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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024059254
(43)【公開日】2024-05-01
(54)【発明の名称】双方向コンバータ
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/155 20060101AFI20240423BHJP
【FI】
H02M3/155 H
H02M3/155 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022166824
(22)【出願日】2022-10-18
(71)【出願人】
【識別番号】000000262
【氏名又は名称】株式会社ダイヘン
(74)【代理人】
【識別番号】100135389
【弁理士】
【氏名又は名称】臼井 尚
(74)【代理人】
【識別番号】100168044
【弁理士】
【氏名又は名称】小淵 景太
(72)【発明者】
【氏名】土井 敏光
【テーマコード(参考)】
5H730
【Fターム(参考)】
5H730AA02
5H730AS04
5H730AS05
5H730AS08
5H730AS17
5H730BB13
5H730BB14
5H730DD03
5H730DD04
5H730EE57
5H730EE59
5H730FD01
5H730FD11
5H730FD31
5H730FD41
5H730FG05
5H730FG23
5H730FV03
5H730FV09
5H730XC14
(57)【要約】
【課題】動作モードの切り替わり時にオーバーシュートまたはアンダーシュートが発生することを抑制可能な双方向コンバータを提供する。
【解決手段】双方向コンバータA1では、制御部は、モード1,2間で動作モードが切り替わる第1過渡期において、第1端子対からインダクタL1に電力を供給する状態とインダクタL1から第2端子対に電力を供給する状態とを繰り返すように複数のスイッチング素子Q1~Q4の各々の駆動制御を行う。また、制御部は、モード3,4間で動作モードが切り替わる第2過渡期において、第2端子対からインダクタL1に電力を供給する状態とインダクタL1から第1端子対に電力を供給する状態とを繰り返すように複数のスイッチング素子Q1~Q4の各々の駆動制御を行う。制御部が行う駆動制御は、第1過渡期においては、モード1,2で共通し、第2過渡期においては、モード3,4で共通する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1高電位側端子および第1低電位側端子を含む第1端子対と、
第2高電位側端子および第2低電位側端子を含む第2端子対と、
複数のスイッチング素子、複数のダイオードおよびインダクタを含み、前記第1端子対および前記第2端子対の間で双方向の電力伝送が可能な電力変換回路と、
前記複数のスイッチング素子の各々のオンとオフとを切り替える駆動制御を行う制御部と、
を備え、
前記複数のダイオードの各々は、前記複数のスイッチング素子のうちの対応する1つにそれぞれ逆並列に接続され、
前記複数のスイッチング素子は、前記第1高電位側端子と前記インダクタの一端とに接続された第1スイッチング素子と、前記第1低電位側端子と前記インダクタの前記一端とに接続された第2スイッチング素子と、前記第2高電位側端子と前記インダクタの他端とに接続された第3スイッチング素子と、前記第2低電位側端子と前記インダクタの前記他端とに接続された第4スイッチング素子と、を含み、
前記電力変換回路は、前記第1端子対から前記第2端子対に昇圧して電力伝送を行う第1モードと、前記第1端子対から前記第2端子対に降圧して電力伝送を行う第2モードと、前記第2端子対から前記第1端子対に昇圧して電力伝送を行う第3モードと、前記第2端子対から前記第1端子対に降圧して電力伝送を行う第4モードと、の4つの動作モードで動作可能であり、
前記制御部は、前記第1モードと前記第2モードとが切り替わる第1過渡期において、前記第1端子対から前記インダクタに電力を供給する状態と前記インダクタから前記第2端子対に電力を供給する状態とを繰り返すように前記複数のスイッチング素子の各々の駆動制御を行い、且つ、前記第3モードと前記第4モードとが切り替わる第2過渡期において、前記第2端子対から前記インダクタに電力を供給する状態と前記インダクタから前記第1端子対に電力を供給する状態とを繰り返すように前記複数のスイッチング素子の各々の駆動制御を行い、
前記制御部が行う前記駆動制御は、前記第1過渡期においては、前記動作モードが前記第1モードであるか前記第2モードであるかに関わらず共通し、且つ、前記第2過渡期においては、前記動作モードが前記第3モードであるか前記第4モードであるかに関わらず共通する、双方向コンバータ。
【請求項2】
前記電力変換回路に流れる制御対象電流を検出する検出器と、
前記制御対象電流の設定値を設定する設定部と、をさらに備え、
前記制御部は、前記制御対象電流の検出値および設定値に基づいて、前記複数のスイッチング素子の各々のスイッチングを制御するための制御信号を生成する制御信号生成部と、前記制御信号に基づいて、前記複数のスイッチング素子の各々に入力する駆動信号を生成する駆動信号生成部とを含む、請求項1に記載の双方向コンバータ。
【請求項3】
前記制御部が行う前記駆動制御は、前記動作モードが前記第1モードおよび前記第2モードである時、前記第1過渡期以外の期間においても前記第1過渡期と共通しており、且つ、前記動作モードが前記第3モードおよび前記第4モードである時、前記第2過渡期以外の期間においても前記第2過渡期と共通する、請求項2に記載の双方向コンバータ。
【請求項4】
前記電力変換回路は、前記第1モードおよび前記第2モードの一方の定常状態から、前記第1過渡期を経て、前記第1モードおよび前記第2モードの他方の定常状態に移行し、且つ、前記第3モードおよび前記第4モードの一方から他方に切り替わる時、前記第3モードおよび前記第4モードの一方の定常状態から、前記第2過渡期を経て、前記第3モードおよび前記第4モードの他方の定常状態に移行し、
前記第1過渡期では、前記第1モードおよび前記第2モードの前記一方の過渡状態から、前記第1モードおよび前記第2モードの前記他方の過渡状態に切り替わり、
前記第2過渡期では、前記第3モードおよび前記第4モードの前記一方の過渡状態から、前記第3モードおよび前記第4モードの前記他方の過渡状態に切り替わり、
前記制御部は、
前記第1モードの定常状態では、前記第1スイッチング素子をオンで維持し、且つ前記第2スイッチング素子および前記第3スイッチング素子の各々をオフで維持したまま、前記第4スイッチング素子をスイッチングさせ、
前記第2モードの定常状態では、前記第2スイッチング素子、前記第3スイッチング素子および前記第4スイッチング素子の各々をオフで維持したまま、前記第1スイッチング素子をスイッチングさせ、
前記第3モードの定常状態では、前記第3スイッチング素子をオンで維持し、且つ前記第1スイッチング素子および前記第4スイッチング素子の各々をオフで維持したまま、前記第2スイッチング素子をスイッチングさせ、
前記第4モードの定常状態では、前記第1スイッチング素子、前記第2スイッチング素子および前記第4スイッチング素子の各々をオフで維持したまま、前記第3スイッチング素子をスイッチングさせる、請求項2に記載の双方向コンバータ。
【請求項5】
前記制御部は、前記第1端子対に印加される第1電圧および前記第2端子対に印加される第2電圧に基づく判定を行う電圧判定部と、前記制御対象電流の向きを判定する電流判定部と、前記複数のスイッチング素子の各々を駆動させるか否かを判定する駆動判定部と、前記電圧判定部の判定結果、前記電流判定部の判定結果および前記駆動判定部の判定結果に基づいて前記駆動信号を補整する信号補整部と、を含む、請求項4に記載の双方向コンバータ。
【請求項6】
前記電力変換回路は、前記第1モード、前記第2モード、前記第3モードおよび前記第4モードのいずれの動作モードにおいても、前記第1端子対に印加される第1電圧と前記第2端子対に印加される第2電圧との電圧差の絶対値が設定値よりも大きい時に、前記定常状態で動作し、前記電圧差の絶対値が設定値以下である時に、前記過渡状態で動作する、請求項4または請求項5に記載の双方向コンバータ。
【請求項7】
前記制御部は、PWM制御により、前記第2スイッチング素子または前記第4スイッチング素子の駆動制御を行い、前記第1モード、前記第2モード、前記第3モードおよび前記第4モードのいずれの動作モードにおいても、前記過渡状態と前記定常状態との移行時に、前記第2スイッチング素子または前記第4スイッチング素子のPWM制御を開始または停止する際、前記第2スイッチング素子または前記第4スイッチング素子に入力するPWM信号のパルス幅を徐々に広げるまたは狭くする、請求項4または請求項5に記載の双方向コンバータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、双方向コンバータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、2つの電圧源の間で双方向に電力変換を行う双方向DC/DCコンバータが知られている。例えば、特許文献1には、従来の双方向コンバータが開示されている。特許文献1に記載の双方向コンバータは、昇降圧部と、スイッチング制御部と、を備える。
【0003】
昇降圧部は、第1ないし第4のスイッチ素子と、インダクタとを有する。また、昇降圧部は、第1の電圧源が接続される第1の端子対(第1の入出力端子および第1の基準端子)と、第2の電圧源が接続される第2の端子対(第2の入出力端子および第2の基準端子)とを有する。昇降圧部は、スイッチング制御部の制御に基づいて、第1の電圧源から第2の電圧源に電力伝送する場合と、第2の電圧源から第1の電圧源に電力伝送する場合とのそれぞれで、降圧動作または昇圧動作を行う。
【0004】
スイッチング制御部は、第1の端子対から第2の端子対に電力伝送する場合、第2及び第4のスイッチ素子をオフしたまま、降圧動作時には第1のスイッチ素子のスイッチングを制御すると共に第3のスイッチ素子をオフにし、昇圧動作時には第1のスイッチ素子をオンすると共に第3のスイッチ素子のスイッチングを制御する。一方、第2の端子対から第1の端子対に電力伝送する場合、第1及び第3のスイッチ素子をオフしたまま、降圧動作時には第4のスイッチ素子のスイッチングを制御すると共に第2のスイッチ素子をオフして、昇圧動作時には第4のスイッチ素子をオンすると共に第2のスイッチ素子のスイッチングを制御する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012-205427号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の双方向コンバータにおいて、上記のように第1ないし第4のスイッチング素子のスイッチングを制御すると、第1の端子対に印加される電圧と第2の端子対に印加される電圧との大小が切り替わる時に、オーバーシュートまたはアンダーシュートが発生することがある。オーバーシュートおよびアンダーシュートは、内部回路および外部回路(外部の電源および負荷など)の各々の破壊または寿命を短くする要因であるとともに、第1の端子対および第2の端子対間の電圧変換に悪影響を及ぼす。
【0007】
本開示は、上記事情に鑑みて考え出されたものであり、その目的は、動作モードの切り替わり時にオーバーシュートおよびアンダーシュートが発生することを抑制可能な双方向コンバータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の双方向コンバータは、第1高電位側端子および第1低電位側端子を含む第1端子対と、第2高電位側端子および第2低電位側端子を含む第2端子対と、複数のスイッチング素子、複数のダイオードおよびインダクタを含み、前記第1端子対および前記第2端子対の間で双方向の電力伝送が可能な電力変換回路と、前記複数のスイッチング素子の各々のオンとオフとを切り替える駆動制御を行う制御部と、を備え、前記複数のダイオードの各々は、前記複数のスイッチング素子のうちの対応する1つにそれぞれ逆並列に接続され、前記複数のスイッチング素子は、前記第1高電位側端子と前記インダクタの一端とに接続された第1スイッチング素子と、前記第1低電位側端子と前記インダクタの前記一端とに接続された第2スイッチング素子と、前記第2高電位側端子と前記インダクタの他端とに接続された第3スイッチング素子と、前記第2低電位側端子と前記インダクタの前記他端とに接続された第4スイッチング素子と、を含み、前記電力変換回路は、前記第1端子対から前記第2端子対に昇圧して電力伝送を行う第1モードと、前記第1端子対から前記第2端子対に降圧して電力伝送を行う第2モードと、前記第2端子対から前記第1端子対に昇圧して電力伝送を行う第3モードと、前記第2端子対から前記第1端子対に降圧して電力伝送を行う第4モードと、の4つの動作モードで動作可能であり、前記制御部は、前記第1モードと前記第2モードとが切り替わる第1過渡期において、前記第1端子対から前記インダクタに電力を供給する状態と前記インダクタから前記第2端子対に電力を供給する状態とを繰り返すように前記複数のスイッチング素子の各々の駆動制御を行い、且つ、前記第3モードと前記第4モードとが切り替わる第2過渡期において、前記第2端子対から前記インダクタに電力を供給する状態と前記インダクタから前記第1端子対に電力を供給する状態とを繰り返すように前記複数のスイッチング素子の各々の駆動制御を行い、前記制御部が行う前記駆動制御は、前記第1過渡期においては、前記動作モードが前記第1モードであるか前記第2モードであるかに関わらず共通し、且つ、前記第2過渡期においては、前記動作モードが前記第3モードであるか前記第4モードであるかに関わらず共通する。
【0009】
前記双方向コンバータの好ましい実施の形態において、前記電力変換回路に流れる制御対象電流を検出する検出器と、前記制御対象電流の設定値を設定する設定部と、をさらに備え、前記制御部は、前記制御対象電流の検出値および設定値に基づいて、前記複数のスイッチング素子の各々のスイッチングを制御するための制御信号を生成する制御信号生成部と、前記制御信号に基づいて、前記複数のスイッチング素子の各々に入力する駆動信号を生成する駆動信号生成部とを含む。
【0010】
前記双方向コンバータの好ましい実施の形態において、前記制御部が行う前記駆動制御は、前記動作モードが前記第1モードおよび前記第2モードである時、前記第1過渡期以外の期間においても前記第1過渡期と共通しており、且つ、前記動作モードが前記第3モードおよび前記第4モードである時、前記第2過渡期以外の期間においても前記第2過渡期と共通する。
【0011】
前記双方向コンバータの好ましい実施の形態において、前記電力変換回路は、前記第1モードおよび前記第2モードの一方の定常状態から、前記第1過渡期を経て、前記第1モードおよび前記第2モードの他方の定常状態に移行し、且つ、前記第3モードおよび前記第4モードの一方から他方に切り替わる時、前記第3モードおよび前記第4モードの一方の定常状態から、前記第2過渡期を経て、前記第3モードおよび前記第4モードの他方の定常状態に移行し、前記第1過渡期では、前記第1モードおよび前記第2モードの前記一方の過渡状態から、前記第1モードおよび前記第2モードの前記他方の過渡状態に切り替わり、前記第2過渡期では、前記第3モードおよび前記第4モードの前記一方の過渡状態から、前記第3モードおよび前記第4モードの前記他方の過渡状態に切り替わり、前記制御部は、前記第1モードの定常状態では、前記第1スイッチング素子をオンで維持し、且つ前記第2スイッチング素子および前記第3スイッチング素子の各々をオフで維持したまま、前記第4スイッチング素子をスイッチングさせ、前記第2モードの定常状態では、前記第2スイッチング素子、前記第3スイッチング素子および前記第4スイッチング素子の各々をオフで維持したまま、前記第1スイッチング素子をスイッチングさせ、前記第3モードの定常状態では、前記第3スイッチング素子をオンで維持し、且つ前記第1スイッチング素子および前記第4スイッチング素子の各々をオフで維持したまま、前記第2スイッチング素子をスイッチングさせ、前記第4モードの定常状態では、前記第1スイッチング素子、前記第2スイッチング素子および前記第4スイッチング素子の各々をオフで維持したまま、前記第3スイッチング素子をスイッチングさせる。
【0012】
前記双方向コンバータの好ましい実施の形態において、前記制御部は、前記第1端子対に印加される第1電圧および前記第2端子対に印加される第2電圧に基づく判定を行う電圧判定部と、前記制御対象電流の向きを判定する電流判定部と、前記複数のスイッチング素子の各々を駆動させるか否かを判定する駆動判定部と、前記電圧判定部の判定結果、前記電流判定部の判定結果および前記駆動判定部の判定結果に基づいて前記駆動信号を補整する信号補整部と、を含む。
【0013】
前記双方向コンバータの好ましい実施の形態において、前記電力変換回路は、前記第1モード、前記第2モード、前記第3モードおよび前記第4モードのいずれの動作モードにおいても、前記第1端子対に印加される第1電圧と前記第2端子対に印加される第2電圧との電圧差の絶対値が設定値よりも大きい時に、前記定常状態で動作し、前記電圧差の絶対値が設定値以下である時に、前記過渡状態で動作する。
【0014】
前記双方向コンバータの好ましい実施の形態において、前記制御部は、PWM制御により、前記第2スイッチング素子または前記第4スイッチング素子の駆動制御を行い、前記第1モード、前記第2モード、前記第3モードおよび前記第4モードのいずれの動作モードにおいても、前記過渡状態と前記定常状態との移行時に、前記第2スイッチング素子または前記第4スイッチング素子のPWM制御を開始または停止する際、前記第2スイッチング素子または前記第4スイッチング素子に入力するPWM信号のパルス幅を徐々に広げるまたは狭くする。
【発明の効果】
【0015】
本開示の双方向コンバータでは、第1モードと第2モードとが切り替わる時、切り替わる前の動作モード(第1モードおよび第2モードの一方)と切り替わった後の動作モード(第1モードおよび第2モードの他方)とで、電力変換回路における電流の流れが同じである。また、第3モードと第4モードとが切り替わる時、切り替わる前の動作モード(第3モードおよび第4モードの一方)と切り替わった後の動作モード(第3モードおよび第4モードの他方)とで、電力変換回路における電流の流れが同じである。これにより、第1端子対に印加される電圧と第2端子対に印加される電圧の大小関係が変わる時(第1モードと第2モードとが切り替わる時でも、第3モードと第4モードとが切り替わる時)でも、電力変換回路における電流の流れが同じであるので、オーバーシュートおよびアンダーシュートの発生を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】第1実施形態に係る双方向コンバータを示す全体構成図である。
図2】第1実施形態に係る双方向コンバータの適用例を示す構成図である。
図3】第1実施形態に係る双方向コンバータの各動作モードの制御状態を示す図である。
図4】第1実施形態に係る双方向コンバータおよび従来の双方向コンバータの各シミュレーション結果を示す波形図である。
図5】第2実施形態に係る双方向コンバータを示す全体構成図である。
図6】第2実施形態に係る双方向コンバータの制御部の詳細な構成例を示す図である。
図7】第2実施形態に係る双方向コンバータのモード1およびモード2の各制御状態を示す図である。
図8】第2実施形態に係る双方向コンバータのモード3およびモード4の各制御状態を示す図である。
図9】第2実施形態に係る双方向コンバータの制御部が行うソフトスタートの原理を示す波形図である。
図10】第2実施形態に係る双方向コンバータおよび従来の双方向コンバータの各シミュレーション結果を示す波形図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本開示の双方向コンバータの好ましい実施の形態について、図面を参照して、以下に説明する。
【0018】
図1は、第1実施形態に係る双方向コンバータA1を示している。双方向コンバータA1は、第1端子対T1、第2端子対T2、電力変換回路1、電流検出器21、設定部31、および制御部4を備える。
【0019】
電力変換回路1は、第1電圧源B1と第2電圧源B2の間に電気的に接続される。第1電圧源B1は、第1端子対T1に接続され、第2電圧源B2は、第2端子対T2に接続される。第1端子対T1は、第1高電位側端子T11および第1低電位側端子T12を含み、第2端子対T2は、第2高電位側端子T21および第2低電位側端子T22を含む。第1端子対T1には、第1電圧源B1の電源電圧が印加されており、第2端子対T2には、第2電圧源B2の電源電圧が印加されている。以下では、第1電圧源B1の電源電圧を「第1電圧E1」といい、第2電圧源B2の電源電圧を「第2電圧E2」という。よって、第1端子対T1には、第1電圧E1が印加され、第2端子対T2には、第2電圧E2が印加される。第1低電位側端子T12と第2低電位側端子T22とは、電気的に接続されており、同電位である。電力変換回路1は、これらの第1端子対T1と第2端子対T2との間で電力を双方向に伝送可能である。以下において、第1端子対T1から第2端子対T2に電力が伝送されている時の電力伝送方向を「第1方向」、第2端子対T2から第1端子対T1に電力が転送されている時の電力伝送方向を「第2方向」ということがある。
【0020】
電力変換回路1は、4つのスイッチ部SW1~SW4およびインダクタL1を含む。スイッチ部SW1およびスイッチ部SW2は、互いに直列に接続されて、第1端子対T1に接続されている。図示された例では、スイッチ部SW1は、第1端子対T1の第1高電位側端子T11に接続され、スイッチ部SW2は、第1端子対T1の第1低電位側端子T12に接続されている。スイッチ部SW3およびスイッチ部SW4は、互いに直列に接続されて、第2端子対T2に接続されている。図示された例では、スイッチ部SW3は、第2端子対T2の第2高電位側端子T21に接続され、スイッチ部SW4は、第2端子対T2の第2低電位側端子T22に接続されている。インダクタL1は、2つのスイッチ部SW1,SW2の直列回路と、2つのスイッチ部SW3,SW4の直列回路との間に電気的に接続される。4つのスイッチ部SW1~SW4は、以上のように接続されることで、Hブリッジ回路を構成する。特に、本開示の双方向コンバータA1では、図1に示すように、スイッチ部SW1の高電位側と、スイッチ部SW3の高電位側とが接続されていないことから、4つのスイッチ部SW1~SW4は、オープンHブリッジ回路である。
【0021】
図1に示すように、4つのスイッチ部SW1~SW4はそれぞれ、4つのスイッチング素子Q1~Q4のうちの対応する1つと4つのダイオードD1~D4のうちの対応する1つとを含む。
【0022】
各スイッチング素子Q1~Q4は、例えばトランジスタである。当該トランジスタの種類は、何ら限定されないが、例えばバイポーラトランジスタ、MOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)あるいはIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)などが採用される。図1に示す例では、各スイッチング素子Q1~Q4は、バイポーラトランジスタである。各スイッチング素子Q1~Q4には、制御部4から駆動信号(例えばオン信号、オフ信号およびPWM信号)が入力される。各スイッチング素子Q1~Q4は、入力される駆動信号に基づいて、常時オン状態、常時オフ状態およびスイッチング状態のいずれかで動作する。スイッチング状態では、各スイッチング素子Q1~Q4のオン(導通状態)とオフ(遮断状態)とが交互に切り替わる。スイッチング素子Q1は、第1高電位側端子T11とインダクタL1の一端とに接続されている。スイッチング素子Q2は、第1低電位側端子T12とインダクタL1の一端とに接続されている。スイッチング素子Q3は、第2高電位側端子T21とインダクタL1の他端とに接続されている。スイッチング素子Q4は、第2低電位側端子T22とインダクタL1の他端とに接続されている。
【0023】
ダイオードD1は、スイッチ部SW1において、スイッチング素子Q1に逆並列に接続されている。同様に、ダイオードD2は、スイッチ部SW2において、スイッチング素子Q2に逆並列に接続され、ダイオードD3は、スイッチ部SW3において、スイッチング素子Q3に逆並列に接続され、ダイオードD4は、スイッチ部SW4において、スイッチング素子Q4に逆並列に接続されている。なお、各ダイオードD1~D4は、スイッチング素子Q1~Q4と異なる部品であってもよいし、スイッチング素子Q1~Q4に内蔵されるダイオード成分であってもよい。
【0024】
本実施形態では、各スイッチ部SW1~SW4は、高電位側から低電位側に電流が流れる状態と、低電位側から高電位側に電流が流れる状態と、電流が流れない状態とがある。例えば、スイッチ部SW1において、高電位側から低電位側に電流が流れている状態では、スイッチング素子Q1に電流が流れる。また、スイッチ部SW1において、低電位側から高電位側に電流が流れている状態では、ダイオードD1に電流が流れる。スイッチ部SW1において、電流が流れない状態では、スイッチング素子Q1にもダイオードD1にも電流が流れない。このことは、他のスイッチ部SW2~SW4においても同様である。
【0025】
電力変換回路1は、第1電圧E1および第2電圧E2の大小関係と、第1端子対T1と第2端子対T2との間の電力の伝送方向(第1方向か第2方向か)とによって、4つの動作モードに分けられる。4つの動作モードは、次に示すモード1、モード2、モード3およびモード4である。
【0026】
モード1は、第1電圧E1が第2電圧E2よりも小さく(E1<E2)、且つ、第1端子対T1から第2端子対T2に電力が伝送される第1方向(T1→T2)の時の動作モードである。つまり、モード1では、電力変換回路1は、第1端子対T1に入力される電圧を、昇圧して第2端子対T2から出力する。
【0027】
モード2は、第1電圧E1が第2電圧E2よりも大きく(E1>E2)、且つ、第1端子対T1から第2端子対T2に電力が伝送される第1方向(T1→T2)の時の動作モードである。つまり、モード2では、電力変換回路1は、第1端子対T1に入力される電圧を、降圧して第2端子対T2から出力する。
【0028】
モード3は、第1電圧E1が第2電圧E2よりも大きく(E1>E2)、且つ、第2端子対T2から第1端子対T1に電力が伝送される第2方向(T2→T1)の時の動作モードである。つまり、モード3では、電力変換回路1は、第2端子対T2に入力される電圧を、昇圧して第1端子対T1から出力する。
【0029】
モード4は、第1電圧E1が第2電圧E2よりも小さく(E1<E2)、且つ、第2端子対T2から第1端子対T1に電力が伝送される第2方向(T2→T1)の時の動作モードである。つまり、モード4では、電力変換回路1は、第2端子対T2に入力される電圧を、降圧して第1端子対T1から出力する。
【0030】
図2は、双方向コンバータA1の適用例を示している。図2(a)は、双方向コンバータA1を太陽光発電システムに用いた例である。図2(b)は、双方向コンバータA1をEV(Electric Vehicle)充放電システムに用いた例である。図2(c),(d)は、双方向コンバータA1を蓄電システムと太陽光発電システムとの複合システムに用いた例である。図2(e)は、双方向コンバータA1をV2X(Vehicle to Everything)システムと太陽光発電システムとの複合システムに用いた例である。図2(a)~(e)において、K1は系統電源、PCSはパワーコンディショナ、PVは太陽光パネル、EVは電気自動車、Battは蓄電池、FCは周波数変換装置、Stdは充放電スタンドを示している。なお、図2(a)~(e)に示す双方向コンバータA1の適用例は、一例であって、これらに限定されない。双方向コンバータA1の電力変換回路1は、双方向の電力伝送が可能であるが、一方向に電力伝送を行うものに適用することも可能である。図2(b)に示す例において、双方向コンバータA1は、パワーコンディショナPCSと電気自動車EVとの間に接続される。そして、双方向コンバータA1は、パワーコンディショナPCSを介して入力される電力を変換して、電気自動車EVに出力することで、電気自動車EVの充電を行う。一方、双方向コンバータA1は、電気自動車EVから入力される電力を変換して、パワーコンディショナPCSに出力することで、電気自動車EVの放電を行う。
【0031】
電流検出器21は、電力変換回路1に流れる制御対象電流として、第2低電位側端子T22に流れる電流(二次電流I2)を検出する。電流検出器21は、二次電流I2の検出値に応じた検出信号を、制御部4(後述のローパスフィルタ411)に出力する。図1から理解されるように、二次電流I2の検出値は、第2低電位側端子T22から各スイッチ部SW1~SW4側に電流が流れている時に、正の値となる。なお、電流検出器21は、第2低電位側端子T22に流れる電流ではなく、第1高電位側端子T11、第1低電位側端子T12または第2高電位側端子T21に流れる電流を検出するものであってもよい。
【0032】
設定部31は、二次電流I2の設定を行う。設定部31は、二次電流I2の設定値を、制御部4(後述の制御信号生成部41)に出力する。二次電流I2の設定値は、例えば、第1端子対T1から第2端子対T2に電力伝送を行う時には、正の値であり、第2端子対T2から第1端子対T1に電力伝送を行う時には、負の値である。なお、設定部31で設定する電流値は、電流検出器21による電流の検出箇所に応じて、適宜変更される。
【0033】
制御部4は、複数のスイッチング素子Q1~Q4の各々に駆動信号を入力することで、各スイッチング素子Q1~Q4のオンとオフとを切り替える駆動制御を行う。本実施形態では、制御部4は、当該駆動信号としてPWM信号を入力することで、当該PWM信号が入力されたスイッチング素子Q1~Q4をPWM制御する。また、制御部4は、当該駆動信号としてオン信号を入力することで、当該オン信号が入力されたスイッチング素子Q1~Q4を常時オンに制御し、当該駆動信号としてオフ信号を入力することで、当該オフ信号が入力されたスイッチング素子Q1~Q4を常時オフに制御する。制御部4には、電流検出器21の検出値、および、設定部31の設定値がそれぞれ入力される。図1に示すように、制御部4は、制御信号生成部41および駆動信号生成部43を含む。なお、制御部4の具体的な構成は、図1に示す例に限定されない。
【0034】
制御信号生成部41は、二次電流I2の値を設定部31で設定された設定値にするための制御信号を生成する。図示された例では、制御信号生成部41は、ローパスフィルタ411、演算器412、制御器413、リミッター回路414、キャリア発生器415および比較器416を含む。
【0035】
ローパスフィルタ411には、電流検出器21の出力(二次電流I2の検出値)が入力される。ローパスフィルタ441は、入力される検出信号から高周波成分を除去する。
【0036】
演算器412には、ローパスフィルタ411の出力と、設定部31の出力(二次電流I2の設定値)とが入力される。演算器412は、二次電流I2の設定値からローパスフィルタ411の出力を減算する。つまり、演算器412は、二次電流I2の設定値と二次電流I2の検出値(ローパスフィルタ411を通過後の検出値)との差を演算する。
【0037】
制御器413には、演算器412の出力(演算結果)が入力される。制御器413は、PI制御(比例・積分制御)を行う。制御器413は、PI制御ではなく、P制御(比例制御)またはPID制御(比例・積分・微分制御)を行う構成であってもよい。
【0038】
リミッター回路414には、制御器413の出力が入力される。リミッター回路414には、制御器413の出力を制限するための上限値および下限値が設定されている。リミッター回路414は、制御器413の出力が先述の上限値を上回る場合、当該上限値に制限し、制御器413の出力が先述の下限値を下回る場合、当該下限値に制限する。
【0039】
キャリア発生器415は、例えば三角波のキャリア信号を発生させる。
【0040】
比較器416には、リミッター回路414の出力、および、キャリア発生器415の出力がそれぞれ入力される。比較器416の非反転入力端子には、キャリア発生器415が接続されており、比較器416の反転入力端子には、リミッター回路414が接続されている。比較器416の出力は、上記制御信号である。
【0041】
駆動信号生成部43は、制御信号生成部41から制御信号が入力され、当該制御信号を基に各スイッチング素子Q1~Q4の駆動信号を生成する。図示された例では、駆動信号生成部43は、遅延回路431、NOR回路432およびAND回路433を含む。
【0042】
遅延回路431には、制御信号生成部41(比較器416)の出力(制御信号)が入力される。遅延回路431は、入力された制御信号を、所定時間分、ずらす。なお、理解の便宜上、制御信号生成部41の出力を「基準制御信号」といい、遅延回路431の出力を「遅延制御信号」ということがある。
【0043】
NOR回路432およびAND回路433の各々には、制御信号生成部41(比較器416)の出力(基準制御信号)と、遅延回路431の出力(遅延制御信号)とが入力される。NOR回路432の出力は、2つのスイッチング素子Q1,Q4に入力される。よって、NOR回路432の出力は、2つのスイッチング素子Q1,Q4の駆動信号である。AND回路433の出力は、2つのスイッチング素子Q2,Q3に入力される。よって、AND回路433の出力は、2つのスイッチング素子Q2,Q3の駆動信号である。本実施形態では、NOR回路432の出力およびAND回路433の出力はそれぞれ、PWM信号であり、且つ、互いにレベルが反転した波形となる。よって、2つのスイッチング素子Q1,Q4がオンである(2つのスイッチング素子Q2,Q3はオフである)状態と、2つのスイッチング素子Q2,Q3がオンである(2つのスイッチング素子Q1,Q4はオフである)状態が、交互に繰り返される。ただし、2つのスイッチング素子Q1,Q2、および、2つのスイッチング素子Q3,Q4が同時にオンして、過大な電流が流れないようにするために、NOR回路432の出力レベルとAND回路433の出力レベルとが反転する部分に遅延回路431で設定されるデッドタイムが設けられている。
【0044】
図3は、各動作モード(モード1~4)における、各スイッチング素子Q1~Q4のオンオフの状態と流れる電流の状態とを示している。図3(a)はモード1での状態を、図3(b)はモード2での状態を、図3(c)はモード3での状態を、図3(d)はモード4での状態をそれぞれ示している。
【0045】
モード1およびモード2では、図3(a),(b)に示すように、電力変換回路1は、次の2つの状態を交互に繰り返す。1つ目の状態では、図3(a),(b)のそれぞれの上側の図に示すように、2つのスイッチング素子Q1,Q4の両方がオンとなり、2つのスイッチング素子Q2,Q3の両方がオフとなる。この1つ目の状態では、スイッチ部SW1,SW4のそれぞれには高電位側から低電位側に電流が流れ、スイッチ部SW2,SW3のそれぞれには電流が流れない。これにより、第1電圧源B1(第1端子対T1)からインダクタL1にエネルギーが蓄積される。2つ目の状態では、図3(a),(b)のそれぞれの下側の図に示すように、2つのスイッチング素子Q1,Q4の両方がオフとなり、2つのスイッチング素子Q2,Q3の両方がオンとなる。この2つ目の状態では、スイッチ部SW1,SW4のそれぞれには電流が流れず、スイッチ部SW2,SW3には、低電位側から高電位側に電流が流れる。なお、2つ目の状態において、1つ目の状態からインダクタL1に電流が連続的に流れるため、2つのスイッチング素子Q2,Q3がそれぞれオンになっても、各ダイオードD2,D3に電流が流れる。つまり、先述の通り、スイッチ部SW2,SW3の各々では、低電位側から高電位側に電流が流れる。これは、スイッチング素子Q2,Q3のオン電圧が各ダイオードD2,D3の順方向電圧よりも低ければ、同期整流と同じ効果が得られるためである。よって、スイッチング素子Q2,Q3をオフにしなくても、各ダイオードD2,D3に電流を流すことができる。これにより、インダクタL1に蓄積されたエネルギーが、第2電圧源B2(第2端子対T2)に放出される。モード1では、低い第1電圧E1でインダクタL1に蓄えたエネルギーを、高い第2電圧E2で放出することで、昇圧動作となる。一方、モード2では、高い第1電圧E1でインダクタL1に蓄えたエネルギーを、低い第2電圧E2で放出することで、降圧動作となる。このとき、エネルギー蓄積時と、エネルギー放出時とで、インダクタL1に印加される各電圧時間積がバランスしていれば、インダクタL1のコアを飽和しない。
【0046】
モード3およびモード4では、図3(c),(d)に示すように、電力変換回路1は、次の2つの状態を交互に繰り返す。1つ目の状態では、図3(c),(d)のそれぞれの上側の図に示すように、2つのスイッチング素子Q2,Q3の両方がオンとなり、2つのスイッチング素子Q1,Q4の両方がオフとなる。この1つ目の状態では、スイッチ部SW1,SW4のそれぞれには電流が流れず、スイッチ部SW2,SW3には、高電位側から低電位側に電流が流れる。これにより、第2電圧源B2(第2端子対T2)からインダクタL1にエネルギーが蓄積される。2つ目の状態では、図3(c),(d)のそれぞれの下側の図に示すように、2つのスイッチング素子Q1,Q4の両方がオンとなり、2つのスイッチング素子Q2,Q3の両方がオフとなる。この2つ目の状態では、スイッチ部SW1,SW4のそれぞれには、低電位側から高電位側に電流が流れ、スイッチ部SW2,SW3のそれぞれには電流が流れない。なお、2つ目の状態において、1つ目の状態からインダクタL1に電流が連続的に流れるため、2つのスイッチング素子Q1,Q4がそれぞれオンになっても、各ダイオードD1,D4に電流が流れる。つまり、先述の通り、スイッチ部SW1,SW4の各々では、低電位側から高電位側に電流が流れる。これは、スイッチング素子Q1,Q4のオン電圧が各ダイオードD1,D4の順方向電圧よりも低ければ、同期整流と同じ効果が得られるためである。よって、スイッチング素子Q1,Q4をオフにしなくても、各ダイオードD1,D4に電流を流すことができる。これにより、インダクタL1に蓄積されたエネルギーが、第1電圧源B1(第1端子対T1)に放出される。モード3では、低い第2電圧E2でインダクタL1に蓄えたエネルギーを、高い第1電圧E1で放出することで、昇圧動作となる。一方、モード4では、高い第2電圧E2で、インダクタL1に蓄えたエネルギーを、低い第1電圧E1で放出することで、降圧動作となる。このとき、エネルギー蓄積時と、エネルギー放出時とで、インダクタL1に印加される各電圧時間積がバランスしていれば、インダクタL1のコアを飽和しない。
【0047】
次に、双方向コンバータA1において、動作モードの切り替えを行った時の二次電流I2の変化について、図4を参照して、説明する。図4は、第1端子対T1から第2端子対T2に電力が伝送されている状態で、第1端子対T1に印加される電圧(第1電圧E1)と、第2端子対T2に印加される電圧(第2電圧E2)との大小関係が変わった時のシミュレーション結果を示している。つまり、図4は、モード1とモード2とを切り替えた時のシミュレーション結果である。図4(a)は、第1電圧E1と第2電圧E2との時間変化を示している。当該シミュレーションでは、第2電圧E2の値を350[V]で固定して、第1電圧E1の値を変化させることで、第1電圧E1と第2電圧E2との大小関係を変えた。図4(b)は、従来の双方向コンバータ(特許文献1の双方向コンバータ)における二次電流の時間変化を示している。図4(c)は、双方向コンバータA1における二次電流I2の時間変化を示している。図4において、期間t1,t2,t6,t7は、第1電圧E1が第2電圧E2よりも大きい期間(E1>E2)であり、期間t3,t4,t5は、第1電圧E1が第2電圧E2よりも小さい期間(E1<E2)である。よって、期間t2から期間t3に切り替わる時に、モード2からモード1に切り替わり、期間t5から期間t6に切り替わる時に、モード1からモード2に切り替わる。なお、図4(b),(c)のシミュレーションでは、二次電流I2の設定値を+20A(第1電圧源B1から第2電圧源B2への電流を20Aとする設定値)とした。
【0048】
図4(b)に示すように、従来の双方向コンバータにおいては、モード2からモード1に切り替わるタイミング(期間t2→期間t3)で、二次電流にオーバーシュートが発生している。また、図4(b)に示すように、モード1からモード2に切り替わるタイミング(期間t5→期間t6)で、二次電流にアンダーシュートが発生している。例えば、従来の双方向コンバータでは、次のような原因によりオーバーシュートが発生する。期間t2では、第1電圧E1が低下していくため、昇圧比を大きくするように、制御信号生成部41の出力が大きくなる。その結果、駆動信号生成部43の出力(各駆動信号)のPWM信号のオンデューティも大きくなる。この状態で、第1電圧E1が第2電圧E2よりも大きい状態から小さい状態に切り替わる。このため、制御信号生成部41の出力が二次電流を大きくしようとしている状態で、モード2からモード1に切り替わるので、動作モードが切り替わった瞬間に二次電流が急激に増加する。よって、二次電流の設定値に対して異常に電流が大きくなり、オーバーシュートが発生する。なお、アンダーシュートも同様の原因により発生する。つまり、制御信号生成部41の出力が二次電流を小さくしようとしている状態で、モード1からモード2に切り替わるので、動作モードが切り替わった瞬間に二次電流が急激に低下する。よって、二次電流の設定値に対して異常に電流が小さくなり、アンダーシュートが発生する。
【0049】
一方で、図4(c)に示すように、双方向コンバータA1においては、モード2からモード1に切り替わるタイミング(期間t2→期間t3)、および、モード1からモード2に切り替わるタイミング(期間t5→期間t6)に切り替わるタイミングのいずれにおいても、二次電流I2にオーバーシュートもアンダーシュートも抑制されている。これは、双方向コンバータA1では、モード1とモード2との動作が同じであるので、従来の双方向コンバータのように、制御信号生成部41の出力が大きくならず、オーバーシュートが発生しない。なお、このことは、アンダーシュートの抑制においても同様である。
【0050】
なお、図4は、モード1とモード2との切り替わりにおけるシミュレーション結果を示しているが、電力変換回路1が、第1端子対T1側と第2端子対T2側とで、インダクタL1を挟んで対称的に構成されているため、モード3とモード4との切り替わりにおいても同様の結果となる。
【0051】
双方向コンバータA1の作用および効果は、次の通りである。
【0052】
双方向コンバータA1では、制御部4は、モード1とモード2とが切り替わる過渡期(第1過渡期)において、第1端子対T1からインダクタL1に電力を供給する状態と、インダクタL1から第2端子対T2に電力を供給する状態とを繰り返すように複数のスイッチング素子Q1~Q4の各々の駆動制御を行う。このとき、制御部4が行う駆動制御は、先述の第1過渡期においては、動作モードがモード1であるかモード2であるかに関わらず共通する。また、制御部4は、モード3とモード4とが切り替わる過渡期(第2過渡期)において、第2端子対T2からインダクタL1に電力を供給する状態と、インダクタL1から第1端子対T1に電力を供給する状態とを繰り返すように複数のスイッチング素子Q1~Q4の各々の駆動制御を行う。制御部4が行う駆動制御は、先述の第2過渡期においては、動作モードがモード3であるかモード4であるかに関わらず共通する。この構成によれば、モード1とモード2とが切り替わる時、切り替わる前の動作モードと切り替わった後の動作モードとで、電力変換回路1における電流の流れが同じである。また、モード3とモード4とが切り替わる時、切り替わる前の動作モードと切り替わった後の動作モードとで、電力変換回路1における電流の流れが同じである。これにより、双方向コンバータA1では、第1電圧E1と第2電圧E2との大小関係が変わる時(モード1とモード2とが切り替わる時、および、モード3とモード4とが切り替わる時)でも、電力変換回路1における電流の流れが同じであるので、図4(c)に示すように、オーバーシュートおよびアンダーシュートの発生を抑制できる。
【0053】
双方向コンバータA1では、設定部31による電流設定のみで、動作モードの切り替えを行う。このため、第1電圧E1を検出する電圧検出器も、第2電圧E2を検出する電圧検出器も不要となる。つまり、双方向コンバータA1は、簡易な構成で、電力変換回路1の双方向の電力伝送を制御することが可能となる。
【0054】
次に、本開示の第2実施形態に係る双方向コンバータA2について、説明する。双方向コンバータA2において、双方向コンバータA1と同一あるいは類似の構成要素に、同じ符号を付して重複する説明を省略する。図5は、第2実施形態に係る双方向コンバータA2の全体構成例を示している。図6は、双方向コンバータA2の制御部4の詳細な構成例を示している。
【0055】
双方向コンバータA1では、各動作モード(モード1~4)において、定常状態と過渡状態(上記過渡期の状態)とで、各スイッチング素子Q1~Q4の駆動制御が共通する。一方で、双方向コンバータA2では、各動作モード(モード1~4)において、定常状態と過渡状態とで、各スイッチング素子Q1~Q4の駆動制御を変えている。双方向コンバータA2の制御部4は、動作モードを切り替える際、切り替える前の動作モードにおいて、定常状態から過渡状態に移行させる。そして、切り替わった後の動作モードにおいて過渡状態から定常状態に移行させる。これにより、双方向コンバータA2は、動作モードの切り替え時における二次電流I2の過渡応答を改善させる。例えば、各動作モードにおいて、第1電圧E1と第2電圧E2との差(電圧差)が予め設定された設定値(後述の切替電圧)以下となった場合に、定常状態から過渡状態に移行し、先述の電圧差が、先述の設定値(後述の切替電圧)を超えた場合に、過渡状態から定常状態に移行する。つまり、各動作モードにおいて、第1電圧E1と第2電圧E2との電圧差の絶対値が、設定値以下にある時に、過渡状態で各スイッチング素子Q1~Q4が駆動制御され、第1電圧E1と第2電圧E2との電圧差の絶対値が、先述の設定値(切替電圧)よりも大きい時に、定常状態で各スイッチング素子Q1~Q4が駆動制御される。
【0056】
また、双方向コンバータA2の制御部4は、定常状態と過渡状態とを切り替えた時、ソフトスタートを行うことがある。当該ソフトスタートは、定常状態と過渡状態とを切り替えた時に、各スイッチング素子Q1~Q4の駆動制御が変化する際に行う制御であって、例えば次に示すように、切り替える前の駆動信号から切り替えた後の駆動信号に徐々に変化させる制御である。例えば、各スイッチング素子Q2,Q4が、PWM制御から常時オフに変わる時(PWM制御を停止させる時)には、各駆動信号(PWM信号)のパルス幅を徐々に狭くし、常時オフからPWM制御に変わる時(PWM制御を開始する時)には、各駆動信号(PWM信号)のパルス幅を徐々に広くする。また、各スイッチング素子Q1,Q3が、PWM制御から常時オンに変わる時には、各駆動信号(PWM信号)のパルス幅を徐々に広くし、常時オンからPWM制御に変わる時には、各駆動信号(PWM信号)のパルス幅を徐々に狭くする。
【0057】
双方向コンバータA2において、制御部4は、図7および図8に示すように、各スイッチング素子Q1~Q4の駆動を制御する。図7および図8は、複数の動作モード(モード1~4)の各々における、各スイッチング素子Q1~Q4のオンオフの状態と流れる電流の状態とを示している。図7(a-1)は、モード1での定常状態を、図7(a-2)は、モード1での過渡状態を、それぞれ示している。図7(b-1)は、モード2での定常状態を、図7(b-2)は、モード2での過渡状態を示している。図8(c-1)は、モード3での定常状態を、図8(c-2)は、モード3での過渡状態を示している。図8(d-1)は、モード4での定常状態を、図8(d-2)は、モード4での過渡状態を示している。
【0058】
モード1の定常状態では、図7(a-1)に示すように、制御部4は、スイッチング素子Q1をオンにし、且つ2つのスイッチング素子Q2,Q3の両方をオフにしたまま、スイッチング素子Q4をスイッチングさせる。これにより、モード1の定常状態において、電力変換回路1は、次の2つの状態を繰り返す。1つ目の状態では、図7(a-1)の上図に示すように、スイッチ部SW1,SW4のそれぞれには、高電位側から低電位側に電流が流れ、スイッチ部SW2,SW3のいずれにも電流が流れない。このとき、第1電圧源B1(第1端子対T1)からインダクタL1に電力が供給される。2つ目の状態では、図7(a-1)の下図に示すように、スイッチ部SW1には、高電位側から低電位側に電流が流れ、スイッチ部SW2,SW3のそれぞれには、低電位側から高電位側に電流が流れ、スイッチ部SW4には電流が流れない。このとき、第1電圧源B1(第1端子対T1)からインダクタL1に電力が供給されつつ、インダクタL1から第2電圧源B2(第2端子対T2)に電力が供給される。一方で、モード1の過渡状態では、図7(a-2)に示すように、制御部4は、2つのスイッチング素子Q1,Q4と、2つのスイッチング素子Q2,Q3とを、交互にスイッチングさせる。つまり、双方向コンバータA1のモード1(図3(a)参照)と同じ電流制御が行われる。
【0059】
モード2の定常状態では、図7(b-1)に示すように、制御部4は、3つのスイッチング素子Q2~Q4のそれぞれをオフにしたまま、スイッチング素子Q1をスイッチングさせる。これにより、モード2の定常状態において、電力変換回路1は、次の2つの状態を繰り返す。1つ目の状態では、図7(b-1)の上図に示すように、スイッチ部SW1には高電位側から低電位側に電流が流れ、スイッチ部SW3には低電位側から高電位側に電流が流れ、スイッチ部SW2,SW4には電流が流れない。このとき、第1電圧源B1(第1端子対T1)からインダクタL1に電極が供給されつつ、インダクタL1から第2電圧源B2(第2端子対T2)に電力が供給される。2つ目の状態では、図7(b-1)の下図に示すように、スイッチ部SW2,SW3には低電位側から高電位側に電流が流れ、スイッチ部SW1,SW4には電流が流れない。このとき、インダクタL1から第2電圧源B2(第2端子対T2)に電力が供給される。一方で、モード2の過渡状態では、図7(b-2)に示すように、制御部4は、2つのスイッチング素子Q1,Q4と、2つのスイッチング素子Q2,Q3とを、交互にスイッチングさせる。つまり、双方向コンバータA1のモード2(図3(b)参照)と同じ電流制御が行われる。
【0060】
モード3の定常状態では、図8(c-1)に示すように、制御部4は、スイッチング素子Q3をオンにし、且つ2つのスイッチング素子Q1,Q4の両方をオフにしたまま、スイッチング素子Q2をスイッチングさせる。これにより、モード3の定常状態において、電力変換回路1は、次の2つの状態を繰り返す。1つ目の状態では、図8(c-1)の上図に示すように、スイッチ部SW2,SW3のそれぞれには高電位側から低電位側に電流が流れ、スイッチ部SW1,SW4のいずれにも電流が流れない。このとき、第2電圧源B2(第2端子対T2)からインダクタL1に電力が供給される。2つ目の状態では、図8(c-1)の下図に示すように、スイッチ部SW3には高電位側から低電位側に電流が流れ、スイッチ部SW1,SW4のそれぞれには低電位側から高電位側に電流が流れ、スイッチ部SW2には電流が流れない。このとき、第2電圧源B2(第2端子対T2)からインダクタL1に電力が供給されつつ、インダクタL1から第1電圧源B1(第1端子対T1)に電力が供給される。一方で、モード3の過渡状態では、図8(c-2)に示すように、制御部4は、2つのスイッチング素子Q1,Q4と、2つのスイッチング素子Q2,Q3とを、交互にスイッチングさせる。つまり、双方向コンバータA1のモード3(図3(c)参照)と同じ電流制御が行われる。
【0061】
モード4の定常状態では、図8(d-1)に示すように、制御部4は、3つのスイッチング素子Q1,Q2,Q4のそれぞれをオフにしたまま、スイッチング素子Q3をスイッチングさせる。これにより、モード4の定常状態において、電力変換回路1は、次の2つの状態を繰り返す。1つ目の状態では、図8(d-1)の上図に示すように、スイッチ部SW3には高電位側から低電位側に電流が流れ、スイッチ部SW1には低電位側から高電位側に電流が流れ、スイッチ部SW2,SW4には電流が流れない。このとき、第2電圧源B2(第2端子対T2)からインダクタL1に電極が供給されつつ、インダクタL1から第1電圧源B1(第1端子対T1)に電力が供給される。2つ目の状態では、図8(d-1)の下図に示すように、スイッチ部SW1,SW4には低電位側から高電位側に電流が流れ、スイッチ部SW2,SW3には電流が流れない。このとき、インダクタL1から第1電圧源B1(第1端子対T1)に電力が供給される。一方で、モード4の過渡状態では、図8(d-2)に示すように、制御部4は、2つのスイッチング素子Q1,Q4と、2つのスイッチング素子Q2,Q3とを、交互にスイッチングさせる。つまり、双方向コンバータA1のモード4(図3(d)参照)と同じ電流制御が行われる。
【0062】
以上のように、双方向コンバータA2では、各モード1~4において、定常状態と過渡状態とで、異なる電流制御が行われる。このとき、各モード1~4の過渡状態は、双方向コンバータA1のモード1~4とそれぞれ同じ電流制御が行われている。
【0063】
双方向コンバータA2は、上記電流制御を行うため、図5および図6に示すように、双方向コンバータA1と比較して、次の点で異なる。第1に、双方向コンバータA2は、2つの電圧検出部51,52をさらに備える。第2に、双方向コンバータA2は、2つの設定部33,34をさらに備える。第3に、制御部4の構成が異なる。
【0064】
設定部33は、各動作モードにおいて定常状態と過渡状態とを切り替える切替電圧を設定する。設定部33は、切替電圧の設定値を制御部4(後述の電圧判定部45)に出力する。設定部34は、第1端子対T1と第2端子対T2との間の電力伝送の方向(電流方向)を判定するための判定電流を設定する。当該判定電流には例えば0(ゼロ)が設定される。設定部34は、判定電流の設定値を制御部4(後述の電流判定部46)に出力する。
【0065】
電圧検出部51は、第1端子対T1に印加される第1電圧E1、すなわち、第1電圧源B1の電源電圧を検出する。電圧検出部51の出力(第1電圧E1の検出値)は、制御部4(後述の電圧判定部45)に出力される。電圧検出部52は、第2端子対T2に印加される第2電圧E2、すなわち、第2電圧源B2の電源電圧を検出する。電圧検出部52の出力(第2電圧E2の検出値)は、制御部4(後述の電圧判定部45)に出力される。
【0066】
双方向コンバータA2の制御部4は、双方向コンバータA1の制御部4と比較して、電圧判定部45、電流判定部46、駆動判定部47および信号補整部48をさらに含む。なお、図6に示す電圧判定部45、電流判定部46、駆動判定部47および信号補整部48の具体的な構成は、一例であって、図示された構成に限定されない。また、双方向コンバータA2の制御部4において、制御信号生成部41の制御器413が行う制御(P制御、PI制御またはPID制御)を定常状態と過渡状態とで変えて、動作モード切替時の過渡応答を改善することも可能である。以下の説明において、ある出力がローレベルである信号を「L信号」といい、ある出力がハイレベルである信号を「H信号」という。先述のPWM信号は、ある出力がローレベルとハイレベルとを交互に繰り返す信号に相当する。また、L信号は、デューティ比が0%である信号に相当し、H信号は、デューティ比が100%である信号に相当する。
【0067】
電圧判定部45は、第1電圧E1と第2電圧E2との大小関係の判定、および、第1電圧E1と第2電圧E2との差(電圧差)が設定部33で設定された切替電圧の範囲内であるか否かの判定を行う。電圧判定部45は、電圧第1判定信号、電圧第2判定信号、および電圧第3判定信号を出力する。電圧第1判定信号は、電圧差(絶対値)が切替電圧よりも大きく、且つ第1電圧E1が第2電圧E2よりも大きい場合(E1>E2)にL信号となり、それ以外(電圧差(絶対値)が切替電圧以下である時を含む)でH信号となる。電圧第2判定信号は、電圧差(絶対値)が切替電圧よりも大きく、且つ第1電圧E1が第2電圧E2よりも小さい場合(E1<E2)にL信号となり、それ以外(電圧差(絶対値)が切替電圧以下である時を含む)でH信号となる。電圧第3判定信号は、電圧差(絶対値)が切替電圧よりも大きい場合にL信号となり、電圧差(絶対値)が切替電圧以下である場合にH信号となる。図6に示す例では、電圧判定部45は、演算器451およびウィンドウコンパレータ回路452を含む。
【0068】
演算器451には、電圧検出部51の出力(第1電圧E1の検出値)および電圧検出部52の出力(第2電圧E2の検出値)が入力される。演算器451は、第1電圧E1の検出値から第2電圧E2の検出値を減算する。つまり、演算器451は、第1電圧E1の検出値と第2電圧E2の検出値との差を演算する。
【0069】
ウィンドウコンパレータ回路452には、演算器451の出力(差電圧の演算結果)および設定部33の出力(切替電圧の設定値)が入力される。ウィンドウコンパレータ回路452は、2つの比較器452a,452bおよびAND回路452cを含む。比較器452aは、入力される差電圧の演算結果および切替電圧の設定値に基づいて、上記電圧第1判定信号を出力する。比較器452bは、差電圧の演算結果および切替電圧の設定値に基づいて、上記電圧判定第2信号を出力する。AND回路452cには、比較器452aの出力(電圧第1判定信号)および比較器452bの出力(電圧第2判定信号)が入力される。AND回路452cは、入力される電圧第1判定信号および電圧第2判定信号に基づいて、上記電圧第3判定信号を出力する。
【0070】
電流判定部46は、電力変換回路1に流れる電流が、第1端子対T1から第2端子対T2に向かう方向に流れているか、第2端子対T2から第1端子対T1に向かう方向に流れているかの判定を行う。つまり、電流判定部46は、電力伝送方向が第1方向であるか第2方向であるかの判定を行う。電流判定部46は、電流第1判定信号、電流第2判定信号および電流第3判定信号を出力する。電流第1判定信号は、電力伝送方向が第1方向(T1→T2)である場合にL信号となり、それ以外H信号となる。電流第2判定信号は、電力伝送方向が第2方向(T1←T2)である場合にL信号となり、それ以外H信号となる。電流第3判定信号は、二次電流I2の設定値が判定電流以下である場合にH信号となり、二次電流I2の設定値が判定電流よりも大きい場合にL信号となる。本実施形態では、判定電流には0(ゼロ)が設定されるので、基本規定に電流第3判定信号は、L信号となる。図6に示す例では、電流判定部46は、ウィンドウコンパレータ回路461を含む。
【0071】
ウィンドウコンパレータ回路461には、設定部31の出力(二次電流I2の設定値)および設定部34の出力(判定電流の設定値)が入力される。ウィンドウコンパレータ回路461は、2つの比較器461a,461bおよびAND回路461cを含む。比較器461aは、入力される二次電流I2の設定値および判定電流の設定値に基づいて、上記電流第1判定信号を出力する。比較器461bは、入力される二次電流I2の設定値および判定電流の設定値に基づいて、上記電流第2判定信号を出力する。AND回路461cは、比較器461aの出力(電流第1判定信号)および比較器461bの出力(電流第2判定信号)が入力される。AND回路461cは、入力される電流第1判定信号および電流第2判定信号に基づいて、上記電流第3判定信号を出力する。本実施形態では、電流第1判定信号および電流第2判定信号がともにH信号となることがないので、電流第3判定信号はL信号となる。
【0072】
駆動判定部47は、各スイッチング素子Q1~Q4を駆動させるか否かの判定を行う。駆動判定部47は、スイッチング素子Q1に対する判定信号、スイッチング素子Q3に対する判定信号、2つのスイッチング素子Q2,Q4に対する判定信号を出力する。これらの判定信号はそれぞれ、各スイッチング素子Q1~Q4を駆動させる(オンさせるまたはスイッチングさせる)場合、H信号となり、各スイッチング素子Q1~Q4を駆動させない(オフさせる)場合、L信号となる。図6に示す例では、駆動判定部47は、2つのAND回路471,472、および4つのOR回路473,474,475,476を含む。
【0073】
AND回路471には、比較器452aの出力(電圧第1判定信号)および比較器461aの出力(電流第1判定信号)が入力される。AND回路472には、比較器452b(電圧第2判定信号)の出力および比較器461b(電流第2判定信号)の出力が入力される。OR回路473には、AND回路471の出力およびAND回路472の出力が入力される。AND回路471、AND回路472およびOR回路473により、スイッチング素子Q2,Q4を駆動させるか否かの判定信号が出力される。図6に示す例では、第1電圧E1が第2電圧E2よりも大きく(E1>E2)、電力伝送方向が第1方向(T1→T2)である時(モード2)の定常時、および、第1電圧E1が第2電圧E2よりも小さく(E1<E2)、電力伝送方向が第2方向(T1←T2)である時(モード4)の定常時に、OR回路473から、L信号が出力され、それ以外の時に、OR回路473から、H信号が出力される。つまり、OR回路473の出力は、降圧動作を行う定常時に、L信号となり、昇圧動作を行う定常時、昇圧動作を行う過渡時、および、降圧動作を行う過渡時に、H信号となる。OR回路473の出力がL信号であるとき、各スイッチング素子Q2,Q4はオフとなる。
【0074】
OR回路474には、AND回路452cの出力(電圧第3判定信号)およびAND回路461c(電流第3判定信号)の出力が入力される。2つのOR回路475,476の各々には、OR回路474の出力および比較器461aの出力が入力される。なお、OR回路476には、比較器461aの出力が反転されて入力される。OR回路474およびOR回路475により、スイッチング素子Q1を駆動させるか否かの判定信号が出力される。図6に示す例では、電力伝送方向が第2方向(T1←T2)である時の定常時に、OR回路475からL信号が出力され、それ以外の時に、OR回路475からH信号が出力される。OR回路475の出力がL信号の時、スイッチング素子Q1はオフとなる。OR回路474およびOR回路476により、スイッチング素子Q3を駆動させるか否かの判定信号が出力される。図6に示す例では、電力伝送方向が第1方向(T1→T2)である時の定常時に、OR回路476からL信号が出力され、それ以外の時にOR回路476からH信号が出力される。OR回路476の出力がL信号の時、スイッチング素子Q3はオフとなる。
【0075】
信号補整部48には、駆動信号生成部43の出力、電圧判定部45の出力、電流判定部46の出力および駆動判定部47の出力がそれぞれ入力される。信号補整部48は、電圧判定部45の各判定信号、電流判定部46の各判定信号、および、駆動判定部47の各判定信号を基に、駆動信号生成部43が生成した各スイッチング素子Q1~Q4の駆動信号の補整を行う。図6に示す例では、信号補整部48は、2つのNOR回路481a,481b、3つの積分器482a,482b,482c、3つの比較器483a,483b,483c、4つのAND回路484a,484b,484c,484d、2つのOR回路485a,485b、および、2つのAND回路486a,485bを含む。なお、各積分器482a,482b,482cはそれぞれ、例えばリミッター付き積分器である。各積分器482a,482b,482cの各時定数は、例えば80msであるが、この時定数を調整すれば、動作モードの切り替え時の過渡応答を改善することが可能である。
【0076】
NOR回路481aには、比較器461bの出力(電流第2判定信号)および比較器452b(電圧第2判定信号)の出力が入力される。NOR回路481aは、比較器461bまたは比較器452bのいずれかの出力がH信号のときL信号を出力し、比較器461bまたは比較器452bの両方の出力がL信号のときH信号を出力する。したがって、NOR回路481aからは、モード1の定常状態でのみ、H信号を出力する。
【0077】
NOR回路481bには、比較器461aの出力(電流第1判定信号)および比較器452aの出力(電圧第1判定信号)が入力される。NOR回路481bは、比較器461aまたは比較器452bのいずれかの出力がH信号のときL信号を出力し、比較器461aまたは比較器452bの両方の出力がL信号のときH信号を出力する。したがって、NOR回路481bからは、モード3の定常状態でのみ、H信号を出力する。
【0078】
積分器482aには、駆動判定部47のOR回路473の出力が入力される。積分器482bには、NOR回路481aの出力が入力される。積分器482cには、NOR回路481bの出力が入力される。各積分器482a,482b,482cは、入力される信号がL信号からH信号に切り替わると、L信号からH信号に徐々にレベルを増加させた信号を出力する。一方、各積分器482a,482b,482cは、入力される信号がH信号からL信号に切り替わると、H信号からL信号に徐々にレベルを減少させた信号を出力する。各積分器482a,482b,482cはそれぞれ、例えばリミッター付き積分器である。例えば、当該リミッターにより、各積分器482a,482b,482cの出力の最大振幅は、キャリア発生器415の出力の最大振幅に制限される。各積分器482a,482b,482cの各時定数は、例えば80msであるが、この時定数を調整すれば、動作モードの切り替え時の過渡応答を改善することが可能である。
【0079】
比較器483aには、積分器482aの出力およびキャリア発生器415の出力(キャリア信号)が入力される。比較器483bには、積分器482bの出力およびキャリア発生器415の出力(キャリア信号)が入力される。比較器483cには、積分器482cの出力およびキャリア発生器415の出力(キャリア信号)が入力される。各比較器483a,483b,483cは、対応する積分器482a,482b,482cの出力が入力されるキャリア信号以上である時に、H信号を出力し、対応する積分器482a,482b,482cの出力が入力されるキャリア信号がよりも小さい時に、L信号を出力する。この構成により、各比較器483a,483b,483cの出力は、対応する積分器482a,482b,482cの出力に応じてパルス幅(デューティ比)が変化する信号となる。例えば、各積分器482a,482b,482cの出力がH信号である時、対応する比較器483a,483b,483cは、H信号(デューティ比100%)を出力し、各積分器482a,482b,482cの出力がL信号である時、対応する比較器483a,483b,483cは、L信号(デューティ比0%)を出力する。また、各積分器482a,482b,482cの出力がL信号からH信号に徐々にレベルが増加する信号であるとき、対応する比較器483a,483b,483cは、L信号(デューティ比0%)から徐々にパルス幅が増加してH信号(デューティ比100%)となる信号を出力する。反対に、各積分器482a,482b,482cの出力がH信号からL信号に徐々にレベルが減少する信号であるとき、対応する比較器483a,483b,483cは、H信号(デューティ比100%)から徐々にパルス幅が減少してL信号(デューティ比0%)となる信号を出力する。
【0080】
AND回路484aには、NOR回路432の出力および比較器483aの出力が入力される。AND回路484aは、比較器483aの出力がL信号である時、L信号を出力し、比較器483aの出力がH信号である時、NOR回路432の出力と同じPWM信号を出力する。また、AND回路484aは、比較器483aの出力がL信号からH信号に徐々にパルス幅が増加する信号であるとき、L信号からNOR回路432の出力と同じPWM信号に徐々にパルス幅が増加するPWM信号を出力する。また、AND回路484aは、比較器483aの出力がH信号からL信号に徐々にパルス幅が減少する信号であるとき、NOR回路432の出力と同じPWM信号からL信号に徐々にパルス幅が減少するPWM信号を出力する。
【0081】
AND回路484bには、AND回路433の出力および比較器483aの出力が入力される。AND回路484bは、比較器483aの出力がL信号である時、L信号を出力し、比較器483aの出力がH信号である時、AND回路433の出力と同じPWM信号を出力する。また、AND回路484bは、比較器483aの出力がL信号からH信号に徐々にパルス幅が増加する信号であるとき、L信号からAND回路433の出力と同じPWM信号に徐々にパルス幅が増加するPWM信号を出力する。また、AND回路484bは、比較器483aの出力がH信号からL信号に徐々にパルス幅が減少する信号であるとき、AND回路433の出力と同じPWM信号からL信号に徐々にパルス幅が減少するPWM信号を出力する。
【0082】
AND回路484cには、NOR回路432の出力およびOR回路475の出力が入力される。AND回路484cは、OR回路475の出力がL信号のとき、L信号を出力し、OR回路475の出力がH信号のとき、NOR回路432の出力と同じPWM信号を出力する。
【0083】
AND回路484dには、AND回路433の出力およびOR回路476の出力が入力される。AND回路484dは、OR回路476の出力がL信号のとき、L信号を出力し、OR回路476の出力がH信号のとき、AND回路433の出力と同じPWM信号を出力する。
【0084】
OR回路485aには、AND回路484cの出力と比較器483bの出力が入力される。OR回路485aは、比較器483bの出力がL信号であるとき、AND回路484cの出力と同じ信号を出力し、比較器483bの出力がH信号であるとき、H信号を出力する。また、OR回路485aは、比較器483bの出力がL信号からH信号に徐々にパルス幅が増加する信号であるとき、AND回路484cの出力と同じPWM信号からH信号に徐々にパルス幅が増加するPWM信号を出力する。また、OR回路485aは、比較器483bの出力がH信号からL信号に徐々にパルス幅が減少する信号であるとき、H信号からAND回路484cの出力と同じPWM信号に徐々にパルス幅が減少するPWM信号を出力する。OR回路485aの出力は、スイッチング素子Q1に入力される。つまり、OR回路485aの出力は、スイッチング素子Q1の駆動信号である。
【0085】
OR回路485bには、AND回路484dの出力と比較器483cの出力が入力される。OR回路485bは、比較器483cの出力がL信号であるとき、AND回路484dの出力と同じ信号を出力し、比較器483cの出力がH信号であるとき、H信号を出力する。また、OR回路485bは、比較器483cの出力がL信号からH信号に徐々にパルス幅が増加する信号であるとき、AND回路484dの出力と同じPWM信号からH信号に徐々にパルス幅が増加するPWM信号を出力する。また、OR回路485bは、比較器483cの出力がH信号からL信号に徐々にパルス幅が減少する信号であるとき、H信号からAND回路484dの出力と同じPWM信号に徐々にパルス幅が減少するPWM信号を出力する。OR回路485bの出力は、スイッチング素子Q3に入力される。つまり、OR回路485bの出力は、スイッチング素子Q3の駆動信号である。
【0086】
AND回路486aには、AND回路484aの出力およびOR回路485bの出力が入力される。図6に示すように、OR回路485bの出力は、反転されてAND回路486aに入力される。この構成では、AND回路486aは、OR回路485bの出力がH信号のとき、L信号を出力する。つまり、AND回路486aの出力およびOR回路485bの出力はともにH信号にならない。一方で、AND回路486aは、OR回路485bの出力がL信号のとき、AND回路484aの出力と同じ信号を出力する。AND回路486aの出力は、スイッチング素子Q4に入力される。つまり、AND回路486aの出力は、スイッチング素子Q4の駆動信号である。
【0087】
AND回路486bには、AND回路484bの出力およびOR回路485aの出力が入力される。図6に示すように、OR回路485aの出力は、反転されてAND回路486bに入力される。この構成では、AND回路486bは、OR回路485aの出力がH信号のとき、L信号を出力する。つまり、AND回路486bの出力およびOR回路485aの出力はともにH信号にならない。一方で、AND回路486bは、OR回路485aの出力がL信号のとき、AND回路484bの出力と同じ信号を出力する。AND回路486bの出力は、スイッチング素子Q2に入力される。つまり、AND回路486bの出力は、スイッチング素子Q2の駆動信号である。
【0088】
以上のように構成された制御部4は、各モード1~4の定常状態および過渡状態において、次のように、スイッチング素子Q1~Q4の駆動信号を生成する。
【0089】
モード1の定常状態では、AND回路484a,484b,484cの各出力がPWM信号となり、AND回路484dの出力がL信号となる。そして、OR回路485aの出力がH信号、OR回路485bの出力がL信号、AND回路486aの出力がPWM信号、AND回路486bの出力がL信号となる。このため、モード1の定常状態では、図7(a-1)に示すように、スイッチング素子Q1の駆動信号がH信号(オン信号)、スイッチング素子Q2,Q3の各駆動信号がL信号(オフ信号)、スイッチング素子Q4の駆動信号がPWM信号となる。一方、モード1の過渡状態では、AND回路484a,484b,484c,484dの各出力がPWM信号となる。そして、OR回路485a,485bの各出力およびAND回路486a,486bの各出力がPWM信号となる。このため、モード1の過渡状態では、図7(a-2)に示すように、スイッチング素子Q1~Q4の各駆動信号は、PWM信号となる。なお、スイッチング素子Q1,Q4の各駆動信号と、スイッチング素子Q2,Q3の各駆動信号とは、一方がH信号(オン信号)のとき他方がL信号(オフ信号)になる状態が、デッドタイムを挟んで、交互に繰り返される(駆動信号生成部43参照)。
【0090】
モード2の定常状態では、AND回路484a,484b,484dの各出力がL信号となり、AND回路484cの出力がPWM信号となる。そして、OR回路485aの出力がPWM信号、OR回路485bの出力がL信号、AND回路486a,486bの各出力がL信号となる。このため、モード2の定常状態では、図7(b-1)に示すように、スイッチング素子Q1の駆動信号がPWM信号、スイッチング素子Q2~Q4の各駆動信号がL信号(オフ信号)となる。一方、モード2の過渡状態では、モード1の過渡状態と同じになる。したがって、モード2の過渡状態では、図7(b-2)に示すように、スイッチング素子Q1~Q4の各駆動信号は、モード1の過渡状態と同じPWM信号となる。
【0091】
モード3の定常状態では、AND回路484a,484b,484dの各出力がPWM信号となり、AND回路484cの出力がL信号となる。そして、OR回路485aの出力がL信号、OR回路485bの出力がH信号、AND回路486aの出力がL信号、AND回路486bの出力がPWM信号となる。このため、モード3の定常状態では、図8(c-1)に示すように、スイッチング素子Q1,Q4の各駆動信号がL信号(オフ信号)、スイッチング素子Q2の駆動信号がPWM、スイッチング素子Q3の駆動信号がH信号(オン信号)となる。一方、モード3の過渡状態では、モード1の過渡状態と同様である。ただし、モード3の過渡状態におけるNOR回路432およびAND回路433の各出力は、モード1の過渡状態におけるNOR回路432およびAND回路433の出力に対して、反転した信号である。したがって、モード3の過渡状態では、図8(c-2)に示すように、スイッチング素子Q1~Q4の各駆動信号は、PWM信号となる。なお、スイッチング素子Q1,Q4の各駆動信号と、スイッチング素子Q2,Q3の各駆動信号とは、一方がH信号(オン信号)のとき他方がL信号(オフ信号)になる状態が、デッドタイムを挟んで、交互に繰り返される。
【0092】
モード4の定常状態では、AND回路484a,484b,484cの各出力がL信号となり、AND回路484dの出力がPWM信号となる。そして、OR回路485aの出力がL信号、OR回路485bの出力がPWM信号、AND回路486a,486bの各出力がL信号となる。このため、モード4の定常状態では、図8(d-1)に示すように、スイッチング素子Q1,Q2,Q4の各駆動信号がL信号(オフ信号)、スイッチング素子Q3の駆動信号がPWM信号となる。一方、モード4の過渡状態では、モード3の過渡状態と同じになる。したがって、モード4の過渡状態では、図8(d-2)に示すように、スイッチング素子Q1~Q4の各駆動信号は、モード3の過渡状態と同じPWM信号となる。
【0093】
また、本実施形態の制御部4は、各モード1~4において、定常状態および過渡状態が切り替わる時に、次のように、ソフトスタートを行う。
【0094】
モード2の定常状態において、スイッチング素子Q2の駆動信号は、L信号(オフ信号)である。モード2の過渡状態では、スイッチング素子Q2の駆動信号は、PWM信号である。つまり、モード2において、スイッチング素子Q2は、定常状態と過渡状態との切り替わり時に、オフ状態と、PWM制御状態(スイッチングされる状態)とで切り替わる。この時、定常状態から過渡状態に切り替わると、比較器483aからは、L信号(デューティ比0%)からH信号(デューティ比100%)に徐々にパルス幅が増加する信号が出力される。このため、AND回路484b(AND回路486b)の出力は、L信号(デューティ比0%)から、瞬時にPWM信号に切り替わるのではなく、徐々にパルス幅が増加してPWM信号になる。反対に、過渡状態から定常状態に切り替わると、比較器483aからは、H信号(デューティ比100%)からL信号(デューティ比0%)に徐々にパルス幅が減少する信号が出力される。このため、AND回路484b(AND回路486b)の出力は、PWM信号から、瞬時にL信号(デューティ比0%)に切り替わるのではなく、徐々にパルス幅が減少してL信号(デューティ比0%)になる。したがって、モード2の定常状態と過渡状態との切り替わり時に、スイッチング素子Q2のオフ状態とPWM制御状態とが、ソフトスタートで切り替わる。このことは、モード4におけるスイッチング素子Q2,Q4においても同様である。なお、モード4におけるスイッチング素子Q4においては、AND回路486bの代わりにAND回路486aから、同様に徐々にパルス幅が変化する信号が出力される。
【0095】
同様に、モード1の定常状態では、スイッチング素子Q1の駆動信号は、H信号(オン信号)であり、モード1の過渡状態では、スイッチング素子Q1の駆動信号は、PWM信号である。つまり、モード1において、スイッチング素子Q1は、定常状態と過渡状態との切り替わり時に、オン状態と、PWM制御状態(スイッチングされる状態)とで切り替わる。この時、定常状態から過渡状態に切り替わると、比較器483bからは、H信号(デューティ比100%)からL信号(デューティ比0%)に徐々にパルス幅が減少する信号が出力される。このため、OR回路485aの出力は、H信号(デューティ比100%)から、瞬時にPWM信号に切り替わるのではなく、徐々にパルス幅が減少してPWM信号になる。反対に、過渡状態から定常状態に切り替わると、比較器483bからは、L信号(デューティ比0%)からH信号(デューティ比100%)に徐々にパルス幅が増加する信号が出力される。このため、OR回路485aの出力は、PWM信号から、瞬時にH信号(デューティ比100%)に切り替わるのではなく、徐々にパルス幅が増加してH信号(デューティ比100%)になる。したがって、モード1の定常状態と過渡状態との切り替わり時に、スイッチング素子Q1のオン状態とPWM制御状態とが、ソフトスタートで切り替わる。このことは、モード3におけるスイッチング素子Q3においても同様である。なお、モード3におけるスイッチング素子Q3においては、比較器483bの代わりに比較器483cから、OR回路485aの代わりにOR回路485bから、それぞれ同様に徐々にパルス幅が変化する信号が出力される。
【0096】
図9は、ソフトスタートの動作原理を示す波形図である。図9は、モード2の定常状態から過渡状態に移行する場合であって、スイッチング素子Q2が常時オフである状態からPWM制御される状態に移行する際の、スイッチング素子Q2への駆動信号(PWM信号)を例に示している。なお、図9では、スイッチング素子Q2でのソフトスタートの各信号例を示すが、スイッチング素子Q4でのソフトスタートも同様である。
【0097】
図9(a)の破線は、制御信号生成部41の制御器413の出力波形、図9(a)の実線は、制御信号生成部41のキャリア発生器415の出力波形、図9(a)の一点鎖線は、積分器482aの出力波形をそれぞれ示している。図9(b)は、比較器416の出力であって、制御器413の出力とキャリア発生器415の出力とから生成されるPWM信号の波形を示している。図9(c)は、比較器483aの出力であって、キャリア発生器415の出力と積分器482aの出力との比較により生成される信号の波形を示している。この比較器483bの出力は、スイッチング素子Q2のソフトスタートを実現するためのソフトスタート信号に相当する。図9(d)は、AND回路484bの出力の波形を示している。このAND回路484bの出力は、スイッチング素子Q2に入力される駆動信号(PWM信号)に相当する。
【0098】
図9(a)の破線に示すように、制御器413の出力が一定であっても、図9(d)の駆動信号(PWM信号)のパルス幅は、徐々に広くなっている。このように、双方向コンバータA2の制御部4は、モード2での定常状態から過渡状態への切り替わり時において、PWM制御が開始されるスイッチング素子Q2に対して、駆動信号(PWM信号)のパルス幅を徐々に広くする。なお、図9では、スイッチング素子Q2の駆動信号(PWM信号)のパルス幅を徐々に広くするソフトスタートについて、説明したが、スイッチング素子Q2がPWM制御される状態から常時オフである状態に移行する際のソフトスタート、つまり、スイッチング素子Q2の駆動信号(PWM信号)のパルス幅を徐々に狭くするソフトスタートについても同様である。
【0099】
次に、双方向コンバータA2において、動作モードの切り替えを行った時の二次電流I2の変化について、図10を参照して、説明する。図10は、図4と同様に、期間t2から期間t3に切り替わる時に、モード2からモード1に切り替わり、期間t5から期間t6に切り替わる時に、モード1からモード2に切り替わる場合のシミュレーション結果を示している。図10(a)は、第1端子対T1に印加される電圧(第1電圧E1)と、第2端子対T2に印加される電圧(第2電圧E2)との時間変化を示しており、図4(a)と同じ波形である。図10(b)は、従来の双方向コンバータ(特許文献1の双方向コンバータ)における二次電流の時間変化を示す波形であり、図4(b)と同じ波形である。図10(c)は、ソフトスタートを行わない場合の双方向コンバータA2における二次電流の時間変化を示す波形である。図10(d)は、双方向コンバータA2における二次電流I2の時間変化を示す波形である。なお、図10(c),(d)のシミュレーションでは、上記切替電圧を100Vとした。また、図10(b),(c),(d)のシミュレーションでは、図4でのシミュレーションと同様に、二次電流I2の設定値を+20A(第1電圧源B1から第2電圧源B2への電流を20Aとする設定値)とした。
【0100】
図10(d)に示すように、双方向コンバータA2においても、双方向コンバータA1と同様に、モード2からモード1に切り替わるタイミング(期間t2→期間t3)、および、モード1からモード2に切り替わるタイミング(期間t5→期間t6)に切り替わるタイミングのいずれにおいても、二次電流I2にオーバーシュートもアンダーシュートも抑制されている。このことは、図10(c)に示すように、ソフトスタートを行わない双方向コンバータA2においても同様である。また、双方向コンバータA2では、図10(d)に示すように、図10(c)に示すソフトスタートを行わない場合と比較して、定常状態と遮断状態との切り替わり時(時刻t2’,t6’)に生じていたオーバーシュートおよびアンダーシュートが抑制されている。例えば、時刻t2’は、モード2において定常状態から過渡状態に移行するタイミングである。ソフトスタートを行わない場合、この時刻t2’において、スイッチング素子Q4は、オフである状態からPWM制御される状態に瞬時に切り替わる。このため、スイッチ部SW4に急に電流が流れるので、電力変換回路1に流れる電流が瞬時的に変化して、オーバーシュートが発生する。一方で、ソフトスタートを行う場合、時刻t2’において、スイッチング素子Q4は、オフである状態からPWM制御される状態に徐々に切り替わる。このため、スイッチ部SW4に徐々に電流が流れるので、電力変換回路1に流れる電流が瞬時的に変化することが抑制され、オーバーシュートが抑制される。
【0101】
双方向コンバータA2の作用および効果は、次の通りである。
【0102】
双方向コンバータA2では、双方向コンバータA1と同様に、制御部4は、モード1とモード2とが切り替わる過渡期(第1過渡期)において、第1端子対T1からインダクタL1に電力を供給する状態と、インダクタL1から第2端子対T2に電力を供給する状態とを繰り返すように複数のスイッチング素子Q1~Q4の各々の駆動制御を行う。このとき、制御部4が行う駆動制御は、モード1の過渡状態とモード2の過渡状態とで共通する(つまり、当該駆動制御は、第1過渡期においては、動作モードがモード1であるかモード2であるかに関わらず共通する)。また、制御部4は、モード3とモード4とが切り替わる過渡期(第2過渡期)において、第2端子対T2からインダクタL1に電力を供給する状態と、インダクタL1から第1端子対T1に電力を供給する状態とを繰り返すように複数のスイッチング素子Q1~Q4の各々の駆動制御を行う。このとき、制御部4が行う駆動制御は、モード3の過渡状態とモード4の過渡状態とで共通する(つまり、当該駆動制御は、第2過渡期において、動作モードがモード3であるかモード4であるかに関わらず共通する)。したがって、双方向コンバータA2は、双方向コンバータA1と同様に、第1電圧E1と第2電圧E2との大小関係が変わる時(モード1とモード2とが切り替わる時、および、モード3とモード4とが切り替わる時)でも、オーバーシュートおよびアンダーシュートを抑制できる。
【0103】
双方向コンバータA2では、制御部4は、各動作モード(モード1~4)において、定常状態と過渡状態とで、各スイッチング素子Q1~Q4の駆動制御を変えている。この構成では、切り替わる前の動作モードの定常状態から切り替わる前の動作モードの過渡状態に移行し、動作モードが切り替わると、切り替わった後の動作モードの過渡状態から、切り替わった後の動作モードの定常状態に移行する。例えば、モード2(第1端子対T1から第2端子対T2への降圧動作)において、定常状態と過渡状態とで、スイッチング素子Q4のスイッチングパターンが異なり、定常状態では、スイッチング素子Q4が常時オフとなっている。これにより、双方向コンバータA2は、双方向コンバータA1と比較して、モード2の定常状態において、スイッチング素子Q4でのスイッチング損失を抑制できる。このことは、モード4(第2端子対T2から第1端子対T1への降圧動作)においても同様であり、双方向コンバータA2は、双方向コンバータA1と比較して、モード4の定常状態において、スイッチング素子Q2でのスイッチング損失を抑制できる。つまり、双方向コンバータA2は、双方向コンバータA1よりも、電力損失を抑制できる。なお、設定部33に設定する切替電圧を高くすれば、動作モードの切り替え時における過渡応答は改善されるが、過渡状態が長くなり、上記スイッチング損失が増大する。
【0104】
双方向コンバータA2では、制御部4は、各スイッチング素子Q2,Q4のPWM制御の開始時または停止時において、ソフトスタートを行う。これにより、図10(c),(d)から理解されるように、定常状態と過渡状態との切り替わり時に発生するオーバーシュートおよびアンダーシュートを抑制できる。なお、ソフトスタートにおいて、PWM信号のパルスを広げる時と、PWM信号のパルスを狭くする時とで、積分器482aの時定数を変えて、動作モードの切り替え時の過渡応答を改善してもよい。
【0105】
本開示にかかる双方向コンバータは、上記した実施形態に限定されるものではない。本開示の双方向コンバータの各部の具体的な構成は、種々に設計変更自在である。
【符号の説明】
【0106】
A1,A2:双方向コンバータ、1:電力変換回路、SW1~SW4:スイッチ部、Q1~Q4:スイッチング素子、D1~D4:ダイオード、L1:インダクタ、21:電流検出器、31:設定部、4:制御部、41:制御信号生成部、43:駆動信号生成部、45:電圧判定部、46:電流判定部、47:駆動判定部、48:信号補整部、T1:第1端子対、T11:第1高電位側端子、T12:第1低電位側端子、T2:第2端子対、T21:第2高電位側端子、T22:第2低電位側端子
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10