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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024059226
(43)【公開日】2024-05-01
(54)【発明の名称】制御装置
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/16 20060101AFI20240423BHJP
   G06T 7/00 20170101ALI20240423BHJP
   G01S 13/86 20060101ALN20240423BHJP
   G01S 13/931 20200101ALN20240423BHJP
【FI】
G08G1/16 C
G06T7/00 650A
G01S13/86
G01S13/931
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022166774
(22)【出願日】2022-10-18
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000028
【氏名又は名称】弁理士法人明成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】柴田 直樹
(72)【発明者】
【氏名】土屋 滉一
(72)【発明者】
【氏名】清水 悠介
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 亙
【テーマコード(参考)】
5H181
5J070
5L096
【Fターム(参考)】
5H181AA01
5H181CC03
5H181CC04
5H181CC11
5H181CC14
5H181LL01
5H181LL09
5J070AB24
5J070AC02
5J070AE07
5J070AF03
5J070BD08
5J070BF21
5J070BF22
5J070BF23
5L096AA09
5L096BA04
5L096DA02
5L096FA59
5L096FA64
5L096FA66
5L096FA69
5L096GA17
5L096GA51
(57)【要約】
【課題】移動体に搭載される制御装置において、物体検出の安定性の低下を抑制する。
【解決手段】カメラ110と測距装置120とを有する移動体Mに搭載される制御装置200であって、画像と物体情報とを取得し、取得された画像から点群を取得する情報取得部211と、物体情報と点群とを利用して物体が存在するか否かを判定する物体判定部212と、物体が存在すると判定された場合に移動体の発進を抑制する発進抑制部214と、を備え、物体判定部は、第1探索領域内に点群が含まれる場合に物体が存在すると判定し、第1探索領域内に点群が含まれない場合であって、物体情報が示す距離と新たに測距装置により検出された距離との差異が閾値以下である場合に第2探索領域ARs2を設定し、第2探索領域内に点群が含まれる場合に物体が存在すると判定し、第1探索領域と第2探索領域とのいずれにおいても点群が含まれない場合に物体が存在しないと判定する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カメラ(110)と測距装置(120)とを有する移動体(M)に搭載される制御装置(200)であって、
前記移動体の進行方向に向かって前記カメラにより撮像された画像と、前記測距装置により検出された前記移動体の進行方向に存在する物体(Ob)と前記移動体との距離を示す物体情報と、を取得し、取得された前記画像から前記物体の位置を表す点群を取得する情報取得部(211)と、
前記物体情報と前記点群とを利用して前記物体が存在するか否かを判定する物体判定部(212)と、
前記物体が存在すると判定された場合に、前記移動体の発進を抑制する発進抑制部(214)と、
を備え、
前記物体判定部は、予め定められた大きさの第1探索領域(ARs1)であって、前記物体情報が示す距離に応じた位置に設定される第1探索領域内に前記点群が含まれる場合に、前記物体が存在すると判定し、
前記第1探索領域内に前記点群が含まれない場合であって、取得された前記物体情報が示す距離と新たに前記測距装置により検出された距離との差異が予め定められた閾値以下である場合に、前記移動体から離れる方向に前記第1探索領域よりも拡張された第2探索領域(ARs2)を設定し、前記第2探索領域内に前記点群が含まれる場合に、前記物体が存在すると判定し、
前記第1探索領域と、前記第2探索領域とのいずれにおいても前記点群が含まれない場合に、前記物体が存在しないと判定する、
制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の制御装置であって、
前記物体情報を保持する不揮発メモリ(221)と、
前記物体判定部により前記物体が存在すると判定された場合であって、前記移動体が停止している場合に、新たに取得した前記物体情報を前記不揮発メモリに書き込む情報更新部(213)と、
をさらに備え、
前記不揮発メモリは、前記物体の有無を示す情報をさらに保持する、
制御装置。
【請求項3】
請求項2に記載の制御装置であって、
前記情報取得部は、前記物体情報を取得した後、前記不揮発メモリに保持された前記物体情報を消去する、
制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の前方における物体の有無および物体と車両との距離を検出し、運転者によるシフト操作やペダル操作の間違いによる車両の誤発進を抑制する誤発進抑制技術が知られている。特許文献1に記載の物体検知装置は、車両に搭載されたカメラにより車両の前方を撮像し、車両の前方における物体の有無および物体と車両との距離を検出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-12742号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ミリ波レーダ等の測距装置とカメラとを組み合わせた物体検知装置では、物体検知装置の起動時において物体の接地位置がカメラの画角から外れた状態となっている場合、カメラによる物体検出位置と測距装置による物体検出位置とに差異が生じ、安定して物体の有無および物体と車両との距離を検出できないおそれがある。このような問題は、車両に限らず、航空機やロボット等の移動体の発進時においても発生し得る。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、以下の形態として実現することが可能である。
【0006】
本開示の一形態によれば、制御装置(200)が提供される。この制御装置は、カメラ(110)と測距装置(120)とを有する移動体(M)に搭載される制御装置であって、前記移動体の進行方向に向かって前記カメラにより撮像された画像と、前記測距装置により検出された前記移動体の進行方向に存在する物体(Ob)と前記移動体との距離を示す物体情報と、を取得し、取得された前記画像から前記物体の位置を表す点群を取得する情報取得部(211)と、前記物体情報と前記点群とを利用して前記物体が存在するか否かを判定する物体判定部(212)と、前記物体が存在すると判定された場合に、前記移動体の発進を抑制する発進抑制部(214)と、を備え、前記物体判定部は、予め定められた大きさの第1探索領域(ARs1)であって、前記物体情報が示す距離に応じた位置に設定される第1探索領域内に前記点群が含まれる場合に、前記物体が存在すると判定し、前記第1探索領域内に前記点群が含まれない場合であって、前記物体情報が示す距離と新たに前記測距装置により検出された距離との差異が予め定められた閾値以下である場合に、前記移動体から離れる方向に前記第1探索領域よりも拡張された第2探索領域(ARs2)を設定し、前記第2探索領域内に前記点群が含まれる場合に、前記物体が存在すると判定し、前記第1探索領域と、前記第2探索領域とのいずれにおいても前記点群が含まれない場合に、前記物体が存在しないと判定する。
【0007】
この形態の制御装置によれば、画像から取得された点群が第1探索領域に含まれない場合であっても、物体情報が示す距離と新たに測距装置により検出された距離との差異が閾値以下である場合には、第1探索領域よりも拡張された第2探索領域を用いて物体が存在するか否かを判定する。これにより、カメラによる物体検出位置と測距装置による物体検出位置とに差異が生じていても、閾値以下の差異である場合にはかかる差異を許容してカメラと測距装置とを併用した物体検出を実現できるので、物体検出の安定性の低下を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施形態の制御装置の概略構成を示すブロック図である。
図2】本実施形態の物体認識処理の手順を示すフローチャートである。
図3】本実施形態の情報取得処理の手順を示すフローチャートである。
図4】ステップS170における処理の一例を示す説明図である。
図5】ステップS170における処理の一例を示す説明図である。
図6】本実施形態の物体判定処理の手順を示すフローチャートである。
図7】ステップS210における処理の一例を示す説明図である。
図8】物体の検出位置ずれが生じる状況の一例を示す説明図である。
図9】ステップS240における処理の一例を示す説明図である。
図10】本実施形態の情報更新処理の手順を示す説明図である。
図11】本実施形態の発進抑制処理の手順を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
A.実施形態:
A-1.装置構成:
図1に示すように、本実施形態では、車両Mは、カメラ110と、測距装置120と、制御装置200とを備える。
【0010】
カメラ110は、車両Mの前方を撮像して画像を取得する。本実施形態では、車両Mは、カメラ110として単眼カメラを備える。なお、車両Mは、カメラ110として、単眼カメラに代えてステレオカメラを備えてもよい。
【0011】
測距装置120は、車両Mの進行方向に存在する物体の有無および物体と車両Mとの距離を検出する。物体には、例えば、ガードレールや家等の建造物、ブロック塀等の壁面が含まれる。本実施形態では、車両Mは、測距装置120としてミリ波レーダを備える。なお、車両Mは、ミリ波レーダに限らず、LiDAR(Light Detection and Ranging)、超音波センサ等を測距装置120として備えてもよい。
【0012】
制御装置200は、CPU210と、ROM220と、RAM230とを備えるコンピュータとして構成されている。かかるコンピュータの一例としてECU(Electronic Control Unit)が挙げられる。本実施形態において、ROM220は、書き換え可能な不揮発メモリで構成されている。また、ROM220は、測距装置120により検出された物体の有無および物体と車両Mとの距離を示す情報(以下、「物体情報」とも呼ぶ)を保持する情報保持部221を有する。
【0013】
制御装置200は、予めインストールされたプログラムを実行することによって、情報取得部211と、物体判定部212と、情報更新部213と、発進抑制部214と、として機能する。情報取得部211は、カメラ110により撮像された画像と、測距装置120により検出された距離と、情報保持部221に保持された物体情報とを取得し、取得された画像から物体の位置を表す点群を取得する。物体判定部212は、取得された点群と、物体情報とを利用して物体が存在するか否かを判定する。情報更新部213は、物体判定部212により物体が存在すると判定された場合であって、車両Mが停止している場合に、新たに取得した物体情報を情報保持部221に書き込む。発進抑制部214は、物体判定部212により物体が存在すると判定された場合に、ブレーキを制御して車両Mの発進を抑制する。
【0014】
A-2.物体認識処理:
制御装置200は、車両Mがイグニッションオン状態となっている間、図2に示す物体認識処理を繰り返し実行する。制御装置200は、かかる処理を実行することにより、車両Mの進行方向に物体が存在するか否かを判定し、かかる物体に関する情報を更新する。物体認識処理において、制御装置200は、情報取得処理(ステップS100)、物体判定処理(ステップS200)、情報更新処理(ステップS300)、発進抑制処理(ステップS400)を実行する。本実施形態では、制御装置200は、ステップS300とステップS400とを並列して実行する。なお、制御装置200は、ステップS300の後にステップS400を実行してもよい。
【0015】
A-2-1.情報取得処理:
情報取得部211は、図3に示す情報取得処理を実行する。ステップS110において、情報取得部211は、情報保持部221に物体情報が保持されているか否かを判定する。情報保持部221に物体情報が保持されている場合(ステップS110:Yes)、情報取得部211は、情報保持部221から物体情報を取得し(ステップS120)、情報保持部221に保持された物体情報を消去する(ステップS130)。一度参照した物体情報を消去することにより、時間が経過して現実の状況と乖離した物体情報を誤って判定に利用してしまうことを回避するためである。情報保持部221に物体情報が保持されていない場合(ステップS110:No)、情報取得部211は、後述するステップS160を実行する。
【0016】
物体情報の取得後に、車両Mが予め設定された距離移動した場合(ステップS140:Yes)、情報取得部211は、取得した物体情報を消去する(ステップS150)。車両Mが移動したことにより現実の状況と乖離した物体情報を誤って判定に利用してしまうことを回避するためである。車両Mが予め設定された距離移動しない場合(ステップS140:No)、情報取得部211は、物体情報を保持したまま、後述するステップS160を実行する。
【0017】
ステップS160において、情報取得部211は、カメラ110により撮像された画像および測距装置120により検出された距離を取得する。以下の説明では、本ステップにおいて取得された距離を「現在距離」とも呼ぶ。
【0018】
ステップS170において、情報取得部211は、取得した画像から物体の位置を表す点群を取得する。情報取得部211は、例えば、セマンティックセグメンテーション等の画像解析技術を用いて、画像から物体を抽出し、その物体の輪郭を検出して点群を取得する。
【0019】
本実施形態の情報取得部211による点群の取得について、より具体的に説明する。図4に示すように、情報取得部211は、画像IMのうち、ハッチングを付して示す非処理領域AReを除いた処理領域ARp内に存在する物体Obを対象として点群を取得する。情報取得部211は、物体Obのうち、物体Obと地面Grとの境界線(以下、「物体Obの下端」とも呼ぶ)上の複数の点Pを点群として取得する。また、図5に示すように、物体Obと車両Mとの距離が近く、物体Obの下端が処理領域ARpから外れている場合、物体判定部212は、物体Obのうち、処理領域ARpと非処理領域AReとの境界線(以下、「処理領域ARpの下端」とも呼ぶ)上の複数の点Pを点群として取得する。
【0020】
各点Pは、各点Pと車両Mとの距離情報を有する。かかる距離情報は、画像IMにおける各点Pの座標、車両Mにおけるカメラ110の設置位置およびカメラ110の画角を利用して幾何学的に算出される。情報取得部211は、このように算出された距離情報を有する複数の点Pを地図上にマッピングし、物体の位置を認識する。
【0021】
図3に示すステップS170の終了後、情報取得部211は情報取得処理を終了する。
【0022】
A-2-2.物体判定処理:
物体判定部212は、図6に示す物体判定処理を実行する。ステップS210において、物体判定部212は、取得された点群の少なくとも一部が第1探索領域内に含まれるか否かを判定する。「第1探索領域」は、予め定められた大きさの領域であって、現在距離に応じた位置に設定される領域を意味する。以下の説明では、本ステップにおける判定条件を「通常条件」とも呼ぶ。
【0023】
図7に示すように点群の少なくとも一部が第1探索領域ARs1内に含まれると判定された場合(ステップS210:Yes)、図6に示すように、物体判定部212は、「通常条件で物体が存在する」と判定する(ステップS250)。
【0024】
他方、点群が第1探索領域内に含まれていないと判定された場合(ステップS210:No)、物体判定部212は、情報取得部211により物体情報が取得済み(ステップS220:Yes)、かつ、取得した物体情報における物体との距離(以下、「記憶距離」)と、現在距離との差異が予め設定された閾値以下であるか否かを判定する(ステップS230)。本実施形態では、物体判定部212は、かかる判定により、物体情報に係る物体と現在認識されている物体とが同一物体であるか否か判定する。
【0025】
点群が第1探索領域内に含まれていないと判定される場合について、より具体的に説明する。上述したように、図5に示すように物体Obの下端が処理領域ARpから外れている場合、情報取得部211は、物体Obのうち処理領域ARpの下端上の複数の点Pを点群として取得する。例えば、車両Mが駐車する際に、物体Obである壁に近づいていき停車する場合には、物体Obの下端は途中までは処理領域ARp内に収まっているが、壁にかなり近づいた状態では処理領域ARpから外れることが起こり得る。そしてこのような状況において、時系列に連続する複数の画像IMについて点群が取得されている場合には、最終的に物体Obの下端が処理領域ARpから外れた状態となっていても、当初は処理領域ARp内に収まっていた物体Obの下端が、車両Mの接近に伴い処理領域ARpから外れていく履歴を利用することにより、物体Obと車両Mとの距離を正しく検出できる。しかしながら、車両Mがイグニッションオフ状態からイグニッションオン状態となって最初に取得された画像IMにおいて物体Obの下端が処理領域ARpから外れた状態となっている場合、情報取得部211は、物体Obの下端が処理領域ARpの下端に位置しているとして誤って認識してしまう。そのため、情報取得部211は、図8に示すように、物体Obが物体Obfの位置に存在するように誤認識してしまい、物体Obとの正しい距離Dtではなく、距離Dtよりも大きい誤った距離Dfを距離情報として有する点群をマッピングしてしまう。以上説明したように、実際の物体の位置よりも車両Mから離れる方向にずれた位置に点群がマッピングされ、点群が第1探索領域から外れることとなる。このような検出位置のずれ量は、カメラ110の設置位置およびカメラ110の画角から、幾何学的に予め求めることができる。
【0026】
図6に示すように、記憶距離と現在距離との差異が閾値以下である場合(ステップS230:Yes)、物体判定部212は、図9に示すように第1探索領域よりも車両Mから離れる方向に拡張された第2探索領域ARs2に点群の少なくとも一部が含まれるか否かを判定する(ステップS240)。第1探索領域に対する第2探索領域の拡張量は、予め算出された検出位置のずれ量に応じて任意に設定可能である。以下の説明では、ステップS240における判定条件を「緩和条件」とも呼ぶ。記憶距離と現在距離との差異が小さく、物体情報に係る物体と現在認識されている物体とが同一物体といえる場合には、上述した検出位置のずれ量を許容した判定を行い、物体検出の安定性の低下を抑制している。
【0027】
このように本実施形態では、物体判定部212は、車両Mのイグニッションオン時の物体検出において位置ずれが生じた場合であっても、記憶距離と現在距離との差異が小さく、物体情報に係る物体と現在認識されている物体とが同一物体といえる場合には、第2探索領域を利用して判定を行う。これにより、物体判定部212は、かかる位置ずれを許容して判定を行うことができ、物体検出の安定性の低下を抑制できる。
【0028】
図6に示すように、点群の少なくとも一部が第2探索領域内に含まれると判定された場合(ステップS240:Yes)、物体判定部212は、「緩和条件で物体が存在する」と判定する(ステップS252)。
【0029】
物体情報が取得されていない場合(ステップS220:No)、物体情報と現在距離との差異が閾値より大きい場合(ステップS230:No)、点群が第2探索領域内に含まれていないと判定された場合(ステップS240:No)のいずれかの場合には、物体判定部212は、「物体が存在しない」と判定する(ステップS254)。
【0030】
上述のステップS250、ステップS252およびステップS254のうちのいずれかの判定がなされた後、物体判定部212は、物体判定処理を終了する。
【0031】
A-2-3.情報更新処理:
情報更新部213は、図10に示す情報更新処理を実行する。ステップS310において、情報更新部213は、車両Mが停止中であるか否かを判定する。上述のように、物体情報を利用した判定は、車両Mのイグニッションオン時に行われる。かかる判定においてはイグニッションオフ直前の物体情報を用いることが好ましい。そこで本実施形態では、車両Mがイグニッションオフ状態に移行する可能性が高い停止状態であることを情報保持部221への物体情報の書き込みのための条件としている。
【0032】
車両Mが停止中である場合(ステップS310:Yes)、情報更新部213は、上述の物体判定処理において「通常条件で物体が存在する」という判定がなされたか否かを判定する(ステップS320)。通常条件による判定の方が、位置ずれを許容する緩和条件による判定に比べて判定結果の信頼度が高いからである。
【0033】
「通常条件で物体が存在する」という判定がなされた場合であって(ステップS320:Yes)、情報保持部221に物体情報が保持されていない場合(ステップS330:No)、または、情報保持部221に物体情報が保持されており(ステップS330:Yes)、記憶距離と現在距離との差異が予め設定された閾値以上である場合(ステップS340:Yes)、情報更新部213は、現在距離を情報保持部221に書き込み(ステップS350)、情報更新処理を終了する。
【0034】
車両Mが停止中でない場合(ステップS310:No)、「通常条件で物体が存在する」という判定がなされていない場合(ステップS320:No)、記憶距離と現在距離との差異が閾値未満である場合(ステップS340:No)、のうちのいずれかの場合、情報更新部213は、情報保持部221に物体情報を書き込むことなく情報更新処理を終了する。
【0035】
A-2-4.発進抑制処理:
発進抑制部214は、図11に示す発進抑制処理を行う。運転者が車両Mを発進させようとしている場合(ステップS410:Yes)であって、上述の物体判定処理において通常条件と緩和条件とのいずれかで「物体が存在する」という判定がなされた場合(ステップS420:Yes)、発進抑制部214は、ブレーキを制御して車両Mの発進を抑制し(ステップS430)、発進抑制処理を終了する。
【0036】
車両Mが停止中である場合(ステップS410:No)、または、上述の物体判定処理において「物体が存在しない」という判定がなされた場合(ステップS420:No)、発進抑制部214は、ステップS430を実行することなく発進抑制処理を終了する。
【0037】
以上説明した本実施形態の制御装置200によれば、画像から取得された点群が第1探索領域に含まれない場合であっても、記憶距離と現在距離との差異が閾値以下である場合には、第1探索領域よりも拡張された第2探索領域を用いて物体が存在するか否かを判定する。これにより、カメラ110による物体検出位置と測距装置120による物体検出位置とに差異が生じていても、閾値以下の差異である場合にはかかる差異を許容してカメラ110と測距装置120とを併用した物体検出を実現できるので、物体検出の安定性の低下を抑制できる。
【0038】
また、制御装置200は、物体と車両Mとの距離を示す情報に加えて、物体の有無を示す情報を情報保持部221に保持するので、発進抑制部214による発進抑制制御の作動条件として物体の有無を示す情報を利用できる。そのため、例えば、検出された距離と閾値との関係により物体の有無を判定する場合に比べて、発進抑制処理が煩雑になることを抑制できる。
【0039】
また、情報取得部211は、物体情報を取得した後、情報保持部221に保持された物体情報を消去するので、車両Mが移動したことにより現実の状況と乖離した物体情報を誤って判定に利用してしまうことを回避できる。
【0040】
B.他の実施形態:
(B1)上記実施形態において、制御装置200は車両Mに搭載されているが、本開示はこれに限定されない。制御装置200は、車両Mに限らず、例えば、航空機やロボット等の任意の種類の移動体に搭載されてもよい。かかる形態によっても、上記実施形態と同様の効果を奏する。
【0041】
(B2)上記実施形態において、制御装置200は情報保持部221を備え、情報取得部211は情報保持部221から物体情報を取得するが、本開示はこれに限定されない。情報取得部211は、物体情報を保持する不揮発メモリを備える測距装置120から物体情報を直接取得してもよい。かかる形態によっても、上記実施形態と同様の効果を奏する。
【0042】
(B3)上記実施形態において、情報保持部221は、物体情報として物体の有無および物体と車両Mとの距離を示す情報を保持するが、本開示はこれに限定されない。情報保持部221は、物体と車両Mとの距離を示す情報のみ保持してもよい。かかる形態によっても、上記実施形態と同様の効果を奏する。加えて、情報保持部221が保持する情報量を抑制できる。
【0043】
(B4)上記実施形態において、情報取得部211は、物体情報を取得した後、情報保持部221に保持された物体情報を消去するが、本開示はこれに限定されない。情報取得部211は、情報保持部221に保持された物体情報の上書きのみを行ってもよい。かかる形態によっても、上記実施形態と同様の効果を奏する。
【0044】
本開示は、上述の実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した形態中の技術的特徴に対応する各実施形態中の技術的特徴は、上述の課題の一部または全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部または全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【0045】
本開示に記載の制御装置200およびその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサおよびメモリを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。あるいは、本開示に記載の制御装置200およびその手法は、一つ以上の専用ハードウエア論理回路によってプロセッサを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。もしくは、本開示に記載の制御装置200およびその手法は、一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサおよびメモリと一つ以上のハードウエア論理回路によって構成されたプロセッサとの組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていてもよい。
【符号の説明】
【0046】
110…カメラ、120…測距装置、200…制御装置、211…情報取得部、212…物体判定部、214…発進抑制部、M…車両、Ob…物体、ARs1…第1探索領域、ARs2…第2探索領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11