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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024005923
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】液体噴霧装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20240110BHJP
   B41J 2/165 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
B41J2/01 301
B41J2/01 123
B41J2/01 303
B41J2/01 305
B41J2/165 101
B41J2/01 121
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022106397
(22)【出願日】2022-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】000116057
【氏名又は名称】ローランドディー.ジー.株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】塚本 紫門
(72)【発明者】
【氏名】上田 尚樹
(72)【発明者】
【氏名】四ノ宮 文二
(72)【発明者】
【氏名】萩森 普
(72)【発明者】
【氏名】千田 雄大
(72)【発明者】
【氏名】山本 真也
(72)【発明者】
【氏名】両角 芳彦
(72)【発明者】
【氏名】川嶋 忠
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056FA10
2C056HA29
2C056HA38
2C056HA41
2C056HA42
2C056HA60
2C056JA01
2C056KD10
(57)【要約】
【課題】スプレー機構を備えた液体噴霧装置に関する新規技術を提供する。
【解決手段】媒体に対して霧化エアー及び液剤を噴霧するスプレーノズルを備えたスプレー機構と、前記スプレー機構を走査方向に沿って移動可能に保持するキャリッジと、を有する液体噴霧装置であって、前記スプレー機構は、鉛直方向に対して前記スプレーノズルの角度を変更可能に支持する支持部を備え、前記スプレー機構は、前記スプレーノズルの角度を前記鉛直方向から傾けた状態で前記霧化エアーのみを噴霧可能に構成されている。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒体に対して霧化エアー及び液剤を噴霧するスプレーノズルを備えたスプレー機構と、
前記スプレー機構を走査方向に沿って移動可能に保持するキャリッジと、
を有する液体噴霧装置であって、
前記スプレー機構は、鉛直方向に対して前記スプレーノズルの角度を変更可能に支持する支持部を備え、
前記スプレー機構は、前記スプレーノズルの角度を前記鉛直方向から傾けた状態で前記霧化エアーのみを噴霧可能に構成されている、ことを特徴とする液体噴霧装置。
【請求項2】
請求項1に記載の液体噴霧装置であって、
インクを吐出するインクノズルを備え、前記キャリッジに保持されつつ前記走査方向に沿って移動可能なインクヘッドと、
前記走査方向と交差する搬送方向に前記媒体を搬送する搬送機構と、
を有し、
前記インクヘッドと前記スプレー機構とを動作させることによって前記媒体に画像を形成する、ことを特徴とする液体噴霧装置。
【請求項3】
請求項2に記載の液体噴霧装置であって、
前記支持部は、前記搬送方向に沿った回転軸を中心に前記スプレーノズルを回転可能に支持しており、
前記鉛直方向に対する前記スプレーノズルの角度を、前記走査方向における一方側若しくは他方側に傾けて前記霧化エアーを噴霧する、ことを特徴とする液体噴霧装置。
【請求項4】
請求項3に記載の液体噴霧装置であって、
前記鉛直方向に対する前記スプレーノズルの角度を自在に変更可能である、ことを特徴とする液体噴霧装置。
【請求項5】
請求項2~4の何れか1項に記載の液体噴霧装置であって、
前記鉛直方向に対する前記スプレーノズルの角度を、前記走査方向において前記インクヘッドが配置されている方向の反対側に傾けて前記霧化エアーを噴霧する、ことを特徴とする液体噴霧装置。
【請求項6】
請求項5に記載の液体噴霧装置であって、
前記インクノズルをカバーするキャップを有し、
前記鉛直方向に対する前記スプレーノズルの角度を、前記走査方向において前記キャップが配置されている方向の反対側に傾けて前記霧化エアーを噴霧する、ことを特徴とする液体噴霧装置。
【請求項7】
請求項5に記載の液体噴霧装置であって、
前記媒体に対してイオンを照射するイオナイザーを有し、
前記イオナイザーによって前記媒体にイオンが照射された後で、前記媒体に対して前記スプレー機構から前記霧化エアーが噴霧される、ことを特徴とする液体噴霧装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体噴霧装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、媒体に画像を印刷する際に、画像が印刷される領域に、プライマー(下地剤)やトップコート(仕上げ剤)等の液剤をスプレーで塗布する技術が知られている。例えば特許文献1には、ガラス面に耐候性、耐久性に優れた写真画像を印字、印画するために、トップコート工程を実施する際に、トップコート剤等の液剤をスプレー塗装する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004-34675号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、液剤の塗布を行うスプレー機構において、液剤を塗布する以外の他の機能を実現させたいという要望がある。
【0005】
本発明は、スプレー機構を備えた液体噴霧装置に関する新規技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための主たる発明は、媒体に対して霧化エアー及び液剤を噴霧するスプレーノズルを備えたスプレー機構と、前記スプレー機構を走査方向に沿って移動可能に保持するキャリッジと、を有する液体噴霧装置であって、前記スプレー機構は、鉛直方向に対して前記スプレーノズルの角度を変更可能に支持する支持部を備え、前記スプレー機構は、前記スプレーノズルの角度を前記鉛直方向から傾けた状態で前記霧化エアーのみを噴霧可能に構成されている、ことを特徴とする液体噴霧装置である。
【0007】
本発明の他の特徴については、本明細書の記載により明らかにする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、スプレー機構を備えた液体噴霧装置に関する新規技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1A及び図1Bは、印刷装置1の基本構成の説明図である。
図2】ヘッドユニット40の構成の説明図である。
図3】スプレー機構50の構成について説明する模式図である。
図4図4A及び図4Bは、スプレー機構50の噴霧動作について説明する図である。
図5図5A及び図5Bは、スプレーノズル51の角度を変更して霧化エアーを噴霧する動作について説明する図である。
図6】印刷装置1を用いて画像を印刷する動作のフローを表す図である。
図7】埃除去処理における印刷装置1の動作について説明する図である。
図8】画像印刷処理における印刷装置1の動作について説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
===実施形態===
<基本構成>
本実施形態に係る液体噴霧装置の一例として、液剤を噴霧するスプレー機構と、インクを吐出するインクヘッドとを備えた印刷装置1について説明する。図1A及び図1Bは、印刷装置1の基本構成の説明図である。図1Aは、印刷装置1の外観の概略説明図である。図1Bは、印刷装置1のブロック図である。
【0011】
以下の説明では、後述するキャリッジ21,22の移動方向を「走査方向」と呼ぶことがある。また、媒体Mの移動方向を「搬送方向」と呼ぶことがある。
【0012】
印刷装置1は、媒体M(印刷用紙、印刷フィルムなど)に画像を印刷する装置である。具体的には、印刷装置1は、インクジェットプリンタである。印刷装置1は、キャリッジユニット20と、搬送ユニット30と、ヘッドユニット40と、スプレー機構50と、コントローラー60と、を有する。
【0013】
キャリッジユニット20は、インクキャリッジ21と、スプレーキャリッジ22と、キャリッジ用モーター25とを備え、各キャリッジ21,22をそれぞれ走査方向に移動させるユニットである。インクキャリッジ21は、後述するインクヘッド41を保持しながら、走査方向に往復移動する部材である。スプレーキャリッジ22は、後述するスプレー機構50を保持しながら、走査方向に往復移動する部材である。インクキャリッジ21の動作と、スプレーキャリッジ22の動作は、コントローラー60によってそれぞれ独立して制御される。なお、インクキャリッジ21とスプレーキャリッジ22とを互いに連結することで一体的に走査方向に移動させることも可能である。キャリッジ用モーター25は、インクキャリッジ21及びスプレーキャリッジ22を走査方向に移動させるためのモーター(駆動部)である。
【0014】
搬送ユニット30は、媒体Mを搬送方向に搬送するユニットである。搬送対象となる媒体Mは、ロール紙のような長尺状の印刷媒体でも良いし、単票用紙でも良い。また、媒体Mは、紙に限られるものではなく、フィルムや布などでも良い。搬送ユニット30は、例えば搬送ローラー31と搬送用モーター35とを有する。搬送ローラー31は、回転することによって媒体Mを搬送方向に搬送する部材である。搬送用モーター35は、搬送ローラー31を回転させるためのモーター(駆動部)である。なお、搬送ユニット30は、搬送ローラー31を用いた構成に限られるものではない。例えば、搬送ユニット30は、搬送台(フラットベッド)を有し、この搬送台を移動させることによって媒体Mを搬送方向に搬送するように構成されても良い。
【0015】
図2は、ヘッドユニット40の構成の説明図である。ヘッドユニット40は、媒体Mに液体(インク)を吐出するためのユニットである。ヘッドユニット40は、インクヘッド41を有する。
【0016】
インクヘッド41は、インクを吐出する複数のノズル(インクノズル43)を有するヘッドである。インクは、画像(インク画像;カラー画像)を構成するドット(インクドット)を媒体Mに形成するための液体である。インクは、カラーインクやプロセスインクなどと呼ばれることもある液体である。インクヘッド41は、複数のインクノズル列44を有する。複数のインクノズル列44は、走査方向に並んで配置されている。本実施形態の印刷装置1において、インクヘッド41は、例えば、シアンインクを吐出するシアンインクノズル列44Cと、マゼンタインクを吐出するマゼンタインクノズル列44Mと、イエローインクを吐出するイエローインクノズル列44Yと、ブラックインクを吐出するブラックインクノズル列44Kとを有している。これら4色のインクノズル列44C,44M,44Y,44Kは、図2に示されるように走査方向に並んで配置されている。なお、インクヘッド41から吐出されるインクの色は、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ブラック(K)の4色に限られるものでは無い。
【0017】
インクノズル列44は、それぞれ搬送方向に等間隔(2×P)で並ぶ複数のノズル(インクノズル43)を有する。ここでは、各色のインクノズル列44C~44Kは、それぞれ千鳥配置された複数のノズル(インクノズル43C~43K)によって構成されている。つまり、各々のインクノズル列44は、第1ノズル群と第2ノズル群とにより構成されており、第1ノズル群は、搬送方向に所定ピッチ(2×P)で並ぶ複数のノズル(インクノズル43)を有しており、第2ノズル群は、第1ノズル群のノズル(インクノズル43)に対して搬送方向に半ピッチPだけずれた状態で搬送方向に所定ピッチ(2×P)で並ぶ複数のノズル(インクノズル43)を有している。但し、それぞれのインクノズル列44は、搬送方向に1列に並ぶ複数のインクノズル43によって構成されても良い。
【0018】
図1Bに示すように、ヘッドユニット40は、ヘッド駆動部45を有する。ヘッド駆動部45は、インクヘッド41の各ノズルからの液体(インク)の吐出/非吐出を行わせる駆動部である。ヘッド駆動部45は、例えばヘッドがピエゾ式であればピエゾ素子である。コントローラー60は、ヘッド駆動部45を制御することによって、それぞれのノズルからの液体の吐出/非吐出を制御することになる。
【0019】
スプレー機構50は、スプレー機構駆動部55を有し、所定の液剤を霧化エアーと共に噴霧することにより、媒体Mに対して当該液剤を塗布するユニットである。スプレー機構50の機能及び構成については後で説明する。
【0020】
コントローラー60は、印刷装置1の制御を司る制御部である。コントローラー60は、外部のコンピューターからの印刷指令に基づいて、印刷装置1の駆動部(キャリッジ用モーター25、搬送用モーター35、ヘッド駆動部45、及びスプレー機構駆動部55等)を制御する。また、後述するように、コントローラー60は、スプレー機構50を用いて媒体M上に液剤を噴霧する際に、霧化エアーの噴霧タイミング及び液剤の噴霧タイミングの制御や、霧化エアーの噴霧方向の調整を行う。
【0021】
また、印刷装置1は、クリーニングユニット70を備えていても良い。クリーニングユニット70は、インクヘッド41のクリーニングを行うユニットであり、印刷待機時にインクノズル列44を保護するキャップや、インクノズル列44の表面に付着したインク等の汚れを清掃するワイパー等を有する。図1において、クリーニングユニット70は印刷装置1の走査方向における一方側の端部に設けられている。印刷待機時において、キャリッジユニット20が移動していないときは、ヘッドユニット40及びスプレー機構50は、通常、走査方向においてクリーニングユニット70が設けられている位置(ホームポジションとも呼ぶ)に配置されている。
【0022】
さらに、印刷装置1は、イオナイザー80を備えていても良い。イオナイザー80は、イオンを発生させて媒体Mに照射することにより、媒体Mの表面に帯電している静電気を除去する静電気除去装置である。図1において、イオナイザー80は走査方向に沿って配置され、媒体Mの走査方向における幅よりも広い領域にイオンを照射することが可能となっている。したがって、コントローラー60からの指令によって、媒体Mを搬送方向に搬送しながらイオナイザー80からイオンを照射することにより、媒体Mの全体に亘って静電気を除去することができる。なお、イオナイザー自体は公知であるため、ここではイオン発生の原理等についての詳細な説明は省略する。
【0023】
<スプレー機構50について>
図3は、スプレー機構50の構成について説明する模式図である。スプレー機構50は、スプレーノズル51と、エアーバルブ52と、ニードル53と、液剤タンク54と、ノズル支持部56とを有する。
【0024】
スプレーノズル51は、液剤及び霧化エアーを噴霧するノズルであり、エアーノズル511と、液剤ノズル512とを有している。エアーノズル511と液剤ノズル512は、中心軸を共通とする直径の異なる二つのシリンダ状のノズルである。エアーノズル511は外部から供給された圧縮空気を溜めて、当該圧縮空気を先端部から霧化エアーとして噴霧する部位である。霧化エアーは、図3のようにエアーノズル511の先端から噴霧対象(本実施形態では媒体M)に向けて放射状に広がりながら噴霧される。液剤ノズル512は、外部(本実施形態では液剤タンク54)から供給された液剤を溜めて、当該液剤を、エアーノズル511から噴射される霧化エアーに混入させ、微粒化して噴霧させる部位である。
【0025】
エアーバルブ52は、外部から供給される圧縮空気の圧力を調整してエアーノズル511に供給するための調節弁である。本実施形態において、エアーバルブ52は、スプレー機構駆動部55により作動し、コントローラー60によって動作を制御することが可能である。これにより、スプレーノズル51から噴霧される霧化エアーの噴霧タイミングが調整される。なお、圧縮空気は、公知のコンプレッサー等によってエアーノズル511に供給される。コンプレッサーは、印刷装置1自体に設けられていても良いし、印刷装置1の外部に設けられていても良い。
【0026】
ニードル53は、液剤ノズル512の中心軸に沿って配置され、先端部分が細くなった針状の部材である。ニードル53は、スプレー機構駆動部55によって液剤ノズル512の軸方向に沿ってスライド移動可能に構成されている。図3において、ニードル53が最も下側に位置しているときには、該ニードル53によって液剤ノズル512の先端が閉塞される。そして、この状態からニードル53が液剤ノズル512の軸方向に沿って上側に移動すると、液剤ノズル512の先端が開放され、液剤ノズル512内の液剤がエアーノズル511側に供給され、霧化エアーと共に噴霧される。すなわち、コントローラー60によってニードル53の動作を制御することによって、スプレー機構50における液剤の噴霧を制御することが可能となる。
【0027】
液剤タンク54は、スプレーノズル51から噴霧される所定の液剤(例えば、プライマーやトップコート剤)を貯留するタンクであり、液剤ノズル512に連通して、該液剤ノズル512の内部に液剤を供給する。
【0028】
なお、スプレー機構50から液剤を噴霧する動作において、エアーバルブ52及び液剤タンク54は必ずしも走査方向に移動する必要は無い。したがって、これら(52,54)はスプレーキャリッジ22に搭載されず、印刷装置1の所定の場所に固定されていても良い。
【0029】
ノズル支持部56は、スプレーノズル51の角度を鉛直方向に対して変更可能に支持する部材である。図3に示されるように、スプレーノズル51は、エアーノズル511及び液剤ノズル512の中心軸が鉛直方向に沿うように配置されており、鉛直下方向に向かって霧化エアー及び液剤を噴霧する。すなわち、スプレーノズル51は、通常の場合、媒体Mに対して垂直な方向から霧化エアー及び液剤を噴霧する。この状態からノズル支持部56によってスプレーノズル51が支持される角度を変更することで、鉛直方向(媒体Mの垂直方向)に対して傾けた状態でスプレーノズル51から霧化エアー等を噴霧することが可能となる。
【0030】
図4A及び図4Bは、スプレー機構50の噴霧動作について説明する図である。図4Aは、スプレー機構50から霧化エアーのみを噴霧する動作を表し、図4Bは、スプレー機構50から霧化エアー及び液剤を噴霧する動作を表している。図4Aにおいて、霧化エアーを噴霧する場合、コントローラー60は、ニードル53によって液剤ノズル512を閉塞させた状態で、エアーバルブ52を開いてエアーノズル511内に圧縮空気を送り込む。そして、エアーノズル511内に充満した圧縮空気が、エアーノズル511の先端部から噴射される。図4Aのようにエアーノズル511の先端部ではノズル径が絞られており、圧縮空気は、放射状に広がりながら霧状の霧化エアーとして噴霧される。
【0031】
次に、液剤を噴霧する場合、コントローラー60は、図4Aの状態からニードル53を動作させ、液剤ノズル512の先端を開放する。すると、液剤タンク54に加えられている正圧によって液剤ノズル512の先端から液剤が吐出される。なお、本実施形態では、液剤タンク54の正圧によって液剤の吐出が行われるため、霧化エアーを噴霧していない状態で液剤を吐出することも可能である。このとき、ニードル53の移動量を調整して、液剤ノズル512先端部の開放量の大小を変更することで、噴霧される液剤の量を調整することが可能である。噴霧された液剤は、霧化エアーと共に放射状に広がりながら媒体に付着する。これにより、媒体表面に均一かつ広範囲に液剤を塗布することが可能となる。
【0032】
図5A及び図5Bは、スプレーノズル51の角度を変更して霧化エアーを噴霧する動作について説明する図である。上述したように、本実施形態の印刷装置1では、ノズル支持部56によって支持されているスプレーノズル51の角度を、鉛直方向に対して変更することができる。
【0033】
ノズル支持部56は、走査方向及び鉛直方向と直交する搬送方向(図5では紙面の奥行方向)に沿った回転軸56cを中心に、回転可能にスプレーノズル51を支持している。通常は、スプレーノズル51の中心軸が鉛直方向に沿うように支持されており、図5Aのように鉛直方向の下向きに霧化エアー(及び液剤)を噴霧することが可能となっている。この状態で、スプレーノズル51から霧化エアーが噴霧された場合、鉛直方向の下向きに噴霧された霧化エアーは、放射状に広がりながら媒体Mに衝突する。そして、媒体Mで跳ね返った霧化エアーは、図5Aの矢印のように媒体M上を均等に拡散する。
【0034】
次に、図5Bでは、ノズル支持部56が回転軸56cを中心に、鉛直方向を基準として時計回り方向に角度θ50だけ回転した状態を表している。すると、ノズル支持部56に支持されているスプレーノズル51も角度θ50だけ回転し、走査方向の一方側に傾いた方向に、霧化エアー(及び液剤)を噴霧することが可能となる。この状態で、スプレーノズル51から霧化エアーが噴霧された場合、鉛直方向から傾いた状態で噴霧された霧化エアーは、媒体Mに対して斜めに衝突する。そして、媒体Mで跳ね返った霧化エアーは、図5Bの矢印のように、走査方向における他方側よりも一方側に拡散しやすくなる。すなわち、鉛直方向に対して傾いた方向に、より多くの霧化エアーが拡散しやすくなる。
【0035】
<印刷装置1を用いた画像印刷動作について>
図6は、印刷装置1を用いて画像を印刷する動作のフローを表す図である。印刷装置1では、図6に示されるS101~S105の各工程を順次実行することにより、媒体Mに良好な画質の画像を印刷することができる。
【0036】
先ず、媒体Mに対する静電気除去処理が行われる(S101)。静電気除去処理は、媒体Mに対してイオナイザー80からイオンを照射することによって、媒体Mの表面に帯電している静電気を除去する処理である。媒体M上の静電気を除去することにより、媒体Mに埃やごみ等を付着し難くすることができる。但し、静電気除去処理は必ずしも行われなくても良い。例えば、印刷装置1においてイオナイザー80が設けられていない場合には、静電気除去処理(S101)を行わずに、S102の処理を実行しても良い。
【0037】
次いで、媒体Mに付着している埃を除去する埃除去処理が行われる(S102)。埃除去処理では、媒体Mに対して、スプレー機構50から液剤を噴霧せずに、霧化エアーのみを噴霧することにより、媒体M上の埃やごみ等を吹き飛ばして除去する。図7は、埃除去処理における印刷装置1の動作について説明する図である。
【0038】
埃除去処理において、コントローラー60は、スプレーキャリッジ22に保持されたスプレー機構50を走査方向に沿って移動させながら、スプレーノズル51から霧化エアーのみを噴霧させる。すなわち、ニードル53によって液剤ノズル512を閉塞させた状態で、エアーバルブ52を開いてエアーノズル511から圧縮空気を噴射させる(図4A参照)。このとき、インクキャリッジ21に保持されたヘッドユニット40(インクヘッド41)は動作していない。つまり、インクヘッド41は、インクノズル列44がキャップ(クリーニングユニット70)によって保護された状態で、走査方向の所定位置(例えば、ホームポジション)に停止したままであり、インクの吐出も行われていない。
【0039】
スプレーノズル51から噴霧される霧化エアーは、図7のように、鉛直下向きに噴霧される。すなわち、スプレーノズル51の中心軸を鉛直方向から傾けずに、搬送方向に沿ってスプレーノズル51を移動させながら霧化エアーを噴霧する。これにより、媒体M上の付着している埃を効果的に除去することができる。但し、埃除去処理において、スプレーノズル51を鉛直方向から傾けた状態で霧化エアーを噴霧させることも可能である。
【0040】
次いで、媒体Mのうち画像を印刷する領域に下地層を形成する下地層形成処理が行われる(S103)。下地層形成処理において、コントローラー60は、スプレーキャリッジ22に保持されたスプレー機構50を走査方向に沿って移動させながら、スプレーノズル51から霧化エアー及び液剤を噴霧して、媒体M上の所定の領域に液剤を均一に塗布する。すなわち、ニードル53を動作させて液剤ノズル512を開放した状態で、エアーバルブ52を開いてエアーノズル511から圧縮空気を噴射させる(図4B参照)。噴霧される液剤は、プライマー等の下地処理剤であり、これにより、画像を印刷する領域に下地層を形成する。なお、下地層形成処理(S103)でも、埃除去処理(S102)の時と同様に、インクキャリッジ21に保持されたヘッドユニット40(インクヘッド41)は動作していない(図7参照)。
【0041】
下地層を形成する液剤が乾燥した後、当該下地層の上に画像を印刷する画像印刷処理が行われる(S104)。図8は、画像印刷処理における印刷装置1の動作について説明する図である。画像印刷処理では、スプレー機構50を保持しているスプレーキャリッジ22と、ヘッドユニット40(インクヘッド41)を保持しているインクキャリッジ21とが互いに連結した状態で、一体となって走査方向に移動しながら霧化エアーの噴霧とインクの吐出が行われる。
【0042】
コントローラー60は、インクキャリッジ22に保持されたヘッドユニット40を走査方向に沿って移動させながら、インクヘッド41の各ノズル列44C~44Kからインク液滴を吐出させ、媒体M(下地層)上に画像を形成する。そして、インクヘッド41の走査方向下流側において、スプレーキャリッジ22に保持されたスプレー機構50を走査方向に沿って移動させながら、スプレーノズル51から霧化エアーのみを噴霧させ、媒体M(下地層)の埃を除去する。このとき、コントローラー60は、図8のように、スプレーノズル51を、走査方向においてインクヘッド41が配置されている方向とは逆の方向に傾けて霧化エアーを噴射させる。これにより、インクヘッド41によって画像が印刷される直前に媒体M上の埃を除去することができる。
【0043】
本実施形態では、静電気除去処理(S101)及び埃除去処理(S102)が実行され、さらに画像を印刷する直前にも霧化エアーによって媒体M上の埃が除去されるため、より鮮明な画像を印刷しやすくすることができる。その際、インク液滴を吐出しているインクヘッド41の反対側に傾けて霧化エアーを噴霧することにより、インクヘッド41側に埃が吹き飛ばされることが抑制される。また、インクヘッド41から吐出されてから媒体Mに着弾するまでのインク液滴の軌道が、霧化エアーによって変化してしまうことが抑制される。したがって、埃や異物等が混入しておらず、且つ、インク液滴の着弾ズレが少ない鮮明な画像を形成することができる。
【0044】
次いで、形成された画像の上にコート層を形成するコート層形成処理が行われる(S105)。コート層形成処理は、下地層形成処理(S103)と同様に、スプレーキャリッジ22に保持されたスプレー機構50を走査方向に沿って移動させながら、スプレーノズル51から霧化エアー及び液剤(トップコート剤等)を噴霧して、媒体M上で画像が印刷された領域の上に液剤を均一に塗布する。これにより、印刷された画像を液剤(トップコート剤)の層で保護することができる。以上の処理により、画像印刷動作を完了する。
【0045】
本実施形態の印刷装置1は、走査方向に沿って移動可能なスプレー機構50(スプレーキャリッジ22)を備え、スプレーノズル51の角度を鉛直方向に対して傾けた状態で、霧化エアーを噴霧することが可能となっている。これにより、プライマーやトップコート剤等の液剤を媒体に塗布する以外の他の用途に、スプレー機構を応用することができる。例えば、霧化エアーが噴霧される方向を鉛直方向に対して傾けることで、媒体上に付着した埃や異物を吹き飛ばし、媒体表面をクリーンな状態とすることができる。
【0046】
そして、印刷装置1では、走査方向に沿って移動可能なインクヘッド41(インクキャリッジ21)を備えていることにより、スプレー機構によって媒体上に付着した埃や異物を除去してから、画像を印刷することが可能となる。したがって、埃等が付着していない鮮明な画像を印刷しやすくなる。また、スプレー機構から適宜液剤を噴霧させることで、画像を印刷する前に下地層を形成したり、印刷された画像の上にコート層を形成したりすることができる。これにより、より高画質な画像を印刷することが可能となる。
【0047】
また、スプレーノズル51は、走査方向と交差する搬送方向に沿った回転軸56cを中心として回転可能に支持されており、鉛直方向に対する角度を走査方向の上流側や下流側に傾けて、霧化エアーを噴霧することができる。これにより、媒体上の埃や異物を除去する動作を効率よく行うことができる。例えば、スプレーノズル51(スプレー機構50)を走査方向の上流側から下流側へ移動させる際に、走査方向の下流側に傾けて霧化エアーを噴霧させることにより、霧化エアーによって吹き飛ばされ埃等が再び媒体(走査方向の下流側)に付着し難くなるため、媒体表面をクリーンな状態に保ちやすくすることができる。
【0048】
また、スプレーノズル51(スプレー機構50)とインクヘッド41(ヘッドユニット40)とを同時に動作させる際には、走査方向において、インクヘッド41が配置されている方向と反対側にスプレーノズル51を傾けて、霧化エアーを噴出させるようにすると良い。仮に、走査方向においてインクヘッド41が配置されている方向に傾けて霧化エアーが噴霧された場合、インクヘッド41側に埃が吹き飛ばされてインク液滴に埃が混ざったり、インク液滴の着弾位置がずれたりするおそれがある。これに対して、走査方向においてインクヘッド41とは反対側に霧化エアーが噴霧されるのであれば、上述の様な問題は生じ難い。これにより、スプレーノズルから霧化エアーを噴霧しながら、同時にインクヘッド41によって画像を印刷すること等が可能となる。なお、インクヘッド41を動作させていない場合であっても、インクノズルに埃が付着することを抑制するために、走査方向においてインクヘッド41とは反対側に傾けて霧化エアーが噴霧されることが望ましい。
【0049】
同様に、走査方向において、インクヘッド41のインクノズル43(インクノズル列44)をカバーするキャップ(クリーニングユニット70)が配置されている方向と反対側にスプレーノズル51を傾けて、霧化エアーを噴出させるようにすると良い。走査方向においてキャップ(70)の反対側に霧化エアーが噴霧されるのであれば、吹き飛ばされた埃がキャップに付着してしまうこと等が抑制される。その結果、埃がキャップに付着して、さらにインクノズル43(インクノズル列44)に付着してしまうこと等を抑制できる。
【0050】
なお、鉛直方向に対するスプレーノズル51の角度(図5Bのθ50)は、自在に変更可能であることが望ましい。霧化エアーを噴霧する角度を調整可能であることよって、埃を除去する動作や印刷動作を行う際の様々な状況に応じて最適な霧化エアー噴霧を行いやすくなる。例えば、走査方向において、インクヘッド41とキャップ(クリーニングユニット70)との間にスプレーノズル51が位置しているような場合には、傾きの角度を小さくして埃が過度に大きく吹き飛ばないようにすることで、インクヘッド41及びキャップに埃が付着してしまうことを抑制し易くなる。
【0051】
また、印刷装置1にイオナイザー80が設けられている場合には、イオナイザー80から媒体に対してイオンを照射し媒体上の静電気を除去した後で、スプレーノズル51(スプレー機構50)から霧化エアーを噴霧させることが望ましい。帯電によって張り付いている埃をイオンによって除電することで霧化エアーでの風で飛ばしやすくする。また霧化エアーの風で飛んだ埃が再度媒体に付着するのを防ぐことができる。
【0052】
===その他の実施形態===
上記実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定するものではない。上記の構成は、適宜組み合わせて実施することが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。上記実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0053】
上述の実施形態では、液体噴霧装置の一例として、スプレー機構50を備えた印刷装置1について説明されていたが、本発明は印刷機能を有していない液体噴霧装置にも適用可能である。例えば、印刷装置1において、画像印刷用のインクを吐出するヘッドユニット40(インクヘッド41)が設けられておらず、走査方向に移動可能なスプレー機構50が設けられているのであっても良い。
【符号の説明】
【0054】
1 印刷装置、
20 キャリッジユニット、
21 インクキャリッジ、22 スプレーキャリッジ、25 キャリッジ用モーター、
30 搬送ユニット、
31 搬送ローラー、35 搬送用モーター、
40 ヘッドユニット、
41 インクヘッド、43 インクノズル、
44 インクノズル列、
44C シアンインクノズル列、44M マゼンタインクノズル列、
44Y イエローインクノズル列、44K ブラックインクノズル列、
45 ヘッド駆動部、
50 スプレー機構、
51 スプレーノズル、511 エアーノズル、512 液剤ノズル、
52 エアーバルブ、53 ニードル、54 液剤タンク、55 スプレー機構駆動部、
56 ノズル支持部、56c 回転軸、
60 コントローラー、
70 クリーニングユニット(キャップ)、
80 イオナイザー、
M 媒体
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