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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024059255
(43)【公開日】2024-05-01
(54)【発明の名称】光学積層体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/30 20060101AFI20240423BHJP
   B65H 37/04 20060101ALI20240423BHJP
【FI】
G02B5/30
B65H37/04 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022166825
(22)【出願日】2022-10-18
(71)【出願人】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001748
【氏名又は名称】弁理士法人まこと国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】出▲崎▼ 忍
(72)【発明者】
【氏名】堂免 聖史
(72)【発明者】
【氏名】白子 未来
(72)【発明者】
【氏名】岩本 展明
【テーマコード(参考)】
2H149
3F108
【Fターム(参考)】
2H149AA13
2H149AA18
2H149AB19
2H149BA02
2H149BA13
2H149CA02
2H149DA02
2H149DA04
2H149DA05
2H149DA12
2H149EA02
2H149EA03
2H149EA12
2H149EA22
2H149FA02Y
2H149FA03W
2H149FA03Y
2H149FA04X
2H149FA04Z
2H149FA05X
2H149FA05Y
2H149FA12X
2H149FA12Y
2H149FA12Z
2H149FA13X
2H149FA13Y
2H149FA14Y
2H149FA15X
2H149FA15Y
2H149FA66
2H149FA67
2H149FA68
2H149FA69
2H149FB01
2H149FB05
2H149FD46
3F108GA09
3F108GB01
3F108HA04
3F108HA12
(57)【要約】
【課題】カールを抑制可能な光学積層体の製造方法を提供する。
【解決手段】本発明に係る光学積層体100の製造方法は、偏光板10を含む第1光学フィルムF1と、第2光学フィルムF2とを、粘着剤層3を介して、貼合ローラR1によって貼り合わせる工程を有する。貼合ローラは、第1光学フィルムに接触する第1ローラR1aと、第2光学フィルムに接触する第2ローラR1bと、から構成される。第1ローラの表面は樹脂から形成され、第2ローラの表面は金属又は樹脂から形成されている。第1光学フィルムと第2光学フィルムとの積層体F3のTD方向のカール値が所定の範囲内となるように、第1光学フィルムの貼合ローラへの進入角度αを調整するか、又は、第2ローラの表面が樹脂から形成されている場合に、積層体F3のTD方向のカール値が所定の範囲内となるように、第2光学フィルムの貼合ローラへの進入角度βを調整する。
【選択図】 図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向に搬送される偏光板を含む長尺帯状の第1光学フィルムと、長手方向に搬送される長尺帯状の第2光学フィルムとを、粘着剤層を介して、貼合ローラによって貼り合わせる工程を有する光学積層体の製造方法であって、
前記貼合ローラは、前記第1光学フィルムに接触する第1ローラと、前記第1ローラに対向して配置され、前記第2光学フィルムに接触する第2ローラと、から構成され、前記第1光学フィルム及び前記第2光学フィルムが前記第1ローラと前記第2ローラとの間に進入することで、前記第1光学フィルムと前記第2光学フィルムとが貼り合わせられ、
前記第1ローラ及び前記第2ローラのうち、少なくとも何れか一方のローラの表面は樹脂から形成されており、
前記第1ローラの表面が樹脂から形成されている場合に、前記第1光学フィルムと前記第2光学フィルムとの積層体の長手方向に直交する方向のカール値が所定の範囲内となるように、前記第1光学フィルムの前記貼合ローラへの進入角度を調整するか、又は、前記第2ローラの表面が樹脂から形成されている場合に、前記第1光学フィルムと前記第2光学フィルムとの積層体の長手方向に直交する方向のカール値が所定の範囲内となるように、前記第2光学フィルムの前記貼合ローラへの進入角度を調整する、
光学積層体の製造方法。
【請求項2】
前記第1ローラの表面が樹脂から形成されている、
請求項1に記載の光学積層体の製造方法。
【請求項3】
前記第1ローラの表面が樹脂から形成されている場合に、前記貼合ローラの入側に前記第1光学フィルムに接触する第1搬送ローラを配置し、前記第1搬送ローラの前記貼合ローラに対する位置を調整することで、前記第1光学フィルムの前記貼合ローラへの進入角度を調整するか、又は、前記第2ローラの表面が樹脂から形成されている場合に、前記貼合ローラの入側に前記第2光学フィルムに接触する第2搬送ローラを配置し、前記第2搬送ローラの前記貼合ローラに対する位置を調整することで、前記第2光学フィルムの前記貼合ローラへの進入角度を調整する、
請求項1又は2に記載の光学積層体の製造方法。
【請求項4】
前記第2光学フィルムがはく離ライナーであり、
前記第2ローラの表面が金属から形成されている、
請求項1又は2に記載の光学積層体の製造方法。
【請求項5】
前記第2光学フィルムが表面保護フィルムである、
請求項1又は2に記載の光学積層体の製造方法。
【請求項6】
前記第1ローラの表面が樹脂から形成されている場合に、前記第1光学フィルムの前記貼合ローラへの進入角度を75°以下に調整するか、又は、前記第2ローラの表面が樹脂から形成されている場合に、前記第2光学フィルムの前記貼合ローラへの進入角度を75°以下に調整する、
請求項1又は2に記載の光学積層体の製造方法。
【請求項7】
前記第1ローラの表面が樹脂から形成されている場合には、前記第1ローラの表面がゴムから形成され、
前記第2ローラの表面が樹脂から形成されている場合には、前記第2ローラの表面がゴムから形成されている、
請求項1又は2に記載の光学積層体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも偏光板を備えた光学積層体の製造方法に関する。特に、本発明は、カールを抑制可能な光学積層体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液晶表示装置や有機EL表示装置等の構成材料として、偏光板が使用されている。偏光板は、偏光フィルムの他、用途に応じて位相差フィルム等を備える。偏光フィルムは、例えば、ヨウ素などの二色性物質で染色した偏光子とこの偏光子を保護する保護フィルムとから構成されている。長尺帯状の偏光フィルムは、長尺帯状の偏光子の少なくとも片面に長尺帯状の保護フィルムを貼り合わせて製造される。製造された長尺帯状の偏光フィルムの片面には、長尺帯状の位相差フィルム等が貼り合わせられて、長尺帯状の偏光板が製造される。製造された長尺帯状の偏光板の片面には、長尺帯状のはく離ライナーが貼り合わせられ、他方の面には、長尺帯状の表面保護フィルムが貼り合わせられて、長尺帯状の光学積層体が製造される。これら長尺帯状の各フィルムの貼り合わせは、通常、ロールツーロール方式で行われる。製造された長尺帯状の光学積層体は、用途に応じたサイズや形状に切断され、液晶表示装置等に用いられる。なお、液晶表示装置等に用いられる際には、はく離ライナーは、はく離されて、光学積層体の残りの構成要素が液晶表示装置等に貼り付けられる。
【0003】
従来、上記の光学積層体は、一般に、偏光フィルム製造工程、位相差フィルム貼合工程、はく離ライナー貼合工程、検査工程及び表面保護フィルム貼合工程を有する製造方法によって製造される。
【0004】
偏光フィルム製造工程では、長尺帯状の樹脂フィルムを原反フィルムとして、この原反フィルムを長手方向に搬送しながら各種の処理浴に浸漬させて、染色処理や延伸処理等の各種の処理を施すことによって、長尺帯状の偏光子を製造する。そして、長尺帯状の偏光子の少なくとも片面に長尺帯状の保護フィルムを貼り合わせることで、長尺帯状の偏光フィルムを製造する。
【0005】
位相差フィルム貼合工程では、長尺帯状の偏光フィルムの片面に長尺帯状の位相差フィルム(1/2波長板や1/4波長板など)を貼り合わせることで、長尺帯状の偏光板を製造する。
【0006】
はく離ライナー貼合工程では、長尺帯状のはく離ライナーを長手方向に搬送しながら粘着剤を塗布し、この塗布した粘着剤をオーブン等で加熱して乾燥させることで硬化させ、粘着剤層を形成する。そして、この長尺帯状のはく離ライナー(粘着剤層付きはく離ライナー)の粘着剤層側を長尺帯状の偏光板の片面に貼り合わせることで、偏光板と粘着剤層とはく離ライナーとが積層された長尺帯状の中間体を製造する。はく離ライナーだけでなく、偏光板にも粘着剤層を形成し、はく離ライナーの粘着剤層側と、偏光板の粘着剤層側とを貼り合わせることで、長尺帯状の中間体を製造する場合もある。
【0007】
検査工程では、はく離ライナーと偏光板との間に介在する粘着剤層を偏光板側に残したまま、はく離ライナーのみをはく離して、偏光板を検査する。偏光板の検査方法としては、透過検査、クロスニコル検査、反射検査などが挙げられる。検査工程では、偏光板を検査した後、はく離したはく離ライナーを再び偏光板に貼り合わせる(はく離したはく離ライナーとは異なる新しいはく離ライナーを偏光板に貼り合わせることを含む)ことで、元の中間体の状態に戻す。
【0008】
表面保護フィルム貼合工程では、長尺帯状の偏光板のはく離ライナーが貼り合わせられた側とは反対側の面に長尺帯状の表面保護フィルムが貼り合わせられる。
【0009】
しかしながら、以上のようにして製造される光学積層体には、製品サイズに切断後の光学積層体に、使用上問題となるカール(端部の反り)が発生する場合がある。
例えば、特許文献1には、偏光フィルムのカールを抑制する方法として、偏光子を保護する保護フィルムの材質を特定のものにすることが提案されているが、保護フィルムの材質が限定されるため、汎用的ではない。従来用いられている光学積層体の構成要素の材質を特に変えることなく、カールを抑制可能な方法が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2007-256568号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記従来技術の問題点を解決するためになされたものであり、カールを抑制可能な光学積層体の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記課題を解決するため、本発明者らは鋭意検討した結果、従来の光学積層体の製造方法における、各種フィルムの貼合工程(例えば、はく離ライナー貼合工程、検査工程におけるはく離ライナーの再貼合工程、表面保護フィルム貼合工程)における貼合ローラの表面の材質や、フィルムの貼合ローラへの進入角度が、貼り合わせ後の積層体のカール値(カールの程度を表す指標)に影響を及ぼすことを見出した。
具体的には、貼合ローラを構成する少なくとも一方のローラの表面がゴム等の樹脂から形成されている場合に、このローラ(以下、適宜「樹脂ローラ」という)に接触するフィルムの貼合ローラへの進入角度に応じて、貼り合わせ後の積層体の長手方向(搬送方向、MD方向)に直交する方向(TD方向)のカール値が変化することを見出した。
したがって、貼り合わせ後の積層体のTD方向のカール値が所定の範囲内となるように、樹脂ローラに接触するフィルムの貼合ローラへの進入角度を調整すれば、貼り合わせ後の積層体のTD方向のカール値を所定の範囲内に制御でき、ひいては、最終的に製造される光学積層体のTD方向のカール値を使用上問題とならない程度に抑制できることが分かった。
本発明は、本発明者らの上記知見に基づき完成したものである。
【0013】
すなわち、前記課題を解決するため、本発明は、長手方向に搬送される偏光板を含む長尺帯状の第1光学フィルムと、長手方向に搬送される長尺帯状の第2光学フィルムとを、粘着剤層を介して、貼合ローラによって貼り合わせる工程を有する光学積層体の製造方法であって、前記貼合ローラは、前記第1光学フィルムに接触する第1ローラと、前記第1ローラに対向して配置され、前記第2光学フィルムに接触する第2ローラと、から構成され、前記第1光学フィルム及び前記第2光学フィルムが前記第1ローラと前記第2ローラとの間に進入することで、前記第1光学フィルムと前記第2光学フィルムとが貼り合わせられ、前記第1ローラ及び前記第2ローラのうち、少なくとも何れか一方のローラの表面は樹脂から形成されており、前記第1ローラの表面が樹脂から形成されている場合に、前記第1光学フィルムと前記第2光学フィルムとの積層体の長手方向に直交する方向のカール値が所定の範囲内となるように、前記第1光学フィルムの前記貼合ローラへの進入角度を調整するか、又は、前記第2ローラの表面が樹脂から形成されている場合に、前記第1光学フィルムと前記第2光学フィルムとの積層体の長手方向に直交する方向のカール値が所定の範囲内となるように、前記第2光学フィルムの前記貼合ローラへの進入角度を調整する、光学積層体の製造方法を提供する。
【0014】
本発明において、「第1光学フィルムの貼合ローラへの進入角度」とは、貼合ローラを構成する第1ローラの回転中心及び第2ローラの回転中心に直交する断面において、第1ローラの回転中心及び第2ローラの回転中心を通る直線に直交し、貼合ローラの出側に向いたベクトルと、貼合ローラに接触するまでの第1光学フィルムの進行方向を示すベクトルとの成す角度を意味する。
同様に、「第2光学フィルムの貼合ローラへの進入角度」とは、貼合ローラを構成する第1ローラの回転中心及び第2ローラの回転中心に直交する断面において、第1ローラの回転中心及び第2ローラの回転中心を通る直線に直交し、貼合ローラの出側に向いたベクトルと、貼合ローラに接触するまでの第2光学フィルムの進行方向を示すベクトルとの成す角度を意味する。
【0015】
本発明によれば、第1ローラが樹脂ローラである場合には、第1ローラに接触する第1光学フィルムの貼合ローラへの進入角度を調整することで、本発明者らが知見したように、第1光学フィルムと第2光学フィルムとの積層体のTD方向のカール値を所定の範囲内に制御することができ、ひいては、光学積層体のTD方向のカール値を使用上問題とならない程度に抑制可能である。
また、第2ローラが樹脂ローラである場合には、第2ローラに接触する第2光学フィルムの貼合ローラへの進入角度を調整することでも、第1光学フィルムと第2光学フィルムとの積層体のTD方向のカール値を所定の範囲内に制御することができ、ひいては、光学積層体のTD方向のカール値を使用上問題とならない程度に抑制可能である。
【0016】
本発明において、前記第1ローラの表面が樹脂から形成されていることが好ましい。
上記の好ましい方法によれば、偏光板を含む第1光学フィルムに接触する第1ローラの表面が樹脂から形成された樹脂ローラであるため、偏光板に傷や打痕等の外観不良が生じることを抑制可能である。
【0017】
本発明において、好ましくは、前記第1ローラの表面が樹脂から形成されている場合に、前記貼合ローラの入側に前記第1光学フィルムに接触する第1搬送ローラを配置し、前記第1搬送ローラの前記貼合ローラに対する位置を調整することで、前記第1光学フィルムの前記貼合ローラへの進入角度を調整するか、又は、前記第2ローラの表面が樹脂から形成されている場合に、前記貼合ローラの入側に前記第2光学フィルムに接触する第2搬送ローラを配置し、前記第2搬送ローラの前記貼合ローラに対する位置を調整することで、前記第2光学フィルムの前記貼合ローラへの進入角度を調整する。
【0018】
上記の好ましい方法において、「貼合ローラの入側」とは、貼合ローラに対して、第1光学フィルム又は第2光学フィルムの搬送方向上流側を意味する。
上記の好ましい構成によれば、第1搬送ローラ又は第2搬送ローラの位置を調整することで、第1光学フィルム又は第2光学フィルムの貼合ローラへの進入角度を容易に調整可能である。
【0019】
本発明において、第2光学フィルムがはく離ライナーであり、前記第2ローラの表面が金属から形成されている場合を例示できる。
この場合、第2ローラが金属ローラ(以下、表面が鉄等の金属から形成されているローラを適宜「金属ローラ」という)であるため、第1光学フィルムと第2光学フィルムとの積層体のTD方向のカール値が所定の範囲内となるように、第1光学フィルムの貼合ローラへの進入角度が調整されることになる。
【0020】
本発明において、前記第2光学フィルムが表面保護フィルムである場合を例示できる。
【0021】
本発明において、好ましくは、前記第1ローラの表面が樹脂から形成されている場合に、前記第1光学フィルムの前記貼合ローラへの進入角度を75°以下(より好ましくは、60°以下)に調整するか、又は、前記第2ローラの表面が樹脂から形成されている場合に、前記第2光学フィルムの前記貼合ローラへの進入角度を75°以下(より好ましくは、60°以下)に調整する。
【0022】
本発明において、前記第1ローラの表面が樹脂から形成されている場合、前記第1ローラの表面は、例えば、シリコンゴム等のゴムから形成されるのが好ましい。また、前記第2ローラの表面が樹脂から形成されている場合、例えば、シリコンゴム等のゴムから形成されるのが好ましい。
【0023】
以上を纏めると、本発明は、以下の事項に関する。
[1]長手方向に搬送される偏光板を含む長尺帯状の第1光学フィルムと、長手方向に搬送される長尺帯状の第2光学フィルムとを、粘着剤層を介して、貼合ローラによって貼り合わせる工程を有する光学積層体の製造方法であって、前記貼合ローラは、前記第1光学フィルムに接触する第1ローラと、前記第1ローラに対向して配置され、前記第2光学フィルムに接触する第2ローラと、から構成され、前記第1光学フィルム及び前記第2光学フィルムが前記第1ローラと前記第2ローラとの間に進入することで、前記第1光学フィルムと前記第2光学フィルムとが貼り合わせられ、前記第1ローラ及び前記第2ローラのうち、少なくとも何れか一方のローラの表面は樹脂から形成されており、前記第1ローラの表面が樹脂から形成されている場合に、前記第1光学フィルムと前記第2光学フィルムとの積層体の長手方向に直交する方向のカール値が所定の範囲内となるように、前記第1光学フィルムの前記貼合ローラへの進入角度を調整するか、又は、前記第2ローラの表面が樹脂から形成されている場合に、前記第1光学フィルムと前記第2光学フィルムとの積層体の長手方向に直交する方向のカール値が所定の範囲内となるように、前記第2光学フィルムの前記貼合ローラへの進入角度を調整する、光学積層体の製造方法。
[2]前記第1ローラの表面が樹脂から形成されている、[1]に記載の光学積層体の製造方法。
[3]前記第1ローラの表面が樹脂から形成されている場合に、前記貼合ローラの入側に前記第1光学フィルムに接触する第1搬送ローラを配置し、前記第1搬送ローラの前記貼合ローラに対する位置を調整することで、前記第1光学フィルムの前記貼合ローラへの進入角度を調整するか、又は、前記第2ローラの表面が樹脂から形成されている場合に、前記貼合ローラの入側に前記第2光学フィルムに接触する第2搬送ローラを配置し、前記第2搬送ローラの前記貼合ローラに対する位置を調整することで、前記第2光学フィルムの前記貼合ローラへの進入角度を調整する、[1]又は[2]に記載の光学積層体の製造方法。
[4]前記第2光学フィルムがはく離ライナーであり、前記第2ローラの表面が金属から形成されている、[1]から[3]の何れかに記載の光学積層体の製造方法。
[5]前記第2光学フィルムが表面保護フィルムである、[1]から[3]の何れかに記載の光学積層体の製造方法。
[6]前記第1ローラの表面が樹脂から形成されている場合に、前記第1光学フィルムの前記貼合ローラへの進入角度を75°以下に調整するか、又は、前記第2ローラの表面が樹脂から形成されている場合に、前記第2光学フィルムの前記貼合ローラへの進入角度を75°以下に調整する、[1]から[5]の何れかに記載の光学積層体の製造方法。
[7]前記第1ローラの表面が樹脂から形成されている場合には、前記第1ローラの表面がゴムから形成され、前記第2ローラの表面が樹脂から形成されている場合には、前記第2ローラの表面がゴムから形成されている、[1]から[6]の何れかに記載の光学積層体の製造方法。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、従来用いられている光学積層体の構成要素の材質を特に変えることなく、カールを効果的に抑制可能である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の一実施形態に係る製造方法によって製造される光学積層体の概略構成を模式的に示す断面図である。
図2】本発明の一実施形態に係る光学積層体の製造方法の概略工程を示すフロー図である。
図3図2に示すはく離ライナー貼合工程ST3を実行する装置の概略構成例を模式的に示す図である。
図4】カール値の測定方法の概要を説明する説明図である。
図5図2に示すはく離ライナー貼合工程ST3で製造された積層体F3(第2中間体M2)のTD方向のカール値及びMD方向のカール値を測定した結果の一例を示す図である。
図6】本発明者らが行ったローラたわみ量とTD方向のカール値との関係を調査する試験の概要及び結果の一例を示す図である。
図7】本発明者らが行った第1光学フィルムF1の表面の位置を測定する試験の概要及び結果の一例を示す図である。
図8】本発明者らが推測した、樹脂ローラである第1ローラR1aに接触する第1光学フィルムF1の貼合ローラR1への進入角度αに応じて、貼り合わせ後の積層体F3のTD方向のカール値が変化する理由を模式的に説明する説明図である。
図9図2に示すはく離ライナー貼合工程ST3で製造された積層体F3(第2中間体M2)のTD方向のカール値及びMD方向のカール値を測定した結果の他の例を示す図である。
図10図2に示す検査工程ST4において、はく離ライナー4を再び偏光板10に貼り合わせる装置の概略構成例を模式的に示す側面図である。
図11図2に示す検査工程ST4で製造された積層体F3(第2中間体M2)のTD方向のカール値及びMD方向のカール値を測定した結果の一例を示す図である。
図12図2に示す表面保護フィルム貼合工程ST5を実行する装置の概略構成例を模式的に示す側面図である。
図13図2に示す表面保護フィルム貼合工程ST5で製造された積層体F3(光学積層体100)のTD方向のカール値を測定した結果の一例を示す図である。
図14図2に示す表面保護フィルム貼合工程ST5を実行する装置の他の概略構成例及び参考例に係る装置の概略構成を模式的に示す側面図である。
図15図2に示す表面保護フィルム貼合工程ST5で製造された積層体F3(光学積層体100)のTD方向のカール値を測定した結果の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、添付図面を適宜参照しつつ、本発明の一実施形態に係る光学積層体の製造方法について説明する。なお、各図は、参考的に表したものであり、各図に表された光学積層体や装置の構成要素の寸法、縮尺及び形状は、実際のものとは異なっている場合があることに留意されたい。
【0027】
<光学積層体の構成>
最初に、本実施形態に係る製造方法によって製造される光学積層体の構成について説明する。
図1は、本実施形態に係る製造方法によって製造される光学積層体の概略構成を模式的に示す断面図である。
図1に示すように、本実施形態の光学積層体100は、偏光フィルム1と、位相差フィルム2と、粘着剤層3と、はく離ライナー4と、表面保護フィルム5と、を備える。偏光フィルム1と位相差フィルム2との積層体が偏光板10を構成している。偏光板10と粘着剤層3との積層体が第1中間体M1を構成している。第1中間体M1とはく離ライナー4との積層体が第2中間体M2を構成している。以下、光学積層体100の各構成要素について説明する。
【0028】
[偏光フィルム1]
偏光フィルム1は、偏光子11と、この偏光子11を保護する保護フィルム12、13とから構成されている。本実施形態では、偏光子11の両面に保護フィルム12、13が貼り合わせられているが、これに限るものではなく、偏光子11の少なくとも片面に保護フィルムが貼り合わせられていればよい。
【0029】
(偏光子11)
偏光子11は、代表的には、二色性物質を含む樹脂フィルムで構成される。
樹脂フィルムとしては、偏光子として用いることができる任意の適切な樹脂フィルムを採用することができる。樹脂フィルムは、代表的には、ポリビニルアルコール系樹脂(以下、「PVA系樹脂」と称する)フィルムである。
【0030】
上記PVA系樹脂フィルムを形成するPVA系樹脂としては、任意の適切な樹脂を用いることができる。例えば、ポリビニルアルコール、エチレン-ビニルアルコール共重合体が挙げられる。ポリビニルアルコールは、ポリ酢酸ビニルをケン化することにより得られる。エチレン-ビニルアルコール共重合体は、エチレン-酢酸ビニル共重合体をケン化することにより得られる。
【0031】
PVA系樹脂の平均重合度は、目的に応じて適切に選択することができる。平均重合度は、通常1000~10000であり、好ましくは1200~4500、さらに好ましくは1500~4300である。なお、平均重合度は、JIS K 6726-1994に準じて求めることができる。
【0032】
樹脂フィルムに含まれる二色性物質としては、例えば、ヨウ素、有機染料等が挙げられる。これらは、単独で、又は、二種以上を組み合わせて用いることができる。好ましくは、ヨウ素が用いられる。
【0033】
樹脂フィルムは、単層の樹脂フィルムであっても、二層以上の積層体であってもよい。
【0034】
単層の樹脂フィルムから構成される偏光子の具体例としては、PVA系樹脂フィルムにヨウ素による染色処理及び延伸処理(代表的には、一軸延伸処理)が施されたものが挙げられる。ヨウ素による染色処理は、例えば、PVA系フィルムをヨウ素水溶液に浸漬することによって行われる。一軸延伸の延伸倍率は、好ましくは3~7倍である。延伸は、染色後に行ってもよいし、染色しながら行ってもよい。また、延伸後に染色を行ってもよい。必要に応じて、PVA系樹脂フィルムに、膨潤処理、架橋処理、洗浄処理、乾燥処理等が施される。
【0035】
積層体から構成される偏光子の具体例としては、樹脂基材とこの樹脂基材に積層されたPVA系樹脂層(PVA系樹脂フィルム)との積層体、又は、樹脂基材とこの樹脂基材に塗布形成されたPVA系樹脂層との積層体から構成される偏光子が挙げられる。樹脂基材とこの樹脂基材に塗布形成されたPVA系樹脂層との積層体から構成される偏光子は、例えば、PVA系樹脂溶液を樹脂基材に塗布し、乾燥させて樹脂基材上にPVA系樹脂層を形成して、樹脂基材とPVA系樹脂層との積層体を得た後、この積層体を延伸及び染色してPVA系樹脂層を偏光子とすることにより作製することができる。本実施形態において、延伸は、代表的には積層体をホウ酸水溶液中に浸漬させて延伸することを含む。さらに、延伸は、必要に応じて、ホウ酸水溶液中での延伸の前に積層体を高温(例えば、95℃以上)で空中延伸することを含んでもよい。得られた樹脂基材/偏光子の積層体は、そのまま用いてもよく(すなわち、樹脂基材を偏光子の保護層としてもよく)、樹脂基材/偏光子の積層体から樹脂基材をはく離し、このはく離面に目的に応じた任意の適切な保護層を積層して用いてもよい。このような偏光子の製造方法の詳細は、例えば、特開2012-73580号公報に記載されている。この公報は、その全体の記載が本明細書に参考として援用される。
【0036】
偏光子11の厚みは、好ましくは15μm以下であり、より好ましくは1μm~12μmであり、さらに好ましくは3μm~10μmであり、特に好ましくは3μm~8μmである。
【0037】
偏光子11は、好ましくは、波長380nm~780nmの範囲内の何れかの波長で吸収二色性を示す。偏光子11の単体透過率は、好ましくは40.0%~45.0%であり、より好ましくは41.5%~43.5%である。偏光子11の偏光度は、好ましくは97.0%以上であり、より好ましくは99.0%以上であり、さらに好ましくは99.9%以上である。
【0038】
(保護フィルム12、13)
保護フィルム12、13としては、任意の適切な樹脂フィルムが用いられる。樹脂フィルムの形成材料としては、例えば、(メタ)アクリル系樹脂、ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロース等のセルロース系樹脂、ノルボルネン系樹脂等のシクロオレフィン系樹脂、ポリプロピレン等のオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート系樹脂等のエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、これらの共重合体樹脂等が挙げられる。なお、「(メタ)アクリル系樹脂」とは、アクリル系樹脂及び/又はメタクリル系樹脂を意味する。保護フィルム12、13の形成材料は互いに同じであっても異なるものであってもよい。
【0039】
保護フィルム12、13の厚みは、代表的には10μm~100μmであり、好ましくは20μm~40μmである。保護フィルム12、13の厚みは互いに同じであっても異なるものであってもよい。
【0040】
保護フィルム12、13の偏光子11と反対側の表面には、必要に応じて、ハードコート処理、反射防止処理、スティッキング防止処理、アンチグレア処理等の表面処理が施されていてもよい。さらに/又は、保護フィルム12、13の偏光子11と反対側の表面には、必要に応じて、偏光サングラスを介して視認する場合の視認性を改善する処理(代表的には、(楕)円偏光機能を付与する処理、超高位相差を付与する処理)が施されていてもよい。なお、表面処理が施されて表面処理層が形成される場合、保護フィルム12、13の厚みは、表面処理層を含めた厚みである。
【0041】
なお、保護フィルム12、13は、任意の適切な接着剤層(図示せず)を介して、それぞれ偏光子11に貼り合わせられて、積層されている。接着剤層を構成する接着剤として、代表的にはPVA系接着剤又は活性化エネルギー線硬化型接着剤が挙げられる。
【0042】
[位相差フィルム2]
位相差フィルム2は、例えば、広視野角を付与する補償板であってもよいし、偏光膜と共に用いられて円偏光を生成するための1/2波長板や1/4波長板等の位相差板(円偏光板)であってもよい。位相差フィルム2の厚みは、例えば、1~200μmである。
【0043】
位相差フィルム2は、例えば、重合性液晶を重合させることにより形成される層又は樹脂で形成される。重合性液晶とは、重合性基を有し、且つ、液晶性を有する化合物である。重合性基とは、重合反応に関与する基を意味し、光重合性基であることが好ましい。ここで、光重合性基とは、光重合開始剤から発生した活性ラジカルや酸などによって重合反応に関与し得る基のことをいう。重合性基としては、ビニル基、ビニルオキシ基、1-クロロビニル基、イソプロペニル基、4-ビニルフェニル基、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、オキシラニル基、オキセタニル基等が挙げられる。中でも、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、ビニルオキシ基、オキシラニル基及びオキセタニル基が好ましく、アクリロイルオキシ基がより好ましい。重合性液晶が有する液晶性はサーモトロピック性液晶でもリオトロピック液晶でもよく、サーモトロピック液晶を秩序度で分類すると、ネマチック液晶でもスメクチック液晶でもよい。
また、位相差フィルム2を形成する樹脂としては、例えば、ポリアリレート、ポリアミド、ポリイミド、ポリエステル、ポリアリールエーテルケトン、ポリアミドイミド、ポリエステルイミド、ポリビニルアルコール、ポリフマル酸エステル、ポリエーテルサルフォン、ポリサルフォン、ノルボルネン樹脂、ポリカーボネート樹脂、セルロース樹脂及びポリウレタンが挙げられる。これらの樹脂は、単独で用いてもよく、組み合わせて用いてもよい。
【0044】
なお、位相差フィルム2は、任意の適切な接着剤層又は粘着剤層(図示せず)を介して、偏光フィルム1(保護フィルム13)に貼り合わせられて、積層されている。接着剤層を構成する接着剤として、代表的にはPVA系接着剤又は活性化エネルギー線硬化型接着剤が挙げられる。
【0045】
[粘着剤層3]
粘着剤層3は、はく離ライナー4の片面に粘着剤を塗布し、この塗布した粘着剤をオーブン等で加熱して乾燥させることで硬化して形成される。また、はく離ライナー4だけではなく、偏光板10を構成する位相差フィルム2にも粘着剤層3を形成する場合もある。
粘着剤の加熱温度は、100℃~160℃の範囲に設定することが好ましく、140℃~160℃の範囲に設定することがより好ましい。この加熱温度で、20秒~3分加熱することが好ましく、1分~3分加熱することがより好ましい。
【0046】
粘着剤層3を形成する粘着剤の具体例としては、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、エポキシ系粘着剤、及び、ポリエーテル系粘着剤が挙げられる。粘着剤のベース樹脂を形成するモノマーの種類、数、組み合わせ及び配合比、並びに、架橋剤の配合量、反応温度、反応時間等を調整することにより、目的に応じた所望の特性を有する粘着剤を調製することができる。粘着剤のベース樹脂は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。透明性、加工性及び耐久性などの観点から、アクリル系粘着剤が好ましい。粘着剤層を構成する粘着剤の詳細は、例えば、特開2014-115468号公報に記載されており、当該公報の記載は本明細書に参考として援用されている。粘着剤層の厚みは、例えば10μm~100μmにすることができる。
【0047】
[はく離ライナー4]
はく離ライナー4としては、任意の適切なはく離ライナーを採用することができる。具体例としては、はく離剤により表面コートされたプラスチックフィルム、不織布又は紙が挙げられる。はく離剤の具体例としては、シリコーン系はく離剤、フッ素系はく離剤、長鎖アルキルアクリレート系はく離剤が挙げられる。プラスチックフィルムの具体例としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルムが挙げられる。はく離ライナー4の厚みは、例えば10μm~100μmとすることができる。
【0048】
[表面保護フィルム5]
表面保護フィルム5は、代表的には、基材と粘着剤層とを有する。本実施形態において、表面保護フィルム5の厚みは、例えば30μm以上である。表面保護フィルム5の厚みの上限は、例えば150μmである。なお、本明細書において、「表面保護フィルムの厚み」とは、基材と粘着剤層との合計厚みをいう。
【0049】
基材は、任意の適切な樹脂フィルムで構成することができる。樹脂フィルムの形成材料としては、ポリエチレンテレフタレート系樹脂等のエステル系樹脂、ノルボルネン系樹脂等のシクロオレフィン系樹脂、ポリプロピレン等のオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、これらの共重合体樹脂等が挙げられる。好ましくは、エステル系樹脂(特に、ポリエチレンテレフタレート系樹脂)である。
【0050】
粘着剤層を形成する粘着剤としては、任意の適切な粘着剤を採用することができる。粘着剤のベース樹脂としては、例えば、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、シリコーン系樹脂、ウレタン系樹脂、ゴム系樹脂が挙げられる。
【0051】
<本実施形態に係る製造方法>
以上に説明した構成を有する光学積層体100を製造するための本実施形態に係る光学積層体100の製造方法について、以下に説明する。
図2は、本実施形態に係る光学積層体100の製造方法の概略工程を示すフロー図である。
図2に示すように、本実施形態に係る製造方法は、偏光フィルム製造工程ST1と、位相差フィルム貼合工程ST2と、はく離ライナー貼合工程ST3と、検査工程ST4と、表面保護フィルム貼合工程ST5と、を含む。以下、各工程ST1~ST5について説明する。
【0052】
[偏光フィルム製造工程ST1]
偏光フィルム製造工程ST1では、長尺帯状の樹脂フィルムを原反フィルムとして、この原反フィルムを長手方向(MD方向)に搬送しながら各種の処理浴に浸漬させて、染色処理や延伸処理等の各種の処理を施すことによって、長尺帯状の偏光子11を製造する。そして、長尺帯状の偏光子11に長尺帯状の保護フィルム12、13を貼り合わせることで、長尺帯状の偏光フィルム1を製造する。
【0053】
[位相差フィルム貼合工程ST2]
位相差フィルム貼合工程ST2では、長尺帯状の偏光フィルム1の片面(保護フィルム13)に長尺帯状の位相差フィルム2を貼り合わせることで、長尺帯状の偏光板10を製造する。
なお、光学積層体100が位相差フィルム2を備えない(偏光板10が位相差フィルム2を備えない)場合には、位相差フィルム貼合工程ST2は不要である。
【0054】
[はく離ライナー貼合工程ST3]
はく離ライナー貼合工程ST3では、長尺帯状のはく離ライナー4を長手方向(MD方向)に搬送しながら粘着剤を塗布し、この塗布した粘着剤をオーブン等で加熱して乾燥させることで硬化させ、粘着剤層3を形成する粘着剤層形成工程を実行する。そして、長尺帯状のはく離ライナー4に形成された粘着剤層3を介してはく離ライナー4を長尺帯状の偏光板10に貼り合わせる。具体的には、長尺帯状のはく離ライナー4(粘着剤層3付きはく離ライナー4)の粘着剤層3側を長尺帯状の偏光板10の片面(位相差フィルム2)に貼り合わせる。これにより、偏光板10と粘着剤層3とはく離ライナー4とが積層された第2中間体M2を製造する。
なお、はく離ライナー4だけではなく、偏光板10を構成する位相差フィルム2にも粘着剤層3を形成して、粘着剤層3付き偏光板10としてもよい。そして、はく離ライナー4の粘着剤層3側と、偏光板10の粘着剤層側とを貼り合わせて、第2中間体M2を製造することも可能である。
【0055】
図3は、はく離ライナー貼合工程ST3を実行する装置の概略構成例を模式的に示す図である。図3(a)は、装置の側面図(各フィルムの搬送方向(MD方向)に直交する水平方向(TD方向)から見た図)である。図3(a)に示す矢符は、各フィルムの搬送方向を意味する。図3(b)は、図3(a)に示す貼合ローラR1におけるフィルムの進入角度を説明する側面視断面図である。
本発明では、貼合ローラによって貼り合わせる一方のフィルムを第1光学フィルムF1とし、他方のフィルムを第2光学フィルムF2としている。はく離ライナー貼合工程ST3では、第1光学フィルムF1は、偏光板10又は粘着剤層3付き偏光板10であり、第2光学フィルムF2は、粘着剤層3付きはく離ライナー4である。この第1光学フィルムF1と第2光学フィルムF2とが、粘着剤層3を介して、貼合ローラR1によって貼り合わされ、第1光学フィルムF1と第2光学フィルムF2との積層体F3が製造される。はく離ライナー貼合工程ST3では、積層体F3は、第2中間体M2である。
【0056】
具体的には、図3(a)に示すように、貼合ローラR1の入側(貼合ローラR1に対して、第1光学フィルムF1の搬送方向上流側であり、図3(a)に示す例では、貼合ローラR1の左側)に第1光学フィルムF1に接触する第1搬送ローラR2が配置され、第1搬送ローラR2によって、第1光学フィルムF1が貼合ローラR1に搬送される。同様に、貼合ローラR1の入側(貼合ローラR1に対して、第2光学フィルムF2の搬送方向上流側であり、図3(a)に示す例では、貼合ローラR1の左側)に第2光学フィルムF2に接触する第2搬送ローラR3が配置され、第2搬送ローラR3によって、第2光学フィルムF2が貼合ローラR1に搬送される。
第1搬送ローラR2は、貼合ローラR1に対する位置(本実施形態では、上下方向の位置)を調整可能になっている。図3(a)に示す例では、第1搬送ローラR2は、実線で示す最上部の位置から、破線で示す位置を経て、一点鎖線で示す最下部の位置に移動可能である。例えば、第1搬送ローラR2の回転軸が軸受を介して一軸アクチュエータに取り付けられ、この一軸アクチュエータを駆動することで、第1搬送ローラR2の位置を調整可能にする構成を採用可能である。
一方、第2搬送ローラR3は、所定の位置に固定されている。
【0057】
貼合ローラR1は、第1ローラR1aと、第1ローラR1aに対向(図3に示す例では上下方向に対向)して配置された第2ローラR1bと、から構成されている。
第1ローラR1aは、第1光学フィルムF1に接触して、第1ローラR1aと第2ローラR1bとの間に第1光学フィルムF1を搬送するローラである。第1ローラR1aは、その表面が樹脂(本実施形態では、シリコンゴム)から形成された樹脂ローラである。
第2ローラR1bは、第2光学フィルムF2に接触して、第1ローラR1aと第2ローラR1bとの間に第2光学フィルムF2を搬送するローラである。第2ローラR1bは、その表面が金属(本実施形態では、鉄)から形成された金属ローラである。
第1光学フィルムF1及び第2光学フィルムF2が第1ローラR1aと第2ローラR1bとの間に進入することで、第1光学フィルムF1と第2光学フィルムF2とが貼り合わせられ、第1光学フィルムF1と第2光学フィルムF2との積層体F3が製造される。積層体F3は、搬送ローラR4によって搬送され、巻取ローラ(図示せず)で巻き取られる。
【0058】
図3(b)に示すように、第1ローラR1aの回転中心C1及び第2ローラR1bの回転中心C2に直交する断面において、第1ローラR1aの回転中心C1と第2ローラの回転中心C2とを通る直線(仮想直線)を直線CLとする。直線CLに直交し、貼合ローラR1の出側(第1光学フィルムF1及び第2光学フィルムF2の搬送方向下流側であり、図3(b)に示す例では、貼合ローラR1の右側)に向いたベクトル(仮想ベクトル)をベクトルVCとする。このとき、第1光学フィルムF1の貼合ローラR1への進入角度αは、ベクトルVCと、貼合ローラR1に接触するまでの第1光学フィルムF1の進行方向を示すベクトルとの成す角度を意味する。また、第2光学フィルムF2の貼合ローラR1への進入角度βは、ベクトルVCと、貼合ローラR1に接触するまでの第2光学フィルムF2の進行方向を示すベクトルとの成す角度を意味する。
そして、はく離ライナー貼合工程ST3では、積層体F3の長手方向(MD方向)に直交する方向(TD方向)のカール値が所定の範囲内となるように、第1光学フィルムF1の貼合ローラR1への進入角度αが調整される。具体的には、第1搬送ローラR2の貼合ローラR1に対する位置を上下方向に調整することで、進入角度αが調整される。図3(a)に実線で示す最上部の位置に第1搬送ローラR2が位置するときに、進入角度αは最も小さい0°となり、一点鎖線で示す最下部の位置に第1搬送ローラR2が位置するときに、進入角度αは最も大きな値となる。
【0059】
以下、カール値の測定方法について説明する。
図4は、本実施形態で実施したカール値の測定方法の概要を説明する説明図である。
図4(a)に示すように、長尺の第2中間体M2のTD方向に沿って、複数枚の製品サイズ(例えば、スマートフォン用に使用される長辺160mm×短辺80mm)の矩形の第2中間体サンプルM21を切り出す。図4(a)では、便宜上、3枚の中間体サンプルM21を図示しているが、実際には、これに限られない。これを複数の第2中間体M2について実施することで得られた計100枚の第2中間体サンプルM21について、カール値を測定する。なお、図4(b)に示すように、第2中間体サンプルM21を切り出す際には、第2中間体M2のMD方向(図1に示す偏光子11の吸収軸の方向に相当)が、第2中間体サンプルM21の長辺及び短辺に対して45°となるように、斜めに切り出す。
【0060】
図4(c)に示すように、カール値を測定する際には、第2中間体サンプルM21の下側が凸になるように(第2中間体サンプルM21の4つの角部の反りが鉛直方向上方に向かうように)、第2中間体サンプルM21を平坦な載置台20上に載置し、第2中間体サンプルM21の4つの角部のそれぞれについて、載置台20の上面から角部までの鉛直方向の距離Hを測定する。第2中間体サンプルM21の4つの角部は、第2中間体M2から切り出す前の状態において、第2中間体M2のTD方向の両端に位置する角部TD1、TD2と、第2中間体M2のMD方向の両端に位置する角部MD1、MD2である。距離Hは、第2中間体サンプルM21の角部近傍に鉛直方向に延びるスケールを立て、このスケールの目盛りを目視で読み取ることで測定する。
【0061】
第2中間体サンプルM21の下側が凸になるように載置台20上に載置した際、第2中間体サンプルM21のはく離ライナー4の位置する側が下になる(偏光板10の位置する側が上になる)場合をプラスのカールとし、角部TD1、TD2のそれぞれについて測定した距離Hの大きい方をそのままTD方向のカール値として算出する。また、角部MD1、MD2のそれぞれについて測定した距離Hの大きい方をそのままMD方向のカール値として算出する。
一方、第2中間体サンプルM21の下側が凸になるように載置台20上に載置した際、第2中間体サンプルM21のはく離ライナー4の位置する側が上になる(偏光板10の位置する側が下になる)場合をマイナスのカールとし、角部TD1、TD2のそれぞれについて測定した距離Hに-1を乗算し、その絶対値の大きい方をTD方向のカール値として算出する。また、角部MD1、MD2のそれぞれについて測定した距離Hに-1を乗算し、その絶対値の大きい方をMD方向のカール値として算出する。
そして、100枚の第2中間体サンプルM21のそれぞれについて測定したTD方向のカール値の平均値を、第2中間体M2のTD方向のカール値とする。同様に、100枚の第2中間体サンプルM21のそれぞれについて測定したMD方向のカール値の平均値を、第2中間体M2のMD方向のカール値とする。
なお、後述の光学積層体100のTD方向のカール値及びMD方向のカール値についても、図4を参照して説明した上記と同様の測定方法で測定可能である。
【0062】
図5は、はく離ライナー貼合工程ST3で製造された積層体F3(第2中間体M2)のTD方向のカール値及びMD方向のカール値を測定した結果の一例を示す図である。具体的には、図5は、第1光学フィルムF1が偏光板10であり、第2光学フィルムF2が粘着剤層3付きはく離ライナー4であって、以下の順に積層された構成を有する総厚み117μmの積層体F3(第2中間体M2)のカール値を測定した結果である。なお、図5に示す結果は、第2光学フィルムF2の貼合ローラR1への進入角度β=43°のときに得られたものである。
(1)偏光板10(総厚み65μm)
(1-1)保護フィルム12:ハードコート層(厚み3μm)付きシクロオレフィン系保護フィルム(総厚み29μm)
(1-2)偏光子11:ポリビニルアルコール系偏光子(厚み13μm)
(1-3)保護フィルム13:トリアセチルセルロース系保護フィルム(厚み20μm)
(1-4)位相差フィルム2:重合性液晶系1/2波長板(厚み1μm)及び重合性液晶系1/4波長板(厚み2μm)の積層体(総厚み3μm)
(2)粘着剤層3:アクリル系粘着剤層(厚み14μm)
(3)はく離ライナー4:ポリエチレンテレフタレート製はく離ライナー(厚み38μm)
【0063】
図5に示すように、第1ローラR1aは樹脂ローラであり、この第1ローラR1aに接触する第1フィルムF1の貼合ローラRへの進入角度αに応じて、貼り合わせ後の積層体F3のMD方向のカール値は略一定であるのに対し、TD方向のカール値は変化している。
したがって、貼り合わせ後の積層体F3のTD方向のカール値が所定の範囲内となるように、第1ローラR1aに接触する第1光学フィルムF1の貼合ローラR1への進入角度αを調整すれば、貼り合わせ後の積層体F3のTD方向のカール値を所定の範囲内に制御でき、ひいては、最終的に製造される光学積層体100のTD方向のカール値を使用上問題とならない程度に抑制可能である。具体的には、図5に示すようなデータを予め採取しておき、このデータに基づき、貼り合わせ後の積層体F3のTD方向のカール値が所定の範囲内となるように、第1ローラR1aに接触する第1光学フィルムF1の貼合ローラR1への進入角度αを調整すれば、調整後には、貼り合わせ後の積層体F3のTD方向のカール値を所定の範囲内に制御可能である。
【0064】
以下、上記のように、貼合ローラR1を構成する第1ローラR1a及び第2ローラR1bのうち、樹脂ローラである第1ローラR1aに接触する第1光学フィルムF1の貼合ローラR1への進入角度αに応じて、貼り合わせ後の積層体F3のTD方向のカール値が変化する理由について、本発明者らが検討した内容を説明する。
【0065】
図6は、本発明者らが行ったローラたわみ量とTD方向のカール値との関係を調査する試験の概要及び結果の一例を示す図である。図6(a)は、本試験において第1ローラR1aに荷重を加えていない状態を模式的に示す正面図(各フィルムの搬送方向(MD方向)から見た図)である。図6(b)は、本試験において第1ローラR1aに荷重を加えた状態を模式的に示す正面図である。図6(c)は、本試験において、第1ローラR1aの表面(下面)の位置を測定した結果の一例を示す図である。図6(d)は、ローラたわみ量を説明する側面視断面図である。図6(e)は、本試験の結果の一例を示す図である。なお、図6(a)、図6(b)及び図6(d)において、フィルムの図示は省略している。
図6(a)に示すように、本発明者らは、第1ローラR1aに荷重を加えていない状態(図示しないフィルムを介して、第1ローラR1aと第2ローラR1bとが無負荷で接触している状態)で、複数の1次元レーザ距離計20aを、第1ローラR1aの回転中心C1に沿って、第1ローラR1aの表面(下面)に対向するように配置し、各1次元レーザ距離計20aから第1ローラR1aの表面(下面)までの距離Laを測定した。1次元レーザ距離計20aは、スポット状のレーザ光を照射して、照射位置までの距離を三角測量の原理で測定する装置である。
同様に、本発明者らは、第1ローラR1aに荷重を加えていない状態で、複数の1次元レーザ距離計20bを、第2ローラR1bの回転中心C2に沿って、第2ローラR1bの表面(上面)に対向するように配置し、各1次元レーザ距離計20bから第2ローラR1bの表面(上面)までの距離Lbを測定した。1次元レーザ距離計20bは、1次元レーザ距離計20aと同じ装置である。
なお、既知の値である1次元レーザ距離計20aと1次元レーザ距離計20bとの離隔距離L0と、測定した距離La及び距離Lbとから、第1ローラR1aの表面(下面)と第2ローラR1bの表面(上面)との離隔距離Lは、L=L0-La-Lbによって表されることになる。第1ローラR1aに荷重を加えていない状態では、離隔距離Lは、ほぼ一定であると考えられる。
【0066】
次に、図6(b)に示すように、本発明者らは、図6(a)に示す状態から、第1ローラR1aに荷重Fを加えて、前述と同様に、各1次元レーザ距離計20aから第1ローラR1aの表面(下面)までの距離La’と、各1次元レーザ距離計20bから第2ローラR1bの表面(上面)までの距離Lb’とを測定した。具体的には、第1ローラR1aの回転軸R11に加える荷重Fを種々の値に変更し、各荷重Fを加えた状態で、それぞれ距離La’、Lb’を測定した。
なお、既知の値である1次元レーザ距離計20aと1次元レーザ距離計20bとの離隔距離L0と、測定した距離La’及び距離Lb’とから、第1ローラR1aの表面(下面)と第2ローラR1bの表面(上面)との離隔距離L’は、L’=L0-La’-Lb’によって表されることになる。
そして、測定した距離La、Lb、La’、Lb’に基づき、ΔL=L-L’=(L0-La-Lb)-(L0-La’-Lb’)=La’-La+Lb’-Lbで算出されるΔLをローラ変形量として3箇所で算出した。
【0067】
図6(b)に示すように、第1ローラR1aに荷重を加えた状態では、第1ローラR1aの回転中心C1が下に凸にたわむ。このため、第1ローラR1aの中央部(回転中心C1方向についての中央部)における距離La’よりも、第1ローラR1aの端部(回転中心C1方向の端部)における距離La’の方が大きくなる。
図6(c)の横軸には、所定の位置を基準値(0mm)とする第1光学フィルムF1のTD方向に相当する第1ローラR1aの回転中心C1方向の位置をプロットした。また、図6(c)の縦軸には、第1ローラR1aに荷重を加えていない状態で測定した距離Laを基準値(0mm)として、第1ローラR1aに荷重を加えた状態で測定した距離La’の基準値からの変位量を第1ローラR1aの表面(下面)の位置としてプロットした。図6(c)の縦軸が正の値である場合、第1ローラR1aの表面の位置が、基準値よりも1次元レーザ距離計20aに近いことを意味する。図6(c)の縦軸が負の値である場合、第1ローラR1aの表面の位置が、基準値よりも1次元レーザ距離計20aから遠いことを意味する。図6(c)に示す例からも分かるように、第1ローラR1aに荷重を加えた状態では、荷重が大きくなればなるほど、第1ローラR1aの中央部における距離La’よりも、第1ローラR1aの端部における距離La’の方が大きくなり、第1ローラR1aの回転中心C1が下に凸にたわむことになる。
【0068】
このため、離隔距離L’は、第1ローラR1aの中央部よりも端部の方が小さくなると考えられる。したがって、ローラ変形量ΔLは、第1ローラR1aの中央部よりも端部の方が大きくなると考えられる。
なお、貼合ローラR1によって第1光学フィルムF1と第2光学フィルムF2とを適切に貼り合わせるには、第1ローラR1aに荷重を加える必要があるため、はく離ライナー貼合工程ST3では、図6(b)に示すような状態となり、ローラ変形量ΔLが、第1ローラR1aの中央部よりも端部の方が大きくなると考えられる。
【0069】
図6(d)に示すように、第1ローラR1aに荷重を加えた状態では、樹脂ローラである第1ローラR1aの第2ローラR1bに面している側の表面(上面)が変形して潰れることになる。したがって、前述の離隔距離L’ひいてはローラ変形量ΔLには、第1ローラR1aの下に凸のたわみだけではなく、この第1ローラR1aの潰れ量(本明細書では、これを「ローラ潰れ量」と称する)も影響することになる。
図6(d)に示すように、ローラ潰れ量hは、第1ローラの回転中心C1及び第2ローラの回転中心C2に直交する断面において、第1ローラR1aの潰れている領域に対応する第2ローラR1bの中心角をθとし、第1ローラR1aの直径を2rとすると、幾何学的に、h=r{1-cos(θ/2)}で表される。なお、中心角θは、rθで表されるニップ幅を、公知のプレスケールやデジニップを用いて測定することで、算出可能である。
本発明者らは、ローラ変形量ΔLからローラ潰れ量hの影響を取り除いた値をローラたわみ量εとして算出した。すなわち、ローラたわみ量εをε=ΔL-hによって3箇所で算出した。そして、このローラたわみ量εと、はく離ライナー貼合工程ST3で製造された積層体F3(第2中間体M2)のTD方向のカール値との関係を調査した。
【0070】
ローラたわみ量εと、積層体F3のTD方向のカール値との関係は、第1ローラR1aの直径2r=180mm、250mm(第2ローラR1bの直径も同一)の2つについて調査した。第1ローラR1aの直径2r=180mmの場合には、加える荷重Fを、圧力換算で、0.13MPa、0.20MPa、0.25MPaの3つに変更した。第1ローラR1aの直径2r=250mmの場合には、加える荷重Fを、圧力換算で、0.06MPa、0.10MPa、0.20MPa、0.30MPaの4つに変更した。
本試験の結果の一例を示す図6(e)の横軸には、3箇所で算出したローラたわみ量εの平均値をプロットした。また、図6(e)の縦軸には、第1ローラR1aの直径2r=180mmの場合には、加える荷重が最も小さな0.13MPaのときの積層体F3のTD方向のカール値を基準値とした基準値からの変化量をプロットし、第1ローラR1aの直径2r=250mmの場合には、加える荷重が最も小さな0.06MPaのときの積層体F3のTD方向のカール値を基準値とした基準値からの変化量をプロットした。
図6(e)に示すように、ローラたわみ量εと、積層体F3のTD方向のカール値とは、比較的良好な相関を有することが分かった。このため、樹脂ローラである第1ローラR1aのたわみが積層体F3のTD方向のカール値に影響すると考えられる。
【0071】
上記の試験結果を踏まえて、本発明者らは、第1光学フィルムF1の表面の位置を測定する試験を行った。
図7は、本発明者らが行った第1光学フィルムF1の表面の位置を測定する試験の概要及び結果の一例を示す図である。図7(a)は、本試験の概要を模式的に示す斜視図である。図7(b)は、本試験の概要を模式的に示す側面図である。図7(b)では、2次元距離計の図示を省略している。図7(c)は、図7(b)に示す位置P1で測定した第1光学フィルムF1の表面の位置の一例を示す図である。図7(d)は、図7(b)に示す位置P2で測定した第1光学フィルムF1の表面の位置の一例を示す図である。
図7(a)に示すように、本発明者らは、2個の2次元レーザ距離計30a、30bを、第1光学フィルムF1の表面(上面)に対向するように配置し、各2次元レーザ距離計30a、30bを第1光学フィルムF1のTD方向に沿って移動させることで、各2次元レーザ距離計30a、30bから第1光学フィルムF1の表面(上面)までの距離を測定した。2次元レーザ距離計30a、30bは、線状のレーザ光を照射して、照射位置までの距離を三角測量の原理で測定する装置である。本試験では、線状のレーザ光が延びる方向が第1光学フィルムF1のTD方向に沿うように、2次元レーザ距離計30a、30bの向きを調整して配置した。本試験で用いた各2次元レーザ距離計30a、30bの測定範囲(第1光学フィルムF1のTD方向の測定範囲)はそれぞれ約210mmであり、第1光学フィルムのTD方向の寸法よりも小さいため、各2次元レーザ距離計30a、30bを第1光学フィルムF1のTD方向に沿ってそれぞれ第1光学フィルムF1のTD方向に移動させることで、第1光学フィルムF1の表面までの距離を第1光学フィルムF1のTD方向全体に亘って測定した。
【0072】
2次元レーザ距離計30a、30bは、第1光学フィルムF1が第1ローラR1aに接触する直前の位置(図7(b)に示す位置P1)での第1光学フィルムF1の表面に対向する位置と、第1光学フィルムF1が第1ローラR1aに接触した後の位置(図7(b)に示す位置P2)での第1光学フィルムF1の表面に対向する位置との双方にそれぞれ配置し、各位置P1、P2で第1光学フィルムF1の表面までの距離を測定した。各位置P1、P2で第1光学フィルムF1の表面までの距離は、第1ローラR1aに加える荷重Fを、圧力換算で、0.00MPa、0.13MPa、0.20MPa、0.30MPaの4つに変更し、各荷重Fに対して測定した。
本試験の結果の一例を示す図7(c)及び図7(d)の横軸には、所定の位置を基準値(0mm)とする第1光学フィルムF1のTD方向の位置をプロットした。また、図7(c)及び図7(d)の縦軸には、所定の距離を基準値(0mm)として、測定した距離の基準値からの変位量を第1光学フィルムF1の表面の位置としてプロットした。図7(c)及び図7(d)の縦軸が正の値である場合、第1光学フィルムF1の表面の位置が、所定の基準値よりも2次元レーザ距離計30a、30bに近いことを意味する。図7(c)及び図7(d)の縦軸が負の値である場合、第1光学フィルムF1の表面の位置が、所定の基準値よりも2次元レーザ距離計30a、30bから遠いことを意味する。
【0073】
図7(c)に示すように、第1光学フィルムF1が第1ローラR1aに接触する直前の位置P1では、第1ローラR1aに荷重Fを加えた場合、第1光学フィルムF1は下に凸にたるみ、荷重Fが大きくなればなるほど、たるみの程度が大きくなることが分かった。
一方、第1光学フィルムF1が第1ローラR1aに接触した後の位置P2では、第1ローラR1aに荷重Fを加えた場合、第1光学フィルムF1は上に凸にたるみ、荷重Fが大きくなればなるほど、たるみの程度が大きくなることが分かった。
【0074】
図8は、以上の結果に基づき、本発明者らが推測した、樹脂ローラである第1ローラR1aに接触する第1光学フィルムF1の貼合ローラR1への進入角度αに応じて、貼り合わせ後の積層体F3のTD方向のカール値が変化する理由を模式的に説明する説明図である。
図6を参照して前述したように、樹脂ローラである第1ローラR1aに荷重Fを付加すると、第1ローラR1aの回転中心C1が下に凸にたわむ。このため、第1光学フィルムF1に接触する第1ローラR1aの直径が、第1ローラ1aの端部よりも中央部の方が大きくなっている場合と同様の状態となり、第1ローラ1aの中央部の方が端部に比べて、第1光学フィルムF1が第1ローラ1aと接触し始める点から、第1光学フィルムF1が第2光学フィルムF2と貼り合わせられる点までの距離が長くなる。この結果、図8に示すように、第1ローラR1aに接触する直前の第1光学フィルムF1を中央部に向けて流そうとする力FCが作用することになる。これにより、図7(c)を参照して前述したように、第1光学フィルムF1は下に凸にたるむことになる。
一方、図8に示すように、第1光学フィルムF1が第1ローラR1aに接触した後(図8において、ドット状のハッチングを施した部分)には、第1光学フィルムF1の下側に第1ローラR1aが存在するため、第1光学フィルムF1は下に凸にたるむことができず、第1ローラR1aに接触する直前のたるみ量に応じて、第1光学フィルムF1が上に凸に反転することになる。
そして、第1光学フィルムF1が上に凸に反転したまま、第2光学フィルムF2と貼り合わせられるため、上に凸に反転した第1光学フィルムF1の形状が、図6(d)を参照して前述したように、貼り合わせ後の積層体F3のTD方向のカール値に影響を及ぼすと考えられる。そして、進入角度αが大きくなるほど、第1ローラR1aに接触する第1光学フィルムF1の長さが大きくなるため、第1ローラR1aに接触する直前の第1光学フィルムF1を中央部に向けて流そうとする力FCも大きくなり、第1ローラR1aに接触する直前の第1光学フィルムF1のたるみ量、ひいては、第1ローラR1aに接触した後の第1光学フィルムF1の反転量が大きくなる結果、貼り合わせ後の積層体F3のTD方向のカール値が変化するのだと考えられる。なお、第1ローラR1aに接触する直前の第1光学フィルムF1のたるみ量が大きくなりすぎると、第1光学フィルムF1と第2光学フィルムF2との間に隙間が生じて上手く貼り合わせられなかったり、積層体F3に皺や揉まれが発生するおそれがある。
【0075】
図9は、はく離ライナー貼合工程ST3で製造された積層体F3(第2中間体M2)のTD方向のカール値及びMD方向のカール値を測定した結果の他の例を示す図である。具体的には、図9は、第1光学フィルムF1が粘着剤層3(厚み14μm)付き偏光板10であり、総厚みが131μmである点を除いて、図5に示す例と同様の構成を有する積層体F3(第2中間体M2)のカール値を測定した結果である。なお、図9に示す結果は、第2光学フィルムF2の貼合ローラR1への進入角度β=43°のときに得られたものである。
図9に示すように、図5に示す結果と同様に、第1フィルムF1の貼合ローラRへの進入角度αに応じて、貼り合わせ後の積層体F3のMD方向のカール値は略一定であるのに対し、TD方向のカール値は変化している。
したがって、貼り合わせ後の積層体F3のTD方向のカール値が所定の範囲内となるように、第1ローラR1aに接触する第1光学フィルムF1の貼合ローラR1への進入角度αを調整すれば、貼り合わせ後の積層体F3のTD方向のカール値を所定の範囲内に制御でき、ひいては、最終的に製造される光学積層体100のTD方向のカール値を使用上問題とならない程度に抑制可能である。具体的には、図9に示すようなデータを予め採取しておき、このデータに基づき、貼り合わせ後の積層体F3のTD方向のカール値が所定の範囲内となるように、第1ローラR1aに接触する第1光学フィルムF1の貼合ローラR1への進入角度αを調整すれば、調整後には、貼り合わせ後の積層体F3のTD方向のカール値を所定の範囲内に制御可能である。
【0076】
[検査工程ST4]
検査工程ST4では、長尺帯状のはく離ライナー4を粘着剤層3からはく離(はく離ライナー4と偏光板10との間に介在する粘着剤層3を偏光板10側に残したまま、はく離ライナー4のみをはく離)した後、偏光板10(第1中間体M1)を検査する。偏光板10の検査方法としては、詳細な説明は割愛するが、透過検査、クロスニコル検査、反射検査などの公知の検査方法が挙げられる。検査工程ST4では、偏光板10を検査した後、はく離したはく離ライナー4を再び偏光板10に貼り合わせる(はく離したはく離ライナー4とは異なる新しいはく離ライナー4を偏光板10に貼り合わせることを含む)ことで、元の第2中間体M2の状態に戻す。
【0077】
図10は、検査工程ST4において、はく離ライナー4を再び偏光板10に貼り合わせる装置の概略構成例を模式的に示す側面図(各フィルムの搬送方向(MD方向)に直交する水平方向(TD方向)から見た図)である。図10に示す矢符は、各フィルムの搬送方向を意味する。
前述のように、本発明では、貼合ローラによって貼り合わせる一方のフィルムを第1光学フィルムF1とし、他方のフィルムを第2光学フィルムF2としている。検査工程ST4では、第1光学フィルムF1は、検査後の第1中間体M1(偏光板10及び粘着剤層3)であり、第2光学フィルムF2は、はく離ライナー4(はく離したはく離ライナー4、又は、新しいはく離ライナー4)である。この第1光学フィルムF1と第2光学フィルムF2とが、粘着剤層3を介して、貼合ローラR5によって貼り合わされ、第1光学フィルムF1と第2光学フィルムF2との積層体F3が製造される。検査工程ST4では、積層体F3は、第2中間体M2である。
【0078】
具体的には、図10に示すように、貼合ローラR5の入側(貼合ローラR5に対して、第1光学フィルムF1の搬送方向上流側であり、図10に示す例では、貼合ローラR5の上側)に第1光学フィルムF1に接触する第1搬送ローラR6が配置され、第1搬送ローラR6によって、第1光学フィルムF1が貼合ローラR5に搬送される。同様に、貼合ローラR5の入側(貼合ローラR5に対して、第2光学フィルムF2の搬送方向上流側であり、図10に示す例では、貼合ローラR5の上側)に第2光学フィルムF2に接触する第2搬送ローラR7が配置され、第2搬送ローラR7によって、第2光学フィルムF2が貼合ローラR5に搬送される。
第1搬送ローラR6は、貼合ローラR5に対する位置(本実施形態では、水平方向の位置)を調整可能になっている。図10に示す例では、第1搬送ローラR6は、実線で示す最右部の位置から、破線で示す位置を経て、一点鎖線で示す最左部の位置に移動可能である。例えば、第1搬送ローラR6の回転軸が軸受を介して一軸アクチュエータに取り付けられ、この一軸アクチュエータを駆動することで、第1搬送ローラR6の位置を調整可能にする構成を採用可能である。
一方、第2搬送ローラR7は、所定の位置に固定されている。
【0079】
貼合ローラR5は、第1ローラR5aと、第1ローラR5aに対向(図10に示す例では水平方向に対向)して配置された第2ローラR5bと、から構成されている。
第1ローラR5aは、第1光学フィルムF1に接触して、第1ローラR5aと第2ローラR5bとの間に第1光学フィルムF1を搬送するローラである。第1ローラR5aは、その表面が樹脂(本実施形態では、シリコンゴム)から形成された樹脂ローラである。
第2ローラR5bは、第2光学フィルムF2に接触して、第1ローラR5aと第2ローラR5bとの間に第2光学フィルムF2を搬送するローラである。第2ローラR5bは、その表面が金属(本実施形態では、鉄)から形成された金属ローラである。
第1光学フィルムF1及び第2光学フィルムF2が第1ローラR5aと第2ローラR5bとの間に進入することで、第1光学フィルムF1と第2光学フィルムF2とが貼り合わせられ、第1光学フィルムF1と第2光学フィルムF2との積層体F3が製造される。積層体F3は、搬送ローラR8によって搬送され、巻取ローラ(図示せず)で巻き取られる。
【0080】
検査工程ST4では、積層体F3のTD方向のカール値が所定の範囲内となるように、第1光学フィルムF1の貼合ローラR5への進入角度αが調整される。進入角度αの意味は、図3(b)を参照して説明したものと同様である。具体的には、第1搬送ローラR6の貼合ローラR5に対する位置を水平方向に調整することで、進入角度αが調整される。図10に実線で示す最右部の位置に第1搬送ローラR6が位置するときに、進入角度αは最も小さい0°となり、一点鎖線で示す最左部の位置に第1搬送ローラR6が位置するときに、進入角度αは最も大きな値となる。
【0081】
図11は、検査工程ST4で製造された積層体F3(第2中間体M2)のTD方向のカール値及びMD方向のカール値を測定した結果の一例を示す図である。具体的には、図11は、図9に示す例と同様の構成を有する積層体F3(第2中間体M2)のカール値を測定した結果である。なお、図11に示す結果は、第2光学フィルムF2の貼合ローラR1への進入角度β=43 °のときに得られたものである。
図11に示すように、図5図9に示す結果と同様に、第1フィルムF1の貼合ローラRへの進入角度αに応じて、貼り合わせ後の積層体F3のMD方向のカール値は略一定であるのに対し、TD方向のカール値は変化している。
したがって、貼り合わせ後の積層体F3のTD方向のカール値が所定の範囲内となるように、第1ローラR5aに接触する第1光学フィルムF1の貼合ローラR5への進入角度αを調整すれば、貼り合わせ後の積層体F3のTD方向のカール値を所定の範囲内に制御でき、ひいては、最終的に製造される光学積層体100のTD方向のカール値を使用上問題とならない程度に抑制可能である。具体的には、図11に示すようなデータを予め採取しておき、このデータに基づき、貼り合わせ後の積層体F3のTD方向のカール値が所定の範囲内となるように、第1ローラR5aに接触する第1光学フィルムF1の貼合ローラR5への進入角度αを調整すれば、調整後には、貼り合わせ後の積層体F3のTD方向のカール値を所定の範囲内に制御可能である。
【0082】
[表面保護フィルム貼合工程ST5]
表面保護フィルム貼合工程ST5では、長尺帯状の第2中間体M2に長尺帯状の表面保護フィルム5を貼り合わせる。具体的には、第2中間体M2を構成する偏光板10のはく離ライナー4が貼り合わせられた側とは反対側の面に、長尺帯状の表面保護フィルム5が貼り合わせられる。これにより、長尺帯状の光学積層体100が製造される。
【0083】
図12は、表面保護フィルム貼合工程ST5を実行する装置の概略構成例を模式的に示す側面図(各フィルムの搬送方向(MD方向)に直交する水平方向(TD方向)から見た図)である。図12(a)は第1例を、図12(b)は第2例を示す。図12に示す矢符は、各フィルムの搬送方向を意味する。
前述のように、本発明では、貼合ローラによって貼り合わせる一方のフィルムを第1光学フィルムF1とし、他方のフィルムを第2光学フィルムF2としている。表面保護フィルム貼合工程ST5では、第1光学フィルムF1は、第2中間体M2であり、第2光学フィルムF2は、表面保護フィルム5である。この第1光学フィルムF1と第2光学フィルムF2とが、表面保護フィルム5の粘着剤層を介して、貼合ローラR9によって貼り合わされ、第1光学フィルムF1と第2光学フィルムF2との積層体F3が製造される。表面保護フィルム貼合工程ST5では、積層体F3は、光学積層体100である。
【0084】
具体的には、図12に示すように、第1例及び第2例の何れについても、貼合ローラR9の入側(貼合ローラR9に対して、第1光学フィルムF1の搬送方向上流側であり、図12に示す例では、貼合ローラR9の左側)に第1光学フィルムF1に接触する第1搬送ローラR10が配置され、第1搬送ローラR10によって、第1光学フィルムF1が貼合ローラR9に搬送される。同様に、貼合ローラR9の入側(貼合ローラR9に対して、第2光学フィルムF2の搬送方向上流側であり、図12に示す例では、貼合ローラR9の左側)に第2光学フィルムF2に接触する第2搬送ローラR11が配置され、第2搬送ローラR11によって、第2光学フィルムF2が貼合ローラR9に搬送される。
そして、図12(a)に示す第1例では、第1搬送ローラR10は、貼合ローラR9に対する位置(本実施形態では、上下方向の位置)を調整可能になっている。図12(a)に示す第1例では、第1搬送ローラR10は、実線で示す最上部の位置から、破線で示す位置を経て、一点鎖線で示す最下部の位置に移動可能である。例えば、第1搬送ローラR10の回転軸が軸受を介して一軸アクチュエータに取り付けられ、この一軸アクチュエータを駆動することで、第1搬送ローラR10の位置を調整可能にする構成を採用可能である。一方、第2搬送ローラR11は、所定の位置に固定されている。
一方、図12(b)に示す第2例では、第2搬送ローラR11は、貼合ローラR9に対する位置(本実施形態では、上下方向の位置)を調整可能になっている。図12(b)に示す第2例では、第2搬送ローラR11は、実線で示す最下部の位置から、破線で示す位置を経て、一点鎖線で示す最上部の位置に移動可能である。例えば、第2搬送ローラR11の回転軸が軸受を介して一軸アクチュエータに取り付けられ、この一軸アクチュエータを駆動することで、第2搬送ローラR11の位置を調整可能にする構成を採用可能である。一方、第1搬送ローラR10は、所定の位置に固定されている。
【0085】
第1例及び第2例の何れについても、貼合ローラR9は、第1ローラR9aと、第1ローラR9aに対向(図12に示す例では上下方向に対向)して配置された第2ローラR9bと、から構成されている。
第1例及び第2例の第1ローラR9aは、第1光学フィルムF1に接触して、第1ローラR9aと第2ローラR9bとの間に第1光学フィルムF1を搬送するローラである。第1ローラR9aは、その表面が樹脂(本実施形態では、シリコンゴム)から形成された樹脂ローラである。
第1例及び第2例の第2ローラR9bは、第2光学フィルムF2に接触して、第1ローラR9aと第2ローラR9bとの間に第2光学フィルムF2を搬送するローラである。第2ローラR9bも、第1ローラR9aと同様に、その表面が樹脂(本実施形態では、シリコンゴム)から形成された樹脂ローラである。
第1光学フィルムF1及び第2光学フィルムF2が第1ローラR9aと第2ローラR9bとの間に進入することで、第1光学フィルムF1と第2光学フィルムF2とが貼り合わせられ、第1光学フィルムF1と第2光学フィルムF2との積層体F3が製造される。積層体F3は、搬送ローラR12によって搬送され、巻取ローラ(図示せず)で巻き取られる。
【0086】
表面保護フィルム貼合工程ST5では、図12(a)に示す第1例の場合、積層体F3のTD方向のカール値が所定の範囲内となるように、第1光学フィルムF1の貼合ローラR9への進入角度αが調整される。進入角度αの意味は、図3(b)を参照して説明したものと同様である。具体的には、第1搬送ローラR10の貼合ローラR9に対する位置を上下方向に調整することで、進入角度αが調整される。図12(a)に実線で示す最上部の位置に第1搬送ローラR10が位置するときに、進入角度αは最も小さい0°となり、一点鎖線で示す最下部の位置に第1搬送ローラR10が位置するときに、進入角度αは最も大きな値となる。
また、図12(b)に示す第2例の場合、積層体F3のTD方向のカール値が所定の範囲内となるように、第2光学フィルムF2の貼合ローラR9への進入角度βが調整される。進入角度βの意味は、図3(b)を参照して説明したものと同様である。具体的には、第2搬送ローラR11の貼合ローラR9に対する位置を上下方向に調整することで、進入角度βが調整される。図12(b)に実線で示す最下部の位置に第2搬送ローラR11が位置するときに、進入角度βは最も小さい0°となり、一点鎖線で示す最上部の位置に第2搬送ローラR11が位置するときに、進入角度βは最も大きな値となる。
【0087】
図13は、表面保護フィルム貼合工程ST5で製造された積層体F3(光学積層体100)のTD方向のカール値を測定した結果の一例を示す図である。図13において、符号αで示すデータは、図12(a)に示す第1例で得られたTD方向のカール値であり、符号βで示すデータは、図12(b)に示す第2例で得られたTD方向のカール値である。具体的には、図13は、図9に示す例と同様の構成を有する第2中間体M2に、総厚み48μmの表面保護フィルム5(基材:厚み38μmのポリエチレンテレフタレート、粘着剤層:厚み10μmのアクリル系粘着剤)を貼り付けた積層体F3(光学積層体)のTD方向のカール値を測定した結果である。なお、図13の符号αで示すデータは、第2光学フィルムF2の貼合ローラR9への進入角度β=30°のときに得られたものである。また、図13の符号βで示すデータは、第1光学フィルムF1の貼合ローラR9への進入角度α=30°のときに得られたものである。
図13に示すように、第1例については、図5等に示す結果と同様に、第1フィルムF1の貼合ローラR9への進入角度αに応じて、貼り合わせ後の積層体F3のTD方向のカール値は変化している。同様に、第2例については、第2フィルムF2の貼合ローラR9への進入角度βに応じて、貼り合わせ後の積層体F3のTD方向のカール値は変化している。
したがって、第1例の場合は、貼り合わせ後の積層体F3のTD方向のカール値が所定の範囲内となるように、第1ローラR9aに接触する第1光学フィルムF1の貼合ローラR9への進入角度αを調整すれば、貼り合わせ後の積層体F3、すなわち、最終的に製造される光学積層体100のTD方向のカール値を所定の範囲内に制御でき、光学積層体100のTD方向のカール値を使用上問題とならない程度に抑制可能である。また、第2例の場合は、貼り合わせ後の積層体F3のTD方向のカール値が所定の範囲内となるように、第2ローラR9bに接触する第2光学フィルムF2の貼合ローラR9への進入角度βを調整すれば、貼り合わせ後の積層体F3、すなわち、最終的に製造される光学積層体100のTD方向のカール値を所定の範囲内に制御でき、光学積層体100のTD方向のカール値を使用上問題とならない程度に抑制可能である。
具体的には、第1例の場合は、図13に示すようなデータを予め採取しておき、このデータに基づき、貼り合わせ後の積層体F3のTD方向のカール値が所定の範囲内となるように、第1ローラR9aに接触する第1光学フィルムF1の貼合ローラR9への進入角度αを調整すれば、調整後には、貼り合わせ後の積層体F3、すなわち、最終的に製造される光学積層体100のTD方向のカール値を所定の範囲内に制御可能である。また、第2例の場合は、図13に示すようなデータを予め採取しておき、このデータに基づき、貼り合わせ後の積層体F3のTD方向のカール値が所定の範囲内となるように、第2ローラR9bに接触する第2光学フィルムF2の貼合ローラR9への進入角度βを調整すれば、調整後には、貼り合わせ後の積層体F3、すなわち、最終的に製造される光学積層体100のTD方向のカール値を所定の範囲内に制御可能である。
【0088】
図14は、表面保護フィルム貼合工程ST5を実行する装置の他の概略構成例及び参考例に係る装置の概略構成を模式的に示す側面図(各フィルムの搬送方向(MD方向)に直交する水平方向(TD方向)から見た図)である。図14(a)は第3例を、図14(b)は参考例を示す。図14に示す矢符は、各フィルムの搬送方向を意味する。
図14(a)に示す第3例は、第2ローラR9bが、その表面が金属(本実施形態では、鉄)から形成された金属ローラである点を除いて、図12(a)に示す第1例と同様の構成を有する。
図14(b)に示す参考例は、第2ローラR9bが、その表面が金属(本実施形態では、鉄)から形成された金属ローラである点を除いて、図12(b)に示す第2例と同様の構成を有する。
【0089】
図15は、表面保護フィルム貼合工程ST5で製造された積層体F3(光学積層体100)のTD方向のカール値を測定した結果の一例を示す図である。図15において、符号αで示すデータは、図14(a)に示す第3例で得られたTD方向のカール値であり、符号βで示すデータは、図14(b)に示す参考例で得られたTD方向のカール値である。なお、図15の符号αで示すデータは、第2光学フィルムF2の貼合ローラR9への進入角度β=30°のときに得られたものである。また、図15の符号βで示すデータは、第1光学フィルムF1の貼合ローラR9への進入角度α=30°のときに得られたものである。
図15に示すように、第3例については、図5等に示す結果と同様に、第1フィルムF1の貼合ローラR9への進入角度αに応じて、貼り合わせ後の積層体F3のTD方向のカール値は変化している。これに対して、参考例については、第2フィルムF2の貼合ローラR9への進入角度βに応じて、貼り合わせ後の積層体F3のTD方向のカール値は略一定である。
したがって、第3例の場合は、貼り合わせ後の積層体F3のTD方向のカール値が所定の範囲内となるように、第1ローラR9aに接触する第1光学フィルムF1の貼合ローラR9への進入角度αを調整すれば、貼り合わせ後の積層体F3、すなわち、最終的に製造される光学積層体100のTD方向のカール値を所定の範囲内に制御でき、光学積層体100のTD方向のカール値を使用上問題とならない程度に抑制可能である。具体的には、図15に示すようなデータを予め採取しておき、このデータに基づき、貼り合わせ後の積層体F3のTD方向のカール値が所定の範囲内となるように、第1ローラR9aに接触する第1光学フィルムF1の貼合ローラR9への進入角度αを調整すれば、調整後には、貼り合わせ後の積層体F3、すなわち、最終的に製造される光学積層体100のTD方向のカール値を所定の範囲内に制御可能である。
これに対して、参考例の場合は、第2ローラR9bに接触する第2光学フィルムF2の貼合ローラR9への進入角度βを調整しても、貼り合わせ後の積層体F3のTD方向のカール値が略一定であるため、貼り合わせ後の積層体F3、すなわち、最終的に製造される光学積層体100のTD方向のカール値を所定の範囲内に制御できず、光学積層体100のTD方向のカール値を使用上問題とならない程度に抑制できないおそれがある。
【0090】
以上に説明した本実施形態に係る製造方法によれば、従来用いられている光学積層体100の構成要素の材質を特に変えることなく、カールを効果的に抑制可能である。
なお、本実施形態では、はく離ライナー貼合工程ST3、検査工程ST4及び表面保護フィルム貼合工程ST5の3つの工程において、本発明を適用する、すなわち、貼合ローラを構成する樹脂ローラに接触する光学フィルムの貼合ローラへの進入角度を調整する場合を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限るものではない。各工程ST3~ST5のうち、何れか1つ又は2つの工程のみに適用してもよいし、フィルムを貼り合わせる他の工程に適用することも可能である。
【0091】
また、本実施形態では、偏光板10が偏光フィルム1と位相差フィルム2との積層体である態様を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。偏光板10が偏光フィルム1と位相差フィルム2と更に他の構成要素との積層体である態様や、位相差フィルム2が存在せずに偏光板10が偏光フィルム1と他の構成要素との積層体である態様や、偏光板10に偏光フィルム1のみが存在する態様などを採用することも可能である。
【符号の説明】
【0092】
1・・・偏光フィルム
3・・・粘着剤層
4・・・はく離ライナー
5・・・表面保護フィルム
10・・・偏光板
100・・・光学積層体
F1・・・第1光学フィルム
F2・・・第2光学フィルム
M1・・・第1中間体
M2・・・第2中間体
R1、R5、R9・・・貼合ローラ
R1a、R5a、R9a・・・第1ローラ
R1b、R5b、R9b・・・第2ローラ
R2、R6、R10・・・第1搬送ローラ
R3、R7、R11・・・第2搬送ローラ
α、β・・・進入角
図1
図2
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図10
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図15