合わせてサーフェスモデル上での各地盤面高さ推定用ポイントの位置を特定し(S5)、サーフェスモデルの作成により測量点間の地点について補間されたデータから各地盤面高さ推定用ポイントの高さを推定して(S6)、これらの結果に基づいて建物に関する平均GLを算出すると共に、地盤面高さ推定用ポイントうちの最高の高さを設計GLと定義する(S7)。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
測量点を示す複数の3次元座標に対応する点群から対象土地の表面を表したサーフェスモデルを作成するモデル作成部と、
前記対象土地における建物の建設可能範囲を示すアウトライン上に複数のポイントを設定するポイント設定部と、
前記サーフェスモデルに前記アウトラインを重ね合わせ、前記測量点間の地点について前記サーフェスモデルで補間されたデータに基づいて前記複数のポイントの位置における高さを推定するポイント高さ推定部と、
前記複数のポイントのうち最大の高さを設計地盤面高さとし、前記複数のポイントの高さに基づいて前記建物に関する平均地盤面高さを算出する地盤面高さ算出部と
を備えた地盤面算出システム。
【請求項2】
請求項1に記載の地盤面算出システムにおいて、
前記ポイント設定部は、
前記建物のスパンに応じた数のポイントを設定する
ことを特徴とする地盤面算出システム。
【請求項3】
請求項1に記載の地盤面算出システムにおいて、
前記地盤面高さ算出部は、
前記建物が地面に接する高さの高低差が3mを超える場合には、前記高低差が3m以内に収まる建物部分毎に前記平均地盤面高さを算出する
ことを特徴とする地盤面算出システム。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の地盤面算出システムにおいて、
少なくとも前記測量点の位置及び高さの入力を受け付け、3次元座標データとして登録する測量情報入力部
をさらに備えた地盤面算出システム。
【請求項5】
請求項4に記載の地盤面算出システムにおいて、
前記平均地盤面に基づいて建設可能な建物の高さを決定する建物高さ決定部と、
前記対象土地を含む敷地情報及びその周辺の地図情報を取得する敷地情報取得部と、
前記平均地盤面高さ及び前記設計地盤面高さ、並びに、前記敷地情報取得部により取得される情報から特定可能な所定の値に基づいて、少なくとも前記建物の高さが建設に係る所定の法規に適合するか否かをチェックする法規チェック部と
をさらに備えた地盤面算出システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物を建設する上で必要となる地盤面の高さ、特に、建物が周囲の地面と接する高さを平均して割り出される仮想的な水平面(以下、「平均地盤面」と称する。)の高さを算出するシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
建物の建設に際しては、建築基準法その他の様々な関連法規に適合しなければならず、事前に法規チェックが実施される。例えば、特許文献1に記載されたシステムにおいては、新規建築プランの作成に必要な条件の一部として敷地条件の入力項目(例えば、日影規制、隣地斜線制限、道路斜線制限等)の入力を受け付けている。また、特許文献2に記載されたシステムにおいては、建築コストの見積もりに際し、建物に関して入力された情報に対し法規チェック(日影規制、高さ制限等に関する基準を満たしているかの判定)を判定している。
【0003】
日影規制の検討に当たっては、建設予定地である対象土地内の地盤面(GL:ground level)の高さを把握する必要がある。日影規制は、対象土地内の平均地盤面の高さと、近接する道路の高さと、隣地高さとの関係により、基礎工事の内容や建物形状、ひいては建設コストにも影響を及ぼす。したがって、平均地盤面の高さを適切に算出することが重要となる。平均地盤面の高さは、測量データに基づいて算出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-185712号公報
【特許文献2】特開2009-116840号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
測量データは、現地で離散的に選択された測量点において実際に測量された値であり、測量データだけでは建物のアウトラインに沿った平均地盤面の高さを算出することが困難である。そこで、従来、複数の測量点の間に位置する地点に対するデータを人手により補間した上で、平均地盤面の高さを算出している。
【0006】
上述した特許文献1及び2には、法規チェックに関する記載はなされているものの、その上で必要となる平均地盤面の高さの算出方法については何ら記載がないことから、これらのシステムにおいても人手を介して算出した値を入力しているものと推測される。しかしながら、補間の方法は担当者により様々であり暗黙知に頼るところもあるため、経験値の差が平均地盤面の算出の精度に影響しうる。そのため、人手を介することなく平均地盤面の高さを効率よく算出する手法が求められている。
【0007】
そこで、本発明は、平均地盤面の高さを効率よく算出する技術の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、本発明は以下の地盤面算出システムを採用する。なお、以下の括弧書中の文言はあくまで例示であり、本発明はこれに限定されるものではない。
【0009】
すなわち、本発明の地盤面算出システムは、測量点を示す複数の3次元座標に対応する点群から対象土地の表面を表したサーフェスモデルを作成するモデル作成部と、対象土地における建物の建設可能範囲を示すアウトライン上に複数のポイントを設定するポイント設定部と、サーフェスモデルにアウトラインを重ね合わせ、測量点間の地点についてサーフェスモデルで補間されたデータに基づいて複数のポイントの位置における高さを推定するポイント高さ推定部と、複数のポイントのうち最大の高さを設計地盤面高さとし、複数のポイントの高さに基づいて建物に関する平均地盤面高さを算出する地盤面高さ算出部と、を備えている。
【0010】
この態様の地盤面算出システムにおいては、測量点に対応する点群から対象土地のサーフェスモデルが作成される。このサーフェスモデルにおいては、測量点に対応する個々の点の間に線や面が形成されているため、測量点間の測量されていない地点に対して補間データが作成されている。したがって、この態様の地盤面算出システムによれば、従来のように人手によりデータの補間を行う必要がないため、補間作業の手間をなくすことができる。また、人手によるデータの補間のように、担当者により補間データにばらつきが生じることもないため、平均地盤面及び設計地盤面の各高さを一定の精度で算出することができる。
【0011】
好ましくは、上述した態様の地盤面算出システムにおいて、ポイント設定部は、建物のスパンに応じた数のポイントを設定する。
【0012】
一般的に、建物の支柱が設けられる位置には建物下の地盤に対しある程度の長さの杭が打ち込まれる。この態様の地盤面算出システムによれば、建物のスパンに応じた数のポイントが設定され、個々のポイントの高さが推定されるため、費用や工程を精度よく見積もることに資することができる。
【0013】
また、好ましくは、上述した態様の地盤面算出システムにおいて、地盤面高さ算出部は、建物が地面に接する高さの高低差が3mを超える場合には、高低差が3m以内に収まる建物部分毎に平均地盤面高さを算出する。
【0014】
この態様の地盤面算出システムによれば、建物が接する地面の高低差が3mを超える場合でも、平均地盤面高さを建築基準法に則って適切に算出することができる。
【0015】
より好ましくは、上述したいずれかの態様の地盤面算出システムにおいて、少なくとも測量点の位置及び高さの入力を受け付け、3次元座標データとして登録する測量情報入力部をさらに備えている。
【0016】
この態様の地盤面算出システムによれば、システムが提供する入力画面を介してユーザに測量データを容易に入力させることができ、入力された測量データに基づいて、サーフェスモデルの作成に必要となる3次元座標に変換することが可能となる。
【0017】
さらに好ましくは、上述した態様の地盤面算出システムにおいて、平均地盤面高さに基づいて建設可能な建物の高さを決定する建物高さ決定部と、対象土地を含む敷地情報及びその周辺の地図情報を取得する敷地情報取得部と、平均地盤面高さ及び設計地盤面高さ、並びに、敷地情報取得部により取得される情報から特定可能な所定の値に基づいて、少なくとも建物の高さが建設に係る所定の法規に適合するか否かをチェックする法規チェック部とをさらに備えている。
【0018】
この態様の地盤面算出システムによれば、算出された平均地盤面高さ及び設計地盤面高さの他、敷地周辺の情報に基づいて、建物の高さ等に関する法規チェックが実行されるため、所定の法規に適合する外形となるように建物の設計を進めることができ、作業の手戻りを防ぐことができる。結果として、所定の法規に適合した建物を提案し、適切な建設金額を提示することが可能となる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、平均地盤面の高さを効率よく算出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】地盤面算出システム1の構成例を示すブロック図である。
【
図3】地盤面算出処理の手順例を示すフローチャートである。
【
図4】地盤面算出処理の流れを説明する図(1/2)である。
【
図5】地盤面算出処理の流れを説明する図(2/2)である。
【
図6】平均地盤面高さの算出に関する具体例を示す図である。
【
図7】建設関連法規のチェックの具体例を示す図(1/2)である。
【
図9】道路斜線制限のチェックの具体例を示す図(2/2)である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下の実施形態は地盤面算出システムの好適な一例であり、本発明の実施の形態はこの例示に限定されない。
【0022】
〔地盤面算出システムの構成〕
図1は、地盤面算出システム1の構成例を示すブロック図である。
地盤面算出システム1は、3Dモデルを活用して対象土地の平均地盤面の高さ(以下、「平均GL」又は「AGL」と称する。)及び設計上の基準面とされる設計地盤面の高さ(以下、「設計GL」又は「SGL」と称する。)を算出するシステムであり、地盤面算出システム1を包含する上位システム、或いは、別のシステムにより、平均GL又は設計GLを必要とする場面で呼び出されて処理を実行する。
【0023】
なお、説明の便宜のため、以下の説明においては、地盤面算出システム1が上位システムUP(例えば、建設計画システム)の一部として(例えば、地盤面算出システム1が建設計画システムの下位システムとして)構成されている場合を例に挙げて説明する。
【0024】
地盤面算出システム1は、例えば、敷地情報取得部10、測量情報入力部20、サーフェスモデル作成部30、ポイント設定部40、ポイント高さ推定部50、地盤面高さ算出部60等で構成される。
【0025】
敷地情報取得部10は、予め上位システムで入力されている敷地情報や、一般公開されているGIS(地理情報システム)から取得可能な敷地周辺の地図情報その他の地理的情報を取得する。測量情報入力部20は、測量データに基づく測量点の位置及び高さの入力を受け付ける。サーフェスモデル作成部30は、測量点に対応する点群から対象土地のサーフェスモデルをBIMモデル上に作成する。
【0026】
ポイント設定部40は、対象土地の平面図から特定された建設可能範囲を示す建物アウトライン上に、複数の地盤面高さ推定用ポイントを設定する。ポイント高さ推定部50は、地盤面高さ推定用ポイントが設定された建物アウトラインをサーフェスモデルに重ね合わせ、測量点間の地点についてサーフェスモデルで補間されたデータに基づいて、個々の地盤面高さ推定用ポイントの位置における高さを推定する。
【0027】
地盤面高さ算出部60は、推定されたこれらの地盤面高さ推定用ポイントの高さに基づいて建物に関する平均GLを算出し、最も高い地盤面高さ推定用ポイントの高さを設計GLとし、さらに、平均GL及び建設地域等の条件に基づいて法規チェック上の建物の高さ(建設可能な建物の高さ)を決定する。なお、上述した各処理部10~60が実行する処理の内容については、別の図面を参照しながら詳しく後述する。
【0028】
各処理部10~60は、1つのコンピュータ上(クライアント上、又は、サーバ上)に実装してもよいし、複数のコンピュータに分散的に又は重複的に実装してもよい。例えば、BIMモデルや関連データをクラウドコンピュータ上で管理して複数のコンピュータからの利用を可能とし、BIMツールを利用可能な設計用コンピュータに全ての処理部10~60を実装するとともに、BIMツールを利用できないタブレット等の情報端末に敷地情報取得部10及び測量情報入力部20を実装する構成が想定される。このような構成とすることで、測量データの入力を出先から直接行うことができ、その後で平均GLや設計GLが必要になったときに、既に入力されている測量データを用いる形で設計用コンピュータにおいて地盤面高さ算出に係る処理を起動することができる。
【0029】
一方、上位システムとしての建設計画システムUPは、地盤面算出システム1の他に、例えば、建物の建設計画地に関する敷地情報の入力を受け付けて建設可能な建物に関する計画情報を取得する関連情報取得部U10、建設関連法規に基づく要件をチェックする法規チェック部U20、計画情報に基づき法規要件に合致するBIMモデルを作成することにより建物を半自動又は全自動で設計する自動設計部U30、建設に要する費用や工程等の情報を出力する建設費用等出力部U40等を有している。このような上位システムにおいて、例えば、設計の初期段階で上述した地盤面算出システム1が呼び出される。
【0030】
具体的には、関連情報取得部U10が敷地情報の入力を受け付けた後の段階で、法規チェック部U20が地盤面算出システム1を呼び出して、地盤面算出システム1により算出された平均GLや設計GL、法規チェック上の建物の高さを取得し、これらを踏まえて建設関連法規に基づく要件を確認する。具体的には、例えば、日影規制、隣地斜線制限や道路斜線制限等の要件が確認される。その上で、自動設計部U30がこれらの要件に合致するような外形を有した建物を設計し、建設費用等出力部U40が設計された建設に要する費用や工程等を推定して出力する。このようにして、法規チェックを行った上で設計を進めることにより、作業の手戻りを防ぐことができ、建設関連法規に適合した建物を提案するとともに、適切な建設金額を提示することが可能となる。
【0031】
なお、上述した建設計画システムUPは、地盤面算出システム1の使用場面に関する理解を促進するために示した上位システムの一例に過ぎず、上位システムの構成はこれに限定されない。また、見方を変えると、上位システム全体を地盤面算出システムと捉えることも可能である。
【0032】
図2は、平均地盤面を説明する図である。
平均GL(AGL)は、建物が周囲の地面と接する高さの平均、すなわち地盤面高さ(GL)の平均値に相当する。より具体的には、平均GLは、建物が地面に接している面積、すなわち
図2中(A)に灰色で示した領域の面積を建物の外周長で除算することにより求められる。
図2中(B)に示した例では、地点aにおける地盤面高さGL
aが最も低く、地点bにおける地盤面高さGL
bが最も高いが、日影規制の検討に際しては、地盤面の高低差zの大きさに関わらず、平均GLが基準とされる。
【0033】
なお、建物に接する地盤面の高低差zが3mを超える場合には、高低差が3m以内となるように建物が分割され、部分毎に平均GLが算出される。
図2中(C)に示されるように、地盤面高さが最も低い地点aと最も高い地点bとの高低差が4mである場合には、例えば、地点aから地点aとの高低差が3mである地点cまでの部分を第1部分BP
1とし、残りの部分、すなわち地点cから地点cとの高低差が1mである地点bまでの部分を第2部分BP
2とする。そして、第1部分BP
1に対しては平均地盤面高さAGL
1が算出され、AGL
1からの高さH
1が第1部分BP
1の高さと決定される。一方、第2部分BP
2に対しては平均地盤面高さAGL
2が算出され、AGL
2からの高さH
2が第2部分BP
2の高さと決定される。
【0034】
〔地盤面算出処理の流れ〕
図3は、地盤面算出システム1において上記の各処理部10~60が実行する地盤面算出処理の手順例を示すフローチャートであり、
図4及び
図5は、地盤面算出処理の工程を簡略的に図示したものである。以下、これらの図を参照しながら、地盤面算出処理の流れを説明する。
【0035】
ステップS1:測量情報入力部20が、測量データの入力画面を表示し、測量点の位置及び高さに関する情報の入力を受け付けて、3次元座標データとして登録する。具体的には、
図4中(A)に示されるように、画面には敷地BD及びその周辺の領域を示す2次元の地図が表示され、ユーザが測量点に対応する位置(2次元座標)を選択すると、その位置に編集中を示す印PCが表示されるとともに、高さ情報の入力フォームが現れる。この入力フォームで、選択した位置に対する高さ情報の入力を終えると、その位置に測量データ入力済みを示す印PSが表示され、2次元座標に高さ情報を加えた3次元座標用のデータとして登録される。
【0036】
ステップS2:サーフェスモデル作成部30が、測量点に対応する点群から対象土地のサーフェスモデルを作成する。具体的には、サーフェスモデル作成部30は、
図4中(B)に示されるように、ステップS1で入力された測量データに基づく3次元座標に対応する複数の点を線で結んで面をなし、複数の連なる面で対象土地の表面が覆われた様子を表すサーフェスモデルSMをBIMモデル上に作成する。
【0037】
なお、(B)の上図は、サーフェスモデルSMの立体イメージを示す単なるサンプルであり、(A)の印PS,PCに対応する測量データに基づいて作成されたものではない。これに対し、(B)中の下図は、(A)の印PS,PCに対応する測量データに基づいて作成されたサーフェスモデルSMを真上から見た状態を表しており、発明の理解を容易とするために、測量点に対応するサーフェスモデルSMの各頂点を強調して表している(
図5についても同様)。
【0038】
このように作成された対象土地のサーフェスモデルSMにおいては、測量点に対応する個々の頂点の間に線や面が形成されることで、測量点間の地点、すなわち測量されていない地点に関するデータが補間されている。したがって、サーフェスモデルSM上の任意の位置を特定することにより、その位置における高さを補間データから推定することができる。
【0039】
ステップS3:ポイント設定部40が、敷地BDの平面図から対象土地における建物の建設可能範囲を特定し、
図5中(C)に示されるように、建設可能範囲の境界線を建物アウトラインOLとして作成する。
【0040】
ステップS4:続いて、ポイント設定部40が、ステップS3で作成された建物アウトラインOL上に、複数の地盤面高さ推定用ポイントを設定する。地盤面高さ推定用ポイントは、例えば、建物のスパン(支柱が設けられる間隔)を踏まえて設定される。
図5中(D)に図示した例においては、建物アウトラインOL上に所定のスパン毎に全部で22個の地盤面高さ推定用ポイントが設定されている。言い換えると、建物アウトラインOL上に設定される地盤面高さ推定用ポイントの個数は一定ではなく、スパンの大きさに応じて変動する。
【0041】
ステップS5,S6:ポイント高さ推定部50が、
図5中(E)に示されるように、ステップS4で地盤面高さ推定用ポイントが設定された建物アウトラインOLを、ステップS2で作成したサーフェスモデルSMに重ね合わせて、個々の地盤面高さ推定用ポイントのサーフェスモデルSM上における位置を特定し(ステップS5)、サーフェスモデルSMの作成により測量点間の地点について補間されたデータから、個々の地盤面高さ推定用ポイントの位置における高さを推定する(ステップS6)。
【0042】
ステップS7:地盤面高さ算出部60が、ステップS6で推定された個々の地盤面高さ推定用ポイントの高さ及び建物アウトラインの長さ(建物の外周長)に基づいて、建物に関する平均GLを算出し、また、最も高い地盤面高さ推定用ポイントの高さを「設計GL±0mm」と定義する。
【0043】
なお、上述した手順はあくまで一例であり、状況に応じて適宜変更が可能である。例えば、上記の例においては、対象土地のサーフェスモデルSMを作成してから(ステップS2)建物アウトライン上に地盤面高さ推定用ポイントを設定しているが(ステップS3,S4)、これらの実行順序を逆にしてもよいし、並行して実行してもよい。
【0044】
図6は、平均GLの算出に関する具体例を示す図である。
図6中に示した22個の丸囲数字は、
図5中に示した22個の丸囲数字(地盤面高さ推定用ポイント)に対応しており、これらの丸囲数字の地点を通る直線は、建物アウトライン、すなわち建物の外周に対応している。
【0045】
図6中(A):この例においては、建物のスパンが10.5mとされ、これに応じて建物アウトライン上には10.5mおきに地盤面高さ推定用ポイント1~22が設定されている。したがって、建物の外周長Lは231m(=10.5m×22)である。また、個々の地盤面高さ推定用ポイントに対しては、丸囲数字に付記した高さ(単位:mm)が推定されている。例えば、地盤面高さ推定用ポイント1の高さは0mmと推定され、地盤面高さ推定用ポイント2の高さは500mmと推定されている。地盤面高さ推定用ポイント1~22のうち、最も高いのは地盤面高さ推定用ポイント4の1000mmであることから、この高さが設計GL±0と定義される。
【0046】
図6中(B):地盤面高さ推定用ポイント1~22に対し推定された各高さに基づき、設計GL(1000mm)と各地盤面高さ推定用ポイントとの高低差を算出して建物が地面に接している面積、すなわち灰色で示した領域S1~S16の面積の総和を求めると、57.75m
2となる。したがって、平均GLは、領域S1~S16の面積の総和を外周長Lで除算する結果、+0.25m(250mm)と算出される。
【0047】
なお、測量時に東京湾平均海面(T.P.)を基準として高さが測量され、そのような測量データに基づいて作成されたサーフェスモデルから各地盤面高さ推定用ポイントの高さが推定された場合には、推定された高さが最も低い地盤面高さ推定用ポイントの高さを0mmに置き換えて、そのポイントと他のポイントとの高低差を算出し、建物が地面に接している面積の総和を求める。
【0048】
〔建設関連法規のチェック〕
図7~
図9は、建設関連法規のチェックの具体例を示す図である。
法規チェックにおいては、上述した地盤面算出システム1により算出された平均GL及び設計GLが用いられ、その他の必要な情報(例えば、道路幅等)は、GISから取得された地図情報等に基づいて自動的に取得される。
【0049】
図7中(A):日影規制のチェックに際しては、例えば、敷地及びその周辺が表示された画面で、いずれかの領域を選択すると、その領域に対する日影規制に関する条件の設定フォームが現れる。設定フォームは、[条件]に用途地域等を示す選択候補が表示され、[平均地盤面高さ]に平均地盤面算出システム1により算出された平均GLがセットされた状態で現れる。ユーザが適切な条件を選択して[OK]を押下すると、条件及び平均地盤面高さに対応した日影規制のチェックが実行される。また、隣地斜線制限や高さ制限等のチェックについても、これと類似の態様により実行される。
【0050】
図7中(B):建物の高さとして、日影規制においては平均GLからの高さが適用される。したがって、図示された建物BLの高さは、地上に出ている部分は60mであるが、日影規制においては計算上62mとされる。
【0051】
隣地斜線制限は、隣地境界線上の平均地盤面から一定の高さ(例えば、商業系地域では31m)の位置から一定の勾配(例えば、商業系地域では1:2.5)で引かれる隣地斜線の範囲内に建物の建設を制限するものである。但し、図示の例のように、建物のうち一定の高さを超える部分を隣地境界線から距離xだけ後退させた場合には、制限が緩和され、実際の隣地境界線よりも距離xだけ外側に隣地境界線があるものとみなされる。したがって、図示の例における建物BLは、網かけ部分については問題ないが、破線で示した左上角部は隣地斜線を超えているため、左上角部を含まないような外形に設計されることとなる。
【0052】
続いて、道路斜線規制のチェックについて説明する。道路斜線規制のチェックを実行するには、前面道路の道路高さが事前の特定されている必要がある。そこで、先ず、
図8を参照しながら、道路高さの算出の流れを説明する。
【0053】
図8中(A):地盤面算出処理の冒頭(
図3中のステップS1、
図4中(A))にて、敷地内の測量点の位置及び高さの入力を受け付けたが、これと同じタイミングで、前面道路の測量点の位置及び高さの入力を受け付け可能である。例えば、図示された敷地BDは、3つの前面道路RD1,RD2,RD3に接している。ユーザは、画面上で前面道路の測量点に対応する位置を選択することにより、高さ情報の入力が可能である。入力を終えると、その位置に道路測量点を示す印PRが表示される。
【0054】
図8中(B):
図8中(A)にて一点鎖線Bで囲まれた領域を拡大すると、前面道路RD1の端の測量点を示す印PR1が表示されている。この道路測量点PR1に最も近い測量点PT1に道路測量点PR1の高さを仮設定すると、システム内で、地盤面算出処理の最後(
図3中のステップS7)に算出された設計GLから仮設定した高さを減算することにより、道路高さが特定される。
【0055】
図8中(C):例えば、敷地及びその周辺が表示された画面で、前面道路RD1との境界線を選択すると、境界線条件の設定フォームが現れる。この設定フォームは、[隣地高]に仮設定された測量点PT1の高さがセットされ、[特定道路]に特定された前面道路RD1の道路高さがセットされた状態で表示される。
【0056】
以上の手順により前面道路の高さが特定されていれば、道路斜線規制のチェックを実行することができる。
図9は、道路斜線制限のチェックの具体例を示す図である。
【0057】
道路斜線制限は、道路の反対側(敷地に接しない側)の境界線上の道路中心高さ(図示の例においては、0.2m)の位置から一定の勾配で引かれる道路斜線の範囲内に建物の建設を制限するものである。但し、図示の例のように、建物を道路境界線から距離yだけ後退させた場合には、制限が緩和され、道路の実際の反対側境界線よりも距離yだけ外側に反対側境界線があるものとみなされる。したがって、図示の例における建物BLは、網かけ部分については問題ないが、破線で示した左上角部は道路斜線を超えているため、左上角部を含まないような外形に設計されることとなる。
【0058】
上述した実施形態の地盤面算出システム1によれば、以下のような効果が得られる。
(1)測量点に対応する点群から対象土地のサーフェスモデルが作成され、サーフェスモデルの作成により補間される測量点間の地点の高さが推定されて、このようにして推定された高さに基づいて平均GL及び設計GLが算出されるため、平均GL及び設計GLを効率よく算出することができる。
【0059】
(2)測量データを入力するだけで、測量されていない地点についてのデータがサーフェスモデルの作成に伴って自動的に補間されるため、従来のようにデータの補間に担当者の経験値に依存することがなく、一定の精度で平均GL及び設計GLを算出することができる。また、従来のように人手を介してデータの補間を行う必要がないため、作業の手間を大幅に削減することができる。
【0060】
(3)敷地及びその周辺の外形は地図情報から自動的に取得可能であるため、測量データを入力するだけで、平均GL及び設計GLを算出することができ、その上で日影規制を考慮した建物の外形や建設コストを検討することが可能となる。
【0061】
(4)地盤面算出システム1により算出された平均GL及び設計GLを用いて設計の過程で法規チェックを実行することにより、建設関連法規の要件に合致する外形となるように建物の設計を進めることができるため、作業の手戻りを防ぐことができる。また、そのように法規チェックを実行しながら設計を進めることで、建設関連法規に適合した建物を提案するとともに、建設コストを適切に算出して提示することが可能となる。
【0062】
本発明は、上述した実施形態に制約されることなく、種々に変形して実施することができる。
【0063】
上述した実施形態においては、対象土地のサーフェスモデルをBIMモデル上に作成しているが、これに代えて、BIMモデル以外の3Dモデル上に作成してもよい。そのような構成とする場合には、設計用コンピュータには、BIMツールに代えて、3Dモデルを編集可能な3DCGツールがインストールされることとなる。
【0064】
上述した実施形態においては、地盤面算出システム1により算出された平均GL及び設計GLを用いて行う建設関連法規のチェックの具体例として、日影規制、高さ制限、隣地斜線制限、道路斜線制限を挙げて説明しているが、チェック対象とする法規はこれに限定されず、その他の法規についてチェックを行ってもよい。
【0065】
その他、実施形態において図示とともに挙げたものはいずれも、飽くまで好ましい一例であり、本発明の実施に際して適宜に変形が可能であることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0066】
1 地盤面算出システム
BD 敷地
OL 建物アウトライン
SM サーフェスモデル