(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024059273
(43)【公開日】2024-05-01
(54)【発明の名称】積層フィルム、積層フィルムの製造方法
(51)【国際特許分類】
B32B 7/06 20190101AFI20240423BHJP
【FI】
B32B7/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022166857
(22)【出願日】2022-10-18
(71)【出願人】
【識別番号】000001339
【氏名又は名称】グンゼ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124039
【弁理士】
【氏名又は名称】立花 顕治
(72)【発明者】
【氏名】小池 明日香
(72)【発明者】
【氏名】木林 達也
【テーマコード(参考)】
4F100
【Fターム(参考)】
4F100AK01A
4F100AK01B
4F100AK03A
4F100AK12A
4F100AK25B
4F100AK47A
4F100AT00A
4F100BA02
4F100CA17A
4F100CA19A
4F100CA23A
4F100EH46B
4F100EJ37
4F100EJ86B
4F100JA03
4F100JK16
(57)【要約】
【課題】印刷層を好適に積層できる積層フィルム、および、その製造方法を提供する。
【解決手段】積層フィルムは、基材と、基材に積層される脱離層と、備える。記脱離層は、基材に積層される第1面、および、第1面と反対の第2面を有する。第2面は、機能層が積層される予定の面である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、
前記基材に積層される脱離層と、備え、
前記脱離層は、前記基材に積層される第1面、および、前記第1面と反対の第2面を有し、
前記第2面は、機能層が積層される予定の面である
積層フィルム。
【請求項2】
70℃温水中に10秒間浸漬したときの熱収縮率が、5%以上30%以下の範囲に含まれる
請求項1に記載の積層フィルム。
【請求項3】
前記基材を構成する材料は、樹脂材料および添加剤を含み、
前記添加剤は、アンチブロッキング剤および滑剤を含み、
前記樹脂材料に対する前記アンチブロッキング剤および前記滑剤の重量比は、それぞれ、前記樹脂材料100重量部に対して、0.05重量部以上0.2重量部以下の範囲に含まれる
請求項1または2に記載の積層フィルム。
【請求項4】
積層フィルムの製造方法であって、
前記積層フィルムは、
基材と、
前記基材に積層される脱離層と、備え、
前記脱離層は、前記基材に積層される第1面、および、前記第1面と反対の第2面を有し、
前記第2面は、機能層が積層される予定の面であり、
前記積層フィルムの製造方法は、
前記基材を製造する工程と、
前記基材に前記脱離層を積層する工程と、
前記基材に積層された前記脱離層を乾燥させる工程と、を含む
積層フィルムの製造方法。
【請求項5】
前記基材に前記脱離層を積層する工程よりも前に実施され、前記基材を樹脂の流れ方向に延伸する工程と、
前記基材に前記脱離層を積層する工程よりも後に実施され、前記基材および前記脱離層を前記樹脂の流れ方向に対して垂直方向に延伸する工程と、を含む、
請求項4に記載の積層フィルムの製造方法。
【請求項6】
前記基材および前記脱離層を前記樹脂の流れ方向に対して垂直方向に延伸する工程では、延伸倍率が3倍以上~7倍以下の範囲に含まれるように、前記基材および前記脱離層を延伸する
請求項5に記載の積層フィルムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層フィルム、および、その製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、基材を再利用できる積層フィルムの一例を開示している。この積層フィルムは、基材と、基材に積層される脱離層と、脱離層に積層される機能層の一例としての印刷層と、を備える。この積層フィルムは、例えば、アルカリ水溶液に含浸されることによって、基材から印刷層が脱離層とともに除去される。このため、基材を再利用することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般的に、脱離層を有する積層フィルムは、基材に機能層を積層する工程で脱離層が合わせて基材に積層される。このため、脱離層を構成する材料によって機能層を構成する材料が薄められる。また、脱離層と機能層との界面において、脱離層および機能層を構成する材料が混合される。このため、例えば、機能層が印刷層である場合、印刷層が不鮮明となり、印刷層を好適に積層できない。なお、このような課題は、機能層が印刷層である場合に限られず、機能層が粘着層またはガスバリア層等であっても同様に生じる。
【0005】
本発明は、機能層を好適に積層できる積層フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1観点に係る積層フィルムは、基材と、前記基材に積層される脱離層と、備え、前記脱離層は、前記基材に積層される第1面、および、前記第1面と反対の第2面を有し、前記第2面は、機能層が積層される予定の面である。
【0007】
上記積層フィルムによれば、基材に予め脱離層が積層されているため、脱離層は十分に乾燥している。このため、上記積層フィルムの第2面に機能層を積層するとき、脱離層を構成する材料によって機能層を構成する材料が薄められることが抑制される。また、脱離層と機能層との界面において、脱離層および機能層を構成する材料が混合されることが抑制される。このように、上記積層フィルムによれば、機能層を好適に積層できる。
【0008】
本発明の第2観点に係る積層フィルムは、第1観点に係る積層フィルムであって、70℃温水中に10秒間浸漬したときの熱収縮率が、5%以上30%以下の範囲に含まれる。
【0009】
上記積層フィルムによれば、熱収縮率が上記範囲に含まれるため、積層フィルムを収縮させて粉砕または粉砕して収縮させることにより、積層フィルムの嵩比重を小さくすることができる。このため、積層フィルムを押出機へ食い込みやすく、また、フラフブリッジが起こりにくくなるため、積層フィルムを好適に再利用できる。
【0010】
本発明の第3観点に係る積層フィルムは、第1観点または第2観点に係る積層フィルムであって、前記基材を構成する材料は、樹脂材料および添加剤を含み、前記添加剤は、アンチブロッキング剤および滑剤を含み、前記樹脂材料に対する前記アンチブロッキング剤および前記滑剤の重量比は、それぞれ、前記樹脂材料100重量部に対して、0.05重量部以上0.2重量部以下の範囲に含まれる。
【0011】
上記積層フィルムによれば、ブロッキングおよび滑性が良好となる。
【0012】
本発明の第4観点に係る積層フィルムの製造方法は、基材と、前記基材に積層される脱離層と、備え、前記脱離層は、前記基材に積層される第1面、および、前記第1面と反対の第2面を有し、前記第2面は、機能層が積層される予定の面である積層フィルムの製造方法であって、前記基材を製造する工程と、前記基材に前記脱離層を積層する工程と、前記基材に積層された前記脱離層を乾燥させる工程と、を含む。
【0013】
上記積層フィルムの製造方法によれば、第1観点の積層フィルムと同様の効果が得られる。
【0014】
本発明の第5観点に係る積層フィルムの製造方法は、第4観点に係る積層フィルムの製造方法であって、前記基材に前記脱離層を積層する工程よりも前に実施され、前記基材を樹脂の流れ方向に延伸する工程と、前記基材に前記脱離層を積層する工程よりも後に実施され、前記基材および前記脱離層を前記樹脂の流れ方向に対して垂直方向に延伸する工程と、を含む。
【0015】
上記積層フィルムの製造方法によれば、基材に脱離層が積層された後に、基材および脱離層が垂直方向に延伸される。このため、基材を垂直方向に延伸した後に脱離層を基材に積層する場合よりも、脱離層を積層するために用いられるグラビアロール等の幅を短くできる。このため、省スペースで積層フィルム10を製造できる。
【0016】
本発明の第6観点に係る積層フィルムの製造方法は、第5観点に係る積層フィルムの製造方法であって、前記基材および前記脱離層を前記樹脂の流れ方向に対して垂直方向に延伸する工程では、延伸倍率が3倍以上~7倍以下の範囲に含まれるように、前記基材および前記脱離層を延伸する。
【0017】
上記積層フィルムの製造方法によれば、樹脂の流れ方向に対して垂直方向の強度が高い積層フィルムを製造できる。
【発明の効果】
【0018】
本発明に関する積層フィルム、および、その製造方法によれば、機能層を好適に積層できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】実施形態の積層フィルムの層構成の一例を示す断面図。
【
図2】
図1の積層フィルムを含むフィルム製品の層構成の一例を示す断面図。
【
図3】
図1の積層フィルムの製造方法の一例を示すフローチャート。
【
図4】実施例および比較例の積層フィルムの試験結果を示す表。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態に係る積層フィルムについて説明する。
【0021】
<1.積層フィルムの構成>
図1は、本実施形態の積層フィルム10の層構成の一例を示す断面図である。積層フィルム10は、例えば、ペットボトル、または、金属罐等の容器に装着される。積層フィルム10は、基材20と、基材20に積層される脱離層30と、を備える。
【0022】
基材20は、例えば、第1層20Aと、第1層20Aに対して一方に積層される第2層20Bと、第1層20Aに対して他方に積層される第3層20Cと、を含む。第1層20Aを構成する材料は、例えば、ポリスチレンである。第2層20Bおよび第3層20Cを構成する材料は、ポリエチレンテレフタレートである。基材20は、単層であってもよい。基材20が単層である場合の基材20を構成する材料は、例えば、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、または、ポリオレフィンである。基材20を構成する材料は、樹脂材料とは別に添加剤を含んでいてもよい。添加剤は、例えば、アンチブロッキング剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、光安定剤、滑剤、帯電防止剤、難燃剤、抗菌剤、蛍光増白剤、着色剤、および、酸化防止剤の少なくとも1つである。本実施形態では、基材20は、添加剤としてアンチブロッキング剤および滑剤を含む。アンチブロッキング剤および滑剤の含有量は、積層フィルム10のヘイズの良化と、ブロッキングおよび滑性と、を両立するために、樹脂材料100重量部に対して、それぞれ、0.05重量部以上0.2重量部以下が好ましく、0.075重量部以上0.15重量部以下であることがより好ましい。また、アンチブロッキング剤としては、アクリル系粒子、特に、架橋ポリメチルメタクリレート粒子が好ましい。アンチブロッキング剤の粒径は、1~5μmが好ましい。添加剤は、脱離層30に添加されるよりも、基材20に添加されることが好ましい。例えば、基材20にアンチブロッキング剤が添加されている場合、基材20が脱落しにくいため、アンチブロッキング効果が発揮されやすい。このため、基材20を再利用する際にアンチブロッキング剤の添加量を削減できる。アンチブロッキング剤の粒径は基材20から突出することを想定して、脱離層30の厚みより大きいことが好ましい。
【0023】
基材20は、第1面21、および、第1面21と反対の第2面22を含む。第1面21は、第2層20Bに形成される。第2面22は、第3層20Cに形成される。積層フィルム10の強度を高める観点から、基材20の厚さは、10μm以上であることが好ましく、15μm以上であることが好ましい。積層フィルム10を薄く構成する観点から、基材20の厚さは、100μm以下であることが好ましく、90μm以下であることがより好ましい。
【0024】
脱離層30は、基材20の第1面21に積層される第1面31と、第1面31と反対の第2面32とを有する。第2面32は、機能層40(
図2参照)が積層される予定の面である。脱離層30は、機能層40が積層された状態において、積層フィルム10が例えば、アルカリ水溶液に含浸されることによって、基材20から、機能層40とともに脱離する。脱離層30を構成する材料は、例えば、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、アミノ樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、または、セルロースである。脱離層30は、粘度調整のため、アルコール系、ケトン系、エステル系、アルコール誘導体系、芳香族炭化水素系、および、脂肪族炭化水素系等の溶剤を含んでいてもよい。脱離層30は、基材20の厚さに対して十分に薄い。脱離層30の厚さは、例えば、1μm程度である。
【0025】
基材20の第1面21に脱離層30が積層されることにより、第1面21の微小な凹凸が平滑化される。このため、基材20に脱離層30が積層されることにより、積層フィルム10のヘイズが良好となる。
【0026】
積層フィルム10の樹脂の流れ方向、すなわち、MD(Machine Dirrection)の延伸倍率、および、MDに垂直な方向、すなわち、TD(Transverse Dirrection)の延伸倍率は、任意に選択可能である。積層フィルム10のTDの延伸倍率は、積層フィルム10を構成する樹脂、延伸手段、および、延伸温度等に応じて変更されるが、3倍以上が好ましく、4倍以上がより好ましく、7倍以下が好ましく、6倍以下がより好ましい。このため、積層フィルム10は、TD方向の強度が高い。積層フィルム10のMDの延伸倍率は、1倍以上が好ましい。
【0027】
積層フィルム10の熱収縮率は、任意に選択可能である。積層フィルム10を好適に再利用する観点から、積層フィルム10を70℃温水中に10秒間浸漬したときの熱収縮率は、5%以上であることが好ましく、30%以下であることが好ましい。また、積層フィルム10を80℃温水中に10秒間浸漬したときの熱収縮率は、30%以上であることが好ましく、60%以下であることが好ましい。また、積層フィルム10を100℃温水中に10秒間浸漬したときの熱収縮率は、60%以上であることが好ましく、76%以下であることが好ましい。積層フィルム10を収縮させて粉砕または粉砕して収縮させることにより、積層フィルム10の嵩比重を小さくすることができる。このため、積層フィルム10を押出機へ食い込みやすく、また、フラフブリッジが起こりにくくなるため、積層フィルム10を好適に再利用できる。
【0028】
図2は、積層フィルム10を含むフィルム製品100の層構成の一例を示す断面図である。フィルム製品100は、積層フィルム10と、機能層40と、第1オーバーコート層50と、第2オーバーコート層60と、を含む。
【0029】
本実施形態では、機能層40は、印刷層である。機能層40は、粘着層またはガスバリア層等であってもよい。機能層40は、脱離層30の第2面32に積層される。第1オーバーコート層50および第2オーバーコート層60は、フィルム製品100の表面硬度を良好にするために積層される。第1オーバーコート層50は、機能層40に積層される。第2オーバーコート層60は、基材20の第2面22に積層される。
【0030】
フィルム製品100は、第1オーバーコート層50が最も内側となるように、換言すれば、第2オーバーコート層60が最も外側となるように、ペットボトル、または、金属罐等の容器に装着される。このため、機能層40が印刷層である場合、フィルム製品100が装着された物品の消費者は、第2オーバーコート層60、基材20、および、脱離層30を介して機能層40を視認する。基材20および脱離層30を含む積層フィルム10のヘイズ値が小さいほど、印刷層がより鮮明となるため、視認性が向上する。
【0031】
<2.積層フィルムの製造方法>
図3は、積層フィルム10の製造方法の一例を示すフローチャートである。積層フィルム10の製造方法は、第1工程、第2工程、第3工程、第4工程、および、第5工程を含む。第1工程~第5工程は、例えば、積層フィルム10の製造装置によって実施される。なお、本実施形態において、第1工程~第5工程は、各工程の名称を便宜的に規定したものであって、必ずしも各工程の順序を意味するものではない。
【0032】
ステップS11の第1工程では、製造装置は、基材20を製造する。第1工程では、例えば、共押出法により第1層20A、第2層20B、および、第3層20Cを同時に成形する方法が好ましい。共押出法がTダイによる共押出である場合、積層の方法は、フィードブロック方式、マルチマニホールド方式、または、これらを併用した方法のいずれであってもよい。
【0033】
具体的には、例えば、第1層20A、第2層20B、および、第3層20Cを構成する材料をそれぞれ押出機に投入し、多層ダイスによりシート状に押出し、引き取りロールにて冷却固化することによって、基材20が製造される。
【0034】
ステップS12の第2工程は、第1工程よりも後に実施される。第2工程では、製造装置は、ロール延伸機によって、基材20をMDに延伸する。
【0035】
ステップS13の第3工程は、第2工程よりも後に実施される。第3工程では、製造装置は、基材20の第1面21に脱離層30を積層する。第3工程では、例えば、グラビアロールによって、基材20の第1面21に脱離層30を構成する材料が塗布される。第3工程では、グラビア印刷の他、フレキソ印刷等の他の公知の印刷方法によって脱離層30を基材20の第1面21に積層してもよい。なお、以下では、第3工程が完了した後の基材20に脱離層30が積層された状態の積層フィルムを中間フィルムと称する場合がある。
【0036】
ステップS14の第4工程は、第3工程よりも後に実施される。第4工程では、製造装置は、テンター延伸機によって、中間フィルムをTDに延伸する。
【0037】
ステップS15の第5工程は、第4工程よりも後に実施される。第5工程では、製造装置は、第4工程が完了した中間フィルムを乾燥させる。中間フィルムのうちの特に脱離層30が十分乾燥することによって、積層フィルム10が完成する。
【0038】
<3.積層フィルムの作用および効果>
積層フィルム10によれば、基材20に予め脱離層30が積層されているため、脱離層30は十分に乾燥している。このため、積層フィルム10の第2面32に機能層40を積層するとき、脱離層30を構成する材料によって機能層40を構成する材料が薄められることが抑制される。また、脱離層30と機能層40との界面において、脱離層30および機能層40を構成する材料が混合されることが抑制される。このように、積層フィルム10によれば、機能層40を好適に積層できる。
【0039】
さらに、積層フィルム10の製造方法によれば、第4工程において、中間フィルムをTDに延伸するため、例えば、基材20をTDに延伸した後に脱離層30を基材20の第1面21に積層する場合よりも、脱離層30を積層するために用いられるグラビアロール等の幅を短くできる。このため、省スペースで積層フィルム10を製造できる。
【0040】
従来技術のように、基材20に脱離層30とともに機能層40を積層する場合、機能層40を積層する装置の一部を利用して脱離層30が積層されるため、本実施形態のように機能層40が印刷層である場合、機能層40のデザイン性が制限されるおそれがある。本実施形態の積層フィルム10は、脱離層30が予め積層されているため、積層フィルム10を用いてフィルム製品100を製造する際に、脱離層30を積層する必要がない。このため、機能層40を積層する際にデザイン性が制限されにくい。
【0041】
<4.実施例>
本願発明者(ら)は、実施例1~6の積層フィルム、および、比較例1~3の積層フィルムを製造し、積層フィルムの物性を測定する試験を実施した。以下では、便宜上、各実施例および各比較例の積層フィルムの構成要素について、実施形態と同様の符号を付して説明する場合がある。
【0042】
実施例1~6の積層フィルムは、実施形態の積層フィルム10である。実施例1~6の積層フィルムの基材20は、実施形態の製造方法によって製造される。第1工程における押出機のバレル温度は、160℃~250℃である。多層ダイスの温度は、210℃である。引き取りロールの冷却温度は、30℃である。第2工程におけるロール延伸機内の予熱ゾーンの温度は、105℃である。延伸ゾーンの温度は、89℃~91℃である。熱固定ゾーンの温度は、85℃である。延伸倍率は、5~7倍である。
第3工程におけるグラビア印刷機の塗工条件はアクリル系樹脂をエステル類とIPAとの混合溶媒で粘度調整を行う。第4工程における延伸条件は第2工程の延伸条件と同じであり、第5工程において、脱離層30を乾燥する。
【0043】
実施例1~6の積層フィルムの諸元は、次のとおりである。
実施例1、2の積層フィルムの基材20は、単層である。実施例1、2の基材20を構成する材料は、ポリスチレンである。実施例1、2の積層フィルムの基材20の厚さは、45μmである。実施例2の積層フィルムの基材20は、ポリスチレンに加えて、アンチブロッキング剤および滑剤を含む。実施例2の積層フィルムは、基材20を構成するポリスチレン100重量部に対して、アンチブロッキング剤および滑剤をそれぞれ、0.1重量部含む。実施例2の積層フィルムに用いられるアンチブロッキング剤は、ポリメチルメタクリレート(PMMA)である。実施例2で用いられるポリメチルメタクリレートの平均粒子径は、2.2μmであり、熱分解開始温度は、270℃である。実施例1、2の積層フィルムの脱離層30を構成する材料は、アクリル系樹脂であり、脱離層30の厚さは、1μmである。
【0044】
実施例3、4の積層フィルムの基材20は、第1層20A、第2層20B、および、第3層20Cを有する。第1層20Aを構成する材料は、ポリスチレンである。第2層20Bおよび第3層20Cを構成する材料は、ポリエチレンテレフタレートである。実施例3、4の積層フィルムの基材20の厚さは、40μmである。実施例4の積層フィルムの第2層20Bおよび第3層20Cは、ポリエチレンテレフタレートに加えて、アンチブロッキング剤および滑剤を含む。実施例4の積層フィルムの第2層20Bおよび第3層30Cは、ポリエチレンテレフタレート100重量部に対して、0.1重量部のアンチブロッキング剤および滑剤をそれぞれ含む。実施例4の積層フィルムに用いられるアンチブロッキング剤は、ポリメチルメタクリレートである。実施例4で用いられるポリメチルメタクリレートの平均粒子径は、3.3μmであり、熱分解開始温度は、270℃である。また、実施例3、4の積層フィルムの脱離層30を構成する材料は、アクリル系樹脂であり、脱離層30の厚さは、1μmである。
【0045】
実施例5、6の積層フィルムの基材20は、単層である。実施例5、6の基材20を構成する材料は、ポリオレフィンである。実施例5、6の積層フィルムの基材20の厚さは、50μmである。実施例6の積層フィルムの基材20は、ポリオレフィンに加えて、アンチブロッキング剤および滑剤を含む。実施例6の積層フィルムは、基材20を構成するポリオレフィン100重量部に対して、アンチブロッキング剤および滑剤をそれぞれ、0.1重量部含む。実施例6の積層フィルムに用いられるアンチブロッキング剤は、実施例2のポリメチルメタクリレートと、実施例4のポリメチルメタクリレートとの混合物である。実施例5、6の積層フィルムの脱離層30を構成する材料は、アクリル系樹脂であり、脱離層30の厚さは、1μmである。
【0046】
比較例1~3の積層フィルムの諸元は、次のとおりである。
比較例1の積層フィルムは、実施例1の積層フィルムに対して脱離層30を有していない点以外は、実施例1の積層フィルムと同様の構成であり、実施例1の積層フィルムと同様の方法によって製造される。
【0047】
比較例2の積層フィルムは、実施例3の積層フィルムに対して脱離層30を有していない点以外は、実施例3の積層フィルムと同様の構成であり、実施例3の積層フィルムと同様の方法によって製造される。
【0048】
比較例3の積層フィルムは、実施例5の積層フィルムに対して脱離層30を有していない点以外は、実施例5の積層フィルムと同様の構成であり、実施例5の積層フィルムと同様の方法によって製造される。
【0049】
<5.試験>
本願発明者(ら)は、実施例1~6、および、比較例1~3の積層フィルムについて、以下の項目を測定する試験を実施した。
【0050】
<5-1.ヘイズ>
JIS Z7136に準ずる方法により、ヘイズメーター(日本電色工業社製、NDH5000)を用いて、得られた積層フィルムのヘイズを測定した。ヘイズについては、実施例1~6、および、比較例1~3の積層フィルムにつき、それぞれ4つの試験片を用いて測定し、その平均値を算出した。実施例1~6の積層フィルムのヘイズを測定する面は、脱離層30の第2面32である。比較例1~3の積層フィルムのヘイズを測定する面は、基材20の第1面21である。
【0051】
<5-2.ブロッキング>
実施例1~6、および、比較例1~3の積層フィルムを30mm×100mmにカットして2枚のサンプルを作成した。得られたサンプルを重ね合わせ、その上から荷重5kg/100cm2を載せ、40℃の条件で48時間静置した。その後、引張速度200m/minでせん断方向に引張り、せん断剥離強度を測定した。
【0052】
<5-3.滑性>
表面性測定機(新東科学株式会社製、14FW)を用いて、ASTM-D1894に準拠し、実施例1~6の積層フィルムについては、脱離層30の第2面32を内、基材20の第2面22を外として、内外の静摩擦係数(μs)と動摩擦係数(μd)を測定した。比較例1~3の積層フィルムについては、基材20の第1面21を内、基材20の第2面を外として、内外の静摩擦係数(μs)と動摩擦係数(μd)を測定した。
【0053】
<5-4.試験結果>
図4は、試験結果を示す表である。実施例1、2の積層フィルムは、比較例1の積層フィルムに対してヘイズに関して、良好な結果が得られた。実施例3、4の積層フィルムは、比較例2の積層フィルムに対してヘイズに関して、良好な結果が得られた。実施例5、6の積層フィルムは、比較例3の積層フィルムに対してヘイズに関して、良好な結果が得られた。これは、基材20の第1面21に脱離層30が積層されているため、第1面21の微小な凹凸が平滑化されたためであると考えられる。
【0054】
実施例2の積層フィルムは、ブロッキングおよび滑性について、実施例1の積層フィルムに対して、脱離層30を有さない比較例1の積層フィルムと同程度まで良化した。実施例4の積層フィルムは、ブロッキングおよび滑性について、実施例3の積層フィルムに対して、脱離層30を有さない比較例2の積層フィルムと同程度まで良化した。実施例6の積層フィルムは、ブロッキングおよび滑性について、実施例5の積層フィルムに対して、脱離層30を有さない比較例3の積層フィルムと同程度まで良化した。これらから、基材20に脱離層30を形成することによって、ブロッキングおよび滑性の少なくとも一方が悪化するが、基材20を構成する材料にアンチブロッキング剤等の添加剤が含まれる場合、基材20に脱離層30を形成した場合であっても、ブロッキングおよび滑性が悪化することが抑制されることが把握できる。積層フィルムを長尺のロール状に一旦巻き取り、その後再度巻き出すことが可能になるため、フィルム製品100の製造において、脱離層30を基材20に積層する工程と、機能層40を積層する工程とを分離することができる。
【0055】
<6.変形例>
上記実施形態は本発明に関する積層フィルムが取り得る形態の例示であり、その形態を制限することを意図していない。本発明に関する積層フィルムは、実施形態に例示された形態とは異なる形態を取り得る。その一例は、実施形態の構成の一部を置換、変更、もしくは、省略した形態、または、実施形態に新たな構成を付加した形態である。以下に実施形態の変形例の幾つかの例を示す。
【0056】
<6-1>
上記実施形態では、脱離層30の第1面31は、基材20の第1面21に直接的に積層されていたが、脱離層30と基材20との間には、任意の層が積層されてもよい。任意の層は、例えば、帯電防止層である。任意の層は、機能層40が脱離した場合であっても、基材20に積層された状態が維持されることが好ましい。
【0057】
<6-2>
上記実施形態において、積層フィルム10の製造方法は、任意に変更可能である。例えば、第1工程の後に、基材20に脱離層30を積層し、その後、脱離層30が積層された基材20をMDおよびTDの少なくとも一方に延伸してもよい。別の例では、第1工程の後に基材20をMDおよびTDに延伸し、その後、基材20に脱離層30を積層してもよい。
【符号の説明】
【0058】
10 :積層フィルム
20 :基材
30 :脱離層
31 :第1面
32 :第2面
40 :機能層